(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】室内空気からアルデヒド揮発性有機化合物を除去するフィルター
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20240111BHJP
A61L 9/013 20060101ALI20240111BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20240111BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61L9/01 H
A61L9/013
A61L9/014
A61L9/00 C
A61L9/01 K
(21)【出願番号】P 2021522140
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2019068116
(87)【国際公開番号】W WO2020008041
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-04-09
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522248696
【氏名又は名称】エアー テック グループ,エスエルユー
【氏名又は名称原語表記】AIR TECH GROUP, SLU
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】ヴィララッサラ リョレンス ハウメ
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ エレウ リュイス
(72)【発明者】
【氏名】トレンチ ロカ リュイス
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0052113(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107321328(CN,A)
【文献】特開平11-226100(JP,A)
【文献】特開2013-040054(JP,A)
【文献】特開2015-196130(JP,A)
【文献】特開2000-279802(JP,A)
【文献】国際公開第2015/015671(WO,A1)
【文献】特表2017-506945(JP,A)
【文献】特開2011-200857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 - 9/22
B01D 53/02 - 53/12
F24F 3/00 - 3/167
F24F 8/00 - 8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気中のアルデヒド揮発性化合物(以下「アルデヒド」と称する)を取り除く空気清浄機用のフィルターにおいて、
前記フィルターは、触媒剤としての固体状態のスルホン酸と天然ポリフェノールとの混合物を含有する複数の繊維状要素を有し、前記フィルター内の天然ポリフェノールと前記室内空気中のアルデヒドとが不可逆反応して、アルデヒドを吸収し、
前記天然ポリフェノールは、レスベラトロール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキノン、又はその組み合わせからなる群から選択され、
前記混合物は、前記複数の繊維状要素内に含有されることにより、微細粉末形状でスポンジ状メッシュを形成し、
前記複数の繊維状要素は、長く細い又は薄いストリップを含む糸状の無機繊維、合成又は半合成繊維、天然繊維とそれらの混合物のいずれかを含み、
前記無機繊維は、グラス・ウール、ロック・ウール、セラミック・ウールとそれらの混合物からなる群から選択され、
前記合成又は半合成繊維は、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、それらの重合体とそれらの混合物からなる群から選択され
前記天然繊維は、羊毛、絹、毛髪、コラーゲン、ケラチン、セルロース、リグニンとそれらの混合物からなる群から選択される
ことを特徴とする空気清浄機用のフィルター。
【請求項2】
前記天然ポリフェノールは、前記室内空気中に存在するホルムアルデヒドと不可逆反応して、ホルムアルデヒドを取り除く
ことを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項3】
前記スルホン酸は、アレーンスルホン酸(Ar-SO
3H)、アルカンスルホン酸(R-SO
