(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】明色充填剤の「in situ」シラン化におけるゴム混合物の部分加硫を検出するための、インライン超音波チェック法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/032 20060101AFI20240111BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240111BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240111BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240111BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G01N29/032
C08K9/06
C08L21/00
C08K3/36
C08K5/548
(21)【出願番号】P 2021549108
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2020054006
(87)【国際公開番号】W WO2020169494
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-19
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ・グレーフ
(72)【発明者】
【氏名】ラルス・ヴァヴルツィンスキ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・シリング
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0031866(US,A1)
【文献】特開平11-179785(JP,A)
【文献】特表2019-505800(JP,A)
【文献】特表2014-521948(JP,A)
【文献】特開平01-110255(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第69728538(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第19754370(DE,A1)
【文献】SCHROEDER Andreas et al.,Better to hear than to see,Kautschuk Gummi Kunststoffe,2015年04月,Vol.68, No.4,p.10-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/032
C08K 9/06
C08L 21/00
C08K 3/36
C08K 5/548
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
淡色充填剤のシラン化をチェックするための方法であって、
少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含み、そして少なくとも1種のゴムを含む混合物を、4~10MHzの周波数範囲にある超音波を用いて照射し、前記ゴム混合物を透過させた後で、前記超音波のシグナル強度を測定し、
前記超音波の周波数範囲の中での前記ゴム混合物の相対減衰係数α
relを測定し、前記相対減衰係数α
relの移動標準偏差σ
gを測定し、そしてα
relとσ
gとを使用して、前記ゴム混合物の早期架橋を検出する、方法であり、
前記ゴム混合物が、160℃より高い温度で製造されることを特徴とし、
前記ゴム混合物の早期架橋の検出工程において、前記ゴム混合物が、1~50秒の測定時間で測定されたときに、1[1/m]よりも大きい相対減衰係数α
relの移動標準偏差σ
gを有し、かつ0[1/m]未満の相対減衰係数α
relを有する場合に、前記ゴム混合物が早期架橋された
と判定される、方法。
【請求項2】
前記ゴム混合物が、160℃より高くから200℃までの温度で製造されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゴム混合物が、160℃より高くから180℃までの温度で製造されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記ゴム混合物の早期架橋を検出するための方法であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤が、少なくとも1種の淡色充填剤と少なくとも1種のシラン化剤とから製造されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ゴム混合物が、前記少なくとも1種のシラン化剤及び少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤以外の架橋剤を、10phr未満で含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が押出し加工され、そしてそのようにして得られた押出し物が、音波で照射されることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造するための方法であって、160℃より高い温度で、少なくとも1種の淡色充填剤を、少なくとも1種のゴム及び少なくとも1種のシラン化剤と混合し、そして、そのようにして得られたゴム混合物の全容積を基準にして、前記ゴム混合物の1容積%より多くを、請求項1~7のいずれかに記載の方法によりチェックする、方法。
【請求項9】
少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造するための前記方法が、160℃より高くから200℃までの温度で実施されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の淡色充填剤が、マイカ、カオリン、ケイ質土、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカ、チョーク、及びタルクからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種のシラン化剤が、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジ(トリデカン-1-オキシ-13-ペンタ(エチレンオキシド))エトキシシラン、及びガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群より選択されるシランであることを特徴とする、請求項5、6、及び8~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含む架橋性ゴム混合物を製造するための方法であって、請求項8~11のいずれかに記載の方法によってゴム混合物を製造した後に、1種又は複数のさらなる架橋剤が添加される、方法。
【請求項13】
加硫物を製造する方法であって、請求項12に記載の方法によってシラン化された淡色充填剤を含む架橋性ゴム混合物を製造し、そして次いで、100℃~200℃の範囲の温度で加硫させることを含む、方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の方法における、4~10MHzの範囲の超音波の周波数で音波の振幅及び/又は音波の強度を測定するための、測定装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、淡色充填剤(pale-colored filler)のシラン化の技術分野に関する。「淡色充填剤」という表現は、当業者には、カーボンブラックをベースとしない天然及び合成の鉱物質充填剤を意味すると理解されており、たとえば、マイカ、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、タルク、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカ、及びケイ酸塩などが挙げられる。加工性を改良する目的で、それらの淡色充填剤は、シラン化によって疎水化され、その結果、エラストマー加硫物の性質に顕著な改良が得られる。特に、タイヤトレッドのためのゴム混合物の場合、シラン化された充填剤の使用を、ブラック充填剤であるカーボンブラックと比較すると、タイヤの摩耗を高めることなく、濡れ時のグリップ性が改良され、そして転がり抵抗性が改良されるという結果が得られる。
【背景技術】
【0002】
たとえば、タイヤトレッド混合物の製造においては、第一の混合ステップにおいて、インターナルミキサーの中で、シリカがシラン化剤と共に、バッチ方式でゴムの中に分散される。混合パラメーター(回転速度、充填レベル、温度制御など)を調節することによって、この場合の混合プロセスが実施されて、140℃~160℃の範囲の排出温度となる(参照、(非特許文献1))。インターナルミキサーの中での第二の混合ステップにおいて、その混合物が、140℃~160℃の範囲で均質化される。140℃より低いと、シランとシリカとの間での反応が起きず、そして160℃より高いと、シランが、ゴムと早期架橋(incipient crosslinking)してしまう可能性がある。ゴム産業においてインターナルミキサーとして使用されるミキサーとしては、排出エクストルーダーを備えたインターナルミキサーが挙げられる。(特許文献1)に開示されているように、試みられた方法には、バッチ製造方法だけではなく、エクストルーダーを使用した連続法も含まれる。ゴム混合物の中でのシラン化は、「in situ」シラン化と呼ばれる。たとえば、これは、(特許文献2)、及びさらには(特許文献3)に記載されている。
