IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アリス・コンポジッツ・インコーポレイテッドの特許一覧

特許7417607圧縮成形された繊維複合部品および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】圧縮成形された繊維複合部品および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/42 20060101AFI20240111BHJP
   B29C 70/20 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B29C70/42
B29C70/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021530960
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 US2019063285
(87)【国際公開番号】W WO2020123145
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】62/773,871
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/695,955
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521016379
【氏名又は名称】アリス・コンポジッツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イーサン・エスコウィッツ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・デヴィッドソン
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-143007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/42
B29C 70/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮成形によって繊維複合部品を製造するための方法であって、
型キャビティ内での配置の前に、第1の繊維束ベースプリフォームおよび第2の繊維束ベースプリフォームを連結することによってプリフォームチャージを形成するステップであって、
(a)前記第1のプリフォームが、第1のマトリックス材料を含浸させた連続的な共配向繊維の単一の束であり、前記第1のプリフォームは実質的に円形または実質的に卵形の断面と、第1の形状を有する外部アーキテクチャとを有し、
(b)前記第2のプリフォームが、第2のマトリックス材料を含浸させた連続的な共配向繊維の単一の束であり、前記第2のプリフォームは実質的に円形または実質的に卵形の断面と、第2の形状を有する外部アーキテクチャとを有する、ステップと、
前記プリフォームチャージを前記型キャビティ内に配置するステップと、
前記プリフォームチャージを圧縮成形し、それにより前記第1のプリフォームおよび前記第2のプリフォームを前記型キャビティにおいて熱および圧力を加えることによって統合するステップと、
前記型キャビティにおいて、統合された前記プリフォームチャージを冷却することによって繊維複合部品を得るステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記第1の形状および前記第2の形状は、個別に選択され、非直線状、平面状、非平面状、開形、および閉形からなる群からの特性によって定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の形状は、第1の屈曲部と第2の屈曲部とを含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の屈曲部と前記第2の屈曲部は、互いに対して面外であり、したがって、前記形状を有する前記第1のプリフォームは非平面状と特徴付けられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の屈曲部と前記第2の屈曲部は互いに直交する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のプリフォームおよび前記第2のプリフォームは、繊維タイプ、繊維体積分率、及び繊維分布からなる群から選択された少なくとも1つの特性が互いに異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の形状は前記第2の形状とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維複合部品は、
)第1の部分を有する第1の区間であって、前記第1の区間の前記第1の部分は第1の繊維束ベースプリフォームから得られた繊維を備える第1の区間と
(b)第2の部分を有する第2の区間であって、前記第2の区間の前記第2の部分は第2の繊維束ベースプリフォームから得られた繊維を備える第2の区間と
を含み、
(c)前記第1の区間と前記第2の区間は連続しており
前記プリフォームチャージを形成するステップは、それからの繊維が前記第1の体積領域を占有するように前記第1のプリフォームを配置するステップと、それからの繊維が前記第2の体積領域を占有するように前記第2のプリフォームを配置するステップとをさらに含み、
前記配置は、前記繊維複合部品に前記第1の区間で生じる応力および前記第2の区間で生じる応力にそれぞれ耐える能力を与えるように選択され、前記応力は方向および大きさの少なくとも一方が互いに異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の繊維束ベースプリフォーム及び前記第2の繊維束ベースプリフォームは、それぞれ、繊維タイプ、繊維体積分率、繊維分布、及びポリマー樹脂組成によって特徴づけられ、
前記第1の繊維束ベースプリフォーム及び前記第2の繊維束ベースプリフォームは、複数の前記特徴、前記少なくとも1つの異なる特徴、及び/又は前記プリフォームチャージに配置された前記第1の繊維束ベースプリフォーム及び前記第2の繊維束ベースプリフォームの繊維配向、の少なくとも1つに関して異なり、前記第1の区間と前記第2の区間との間で、前記繊維複合部品に異なる特性もしくは特性の異なる量を浸透させるために選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記特性は、応力に耐える能力、剛性、導電性、及び熱伝導性からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
圧縮成形によって繊維複合部品を製造するための方法であって、
レイアップを形成するステップであって、前記レイアップが、第1の繊維束ベースプリフォームと第2の繊維束ベースプリフォームとを含み、