3H)、微細粉末形態のスルホン酸樹脂、酸性形態のチモール・ブルー、トリフェニルメタンスルホン酸染料、酸性形態の食用色素、長鎖アルキル水素硫酸塩(RO-SO
3H)又はアルキル水素硫酸塩(ArO-SO
3H)からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項4】
前記複数の繊維状要素と天然ポリフェノールとスルホン酸の重量比は、
2.0-8.0:1.0-2.0:0.2-2.0である
ことを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項5】
前記複数の繊維状要素と天然ポリフェノールとスルホン酸の重量比は、
2.0:1.0:0.2である
ことを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項6】
前記天然ポリフェノールは、レスベラトロールである
ことを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項7】
前記フィルターは、アルデヒド、アミン揮発性化合物(以下「アミン」と称する)、アンモニアを除去し、
前記アルデヒドは、アセトアルデヒド又はエタナール、グリオキサール又はエタンダイオル、プロピオンアルデヒド又はプロパナール、アクロレイン又はプロペナール、プロパルギルアルデヒド又はプロピナール、メチルグリオキサール又は2-オキソプロパナール、グリオキシル酸とそれらのアルキルエステル、ブチルアルデヒド又はブタナール、イソブチルアルデヒド又は2-メチルプロパナール、メチルアクロレイン又は2-メチルプロペナール、クロトンアルデヒド又は2-ブテナールの異性体、バレルアルデヒド又はペンタナール、イソバレルアルデヒド又は3-メチルブタナールからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項2記載のフィルター。
【請求項8】
室内空気中のアルデヒドと、アミンと、アンモニアを除去する方法において、
前記室内空気の空気流をフィルターに通過させ、
前記フィルターは、触媒剤としての固体状態のスルホン酸と天然ポリフェノールとの混合物を含有する複数の繊維状要素を有し、
前記混合物は、前記複数の繊維状要素内に含有されることにより、微細粉末形状でスポンジ状メッシュを形成し、
前記アルデヒドは、前記天然ポリフェノールと反応し、ポリマーをポリフェノールアルデヒド樹脂の形態で生成し、
前記アミンとアンモニア及びイミンとアミナールが、前記フィルターのスポンジ状メッシュに捕捉され、前記イミンとアミナールは、天然ポリフェノールとアルデヒドとの反応により生じたものであり、
前記天然ポリフェノールは、レスベラトロール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキノン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記複数の繊維状要素は、長く細い又は薄いストリップを含む糸状の無機繊維、合成又は半合成繊維、天然繊維とそれらの混合物のいずれかを含み、
前記無機繊維は、グラス・ウール、ロック・ウール、セラミック・ウールとそれらの混合物からなる群から選択され、
前記合成又は半合成繊維は、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、それらの重合体とそれらの混合物からなる群から選択され
前記天然繊維は、羊毛、絹、毛髪、コラーゲン、ケラチン、セルロース、リグニンとそれらの混合物からなる群から選択される
ことを特徴とする
室内空気中のアルデヒドと、アミンと、アンモニアを除去する方法。
【請求項9】
前記スルホン酸は、アレーンスルホン酸(Ar-SO
3H)、アルカンスルホン酸(R-SO
3H)、微細粉末形態のスルホン酸樹脂、酸性形態のチモール・ブルー、トリフェニルメタンスルホン酸染料、酸性形態の食用色素、長鎖アルキル水素硫酸塩(RO-SO
3H)又はアルキル水素硫酸塩(ArO-SO
3H)からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド又はエタナール、グリオキサール又はエタンダイオル、プロピオンアルデヒド又はプロパナール、アクロレイン又はプロペナール、プロパルギルアルデヒド又はプロピナール、メチルグリオキサール又は2-オキソプロパナール、グリオキシル酸とそれらのアルキルエステル、ブチルアルデヒド又はブタナール、イソブチルアルデヒド又は2-メチルプロパナール、メチルアクロレイン又は2-メチルプロペナール、クロトンアルデヒド又は2-ブテナールの異性体、バレルアルデヒド又はペンタナール、イソバレルアルデヒド又は3-メチルブタナールからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記フィルターは、前記フィルターに含まれる天然ポリフェノールとホルムアルデヒドとのスルホン酸触媒反応が飽和レベルに達した時点で、取り除かれるか交換される
