(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】光学偽造防止素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20240111BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20240111BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240111BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20240111BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20240111BHJP
B42D 25/324 20140101ALI20240111BHJP
B42D 25/373 20140101ALI20240111BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G03H1/02
G02B5/18
G02B5/28
G02B5/26
B42D25/324
B42D25/373
(21)【出願番号】P 2021555864
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2020081592
(87)【国際公開番号】W WO2020200070
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】201910251304.8
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517026966
【氏名又は名称】中▲鈔▼特▲種▼防▲偽▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHONGCHAO SPECIAL SECURITY TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.6 Xinghuo Road, Science City, Fengtai District, Beijing 100070, China
(73)【特許権者】
【識別番号】517026977
【氏名又は名称】中国印▲鈔▼造▲幣▼▲總▼公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA BANKNOTE PRINTING AND MINTING CORP.
【住所又は居所原語表記】Jia.143,Xizhimenwai Street,Xicheng District, Beijing 100044, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー,チュンフア
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウェイウェイ
(72)【発明者】
【氏名】スン,カイ
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/147185(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104647934(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107521251(CN,A)
【文献】特表2005-533290(JP,A)
【文献】特表2005-525946(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106891637(CN,A)
【文献】特開2016-080848(JP,A)
【文献】特開2008-107472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00
G03H 1/02
G02B 5/18
G02B 5/28
G02B 5/26
B42D 25/324
B42D 25/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学偽造防止素子であって、
第1領域、第2領域及び第3領域を有するレリーフ構造層を備え、前記第1領域は第1微細構造を有し、前記第2領域は第2微細構造を有し、前記第3領域は構造無し平坦領域であり、
前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きく、
前記第1領域及び前記第3領域
に対応する位置のいずれか
にも重なる反射層、誘電体層及び吸収層
が設けられており、前記第2領域は反射層を有せず、前記第2領域は透かし領域であり、前記第2領域は前記第1領域と前記第3領域との間に位置し、
前記誘電体層はプリントによって形成され、前記第1領域に
対応する誘電体層の前記レリーフ構造層側から離れた表面形態は前記レリーフ構造層の表面形態と明らかに異なることを特徴とする光学偽造防止素子。
【請求項2】
前記第1微細構造は周期的構造及び非周期的構造のうちの一方、又は周期的構造と非周期的構造を組み合わせた構造であり、
前記第1微細構造の延在方向に沿う横断面構造は、正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、及びブレーズド格子構造のうちの1種の構造、又は正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、及びブレーズド格子構造のうちの少なくとも任意の2種の構造を組み合わせた構造であることを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項3】