【0003】
「in situ」シラン化では、温度及び混合時間に関して、精密なコンプライアンスが求められ(参照、(非特許文献1))、そのため、これらのプロセスは、問題を極めて起こしやすい。したがって、製造プロセスにおいて(インラインで)実施される、極めて迅速な容積的及び代表的チェック方法が必要とされる。これは、「in situ」シラン化が確実に制御され、ゴム混合物の熱応力が低レベルに保たれ、プロセスの高効率が維持され、スクラップ率が低減されることを保証する唯一の方法である。このことは、連続法の「in situ」シラン化プロセスにおいては特に重要であるが、インライン試験の実現性が不十分であることが理由で、市場で確固たる地位を見出すことが未だにできないでいる。
【0004】
「in situ」シラン化のモニタリングに対する要求があるのとは対照的に、ゴム産業において、未架橋のゴム混合物についての測定は、一般的には、ゴム混合物を製造してから、数分、或いはさらには数日してやっと可能となるが(「オフライン」方式として知られている)、その理由は、測定に時間がかかり、そして多数のサンプルを同時に測定しようとすると、多数の高価な測定装置が必要となるからである。したがって、未架橋のゴム混合物の品質は、これまで、(全量の0.1%未満の)抜き取り検査(spot check)にかけられるだけであった。シラン化反応の完了度は、典型的には、ゴム混合物の抜き取り検査サンプルのムーニー粘度を測定することにより、チェックされる(参照、(非特許文献2))。しかしながら、少数の抜き取り検査サンプルが、ゴム混合物全体を代表している訳ではない。
【0005】
放射線がサンプルを通過するような場合には、エクストルーダーによりコンパウンディングしたプラスチックを分析するための公知の代表的インライン品質-モニタリング方法(たとえば、NIR、ラマン、およぶUV/VIS分光法など)が、多く存在している(参照、(非特許文献3))。しかしながら、電磁波を使用する場合、カーボンブラックでは問題があるが、その理由は、カーボンブラックの比率が極めて小さい場合でさえも、電磁波がほとんど完全に吸収されてしまうからである。1MHzを越える高い周波数範囲にある幾何的圧力波(mechanical pressure wave)(超音波)を使用したときには、対照的に、カーボンブラックが原因の問題は、より少なくなる。しかしながら、この場合においても、淡色で高密度の充填剤たとえば、シリカ、カオリン、又はチョークでは、問題があるが(参照、(非特許文献4))、その理由は、これらのものは、低密度カーボンブラックよりもはるかに、超音波を減衰させるからである。さらに、未架橋のゴムは、プラスチックとは対照的に、それらの粘弾性が原因で、本来的に比較的に高い減衰度を与える。この高い減衰が理由で、透過法で容積測定をしようとすると、発信超音波トランスデューサーと受信超音波トランスデューサーとの間の距離に、上限が存在する。この限界を超えると、そのシグナル/ノイズ比が受容不能であるために、有用な測定値が得られない。
【0006】
その一方で、超音波トランスデューサーの間の距離には下限も存在するが、その理由は、高粘度のゴム混合物が、その超音波トランスデューサーの間を流動する必要があるからである。(非特許文献4)には、マーカーを用いた、充填剤と架橋剤マスターバッチの比率の変動を検出するため、並びにさらに、100μmよりも大きい不純物及び充填剤のマクロ分散の検出するための、インライン品質-モニタリングシステムとしての超音波の使用が記載されているが、最大で、淡色充填剤の比率が30phrまでである。タイヤトレッドのためのゴム混合物における淡色充填剤の比率は、一般的には、少なくとも50phrであって、それによって、そのゴム混合物の粘度を上昇させている。
【0007】
化学反応、すなわち硫黄を用いた未架橋のゴムの架橋反応のモニタリングは、(非特許文献5)に記載されている。この場合、架橋密度の変化をモニターするのに音速を使用している。この場合、4MHzの平均周波数fを有する超音波トランスデューサーが使用されている。混合物の押出し加工は、行われていない。
【0008】
(特許文献4)には、シラン化をチェックするための方法が開示されており、それによって、淡色充填剤、特に沈降シリカの「in situ」シラン化のインラインモニタリングが可能となっている。そこで開示されている方法は、シラン化反応の効率をモニタリングするための方法である。その文献の中でのシラン化は、160℃未満の温度で実施されている。しかしながら、もっと高い温度を使えば、同じ作業時間で、ゴム混合物の処理量を上げることが可能となり、そして処理量が上がれば、ゴム混合物をより早く、したがってより安価に製造することが可能となる。より高い温度でシラン化を実施すると、しかしながら、そのゴム混合物が望ましくない早期架橋(incipient crosslinking)(「スコーチ」(scorch)とも呼ばれる)を起こしたり、及び/又はそのシラン化剤が分解したりする恐れがある。実務的な条件下では、より低い温度での、充填剤表面の非効率的なシラン化の場合よりも、そのような早期架橋の危険性が実質的に高くなる。ゴム混合物の早期架橋は望ましくないが、その理由は、それによって、ゴム混合物の流動性が限定されて、ゴム混合物のさらなる加工で問題が起きるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許第69728538T2号明細書
【文献】欧州特許出願公開第A0911359号明細書
【文献】欧州特許出願公開第A1357156号明細書
【文献】国際公開第2017129471A1号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【文献】F.Roethemeyer、F.Sommer;「Kautschuktechnologie Werkstoffe,Verarbeitung Produkte」[Rubber technology:Materials,Processing and Products],Hanser Verlag、2nd revised edition;ISBN 10:3-446-40480-5;p.272
【文献】F.Roethemeyer、F.Sommer;「Kautschuktechnologie Werkstoffe,Verarbeitung Produkte」[Rubber technology:Materials,Processing and Products],Hanser Verla,2nd revised edition;ISBN 10:3-446-40480-5;p.390
【文献】Hochrein et.al.,Plastverarbeiter,Sept,2009,p.92
【文献】A.Schroeder,L.Graeff,L.Wawrzinski,Rubber World,251(2015),28
【文献】M.Jaunich,B.Stark,B.Hoster,Polymer Testing,28(2009),84
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、淡色充填剤、特にシリカの「in situ」シラン化をチェックするための、インラインでの方法が必要とされていたが、そこでは、前記方法によって、シラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物の製造におけるコストの最小化が可能となる。
【0012】
シラン化された淡色充填剤を用いたゴム混合物の安価な製造方法は、好ましくは高い処理量を有する方法であって、好ましくは、160℃より高い温度での製造を特徴としている。
【0013】
したがって、淡色充填剤の「in situ」シラン化をチェックするための方法は、好ましくはシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を、特に好ましくは160℃より高い温度で、高処理量で製造できるようにするべきである。
【0014】
淡色充填剤の「in situ」シラン化をチェックするための方法は、より好ましくは、そのゴム混合物の早期架橋の検出が可能となるものとするべきである。
【0015】
プロセス制御系に強力なフィードバックを許し、そしてそのプロセスにおける向上された生産性及び/又は低下されたスクラップ率を可能とするためには、好ましくは、エクストルーダーから吐出されてから、遅くとも1分後には、シラン化をチェックした結果が利用可能であるべきである。その方法は、好ましくは、好ましくは製造条件下、すなわち5kg/時間以上の処理量で、代表的なモニタリング、すなわち少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物の少なくとも1%をチェックすることを可能とするべきである。この場合、非破壊的方法が、特に有利であろう。その方法を、タイヤのためのゴム混合物の製造で使用できるようにするためには、そのゴム混合物の追加の成分としてのカーボンブラックの存在が、その品質-モニタリング系に悪影響をほとんど与えない、好ましくは悪影響をまったく与えないということが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
淡色充填剤のシラン化をチェックするための方法
驚くべきことには、その目的は、淡色充填剤のシラン化をチェックするための方法を介して達成されるが、その場合、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤、好ましくはシラン化されたシリカを含み、そして少なくとも1種のゴムを含む混合物を、4~10MHz、好ましくは5~7MHzの周波数範囲にある超音波を用いて照射し、そしてそのゴム混合物を透過させた後で、超音波のシグナル強度を測定するが、ここで、その超音波の周波数範囲におけるそのゴム混合物の相対減衰係数αrelを測定し、その相対減衰係数αrelの標準偏差σを求め、そしてαrel及びσを使用して、そのゴム混合物の早期架橋を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の装置の好ましい実施態様を、