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記フィルターは、前記スルホン酸の形態で使用されるチモール・ブルーの変色又は食用色素の変色の時点で、取り除かれるか交換される
ことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
室内空気中のアルデヒドを取り除く空気清浄用材料において、
前記空気清浄用材料は、触媒剤としての固体状態のスルホン酸と天然ポリフェノールとの混合物を含有する複数の繊維状要素を構成し、
前記混合物は、前記複数の繊維状要素内に含有されることにより、微細粉末形状でスポンジ状メッシュを形成し、
前記スルホン酸は、アレーンスルホン酸(Ar-SO
3H)、アルカンスルホン酸(R-SO
3H)、微細粉末形態のスルホン酸樹脂、酸性形態のチモール・ブルー、トリフェニルメタンスルホン酸染料、酸性形態の食用色素、長鎖アルキル水素硫酸塩(RO-SO
3H)又はアルキル水素硫酸塩(ArO-SO
3H)からなる群から選択され、
前記混合物は、室内空気中のアルデヒドと不可逆反応して、アルデヒドを吸収し、
前記天然ポリフェノールは、レスベラトロール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキノン、又はその組み合わせからなる群から選択され、
前記複数の繊維状要素は、長く細い又は薄いストリップを含む糸状の無機繊維、合成又は半合成繊維、天然繊維とそれらの混合物のいずれかを含み、
前記無機繊維は、グラス・ウール、ロック・ウール、セラミック・ウールとそれらの混合物からなる群から選択され、
前記合成又は半合成繊維は、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、それらの重合体とそれらの混合物からなる群から選択され
前記天然繊維は、羊毛、絹、毛髪、コラーゲン、ケラチン、セルロース、リグニンとそれらの混合物からなる群から選択される
ことを特徴とする空気清浄用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気フィルターに関し、特に空気清浄機用フィルターに関する。空気フィルターは、汚染物質を室内空気から除去する又は減少させ、住居、病院、娯楽施設、作業空間で使用されるのに適したものである。このフィルターは、フィラメント状要素と天然のポリフェノールと触媒剤を有する。
【背景技術】
【0002】
空気フィルターは、アルデヒド揮発性有機化合物を濾過するフィルターであり、室内空気から濾過すべき主なアルデヒド揮発性有機化合物は、ホルムアルデヒド(HCHO,メタナール)である。
【0003】
更にここに開示される空気フィルターは、アミン揮発性有機化合物とアンモニア、更にはイミンとアミナール(アルデヒドとの反応結果として発生する)も室内空気から濾過する。
【0004】
本明細書全体を通して、用語「繊維状要素」は、細長い材料製の細い又は薄いストリップ(例:テープ)を含む糸状物品又は繊維を意味し、粒子の支持体又は担体として機能する。
【文献】US2016/228811
【文献】WO2017/114687
【文献】US2013/052113
【文献】CN107321328
【文献】特開平11-226100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、様々な空気フィルターが市販されている。これらの空気フィルターは、アルデヒド官能基(主にホルムアルデヒド)を含む揮発性有機化合物を濾過する。その一例は特許文献1に開示されている。同文献においては、フィルターは、流体アミンからなる媒体を濾過する固体アミンと粒状固体支持材料(シリカ、粘土、アルミナ、カーボン、ポリマー、ファイバー又はそれらの組み合わせを含む)をフィルター・シート上に配置して構成され、フィルター内でアミンと空気中のホルムアルデヒド(このフィルター媒体を貫流する)との相互作用を提供する。
【0006】
特許文献2は、多層空気フィルターを開示する。その第1層は触媒剤を含み、第2層はアミンを含み、第3層(選択事項)は水を吸収し放出する材料(吸湿性材料)製である。
【0007】
