(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】内視鏡用鉗子
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A61B17/29
(21)【出願番号】P 2021520051
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006746
(87)【国際公開番号】W WO2020235155
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019094434
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信行
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-093301(JP,U)
【文献】特開平09-327463(JP,A)
【文献】特開2005-334001(JP,A)
【文献】特開2008-212620(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063679(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/29
A61B 17/122
A61B 17/128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端と近位端を有し、内腔を備え、金属製であって可撓性を有するコイル部材と、
内腔を備え、前記コイル部材の前記内腔に配置されている筒状部材と、
前記コイル部材よりも遠位側に配置され、開閉自在な一対の鉗子部材と、
前記一対の鉗子部材の近位側にそれぞれ接続されている接続部材と、
前記筒状部材の前記内腔に挿通されている撚線ワイヤと、
内腔を備え、前記筒状部材の前記内腔に配置されている接続部と、を有し、
前記接続部の前記内腔に前記接続部材の近位端部と前記撚線ワイヤの遠位端部とが配置され、
前記筒状部材の遠位端は、前記接続部材と前記撚線ワイヤとの前記接続部よりも遠位側、かつ前記コイル部材の遠位端よりも近位側に位置している内視鏡用鉗子。
【請求項2】
前記筒状部材は、合成樹脂から構成されている請求項1に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項3】
前記筒状部材の近位端は、前記コイル部材の近位端よりも近位側に位置している請求項1または2に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項4】
前記筒状部材の近位端部は、前記撚線ワイヤ
の近位端部に固定されている請求項1~3のいずれか一項に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項5】
前記接続部材が、単線ワイヤである請求項1~4のいずれか一項に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項6】
前記撚線ワイヤの遠位端における前記コイル部材の長手方向に垂直な断面において、前記コイル部材と前記筒状部材の間の空間断面積が、前記筒状部材と前記撚線ワイヤの間の空間断面積よりも大きい請求項1~5のいずれか一項に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項7】
前記撚線ワイヤの遠位端における前記コイル部材の長手方向に垂直な断面において、前記コイル部材と前記筒状部材の間の空間断面積が、前記筒状部材と前記撚線ワイヤの間の空間断面積よりも小さい請求項1~5のいずれか一項に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項8】
前記筒状部材の遠位端部に、前記筒状部材の長手方向の中央位置よりも外径が小さくなっている小径部が設けられている請求項1~7のいずれか一項に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項9】
前記筒状部材の遠位端部に、遠位側に向かって先細りになっているテーパー部が設けられている請求項1~8のいずれか一項に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項10】
前記撚線ワイヤは、金属から構成されている請求項1~9のいずれか一項に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項11】
さらに、前記コイル部材の近位端部に接続されている保護部材と、前記コイル部材よりも近位側に配置されており、前記一対の鉗子部材の開閉操作を行う操作部材とを有し、
前記保護部材は、内腔を有している筒形状であり、
前記保護部材の内径は、前記コイル部材の外径よりも大きく、
前記操作部材は、前記保護部材の近位端部に回転可能に接続されている第1操作部と、前記撚線ワイヤの近位端部に接続され、前記第1操作部に対して相対的に移動する第2操作部と、を備え、
前記保護部材と前記第1操作部との接続部は、前記撚線ワイヤと前記第2操作部との接続部よりも遠位側に位置している請求項1~10のいずれか一項に記載の内視鏡用鉗子。
【請求項12】