図1~
図3に示す。
図1は、例として、検出バンドを平面図で示しているが、これは、超音波センサーのペア(4)(すなわちそれぞれのペアで、一つのセンダーと一つのレシーバー)、及び流路(5)で構成されている。
【
図2】本発明の装置の好ましい実施態様を、
図1~
図3に示す。
図2は、
図1の配置の側面図を示している。
【
図3】本発明の装置の好ましい実施態様を、
図1~
図3に示す。
図3は、エクストルーダー(1)、検出バンド(超音波トランスデューサーのペア(4)からなっている)、及び流路(5)、並びに超音波-チェック用の電子機器(2)、及び評価ユニット(3)としてのコンピューターの配置を示している。
【
図4-8】
図4~8には、t(n-25)からt(n+25)までの51の測定ポイント(x=y=25)を含む時間間隔での、連結点t(n)でのそれぞれの測定ポイントnでの、標準偏差σ
gの移動値を示している。ここでの文字nは、測定ポイントの数を表している。標準偏差σ
gは、連結点t(n)より前の25の測定値、連結点t(n)での測定値、及び連結点t(n)より後の25の測定値を使用することにより求める。「移動値(moving value)」という文言は、標準偏差σ
gを、t(n-24)~t(n+26)の時間間隔における、連結点t(n+1)での測定ポイントn+1に従って求めたということを意味している。したがって、σ
gを求めるための、51の測定ポイントを構成する時間間隔は、1測定ポイント分ずれる。
図4~8におけるα
rel(f
min.,f
max.)の移動標準偏差σ
gは、8秒の時間間隔の間に測定した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
淡色充填剤のシラン化をチェックするための方法において、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤、好ましくはシラン化されたシリカを含み、そして少なくとも1種のゴムを含む混合物を、押出し加工し、そしてそのようにして得られた押出し物に、上で説明したようにして、音波を用いて照射するのが好ましい。音波を用いた押出し物の照射が、エクストルーダーの中で実施されるのが、より好ましい。
【0019】
本発明の目的のためには、「押出し物(extrudate)」という用語は、押出し加工の途中の、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含み、そして少なくとも1種のゴムを含む混合物か、或いは、押出し加工の後の、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含み、そして少なくとも1種のゴムを含む混合物かの、いずれのものも意味している。本発明の目的のためには、その押出し物が、押出し加工の途中の、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含み、そして少なくとも1種のゴムを含む混合物であるのが好ましい。
【0020】
そのゴム混合物は、好ましくは160℃より高い温度、特に好ましくは160℃より高くから200℃までの温度、極めて特に好ましくは160℃より高くから180℃までの温度で製造される。
【0021】
音波を用いて照射される際のゴム混合物の温度が、その超音波の周波数範囲の中でのそのゴム混合物のガラス転移範囲より高いのが好ましい。音波を用いて照射される際のゴム混合物の温度は、好ましくは少なくとも80℃、特に好ましくは少なくとも100℃である。
【0022】
本発明の目的のためには、「ゴム混合物の早期架橋(incipient crosslinking of the rubber mixture)」という文言は、共有結合s好ましくは硫黄含有共有結合が、少なくとも1種のゴムのポリマー鎖の間、及び/又は少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤と少なくとも1種のゴムのポリマー鎖との間で、形成されたということを意味している。そのゴム混合物が、少なくとも1種のシラン化剤を含んでいる限りにおいては、「早期架橋」という文言のまた別な意味合いは、本発明の目的のためには、少なくとも1種のシラン化剤と少なくとも1種のゴムのポリマー鎖との間の、共有結合、好ましくは硫黄含有共有結合の形成である。
【0023】
ゴム混合物の早期架橋を検出するには、各種のパラメーターを使用することができる。その超音波の周波数範囲の中でのそのゴム混合物の相対減衰係数αrel、及びその標準偏差σを介して、ゴム混合物の早期架橋を検出するのが好ましい。
【0024】
その超音波の周波数範囲の中でのそのゴム混合物の相対減衰係数αrel、及びその移動標準偏差σgを介して、ゴム混合物の早期架橋を検出するのが特に好ましい。
【0025】
160℃より高い温度で発生する、ゴム混合物の早期架橋を検出するのが好ましい。
【0026】
早期架橋されたゴム混合物の相対減衰係数αrelの標準偏差σが、1~500秒、特に好ましくは1~100秒、極めて特に好ましくは1~50秒、最も好ましくは1~15秒の測定時間に基づいているのが好ましい。
【0027】
早期架橋されたゴム混合物の相対減衰係数αrelの移動標準偏差σgが、1~100秒、特に好ましくは1~50秒、極めて特に好ましくは1~15秒の測定時間に基づいているのが特に好ましい。
【0028】
好ましくは160℃より高い温度で製造された、早期架橋されたゴム混合物の相対減衰係数αrelの標準偏差σが、好ましくは1~500秒、特に好ましくは1~100秒、極めて特に好ましくは1~50秒、最も好ましくは1~15秒の測定時間に基づいて、0.5[1/m]より大、好ましくは1[1/m]より大であり、そして、好ましくは160℃より高い温度で製造された、早期架橋されたゴム混合物の相対減衰係数αrelが、0[1/m]未満、特に好ましくは-15[1/m]未満であるようにゴム混合物の早期架橋が検出されるのが好ましい。
【0029】
160℃より高い温度で製造された、早期架橋されたゴム混合物の相対減衰係数αrelの移動標準偏差σgが、1~50秒、好ましくは1~15秒の測定時間に基づいて、1[1/m]よりも高く、そして160℃より高い温度で製造された、早期架橋されたゴム混合物の相対減衰係数αrelが、0[1/m]未満、好ましくは-15[1/m]未満であるように、ゴム混合物の早期架橋が検出されれば、特に好ましい。
【0030】
本発明の目的のためには、そのゴム混合物の早期架橋が、早期架橋が進むにつれて、ゴム混合物の粘度が上昇することを特徴としているのが好ましい。
【0031】
早期架橋されたゴム混合物のムーニーML1+4(100℃)粘度が、同一の組成を有し、まだ早期架橋されていない、対照ゴム混合物のそれよりも、少なくとも5MU(ムーニー単位)だけ高いのが好ましい。
【0032】
本発明の目的のためには、「まだ早期架橋されていない対照ゴム混合物(reference rubber mixture that is not yet incipiently crosslinked)」という用語は、対照として提供される早期架橋されたゴム混合物に比較して、早期架橋されてなく、同じ組成を有し、好ましくは同じ混合アセンブリーの中で、そして少なくとも140℃~160℃の温度で製造され、特に好ましくは同じ混合ステージ数を有している、ゴム混合物を意味している。まだ早期架橋されていない対照ゴム混合物の中で、その少なくとも1種の淡色充填剤の、90重量%より大、好ましくは95重量%より大、特に好ましくは99重量%より大がシラン化されているのが、特に好ましい。
【0033】
まだ早期架橋されていない対照ゴム混合物の超音波の振幅を、早期架橋されたゴム混合物の場合に使用したのと同じ温度、圧力、及びせん断速度で測定するのが、より好ましい。
【0034】
本発明の目的のためには、RPA 2000(Alpha Technologies製)により、周波数1Hz及び温度60℃で、1%の引張歪み振幅で測定した、早期架橋されたゴム混合物の貯蔵弾性率G’が、まだ早期架橋されていない対照ゴム混合物の弾性率G’と同じか又はそれ以下、特に好ましくはそれ未満であるのが好ましい。
【0035】
本発明の方法が、ゴム混合物の早期架橋を検出するための方法であるのが好ましい。
【0036】
本発明のプロセスがインラインプロセスであるのが好ましいが、その理由は、シラン化のチェックが、ゴム混合物の製造プロセスの間に実施されるからである。
【0037】
ゴム混合物の製造プロセスが、エクストルーダーから押出し物が吐出されたところで終わっているのが好ましい。
【0038】
ゴムとして特に適切なのは、以下のものである:天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレン-イソブチレンゴム(IIR)、ポリクロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシレート化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(XNBR)、水素化カルボキシレート化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HXNBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、フルオロゴム(FKM)、ペルフルオロ化フルオロゴム(FFKM)、アクリレート-エチレンゴム(AEM)、アクリレートゴム(ACM)、エチレン-メチレン-アクリレートゴム(EMA)、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルゴム(EVA)、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、エチレン-エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エピクロロヒドリンゴム(CO)及び/又はポリウレタンゴム(PU)。
