(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂およびその製造方法、並びにこれを含むエポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/08 20060101AFI20240111BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240111BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C08G59/08
B32B27/38
B32B15/092
(21)【出願番号】P 2021562132
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 KR2020005175
(87)【国際公開番号】W WO2020213992
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0046366
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521456715
【氏名又は名称】クク・ト・ケミカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KUK DO CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】61, GASAN DIGITAL 2‐RO, GEUMCHEON‐GU, SEOUL 08588, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ギ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ビョン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】イム,チョン・レ
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-014815(JP,A)
【文献】特開2005-325331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08G 8/00-8/38
C08L 63/00-63/10
B32B 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるフルオレン系エポキシ化合物と下記の繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物を含み、下記の繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物を全体重量を基準にして3%~
30%含む、非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂:
【化1】
前記化学式1中、
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基であり、
【化2】
前記繰り返し単位1中、
nは2≦n≦10の範囲を満たす値であり、
R
3およびR
4はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基である。
【請求項2】
前記化学式1で表されるフルオレン系エポキシ化合物と前記繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物は、97:3~
70:30の重量比で含まれる、請求項1に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂。
【請求項3】
前記化学式1中のR
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基である、請求項1に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂。
【請求項4】
融点は30℃~68℃であり、
数平均分子量は200g/mol~2000g/molであり、
エポキシ当量は200g/eq~500g/eqである、請求項1に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂。
【請求項5】
酸触媒存在下で、下記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物とホルムアルデヒドを2.5:1~10:1のモル比で反応させて、下記の繰り返し単位2を含むノボラック型フルオレン系ビフェノール化合物を含むフルオレン系ビフェノール樹脂を製造する段階と、
前記フルオレン系ビフェノール樹脂をエピハロヒドリンと水酸化塩の存在下で反応させる段階と、を含む、非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法:
【化3】
前記化学式2中、
R
5およびR
6はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基であり、
【化4】
前記繰り返し単位2中、
mは2≦m≦10の範囲を満たす値であり、
R
7およびR
8はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基である。
【請求項6】
前記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物とホルムアルデヒドは、3:1~9:1のモル比で反応させる、請求項5に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物とホルムアルデヒドを反応させる段階は、750Torr~770Torr(99.9918kPa~102.6582kPa)の条件下で100℃~140℃で行う、請求項5に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記化学式2中のR
5およびR
6はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基である、請求項5に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記酸触媒は、シュウ酸、硫酸、塩酸、燐酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、および酢酸からなる群より選択される1種以上である、請求項5に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記酸触媒は、前記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物100モルを基準にして0.01モル部~10モル部の含有量で使用する、請求項5に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記フルオレン系ビフェノール樹脂は、融点(Tm)が現れず、数平均分子量が200g/mol~2000g/molであり、水酸基当量が175g/eq~250g/eqである、請求項5に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記フルオレン系ビフェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させる段階は、水酸化塩の存在下で100Torr~300Torr(13.3322kPa~39.9967kPa)の圧力条件で25℃~120℃で行う、請求項5に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒、および溶媒を含む、エポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
基板と、
前記基板の一面または両面上に位置する樹脂層と、を含み、
前記樹脂層は、請求項13に記載のエポキシ樹脂組成物から形成される、積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性と高柔軟性(low modulus at high temperature)、低い熱膨張係数(low CTE)、高屈折率を確保しながらも、作業性と貯蔵安定性および流動性と平滑性を向上させた非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂およびその製造方法、エポキシ樹脂組成物およびその製造方法、積層板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、シリコンチップが実装されるパッケージ基板(IC substrate)、EMC封止材、アンダーフィル、チップと基板を接着するダイボンディング材、ソルダーレジスト、導電性ペースト、PCBなど多様な分野に応用されている半導体パッケージングの核心有機素材であって、優れた耐熱特性と絶縁特性、耐薬品性および機械的物性などによって現在でも幅広く利用されている。
【0003】
しかし、近来、急速な半導体パッケージング技術の発展に伴い、既存のエポキシ素材の限界を認識しながら、次世代パッケージング用新規エポキシ素材の開発に対する関心が増大している。さらに、電子製品の小型化、軽量化、高性能化に伴い、半導体チップが薄くなり、高集積化または表面実装化の増加によって従来のエポキシ樹脂組成物としては解決できない問題が発生している。特に、薄型化および高機能化のために複数の薄形チップを積層するパッケージングの場合、新規エポキシ素材の開発に対する要求が続いている。例えば、半導体集積回路(IC)の保護および連結機能に重点を置いた半導体パッケージング技術がシステム集積化の方向に進められるにあたって、基板に加わる応力発生を効率的に低減し得る材料開発が求められており、実装信頼性(CTE、warpage、機械的特性)の面においてさらに高度な性能のエポキシ素材技術が要求されてきている。
【0004】
一般に、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が広く知られており、固形エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を縮合反応させて分子量が増大したものが使用されているが、ビスフェノールA型高分子エポキシ樹脂はブロッキングを起こす場合がある。このような理由でノボラック型固形エポキシ樹脂が広く使用されているが、このような高分子量樹脂は粘度が高く、流動性および平滑性が良くないという欠点がある。その他にも、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどが提案されるが、これらはいずれも貯蔵安定性に優れた反面、硬化物の弾性率が高く、柔軟性が欠如している。
【0005】
一方、ビスフェノールフルオレン型フェノール樹脂は、耐熱性などに優れた特性が現れることが知られている。このような9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(9,9-Bis(4-hydroxyphenyl)fluorene)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(9,9-Bis[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl]fluorene)などの化合物はエポキシ樹脂に使用することも知られている。フルオレン構造を有するエポキシ樹脂は、従来のビスフェノール型エポキシ樹脂に比べて耐熱性、柔軟性などの特性を向上させることができる。しかし、結晶化特性を有しているため、溶剤に溶解度が低下して析出されて貯蔵安定性が低下するか、高い融点によって作業性が低下するなどの問題がある。結晶性高分子材料の大部分は内部に薄い層のラメラ構造が集まってなるスフェルライト(spherulite)構造からなり、各高分子物質の鎖構造によりラメラ内部の微細構造が異なる。これらの結晶構造は分子が最も小さい体積を有するために緻密に配列されており、物理的に強く結合しているため、物性の側面から見れば強度が大きく、溶融温度が高く、溶媒にあまり溶けない強靭な物性特性を有するので、適用分野が非常に限定的であり、作業性と貯蔵安定性が非常に落ちることが一般的である。また、結晶構造の形成過程に伴う収縮現象のため、薄い製品を成形する場合外観の反り(warpage)が生じることがあるので改善が必要である。
【0006】
また、フルオレン系化合物が単にダイマーとして存在する場合、粘度が高すぎて流動性および平滑性が低下する問題がある。このようなフルオレン系化合物のダイマー構造にエポキシ化合物を導入したが、このようなダイマー構造のエポキシ化合物は樹脂の成形が難しく、不良が発生しやすい問題があり、相溶性および作業性が制限される短所がある。
【0007】
一方、ガラス転移温度が高いフルオレン系エポキシ樹脂組成物を使用する場合には弾性率が大きく増加して熱や外部の衝撃による外部からのストレスに脆弱になる問題がある。そこで、非フルオレン系エポキシ化合物を混合して使用したが、この場合、収縮率、弾性率および成形性のバランスなどは改善されたといっても、フルオレン系エポキシ樹脂の高柔軟、高屈折、高耐熱の固有の特性が低下する問題がある。
【0008】