前記コイル部材の長手方向を回転軸として前記操作部材を前記コイル部材に対して回転させたときに、前記筒状部材の遠位端での回転角度が、前記筒状部材の近位端での回転角度よりも小さい請求項11に記載の内視鏡用鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を用いた手術や処置で主に止血を目的として使用される内視鏡用鉗子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を用いた処置では、体内組織の採取や止血を目的として組織を把持するための処置具である鉗子が使用される。鉗子は把持対象である体内組織を把持する機能を有しているほか、処置具の先端部に設けられる把持部材に高周波電源を接続することにより高周波処置具として使用することができる。例えば特許文献1には、内視鏡用生検鉗子が、挿入部と操作部とから構成され、挿入部が、内腔を有したコイルと、コイルの外表面に被覆された外チューブと、コイルの内腔を進退自在に配設された内チューブと、内チューブの内腔を進退自在に配設された2本の操作ワイヤとから構成されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡用鉗子の使用時には、内視鏡で病変部を観察しやすくするために送気または送液処理を行うことがある。この際、送気または送液の際に体内の圧力が上昇し、送液用の液体と血液等の体液の少なくともいずれかが内視鏡用鉗子の内部に入り込み、手元側まで逆流するおそれがあった。また、特許文献1に記載の鉗子では操作ワイヤの外表面とコイルの内表面の当接により摩擦抵抗が生じ、鉗子の開閉操作や回転操作が行いにくくなることがあった。特に、操作ワイヤとしてトルク伝達性の高い撚線ワイヤを採用した場合、ワイヤを撚ることで表面に凹凸が形成されるため、撚線ワイヤとコイルとの間の摩擦抵抗の増加が懸念される。そこで、本発明は、撚線ワイヤとコイル部材の当接を防ぎつつ、体液等の液体が逆流して手元側まで到達することを抑制することができる内視鏡用鉗子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の内視鏡用鉗子の一実施態様は、遠位端と近位端を有し、内腔を備え、金属製であって可撓性を有するコイル部材と、内腔を備え、コイル部材の内腔に配置されている筒状部材と、コイル部材よりも遠位側に配置され、開閉自在な一対の鉗子部材と、一対の鉗子部材の近位側にそれぞれ接続されている接続部材と、接続部材の近位端部に接続されている接続部を備え、筒状部材の内腔に挿通されている撚線ワイヤと、を有し、筒状部材の遠位端は、接続部材と撚線ワイヤとの接続部よりも遠位側、かつコイル部材の遠位端よりも近位側に位置していることを特徴とする。このように筒状部材の遠位端と接続部の位置を設定することにより、コイル部材と撚線ワイヤの当接を防ぐことができるため、鉗子の開閉操作や回転操作をスムーズに行うことができる。また、コイル部材が撚線ワイヤの接続部に当接することによる接続部材と撚線ワイヤの接続の解除を防ぐこともできる。さらに、コイル部材と撚線ワイヤの間に筒状部材が配されるため、体液等の液体がコイル部材の内腔に入り込みにくくなり、当該液体の手元側までの到達を抑制することができる。上記のように筒状部材の遠位端とコイル部材の遠位端の位置を設定することにより、筒状部材の遠位端部がコイル部材で覆われるため、鉗子を使用する際に、高周波による熱等が生じた場合にも筒状部材への熱の影響を緩和することができる。
【0006】
筒状部材は、合成樹脂から構成されていることが好ましい。他方、撚線ワイヤは、金属から構成されていることが好ましい。
【0007】
筒状部材の近位端は、コイル部材の近位端よりも近位側に位置していることが好ましい。また、筒状部材の近位端部は、撚線ワイヤに固定されていることが好ましい。
【0008】
接続部材が、単線ワイヤであることが好ましい。
【0009】
撚線ワイヤの遠位端におけるコイル部材の長手方向に垂直な断面において、コイル部材と筒状部材の間の空間断面積が、筒状部材と撚線ワイヤの間の空間断面積よりも大きいことが好ましい。また、撚線ワイヤの遠位端におけるコイル部材の長手方向に垂直な断面において、コイル部材と筒状部材の間の空間断面積が、筒状部材と撚線ワイヤの間の空間断面積よりも小さいことも好ましい。
【0010】
筒状部材の遠位端部に、筒状部材の長手方向の中央位置よりも外径が小さくなっている小径部が設けられていることが好ましい。また、筒状部材の遠位端部に、遠位側に向かって先細りになっているテーパー部が設けられていることが好ましい。
【0011】
上記内視鏡用鉗子は、さらに、コイル部材の近位端部に接続されている保護部材と、コイル部材よりも近位側に配置されており、一対の鉗子部材の開閉操作を行う操作部材とを有し、操作部材は、保護部材の近位端部に回転可能に接続されている第1操作部と、撚線ワイヤの近位端部に接続され、第1操作部に対して相対的に移動する第2操作部と、を備え、保護部材と第1操作部との接続部は、撚線ワイヤと第2操作部との接続部よりも遠位側に位置していることが好ましい。
【0012】
操作部材をコイル部材に対して回転させたときに、筒状部材の遠位端での回転角度が、筒状部材の近位端での回転角度よりも小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記所定の位置に筒状部材を配置することにより、コイル部材と撚線ワイヤの当接を防ぐことができるため、鉗子の開閉操作や回転操作をスムーズに行うことができ、コイル部材と撚線ワイヤの接続部の当接による接続部の解除を防ぐこともできる。また、体液等の液体がコイル部材の内腔に入り込みにくくなり、当該液体の手元側までの到達を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡用鉗子の側面図を表す。