【0039】
その少なくとも1種のゴムが、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)から、極めて特に好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)及びブタジエンゴム(BR)からなる群より選択されれば、特に好ましい。
【0040】
本発明の目的のための淡色充填剤は、好ましくはマイカ、カオリン、ケイ質土、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカ、チョーク、及びタルク、特に好ましくはシリカ、最も好ましくは沈降シリカである。
【0041】
本発明の特定の実施態様においては、淡色充填剤として、二相(dual phase)充填剤として知られているものを使用することも可能である。それらは、5%を越えるシリカの比率を有するカーボンブラック粒子であって、当業者には公知である。
【0042】
シラン化は、淡色充填剤の表面へのシランの化学結合である。その結合は、使用したシランの加水分解性の基と、淡色充填剤の表面上の化学基との間の縮合反応を介して達成される。
【0043】
その少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤が、少なくとも1種の淡色充填剤と少なくとも1種のシラン化剤とから製造されるのが好ましい。
【0044】
好ましい実施態様においては、少なくとも1種の淡色充填剤と少なくとも1種のシラン化剤とからの少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤の生成が、エクストルーダーの中で起きる。
【0045】
少なくとも1種のシラン化剤としてシランが使用されるのが好ましい。シランとして好ましいのは、二官能シランであって、一つの官能基が、淡色充填剤の表面と反応することが可能な基、たとえばトリアルコキシシリル基であり、そして、もう一つの官能基が、ゴムの架橋反応に与ることが可能な基、たとえばチオール基又はポリスルファン基である。
【0046】
特に好ましいのは、以下のシランである:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(たとえば、Evonik Industries AGからSi69(登録商標)として市販)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(たとえば、Evonik Industries AGからSi75(登録商標)として市販)、ビス(トリエトキシシリル-プロピル)ジスルフィド(たとえば、Evonik Industries AGからSi266(登録商標)として市販)、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン(たとえば、Evonik Industries AGからSi264(商標)として市販)、3-メルカプトプロピルジ(トリデカン-1-オキシ-13-ペンタ(エチレンオキシド))エトキシシラン(たとえば、Evonik Industries AGからVP Si363(登録商標)として市販)、及びガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン。
【0047】
極めて特に好ましいシランは、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。
【0048】
そのゴム混合物には、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤及び少なくとも1種のゴムだけではなく、少なくとも1種の淡色充填剤及び/又は少なくとも1種のシラン化剤も含むことができる。
【0049】
少なくとも1種の淡色充填剤のシラン化が進行するにつれて、そのゴム混合物の中の少なくとも1種の淡色充填剤と少なくとも1種のシラン化剤との比率が低下していき、そして少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤の比率が増加している。
【0050】
少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤及び少なくとも1種のシラン化剤は、ゴムの早期架橋を起こすことができるので、それらは、架橋剤とみなすことができる。
【0051】
そのゴム混合物は、少なくとも1種のシラン化剤及び少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤以外の架橋剤を、好ましくは10phr未満、特に好ましくは5phr未満、極めて特に好ましくは2phr未満で含む。そのゴム混合物が、少なくとも1種のシラン化剤及び少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤以外の架橋剤を含まないのが最も好ましい。
【0052】
ゴム混合物の中での淡色充填剤の比率は、典型的には20~250phr、好ましくは30~150phr、特に好ましくは40~100phrである。
【0053】
本発明の方法の実施態様においては、ゴム混合物が、超音波トランスデューサーの少なくとも1組のペア、好ましくは少なくとも2組のペアの少なくとも一つの検出バンドによって分析される。ペアのそれぞれのトランスデューサーは、互いに向い合っており、それら複数のペアが、互いに並行して、一列に配される。
【0054】
この場合、ペアの内の一つの超音波トランスデューサーがトランスミッターとして機能し、もつ一つのトランスデューサーが、超音波シグナルのレシーバーとして機能する。トランスミッターの内部では、電子チェック系で発生された電圧パルスが、圧電効果の助けを借りて、超音波へと変換される。トランスミッターの励起の際の電圧パルスの形態は、典型的には、方形パルス又はニードルパルスの形態である。0.1μs以上且つ1μs以下の時間間隔での連続した少なくとも二つの電圧パルス(バーストシグナル)を使用するのが好ましく、少なくとも三つの電圧パルスを使用するのが特に好ましく、少なくとも七つの電圧パルスを使用するのが極めて特に好ましい。バーストシグナルの電圧パルスの間の時間間隔の逆数が、使用している超音波トランスデューサーの固有周波数に相当しているのが特に好ましい。単一の電圧パルス又はバーストシグナルからなる超音波シグナルの発出が、少なくとも1Hz、特に好ましくは少なくとも10Hzの周波数で繰り返されるのが好ましい。レシーバーにおいては、押出し加工の間に、ゴム混合物の中を透過した後で、超音波が、ふたたび電圧シグナルに変換され、迅速に、好ましくは1分以内に評価することができる。
【0055】
そのゴム混合物は、超音波トランスデューサーの間のギャップの中に存在させる。この場合、超音波トランスデューサーとゴム混合物との間で、直接的な接触が存在しているのが好ましい。そのギャップが、側面で制限されているのが好ましく、それにより、5mm以上の高さ、特に好ましくは10mm以上の高さを有する流路が形成される。流路の幅は、好ましくは15mm以上、特に好ましくは20mm以上である。ゴム混合物は、その検出バンドを通って、好ましくは0.1m/分以上、特に好ましくは1m/分以上、極めて特に好ましくは10m/分以上の速度で流動する。好ましい実施態様においては、この目的のためには、エクストルーダーが使用される。その流路が、そのエクストルーダーの構成要素であるのが好ましい。この場合、ゴム混合物の一部、好ましくはゴム混合物の1容積%より多く、好ましくは10容積%より多く、特に好ましくは25容積%より多くが、超音波によって分析される。これによって、ゴム混合物のシラン化の、単なる抜き取り検査ではなく、代表的なチェックをすることが可能となる。
【0056】
超音波を発信するトランスミッターと、超音波を受信するレシーバーとの間の間隔は、好ましくは少なくとも5mm、特に好ましくは5mm~15mmである。
【0057】
音波を用いて照射される際に、その音響トランスデューサーの間にあるゴム混合物の中の圧力は、好ましくは少なくとも10bar、特に好ましくは少なくとも30bar、極めて特に好ましくは50~100barの間である。
【0058】
5~7MHzの周波数範囲にある超音波を使用するのが好ましい。1種又は複数の周波数fの超音波を、測定のために使用することができる。物質に対して、周波数スペクトルを適用する場合には、たとえば、5~7MHzの範囲の超音波を使用するということは、典型的には、発出される超音波の周波数fに関して、境界周波数、すなわち、超音波の振幅又は超音波の強度がその極大値の50%である、下側及び上側周波数の算術平均が、5~7MHzであるということを意味している。
【0059】
本発明の好ましい実施態様においては、電圧シグナルに変換される音波の振幅が、トランスミッターの中で音響的シグナルが発出されてからの経過時間の関数として測定される。それらの「Aスキャン(A scan)」が、時間の関数として記録される。
【0060】
本発明の実施態様においては、超音波のシグナル強度を測定するために、超音波の振幅値、好ましくは超音波の最大振幅値を、Aスキャンの超音波シグナルから求め、その超音波の振幅aの対数値を時間tに対してプロットする。
