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特許7417600調整可能な高い寸法安定性を有するフレキシブルスタンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】調整可能な高い寸法安定性を有するフレキシブルスタンプ
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20240111BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20240111BHJP
   B05C 21/00 20060101ALI20240111BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20240111BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20240111BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B29C59/02 B
B05C11/02
B05C21/00
B29C33/38
B32B7/02
H01L21/30 502D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021520121
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2019077606
(87)【国際公開番号】W WO2020074709
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】18200147.9
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517278185
【氏名又は名称】モーフォトニクス ホールディング ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Morphotonics Holding B.V.
【住所又は居所原語表記】De Run 4281, 5503 LM Veldhoven, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マテイス テア ミューレン
(72)【発明者】
【氏名】ブラム ヨハネス ティテュレーア
(72)【発明者】
【氏名】レオン ウィレム フェルトヒュイゼン
(72)【発明者】
【氏名】アドリアニュス ファン エルフェン
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-084900(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008326(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0018420(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/02,21/00
B29C
B32B 7/02
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャリング層(203)としての少なくとも1つの上層を含み、かつレリーフ領域(203B)、強化層(202)、少なくとも2つの保護層(201、205)を含む、フレキシブルスタンプであって、前記強化層(202)が、10ppm/℃以下の熱膨張係数、10GPa~200GPaの範囲のヤング率、300μm未満の層厚および少なくとも前記レリーフ領域(203B)を覆う領域を有する、フレキシブルスタンプにおいて、前記強化層が、前記強化層の縁部および角部の上にまたは周りに延在する少なくともつの層によって囲まれるように、前記少なくとも2つの層によって遮蔽され、ここで第1の層はテクスチャリング層(203)および第1の保護層(201)を含み、且つ第2の層は第2の保護層(205)を含むことを特徴とする、フレキシブルスタンプ。
【請求項2】
前記フレキシブルスタンプが、20ppm/℃以下の熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項3】
前記フレキシブルスタンプが、30cm未満の曲げ半径を有することを特徴とする、請求項1または2記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項4】
前記強化層(202)が、0.5μm~300μmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項5】
前記保護層(201、205)が、10μm~500μmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項6】
前記保護層(201、205)が、0.1~20GPaの範囲のヤング率を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項7】
前記強化層(202)が、ガラス層を含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項8】
前記保護層(201)が、前記テクスチャリング層(203)と前記強化層(202)との間に位置することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項9】
前記保護層(201、205)が、少なくとも前記強化層(202)を覆う領域を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項10】