【
図2】
図1に示した内視鏡用鉗子の遠位端部を拡大した斜視図を表す。
【
図3】
図1に示した内視鏡用鉗子の遠位端部を拡大した側面図(一部断面図)を表す。
【
図4】
図1に示した内視鏡用鉗子の近位側の一部を拡大した断面図(一部側面図)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0016】
本発明の内視鏡用鉗子の一実施態様は、内腔を備え、遠位端と近位端を有し、金属製であって可撓性を有するコイル部材と、内腔を備え、コイル部材の内腔に配置されている筒状部材と、コイル部材よりも遠位側に配置され、開閉自在な一対の鉗子部材と、一対の鉗子部材の近位側にそれぞれ接続されている接続部材と、接続部材の近位端部に接続されている接続部を備え、筒状部材の内腔に挿通されている撚線ワイヤと、を有し、筒状部材の遠位端は、接続部材と撚線ワイヤとの接続部よりも遠位側、かつコイル部材の遠位端よりも近位側に位置していることを特徴とする。このように筒状部材の遠位端と接続部の位置を設定することにより、コイル部材と撚線ワイヤの当接を防ぐことができるため、鉗子の開閉操作や回転操作をスムーズに行うことができる。また、コイル部材が撚線ワイヤの接続部に当接することによる接続部材と撚線ワイヤの接続の解除を防ぐこともできる。さらに、コイル部材と撚線ワイヤの間に筒状部材が配されるため、体液等の液体がコイル部材の内腔に入り込みにくくなり、当該液体の手元側までの到達を抑制することができる。上記のように筒状部材の遠位端とコイル部材の遠位端の位置を設定することにより、筒状部材の遠位端部がコイル部材で覆われるため、鉗子を使用する際に、高周波による熱等が生じた場合にも筒状部材への熱の影響を緩和することができる。
【0017】
内視鏡用鉗子(以下、単に鉗子と称することがある)は、内視鏡の鉗子チャンネルに挿通されて、体内に導入される処置具であり、体内組織の採取や止血を目的として組織を保持するものである。撚線ワイヤの遠位側または近位側への移動に伴い、鉗子部材が互いに回動して、接近、離反することによって鉗子が開閉し、粘膜下層組織等の体内の所望の位置を摘まむことができる。また、鉗子に高周波電源を接続することにより、高周波止血鉗子としても用いることができる。
【0018】
図1~
図4を参照しながら、鉗子の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡用鉗子の側面図を表し、
図2~
図3はそれぞれ
図1の内視鏡用鉗子の遠位端部を拡大した斜視図と側面図(一部断面図)を表す。
図4は、
図1に示した内視鏡用鉗子の近位側の一部を拡大した断面図(一部側面図)を表す。
【0019】
鉗子1において近位側とはコイル部材2の長手方向に対して使用者、つまり術者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側を指す。
図1においては上側が遠位側、下側が近位側を表しており、各図面においてコイル部材2の長手方向は符号xで示している。また、コイル部材2の内方とは、コイル部材2の径方向においてコイル部材2の長軸中心に向かう方向を指し、外方とは、内方とは反対方向の放射方向を指す。
【0020】
コイル部材2は、遠位端と近位端を有し、内腔を備え、金属製であって可撓性を有している。コイル部材2は、一または複数の線材がらせん状に巻回されて中空体に形成されている。コイル部材2が中空体であるため、コイル部材2の内腔に筒状部材5および撚線ワイヤ30を配置することができる。コイル部材2を形成している線材の断面形状は、円形、長円形、多角形またはこれらの組み合わせであってもよい。長円形には、楕円形、卵形、角丸長方形が含まれる。コイル部材2を構成する線材は、断面形状が四角形の平線であることが好ましい。
【0021】
コイル部材2の密度(線材の巻き間隔)は特に制限されず、密巻き、ピッチ巻き、またはこれらを組み合わせることができるが、コイル部材2の内腔に体液等の液体が入り込むことを防ぐためには、コイル部材2は密巻きに形成されていることが好ましい。なお、長手方向xで隣り合う線材が接触している状態を密巻き、接触していない状態をピッチ巻きといい、接触していない状態とは、長手方向xで隣り合う線材が離間している状態をいう。
【0022】
コイル部材2は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。複数層から構成されているコイル部材2は、例えば、芯材に線材を巻きつけて一層目のコイルを形成し、その一層目のコイルの上にさらに線材を巻きつけて二層目のコイルを形成することにより形成することができる。
【0023】
コイル部材2は金属から構成されていることが好ましく、例えばステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、鉄、タングステン、金、銀、またはこれらの合金から構成することができる。
【0024】
コイル部材2の外周面が樹脂で被覆されていることが好ましい。これにより、コイル部材2の内腔への液体の流入をより一層防止することができる。具体的には、
図3に示すようにコイル部材2に可撓性チューブ3が被覆されていることが好ましい。可撓性チューブ3は、後述する筒状部材5と同様の材料から構成することができる。
【0025】
可撓性チューブ3は、熱収縮性を有していることが好ましい。これにより、コイル部材2に可撓性チューブ3を被せて加熱することで可撓性チューブ3が収縮するため、コイル部材2に可撓性チューブ3を密着させることができる。