前記第1微細構造の比体積の範囲は0.05um
3/um
2よりも大きく0.5um
3/um
2よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項4】
前記第1微細構造の比体積の範囲は0.1um
3/um
2よりも大きく0.3um
3/um
2よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の光学偽造防止素子。
【請求項5】
前記第2微細構造は、周期的構造及び非周期的構造のうちの一方、又は周期的構造と非周期的構造を組み合わせた構造であり、
前記第2微細構造の延在方向に沿う横断面構造は、正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、台形構造、及びブレーズド格子構造のうちの1種の構造、又は正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、台形構造、及びブレーズド格子構造のうちの少なくとも任意の2種の構造を組み合わせた構造であることを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項6】
前記第2微細構造の比体積の範囲は0.1um
3/um
2よりも大きく1um
3/um
2よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項7】
前記第2微細構造の比体積の範囲は0.2um
3/um
2よりも大きく0.5um
3/um
2よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の光学偽造防止素子。
【請求項8】
前記反射層の材料は、アルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの1種の金属、又はアルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの少なくとも任意の2種の金属を組み合わせた合金を含み、
前記誘電体層の主樹脂は、ポリウレタン、アクリル酸、及びポリエステルのうちの1種の樹脂、又はポリウレタン、アクリル酸、及びポリエステルのうちの少なくとも任意の2種の樹脂を組み合わせたポリマーを含み、
前記吸収層の材料は、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、及びチタンのうちの1種の金属、又はニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、及びチタンのうちの少なくとも任意の2種の金属を組み合わせた合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項9】
前記反射層は前記レリーフ構造層と隣接することを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項10】
前記第2領域は誘電体層及び吸収層を有しないことを特徴とする請求項9に記載の光学偽造防止素子。
【請求項11】
前記吸収層は前記レリーフ構造層と隣接することを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項12】
前記第2領域
に対応する位置には誘電体層及び吸収層
が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項13】
光学偽造防止素子の製造方法であって、
第1領域、第2領域及び第3領域を有し、前記第1領域が第1微細構造を有し、前記第2領域が第2微細構造を有し、前記第2微細構造の比体積が前記第1微細構造の比体積よりも大きく、前記第3領域が構造無し平坦領域であり、前記第2領域が前記第1領域と前記第3領域との間に位置するレリーフ構造層を形成するステップS1)と、
前記レリーフ構造層上に反射層、誘電体層及び吸収層を順に形成し、気相成長によって反射層を形成し、プリントによって誘電体層を形成し、気相成長によって吸収層を形成するステップS2)と、
透かし領域である第2領域
に対応する位置における反射層が完全に又は部分的に除去されるまで、ステップS2)の半製品を反射層の材料と反応可能な腐食雰囲気に配置するステップS3)と、を含むことを特徴とする光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項14】
ステップS3)では、前記第2領域
に対応する位置における反射層が完全に又は部分的に除去される過程は、
前記第2領域
に対応する位置における誘電体層及び吸収層も完全に又は部分的に除去されるステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
光学偽造防止素子の製造方法であって、
第1領域、第2領域及び第3領域を有し、前記第1領域が第1微細構造を有し、前記第2領域が第2微細構造を有し、前記第2微細構造の比体積が前記第1微細構造の比体積よりも大きく、前記第3領域が構造無し平坦領域であり、前記第2領域が前記第1領域と前記第3領域との間に位置するレリーフ構造層を形成するステップS1)と、
前記レリーフ構造層上に吸収層、誘電体層及び反射層を順に形成し、気相成長によって反射層を形成し、プリントによって誘電体層を形成し、気相成長によって吸収層を形成するステップS2)と、
前記反射層を形成した後、異なる厚さ方式でプリント工程を施して保護層を形成し、前記異なる厚さ方式は前記第1領域の保護層の最小厚さが前記第2領域の保護層の最小厚さよりも遥かに大きい方式であるステップS3)と、