前記フレキシブルスタンプが、1つ以上の追加の強化層(202)を含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項11】
前記強化層が、前記保護層(201)と前記第2の保護層(205)との間で接着されることを特徴とする、請求項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項12】
前記保護層の材料が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、二軸配向ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、硬化アクリレート材料または硬化エポキシ材料を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明:
本発明は、寸法的に安定なフレキシブルスタンプを用いてインプリンティングラッカーをディスクリート基板上にインプリントし、続いて、インプリントされたラッカーを硬化させて、ディスクリート基板上に追加の機能性テクスチャ加工層をもたらすことによる、ディスプレイ、照明またはソーラーパネルなどのディスクリート基板をテクスチャ加工するためのプロセスおよび材料に関する。この追加の層の機能は、とりわけ、光管理層から疎水性層、装飾的な使用、バイオセンサにおける使用、またはエッチングレジストとしての使用まで様々であり得る。
【0002】
基板上での機能性テクスチャ加工層の使用は、重要な話題である。このような層をうまく使用することで、性能が向上し、コストが削減され、または上記のインプリント基板を含む製品の外観が改善され得る。例えば、拡散層は、ディスプレイに使用されており、より薄いLEDバックライトを使用するという構想を可能にし、ディスプレイを側面から照明する。他の新しい高度技術の可能性には、機能性テクスチャ加工層の太陽電池パネルへの集積による効率の向上や、有機発光ダイオード(OLED)照明パネルへの集積によるより多くの光の抽出がある。
【0003】
機能性テクスチャ加工層は、インプリントリソグラフィを用いて作製され得る。この場合、基板、またはモールド、またはその双方が、ラッカー(樹脂またはレジスト)でコーティングされる。ラッカーを間に挟んでモールドを基板上にプレスした後、テクスチャ加工ラッカーが固相に硬化される。硬化方法は、熱またはUV光照射であり得る。すでに1978年に、この技術は、米国特許第4,128,369号明細書に記載されていた。さらに先駆的な研究は、1995年にChouによって行われた。彼は、剛性スタンプを使用することによって、sub-25nmのテクスチャを、高スループットの大量生産(米国特許第5,772,905号明細書)でまたはStephen Y. Chou、Peter R. Krauss、Preston J. Renstromによる論文(Appl. Phys. Lett. 67 (1995) 3114-3116)で複製できることを実証した。後に、ローラーを使用して、剛性モールドまたは曲げられた薄い金属シートのいずれかに圧力を加えて、テクスチャを複製することが実証された(論文Hua Tan、Andrew Gilbertson、Stephen Y. Chou、J. Vac. Sci. Technol., B 16 (1998) 3926-3928)。
【0004】
多くの研究所や企業が、この作業を続けた結果、様々な技術がもたらされた。
【0005】
半導体産業では、プレート・ツー・プレートインプリンティングは、米国特許第6,334,960号明細書、米国特許出願公開第2004/0065976号明細書および米国特許第8,432,548号明細書に記載されているように、転写プロセス、材料および精密位置決めと組み合わせて剛性スタンプを使用することによって適用される。
【0006】
ロール・ツー・ロールインプリンティング技術では、例えば米国特許第8,027,086号明細書に記載されているように、連続プロセスにおいて箔またはフィルムをテクスチャ加工するために、フレキシブルな基板と組み合わせたテクスチャ加工ローラーが使用されている。
【0007】
最初に述べたプレート・ツー・プレート技術は、均一で平坦なウェハ上に小さいテクスチャ(sub-100nmの解像度)を、高位置精度で、精密にウェハスケールでインプリントするために設計されている。しかしながら、中国特許出願の中国特許出願公開第103235483号明細書に記載されているように、この技術をより大きな領域に拡大することは困難である。
【0008】
ロール・ツー・ロール技術を使用することにより、テクスチャ加工箔が、高い生産速度で連続的に作製され得る。これらの箔は、フレキシブルな用途のための基板として使用することができるか、または剛性基板に積層することができる。しかしながら、後者は、テクスチャ加工箔を、剛性基板または製品に接着するための中間接着層の追加コストを伴う。したがって、第3の新しい技術が開発されている:直接ロール・ツー・プレートインプリンティングである。これにより、機能性テクスチャ加工層は、厚さが数十から数百ミクロンの中間の厚い接着層なしでディスクリート基板上に直接適用される。このような方法では、仏国特許第2,893,610号明細書に例示されているようなテクスチャ加工ローラー、または米国特許第7,824,516号明細書に開示されているような取り外し可能なフレキシブルスタンプのいずれかが使用されている。
【0009】