(a)前記第1のプリフォームが剛性を有し、前記第1のプリフォームは実質的に円形または実質的に卵形の断面と、第1の形状によって特徴づけられる外部アーキテクチャとを有し、前記第1の形状は非平面状であり、互いに対して面外である2つの屈曲部を有し、前記第1のプリフォームは熱可塑性樹脂マトリックスを含浸させた第1の複数の連続繊維を備え、
(b)前記第2のプリフォームが剛性を有し、前記第2のプリフォームは実質的に円形または実質的に卵形の断面と、第2の形状によって特徴づけられる外部アーキテクチャとを有し、熱可塑性樹脂マトリックスを含浸させた第2の複数の連続繊維を備え、
(c)前記第1のプリフォームおよび前記第2のプリフォームのいずれもテープ、シート、または積層体の形状ではない、ステップと、
前記レイアップを型キャビティ内で圧縮成形し、それにより前記第1のプリフォームと前記第2のプリフォームとを熱および圧力を加えることによって統合するステップと、
前記型キャビティ内で前記統合された第1のプリフォームと第2のプリフォームとを冷却し、それによって繊維複合部品を得るステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連事例の記載
本事例は、2018年11月30日に出願された米国特許出願第62/773,871号、2017年6月2日に出願された米国特許出願第15/612,720号、および2017年12月12日に出願された米国特許出願第15/840,826号の優先権を主張し、これらの出願はすべて、参照により本明細書に組み込まれている。本明細書と参照により本明細書に組み込まれている事例のうちの1つまたは複数との間に文言の矛盾または不一致がある場合、本明細書の文言が優先され、本明細書の特許請求の範囲の解釈において優先される。
【0002】
本発明は、繊維複合部品に関する。
【背景技術】
【0003】
繊維強化複合部品を製造するために様々な製造方法が開発されている。現行の方法は時間がかかり、特定の材料の使用に限定され、ならびに/または部品の形状によって制約を受ける場合がある。そのような製造方法は、繊維強化複合部品を大量に効率的に製造するのには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願第16/600,131号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、繊維強化複合部品(「繊維複合体」)と、従来技術のコストおよび欠点のうちのいくつかを解消する、繊維強化複合部品を製造する方法とを提供する。
【0006】
例示的な実施形態によれば、繊維複合体は、比較的剛性の高い繊維束ベースプリフォームから形成される。そのようなプリフォームはトウプレグから形成され、すなわち、プリフォームはトウプレグの切り取られた部分または切り取られ形作られた部分である。トウプレグ、したがってプリフォームは、ポリマー樹脂などのマトリックス材料を含浸させた数千本の繊維を含む。
【0007】
最も基本的な実施形態では、プリフォームは単純な直線状形状(すなわち、ロッド)を有する。いくつかの代替実施形態では、プリフォームは、限定はしないが、特定の型および型から製造される部品に適切な、非直線状形状、閉形形状、平面状形状、非平面状(3D)形状、および多層形状を含む様々な比較的複雑な形状のうちの任意の1つの形状を有してもよい。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、プリフォームは、雌型半部の型キャビティにおいて特定の配置および姿勢(レイアップ)に構成される。次いで、型が閉じられ、圧縮成形技法(すなわち、圧力および熱を加える)を介して部品が製造される。
【0009】
いくつかの実施形態では、プリフォームは、圧縮成形プロセスの間型キャビティにおいてプリフォームの形状および位置を実質的な程度維持する。したがって、任意の所与のプリフォームにおける繊維およびマトリックスを製造中の部品の所望の体積領域に送ることができる。本教示によれば、各プリフォームを、限定はしないが、マトリックス材料(たとえば、それぞれに異なる熱可塑性樹脂、それぞれに異なる充填剤など)、繊維タイプ(たとえば、炭素繊維対ガラスなど)、および繊維分布を含む様々な特性のうちの任意の1つまたは複数の特性において異ならせることができる。さらに、本明細書で開示された繊維束ベースプリフォームは、リボンまたはシートでは不可能な状態に曲げることができる。これらの特徴を考慮して、繊維束ベースプリフォームをレイアップの構成要素として使用すると、部品内の任意の体積位置における繊維配向を制御する前例のない能力が実現される。したがって、本発明は、局部応力問題への対処、部品のそれぞれに異なる領域へのそれぞれに異なる程度の剛性の付与、または部品の各領域への導電性および/もしくは熱伝導性または電気絶縁性および/もしくは断熱性の選択的な付与など、部品の任意の領域の特徴/属性/特性をこれまで不可能だった程度に制御するのを可能にする。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、繊維複合部品を製造するための方法であって、
レイアップを形成するステップであって、レイアップが、第1の繊維束ベースプリフォームと第2の繊維束ベースプリフォームとを含み、
(a)第1のプリフォームが、剛性を有し、第1の形状を有し、第1のマトリックス材料を含浸させた第1の複数の連続的な共配向繊維を備え、
(b)第2のプリフォームが、剛性を有し、第2の形状を有し、第2のマトリックス材料を含浸させた第2の複数の連続的な共配向繊維を備える、ステップと、
第1のプリフォームと第2のプリフォームを型キャビティにおいて熱および圧力を加えることによって統合するステップと、
統合された第1のプリフォームと第2のプリフォームを冷却し、それによって繊維複合部品を得るステップとを含む方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、繊維複合部品を製造するための方法であって、
レイアップを形成するステップであって、レイアップが、第1の繊維束ベースプリフォームと第2の繊維束ベースプリフォームとを含み、
(a)第1のプリフォームが、剛性を有し、非平面状である第1の形状を有し、第1の形状が、互いに対して面外である2つの屈曲部を含み、第1のプリフォームが、熱可塑性樹脂マトリックスを含浸させた第1の複数の連続繊維を備え、
(b)第2のプリフォームが、剛性を有し、第2の形状を有し、熱可塑性樹脂マトリックスを含浸させた第2の複数の連続繊維を備える、ステップと、
第1のプリフォームと第2のプリフォームを型キャビティにおいて熱および圧力を加えることによって統合するステップと、
統合された第1のプリフォームと第2のプリフォームを冷却し、それによって繊維複合部品を得るステップとを含む方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、繊維複合部品であって、