透かし領域である前記第2領域
に対応する位置における反射層が完全に又は部分的に除去されるまで、ステップS3)の半製品を前記反射層の材料と反応可能な腐食雰囲気に配置して反射防止処理を行うステップS4)と、を含むことを特徴とする光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項16】
ステップS4)では、前記第2領域
に対応する位置における反射層が完全に又は部分的に除去される過程は、
前記第2領域の反射層が除去され、誘電体層及び吸収層がいずれも除去されていないステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
無機又は有機メッキ層を継続的に施す、又はコーティング工程を継続的に施すことによって、ほかの光学偽造防止機能又は補助機能を実現するステップをさらに含む請求項13~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学偽造防止の技術分野に関し、具体的には、光学偽造防止素子及び光学偽造防止素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査やコピー等の手段による偽造を防止するために、光学偽造防止技術は紙幣、クレジットカード、パスポート、有価証券及び製品包装等の様々な高セキュリティ性又は高付加価値の印刷物に広く使用されており、非常によい効果を実現する。
【0003】
様々な光学偽造防止技術では、微細構造によって形成される光学効果は回折、非回折等の効果を含み、画像設計との適合性が良好で、動的効果が明らかであるため、広く使用されている。微細構造による光学偽造防止技術は、画像の輝度を高めるために、一般には、金属反射層、例えば、アルミニウムを使用する。
【0004】
現在、光学薄膜に最も広く使用されている光学偽造防止技術であるホログラフィック技術は、光学微細構造によって形成される回折効果を利用して発展する光学技術である。1999年版第5版人民元の5元、10元、20元、50元、100元の偽造防止線はホログラフィック技術を採用し、人民元紙幣を振ると、きらきらしたホログラフィック紙幣デジタル画像を観察できる。
【0005】
また、多層干渉光学的変色技術は異なる観察視角で強い光学的変色効果を示すため、ますます人々に重要視されている。多層干渉光学的変色技術は一般には、気相成長方法によって反射層、誘電体層及び吸収層の蒸着を実現する。反射層、誘電体層及び吸収層は干渉光学的変色メッキ層の基本的なユニットを構成する。反射層の材料として、一般には、厚く、反射率が高いが、吸収層の材料として、一般には、薄く、半透明である特徴を有する。誘電体層は透明材料であり、厚さが所定の条件を満たすと、光が平行な反射層と吸収層によって形成されるファブリペロー共振器内で干渉する。
【0006】
吸収層側から観察すると、干渉光学的変色メッキ層は異なる角度で異なる色を示す。2015年版第5版人民元の100元の安全線は多層干渉光学的変色技術を採用し、正面から観察するとマゼンタであり、傾斜して観察すると緑色である。ホログラフィック、非回折等の光学微細構造偽造防止技術と多層干渉光学的変色技術を同一製品に集積すると、ホログラフィック、非回折による動的効果及び多層メッキ層による光学的変色効果を効果的に発揮でき、偽造防止効果をある程度高める。しかし、光学微細構造上に多層干渉メッキ層を直接蒸着すると、光学微細構造による光学効果と干渉光学的変色効果が互いに弱くなる欠点がある。
【0007】
特許出願CN200980104829.3は、部分印刷透かしプロセスによって多層干渉光学的変色と高輝度反射微細構造(回折微細構造及び非回折微細構造を含む)の光学特徴を集積した光学偽造防止製品の製造を実現し、即ち、一部の領域は多層干渉光学的変色特徴を有し、一部の領域は高輝度反射微細構造の光学特徴を有し、残りの領域は透かし効果を有する。しかしながら、該特許出願における部分透かし領域の精度は印刷の精度次第であるが、印刷の精度は一般には100um以上であり、ある程度、ハイエンド偽造防止光学製品での応用を制限している。
【0008】
従って、相互に独立した光学微細構造(例えば、ホログラフィック、非回折等)による偽造防止特徴と多層干渉光学的変色光学特徴を有し、且つ透かし領域が光学微細構造の画像領域に対して高精度であり、さらにゼロ誤差位置決めに使用できる光学偽造防止素子を製造することは、光学偽造防止素子の特徴位置決めの研究に対して重要な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施例は、相互に独立した光学微細構造(例えば、ホログラフィック、非回折等)による偽造防止特徴と多層干渉光学的変色光学特徴を含み、且つ光学微細構造画像と厳密に位置決めされる透かし領域を有する光学偽造防止素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するために、本発明の実施例は光学偽造防止素子を提供し、第1領域、第2領域及び第3領域を有するレリーフ構造層を備え、前記第1領域は第1微細構造を有し、前記第2領域は第2微細構造を有し、前記第3領域は構造無し平坦領域であり、前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きく、前記第1領域と前記第3領域はいずれも重なる反射層、誘電体層及び吸収層を有し、前記第2領域は反射層を有せず、前記第1領域に位置する誘電体層の前記レリーフ構造層から離れた側の表面形態は前記レリーフ構造層の表面形態と明らかに異なる。
【0011】