【0026】
一対の鉗子部材10は、開閉自在なものであり、コイル部材2よりも遠位側に配置されている。一対の鉗子部材10は、例えば第1鉗子部材11と第2鉗子部材12を有しているものである。各鉗子部材10の近位端は、コイル部材2の遠位端2Aよりも常に遠位側に位置している。
【0027】
一対の鉗子部材10は、互いに回動自在に支持され、回動によって接近、離反することが好ましい。
図1~
図3において、第1鉗子部材11と第2鉗子部材12はそれぞれ対象物を摘まむ把持部Aと、把持部Aよりも近位側に位置し回動支点となる支点部Bと、支点部Bよりも近位側に位置し、接続部材20と連結される連結部Cを有している。
【0028】
把持部Aは、主に対象物を摘まむ部分である。以下では、第1鉗子部材11の把持部Aを第1把持部11A、第2鉗子部材12の把持部Aを第2把持部12Aと称する。第1鉗子部材11の第1把持部11Aと第2鉗子部材12の第2把持部12Aが向かい合うように配置されることが好ましい。把持部Aは、対象物の少なくとも一部を収める中空部を有していることが好ましい。把持部Aは、例えば、刃状、クリップ状、または中空部を有するカップ状に形成することができる。
図2では、把持部Aがカップ状に形成されている例を示している。対象物に食い込みやすくするために、第1把持部11Aと第2把持部12Aには互いに噛み合う歯型がそれぞれ形成されていてもよい。歯型は、把持部Aの全体に形成されていてもよく、
図2~
図3に示すように把持部Aのカップの縁に形成されていてもよい。なお、把持部Aは、鉗子部材10の遠位側に設けられることが好ましい。
【0029】
支点部Bは、鉗子部材10の回動支点となる部分である。回動支点である支点部Bは、コイル部材2の長手方向xに垂直な方向の軸であることが好ましい。
図2において第1鉗子部材11と第2鉗子部材12は、把持部Aよりも近位側が平板状に形成されており、平板状部には支点部Bとして遠位側貫通孔がそれぞれ形成されており、遠位側貫通孔の中心が回動支点となっている。なお、
図2では、第1鉗子部材11の遠位側貫通孔11Bのみが見えている。第1鉗子部材11の遠位側貫通孔11Bと第2鉗子部材12の遠位側貫通孔がコイル部材2の長手方向xおよび鉗子1の開閉方向yの双方に垂直な方向zに重なるように配置されている。2つの遠位側貫通孔に回転軸として軸部材15が挿入されていることにより、第1鉗子部材11と第2鉗子部材12は回動自在に支持される。第1鉗子部材11と第2鉗子部材12は互いに反対回りに回動することが好ましい。
【0030】
軸部材15としては、例えば、カシメ用のリベットや、ネジ、ボルト、ピン等を用いることができる。
図2~
図3では、軸部材15として頭部を有する円柱形状のリベットが第1鉗子部材11の遠位側貫通孔11Bと第2鉗子部材12の遠位側貫通孔に挿入されている。リベットの頭部と反対側をかしめて変形させることにより、第1鉗子部材11と第2鉗子部材12が回動自在に支持されている。
【0031】
把持部Aの長さを確保するためには、支点部Bは鉗子部材10の近位側に位置していることが好ましい。また、鉗子1の操作性を向上させるためには、コイル部材2の長手方向xにおいて、支点部Bは鉗子部材10の中央を含む部分に位置していることが好ましい。
【0032】
鉗子部材10の連結部Cは、接続部材20と連結される部分である。連結部Cは、鉗子部材10に形成されており、接続部材20を係止する貫通孔、または接続部材20と係合される凹部であってもよい。
図2~
図3において、鉗子部材10の平板状部には連結部Cとして近位側貫通孔11C、12Cが形成されている。第1鉗子部材11の近位側貫通孔11Cには、第1接続部材21が係止され、第2鉗子部材12の近位側貫通孔12Cには、第2接続部材22が係止されている。これらの複数の接続部材20(第1接続部材21および第2接続部材22)は撚線ワイヤ30と接続されている。このため、撚線ワイヤ30を遠位側または近位側に移動させると接続部材20も遠位側または近位側に移動し、これにより一対の鉗子部材10が軸部材15を中心に互いに回動するため、鉗子1を開閉することができる。
【0033】
鉗子1の操作を安定して行う観点からは、連結部Cは、鉗子部材10の近位側に位置していることが好ましく、連結部Cは、鉗子部材10の長手方向の長さを四等分割したときの最も近位側の領域に設けられることがより好ましい。
【0034】
鉗子部材10には、連結部Cよりも近位側に接続部材20の一部を収容する溝が設けられていてもよい。これにより、鉗子部材10に対する接続部材20の位置ずれを抑制することができる。
【0035】
鉗子部材10や軸部材15は、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属や、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂から構成することができる。内視鏡用鉗子1を高周波止血鉗子として用いる場合には、組織と接する部分である鉗子部材10の材料はステンレス鋼のような導電性材料を用いる必要がある。内視鏡用鉗子1を通電しない、例えば生検鉗子として用いる場合には、鉗子部材10の材料は導電性材料でなくてもよい。
【0036】