ロール・ツー・プレート複製プロセスにおけるフレキシブルスタンプの使用には、いくつかの利点がある。材料および製造プロセスは、費用対効果が高い。さらに、フレキシブルスタンプは、容易に交換され得る。また、フレキシブルスタンプには、使用することの欠点もある。最も重要な欠点は、ポリマーベースのフレキシブルスタンプが制限された横方向の寸法安定性を有することである。フレキシブルスタンプは、温度、湿度または張力が装置内でまたは処理中に変化する場合、膨張または収縮することになる。ほとんどの用途では、フレキシブルスタンプは、使用される基板とは異なる膨張係数を有する。基板は、ほとんどの場合、個別でかつ剛性の金属、ポリマー、シリコンまたはガラス板である。したがって、温度または湿度レベルを変化させると、インプリントプロセス後の基板上のインプリントされたテクスチャの横方向寸法が異なる結果となる。この場合、光学特性が、シフトすることになるか、またはテクスチャが、後処理工程で適用される下にある構造またはパターンに対して間違った位置に配置されることになる。多くの用途では、1メートルに対して数ミクロンのように、極めて限定された横方向寸法のばらつきしか許容されない。
【0010】
横方向寸法の変化の影響は、温度を変化させると顕著になるので、本発明は、熱膨張に焦点を当てている。湿度を変化させることにも同様の影響がある。また、ひずみや張力によってフレキシブルスタンプが変形することになる。本明細書の文脈において、熱膨張について言及される場合、湿度膨張または張力による膨張も読み取ることができる。膨張について言及されている場合、収縮も負の膨張の形として読み取ることができる。
【0011】
特許出願の国際公開第2016/128494号には、フレキシブルスタンプの設計が記載されている。これにより、フレキシブルスタンプは、スタンプベースまたはベース層と、その上のテクスチャ加工層とを含む。フレキシブルスタンプは、ベース層およびテクスチャ加工最上層を有する1層または複数層であり得る。ベース層の場合、プラスチック箔および薄い金属シートを含む、いくつかの材料について言及されている。
【0012】
文献の米国特許出願公開第2005/0238967号明細書には、複数のポリマー層を含む、ソフトリソグラフィー用の複合パターニング装置が開示されている。
【0013】
フレキシブルスタンプの寸法安定性を改善するための直接的な解決策は、ベース層として非常に低い熱膨張を有する材料を使用することである。これは、ベース層としてフレキシブル強化ポリカーボネートを使用することであり得る。なお、これら強化材の熱膨張係数は大きく、10ppm/℃を超えている。
【0014】
特許出願の国際公開第2016/128494号には、金属シートの使用が記載されている。特許出願の韓国特許出願公開第2008/0044052号明細書では、プレート・ツー・プレート用途の場合のガラスシートのモールドとしての使用が説明されている。しかしながら、厚いガラスシートおよび金属シートは剛性であり、二つの主要な欠点がある:第一に、ロール・ツー・ロールまたはロール・ツー・プレートのインプリントプロセスで使用されるべきフレキシブルスタンプの要件である、シートをローラー上に案内することができないことである。第二に、剛性スタンプの剥離には、より強い力が必要であることである。
【0015】
ロール・ツー・プレートインプリンティングでは、スタンプがローラー上で搬送されるので、大きな柔軟性が要求される。薄い金属は、十分にフレキシブルであるが、透明ではないので、金属のフレキシブルスタンプを介したUV硬化は不可能である。
【0016】
300μmを超える厚さのガラスには、十分な柔軟性がなく、必要な半径で曲げた場合、破損することになる。300μmを下回る厚さのガラスには、十分な柔軟性があり得るが、非常に破損しやすい。非常に小さな力でも、特にガラスの縁では、亀裂が生じる。ガラスに追加の層を適用すると、ガラスシートの寸法安定性が低下するので好ましくない。したがって、直接的な解決策を、ロール・ツー・プレートインプリンティングに用いることはできない。
【0017】
国際公開第2016/12849号の出願では、より多くの層を追加して堅牢性を強化することができることが述べられている。これをどのようにして行うべきかの方法は、開示されていない。
【0018】
欧州特許出願公開第3028771号明細書では、スタンプと基板との間の正確なオーバレイ整列を得るために、スタンプは、テクスチャが複製される基板と同じ膨張係数を有するべきであると述べられている。一例として、上記の特許出願では、スチール保護層を有するフレキシブルなプレート・ツー・プレートスタンプを使用したスチール基板上のマイクロテクスチャまたはナノテクスチャの複製について説明されている。テクスチャリング層がフレキシブルであるので、スタンプは、フレキシブルスタンプと呼ばれる。この目的は、プレート・ツー・プレート複製プロセスにおける使用のためのものである。鋼スタンプを、ローラー上で搬送することができないので、提案された解決策を、ロール・ツー・プレートプロセスで用いることができない。この特許出願は、異なる用途に対して異なる膨張係数を有するスタンプを用いることの重要性を示している。
【0019】
欧州特許出願公開第3370250号明細書には、第1の樹脂層、第1のガラス基板層および第2の樹脂層を含む3層構造を有し得るフィルムモールドが開示されている。第2の樹脂層は、樹脂または箔、または接着層を用いてガラスに追加された箔であり得る。しかしながら、実際には、ガラス基板層は、複数回使用した後に割れたり、亀裂が生じたりする傾向がある。
【0020】
本発明の根底にある課題は、寸法的に安定なフレキシブルスタンプを提供すること、特に、複数回使用でき、その際にガラス層に亀裂または破壊が発生しない、調整可能な20ppm/℃未満の低い熱膨張係数を有するディスクリート基板のロール・ツー・プレートインプリンティングを可能にするフレキシブルスタンプを提供することである。フレキシブルスタンプの破損は、フレキシブルスタンプの再利用を制限する。したがって、フレキシブルスタンプの再利用を可能にして製造コストを低減するために、調整可能な低膨張係数を有するより堅牢なフレキシブルスタンプの設計が重要である。