なお、ここで、第1領域、第2領域及び第3領域は前記レリーフ構造層上の固定順序のみとしてみなすべきものではなく、第2領域、第1領域及び第3領域等のほかの任意の順序であってもよい。光学偽造防止素子に対して反射観察を行う場合、第1領域は第1微細構造による特定画像を示し、且つ干渉光学的変色効果がない又は弱い一方、第3領域は明らかな干渉光学的変色効果を示し、透視観察を行う場合、第2領域は透光透かし効果を有し、且つ第1領域に示される画像と厳密に位置決めされる。
【0012】
微細構造の比体積とは、光学偽造防止素子を水平に置き、微細構造をちょうど満たすと仮定される液体の体積とその投影面積との比であり、その単位がum3/um2である。第2領域の微細構造と第1領域の微細構造とに差があるように設置されることは、透かしの需要を満たすためであり、即ち、比体積の小さい微細構造上の反射層は保持され、比体積の大きい微細構造の反射層は除去される。後述する具体的な実施形態ではこの問題をさらに詳しく説明する。
【0013】
選択肢として、前記第1微細構造は周期的構造及び非周期的構造のうちの一方、又は周期的構造と非周期的構造を組み合わせた構造であり、
前記第1微細構造の延在方向に沿う横断面構造は、
正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、及びブレーズド格子構造のうちの1種の構造、又は正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、及びブレーズド格子構造のうちの少なくとも任意の2種の構造を組み合わせた構造である。
【0014】
選択肢として、前記第1微細構造の比体積の範囲は0.05um3/um2よりも大きく0.5um3/um2よりも小さい。
【0015】
好ましくは、前記第1微細構造の比体積の範囲は好ましくは0.1um3/um2よりも大きく0.3um3/um2よりも小さい。
【0016】
選択肢として、前記第2微細構造は周期的構造及び非周期的構造のうちの一方、又は周期的構造と非周期的構造を組み合わせた構造であり、
前記第2微細構造の延在方向に沿う横断面構造は、
正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、台形構造、及びブレーズド格子構造のうちの1種の構造、又は正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、台形構造、及びブレーズド格子構造のうちの少なくとも任意の2種の構造を組み合わせた構造である。
【0017】
選択肢として、前記第2微細構造の比体積の範囲は0.1um3/um2よりも大きく1um3/um2よりも小さい。
【0018】
好ましくは、前記第2微細構造の比体積の範囲は好ましくは0.2um3/um2よりも大きく0.5um3/um2よりも小さい。
【0019】
選択肢として、前記反射層の材料は、
アルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの1種の金属、又はアルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの少なくとも任意の2種の金属を組み合わせてなる合金を含み、
前記誘電体層はプリントによって形成され、
前記誘電体層の主樹脂は、
ポリウレタン、アクリル酸、及びポリエステルのうちの1種の樹脂、又はポリウレタン、アクリル酸、及びポリエステルのうちの少なくとも任意の2種の樹脂を組み合わせてなるポリマーを含み、
前記吸収層の材料は、
ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、及びチタンのうちの1種の金属、又はニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、及びチタンのうちの少なくとも任意の2種の金属を組み合わせてなる合金を含む。
【0020】
選択肢として、前記反射層は前記レリーフ構造層と隣接する。ここで、各層の順序をさらに設定し、前記レリーフ構造層を参照底部とすると、底部から最上部へ順に前記レリーフ構造層、前記反射層、前記誘電体層及び前記吸収層である。
【0021】
選択肢として、前記第2領域は反射層、誘電体層及び吸収層を有しない。
【0022】
選択肢として、前記吸収層は前記レリーフ構造層と隣接する。ここで、各層の順序をさらに設定し、前記レリーフ構造層を参照底部とすると、底部から最上部へ順に前記レリーフ構造層、前記吸収層、前記誘電体層及び前記反射層である。
【0023】
選択肢として、前記第2領域は誘電体層及び吸収層を有する。
【0024】
本発明の実施例は光学偽造防止素子の製造方法を提供し、
第1領域、第2領域及び第3領域を有し、前記第1領域が第1微細構造を有し、前記第2領域が第2微細構造を有し、前記第2微細構造の比体積が前記第1微細構造の比体積よりも大きく、前記第3領域が構造無し平坦領域であるレリーフ構造層を形成するステップS1と、
前記レリーフ構造層上に反射層、誘電体層及び吸収層を順に形成し、気相成長によって反射層を形成し、プリントによって誘電体層を形成し、気相成長によって吸収層を形成するステップS2と、
第2領域の反射層が完全に又は部分的に除去されるまで、ステップS2の半製品を反射層の材料と反応可能な腐食雰囲気に配置するステップS3と、を含む。
【0025】
具体的には、ステップS3では、前記第2領域の反射層が完全に又は部分的に除去される過程は、
前記第2領域の誘電体層及び吸収層も完全に又は部分的に除去されるステップをさらに含む。
【0026】
本発明の実施例は光学偽造防止素子の製造方法をさらに提供し、