一対の鉗子部材10の近位側にはそれぞれ接続部材20が接続されているため、内視鏡用鉗子1は2つの接続部材20を有している。接続部材20は、鉗子部材10と撚線ワイヤ30をコイル部材2の長手方向xにおいて接続するために設けられる。接続部材20は、単線ワイヤや撚線ワイヤ30等の線状体であってもよく、複数の細長形状のリンク板を組み合わせたリンク機構を有していてもよい。線状体はその一部が曲げられていてもよい。中でも、接続部材20は単線ワイヤであることが好ましい。これにより、接続部材20がコイル部材2と接触したときの摩擦抵抗を低減することができる。
図1~
図3では、第1鉗子部材11に第1接続部材21が接続されており、第2鉗子部材12に第2接続部材22が接続されている。第1接続部材21と第2接続部材22の少なくともいずれか一方が、高周波電源の正極に接続されていてもよい。その場合、人体に貼り付けた対極板を負極に接続することで鉗子部材10に高周波電流を流すことができるため、鉗子1を用いて止血することができる。
【0037】
接続部材20が線状体によって形成されている場合、線状体の外径は内視鏡の鉗子チャンネル径に合わせて設定すればよく、例えば、0.1mm以上3mm以下にすることができる。また、線状体の外径は、撚線ワイヤ30の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、接続部材20がコイル部材2と接触したときの摩擦抵抗をより一層低減することができる。体腔形状に追随するために、コイル部材2の長手方向xにおける接続部材20の長さ、つまり接続部材20の遠位端から近位端までの長さは20cm以下であることが好ましく、15cm以下であることがより好ましく、または1cm以上、あるいは5cm以上とすることも許容される。
【0038】
接続部材20が線状体である場合、線状体は弾性変形しやすいことが好ましく、例えば、SUS303、SUS304等のステンレス鋼、Ni-Ti合金等の金属から構成されていることが好ましい。
【0039】
撚線ワイヤ30は、筒状部材5の内腔に挿通されているものであり、それぞれの接続部材20の近位端部に接続されている接続部31を備えている。撚線ワイヤ30を遠位側または近位側に移動させることによって、接続部材20を介して鉗子1の開閉操作を行うことができる。また、撚線を用いることによって手元側から鉗子部材10側にトルクを伝達しやすくなる。撚線ワイヤ30は、コイル部材2の長手方向xに延在している。
【0040】
撚線ワイヤ30は、複数の金属素線または複数の金属撚線を撚ることで形成することができる。撚線ワイヤ30は、例えば、SUS303、SUS304等のステンレス鋼、炭素鋼等の金属から構成することができる。
【0041】
接続部31において撚線ワイヤ30と2つの接続部材20は、例えば嵌合、ねじ、カシメ等による機械的な固定や圧着、レーザー、超音波や金属ロウ等による溶接、接着剤を用いた接着等の方法で接続することができる。撚線ワイヤ30と接続部材20は直接接続されていてもよく、他の部材を介して接続されていてもよい。
図2~
図3では、撚線ワイヤ30と接続部材20が接続用のパイプ40によって接続されている。例えば、1のパイプ40の内腔に2つの接続部材20の近位端部と撚線ワイヤ30の遠位端部を配置し、パイプ40をかしめることによって撚線ワイヤ30と接続部材20が接続されていてもよい。
【0042】
遠位側または近位側への撚線ワイヤ30の移動操作を行いやすくするために、撚線ワイヤ30の近位端30Bは、コイル部材2の近位端2Bよりも近位側に位置していることが好ましい。
【0043】
筒状部材5は、内腔を備え、コイル部材2の内腔に配置されており、コイル部材2と撚線ワイヤ30が当接することを防ぐものである。筒状部材5は、コイル部材2の長手方向xに沿って延在している。コイル部材2に追随して変形するため、筒状部材5は可撓性を有していることが好ましい。また、形状保持のため、筒状部材5は弾性を有していることが好ましい。筒状部材5は、長手方向と径方向を有している。なお、筒状部材5の長手方向は、コイル部材2の長手方向xと平行であることが好ましい。
【0044】
筒状部材5は、樹脂チューブであることが好ましい。これにより、コイル部材2と筒状部材5の間および筒状部材5と撚線ワイヤ30の間の摩擦抵抗を低減することができる。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。
【0045】
筒状部材5が樹脂チューブである場合、筒状部材5は単層から構成されていてもよく、少なくとも一部が複数層から構成されていてもよい。また、筒状部材5は、複数のチューブを長手方向に継ぎ合わせたものであってもよい。
【0046】
筒状部材5は、合成樹脂から構成されていることが好ましく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂から構成されていることがより好ましい。これにより、コイル部材2と筒状部材5の間および筒状部材5と撚線ワイヤ30の間の摩擦抵抗を低減することができる。
【0047】
筒状部材5は、単線または撚線の金属線材を所定のパターンで配置することによって形成した筒状体の内周壁面または外周壁面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたものでもよい。金属線材が所定のパターンで配置された筒状体としては、金属線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、金属線材が巻回されたコイルが示される。網目構造の種類は特に制限されず、コイルの巻き数や密度も特に制限されない。網目構造やコイルは長軸方向の全体にわたって一定の密度で形成されていてもよく、長軸方向の位置によって異なる密度で形成されていてもよい。なお、金属線材は、コイル部材2と同様の材料から構成することができる。