【0021】
この課題は、テクスチャリング層(203)としての少なくとも1つの上層を含み、かつレリーフ領域(203B)と、強化層(202)と、保護層(201)とを含む、フレキシブルスタンプであって、強化層(202)が、10ppm/℃以下の熱膨張係数、10GPa~200GPaの範囲のヤング率、300μm未満の層厚および少なくともレリーフ領域(203B)を覆う領域を有する、フレキシブルスタンプにおいて、強化層が、テクスチャリング層(203)、保護層(201)および1つ以上のさらなる層からなる群から選択される少なくとも1つの層によって遮蔽されていることを特徴とする、フレキシブルスタンプによって解決される。
【0022】
上記の少なくとも3層または多層の強化されたフレキシブルスタンプは、熱および湿度の変化ならびに張力の変化によってしばしば引き起こされる横方向寸法の最小変化でディスクリート基板のインプリンティングを可能にする。上記の多層スタンプは、直径300mmの標準的なウェハサイズと比較して大きな面積を有するように製造され得る。上記の多層強化フレキシブルスタンプの熱膨張は、現行の標準的なフレキシブルスタンプの膨張係数よりも著しく低い。標準的なポリカーボネートの熱膨張係数は、65~70ppm/℃である。例えば、強化ポリエチレンテレフタレート(PET)などの強化フレキシブル箔は、20ppm/℃の最小熱膨張を有している。熱膨張係数は、ASTM E228に従って測定され得る。
【表1】
【0023】
さらに、フレキシブルスタンプの強化層は、ASTM E111に従って測定すると、10~200GPaの範囲のヤング率を有する。
【0024】
本発明で提供される多層強化フレキシブルスタンプは、互いに接着された3つ以上の層を含む。したがって、多層強化フレキシブルスタンプは、レリーフ領域を有するテクスチャリング層と、テクスチャリング層としてより低い熱膨張係数を有する1つ以上の強化層と、強化層よりも高い熱膨張係数を有する1つ以上の保護層とを有し得る。これにより、強化層は、少なくともレリーフ領域を覆う領域を有する。
【0025】
本発明の範囲内で、「遮蔽」という用語は、強化層が、例えば、強化層に害を与える可能性のある物体または力に対して保護されることであると理解されるべきである。フレキシブルスタンプにおいて、強化層は、強化層の縁部および/または角部の周りにまたは上に少なくとも部分的に延在する少なくとも1つの層によって遮蔽される。テクスチャリング層(203)、保護層(201)および1つ以上のさらなる層からなる群から選択される1つ以上の層が、強化層の縁部および/または角部の上にまたは周りに少なくとも部分的に延在する場合、この層またはこれらの層は、「遮蔽層」である。
【0026】
強化層は、第1の主面と、第2の主面と、第1の主面および第2の主面に垂直であり、かつ強化層の第1の主面および第2の主面の延長の制限である少なくとも1つの側面とを含む三次元層であり得る。これにより、強化層は、長方形、台形、円形または楕円形などの任意の適切な形状を有し得る。好ましくは、強化層は、第1の主面と、第2の主面と、第1の主面および第2の主面に対して垂直な4つの側面とを含む長方形の形を有する。
【0027】
第1の主面と第2の主面とは、互いに平行であって反対方向を向いていてよい。好ましくは、第1の主面は、レリーフ領域に面しており、第2の主面は、レリーフ領域に面していない。
【0028】
好ましい実施形態では、強化層の角部および/または縁部の少なくとも一部を、テクスチャリング層、保護層または1つ以上のさらなる層からなる群から選択される少なくとも1つの層によって遮蔽するために、少なくとも1つの層は、少なくとも部分的に、強化層の縁部および/または角部の周囲に延在する。
【0029】
さらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの層は、強化層の少なくとも1つの側面および第1の主面および/または第2の主面を遮蔽する。好ましくは、少なくとも1つの層は、少なくとも1つの側面、第1の主面および第2の主面を遮蔽する。
【0030】
好ましい実施形態では、強化層の少なくとも1つの角部、好ましくは少なくとも2つの角部、より好ましくは少なくとも3つの角部、さらにより好ましくは少なくとも4つの角部、最も好ましくはすべての角部が、少なくとも1つの層によって少なくとも部分的に遮蔽される。
【0031】
さらに好ましい実施形態では、強化層の少なくとも1つの縁部、好ましくは少なくとも2つの縁部、より好ましくは少なくとも3つの縁部、さらにより好ましくは少なくとも4つの縁部、最も好ましくはすべての縁部が、少なくとも1つの層によって少なくとも部分的に遮蔽される。
【0032】
また、遮蔽された角部および縁部の数は、同じであることまたは異なることが可能である。好ましくは、強化層のすべての角部および縁部が、少なくとも部分的に遮蔽されている。
【0033】
強化層の角部および/または縁部を少なくとも部分的に遮蔽することにより、強化層の破断傾向が排除または少なくとも低減され、その結果、強化されたフレキシブルスタンプを複数回使用することができると考えられる。
【0034】
好ましい実施形態では、強化層の角部および/または縁部を遮蔽する少なくとも1つの層は、第1の主面および第2の主面を少なくとも部分的に遮蔽する。好ましくは、第1の主面を少なくとも部分的に遮蔽する少なくとも1つの層と、第2の主面を少なくとも部分的に遮蔽する少なくとも1つの層とは、別個の層である。