【0061】
超音波シグナルのエコーよりは、Aスキャンの超音波シグナルを評価する方が好ましい。
【0062】
本発明のまた別の実施態様においては、超音波の強度iを、超音波の振幅aの平方を計算することによって求め、そして超音波の強度iの対数値を、時間tに対してプロットする。
【0063】
相対減衰係数αrelは、超音波の振幅a及び対照の超音波の振幅aref、並びに超音波トランスデューサーの間の距離xから、式(1a)に従って求めるのが好ましい:
αrel = (ln aref - ln a)/x = (ln iref-ln i)/2x (1a)
別な方法として、超音波の強度i、対照の超音波の強度iref、及び超音波トランスデューサーの間の距離xから、相対減衰係数αrelを求めることも可能である。
【0064】
チェック対象のゴム混合物と同じ組成を有するゴム混合物を対照として使用するのが好ましい。
【0065】
対照として、まだ早期架橋されていない対照ゴム混合物を使用するのが、極めて特に好ましい。
【0066】
また別の好ましい実施態様においては、対照の超音波シグナルのシグナル強度を、押出し加工において、相当する加工条件及び測定条件の下で、少なくとも1kgのゴム混合物を押出すことによって測定する。相当する加工条件及び測定条件は、処理量の変化が10%未満、超音波トランスデューサーの間の押出し物の温度変化が±5K未満、そして超音波トランスデューサーの間の押出し物の中の圧力の変化が±5bar未満であるならば、押出し及び測定の間に存在する。処理量の変化が5%未満、超音波トランスデューサーの間の押出し物の温度の変化が±2K未満、そして超音波トランスデューサーの間の押出し物の中における圧力の変化が、±2bar未満であるという加工条件及び測定条件が、好ましい。処理量の変化が2%未満、超音波トランスデューサーの間の押出し物の温度の変化が±1K未満、そして超音波トランスデューサーの間の押出し物の中における圧力の変化が、±1bar未満であるという加工条件及び測定条件が、特に好ましい。
【0067】
本発明のまた別の実施態様においては、超音波シグナルの値を二乗し、次いで積分し、それにより、超音波の強度Iの積分値を求める。別な方法として、超音波の強度Iの平方根から、積分した超音波の振幅Aを求めることもできる。
【0068】
相対減衰係数αrelを、式(1b)に従い、それぞれ、積分した超音波の強度I及び積分した超音波の振幅Aの助けを借りて、求めるのが、特に好ましい。
αrel = (ln Aref - ln A)/x = (ln Iref-ln I)/2x (1b)
【0069】
本発明の好ましい実施態様においては、高速フーリエ変換(FFT)を使用して、それぞれ、超音波の振幅及び超音波の強度i(f)の周波数スペクトルa(f)を求める。
【0070】
相対減衰係数αrelを、式(1c)に従い、超音波の振幅a(f)、対照の超音波の振幅aref.(f)から、及びそれぞれ、超音波の強度i(f)、対照の超音波の強度iref(f)、並びに超音波トランスデューサーの間の距離xから、周波数fの関数として求めるのが好ましい。
αrel(f)=(ln aref.(f) - ln a(f))/x = ln iref.(f) - ln i(f))/2x (1c)
【0071】
本発明の特に好ましい実施態様においては、周波数スペクトルを、最小周波数fmin.及び最大周波数fmax.を用いた周波数範囲に細分し、積分する。これらの周波数範囲に、超音波の振幅の最大値、及びそれぞれ、超音波の強度が含まれているのが好ましい。
【0072】
相対減衰係数αrelは、式(1d)に従って、超音波の振幅A(fmin.,fmax.)、対照の超音波の振幅Aref.(fmin.,fmax.)、及び超音波トランスデューサーの間の距離xから、fmin.(末端を含む)からfmax.(末端を含む)までの周波数範囲の関数として求めるのが好ましい:
αrel(fmin.,fmax.)=(ln Aref.(fmin.,fmax.) - ln A(fmin.,fmax.))/x = (ln Iref.(fmin.,fmax.) - ln I(fmin.,fmax.))/2x (1d)
別な方法として、相対減衰係数αrelを、式(1d)に従って、超音波の強度I(fmin.,fmax.)、対照の超音波の強度Iref.(fmin.,fmax.)、及び距離xから求めることもできる。
【0073】
相対減衰係数α
relの標準偏差σは、当業者には公知の方法によって、順に並べた(in chronological succession)特定数n個の測定値についての測定値(好ましくは押出し加工の際の)から求められる。標準偏差についての測定時間は、測定値の数nと、測定の間の一定の時間間隔とから得られる。最初に、測定時間における相対減衰係数の平均値
【数1】
を、式(1e)に従って求める。測定時間における個々の測定値と平均値との間の差を2乗したものの合計が、その測定時間における相対減衰係数の分散σ
2である。その分散の平方根が、相対減衰係数α
relの標準偏差σである(式(1f))。
【数2】
【0074】
相対減衰係数αrelは、その超音波トランスデューサーの固有周波数のところで測定するのが好ましい。
【0075】
好ましい実施態様においては、超音波トランスデューサーの間の距離xは、内パスを使用して0.1mm以下の誤差で測定する。
【0076】
相対減衰係数αrelの標準偏差σを求めるために使用する測定値の個数は、好ましくは1000未満、特に好ましくは100未満、極めて特に好ましくは20未満である。
【0077】
相対減衰係数α
relの移動標準偏差σ
gを求めるのが好ましい。移動標準偏差σ
gは、α
relの移動平均から式(1h)に従って計算し、式(1g)に従って計算する。式(1g)及び(1h)の中の変数x及びyは、それぞれ、移動標準偏差σ
gの測定での時間間隔の上限及び下限である。
【数3】
【0078】
実施態様においては、ゴム混合物の中での音波の速度VSは、相対減衰係数の測定と並行して、式(2)に従って求める。
VS=x/(toF - tUS) (2)
【0079】
トランスミッターにおける発出と、レシーバーにおける受信との連結点(juncture)の間で超音波シグナルが必要とする時間が、toFである。超音波トランスデューサーの中で超音波シグナルが必要とする時間が、tUSである。時間tUSは、超音波-トランスデューサーの温度で決まるが、それが、押出し加工の際の温度と同程度であるのが好ましい。時間tUSは、超音波トランスデューサーの間の距離xを変化させてtoFを測定することによって、測定される。この場合、超音波トランスデューサーの間を参照に使用するのが好ましい。5mm~30mmの範囲で、少なくとも四つの距離を設定するのが好ましい。時間tUSは、超音波トランスデューサーの間の距離xに対するtoFのプロットの線形回帰の軸切片から取得される。
【0080】
シラン化が不十分な淡色充填剤は、それぞれ、超音波の振幅aの減少及びレシーバーにおける超音波の強度iの低下、並びに相対減衰係数αrelの増大をもたらす。音波の速度は、不変のままである。相対的な音響的減衰係数αrelの標準偏差σは、そのゴム混合物の均質性の目安である。
【0081】
好ましい実施態様においては、ゴム混合物が、流路の幅一杯に配置された、1組又は複数の超音波センサーのペアの検出バンドの中を通過する。
【0082】
特に好ましい実施態様においては、そのゴム混合物が、わずかにずらせて配置された二つの検出バンドの中を通過する。これのメリットは、ゴム混合物の主要部分、好ましくはゴム混合物全体が分析されることである。
【0083】
装置
本発明にはさらに、淡色充填剤のシラン化をチェックするための本発明の方法を実施するための、エクストルーダー、相互に隣接するように配された、少なくとも2組の超音波センサーのペアの少なくとも一つの検出バンド、及び少なくとも1種の評価ユニットを含む装置も含まれる。その検出バンドは、好ましくは、そのエクストルーダーの構成要素である。
【0084】
本発明の装置の好ましい実施態様を、
図1~
図3に示す。
図1は、例として、検出バンドを平面図で示しているが、これは、超音波センサーのペア(4)(すなわちそれぞれのペアで、一つのセンダーと一つのレシーバー)、及び流路(5)で構成されている。
図2には、
図1の配置の側面図を示している。
図3は、エクストルーダー(1)、検出バンド(超音波トランスデューサーのペア(4)からなっている)、及び流路(5)、並びに超音波-チェック用の電子機器(2)、及び評価ユニット(3)としてのコンピューターの配置を示している。
【0085】
少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造するための方法
本発明はさらに、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造するための方法も提供するが、そこでは、160℃より高い温度で、少なくとも1種の淡色充填剤が、少なくとも1種のゴム及び少なくとも1種のシラン化剤と混合され、そして、そのようにして得られたゴム混合物の少なくとも一部が、シラン化をチェックするための本発明の方法によってチェックされる。
【0086】
そのようにして得られたゴム混合物の1容積%より多く、特に好ましくは10容積%より多く、極めて特に好ましくは25容積%より多く、非常に極めて特に好ましくは50容積%より多く、最も好ましくは80容積%より多くが、シラン化をチェックするための本発明の方法によってチェックされるのが好ましい。
【0087】
その製造方法は、好ましくは160℃より高くから200℃まで、特に好ましくは160℃より高くから180℃までの温度で実施される。
【0088】