ポリフェノール(例:レゾシノール(resorcinol))とホルムアルデヒド水溶液(例:ホルモル(formol)又はホルマリン(formalin)として知られる)とは、塩基性条件下で加熱することにより反応することが、高分子化学の始まり以来知られている。フェノール-ホルムアルデヒド(phenol-formaldehyde:PF)ポリマー(一般にフェノール樹脂として知られている)と、レゾシノール-ホルムアルデヒド(resorcinol-formaldehyde)樹脂(レゾール(resole)として知られている)は、多くの工業生成物に見られ、段階的成長重合によって生成される。この公知の反応は、適切にかつ革新的に開発されており、ホルムアルデヒド・ガスをppm濃度で捕捉(トラップ)することができる。
【0008】
本発明の目的は、市販されている空気フィルターに関するある問題点を解決することである。これは、固体状態にあるポリフェノール物質及び触媒剤の両方を、繊維状要素に添加し、その後、このポリフェノール物質及び触媒剤が、フィルターを通過する空気流中に存在するアルデヒド揮発性有機化合物(主としてホルムアルデヒドである)及びアミン揮発性有機化合物と反応し、吸収作用により存在するアルデヒド揮発性有機化合物及びアミン揮発性有機化合物の量を大幅に減少させ、室内空気の品質を改善している。
【0009】
特許文献3は、空気を清浄する方法とそれに使用される空気フィルターを開示する。この空気洗浄機は、光触媒剤作用コーティングを有する繊維状構造物のフィルターと、空気をこのフィルターに強制貫通させるファン/タービンとを有し、揮発性有機化合物を除去する。この空気洗浄機は、更に回収媒体も有する。回収媒体の一例は、スカベンジャー媒体を含む。その一例はフェノール化合物(例:レゾシノール)である。
【0010】
特許文献4は、揮発性有機化合物の吸収剤とこれを得る方法を開示する。この揮発性有機化合物の吸収剤は、ポリビニル・アルコール、水、植物性ポリフェノール、カオリン(kaolin)、酸性液体、消泡剤を含む。
【0011】
特許文献5は、ホルムアルデヒド吸収剤を含むフィルターを開示する。ホルムアルデヒド吸収剤は、植物性ポリフェノール、特に茶葉由来のポリフェノール例えば、フラバン-3-オル(flavan-3-ol)又はその誘導体である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は室内空気の質を改善することである。これは、アルデヒド揮発性有機化合物(ある実施例ではアミン揮発性有機化合物とアンモニア)を、室内空気から還元し、濾過し、洗浄することにより、行う。特に、室内汚染物質であるホルムアルデヒド、他のアルデヒド揮発性有機化合物により引き起こされる臭気、アンモニア、アミン揮発性有機化合物を、減らし、濾過する。
【0013】
ホルムアルデヒドは、反応性が高く、毒性、アレルギー性、発がん性がある。それらは、あるレベルで室内空気中に存在する時は、重大な安全上の問題となり複数の健康問題を引き起こす。0.1ppm以上の濃度のホルムアルデヒドは、目を刺激し、その空気を吸い込むと頭痛、喉の刺激、息切れ(SOB)を引き起こす。室内空気内にホルムアルデヒドが5ppm以上の濃度で存在すると死に至ることがある。
【0014】
ホルムアルデヒドとその誘導体は、これらの健康リスクの全てをもたらすが、以下に記載する様々な用途(i)~(iii)で広く使用されている。
(i)樹脂と接着剤。これらは、フローリング、カーペット、家具の製造に際し使用される。特に工業生産された樹脂と接着剤が、建築物に塗布されると、微量のホルムアルデヒドが室内空気内に徐々に放出されることがある。このプロセスは、樹脂と接着剤が熱に曝されると加速される。例えば、熱源(放熱器)に曝されたり、日が当たるかその近くに置かれた場合に加速される。
(ii)消毒剤。これは、病院の手術室と他の病室又はクリーンルームで主に使用される水溶液中に存在する場合、存在する細菌、真菌等の大部分を殺菌する。
(iii)保存使用液、これは病院、博物館、生物学研究室内の生体器官用のホルマリン、ホルモルとして知られている。
【0015】
本発明は、空気清浄機用のフィルターを開示する。このフィルターは、室内空気から、アルデヒド揮発性有機化合物(ある実施例ではアミン揮発性有機化合物)を取り除く。空気フィルターは、繊維状要素を支持部材として有するケーシングで構成されている。前記支持部材内に、微細粉末形状で天然のポリフェノールと触媒剤の混合物を含有し、スポンジ状メッシュを形成する。
【0016】