【0035】
別の好ましい実施形態では、強化層の角部および/または縁部を遮蔽する少なくとも1つの層は、強化層の角部および/または縁部を取り囲む。
【0036】
好ましい実施形態では、強化層の角部および/または縁部を遮蔽する少なくとも1つの層は、第1の主面の領域の少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%にわたって延在する。
【0037】
別の好ましい実施形態では、強化層の角部および/または縁部を少なくとも部分的に遮蔽する少なくとも1つの層は、第2の主面の領域の少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%にわたって延在する。
【0038】
好ましくは、強化層の角部および/または縁部を少なくとも部分的に遮蔽する少なくとも1つの層は、強化層を取り囲む。
【0039】
少なくとも1つの層は、任意の適切な材料で作ることができ、好ましくは、1つ以上のさらなる層は、接着剤、感圧接着剤、例えば限定されないがアクリレート材料、ゾル-ゲル材料、エポキシのような硬化有機層、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む接着層である。
【0040】
好ましくは、少なくとも1つの層は、テクスチャリング層、保護層、接着剤層またはこれらの組み合わせである。
【0041】
別の好ましい実施形態では、フレキシブルスタンプは、強化層の、テクスチャリング層またはレリーフ領域に面する側とは反対側にさらなる保護層を含み、ここで、さらなる保護層の延在長さは、強化層の延在長さよりも小さい。また、さらなる保護層の延在長さは、テクスチャリング層の延在長さよりも大きいことも好ましい。このさらなる保護層は、寸法安定性の調整層として作用することができ、これは、レリーフ領域が位置する領域の寸法安定性を調整することができる。
【0042】
さらなる実施形態では、フレキシブルスタンプは、1つ以上の追加の強化層を含む。
【0043】
本発明は、ここで以下の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明による例示的なインプリンティングプロセスを示す概略図である。
図2A】強化層および保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプのレイアウトを側方から見た概略図である。
図2B】強化層および保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプの別のレイアウトを側方から見た概略図である。
図2C】強化層および保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプのさらに別のレイアウトを側方から見た概略図である。
図2D】強化層および保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプのさらに別のレイアウトを側方から見た概略図である。
図2E】強化層および保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプのさらに別のレイアウトを側方から見た概略図である。
図2F】強化層および保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプのさらに別のレイアウトを側方から見た概略図である。
図3】2つの多層強化フレキシブルスタンプの設計を含む、異なるフレキシブルスタンプのレイアウトに関する熱膨張測定の結果を示す図である。
図4A】強化層の4つの外側領域に保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプを上方から見た概略図である。
図4B】強化層の4つの外側領域に保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプを側方から見た概略図である。
図4C】強化層の4つの外側領域に保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプを側方から見た概略図である。
図4D】強化層の4つの外側領域に保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプを側方から見た概略図である。
図5】強化層の2つの外側領域に保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプを上方から見た概略図である。
図6A】強化層の、テクスチャリング層またはレリーフ領域に面する側とは反対側にさらなる保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプを上方から見た概略図である。
図6B】強化層の、テクスチャリング層またはレリーフ領域に面する側とは反対側にさらなる保護層を有する多層強化フレキシブルスタンプを側方から見た概略図である。
【0045】
ここで図1を参照すると、本発明による概略的なインプリント装置およびプロセスが、多層強化フレキシブルスタンプを用いて示されている。図1は、例示的なロール・ツー・プレートインプリントプロセスにおける多層強化フレキシブルスタンプの可能な使用例である。多層強化フレキシブルスタンプは、異なるロール・ツー・プレートおよびロール・ツー・ロール複製プロセスにおいて、またはさらにプレート・ツー・プレート複製プロセスにおいて使用され得ることに留意されたい。
【0046】