繊維複合部品の第1の体積領域における第1の区間であって、
(a)第1の複数の共配向繊維を備える第1の部分、
(b)第2の複数の共配向繊維を備える第2の部分を有する第1の区間と、
繊維複合部品の第2の体積領域における第2の区間であって、第1の区間と第2の区間が互いに連続しており、第2の区間が、
(a)第1の複数の共配向繊維を備える第1の部分、
(b)第3の複数の共配向繊維を備える第2の部分を有し、第2の複数の共配向繊維と第3の複数の共配向繊維が、繊維タイプ、繊維体積分率、および繊維分布からなる群から選択された特性において互いに異なる、第2の区間とを備える繊維複合部品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の実施形態に関連して使用されるトウプレグを示す図である。
図1B】直線状プリフォームである、図1Aのトウプレグのセグメントを示す図である。
図2A図1Bのプリフォームの第1の実施形態の長手方向断面を示す図である。
図2B図1Bのプリフォームの第1の実施形態の横断面を示す図である。
図3A図1Bのプリフォームの第2の実施形態の長手方向断面を示す図である。
図3B図1Bのプリフォームの第2の実施形態の横断面を示す図である。
図4】本発明による開形平面状非直線状プリフォームの実施形態を示す図である。
図5】本発明による閉形平面状非直線状プリフォームの第1の実施形態を示す図である。
図6】本発明による閉形平面状非直線状プリフォームの第2の実施形態を示す図である。
図7】本発明による閉形平面状非直線状プリフォームの第3の実施形態を示す図である。
図8】本発明による開形非平面状非直線状プリフォームの実施形態を示す図である。
図9A】本教示によるプリフォームのレイアップの第1の実施形態を示す図である。
図9B】本教示によるプリフォームのレイアップの第2の実施形態を示す図である。
図9C図9Aまたは図9Bのレイアップから形成された部品を示す図である。
図10A図9Bのレイアップのセグメントを示す図である。
図10B図10Aに示すレイアップのセグメントから形成された部品の一領域の長手方向断面を示す図である。
図10C図10Bの軸A-Aに沿った横断面を示す図である。
図10D図10Bの軸B-Bに沿った横断面を示す図である。
図10E図9Cの部品の各区間および各部分を示す、図9Cの部品の分解図である。
図11A】本教示に従って製造することができる、複雑なオープンフレームワーク部品の実施形態を示す図である。
図11B】本教示に従って製造することができる、複雑なオープンフレームワーク部品の実施形態を示す図である。
図11C】本教示に従って製造することができる、複雑なオープンフレームワーク部品の実施形態を示す図である。
図11D】本教示に従って製造することができる、複雑なオープンフレームワーク部品の実施形態を示す図である。
図11E】本教示に従って製造することができる、複雑なオープンフレームワーク部品の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の用語について、本開示および添付の特許請求の範囲において使用する場合の定義を以下に示す。
- 「繊維複合体」は、2つの一次構成要素、マトリックス材料および繊維材料を含む材料である。繊維材料(繊維)は一般に、それが付与する任意の他の特性に加えて複合体の強度をもたらす。マトリックスは、一般にポリマー樹脂から形成され、繊維を囲み支持してその相対位置を維持し、繊維の摩擦および環境攻撃を防止する。繊維と樹脂の組合せは相乗的であり、得られる特性は、特定の繊維、樹脂、および繊維体積分率に応じて異なる。
- 「繊維」は、繊維材料の個々の糸を意味する。繊維は、長さがその直径よりもずっと大きい。
- 「マトリックス材料」は、ポリマー樹脂、一般に熱可塑性またはBステージ(すなわち、部分的に硬化された)熱硬化性樹脂である。マトリックス材料はセラミックとすることもできる。
- 「共配向繊維」は、同じ方向に配向された複数の繊維を指す。
- 「トウ」は、「繊維の束」を意味し、それらの用語は、本明細書では、他に特に規定がなければ置き換え可能に使用される。トウは一般に、千単位で数えられる繊維に利用可能であり、1Kトウ、3Kトウ、6Kトウなどと言う。本明細書では、「フィラメント」という用語も「トウ」と同義に使用され得る。
- 「プリプレグ」は、樹脂を含浸させた繊維を意味する。
- 「トウプレグ」または「プリプレグトウ」は、樹脂を含浸させた繊維束(すなわち、トウ)を意味する。
- 「プリフォーム」または「フィラメントサブユニット」は、トウ/トウプレグの切り取られた部分または切り取られ形作られた部分を意味し、繊維束の断面は、アスペクト比(幅:厚さ)が約0.25から約6の間である。本明細書では、プリフォームおよびフィラメントサブユニットという用語は、切り取られ/形作られた「テープ」を明示的に除外し、このような「テープ」はアスペクト比(上記のような断面)が約10から約30の間である。プリフォームおよびフィラメントサブユニットという用語はまた、繊維のシートおよび積層体を明示的に除外する。
- 「連続繊維」は、プリフォーム/フィラメントサブユニットの一方の端部から他方の端部まで延びる繊維を指す。いくつかの文脈(すなわち、出願人の他の特許出願のうちのいくつか)では、連続繊維/連続プリフォームは、繊維/束が配置された型の主要要素の長さにほぼ等しい長さを有する繊維/プリフォームを指す。連続繊維は、一般に当技術分野で使用されるときの「チョップドファイバ」または「カットファイバ」とは異なる。チョップドファイバまたはカットファイバは、型および最終部品における無作為の配向を有し、型/部品のどの要素の長さとも所定の関係を有さない。本教示による繊維束ベースプリフォームは、チョップドファイバまたはカットファイバを含まない。
- 「連続マトリックス」は、(たとえば、プリフォーム、部品、部品の指定された領域の)断面全体にわたって均質なマトリックスを指す。
- 「ラティス」は、空隙と交差し空隙を囲む直線状または湾曲したセグメントからなるフレームワークを指す。
- 「約」または「実質的に」は、記載された値または公称値に対して±20%を意味する。
明細書では文脈において追加の定義が与えられる。
【0015】
例以外で、または別段に指示がない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される原料の数量を表すすべての数は、すべての例において「約」という用語によって修正されると理解すべきである。したがって、特段の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、当業者によって理解されるように取得すべき所望の特性に応じて異なる場合がある近似値であると理解される。一般に、このことは変動量が少なくとも±20%であることを意味する。
【0016】