空気フィルターは吸収フィルターとして動作する。スポンジ状メッシュに添加される天然のポリフェノールは、室内空気内のアルデヒド揮発性有機化合物と不可逆反応をし、ポリマーを空気フィルター内にポリフェノール-アルデヒド樹脂の形態で生成する。この不可逆反応により、空気フィルターは室内空気内にある微少のホルムアルデヒドを急速に吸収し、他のアルデヒド揮発性有機化合物も(急速ではないが)吸収する。後者は、ホルムアルデヒドより、反応性、揮発性、毒性が低い。
【0017】
空気フィルターのある実施例においては、スポンジ状メッシュに添加されるスルホン酸成分の比率を上げることにより、このフィルターは、大量のアミン揮発性有機化合物とアンモニアを吸収でき、更に、アルデヒドとアミンとの反応から生じるイミン(imine)とアミナール(aminal)も吸収できる。
【0018】
繊維状要素は、天然のポリフェノールと触媒剤の微細粉末の混合物の支持部材として使用されるが、無機繊維、合成又は半合成繊維、天然繊維、それらの混合物からなる群から選択される。
【0019】
無機繊維は、グラス・ウール、ロック・ウール、セラミック・ウールとそれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
合成又は半合成繊維は、ポリエステル、ポリアミド(例:ナイロン)、ポリプロピレン、それらの重合体とそれらの混合物からなる群から選択される。
天然繊維は、羊毛、絹、毛髪、コラーゲン、ケラチン、セルロース、リグニンとそれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
天然のポリフェノールは、微細粉末の形態でフィルターの支持部材に添加される。この天然のポリフェノールは、
*レスベラトロール(resveratrol)(3,4',5-トリヒドロキシスティルベン(trihydroxystilbene)、赤ブドウ、赤ワインに非常に多く含まれる天然生成物)、
*レゾシノール(resorcinol)(1,3-ベンゼンエディオール(benzenediol))、
*ピロガロール(pyrogallol)(1,2,3-ベンゼンエトリオール(benzenetriol))、
*フロログルシノール(phloroglucinol)(1,3,5-ベンゼンエトリオール(benzenetriol)、
*ヒドロキノン(hydroquinone)(1,4-ベンゼンエディオール(benzenediol))、
又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
フィルター・カートリッジ内のフィルターの支持部材に含まれるポリフェノールは、室内空気中に存在するアルデヒド揮発性有機化合物を除去する為に選択される。このアルデヒド揮発性有機化合物は、アセトアルデヒド又はエタナール(acetaldehyde or ethanal)、グリオキサール又はエタンダイオル(glyoxal or ethanedial)、プロピオンアルデヒド又はプロパナール( propionaldehyde or propanal)、アクロレイン又はプロペナール(acrolein or propenal)、プロパルギルアルデヒド又はプロピナール(propargyl aldehyde or propynal)、メチルグリオキサール又は2-オキソプロパナール(methylglyoxal or 2-oxopropanal)、グリオキシル酸とそれらのアルキルエステル(glyoxylic acid and their alkyl esters)、ブチルアルデヒド又はブタナール(butyraldehyde or butanal)、イソブチルアルデヒド又は2-メチルプロパナール(isobutyraldehyde or 2-methylpropanal)、メチルアクロレイン又は2-メチルプロペナール(methylacrolein or 2-methylpropenal)、両方ともクロトンアルデヒド又は2-ブテナール(crotonaldehyde or 2-butenal)の異性体、バレルアルデヒド又はペンタナール(valeraldehyde or pentanal)、とイソバレルアルデヒド又は3-メチルブタナール(isovaleraldehyde or 3-methylbutanal)、特にホルムアルデヒド(HCHO、メタナール)を含む。長鎖アルデヒド(longer-chain aldehydes)(即ち上記したものより高分子のアルデヒド)は、化粧品業界で使用されており、ゆっくり吸収され、芳香があり、それらの捕捉は必要とはされていない。
【0023】