第1領域、第2領域及び第3領域を有し、前記第1領域が第1微細構造を有し、前記第2領域が第2微細構造を有し、前記第2微細構造の比体積が前記第1微細構造の比体積よりも大きく、前記第3領域が構造無し平坦領域であるレリーフ構造層を形成するステップS1と、
前記レリーフ構造層上に吸収層、誘電体層及び反射層を順に形成し、気相成長によって反射層を形成し、プリントによって誘電体層を形成し、気相成長によって吸収層を形成するステップS2と、
前記反射層を形成した後、異なる厚さ方式でプリント工程を施して保護層を形成し、前記異なる厚さ方式は前記第1領域の保護層の最小厚さが前記第2領域の保護層の最小厚さよりも遥かに大きい方式であるステップS3と、
前記第2領域の反射層が完全に又は部分的に除去されるまで、ステップS3の半製品を前記反射層の材料と反応可能な腐食雰囲気に配置して反射防止処理を行うステップS4と、を含む。
【0027】
具体的には、ステップS4では、前記第2領域の反射層が完全に又は部分的に除去される過程は、
前記第2領域の反射層が除去され、誘電体層及び吸収層がいずれも除去されていないステップをさらに含む。
【0028】
具体的には、
無機又は有機メッキ層を継続的に施す、又はコーティング工程を継続的に施すことによって、ほかの光学偽造防止機能又は補助機能を実現するステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0029】
以上によれば、本発明は、非対称で表面が不均一な特徴を有するレリーフ構造層を実現し、該レリーフ構造層を使用して複数の互いに独立する部分領域を製造し、特に少なくとも多層干渉光学的変色特徴を有する領域によって光学偽造防止素子の部分断面の不均一な非対称性を実現し、該光学偽造防止素子の複数の互いに独立する部分領域で構成される透かし領域の部分画像は細部精度が高く、透過イメージングが鮮明である。
【0030】
本発明の実施例のほかの特徴及び利点について、後述する具体的な実施形態では詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図面は本発明の実施例をさらに理解するためのものであり、明細書の一部として組み込まれており、以下の具体的な実施形態とともに本発明の実施例を説明するが、本発明の実施例を限定しない。
【
図1】本発明の実施例における光学偽造防止素子の平面図である。
【
図2】本発明の第1表面微細構造のレリーフ構造層を有する実施例のパターン「X-X」に沿う光学偽造防止素子の断面図である。
【
図3】本発明の第2表面微細構造のレリーフ構造層を有する実施例のパターン「X-X」に沿う光学偽造防止素子の断面図である。
【
図4】本発明の第1表面微細構造の実施例で第1領域、第2領域及び第3領域を有するレリーフ構造層を形成した後の半製品の断面図である。
【
図5】本発明の第1表面微細構造の実施例で反射層、誘電体層及び吸収層を有するレリーフ構造層を形成した後の半製品の断面図である。
【
図6】本発明の第1表面微細構造の実施例でレリーフ構造層の第2領域の反射層を腐食した後の半製品の断面図である。
【
図7】本発明の第1表面微細構造の実施例でほかの機能コーティングを形成した後の半製品の断面図である。
【
図8】本発明の第2表面微細構造の実施例で第1領域、第2領域及び第3領域を有するレリーフ構造層を形成した後の半製品の断面図である。
【
図9】本発明の第2表面微細構造の実施例で反射層、誘電体層及び吸収層を有するレリーフ構造層を形成した後の半製品の断面図である。
【
図10】本発明の第2表面微細構造の実施例でレリーフ構造層に保護層を施した後の半製品の断面図である。
【
図11】本発明の第2表面微細構造の実施例でレリーフ構造層の第2領域の反射層を腐食した後の半製品の断面図である。
【
図12】本発明の第2表面微細構造の実施例でほかの機能コーティングを形成した後の製品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例の具体的な実施形態を詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施形態は単に本発明の実施例を説明及び解釈するものであり、本発明の実施例を限定しない。
【0033】
(実施例1)
光学偽造防止素子であって、レリーフ構造層2を備え、前記レリーフ構造層2は少なくとも、比体積の小さい第1微細構造から構成される第1領域、比体積の大きい第2微細構造から構成される第2領域、及び平坦な構造無し第3領域を含み、前記第1領域及び第3領域はいずれも反射層31、プリントされた誘電体層32及び吸収層33を有するが、第2領域は反射層31を有しない。
【0034】
図1に示すように、光学偽造防止素子について、第1領域を画像領域A、第2領域を透かし領域B、第3領域を干渉光学的変色領域Cとする。画像領域Aは高輝度反射微細構造(例えば、ホログラフィック又は非回折光学微細構造)の光学特徴を有し、一般には、特定の画像、例えば、図中の「PY」アルファベットで示される。干渉光学的変色領域Cに対して反射観察を行う場合、異なる角度から異なる色が見られる。透かし領域Cに対して透視観察を行う場合、透光又は半透光効果を有する。透かし領域Cと画像領域Aは厳密に位置決めされ、誤差がなく、例えば、
図1中の透かし領域Cは画像領域Aの境界を厳密に囲み、画像の輪郭で示される。透かし領域の精細度は非常に高くてもよく、例えば、10umよりも小さくてもよい。
【0035】
図2は
図1に示す例示的な光学偽造防止素子のX-Xに沿う可能な断面図である。光学偽造防止素子は基材1、レリーフ構造層2、干渉光学的変色層3(反射層31、誘電体層32、及び吸収層33を含む)、及びほかの機能コーティング4を備える。レリーフ構造層2は、比体積の小さい第1微細構造から構成される第1領域A、比体積の大きい第2微細構造から構成される第2領域B、及び平坦なレリーフ構造無し第3領域Cを含む。第1領域A及び第2領域Bはいずれも反射層31、誘電体層32及び吸収層33を有するが、第2領域Bは反射層31、誘電体層32及び吸収層33を有しない。