さらに、本明細書に記載された任意の数値範囲がそれに包含されるすべての小範囲を含むことが意図されることを理解されたい。たとえば、「1から10」の範囲は、約1の上記の最小値から約10の上記の最大値の間(最小値および最大値を含む)のすべての小範囲を含み、すなわち、最小値が約1以上であり、最大値が約10以下であることが意図される。
【0017】
図1Aはトウプレグ100を示す。トウプレグは、一般に千単位で設けられ(たとえば、1k、10k、24kなど)、ポリマー樹脂マトリックスを含浸させた多数の個々の繊維を含む。トウプレグは、たとえば、円形、卵形、三葉形、多角形などを含む様々な断面形状のうちのいずれかを有することができる。
【0018】
トウプレグは、テキサス州アービングのCelanese Corporationなどのトウプレグの供給業者から購入することができ、または引き抜き成形、押し出し、もしくは共押し出しなどの公知のプロセスを介して現場で形成することができる。引き抜き成形プロセスでは、繊維「トウ」の形をした複数の繊維がダイから引き抜かれ、圧力および温度を加えた状態でポリマー(一般に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)樹脂を含浸させる。このプロセスは、上記で指摘したように、連続マトリックス材料内に埋め込まれた複数の繊維を形成する。
【0019】
次に、図1Bを参照するとわかるように、トウプレグ100のセグメントを取り除くことによって繊維束ベースプリフォーム102が形成される。図1Bでは、プリフォーム102は短い直線状セグメントであり、これは、本発明の実施形態が対象とするプリフォームの最も基本的な実施形態である。本明細書でさらに詳細に後述するように、他の実施形態において、プリフォームは、製造中の部品について適宜、非直線状形状、閉形形状、3D形状、および多層形状を含む、より複雑な形状を有してもよい。そのようなプリフォームは、実際は、本教示による繊維強化部品を製造するための「ビルディングブロック」である。
【0020】
プリフォームは、長さが一般にその幅よりも実質的に大きく、その厚さよりも実質的に大きい(なお、図1Bは正確な縮尺ではない)。プリフォームの長さは、製造中の部品の属性に基づいて決定される。プリフォームの長さに最も影響を与えるのは部品のサイズである。一般に、より長いプリフォームはより長い連続長さの繊維を含むことができるので、任意の所与の用途でできるだけ長いプリフォームを使用することが望ましい。所与の部品について、一般により長い連続繊維はより長さが短い繊維よりも部品の強度が高くなる。したがって、非常に小さい部品では、プリフォームは長さが約5ミリメートルである場合があり、一方、大きい部品(たとえば、航空機の翼、車両のボディパネルなど)については、プリフォームは長さが数メートルに及ぶことがある。簡単に言えば、プリフォームの長さは用途に特有の長さである。
【0021】
プリフォームは、製造中の部品について適宜任意の適切な断面寸法(すなわち、幅および高さ/厚さ)を有することができる。いくつかの実施形態では、プリフォームの幅および高さ(厚さ)はほぼ等しい(たとえば、円形断面、方形断面など)。プリフォームの断面形状は、本発明の実施形態では、上述のトウプレグの断面形状によって決定される。プリフォームの形状、高さ、および幅はその長さに沿って実質的に一定とすることができ、または異ならせることができる。
【0022】
型キャビティにおけるロボットによる配置などについてプリフォームは容易に操作されることが望ましい。したがって、プリフォームを形成する材料は、使用温度(一般には約20℃~30℃)で容易に取り扱うことができる状態(たとえば、中実である、剛性が高い、など)であるべきである。代替的に、プリフォームの温度は、取り扱いを容易にするように必要に応じて変更することができる。
【0023】
プリフォーム組成
プリフォームの組成/内部構造は、プリフォームの製造材料であるトウプレグの組成/内部構造と同一であることを理解されたい。
【0024】
繊維に関しては、トウプレグ100内の個々の繊維は任意の直径を有することができ、この直径は、必ずしもそうであるとは限らないが、一般に、約1ミクロンから約100ミクロンの範囲である。個々の繊維は、限定はしないが、加工、バインダの接着を容易にし、繊維の自己付着を最小限に抑え、または特定の特性(たとえば、導電性など)を付与するためにサイジングなどの外部コーティングを含むことができる。
【0025】
各々の個々の繊維は中実または中空のコアとすることができる。各々の個々の繊維は、単一の材料または複数の材料(以下に列挙される材料から選択される材料など)で形成することができ、または繊維自体を複合体とすることができる。たとえば、個々の繊維は、導電性材料、絶縁性材料、熱伝導性材料、または断熱性材料などの第2の材料で被覆された(第1の材料の)コアを備えることができる。
【0026】
組成に関しては、各々の個々の繊維は、限定はしないが、たとえば、カーボン、ガラス、天然繊維、アラミド、ホウ素、金属、セラミック、ポリマーフィラメントなどとすることができる。金属繊維の非限定的な例には、鋼、チタン、タングステン、アルミニウム、金、銀、前述の金属のうちのいずれかの合金、および形状記憶合金が含まれる。「セラミック」は、すべての無機および非金属材料を指す。セラミック繊維の非限定的な例には、ガラス(たとえば、Sガラス、Eガラス、ARガラスなど)、石英、金属酸化物(たとえば、アルミナ)、アルミノシリケート、ケイ酸カルシウム、ロックウール、窒化ホウ素、炭化ケイ素、および前記のセラミック繊維のうちのいずれかの組合せが含まれる。さらに、カーボンナノチューブを使用することができる。個々のプリフォーム内で、すべての繊維は一般に、同じ組成を有する。
【0027】
マトリックス材料に関して、熱および/または圧力を加えると樹脂自体に接合することができる任意のポリマー樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を使用することができる。本発明の実施形態に関連して有用な例示的な熱可塑性樹脂には、限定はしないが、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ナイロン、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、およびポリカーボネートABS(PC-ABS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリフェニルスルフォン(PPSU)、ポリリン酸(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスルフォン(PSU)、ポリウレタン(PU)、塩化ポリビニル(PVC)が含まれる。例示的な熱硬化性樹脂はエポキシである。いくつかの実施形態では、セラミックをマトリックス材料として使用することができる。
【0028】
任意の特定のポリマー樹脂の使用が適切であるかどうかは、製造中の部品の要件に少なくとも部分的に依存する。そのような要件は、部品の望ましい属性/特徴/特性(たとえば、見た目、密度、耐腐食性、熱特性など)を含んでもよい。