これらのアルデヒド揮発性有機化合物は、オレフィンとオゾンとの反応結果として室内空気を汚染する。オレフィンの一例は、石油産業からの不飽和炭化水素、複数のエッセンシャル・オイル、空気新鮮化材として使用される天然香料がある。オゾンの一例は、外部から生成されるか、レーザー・プリンター、コピー機、イオン性芳香剤、アーク溶接機、モーター・ブラシ等の内部から生成される。エタノール蒸気(アルコール飲料からの)と他の短鎖第一アルコール(香水からの)の大気酸化も、アルデヒド揮発性有機化合物を生成することがある。
【0024】
一実施例では、好ましいポリフェノールはレスベラトロール(resveratrol)である。他の実施例においては、「ポリフェノール」とはレスベラトロールとレゾシノール(resorcinol)の混合物であり、その組成比率は、レスベラトロールが10%-90%の間で、レゾシノールが90%-10%の間である
【0025】
繊維状要素から形成されるフィルターの支持部材に含まれるポリフェノールに加えて、支持部材は、酸触媒剤、好ましくは固体状態のスルホン酸が微細粉末形態で添加される。フィルター内で使用されるスルホン酸は、
*アレーンスルホン酸(arenesulphonic acid)(Ar-SO3H)、その一例:p-トルエンスルホン酸(toluenesulphonic acid) (TsOH・H2O 又は TsOH)、ベンゼンスルホン酸(benzenesulphonic acid)(BsOH):
*アルカンスルホン酸(alkanesulphonic acid)(R-SO3H)、その一例:10-カンファースルホン酸(camphorsulphonic acid)(CSA):
*スルホン酸樹脂(sulphonic acid resin)、その一例:強酸イオン交換樹脂(strong-acid ion-exchange resins)、スルホン酸ポリマー(sulphonic acid polymer)、微細粉末として添加されるもの:
*酸性形態のチモール・ブルー(thymol blue)とトリフェニルメタンスルホン酸染料(triphenylmethane-sulfonic dyes):
*酸性形態の食用色素、その一例:アウレラ・レッド( Allura Red)、E129又はポンセウ(Ponceau)4R、E124:
*長鎖アルキル水素硫酸塩(long-chain alkyl hydrogen sulphate)、アルキル水素硫酸塩、RO-SO3H又はArO-SO3H:それぞれは酸性形態の一般的な洗剤、界面活性剤:
又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
本発明は、室内空気中に存在する汚染物質が空気フィルターと反応する方法を開示する。室内空気からアルデヒド揮発性有機化合物(一実施例においてはアミン揮発性有機化合物とアンモニア)を取り除く方法は、空気フィルターを通過する汚染された室内空気の空気流を確立し、アルデヒド揮発性有機化合物を、繊維状要素上に支持されている触媒剤内にある粉末状の天然のポリフェノール(好ましくはレスベラトロール、レゾシノールとレスベラトロールの混合物)と触媒剤(好ましくは個体スルホン酸)の存在下で反応させる。前記反応を介して、ポリマー(ポリフェノール-アルデヒド樹脂)を生成し、これがフィルター内に捕捉される。空気フィルターが、アミン揮発性有機化合物、アンモニア、アルデヒド揮発性有機化合物との反応に起因して発生するイミン(imine)、アミナール(aminal)を濾過する実施例においては、これらは、粉末形態で添加されたスルホン酸の存在により、フィルター内に捕らえられる。
【0027】
フィルター内で起こる反応は、室内空気内に存在するアルデヒド揮発性有機化合物に起因するが、ある時点で飽和レベルに達し、その為効率的ではなくなる。それ故、本発明の方法は追加的なステップを更に有する。この追加ステップでは、空気フィルターは、視覚的に示される即ちフィルターのスポンジ状メッシュの色が変わる飽和レベルに達した時点で、取り除かれ交換される。ある実施例の視覚的指示は、飽和レベルに応じて、白色から赤褐色に変わる。
【0028】
空気フィルターの一実施例においては、この指示は、ホルムアルデヒド及び関連揮発性有機化合物とフィルター内のポリフェノール又はその混合物とのスルホン酸の触媒剤反応の結果を示す。
【0029】
空気フィルターの他の実施例においては、指示材は、チモール・ブルーとトリフェニルメタンスルホン酸染料、食用色素(全てスルホン酸の形態で使用される)の色の変化の結果を示す。指示材の変色が起こるのは、ホルムアルデヒドと、フィルター内のポリフェノール又はポリフェノール混合物との反応が完了した時、即ちスルホン酸基が、アンモニア、アミン揮発性有機化合物、又はアルデヒドとアンモニア又はアミンの誘導体により、中和した時である。
【発明の詳細な説明】
【0030】