【0048】
接続部材20と撚線ワイヤ30は接続部31で接続されている。筒状部材5の遠位端5Aは、接続部31よりも遠位側、かつコイル部材2の遠位端2Aよりも近位側に位置している。このように筒状部材5の遠位端5Aと接続部31の位置を設定することにより、コイル部材2と撚線ワイヤ30の当接を防ぐことができるため、鉗子1の開閉操作や回転操作をスムーズに行うことができる。また、コイル部材2が撚線ワイヤ30の接続部31に当接することによる接続部材20と撚線ワイヤ30の接続の解除を防ぐこともできる。さらに、コイル部材2と撚線ワイヤ30の間に筒状部材5が配されるため、体液等の液体がコイル部材2の内腔に入り込みにくくなり、当該液体の手元側までの到達を抑制することができる。上記のように筒状部材5の遠位端5Aとコイル部材2の遠位端2Aの位置を設定することにより、筒状部材5の遠位端部がコイル部材2で覆われるため、鉗子1を使用する際に、高周波による熱等が生じた場合にも筒状部材5への熱の影響を緩和することができる。
【0049】
筒状部材5の遠位端5Aは、接続部31の遠位端31Aよりも遠位側に位置していることが好ましい。これにより、筒状部材5によって接続部31を好適に保護することができる。
【0050】
図示していないが、内視鏡の遠位端部に体腔形状に応じて湾曲する湾曲部が形成されている場合、接続部31は、湾曲部よりも近位側に位置していることが好ましい。これにより、内視鏡の湾曲によって接続部材20と撚線ワイヤ30の接続を外すことができる。鉗子1の遠位端から10cm以内の範囲は、内視鏡の湾曲部に好ましく配される。このため、接続部31の遠位端31Aは、鉗子1の遠位端から10cm近位側の位置よりも近位側に位置していることが好ましい。
【0051】
コイル部材2の長手方向xにおいて、筒状部材5の遠位端5Aからコイル部材2の遠位端2Aまでの長さは、筒状部材5の遠位端5Aから接続部31の遠位端31Aまでの長さよりも長いことが好ましい。鉗子1を使用する際に、高周波による熱等が生じた場合にも筒状部材5への熱の影響を緩和することができる。
【0052】
筒状部材5の外径は、その長手方向において一定であってもよく、長手方向の位置によって異なっていてもよい。例えば、筒状部材5の遠位端部には、筒状部材5の長手方向の中央位置よりも外径が大きくなっている大径部が設けられていてもよい。このように大径部を設けることにより、筒状部材5とコイル部材2の間への液体の流入を防ぐことができる。筒状部材5の大径部の最大内径は、筒状部材5の長手方向の中央位置の外径の1.1倍以上の大きさであることが好ましく、より好ましくは1.15倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上の大きさである。また、コイル部材2と筒状部材5の過度な当接を抑制するために、筒状部材5の大径部の最大内径は、筒状部材5の長手方向の中央位置の外径の1.5倍以下の大きさであることが好ましく、より好ましくは1.45倍以下、さらに好ましくは1.4倍以下の大きさである。例えば、筒状部材5の近位端部には、筒状部材5の長手方向の中央位置よりも外径が小さくなっている小径部が設けられていてもよい。筒状部材5の小径部において、撚線ワイヤ30に筒状部材5を固定する構成としてもよい。
【0053】
筒状部材5の内径は、その長手方向において一定であってもよく、長手方向の位置によって異なっていてもよい。例えば、筒状部材5の遠位端部に、筒状部材5の長手方向の中央位置よりも内径が小さくなっている小径部が設けられていることが好ましい。これにより、筒状部材5の内腔への液体の流入を防ぐことができる。小径部の最小内径は、筒状部材5の長手方向の中央位置の内径の0.9倍以下の大きさであることが好ましく、より好ましくは0.85倍以下、さらに好ましくは0.8倍以下の大きさである。筒状部材5内での撚線ワイヤ30の動きを制限しないために、小径部の最小内径は、筒状部材5の長手方向の中央位置の内径の0.5倍以上の大きさであることが好ましく、より好ましくは0.55倍以上、さらに好ましくは0.6倍以上の大きさである。
【0054】
筒状部材5の遠位端部に、遠位側に向かって先細りになっているテーパー部が設けられていてもよい。テーパー部では、筒状部材5の内径と外径の少なくともいずれか一方が遠位側に向かって小さくなっていればよい。これにより、筒状部材5の内腔への液体の流入を防ぐことができる。テーパー部の最小内径の好ましい値としては、上記の小径部の内径の好ましい値の説明が参照される。
【0055】
筒状部材5は、撚線ワイヤ30と固定されていることが好ましい。これにより、コイル部材2の長手方向xにおいて、筒状部材5の遠位端5Aとコイル部材2の遠位端2Aと撚線ワイヤ30の接続部31の位置関係を保つことができる。この位置関係を維持しやすくするために、筒状部材5は撚線ワイヤ30に対して遠位側および近位側に移動しないことが好ましい。
【0056】
筒状部材5は、撚線ワイヤ30の長手方向の全体で、撚線ワイヤ30と固定されていてもよいが、筒状部材5は、撚線ワイヤ30の長手方向の一部において、撚線ワイヤ30と固定されていることが好ましい。撚線ワイヤ30の自由な回転を可能とするためには、
図4に示すように、筒状部材5の近位端部は、撚線ワイヤ30に固定されていることが好ましく、撚線ワイヤ30の近位端部に固定されていることがより好ましい。
【0057】