上述の方法は、好ましくは、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造するための方法であって、そこでは、少なくとも1種の淡色充填剤が、160℃より高い温度で、少なくとも1種のゴム及び少なくとも1種のシラン化剤と混合される。そして、そのようにして得られたゴム混合物の少なくとも一部が、シラン化をチェックするための本発明の方法によってチェックされ、そして、そのゴム混合物の相対減衰係数αrelの移動標準偏差σgが、1~100秒、好ましくは1~50秒、特に好ましくは1~15秒の測定時間をベースにして、0.5[1/m]未満、好ましくは0.3[1/m]未満であり、そして、そのゴム混合物の相対減衰係数αrelが、0[1/m]未満、好ましくは-5[1/m]未満、特に好ましくは-5[1/m]未満且つ-15[1/m]以上である。
【0089】
上述の好ましい方法によって得られたゴム混合物が、まだ早期架橋されていないのが好ましい。
【0090】
本発明の方法は、ここでは、連続法でも、バッチ法でも実施することができる。
【0091】
好ましい実施態様においては、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造するための方法が、そのようにして得られたゴム混合物を押出し加工する前に実施され、そしてシラン化をチェックするための方法が、エクストルーダーの中で、押出し加工によって得られた押出し物に音波を照射することにより実施される。
【0092】
また別の好ましい実施態様においては、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造するための方法と、シラン化をチェックするための本発明の方法とが、同一のエクストルーダーの中で実施される。この場合においては、少なくとも1種の淡色充填剤、少なくとも1種のシラン化剤、及び少なくとも1種のゴムをエクストルーダーの中に導入し、その中で、シラン化剤と淡色充填剤とから、シラン化された淡色充填剤が形成される。
【0093】
最後に述べた実施態様においては、場合によっては、少なくとも1種の淡色充填剤、少なくとも1種のゴム、及び少なくとも1種のシラン化剤を、エクストルーダーの内部又は外部で、160℃以下の温度でプレミックスすること、及び次いでこの混合物を、そのエクストルーダーの中で、音波を用いて照射することも可能である。
【0094】
シラン化をチェックするための本発明の方法に関連して初期ステージで述べた、記述及び好ましい範囲は、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造するための方法で使用される成分にも同様にあてはまるが、前記成分には、少なくとも1種の淡色充填剤、少なくとも1種のゴム、及び少なくとも1種のシラン化剤が含まれる(これらに限定される訳ではない)。
【0095】
少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造するためのプロセスにおいては、そのゴム混合物の中の淡色充填剤の全量を基準にして、5~15重量%の少なくとも1種のシラン化剤を使用するのが好ましい。
【0096】
その他の追加物質
少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物には、たとえば以下のようなその他の追加物質が含まれていてもよい:他の充填剤、他の添加剤たとえば老化防止剤、可塑剤、他の架橋剤、加硫促進剤及び/若しくは加硫遅延剤、並びに/又は他の助剤。
【0097】
本発明の目的のためには、「他の充填剤」という文言は、先に、早い段階で、より詳しく説明した、少なくとも1種の淡色充填剤、及び少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤以外の充填剤を意味している。
【0098】
他の充填剤の例は、炭素ベースの充填剤、たとえば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、さらには磁化可能な充填剤たとえば、カルボニル鉄粉体、酸化鉄、フェライト、並びに/又は繊維、たとえば、アラミド繊維パルプ、及び炭素繊維である。
【0099】
老化遅延剤として適切なものを以下に挙げる:着色性及び非着色性の老化遅延剤、たとえば、パラフェニレンジアミン、イソプロピルフェニルパラフェニレンジアミン(IPPD)、パラ-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DDTPD)、アミン、たとえば、トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、[(フェニル)アミン]-1,4-ナフタレンジオン(PAN)、ビス(4-オクチルフェニル)アミン(ODPA)、スチレン化ジフェニルアミン(SDPA)、モノ-及びビス-フェノール、たとえば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール(BPH)、2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)(NKF)、2,2’-ジシクロペンタジエニルビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(SKF)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール(ZKF)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)、置換フェノール(DS)、スチレン化フェノール(SPH)、メルカプトベンズイミダゾール、たとえば、2-メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛4-及び5-メチル-2-メルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)。
【0100】
可塑剤の例は、長鎖エステル及び/又はエーテルであって、たとえば以下のものである:チオエステル、フタル酸エステル、アルキルスルホン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、ジベンジルエーテル、及び/又は鉱油(パラフィン系、芳香族ナフテン系、又は合成油)。
【0101】
本発明の目的のためには、「他の架橋剤」という文言は、先に、早い段階で、より詳しく説明した、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤及び少なくとも1種のシラン化剤以外の架橋剤を意味している。
【0102】
他の架橋剤としては、以下のものがあり得る:
ネットワークノード形成剤:ネットワークノード形成剤は、2本の個別のポリマー鎖を相互に結合させることが可能な分子であって、たとえば、
- 硫黄(可溶性又は不溶性)及び/又は硫黄供与体、たとえば、ジチオジモルホリン(DTDM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、ホスホリルポリスルフィド、たとえば、Rhenocure(登録商標)SDT/S(Lanxess Deutschland GmbH製)、及び/又は
- ペルオキシド、たとえば、ジ-tert.-ブチルペルオキシド、ジ(tert.-ブチルペルオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ジ(tert.-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、ジメチルジ(tert.-ブチルペルオキシ)ヘキシン、ジ(tert.-ブチルペルオキシ)ブチルバレレート、
- レソルシノール、アルデヒド-アミン縮合物、たとえば、ヘキサメチレンテトラミン、レソルシノール・ホルムアルデヒドプレ縮合物、及び/又は加硫樹脂、たとえばハロメチルフェノール樹脂、
- キノンジオキシム、
- ビスフェノール。
【0103】
加硫促進剤の例は:
- カルバメート及びトリアジン、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)、有機トリアジン、
- チアゾール、たとえば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、亜鉛メルカプトベンゾチアゾール(ZnMBT)、チアジアゾール(TDD)、
- スルフェンアミド、たとえばシクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、
ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ブチルベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、ジシクロヘキシル-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBS)、2-(4-モルホリニルメルカプト)ベンゾチアゾール(MBS)、
- チウラム、たとえばテトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラ(ヘキサ)スルフィド(DPTT)、
- ジチオカルバメート、たとえばZnジメチルジチオカルバメート(ZDMC)、Cuジメチルジチオカルバメート、Biジメチルジチオカルバメート、Znジエチルジチオカルバメート(ZDEC)、テルルジエチルジチオカルバメート(TDEC)、Znジブチルジチオカルバメート(ZDBC)、Znエチルフェニルジチオカルバメート(ZEPC)、Znジベンジルジチオカルバメート(ZBEC)、Niジブチルジチオカルバメート(NBC)、セレンジエチルジチオカルバメート(SeEDC)、セレンジメチルジチオカルバメート(SeDMC)、テルルジエチルジチオカルバメート(TeEDC)、