【0029】
マトリックス材料は、ポリマー樹脂に加えて、限定はしないが、たとえば、充填材、接着促進剤、レオロジー制御剤、着色剤、および前記の成分のうちのいずれかの組合せなどの他の成分を含むことができる。
【0030】
充填材の種類および量は、引張強度、伸び、熱安定性、低温柔軟性、耐薬品性、低密度、導電性、熱伝導性、EMI/RFI遮蔽、静電気散逸性、または前記の特性のいずれかの組合せなどの特定の所望の特性を実現するように選択することができる。適切な充填材の非限定的な例には、シリカおよび炭化カルシウムなどの無機充填材、熱可塑性ビードなどの有機充填材、金属、黒鉛、およびグラフェンなどの導電性充填材、熱膨張マイクロカプセルなどの低密度充填材が含まれる。充填材は、ビード、粒子、粉末、プレートレット、シート、またはフレークなどの任意の適切な形態を有することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、充填材には、プリフォームの端部間で完全には延びない非配向繊維および/または不連続繊維が含まれる。そのような非配向繊維にはチョップドファイバ、ミルドファイバ、またはそれらの組合せを含むことができる。非配向繊維には、たとえば、繊維織り、より繊維などを含む複数の非配向連続繊維を含めることができる。
【0032】
プリフォーム内部構造
プリフォームは一様または非一様な内部構造を有することができる。図2Aおよび図2Bは、図1A図1Bのトウプレグ100の第1実施形態のプリフォーム102Aを示す。図2Aおよび図2Bに示す実施形態では、プリフォーム102Aは、一様な内部構造を有する(プリフォームの製造材料であるトウプレグが一様な内部構造を有することに起因する)。
【0033】
図2Aはプリフォーム102Aの長手方向断面を示す。プリフォーム102Aは、直線状であり、これは繊維束ベースプリフォームの最も基本的な実装形態である。プリフォーム102Aは複数の繊維208を含む。これらの繊維は、プリフォーム102Aの第1の端部204Aから第2の端部206Aまで延びるので「連続的」である。さらに、繊維208は、すべて同じ方向に配向されるので「共配向される」。プリフォーム102Aはまたポリマー樹脂マトリックス210を含み、ポリマー樹脂マトリックス210は繊維208を囲み濡らす。
【0034】
図2Bは、プリフォーム102Aの横断面を示す。この実施形態では、複数の共配向繊維208が、プリフォーム102Aの横断面に沿って(すなわち、半径方向に)実質的に一様に分散される。
【0035】
図3Aおよび図3Bは、図1A図1Bのトウプレグ100の第2の実施形態のプリフォーム102Bを示す。図3Aおよび図3Bに示す実施形態では、プリフォーム102Bは、非一様内部構造を有する(プリフォーム102Bの製造材料であるトウプレグが非一様内部構造を有することに起因する)。
【0036】
図3Aは、プリフォーム102Bの長手方向断面を示す。プリフォーム102Aと同様に、プリフォーム102Bは、複数の繊維208を含み、繊維208は、プリフォーム102Bの端部204Bと206Bの間を完全に延びるので連続的である。プリフォーム102B内の繊維も、プリフォーム102Aと同様に共配向される。
【0037】
次に図3Bを参照し、引き続き図3Aを参照するとわかるように、繊維208はプリフォーム102Bにおいて半径方向に一様に分散されないことがわかる。すなわち、繊維208は、プリフォーム102Bのマトリックス210が埋め込まれたバンドとして配置される。言い換えれば、プリフォーム102Bは、半径方向において非一様な組成を有する。いくつかの他の実施形態では、プリフォームは、繊維の他の非一様な分布を有することができる。
【0038】
プリフォーム外部アーキテクチャ
図4図8は、図2A図2Bおよび図3A図3Bのプリフォーム102Aおよび102Bの単純な直線状アーキテクチャに加えていくつかのプリフォームアーキテクチャを示す。
【0039】
図4は、プリフォーム402を示し、プリフォーム402は、本発明による開形、平面状、非直線状プリフォームである。プリフォーム402は、1つまたは複数の屈曲部420を含むので非直線状である。プリフォーム402は、各屈曲部が同じ平面内にあるので平面状である。各屈曲部420は、0°<屈曲角420<180°の範囲内の角度から独立に選択された角度を有することができる。
【0040】
プリフォーム402などの非直線状プリフォームは、トウプレグの一部を内部のマトリックス材料の軟化点を超える温度に加熱し、次いで自動屈曲器具などを介してトウプレグを屈曲させることによって形成することができる。適切な数の屈曲部が作られた後、トウプレグが切り取られ/切断され、それによってプリフォームが形成される。プリフォームを製造する方法は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第15/612,720号および米国特許出願第16/600,131号で開示されている。
【0041】
図5は、プリフォーム502を示し、プリフォーム502は、本発明による閉形、平面状、非直線状プリフォームである。閉形プリフォームは一般に、2つの端部が互いに近接して位置し、密閉領域を画定するように屈曲された切り取られた単一の長さのトウプレグを備える。いくつかの実施形態では、2つの端部が接着剤または熱接合などを介して互いに連結される。(プリフォーム402は、2つの端部が互いに近接しておらず、密閉領域を画定しないので「開形」である。)プリフォーム502は、4つの(すなわち、1つまたは複数の)屈曲部520を含むので非直線状である。プリフォーム502は、各屈曲部が同じ平面内にあるので平面状である。
【0042】
図6は、プリフォーム602を示し、プリフォーム602は、プリフォーム402とプリフォーム502の組合せである。プリフォーム602は平面状および非直線状であり、開形要素と閉形要素の両方を含む。プリフォーム602は、プリフォーム402および502を形成し互いに連結させることによって製造することができる。
【0043】
プリフォーム502、602、および702などの「閉形」として特徴付けられたプリフォームは必ずしもそうではないが、一般に、「オープンフレームワーク」または「開体積」プリフォームとしてさらにまたは代替的に特徴付けられる。いくつかの実施形態では、そのようなオープンフレームワークプリフォームは、本開示で図11A図11Eに関連して後述する「オープンフレームワーク」部品を製造するために使用される。
【0044】
図7は、プリフォーム702を示し、プリフォーム702は閉形であり、平面状であり、非直線状である。プリフォーム702は、積層要素730を含むが、それにもかかわらず、すべての屈曲部が同じ平面内にあるかまたは互いに平行な平面内にあるので平面状と見なされる。プリフォーム702は、要素730の2つの例を含み、各例は、外側方形要素732と内側方形要素734とを備える。
【0045】