したがって、高分子素材に使用されるエポキシ樹脂の製造時に電子部品の加工性および信頼性を確保するために、高分子結晶性を最適点に調節して優れた熱安定性と共に高い柔軟性と低い熱膨張係数などの物性の長所を有し、かつ作業性、貯蔵安定性および流動性の良好なエポキシ樹脂の開発に対する必要性がさらに求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、立体的で嵩高いカルド(cardo)構造を有し、優れた耐熱性と高柔軟性(low modulus at high temperature)、低い熱膨張係数(low CTE)、および高屈折率を確保しながらも、作業性と貯蔵安定性および流動性と平滑性を向上させた、非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂およびその製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物およびこれを製造する方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物からなる樹脂層を含む積層板およびこれを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表されるフルオレン系エポキシ化合物と下記の繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物を含み、下記の繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物を全体重量を基準にして3%~80%含む、非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂が提供される。
【化1】
前記化学式1中、
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基であり、
【化2】
前記繰り返し単位1中、
nは2≦n≦10の範囲を満たす値であり、
R
3およびR
4はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基である。
【0013】
また、本発明は、上述した非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明は、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂組成物、硬化剤、硬化触媒、および溶媒を含む、エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、基板と、前記基板の一面または両面上に位置する樹脂層と、を含み、前記樹脂層は、上述のようなエポキシ樹脂組成物からなる積層板を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた耐熱性、高柔軟性、低い熱膨張係数、および高屈折率を確保しながらも、作業性と貯蔵安定性および流動性と平滑性を向上させた非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態によって製造した実施例1-1のフルオレン系ビフェノール樹脂に対する示差走査熱量計(Differential scanning calorimetry、DSC)の分析グラフを示す図である。
【
図2】従来より知られた比較例1-1の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物に対する示差走査熱量計(Differential scanning calorimetry、DSC)の分析グラフを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態によって製造した実施例1-1のフルオレン系ビフェノール樹脂に対するゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)の分析グラフを示す図である。
【
図4】従来より知られた比較例1-1の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物に対するゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)の分析グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに用いられ、前記用語は、一つの構成要素を他の構成要素と区別する目的でのみ用いられる。
【0019】
また、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なることを意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、記述された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0020】
本明細書において使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造および物質許容誤差が提示される場合、その数値で、またはその数値に近接した意味として使用され、本発明の理解を助けるために適確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0021】
また、本明細書において使用される程度の用語「・・・する段階」または「・・・の段階」は、「・・・のための段階」を意味しない。
【0022】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれている「これらの組み合わせ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載されている構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味し、前記構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0023】
本明細書において、
【化3】
および
【化4】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0024】
本明細書において「置換」とは、別途の定義がない限り、化合物のうちの少なくとも一つの水素が炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~10のアルキルシリル基;炭素数3~30のシクロアルキル基;炭素数6~30アリール基;炭素数1~30のヘテロアリール基;炭素数1~10のアルコキシ基;シラン基;アルキルシラン基;アルコキシシラン基;アミン基;アルキルアミン基;アリールアミン基;エチレンオキシル基またはハロゲン基で置換されたことを意味する。