【0036】
誘電体層32はプリントによって形成されるため、第1領域Aの誘電体層32はレリーフ構造層2及び反射層3に異型被覆され、その結果、反射層31と吸収層33の間に効果的なファブリペロー共振器が形成されておらず、即ち、第1領域Aは干渉光学的変色効果を示していない、又は弱い干渉光学的変色効果を示す。
【0037】
一方、第3領域Cのレリーフ構造層2は平坦構造であり、反射層31と吸収層33の間に効果的なファブリペロー共振器が形成され、従って、明らかな干渉光学的変色効果を示す。第2領域Bは反射層31、誘電体層32及び吸収層33を有しないため、透視観察を行うと、高透明な透かし効果を示す。ほかの機能コーティング5は必要に応じて設置でき、例えば、接着層として、保護される主製品との接着の役割を果たす。
【0038】
図3は
図1に示す例示的な光学偽造防止素子のX-Xに沿う別の可能な断面図である。光学偽造防止素子は基材1、レリーフ構造層2、干渉光学的変色層3(反射層31、誘電体層32、及び吸収層33を含む)、保護層5、及びほかの機能コーティング4を備える。
図2と同様に、レリーフ構造層2は比体積の小さい第1微細構造から構成される第1領域A、比体積の大きい第2微細構造から構成される第2領域B、及び平坦なレリーフ構造無し第3領域Cを含む。
【0039】
一方、
図2との相違点として、吸収層33はレリーフ構造層2と隣接し、且つ第2領域Bは反射層31を有しないが、誘電体層32及び吸収層33を有する。吸収層33が存在するため、第2領域Bに対して透視観察を行う場合、半透光の透かし効果を示す。保護層5は製造過程で第1領域A及び第3領域C上の反射層31を保護することにより導入される。
【0040】
以下、
図4を参照しながら本発明に係る
図2に示す光学偽造防止素子の製造方法を説明し、該方法はステップS11~S13を含む。
【0041】
S11、
図4に示すように、基材1上にレリーフ構造層2を形成し、前記レリーフ構造層2は少なくとも、比体積の小さい第1微細構造から構成される第1領域A、比体積の大きい第2微細構造から構成される第2領域B、及び平坦な構造無し第3領域Cを含む。
【0042】
基材1は少なくとも部分的に透明的であってもよく、色付きの誘電体層であってもよく、表面に機能コーティングを有する透明誘電体薄膜であってもよく、複合した多層膜であってもよい。基材1は一般には、物理的及び化学的耐性に優れ機械的強度が高い薄膜材料で形成され、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、ポリエチレンナフタレート(PEN)薄膜及びプロピレン(PP)薄膜等のプラスチック薄膜を使用して基材1を形成してもよく、且つ基材1は好ましくはPET材料で形成される。基材1とレリーフ構造層2の接着を強化するように、基材1上に接着強化層を含んでもよい。
【0043】
レリーフ構造層2は紫外線鋳造、型鍛造、ナノインプリント等の加工方式によってバッチ複製して形成されてもよい。例えば、レリーフ構造層2は熱可塑性樹脂で型鍛造プロセスによって形成されてもよく、即ち、基材1上に事前に塗布された熱可塑性樹脂が高温の金属ダイプレートを通過するとき、加熱されて軟化して変形し、それにより特定のレリーフ構造を形成し、その後、冷却成形する。レリーフ構造層2は放射線硬化鋳造プロセスを用いて形成されてもよく、即ち、放射線硬化性樹脂を基材1上に塗布し、型板をそれに押し当てながら紫外線又は電子ビーム等の放射線を照射し、上記材料を硬化させ、その後、型板を取り外してレリーフ構造層2を形成する。
【0044】
前記レリーフ構造層2は比体積の小さい第1微細構造から構成される第1領域A、比体積の大きい第2微細構造から構成される第2領域B、及び平坦な構造無し第3領域Cを含む。第1微細構造は周期的構造又は非周期的構造のうちの1種又は組み合わせであってもよく、横断面構造は正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、及びブレーズド格子構造のうちの1種又は組み合わせであってもよい。第1微細構造の具体的なサイズ(例えば、周期、深さ等)は形成される必要がある光学効果に応じて決定される。
【0045】
一般には、特定の光学効果及び後続の透かし工程の需要を満たすために、前記第1微細構造の比体積は0.05um3/um2よりも大きく0.5um3/um2よりも小さい必要があり、より好ましくは、0.1um3/um2よりも大きく0.3um3/um2よりも小さい。第2微細構造は周期的構造又は非周期的構造のうちの1種又は組み合わせであってもよく、横断面構造は正弦型構造、矩形格子構造、半円形構造、台形構造、及びブレーズド格子構造のうちの1種又は組み合わせであってもよい。
【0046】
第2微細構造は完全に透かしに使用され、最終的な製品では光学効果を形成しないため、透かしの需要に応じて微細構造の形状を設計できる。通常、微細構造の比体積は大きいほど、透かしに有利である。
【0047】
一方、微細構造の比体積は大きいほど、微細構造は広く且つ深く、量産の難度は高い。好ましくは、前記第2微細構造の比体積は0.1um3/um2よりも大きく1um3/um2よりも小さく、より好ましくは、0.2um3/um2よりも大きく0.5um3/um2よりも小さい。
【0048】
S12、
図5に示すように、レリーフ構造層2上に反射層31、誘電体層32及び吸収層33を順に形成し、反射層31及び吸収層33は気相成長によって形成され、誘電体層32はプリントによって形成される。
【0049】