図8は、プリフォーム802を示し、プリフォーム802は、開形、非平面状、非直線状プリフォームである。プリフォーム802は、少なくとも1つの屈曲部が別の屈曲部に対して面外であるので非平面状と見なされる。具体的には、セグメント840とセグメント844との間の屈曲部842が、y-x平面内に位置し(すなわち、屈曲部がy-x平面における2つのセグメントを形成し)、セグメント844とセグメント848との間の屈曲部846が、x-z平面内に位置する。そのような平面は、本明細書では互いに対して「面外である」と定義される。上記でプリフォーム702に関して暗黙的に示し、ここで明示的に示すように、「面外」という特性は、「屈曲部」を含む階層要素または積層要素を除外し、そのような積層要素は互いに実質的に(互いに平行な平面において)平行である。
【0046】
プリフォーム802では、各屈曲部は互いに直交する平面内に位置する。しかし、いくつかの他の実施形態では、屈曲部は、互いに対して面外であるが、互いに直交しない平面内に位置する。図4のプリフォーム402に関して開示されたように、各屈曲部の屈曲角度は個別に選択されてもよい。したがって、屈曲部846は、0°よりも大きく180°よりも小さい任意の角度を有することができる。
【0047】
図4図8に示すプリフォームは1つの非ゼロベクトル成分(すなわち、x軸、y軸、またはz軸に沿った、x-y平面、z-x平面、またはy-z平面内の成分)によって定められる任意の所与の屈曲部を示すが、いくつかの他の実施形態では、屈曲部は、非ゼロx、y、またはzベクトル成分の任意の組合せによって画定することができる。
【0048】
いくつかの他の実施形態では、プリフォームは非平面状、非直線状、および閉形である。さらに、非平面状、非直線状プリフォームは非平面状、非直線状要素および平面状、非直線状要素を備えることができる。そのようなプリフォームの例は、たとえば、図5のプリフォーム502と図8のプリフォーム802を組み合わせたプリフォームである。
【0049】
本方法による圧縮成形
前述のように、本教示によれば、繊維束ベースプリフォームを使用して、圧縮成形などを介して部品が製造される。より詳細には、本教示によれば、2つ以上のそのようなプリフォームを型キャビティ内に配置し、型キャビティを閉じ、それによって型キャビティに圧力を加え、型キャビティの内容物の温度を上げてマトリックス材料を流動する、「すなわち、溶融流動する」程度に軟化させることによって部品が製造される。そのように圧力および温度を加えることによって、2つ以上のプリフォームが統合され、冷却後に完成した部品が得られる。
【0050】
公知のように、圧縮成形は一般に、少なくとも約100psiの圧力で行われる。このプロセスの温度要件は使用されるマトリックス材料の関数である。たとえば、熱可塑性樹脂を含むマトリックスでは、温度は樹脂のガラス遷移温度と一致するかまたはガラス遷移温度を超えなければならず、それによって樹脂は流動することができるが、その劣化温度よりも低くなければならない。Bステージ熱硬化性樹脂またはBステージセラミックを含むマトリックスでは、マトリックス材料が流動するように十分に加熱しなければならず、また、共反応物の反応温度に一致するかまたは反応温度を超えなければならない。
【0051】
上記で指摘したように、本教示によれば、2つ以上の繊維束ベースプリフォームが特定の配置および/または配向(レイアップ)で型キャビティ内に配置される。配置/配向の指定は、少なくとも部分的に所望の全体的な部品特性(たとえば、機械的特性、見た目など)または部品の特定の領域の特性に基づいて行われる。このレイアップで配置する間、プリフォームはその製造時の形状を保持し、この特性は、繊維を特定のプリフォームから部品の特定の体積領域に送るのを容易にする。
【0052】
図9Aおよび図9Bは、型キャビティ952を有する雌型半部950、ならびに圧縮成形を介して繊維複合部品972(図9C)を製造する際に使用される2つの例示的な繊維束ベースプリフォームレイアップ958および970を示す。
【0053】
図9Aに示すレイアップ958は、(i)多角形(方形)横断面を有し、各層が3つのプリフォームの2つの層に配置された6つの直線状プリフォーム954と、(ii)円形横断面を有し、各層が3つのプリフォームの2つの層に配置された6つの直線状プリフォーム956とを含む。プリフォームのこの2つのグループは互いに直交するように配向され、各プリフォーム956の一方の端部が積層されたプリフォーム954のうちの2つのプリフォーム954の側面に当接する。
【0054】
図9Bに示すレイアップ970は、レイアップ958よりも複雑な構成であり、(i)2つの積層「L」字形(非直線状)プリフォーム960と、(ii)各層が2つのプリフォームの2つの層として構成された4つの直線状プリフォーム962と、(iii)1つの直線状プリフォーム964と、(iv)各層が2つのプリフォームの2つの層として構成された4つの直線状プリフォーム966と、(v)各層が2つのプリフォームの2つの層として構成された2つの直線状プリフォーム968とを含む。プリフォーム966および968は、プリフォーム964の長さの約2分の1である。そのようなそれぞれに異なるレイアップは、部品が使用時に受ける力の結果として部品の所与の体積領域において生じる応力の関数として使用されてもよい。
【0055】
図示の2つの実施形態の各々において、プリフォームは「L」字形に配置され、型キャビティ952の形状に一致するレイアップ958または970を形成する。いくつかの実施形態では、レイアップは、プリフォームを1つずつキャビティ952に追加することによって形成され、それによってレイアップがキャビティ内に形成される。いくつかの他の実施形態では、プリフォームのうちのいくつかまたはすべてが連結され、キャビティ952内に配置される前に「プリフォームチャージ」が形成される。すべてのプリフォームがプリフォームチャージとして組み立てられる実施形態では、レイアップ(その場合、レイアップはプリフォームチャージと同義である)が組み立てられ、次いで単一のユニットとして型キャビティ内に配置される。
【0056】
型に配置される各プリフォームの組成、内部構造、および外部アーキテクチャは、一般に製造中の部品の所望の属性を実現するように適宜個別に選択可能である。たとえば、レイアップに複数のプリフォームが与えられた場合、少なくとも1つのプリフォームを以下の非限定的な方法で他のプリフォームと異ならせることができる。
- 異なるマトリックス材料(たとえば、2つの異なる熱可塑性樹脂、それぞれに異なる充填材など)、
- 異なる繊維タイプ(たとえば、カーボン繊維対ガラスなど)
- 異なる繊維体積分率
- 繊維の一様な分布対非一様な分布
- 直線状対非直線状
- 平面状対非平面状
マトリックス材料がレイアップにおけるあるプリフォームと次のプリフォームと異なる範囲で、そのような異なるマトリックス材料は互いに適合しなければならない。本文脈では、「適合する」は、それぞれに異なるマトリックス材料が互いに接合することを意味する。
【0057】
部品内部構造