図1に示されるインプリントセットアップにおいて、機能的インプリント層103Bは、基板102の上に適用される。基板102は、任意の材料であり得る;好ましくは、基板102は、ガラス、金属シート、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETP)、二軸配向ポリエチレンテレフタレート(BOPET)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むか、またはこれらで作られる。基板102は、例えば、接着促進層および/または透明導電体層(例えば、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛またはフッ素ドープ酸化スズ)および/または金属層(例えば銀、金、アルミニウム)など、表面の上に被覆された1つ以上の追加の層を担持し得る。図1において、基板102は、成形可能なインプリントラッカー103Aで被覆され、フレキシブルスタンプ104でインプリントされ、硬化後、基板102の上に追加される複製されたインプリントテクスチャ103Bをもたらす。基板は、案内および支持のためにプラットフォーム101上に配置される。このプラットフォーム101は、1つまたは複数のローラー、固定テーブル、移動テーブルまたは十分な支持を提供する任意の他のプラットフォームであり得る。図1において、モールドは、フレキシブルスタンプ104である。フレキシブルスタンプ104の外面上のテクスチャ105Bを基板102上に転写するために、基板102上の必要な固化されたインプリントテクスチャ103Bの逆テクスチャを有するインプリントテクスチャ105Bが、成形可能なインプリントラッカー103Aを介してディスクリート基板102上にプレスされる。図1に示されるように、成形可能なラッカー103Aが、ディスクリート基板上に堆積され得るか、または成形可能なインプリントラッカーが、フレキシブルスタンプ104上に堆積され得ることに留意されたい。あるいは成形可能なインプリントラッカー103Aが、フレキシブルスタンプ104およびディスクリート基板102の双方の上に堆積され得る。堆積の方法は、とりわけ、分配、インクジェット印刷、スロットダイコーティング、グラビア印刷、またはスクリーン印刷であり得る。フレキシブルスタンプ104を用いて成形可能なインプリントラッカー103Aをインプリントした後、成形可能なインプリントラッカー103Aが、熱的にまたはUV光を用いて固化される。図1において、成形可能なラッカーは、UV光源107AからのUV光107Bを使用して固化される。UV光源107Aは、透明なフレキシブルスタンプ104の上方に配置され得る。あるいはディスクリート基板102が透明である場合、UV光源107Aは、プラットフォーム101内に一体化された透明なディスクリート基板102の下方、または透明なプラットフォーム101の下方のいずれかに配置され得る。インプリントテクスチャ103Bの固化後、フレキシブルスタンプ104は、ディスクリート基板102上の固化されたインプリントテクスチャ103Bから分離され、その結果、その上の固化されたインプリントテクスチャ103Bを有するディスクリート基板102は、フレキシブルスタンプ104の形状のテンプレートから離間される。フレキシブルスタンプ104は、フロントクランプ106Aおよびバッククランプ106B内に取り付けられる。フロントクランプ106Aは、フレキシブルスタンプ104の先縁部に位置する。バッククランプ106Bは、フレキシブルスタンプ104の末縁部に位置する。クランプ106Aおよび/またはクランプ106Bは、取り付け開口部を有し得るプラスチックまたは金属バーであり得る。しかしながら、クランプ106Aおよび/またはクランプ106Bは、フレキシブルスタンプ104をその位置に保持するテープまたは他の手段であってもよい。
【0047】
フレキシブルスタンプ104は、支持フレキシブルスタンプベース105Aと、「インプリントテクスチャ」または「インプリントパターン」とも呼ばれるパターン化された外面105Bとを有する。このインプリントテクスチャは、当業者にはレリーフパターンとして知られている開口部および隆起部によって形成される機能領域を含む。このレリーフパターン化された外面105Bは、基板102上のインプリントテクスチャ103Bの負の(または逆の)テクスチャである。フレキシブルスタンプベース105Aおよびパターン化された外面105Bは、例えば、これに限定されるものではないが、ミリング、メッキまたはホットエンボス加工によって作製される薄い金属シートまたはプラスチックシートのような1つの同じ材料で作製され得る。薄い金属シートは、透明でなく、柔軟性が低く、より高価であるという欠点を有する。大面積のロール・ツー・プレート複製の場合、薄い金属シートは、大きくなければならず、これは実際的かつコスト的に困難である。プラスチックシートの場合、熱膨張は、プラスチックシートの膨張係数によって決まることになる。プラスチックベースの材料について説明したように、これは正確な複製用途には大きすぎる。
【0048】
本発明による多層強化フレキシブルスタンプは、開口部および隆起部を含むパターン化された外面105Bを備える。曲げることができるようにするために、強化フレキシブルスタンプは、好ましくは、0.1GPa~100GPaの範囲、好ましくは5~50GPaの間の範囲のヤング率を示す。好ましくは、本発明の多層強化フレキシブルスタンプは、10μm~2000μmの範囲、より好ましくは50μm~500μmの範囲の厚さを有する。層厚およびヤング率に関する仕様は、共に、好ましくは30cm未満、より好ましくは15cm未満の曲げ半径を、好ましくは50cmの幅にわたって1000N未満の印加力で生じさせる。これによって、この力は、図1に示すように、ローラーの4分の1のあたりでフレキシブルスタンプを引っ張るためにフレキシブルスタンプ106Aの前面に加えられる力として定義される。