反射層31は強い反射作用を持つ必要があり、一般には、高反射率の金属メッキ層を使用し、単層金属メッキ層、又は多層金属メッキ層、又は多金属混合メッキ層であってもよい。反射層の材料はAl、Cu、Ni、Cr、Ag、Fe、Sn、Au、及びPt等の金属又はその混合物又は合金であってもよく、アルミニウムは、低コスト及び高輝度のため、好ましい。反射層31は気相成長方法によってレリーフ構造層2上に形成され、例えば、熱蒸着、マグネトロンスパッタリング等を含むが、これらに限定されない。
【0050】
好ましくは、反射層31は均一な表面密度でレリーフ構造層2上に同型被覆又は略同型被覆の方式で形成される。反射層の厚さは一般には、10nmよりも大きく80nmよりも小さく、好ましくは20nmよりも大きく50nmよりも小さい。反射層は薄すぎると、輝度不足となり、反射層は厚すぎると、レリーフ構造層との接着性が低く、且つコストが高くなる。
【0051】
誘電体層32はプリントプロセスによって実現される。ここでのプリントとは、液体ワニスを施した薄膜を乾燥して硬化させるプロセスであり、形成領域という点から、薄膜の全領域に形成されてもよく(塗布プロセスという)、薄膜の部分領域に形成されてもよく(印刷プロセスという)、具体的な実施技術という点から、スプレー、ロール塗布、フレキソ印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等が挙げられる。
【0052】
このようなプロセスによって、第1領域Aの誘電体層の表面が反射層31に異型被覆され、それにより吸収層を最終的に形成した後、干渉光学的変色特徴がない、又は干渉光学的変色特徴が弱い。誘電体層32は以下の透かし工程における保護層の作用を同時に提供する。誘電体層32のプリント量は、第1領域Aの反射層31の最小厚さが第2領域Bの反射層31の最小厚さよりも遥かに小さいように設定されるべきである。一般には、コーティングの最小厚さは微細構造の最上部にある。
【0053】
このように、後述する透かし工程では、反射層材料と反応可能な腐食雰囲気において、誘電体層は第1領域Aの反射層に対する効果的な保護を提供できるが、第2領域Bの反射層に対する効果的な保護を提供できない。誘電体層の主樹脂はポリウレタン、アクリル酸、ポリエステル又はそれらの組み合わせからなるようにしてもよい。
【0054】
第3領域Cは干渉光学的変色領域として、誘電体層の表面が平坦であるほど、効果的なファブリペロー共振器の形成に有利である。従って、誘電体層はプリント前、非常に低い粘度を有するべきであり、例えば、20cps未満であり、このように、反射層上によりよくレベリングできる。ほとんどの樹脂の場合、屈折率はいずれも1.5程度であり、良好な光学的変色効果を図るために、誘電体層のプリント厚さは200nm~800nm範囲内にあるべきである。その具体的な厚さは所要の色及び透かしの条件に応じて共同で決定されるべきである。
【0055】
吸収層33の材料はAl、Cu、Ni、Cr、Ag、Fe、Sn、Au、Pt等の金属又はこれらの混合物又は合金であってもよく、ニッケル又はクロムは非常に薄い状態でも化学的安定性が高く且つコストが非常に低いため、好ましい。吸収層33は気相成長方法によって形成され、例えば、熱蒸着、マグネトロンスパッタリング等を含むが、これらに限定されない。好ましくは、吸収層33は均一な表面密度で同型被覆又は略同型被覆の方式で誘電体層32上に形成される。
【0056】
吸収層の厚さは一般には薄く、一般には、10nmよりも小さい。吸収層が薄すぎると、光学的変色効果が悪く、吸収層が厚すぎると、色が暗すぎる。吸収層の厚さに対応する透光率は一般には、10%よりも大きく80%よりも小さく、好ましくは、20%よりも大きく50%よりも小さい。
【0057】
S13、
図6に示すように、第2領域Bの反射層31が完全に又は部分的に除去されるまで、半製品を反射層材料31と反応可能な腐食雰囲気に配置する。
【0058】
上記したように、誘電体層32のプリント量は、第1領域Aの反射層31の最小厚さが第2領域Bの反射層31の最小厚さよりも遥かに小さいように設定される。吸収層の厚さが非常に小さいため、反射層に対する保護作用をほぼ提供しない。従って、誘電体層は第1領域Aの反射層に対する効果的な保護を提供できるが、第2領域Bの反射層に対する効果的な保護を提供できない。
【0059】
反射層の材料と反応可能な腐食雰囲気において、所定時間後、第2領域Bの反射層が腐食除去されるが、第1領域Aの反射層が腐食されていない、又はほぼ腐食されていない。勿論、第3領域Cに微細構造がないため、誘電体層の厚さが一致し、厚さが非常に大きく、腐食雰囲気において反射層を効果的に保護できる。
【0060】
一般には、第2領域Bの反射層が除去された後、その上の誘電体層及び吸収層もリフトオフされる。ここまで、
図2に示す光学偽造防止素子の光学効果が形成され、吸収層側から反射観察を行う場合、第1領域Aは微細構造による光学偽造防止特徴を有するが、干渉光学的変色特徴がない、又は干渉光学的変色特徴が弱いことに対して、第3領域Cは明らかな干渉光学的変色特徴を有するが、微細構造の光学特徴を有せず、透視観察を行う場合、第2領域Bは透光透かし特徴を有する。
【0061】
図2に示す光学偽造防止素子の製造方法は、
図7に示すように、一般には、ステップS13の後、ほかの機能コーティングをプリントするステップをさらに含み、例えば、接着層を形成し、被保護製品との接着の作用を発揮する。
【0062】
(実施例2)
以下、
図5を参照しながら本発明に係る
図2に示す光学偽造防止素子の製造方法を説明し、該方法はステップS21~S24を含んでもよい。
【0063】
S21、