筒状部材5の近位端部において撚線ワイヤ30と固定されている部分を近位側固定部5Cとする。近位側固定部5Cよりも遠位側では筒状部材5と撚線ワイヤ30が固定されていないことが好ましい。また、コイル部材2と筒状部材5の近位側固定部5Cとの当接を抑制するために、筒状部材5の近位側固定部5Cは、コイル部材2の近位端2Bよりも近位側に配置されていることが好ましい。
【0058】
筒状部材5と撚線ワイヤ30は、例えば嵌合、ねじ、カシメ等による機械的な固定や圧着、レーザー、超音波や金属ロウ等による溶接、接着剤を用いた接着等の方法で接続または固定することができる。
【0059】
長手方向において筒状部材5の近位端5Bは、撚線ワイヤ30の近位端30Bと一致していてもよく、撚線ワイヤ30の近位端30Bよりも遠位側に位置していてもよい。
【0060】
撚線ワイヤ30に筒状部材5の長手方向の少なくとも一部を被覆するなどして、撚線ワイヤ30に筒状部材5を密着させることもできる。他方、コイル部材2の遠位端側からの液体の流入の抑制効果を高めるためには、コイル部材2と筒状部材5、または筒状部材5と撚線ワイヤ30の間にそれぞれ空間が形成されていることが好ましい。そのような空間を形成するために、筒状部材5の遠位側(より好ましくは筒状部材5の遠位端部)は、コイル部材2とも撚線ワイヤ30とも固定されていないことが好ましい。
【0061】
筒状部材5は、コイル部材2の長手方向xの少なくとも一部と固定されていないことが好ましく、コイル部材2の長手方向xの全体にわたって固定されていないことがより好ましい。これにより、筒状部材5とコイル部材2の間に空間が形成されやすくなり、コイル部材2と筒状部材5の当接を抑制することができる。
【0062】
撚線ワイヤ30の遠位端におけるコイル部材2の長手方向xに垂直な断面において、コイル部材2と筒状部材5の間の空間断面積が、筒状部材5と撚線ワイヤ30の間の空間断面積よりも大きいことが好ましい。これにより、コイル部材2と筒状部材5の当接を抑制することができる。
【0063】
撚線ワイヤ30の遠位端におけるコイル部材2の長手方向xに垂直な断面において、コイル部材2と筒状部材5の間の空間断面積が、筒状部材5と撚線ワイヤ30の間の空間断面積よりも小さいことが好ましい。これにより、筒状部材5の内腔に体液等の液体が流入することを防ぐことができる。
【0064】
コイル部材2と筒状部材5の間の空間断面積は、0.05mm2以上、0.1mm2以上、0.2mm2以上、あるいは0.3mm2以上であってもよく、0.7mm2以下、0.6mm2以下、0.5mm2以下、あるいは0.3mm2以下であることも許容される。また、筒状部材5と撚線ワイヤ30の間の空間断面積は、0.1mm2以上、0.2mm2以上、あるいは0.3mm2以上であってもよく、0.6mm2以下、0.5mm2以下、あるいは0.4mm2以下であることも許容される。
【0065】
筒状部材5の近位端5Bは、コイル部材2の近位端2Bよりも近位側に位置していることが好ましい。これにより、コイル部材2の長手方向xの広範囲でコイル部材2と撚線ワイヤ30の当接を抑制することができる。
【0066】
内視鏡用鉗子1は、コイル部材2の遠位端2Aよりも遠位側に配置され、一対の鉗子部材10を軸部材15とともに回動可能に支持している支持部材41を有していてもよい。支持部材41は、例えば、多角筒形状、円筒形状、長円筒形状等の筒状に形成することができる。支持部材41の近位端部は、コイル部材2の遠位端部に接続される。支持部材41とコイル部材2の接続方法は、接続部材20と撚線ワイヤ30の接続方法の説明を参照することができる。支持部材41は、コイル部材2に直接接続されていてもよく、他の部材を介してコイル部材2に接続されていてもよい。
図3では、支持部材41が接続用のパイプ42を介してコイル部材2に接続されている。
【0067】
支持部材41が筒状に形成されている場合、
図2~
図3に示すように、支持部材41は周方向において対向している第1位置および第2位置を貫通している第1貫通孔41Aが形成されていてもよい。あるいは別の態様として支持部材41の遠位端部から遠位側に延びており互いに対向している2つの突出部にそれぞれ第2貫通孔が設けられていてもよい。その場合、軸部材15が第1貫通孔と第2貫通孔のいずれか一方と、一対の鉗子部材10の2つの遠位側貫通孔に挿通されていることが好ましい。これにより、支持部材41によって一対の鉗子部材10を回動自在に支持することができ、第1鉗子部材11と第2鉗子部材12を回転させても回転軸の軸ブレが抑制される。第1貫通孔または第2貫通孔の貫通方向は、コイル部材2の長手方向xと異なる向きであることが好ましく、第1鉗子部材11と第2鉗子部材12の重なり方向zと平行であることがより好ましい。
【0068】
支持部材41が筒状である場合、支持部材41の周壁には開口41Bが形成されており、開口41Bから鉗子部材10の一部(好ましくは鉗子部材10の近位側)が突出していてもよい。このように開口41Bを設けることにより、鉗子部材10や接続部材20の可動範囲を大きくすることができる。
【0069】
図1および
図4に示すように内視鏡用鉗子1は、さらに、コイル部材2の近位端部に接続されている保護部材45と、コイル部材2よりも近位側に配置されており、一対の鉗子部材10の開閉操作を行う操作部材50とを有し、操作部材50は、保護部材45の近位端部に回転可能に接続されている第1操作部51と、撚線ワイヤ30の近位端部に接続され、第1操作部51に対して遠位側または近位側に相対的に移動する第2操作部52と、を備えていてもよい。操作部材50は、鉗子1の開閉操作を行うときに使用者が把持する部材であり、コイル部材2の近位側に接続されている。