【0049】
この特許出願で提案されているように、強化層を使用することにより、湿度または張力の増加による熱膨張およびフレキシブルスタンプの膨張を低減することができる。この低減は、請求項1に記載の特徴によって達成される。図2では、多層強化フレキシブルスタンプの異なるレイアウトが示されている。
【0050】
図2は、テクスチャリング層203と組み合わせた強化層202および保護層201を使用する多層強化フレキシブルスタンプの異なるレイアウトを示す。大面積のフレキシブル保護層201は、取り扱いが容易なフレキシブル特性を提供するために使用される。さらに、フレキシブルスタンプの構成に応じて、保護層201は、強化層の主面および/または第2の表面および/または側面を保護することができる。この保護層201は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETP)箔、ポリカーボネート(PC)箔、ポリエチレンナフタレート(PEN)箔、二軸配向ポリエチレンテレフタレート(BOPET)または別のポリマーで作製された箔であり得るが、これらに限定されない。これは、また、硬化アクリレート材料または硬化エポキシ材料であってもよい。保護層201のために提案された材料は、500μm未満、好ましくは300μm未満の層厚と併せて、0.1~10GPaのヤング率を有する。強化層202は、保護層201の上に堆積される。これは、0.5~100μmの厚さの、例えばSiOx層またはグラフェン層であり得るがこれに限定されない、層であり得る。強化層202の堆積技術は、とりわけ、スパッタリング、スピンコーティングまたはPE-CVDであり得る。また、強化層202として、薄い金属シート、薄いウェハまたは薄いガラスシートも使用され得る。この強化層202は、フレキシブルであり、かつ300μm未満、好ましくは200μm未満の層厚と併せて、10~200GPaの典型的なヤング率を有するべきである。中間の薄いフレキシブルシートの場合、この薄いシートは、保護層201に接着されるべきである。これは、例えば、双方の層の移行部でまたは保護層201と強化層202との双方の間において上部に配置されたテープのような任意の取り付け材料であり得る接着層204を使用して、あるいは接着剤、感圧接着剤または例えば限定されないがアクリレート材料、ゾルゲル材料、エポキシのような、硬化有機層であり得る中間接着層を使用して接着され得る。これにより、接着層204が強化層202の角部および/または縁部の周りに少なくとも部分的に延在しているので、接着層204は、強化層202の角部および/または縁部を遮蔽することができる。テクスチャリング層203は、基板上に必要に応じて逆テクスチャを有するレリーフ領域203Bを有する。逆テクスチャ203の材料は、有機層であり、例えば、アクリレート材料、ゾルゲル材料またはエポキシであるが、これらに限定されない。構成に応じて、テクスチャリング層203は、強化層202の第1の主面および/または第2の主面および/または少なくとも1つの側面を保護する。
【0051】
図2Aでは、強化層202は、強化層202の角部および/または縁部が少なくとも部分的に遮蔽されるように、テクスチャリング層203に埋め込まれる。強化層202の角部および/または縁部を遮蔽するために、図2Bに示すように、強化層202が、保護層201に埋め込まれてもよい。強化層202は、保護層201とテクスチャリング層203との間に位置することができ、レリーフ領域203Bは、必要に応じて基板上に逆テクスチャを有する。しかしながら、強化層202は、図2Dに示すように、保護層201の反対側にあってもよい。図2Cに示す接着層204は、テクスチャリング層203とは異なる材料であり得る。図2Cおよび図2Dの場合、接着層204は、強化層202の角部および/または縁部を遮蔽することによって、強化層202を保護する。接着層204は、図2Eに示すように、テクスチャリング層203と同じ材料であってもよい。図2Eに示すような特定の場合において、テクスチャリング層203のモノマーまたはポリマー材料は、強化層202のための保護層としても機能し、特に、強化層202の角部および/または縁部は、テクスチャリング層203が強化層202を取り囲む場合、テクスチャリング層203によって遮蔽される。図2Fは、強化層が2つの保護層201と205との間で保護される別のフレキシブルスタンプの設計を示す。双方の保護層201および205の材料および/または材料の厚さは、同じであっても異なっていてもよい。また、保護層201および保護層205の双方の面積は、同じであっても異なっていてもよく、この場合、最も短い保護層は、強化層202を覆って保護するために、少なくとも強化層202と同じ面積を有するべきである。また、異なる強化層202の間で組み合わせを行うこともできることに留意されたい。例えば、保護層201の一方の側に堆積された薄い強化層202と、保護層201の他方の側に接着された第2のより厚い強化層とがある。接着するために、接着層204が使用され、これは角部および/または縁部が遮蔽されるように、強化層202を取り囲む。
【0052】
上記の多層化かつ強化されたフレキシブルスタンプが実施化された。異なる構成を有するフレキシブルスタンプが作製されている。図3は、測定データを示す。
【0053】