本発明の一実施例による試験管は、空気清浄機で使用される空気フィルターを模擬する。この空気フィルターは、繊維状要素と、ポリフェノールと、固体状態のスルホン酸の混合物(その重量比は、2.0:1.0:0.2)からなるスポンジ状メッシュを含む。この為、同一材料を同一比率で含む小型のスポンジ状メッシュを、封止された試験管に挿入し、ppmレベルでより高濃度のホルムアルデヒドを含む空気の流れを、試験管内のスポンジ状メッシュに通過させた。
【0031】
これは、空気フィルター内の前記組成のスポンジ状メッシュを模擬する。HCHOを吸収する能力に関し、空気フィルターの有効性をテストする為に採用された条件は、直径1.0cm厚さ(高さ)4.0cmの空気カラム(試験管)に、120mgのガラス・ウールと、30mgのレスベラトロールと、30mgのレゾシノール(60mgのポリフェノール)と、12mgのTsOH・H2Oを充填したことである。これは、重量比2.0:1.0:0.2で空気フィルターのスポンジ状メッシュを模擬した。
【0032】
汚染された空気を、空気カラム内に挿入されたスポンジ状メッシュを通過させた。その流量は2.0L/分で、流速は0.42m/秒であった。空気カラムを通過する汚染された空気のホルムアルデヒド濃度は、4.360ppmであった。
【0033】
この条件で、カラム内のフィルター(スポンジ状メッシュ)により吸収又は捕捉されるHCHOの量は、最初の100-150分の間が最も効果的である。このフィルターは、そこを通過する空気流中にあるHCHOの約80%を吸収する。しかしこの最大の吸収率に達すると、吸収されるHCHOの量に関し示すスロープ(傾斜)は徐々に緩やかになる。これが意味することは、空気フィルターを模擬しているカラム内のスポンジ状メッシュ(空気フィルター)は飽和し、HCHOを効率良く吸収できなくなっていることである。
【0034】
一実施例において、フィルター・カートリッジのケーシングは、長さが40cm、幅が40cm、高さが5cmである。ただしこの大きさには限定されない。その結果、フィルター・カートリッジは、あらゆる種類の空気清浄機に挿入できる。フィルター・カートリッジの寸法を変更することにより、繊維状要素のポリフェノールとスルホン酸の重量比を変えて、空気フィルターが最適な濾過条件で動作できるようになる。一般的にスポンジ状メッシュを構成する成分を様々に変えられる。上記の材料を2.0-8.0:1.0-2.0:0.2-2.0の重量比で使用する。好ましい実施例においては、繊維状要素、ポリフェノール、スルホン酸は2.0:1.0:0.2の重量比で使われる。
【0035】
様々なテストを通して以下が検証された。本発明の空気フィルターは、アミンやNH3誘導体により引き起こされる悪臭(おしっこの臭い)の除去に極めて有効である。この為、レゾシノールの有害性に抗して使用されるスルホン酸の比率を上げることが好ましい。80%レスベラトロール、10%レゾシノール、10%スルホン剤の典型的な組成を考慮に入れると、レゾシノールを2%にレスベラトロールを78%に維持した時は、スルホン剤の濃度は20%まで上げることができる。これにより、アルデヒド揮発性有機化合物を有効に濾過し、同時に悪臭を除去できる空気フィルターを提供できる。
【0036】
レスベラトロールの有害性に抗して使用されるスルホン酸の比率を上げることも好ましい。80%レゾシノール、10%レスベラトロール、10%スルホン剤の典型的な組成を考慮に入れると、レゾシノールを40%にレスベラトロールを30%に維持した時は、スルホン剤の濃度は30%まで上げることができる。これにより、アルデヒド揮発性有機化合物を有効に濾過し、同時に悪臭を除去できる空気フィルターを提供できる。
【0037】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。「少なくとも1つ或いは複数」、「と/又は」は、それらの内の1つに限定されない。例えば「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は「A」、「B」、「C」単独のみならず「A,B或いはB,C更には又A,B,C」のように複数のものを含んでもよい。「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は、A,B,C単独のみならずA,Bの組合せA,B,Cの組合せでもよい。「A,Bと/又はC」は、A,B,C単独のみならず、A,Bの2つ、或いはA,B,Cの全部を含んでもよい。本明細書において「Aを含む」「Aを有する」は、A以外のものを含んでもよい。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。