- チオホスフェート及びジチオホスフェート、たとえば、亜鉛O,O-ジ-n-ブチルジチオホスフェート(ZBDP)、亜鉛O-ブチル-O-ヘキシルジチオホスフェート、亜鉛O,O-ジイソオクチルジチオホスフェート(ZOPD)、ドデシルアンモニウムジイソオクチルジチオホスフェート(AOPD)、たとえば、Rhenogran(登録商標)のグレードZDT、ZAT、ZBOP(Rhein Chemie Rheinau GmbH製)、
- 尿素/チオ尿素、たとえば、エチレンチオ尿素(ETU)、N,N,N’,N’-テトラメチルチオ尿素(TMTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、ジブチルチオ尿素(DBTU)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(diuron)など、及び/又は
- キサントゲン酸塩促進剤、たとえば、亜鉛イソプロピルキサントゲン酸塩(ZIX)、
- グアニジン、たとえば、ジフェニルグアニジン(DPG)及び/又はN’,N-ジ-オルトトリルグアニジン(DOTG)、並びにグアニジン非含有代替え促進剤、たとえば、Rhenogran(登録商標)XLA60、
加硫遅延剤の例は、以下のものである:N-ニトロソジフェニルアミン、N-シクロヘキシルチオフタルイミド(CPT)、たとえば、Vulkalent(登録商標)G)、スルホンアミド誘導体(たとえば、Vulkalent(登録商標)E/C)、無水フタル酸(たとえば、Vulkalent(登録商標)B/C)、又は無水安息香酸。
【0104】
助剤の例は、以下のものである:分散助剤たとえば、脂肪酸、ステアリン酸、オレイン酸、活性化剤たとえば、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化ビスマス、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び/又は水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、並びに難燃剤たとえば、酸化アンチモンなど。
【0105】
上述の、他の充填剤、添加剤、可塑剤、他の架橋剤、加硫促進剤、及び/又は加硫遅延剤などは、当業者にはなじみのあるものであって、粒状化した形態、たとえば、ポリマー結合添加剤の形態、或いは、欧州特許出願公開第2314442A号明細書に記載されているような架橋剤マスターバッチの形態で使用することも可能である。
【0106】
ゴム混合物をさらに加工して、たとえば、マスターバッチ、ベース混合物、及び架橋性ゴム混合物とすることもできる。
【0107】
マスターバッチは、典型的には、ゴムを基準にして、添加剤の割合が高く、例としては次のような比率が挙げられる:
2.5~90重量%のゴム、
0~50重量%の可塑剤、
2~80重量%のシラン化された淡色充填剤、
0~20重量%の分散剤、
0~10重量%のシラン。
【0108】
ベース混合物(base mixture)とは、実際の目的に使用される前に架橋剤及び場合によっては加硫促進剤をさらに添加する必要があるゴム混合物であって、たとえば、以下のものである:
100phrのゴム、
0~100phrの可塑剤、
0~200phrの充填剤(それらの少なくとも10%は、シラン化された淡色充填剤である)、
0~30phrの助剤、及び
0~10phrの老化遅延剤。
【0109】
架橋性ゴム混合物は、0.01~20phrの1種又は複数の他の架橋剤、並びに場合によっては加硫促進剤、そして場合によっては加硫遅延剤をさらに含む、ゴム混合物である。
【0110】
特に好ましいのは、30~110phrのカーボンブラック及び沈降シリカ、3~9phrのシラン、2~7phrの酸化亜鉛、さらには0.5phr~4phrの硫黄及び1~5phrの加硫促進剤を含む架橋性ゴム混合物である。
【0111】
本発明にはさらに、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含む架橋性ゴム混合物を製造するための方法も含まれているが、この場合、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を製造した後で、1種又は複数のさらなる架橋剤が添加される。
【0112】
ベース混合物及び架橋性ゴム混合物のマスターバッチの製造は、たとえば、PCT/EP2009/058041号明細書に記載されているような、当業者には周知の方法で実施するのが好ましい。この場合、混合アセンブリーの中で、充填剤、助剤、他の架橋剤、及び/又は老化遅延剤が、ゴムと共に混合される。適切な混合アセンブリーの例は、インターナルミキサー、ロールユニット、及びエクストルーダーである。排出エクストルーダーを備えたインターナルミキサーが、特に適している。
【0113】
本発明の一つの実施態様においては、本発明の方法による第一のステップにおいて、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物が製造される。次のステップにおいて、その混合物が均質化される。
【0114】
本発明のまた別の実施態様においては、本発明の方法による第一のステップにおいて、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物が製造される。次のステップにおいて、その混合物が均質化される。次のステップにおいて、そのゴム混合物を130℃以下の温度にまで冷却した後で、さらなる混合アセンブリーに、さらなる架橋剤が添加される。この実施態様は、好ましくは、少なくとも1種のシラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物の、大規模な工業的製造において、特に好ましくは100kgを越える製造において使用される。
【0115】
「次のステップ」という文言は、この文脈においては、それに相当するステップが、前に述べたステップに続かなければならないが、直接続く必要はないということを意味している。前に述べたステップと、「次のステップ」の間に、他のステップが存在しているということも可能である。
【0116】
ここで特に好ましいのは、連続法であって、そこでは、マスターバッチ、又はベース混合物、又はそうでなければ架橋性ゴム混合物が、1台又は複数のエクストルーダーを使用する1段又は多段のプロセスステップで製造される。
【0117】
極めて特に好ましいのは、独国特許出願公開第A102008040138号明細書に記載されている、架橋性ゴム混合物のための製造方法であって、そこでは、少なくとも1種の非連続のニーダープロセスで、ベース混合物を製造し、そしてそのベース混合物に、欧州特許出願公開第A2314442号明細書に記載されているような、架橋剤マスターバッチの形態にあるさらなる架橋剤を添加し、そしてエクストルーダーを使用することによる連続プロセスで、架橋剤マスターバッチをそのベース混合物と混合する。
【0118】
本発明はさらに、シラン化された淡色充填剤を含む架橋性ゴム混合物の本発明の製造を含み、そして次いで、100℃~200℃の範囲の温度で加硫させて、加硫物を製造する方法も提供する。
【0119】
本発明には同様に、一般的にはゴム混合物、特には架橋性ゴム混合物を製造するための本発明の方法のための、本発明の試験方法のための4~10MHz、好ましくは5~7MHzの範囲の、1種又は複数の周波数での、超音波の振幅a、積分された超音波の振幅A及び/又は超音波の強度i、積分された超音波の強度Iを測定するための測定装置の使用も含まれる。これにはさらに、上述の方法において、相対減衰係数αrelを測定するために説明した、測定装置の使用が含まれているのが好ましい。
【0120】
したがって、本発明は、淡色充填剤、特に沈降シリカの「in situ」シラン化のインラインモニタリングを可能とする、シラン化のチェック方法を提供する。本発明の方法により、シラン化された淡色充填剤を含むゴム混合物を低コストで製造することが可能となるが、その理由は、高温、特に160℃を越える温度で製造を実施することができるからである。ゴム混合物の相対減衰係数αrel、及びさらには相対減衰係数αrelの標準偏差σ、好ましくは移動標準偏差σgが、ゴム混合物の早期架橋の検出に役立つ。
【0121】
さらにその方法は、非破壊的であり、そしてゴム混合物の追加の成分としてのカーボンブラックに、高い許容度を有している。
【0122】
記述で使用されるタイトルは、単に細分化に役立つことだけを目的としており、いかなる制限効果も付随しない。
【0123】
以下における実施例、イメージ、及び図面は、本発明を説明するのに役立たせるものであって、いかなる制限効果も付随しない。
【実施例】
【0124】
タイヤトレッドのための典型的なゴム混合物の成分を、表1に示した。
【0125】
【0126】
これらの成分を、各種のバッチにおいて、表2に示した混合指示書に従って、混合した。
【0127】
【0128】
各種のバッチR1M1~R5M1において、混合パラメーターの回転速度を、表3のように変化させた。ここでR1~R5は、各種の配合物であり、そしてM1は、混合ステージ1である。
【0129】
【0130】
混合物のR1M1-R5M1を、Gumix S.A製の1.5L(Intermesh)インターナルミキサーの中で、5分間混合する。
【0131】
インターナルミキサーの回転速度の違いによって、各種の混合温度値が達成される。当業者には公知の方法により、インターナルミキサーからゴム混合物を排出させた直後にニードル温度計を用いて測定した、排出温度TAは、インターナルミキサーにおける混合温度、したがってゴム混合物が製造された温度の目安である。
【0132】