【0025】
本明細書において「ヘテロ」とは、別途の定義がない限り、N、O、SおよびPからなる群より選択される原子を意味する。
【0026】
本明細書において「アルキル(alkyl)基」とは、別途の定義がない限り、いかなるアルケニル(alkenyl)基やアルキニル(alkynyl)基を含んでいない「飽和アルキル(saturated alkyl)基」;または少なくとも一つのアルケニル基またはアルキニル基を含んでいる「不飽和アルキル(unsaturated alkyl)基」を全て含むことを意味する。前記「アルケニル基」は、少なくとも2個の炭素原子が少なくとも一つの炭素-炭素二重結合をなしている置換基を意味し、「アルキン基」は、少なくとも2個の炭素原子が少なくとも一つの炭素-炭素三重結合をなしている置換基を意味する。前記アルキル基は、分枝状、直鎖状または環状であり得る。
【0027】
前記アルキル基は、直鎖または分枝鎖の炭素数1~20のアルキル基であり、具体的には、炭素数1~6の低級アルキル基、炭素数7~10の中級アルキル基、炭素数11~20の高級アルキル基であり得る。
【0028】
例えば、炭素数1~4のアルキル基は、アルキル鎖に1~4個の炭素原子が存在することを意味し、これはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選択される。
【0029】
典型的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基などがある。
【0030】
「シクロアルキル基」は環状アルキル基であり、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。
【0031】
「アルコキシ基」は、上述したアルキル基がオキシ基、つまり、酸素原子に結合した官能基であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、フェニルオキシ、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0032】
「芳香族基」は、環状の置換基の全ての元素がp-オービタルを有しており、これらのp-オービタルが共役(conjugation)を形成している置換基を意味する。具体的な例としては、アリール(aryl)基とヘテロアリール基がある。
【0033】
「アリール(aryl)基」は、単一環または縮合環、つまり、炭素原子の隣接した対を分け合う複数環の置換基を含む。
【0034】
「ヘテロアリール(heteroaryl)基」は、アリール基内にN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子が含まれるアリール基を意味する。前記ヘテロアリール基が縮合環の場合、それぞれの環ごとに前記ヘテロ原子を1~3個含み得る。
【0035】
本明細書において別途の定義がない限り、「共重合」とは、ブロック共重合、ランダム共重合、グラフト共重合または交互共重合を意味し、「共重合体」とは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体または交互共重合体を意味する。
【0036】
また、本明細書において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されると言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上にさらに形成され得ることを意味する。
【0037】
本発明は多様な変更が加えられ、様々な形態を有し得ることから、特定の実施例を例示して下記に詳しく説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むことが理解されなければならない。
【0038】
上記のような定義に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものに過ぎず、本発明はこれによって限定されず、後述する特許請求の範囲の範疇だけにより定義される。
【0039】
本発明者らの継続的な実験の結果、後述する製造方法により、-OH基で置換されたフルオレン系化合物が有する結晶の不規則性および結晶化度を低くするために、高分子の分子量分布をノボラック反応で調節する最小限の変形で物理的状態を調節することによって、優れた熱安定性と共に高い柔軟性と低い熱膨張係数などの物性の長所を有し、かつ作業性、貯蔵安定性および流動性が良好な非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂を提供できることを確認して発明を完成した。
【0040】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0041】
エポキシ樹脂
発明の一実施形態によれば、優れた耐熱性と高柔軟性、低い熱膨張係数、高屈折率を確保しながらも、作業性と貯蔵安定性および流動性と平滑性を向上させた非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂が提供される。
【0042】
具体的には、前記エポキシ樹脂は、剛直で優れた耐熱性および加工性を有するカルド系ユニットとしてフルオレン構造をエポキシ樹脂の主鎖に導入することによって、エポキシ樹脂の耐熱性が増大する。また、非平面(out-of-plane)構造を有するカルド系ユニットが導入されると同時に、ノボラック反応でモル比を調節して結晶性が減少するので、素材の工程性、例えば、溶解性が向上する。また、このような結晶性調節によって優れた熱安定性と共に高い柔軟性と屈折率を実現することができ、高機能性が求められる電子材料など多様な分野に適用可能である。
【0043】
特に、本発明のエポキシ樹脂は、フルオレン系エポキシ化合物と、この化合物のうちの一部がノボラック反応によって生成されたダイマーまたは二量体以上の重合体を最適な範囲で含んでなる非結晶性固体を示したものである。
【0044】
より具体的には、本発明の一実施形態で提供される非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂は、下記化学式1で表されるフルオレン系エポキシ化合物と下記の繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物とを含み、下記の繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物を全体重量を基準にして3%~80%含む。
【化5】
前記化学式1中、
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基であり、