図3に示すように、ポリカーボネート箔の上にレリーフ領域(203B)を有する標準的なフレキシブルスタンプの熱膨張は大きすぎる。70ppm/℃の値は、好ましい最大20ppm/℃の膨張を十分に上回る。測定値は、理論値と良く一致した。250μmの保護ポリカーボネート層の上にレリーフ領域を有し、前述の250μmの保護ポリカーボネート層と第2の250μmのポリカーボネート保護層との間に囲まれた強化層として100μmの薄いガラスシートを有する多層強化フレキシブルスタンプ1(MSFS1)の場合、図2Fに示すような設計で、膨張は、15ppm/℃に低減される。この膨張は、100μmの薄いガラスシートが2つの125μmのポリカーボネート層の間に囲まれる場合、さらに低減され得る。この場合、膨張は、8ppm/℃に低減する。図3は、多層強化フレキシブルスタンプの膨張が、5~20ppm/℃の間の範囲で調整され得ることを示す。これにより、強化フレキシブルスタンプの膨張は、異なる基板材料に適合するように調整され得る。最小曲げ半径は、図3に示す多層強化フレキシブルスタンプ2(MSFS2)について求められた。15mmの最小曲げ半径が、認められた。これは、ガラスの製造業者が指定した90mmの曲げ半径より小さい。独自の試験では、100μmの裸ガラスの35mmの曲げ半径に達した。これにより、多層スタックの使用がフレキシブルスタンプの安定性を保護し、改善することが確認された。
【0054】
類似の材料を使用して、異なるスタンプレイアウトが可能である。薄いガラスシートを使用すると、外側の縁部および角部が、最も脆弱である。フレキシブルスタンプの取り扱い、搬送または使用中に、縁部のタップによりガラスに亀裂が生じることがある。その結果、フレキシブルスタンプは、これ以上使用できなくなることもある。フレキシブルスタンプの再利用性をさらに改善するために、安定した内側の複製領域と外側の保護領域とを組み合わせたフレックススタンプの設計が提案されている。
【0055】
図4Aには、外側の保護領域301を有する熱安定性の複製領域の例が示されている。この場合、保護層領域301を有する保護層201が使用され、この保護層201は、内側の開口領域303を有する。この内側の開口領域303は、最も好適には長方形であるが、円形または他の任意の形状であってもよい。強化層領域302は、内側の開口領域303よりも大きいサイズを有する。これにより、強化層領域302を有する強化層202が外側の保護領域301の上に取り付けられる取り付け重なり領域304が形成される。強化層領域302を外側の保護領域301の上に取り付けるために、任意の安定な接着層材料204が、例えば、接着剤、UV-アクリレートまたは感圧接着層などのテープまたは中間接着層として使用され得る。この接着層204は、強化層202の側面および/または角部を遮蔽することによって強化層202を保護する。強化層202の上に、レリーフ領域203Bを有するテクスチャリング層203が加えられる。好ましくは、レリーフ領域203Bは、内側の開口領域303内に完全に配置される。図4Bは、図4Aで説明されたような、外側の保護領域を有する強化フレキシブルスタンプのテクスチャ加工領域を通る概略断面図を示す。最も安全な取り扱いのために、外側の保護領域301は、図4Cに示すように、保護層201および保護層205の2つの層を含み、これらは、強化層202の下および上に配置される。保護層201および205の材料および/または材料の厚さは、同じであっても異なっていてもよい。また、接着層204Aおよび204Bは、同じ材料であっても、異なる取り付け材料であってもよい。これにより、接着層204Aおよび204Bは、別個の層であるが、接着層204Aおよび204Bが、強化層202の角部および/または縁部を取り囲む1つの層であることも可能である(図示せず)。保護層201の異なる厚さおよび保護層201の異なる材料を選択することによって、多層強化フレキシブルスタンプの熱膨張を、基板の熱膨張に一致するように調整することができる。図4Dは、保護層205のみが内側の開口領域303を有する多層強化フレキシブルスタンプのレイアウトを示す。保護層201は、内側の開口領域303を有さず、強化層を覆う。接着層204Aおよび204Bは、別個の層であるが、接着層204Aおよび204Bが、強化層202の角部および/または縁部を取り囲む1つの層であることも可能である(図示せず)。
【0056】
図5には、外側の保護領域301を有する強化フレキシブルスタンプの別のレイアウトが示されている。この図5は、図4に示すレイアウトを改良したものであり、内側の開口領域303が、保護層202の全幅にわたって配置されている。この場合、保護層201は、強化層202の縁部および最も脆弱な2つの側面のみを保護する。好ましくは、保護層によって保護される強化層202の2つの側面は、インプリント方向に関して開始領域302Aおよび終了領域302Bにある。開始領域302Aは、最も脆弱であり、インプリントプロセス内で基板と最初に接触する。内側の開口領域303は、保護層201を有していない。好ましくは、レリーフ領域203Bは、内側の開口領域303内に完全に配置される。これにより、レリーフ領域203の高い寸法安定性がもたらされる。レリーフ領域の寸法安定性は、図6Aおよび図6Bに示すように、強化層202の、テクスチャリング層またはレリーフ領域に面する側とは反対側にさらなる保護層601を追加することによって、調整することができる。この場合、さらなる保護層601は、レリーフ領域203と同様の中心位置を有し、レリーフ領域203と比較してサイズが大きくてもよい。フレキシブルスタンプのスタック内で寸法安定性の異なる追加の層を使用することによって、フレキシブルスタンプのスタック全体の寸法安定性を調整することができる。外側の保護領域301Aおよび301Bの幅は、強化層領域の幅と同じ最小幅を有する。これにより、強化層のすべての角部が保護される。図4Cおよび4Dに示すように、同じレイアウトを有する、または強化層202を完全に覆う、第2の保護層と組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B