表3に、「in situ」シラン化のためのプロセスパラメーターの関数として、同一の組成を有するゴム混合物の排出温度TAを示す。混合物R1M1及びR2M1の排出温度TAは、160℃よりも顕著に低い。R3M1の排出温度は150℃であり、これは、対照ゴム混合物である。混合物R4M1及びR5M1は、160℃より高い温度で製造された。
【0133】
この方法は、タイヤ業界において、第一の混合ステージのための、「in situ」シラン化プロセスのための典型的な方法に相当する。
【0134】
インターナルミキサー中での混合プロセスの後で、それらの混合物バッチを、2本ロールミル(Rubicon Gummitechnik und Maschinentechnik GmbH製)で、50℃に温度制御しながら、ロールミル掛けし(左側に3回、そして右側に3回カット)、引き出すと、混合物のミルドシートが得られた。そのミルドシートから、条片を切り出した。それらの条片を、低レベルの混合作用を有する、EEK32.12L単軸エクストルーダー(Rubicon Gummitechnik und Maschinentechnik GmbH製)にフィードした。エクストルーダーの出口端のところに、10mmの距離で離した二つの対向する超音波トランスデューサーを備えたセンサーヘッドがあり、そしてさらには、流動している混合物の中に突き出したプローブを用いた温度センサーT1、及び圧力/温度センサーがある。この温度センサーで、ゴム-金属界面での圧力p及び温度T2を測定する。センサーヘッドの中の流路の幅は20mm、そしてその高さは10mmである。超音波トランスデューサーの直径は、8mmである。センサーヘッド及びエクストルーダーを制御して、温度100℃とした。スクリューの回転速度は、20rpmであった。これは、10分間で約1kgのゴム混合物の処理量に相当する。
【0135】
インラインでのシラン化のチェックは、1対のK6V1超音波トランスデューサー(GE Sensing & Inspection Technologies GmbH製)を使用し、透過法で実施した。その超音波トランスデューサーは、PCM 100LAN試験用電子機器(Inoson GmbH製)により制御した。超音波トランスデューサーの中で、圧電効果を使用して、150ms刻みの超音波パルスを発生させた。超音波トランスデューサーが、電圧パルスを超音波シグナルへと変換する。この場合、超音波トランスデューサーの固有周波数:6MHzで、7バーストを用いて、超音波トランスデューサーを励起させた。トランスミッターからの超音波パルスが、押出し加工されているゴム混合物の中を通過して、そのゴム混合物によってそこで減衰される。超音波シグナルの振幅が低下する。レシーバーが、その音響的シグナルを受け取り、それを電圧シグナルへと変換する。PCM100LANのハードウェアによって、その電圧シグナルを増幅し(35~40dB)、コンピューターへと送る。コンピューターは、高速フーリエ変換(FFT)として知られているものを使用して、「Aスキャン」の第一の音響的パルスを評価する。このようにして、超音波の周波数fの関数として得られた振幅スペクトルa(f)を、5.8~6.2MHzの間で積分し(参照、表4)、その対数を計算した。各種の混合物バッチR1M1~R5M1について、そのようにして得られた数値、対数積分したln A(fmin.,fmax.)を、温度センサーT1及びT2、並びにさらには圧力の値とともに、7.5分にわたって、時間tの関数としてプロットした。エミッターのピエゾ結晶からレシーバーのピエゾ結晶に達するまでに、音響的シグナルが必要とする時間toFを、さらに測定した。このことを、エクストルーダーの出口端にあるセンサーヘッドから混合物が排出されるまでに、達成する。混合物のセンサーヘッド中での滞留時間は、1分未満であった。
【0136】
ランバート・ベールの法則により、ln A(fmin.,fmax.)についての値から、相対減衰係数αrel(fmin.,fmax.)を計算する。
αrel(fmin.,fmax.) = (ln Aref.(fmin.,fmax.) - ln A(fmin.,fmax.)/x (1d)
ここで、xは、超音波トランスデューサーの間の距離である。対照の押出し物R3M1(140℃~160℃の間の混合温度で)では、Δt=7.5分の押出し時間での、式(1d)におけるln Aref.(fmin.,fmax.)の平均値は、4.06a.u.である。音響トランスデューサーの間の距離は10mmであった。
【0137】
それぞれの押出し物についての、f
min.=5.8MHzから、f
max.=6.2MHzまでの周波数範囲での結果は、
図4~8に示している。
【0138】
表4に、それぞれの混合物バッチの押出し加工の場合のΔt=7.5分の時間の間での、相対減衰係数α
rel(f
min.,f
max.)の平均値を示しているが、これは
図4~8に相当する。これらの平均値は、式(1e)に従って計算した。それぞれの場合において、Δt=7.5分での、相対減衰係数α
relの標準偏差σ(f
min.,f
max)の平均値をさらに、式(1f)に従って求めた。
【0139】
表4にはさらに、8秒の時間での移動標準偏差σgも示している。移動標準偏差σgは、αrelの移動平均から式(1h)に従って計算し、式(1g)に従って計算する。
【0140】
図4~8には、t(n-25)からt(n+25)までの51の測定ポイント(x=y=25)を含む時間間隔での、連結点t(n)でのそれぞれの測定ポイントnでの、標準偏差σ
gの移動値を示している。ここでの文字nは、測定ポイントの数を表している。標準偏差σ
gは、連結点t(n)より前の25の測定値、連結点t(n)での測定値、及び連結点t(n)より後の25の測定値を使用することにより求める。「移動値(moving value)」という文言は、標準偏差σ
gを、t(n-24)~t(n+26)の時間間隔における、連結点t(n+1)での測定ポイントn+1に従って求めたということを意味している。したがって、σ
gを求めるための、51の測定ポイントを構成する時間間隔は、1測定ポイント分ずれる。
図4~8におけるα
rel(f
min.,f
max.)の移動標準偏差σ
gは、8秒の時間間隔の間に測定した。
【0141】
圧力センサーpについての平均値、並びにプローブ付き温度センサーT1及びプローブ無し温度センサーT2についての平均値も、さらに記述している。音速VSは、第一の電圧振幅に対する、距離xと、時間toFとから求めた。この場合、式(2)に従って、両方の超音波トランスデューサーの中での、音波シグナルのリードタイムtUS=4.6μsを考慮に入れる必要がある。
VS=x/(toF - tUS) (2)
【0142】
特徴的な超音波の値に加えて、ムーニーML1+4(100℃)粘度を測定した。
【0143】
【0144】
表4には、ゴム混合物では、排出温度TA(参照、表3)が高くなるにつれて、動的貯蔵弾性率G’(1%、1Hz、60℃)の値が低下するということが示されている。
【0145】
ムーニーML1+4(100℃)粘度の値は、最初のうちは、排出温度TAが高くなるほど、シリカ表面のシラン化が進むことにつれて、同様に低下する。しかしながら、R5M1は、R4M1及びR3M1に比較して、ムーニーML1+4(100℃)粘度の増加が大きいことを示している。R4M1及びR3M1が、まだ早期架橋をしていないのに対して、R5M1は早期架橋をしている。
【0146】
表4、及びさらには
図4~8からも明らかなように、音響的減衰係数α
relは、ゴム混合物の排出温度が高くなるにつれて、相応に低下している。相対的音響的減衰係数α
relの値は、この場合においては、貯蔵弾性率G’(1%、1Hz、60℃)に相関している。ゴム混合物R1M1~R5M1が、超音波測定の際の圧力及び温度に相当する値で、出来上がっているとすると、減衰係数α
relは、貯蔵弾性率G’(1%、1Hz、60℃)に類似して、シリカ表面のシラン化の効率の目安となる。表3が示しているように、これは、あてはまる。
【0147】
押出し物R5M1の相対減衰係数αrelは、0[1/m]よりも顕著に低く、-22[1/m]の値である。
【0148】
R1M1~R4M1に比較して、押出し物R5M1のまた別の極めて顕著な差は、15秒の短い時間間隔でのα
relの値の移動標準偏差σ
gである。押出し物R5M1(
図8)のα
relについての値に関連する線は、R1M1~R4M1に関する線(
図4~7)よりも、顕著に大きなレベルで変動している。したがって、押出し物R1M1~R4M1での、表4において8秒でのα
relの移動標準偏差σ
gの平均値は、小さい(それぞれ、0.1m
-1及び0.2m
-1)。180℃の排出温度T
Aを有するR5M1での、8秒でのα
relの移動標準偏差σ
gは、極めて大きい(1.3m
-1)。R5M1早期架橋をしてしまっており;このことは、R5M1の高いムーニーML1+4(100℃)粘度とも関連している。
【0149】
7.5分の全押出時間での、相対減衰係数αrelの標準偏差σgは、押出し物R1M1~R4M1では1m-1、R5M1では3m-1である。しかしながら、7.5分もの長い時間間隔では、押出し物R1M1~R4M1とR5M1との間の標準偏差の相対的な差は、移動標準偏差σgのそれよりは顕著に小さい。その理由は、時間間隔が長引くと、測定条件及び/又は押出し加工パラメーターにおける小さな変動であっても、標準偏差に寄与し、そのため、全体の標準偏差の値が、大きくなる。
【0150】
したがって、ゴム混合物の早期架橋の検出は、1~100秒、特に好ましくは1~50秒、極めて特に好ましくは1~15秒、本発明の場合では8秒の時間間隔での、αrelの移動標準偏差σgによって、好適に定義することができる。
【0151】
バッチR1M1~R5M1のすべてにおける、音速VSについて同等の値であるということは、それらの混合物バッチの混合温度、圧力、及び組成が均等であることを証明している。