【化6】
前記繰り返し単位1中、
nは2≦n≦10の範囲を満たす値、つまり、nは2以上~10以下の範囲を満たす値であり、
R
3およびR
4はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基である。
特に、前記繰り返し単位1中、nは2以上~10以下の範囲の値であり、具体的には、nは2以上~6以下の範囲を満たす値である。特に、nは樹脂の成形の改善および相溶性と作業性を改善する側面から2以上または3以上であり得、熱安定性と共に高い柔軟性と低い熱膨張係数などを確保する側面から10以下であり得る。
【0045】
好ましくは、前記化学式1で表されるフルオレン系エポキシ化合物は、下記化学式1aを含む。
【化7】
前記化学式1a中、R
1およびR
2は前記化学式1で定義した通りである。
前記化学式1中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、好ましくは、R
1およびR
2は水素であり得る。ただし、これは一例に過ぎず、本発明の一実施形態はこれに限定されない。
【0046】
好ましくは、前記繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物は、下記の繰り返し単位1aを含む。
【化8】
前記繰り返し単位1a中、n、R
3およびR
4は前記繰り返し単位1で定義した通りである。
【0047】
前記繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物は、立体的で嵩高いカルド(cardo)構造を有し、優れた耐熱性と高柔軟性、低い熱膨張係数、および高屈折率を確保しながらも、作業性と貯蔵安定性および流動性と平滑性を向上させることができる。
【0048】
本発明の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂において、前記繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物は、全体重量を基準にして、つまり、前記化学式1で表されるフルオレン系エポキシ化合物と前記繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物の総重量を基準にして3%~80%含まれ、具体的には10%~75%、または10%~70%、または10%~60%、または10%~30%、または15%~30%含むことを特徴とする。前記繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物の含有量は、軟化点と溶融粘度が低くて流動性と平滑性の高いエポキシ中間体に適用するための側面から80%以下であり得、溶剤に溶解度が低下して析出されて貯蔵安定性が低下するか、高い融点によって作業性が低下するなどの問題のない非結晶性状態で存在する樹脂を合成するための側面から3%以上であり得る。
【0049】
一例として、前記化学式1で表されるフルオレン系エポキシ化合物と前記繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物は97:3~20:80の重量比で含み、具体的には90:10~25:75、または90:10~30:70、または90:10~40:60、または90:10~70:30、または85:15~70:30の重量比で含むことを特徴とする。前記化学式1で表されるフルオレン系化合物と前記繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物のモル比は、軟化点と溶融粘度が低くて流動性と平滑性の高いエポキシ中間体に適用するための側面から20:80の重量比以上であり得、溶剤に溶解度が低下して析出されて貯蔵安定性が低下するか、高い融点によって作業性が低下するなどの問題のない非結晶性状態で存在する樹脂を合成するための側面から97:3の重量比以下であり得る。
【0050】
具体的には、前記繰り返し単位1中、R3およびR4はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、好ましくは、R5およびR6は水素であり得る。ただし、これは一例に過ぎず、本発明の一実施形態はこれに限定されない。
【0051】
一方、本発明の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂は、後述する製法のようにフルオレン系化合物とホルムアルデヒドを特定のモル比で反応させた後(段階1)、フェノール基の水酸基を全てエポキシ化することによって(段階2)、最終的に得られる。
【0052】
ただし、前記段階2において、前記フルオレン系ビフェノール樹脂のヒドロキシ(hydroxyl)基が全てエポキシ化されないことがある。したがって、最終的に得られる共重合体は、下記の繰り返し単位Aを含み得るが、これに限定されない:
【化9】
前記繰り返し単位A中、
lは1≦l≦10の範囲を満たす値、つまり、lは1以上~10以下の範囲を満たす値であり、
R’およびR’’はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基である。
具体的には、前記繰り返し単位A中、lは1≦l≦6の範囲を満たす値、つまり、lは1以上~6以下の範囲を満たす値であり得る。
また、R’およびR’’はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、好ましくは、R’およびR’’は水素であり得る。ただし、これは一例に過ぎず、本発明の一実施形態はこれに限定されない。
【0053】
一方、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂のエポキシ当量(EEW、epoxy equivalent weight)は、200g/eq~500g/eqまたは230g/eq~480g/eqであり得る。ここで、前記エポキシ当量は、前記樹脂の数平均分子量(g/mol)をエポキシ当量数(eq/mol)で割った値である。前記共重合体中のエポキシ基は、上述した段階3でフェノールのヒドロキシがエポキシ化された部位であり、その含有量が上記の範囲を満たすことは、優れた熱安定性と共に高い柔軟性と屈折率を実現できることを意味する。
【0054】