本発明の実施形態による、上述のように互いに異なることができる繊維束ベースプリフォームを選択的に配置することによって、部品のそれぞれに異なる領域においてそれぞれに異なる材料特性を有する部品を製造する能力が得られる。他のどの考慮事項の中でも、部品に対する使用時負荷は部品のそれぞれに異なる領域において異なることが多く、各領域でそれぞれに異なる応力ベクトルにおいて生じるのでこのことはかなり有利である。また、部品の特定の領域において特定の剛性または所望の電気的特性を得るための設計が上記のことによって容易になる。
【0058】
本教示に従って形成される部品は、2つ以上の「区間」を備えると見なされる。図10Bは、図9Cの部品972のアーム974のセグメントにおける長手方向断面を示す。このセグメントは、2つのそのような区間、区間1081および区間1084を有する。部品の様々な区間は互いに隣接して部品を形成するが、そのような区間は、部品の外部または内部を調べたときに互いに別々であるとして判別可能とは限らない。すなわち、互いに隣接する区間は、ある区間を隣接する区間から分離する明確な界面がない場合があるという意味で連続することがある。区間が連続するのは、たとえば、互いに隣接する区間におけるマトリックス材料が同じであり、互いに隣接する区間における繊維が同じであるときである。界面が容易に判別可能であるか否かにかかわらず、「区間」の概念は本発明を解説するうえで有用であり、本明細書では、一様な組成を有する(部品の)体積を指すために使用される。すなわち、所与の区間の長さに沿った任意の場所の横断面は、実質的に同じ繊維およびマトリックス組成/分布/配向を示す。
【0059】
本教示によれば、各区間は少なくとも1つの「部分」を含む。再び図10Bを参照するとわかるように、区間1081は、部分1082A、1082B、および1082Cで構成され、区間1084は、部分1086A、1086B、および1086Cで構成される。「部分」は、特定のプリフォームから得られる部品の体積を指す。すなわち、プリフォームから、所与の部分用の繊維およびマトリックス材料が得られる。したがって、たとえば、ある区間が2つのプリフォームから得られる場合、その区間は2つの部分を含むと見なされる。同様に、ある区間が3つのプリフォームから得られる場合、その区間は3つの部分を含むと見なされ、他の場合についても同様である。したがって、そのような実施形態では、区間の各部分の組成は、区間が得られるプリフォームの組成によって決定される。
【0060】
図10A図10Bを比較することによって理解されるように、各プリフォームと各部分との間に必ずしも1対1の対応関係があるとは限らない。図10Aは、図9Bのレイアップ970のセグメントを示す。セグメント内のプリフォームから、部品972のアーム974を形成する繊維およびマトリックス材料の一部が得られる。レイアップのこのセグメントは、プリフォーム964と、2つの積層プリフォーム968と、2つの積層プリフォーム966とを含む。プリフォーム964は、プリフォーム966および968上に配設される。プリフォーム964および968は、第1の繊維タイプ1078を備え、プリフォーム966は第2の繊維タイプ1082を備える。この例では、すべてのプリフォームが同じマトリックス材料1080を含むと仮定される。いくつかの他の実施形態では、それぞれに異なるプリフォームにおける、それぞれに異なる部分のマトリックス材料は、互いに適合する限り異なってもよい。図10Bのスケール(特に厚さ)が図10Aと比べて拡大されていることに留意されたい。
【0061】
プリフォーム964における共配向繊維1078は、区間1081の部分1082Aと区間1084の部分1086Aの両方に現れる。依然として区間1081を参照するとわかるように、「上部」プリフォーム968における共配向繊維1078は部分1082Bに現れ、「下部」プリフォーム968における共配向繊維1078は部分1082Cに現れる。
【0062】
区間1084では、「上部」プリフォーム966における共配向繊維1082は部分1086Bに現れ、「下部」プリフォーム966における共配向繊維1082は、部分1086Cに現れる。マトリックスは区間1081および1084全体にわたって連続する。
【0063】
図10Aおよび図10Bから明らかなように、区間の各部分の長さは必ずしもその区間に繊維を与えるプリフォームの長さに対応するとは限らない(区間1081の部分1082Aの長さをプリフォーム964の長さと比較する)。さらに、プリフォームの厚さも幅も必ずしも部分の厚さまたは幅に対応するとは限らない。しかし、部分の形状はプリフォームの形状の影響を受ける。「区間」についての状況と同様に、互いに隣接する「部分」間の界面は判別可能である場合も判別可能でない場合もある。
【0064】
区間は、隣接する区間と同じ組成を有することも、または異なる組成を有することもできる。後者の状況に関しては、組成は、区間ごとに、マトリックス材料組成、繊維組成、含有量、および/または繊維分布、ならびに任意の他の組成変数の点で異なってもよい。さらに、互いに隣接する区間は同じ繊維配向を有することも、または異なる繊維配向を有することもできる。
【0065】
区間1081の組成は区間1084の組成とは異なる。詳細には、区間1081の部分1082Bおよび1082Cは繊維1078を含むが、区間1084の部分1086Bおよび1086Cは繊維1082を含む。このことは、図10Cおよび図10Dからさらに明らかであり、図10Cおよび図10Dは、図10Bの軸A-Aおよび軸B-Bに沿った横断面をそれぞれ示す。区間1081内の任意の場所における横断面は図10Cに示すように見える。同様に、区間1084内の任意の場所における横断面は図10Dに示すように見える。しかし、区間1081と区間1084の間の界面領域の横断面は、図10Cまたは図10Dに現れる横断面とはいくらか異なるように見え得る。
【0066】
区間は、図10Bに示すように「垂直」方向および「長手」方向に延びることに加えて、「横」方向に延びることもできることを理解されたい。図10Bの文脈では、これはたとえば、部分1082A、1082B、1082Cに隣接し、「ページ内に」延びる追加の部分を含む。このことは図10Eにより詳細に示されている。
【0067】
図10Eは、部品972の断面「分解」図を示す。区間の指定は、ある程度任意であり、上記の定義に従う。しかし、「区間」および「部分」の記述子としての使用は、本発明の実施形態についての説明および定義に関連して有用な解説のための手段を構成し、本教示に従って作られた部品と従来技術における部品との違いを強調する働きをする。
【0068】
図10Eに示す実施形態では、5つの「区間」1081、1084、1088、1092、および1098が部品1072について定義される。区間1081および1084について、図9Bおよび図10A図10Dに関連して説明した。図10Eはさらに、区間1081が部分1082Dおよび1082Eを含み、区間1084が部分1086Dおよび1086Eを含むことを示し、部分1086Dおよび1086Eは、図10Bではそれぞれの区間に含まれるように示されていなかった。図9Bを参照するとわかるように、少なくとも追加の部分1086Dおよび1086Eに関与するプリフォームを容易に見ることができる。