図8に示すように、基材1上にレリーフ構造層2を形成し、前記レリーフ構造層2は少なくとも、比体積の小さい第1微細構造から構成される第1領域A、比体積の大きい第2微細構造から構成される第2領域B、及び平坦な構造無し第3領域Cを含む。
【0064】
ここでの基材、レリーフ構造層の要件はステップS11と完全に同様である。ここでは詳細説明を省略する。
【0065】
S22、
図9に示すように、レリーフ構造層2上に吸収層33、誘電体層32及び反射層31を順に形成し、反射層31及び吸収層33は気相成長によって形成され、誘電体層32はプリントによって形成される。
【0066】
ここで、吸収層、誘電体層、反射層の形成順序はS12と異なる。このような形成順序によって、後続の反射層の透かし工程では、反射層のみを除去し、吸収層の誘電体層を除去しない。誘電体層の作用は単に干渉光学的変色特徴を提供することであり、透かし工程におけるメッキ層に対する保護作用を有しない。従って、誘電体層の厚さ設定は主に第3領域Cの形成に必要な干渉光学的変色色特徴に応じて決定されてもよい。また、誘電体層の厚さは、後続の透かしの需要を満たすために、誘電体層の表面が依然として大きな比体積を確保するように設定すべきである。
【0067】
吸収層及び反射層の材料及びプロセスの要件はステップS12と完全に同様である。ここでは詳細説明を省略する。
【0068】
S23、
図10に示すように、反射層上に保護層プリント工程を施し、前記保護層の第1領域の最小厚さは第2領域の最小厚さよりも遥かに大きい。
【0069】
保護層5は透かし工程における第1領域Aと第3領域Cの反射層に対する保護作用を提供する。従って、保護層5のプリント量は、第1領域Aの反射層31の最小厚さが第2領域Bの反射層31の最小厚さよりも遥かに小さいように設定されるべきである。一般には、コーティングの最小厚さは微細構造の最上部にある。このように、後述する透かし工程では、反射層31の材料と反応可能な腐食雰囲気において、保護層5は第1領域Aと第3領域Cの反射層に対する効果的な保護を提供できるが、第2領域Bの反射層に対する効果的な保護を提供できない。保護層5の主樹脂はポリウレタン、アクリル酸、ポリエステル又はこれらの組み合わせから構成されてもよい。
【0070】
S24、
図11に示すように、第2領域の反射層が完全に又は部分的に除去されるまで、半製品を反射層の材料と反応可能な腐食雰囲気に配置する。
【0071】
反射層31の材料と反応可能な腐食雰囲気において、所定時間後、第2領域Bの反射層は腐食除去されるが、第1領域Aと第3領域Cの反射層は腐食されていない、又はほぼ腐食されていない。このとき、第2領域Bの反射層が除去された後、その上の保護層もリフトオフされるが、誘電体層及び吸収層は一般には除去されない。
【0072】
しかし、吸収層も腐食雰囲気と反応可能な場合、誘電体層及び吸収層も除去可能である。ここまで、
図3に示す光学偽造防止素子の光学効果が形成され、吸収層側から反射観察を行う場合、第1領域Aは微細構造による光学偽造防止特徴を有するが、干渉光学的変色特徴がない、又は干渉光学的変色特徴が弱いことに対して、第3領域Cは明らかな干渉光学的変色特徴を有するが、微細構造の光学特徴を有せず、透視観察を行う場合、第2領域Bは透光透かし特徴を有する。
【0073】
図3に示す光学偽造防止素子の製造方法は、
図12に示すように、一般には、ステップS24の後、ほかの機能コーティングをプリントするステップをさらに含み、例えば、接着層を形成し、被保護製品との接着の作用を発揮する。
【0074】
本発明に係る光学偽造防止素子の製造方法は、孔付き安全線、ラベル、ロゴ、太い安全線、透明窓、被覆膜等の製造に適する。前記孔付き安全線を備えた偽造防止紙は紙幣、パスポート、有価証券等の様々な高セキュリティ製品の偽造防止に使用される。
【0075】
以上、図面を参照しながら本発明の実施例の選択可能な実施形態を詳細に説明したが、本発明の実施例は上記実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の実施例の技術的概念の範囲内で、本発明の実施例の技術案に対して種々の簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形はすべて本発明の実施例の保護範囲に属する。
【0076】
またなお、上記具体的な実施形態で説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない限り、任意に適宜組み合わせることができる。不必要な重複を回避するために、本発明の実施例は種々の可能な組み合わせ方式を別途説明しない。
【0077】
当業者であれば、上記実施例の方法の全部又は一部のステップをプログラムによって関連ハードウェアに命令を出して完了させることができると理解でき、該プログラムは1つの記憶媒体に記憶されており、複数の命令を含み、シングルチップマイコン、チップ又はプロセッサ(processor)に本願の各実施例に記載の方法の全部又は一部のステップを実行させる。上記記憶媒体は、Uディスク、モバイルハードディスク、読み取り専用メモリ(ROM、Read-OnlyMemory)、ランダムアクセスメモリ(RAM、RandomAccessMemory)、磁気ディスク又は光ディスクなどプログラムコードを記憶できる様々な媒体を含む。
【0078】
また、本発明の実施例の様々な実施形態は任意に組み合わせることができ、本発明の実施例の思想を逸脱しない限り、同様に本発明の実施例に開示されるものとみなすべきである。
【符号の説明】
【0079】
A…画像領域、B…透かし領域、C…干渉光学的変色領域、1…基材、2…レリーフ構造層、3…干渉光学的変色層、31…反射層、32…誘電体層、33…吸収層、4…ほかの機能コーティング。