前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は200g/mol~2000g/molであり、重量平均分子量(Mw)は300g/mol~2000g/molであり得る。具体的には、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、250g/mol~2000g/mol、または300g/mol~2000g/mol、または325g/mol~1500g/mol、または350g/mol~1250g/mol、または400g/mol~1000g/molであり得る。また、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、300g/mol~2000g/mol、または350g/mol~2000g/mol、または350g/mol~1500g/mol、または360g/mol~1250g/mol、または420g/mol~950g/molであり得る。また、前記フルオレン系ビフェノール樹脂の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)で決定される分子量分布(Mw/Mn)は0.8~4.0、または0.9~2.0、または0.95~1.8、または1.03~1.4であり得る。
【0055】
一例として、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)を用いて測定し、得られた測定値をポリスチレンで換算した値であり得る。具体的な測定方法は、フルオレン系エポキシ樹脂に対して適用可能な通常の方法を適用することができる。
【0056】
また、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂は非結晶性で融点(Tm)は30℃~120℃、または30℃~100℃であり、または30℃~80℃または60℃~68℃であり得る。これは結晶化を下げるために追加された工程に起因したもので、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の融点は、既存の結晶性フルオレン系エポキシ樹脂での融点(Tm)140℃~170℃に比べて、顕著に低いものと考えられる。
【0057】
また、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂は、全体重量を基準にして3%~97%の2官能以上のノボラック重合体を含むエポキシ樹脂であって、フェノール系硬化剤と硬化時のガラス転移温度(Tg)は180℃以上または180℃~250℃、または183℃~200℃の高いガラス転移温度を実現するので、高いガラス転移温度と高い柔軟性を同時に実現できるという特徴がある。
【0058】
一例として、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC、differential scanning calorimeter)を用いて測定することができる。具体的には、樹脂サンプルを常温以下の温度から10℃/minの速度で温度を増加させてDSC(Mettler社製)曲線で一定の傾きで吸熱が現れるHeat Flowの変化する部分が現れ、このようにHeat Flowが変化し始める温度と変化が終わる温度との中間値をガラス転移温度(Tg)とし、このようなDSC曲線の下に相当する吸熱ピーク(peak)の頂点に相当する温度を融点(Tm)とする。
【0059】
また、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂は非結晶性で低い溶融温度以外でも軟化点が現れる特徴を有する。具体的には、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の軟化点(Ts)は70℃~120℃、または80℃~110℃、または85℃~105℃、または88℃~98℃であり得る。ここで、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の軟化点(softening point)は、環球法(Ring and Ball method)を用いてASTM E28規格により測定することができる。
【0060】
また、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂は、溶融粘度が290cps~500cps、または320cps~400cps、または350cps~397cpsであり得る。一例として、前記溶融粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)社製の回転式粘度計を用いて150℃で測定した値である。
【0061】
また、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂は、シクロヘキサノン溶剤に樹脂試料を1:1の重量比で溶解した後、常温(RT、23℃~25℃)で結晶化して析出される現象を測定した時、結晶が析出せず、非常に優れた貯蔵安定性を有する。
【0062】
また、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂は、屈折率(R.I)は1.61~1.639、または1.62~1.629、1.625~1.629、1.6264~1.6289であり得る。一例として、前記屈折率(R.I)は、プリズムに接合して光の入射角を変化させて波長404nmで測定した。
【0063】
エポキシ樹脂の製造方法
本発明のさらに他の一実施形態においては、上述した非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂を製造する方法を提供する。
【0064】
特に、本発明によれば、立体的で嵩高いカルド(cardo)構造を有し、優れた耐熱性と高柔軟性、低い熱膨張係数、高屈折率を確保しながらも、作業性と貯蔵安定性および流動性と平滑性を向上させる非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂を効果的に製造する方法が提供される。
【0065】
具体的には、本発明ではフルオレン系化合物とホルムアルデヒドを重縮合するノボラック(Novolac)反応で反応物のモル比を所定の範囲で最適化して、最終エポキシ樹脂の結晶性を調節しながら優れた熱安定性と共に高い柔軟性と屈折率を有し、かつ作業性と貯蔵安定性および流動性と平滑性が良好な特性を示すことができる。
【0066】
より具体的には、酸触媒存在下で、下記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物とホルムアルデヒドを2:1~10:1のモル比で反応させて、下記の繰り返し単位2を含むノボラック型フルオレン系ビフェノール化合物を含むフルオレン系ビフェノール(Biphenol)樹脂を製造する段階(段階1)と、前記フルオレン系ビフェノール(Biphenol)樹脂をエピハロヒドリンと水酸化塩の存在下で反応させる段階(段階2)と、を含む、上述した非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法を提供する。