【0070】
鉗子1の開状態では、第2操作部52は第1操作部51の遠位側に配置されている。第2操作部52を第1操作部51に対して近位側に移動させることにより撚線ワイヤ30が近位側に移動し、これにより接続部材20が移動することで一対の鉗子部材10が回動して接近するため、鉗子1が閉状態になる。
【0071】
第1操作部51と第2操作部52が相対移動する限り、操作部材50の構成は特に限定されない。例えば、第1操作部51がハンドル本体であり、第2操作部52がハンドル本体に対してスライドするスライダーであってもよい。第1操作部51や第2操作部52には指掛けが形成されていてもよい。操作部材50の材料としては、例えば、ABSやポリカーボネート等の合成樹脂や、ポリウレタン発泡体等の発泡プラスチックを用いることができる。
【0072】
鉗子1の外径変化を緩やかにするために、保護部材45は、コイル部材2の近位端部の径方向外方に取り付けられていることが好ましい。保護部材45は遠位端と近位端を有し、かつ内腔を有している筒状に形成されていることが好ましい。保護部材45は外径が近位側に向かって大きくなっている部分を有していてもよい。
【0073】
第1操作部51は、保護部材45と接続されていてもよい。これにより、操作部材50(第1操作部51、第2操作部52)から可撓性チューブ3、コイル部材2などで構成される内視鏡用鉗子1の近位部分を補強することができる。第1操作部51は、保護部材45に固定されていてもよく、保護部材45に対して移動可能に接続されていてもよい。例えば、コイル部材2の長手方向xを回転軸として、第1操作部51と保護部材45とを回転可能に接続することができる。これにより、鉗子1の操作性を向上させることができる。
【0074】
保護部材45と第1操作部51との接続部は、撚線ワイヤ30と第2操作部52との接続部よりも遠位側に位置していることが好ましい。これにより、遠位側または近位側への撚線ワイヤ30の移動操作が行いやすくなる。コイル部材2と保護部材45、または撚線ワイヤ30と第2操作部52の接続方法としては、例えば嵌合、ねじ、カシメ等による機械的な固定や圧着、レーザー、超音波や金属ロウ等による溶接、接着剤を用いた接着等を用いることができる。これらの部材は直接接続されていてもよく、他の部材を介して接続されていてもよい。例えば、
図4に示すようにコイル部材2の近位端部に接続されている固定具55を保護部材45に固定することによって、コイル部材2と保護部材45を接続してもよい。
図4では、固定具55がリング状に形成されている例を示したが、固定具55はコイル部材2の外周に取り付けられるものであれば好ましく、例えばコイル部材2の長手方向xに垂直な断面の形状がU字状であってもよい。コイル部材2と固定具55との接続には、コイル部材2と保護部材45と同様の接続方法を用いることができる。例えば、コイル部材2と固定具55の両方が金属から構成されている場合、コイル部材2の近位端部と固定具55の遠位端部とを溶接することによって接続することができる。コイル部材2の一部と固定具55の少なくとも一部を重ね合わせて固定することによって固定強度を高めることができる。固定具55と保護部材45との接続には、コイル部材2と保護部材45と同様の接続方法を用いることができる。
【0075】
操作部材50をコイル部材2に対して回転させたときに、筒状部材5の遠位端5Aでの回転角度が、筒状部材5の近位端5Bでの回転角度よりも小さくてもよい。また、第2操作部52をコイル部材2に対して回転させたときに、筒状部材5の遠位端5Aでの回転角度が、筒状部材5の近位端5Bでの回転角度よりも小さくてもよい。さらに、第2操作部52を第1操作部51に対して回転させたときに、筒状部材5の遠位端5Aが回転しなくてもよい。コイル部材2または撚線ワイヤ30と当接することにより、筒状部材5の遠位端5Aは回転しにくくなる。
【0076】
第1操作部51と第2操作部52とが、一体的にコイル部材2の長手方向xを軸として回転するように構成されていてもよい。すなわち、第1操作部51と第2操作部52は、コイル部材2の長手方向xを回転軸として相対的に回転しないものであってもよい。また、コイル部材2が保護部材45に固定されている場合、第2操作部52を保護部材45に対して回転させたときには、第2操作部52をコイル部材2に対して回転させたときと同様の結果となる。
【0077】
本願は、2019年5月20日に出願された日本国特許出願第2019-094434号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年5月20日に出願された日本国特許出願第2019-094434号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0078】
1:内視鏡用鉗子
2:コイル部材
2A:遠位端
2B:近位端
3:可撓性チューブ
5:筒状部材
5A:遠位端
5B:近位端
5C:近位側固定部
10:鉗子部材
11:第1鉗子部材
11A:第1把持部
11B:遠位側貫通孔
11C:近位側貫通孔
12:第2鉗子部材
12A:第2把持部
12C:近位側貫通孔
15:軸部材
20:接続部材
21:第1接続部材
22:第2接続部材
30:撚線ワイヤ
30B:近位端
31:接続部
31A:遠位端
40:パイプ
41:支持部材
42:パイプ
45:保護部材
50:操作部材
51:第1操作部
52:第2操作部
55:固定具
A:把持部
B:支点部
C:連結部