【0069】
部品1072はまた、区間1088を含み、区間1088は、部分1090A~1090Dを含む。4つのプリフォーム962は、図9Bに示されており、プリフォーム962からこれらの部分の材料が得られる。
【0070】
区間1092および1096は積層L字形プリフォーム960(図9B)から得られる。プリフォーム960内の繊維は連続的で共線的であると仮定されるが、これらの繊維は、これらのプリフォームから得られアーム974およびアーム976に存在する繊維が互いに対して直交するように配向されるので1つではなく2つの区間を生じさせる。区間1092は、部分1094Aおよび1094Bを含み、区間1096は、部分1098Aおよび1098Bを含む。
【0071】
上記に開示されたように、部品の様々な区間/部分用の材料が得られる繊維束ベースプリフォームは、本教示に従って、
(i)個別に実質的に任意の所望の形状および/またはサイズで形成することができ、
(ii)個別に繊維および/またはマトリックス材料組成、ならびに添加剤を変えることができ、
(iii)レイアップに配置されたときにプリフォームの形状および繊維配向を維持することができ、
(iv)材料に関する制限(テープおよびシートなど)なしに自由にレイアップに配置することができる。
機能(i)、(iii)、および(iv)に起因して、本発明の実施形態は、任意の所与のプリフォームにおける繊維およびマトリックス材料を製造中の部品の任意の体積領域に送るほぼ抑制されない能力を実現する。機能(ii)に起因して、本発明の実施形態は、部品の属性/特性を調整する前例のない能力を実現する。これらの機能を組み合わせると、製造業者は、部品の任意の体積位置に所望の属性/特性を有する繊維複合部品を製造することが可能である。このことは図10Eから容易に明らかになるはずである。
【0072】
上記のことに鑑み、本明細書で説明する方法を使用して、(i)部品のそれぞれに異なる区間、(ii)部品の所与の区間のそれぞれに異なる長手方向部分、および/または(iii)部品の所与の区間のそれぞれに異なる半径方向/深さ位置においてそれぞれに異なる材料特性を有する部品を製造できることが諒解されよう。
【0073】
たとえば、図10B図10Eを参照するとわかるように、区間1081の少なくともいくつかの特性と区間1084のそのような特性が異なることを、2つの区間におけるそれぞれに異なる種類の繊維が存在することに起因して予期することができる。区間1081の部分1082B~1082Eの少なくともいくつかの特性と区間1084の部分1086B~1086Eのそのような特性が異なることは、それらの部分におけるそれぞれに異なる種類の繊維に起因して予期される。たとえば、繊維1078がカーボン繊維であり、繊維1082がファイバグラスである場合、部品は部分1082A~1082Eおよび1086Aよりも部分1086B~1086Eが弱いと予期することができる。さらに、区間1092と区間1096の間で繊維が連続しているので、プリフォーム960の形状の結果として、部品972の2つのアーム974および976が交差する領域は、部品の内側角部よりも「外側」角部近傍の方が強度が高くなることが予期される(繊維が区間1088と区間1081の間で連続しないことに起因する)。
【0074】
たとえば、繊維、充填材材料などの選択などによって部品の1つまたは複数の区間に導電性を付与することなどによって、特性の違いを機能的なものにすることができる。あるいは、たとえば、繊維(たとえば、カーボン繊維など)を適切に選択し、ならびに/またはそのような区間におけるすべての繊維を共配向し、ならびに/または繊維体積分率を大きくすることによって部品の区間に高い機械的強度を加えることなどにより、違いを機械的な違いにすることができる。
【0075】
プリフォーム外部アーキテクチャおよび内部構造の説明を想起し、繊維束ベースプリフォームが本教示による部品のビルディングブロックであることに鑑みて、部品の互いに隣接する区間を共線的または非共線的、共平面的または非共平面的とすることができ、互いに隣接する区間における繊維を共配向または非共配向し、一様にまたは非一様に分散させることができる。
【0076】
本明細書で開示された方法は、繊維束ベースプリフォームを使用することによって、部品の中実区間間および/または中実区間内の開体積を特徴とする部品を含む複雑な部品の製造に特に適している。図11A図11Eは、オープンフレームワーク部品(すなわち、開体積を有する部品)の非限定例を示す。
【0077】
図11Aは、開中央領域1102を有するフレーム1100を示す。図11Bは開体積1112を含むラティス1110を示す。図11Cは、開体積1122を含むラティス1120を示す。図11Dは、開体積1132を有するトラス1130を示す。図11Eは、開体積1142を含むハニカム1140を示す。
【0078】
本開示がいくつかの実施形態について説明しており、当業者によって本開示を読んだ後本発明の多数の変形例を容易に考案することができ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって決定されることを理解されたい。
【符号の説明】
【0079】
100 トウプレグ
102 プリフォーム
102A プリフォーム
102B プリフォーム
204A 第1の端部
204B 端部
206A 第2の端部
206B 端部
208 繊維
210 マトリックス
402 プリフォーム
420 屈曲部
502 プリフォーム
520 屈曲部
602 プリフォーム
702 プリフォーム
730 積層要素
732 外側方形要素
734 内側方形要素
802 プリフォーム
840 セグメント
842 屈曲部
844 セグメント
846 屈曲部
848 セグメント
950 雌型半部
952 型キャビティ
954 プリフォーム
956 プリフォーム
958 レイアップ
960 プリフォーム
962 プリフォーム
964 プリフォーム
966 プリフォーム
968 プリフォーム
970 レイアップ
972 部品
974 アーム
976 アーム
1078 共配向繊維
1080 マトリックス材料
1081 区間
1082A、1082B、1082C、1082D、1082E 部分
1084 区間
1086A、1086B、1086C、1086D、1086E 部分
1088、1092 区間
1090A~1090D 部分
1092 区間
1094A、1094B 部分
1096 区間
1098A、1098B 部分
1100 フレーム
1102 開中央領域
1110 ラティス
1112 開体積
1120 ラティス
1122 開体積
1130 トラス
1132 開体積
1140 ハニカム
1142 開体積
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E