【化10】
前記化学式2中、
R
5およびR
6はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基であり、
【化11】
前記繰り返し単位2中、
mは2≦m≦10の範囲を満たす値、つまり、mは3以上~10以下の範囲を満たす値であり、
R
7およびR
8はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基である。
特に、前記繰り返し単位2中、mは2以上~10以下の範囲の値であり、具体的には、mは2以上~6以下の範囲を満たす値である。特に、mは樹脂の成形改善および相溶性と作業性を改善する側面から2以上または3以上であり得、熱安定性と共に高い柔軟性と低い熱膨張係数などを確保する側面から10以下であり得る。
【0067】
好ましくは、前記化学式2で表されるフルオレン系化合物は、下記化学式2aを含む。
【化12】
前記化学式2a中、R
5およびR
6は前記化学式2で定義した通りである。
【0068】
前記化学式2中、R5およびR6はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、好ましくは、R5およびR6は水素であり得る。ただし、これは一例に過ぎず、本発明の一実施形態はこれに限定されない。
【0069】
特に、前記非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法において、前記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物とホルムアルデヒドは2:1~10:1のモル比で、具体的には2.5:1~10:1、または3:1~10:1、または4.5:1~10:1、または6:1~10:1、または6:1~8:1のモル比で反応させることを特徴とする。前記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物とホルムアルデヒドの反応モル比は、軟化点と溶融粘度が低くて流動性と平滑性の高いエポキシ中間体に適用するための側面から2:1のモル比以上であり得、溶剤に溶解度が低下して析出されて貯蔵安定性が低下するか、高い融点によって作業性が低下するなどの問題のない非結晶性状態で存在する樹脂を合成するための側面から10:1のモル比以下であり得る。
【0070】
前記段階1で、前記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物とホルムアルデヒドを反応させる段階は、酸触媒存在下でノボラック反応により付加縮合物としてメチレン基によって連結された固相形態の非結晶性樹脂を製造することを特徴とする。
【0071】
具体的には、前記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物とホルムアルデヒドを反応させる段階は、750Torr~770Torrまたは755Torr~765Torrの条件下で、100℃~140℃または115℃~125℃で行うことができる。一例として、前記段階1のノボラック反応は、上述のような条件で1時間~10時間、または2時間~6時間行うことができる。
【0072】
また、前記段階1において、前記酸触媒はシュウ酸、硫酸、塩酸、燐酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、および酢酸からなる群より選択される1種以上であり、好ましくはシュウ酸を使用することができる。ただし、これは一例に過ぎず、本発明の一実施形態はこれに限定されない。
【0073】
前記酸触媒は、前記化学式2で表されるフルオレン系ビフェノール化合物100モルを基準にして0.01モル部~10モル部、具体的には0.05モル部~8モル部、または0.1モル部~5モル部、または0.5モル部~4モル部の含有量で使用することができる。
【0074】
一方、前記ノボラック反応で得られたフルオレン系化合物は、前記繰り返し単位2を含むノボラック型フルオレン系ビフェノール化合物を含む非結晶性フルオレン系ビフェノール樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)である。
【0075】
好ましくは、前記繰り返し単位2を含むノボラック型フルオレン系ビフェノール化合物は、下記の繰り返し単位2aを含む。
【化13】
前記繰り返し単位2a中、m、R
7およびR
8は前記繰り返し単位2で定義した通りである。
具体的には、前記繰り返し単位2中、R
7およびR
8はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、好ましくは、R
7およびR
8は水素であり得る。ただし、これは一例に過ぎず、本発明の一実施形態はこれに限定されない。
【0076】
また、前記フルオレン系ビフェノール樹脂は、数平均分子量(Mn)は200g/mol~2000g/molであり、重量平均分子量(Mw)は200g/mol~2000g/molであり得る。具体的には、前記フルオレン系ビフェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、前記化学式1で表される結晶性モノマーの数平均分子量より大きく、より具体的には300g/mol~2000g/mol、または400g/mol~2000g/mol、または420g/mol~1500g/mol、または425g/mol~1250g/mol、または425g/mol~800g/molであり得る。また、前記フルオレン系ビフェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は、前記化学式1で表される結晶性モノマーの重量平均分子量より大きく、より具体的には300g/mol~2000g/mol、または400g/mol~2000g/mol、または420g/mol~1500g/mol、または425g/mol~1250g/mol、または450g/mol~950g/molであり得る。また、前記フルオレン系ビフェノール樹脂の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)で決定される分子量分布(Mw/Mn)は0.5~4.0、または0.8~2.0、または0.9~1.5、または1.05~1.2であり得る。
【0077】
一例として、前記フルオレン系ビフェノール樹脂の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)を用いて測定し、得られた測定値をポリスチレンで換算した値であり得る。具体的な測定方法は、フルオレン系ビフェノール樹脂に対して適用可能な通常の方法を適用することができる。
【0078】
具体的には、前記フルオレン系ビフェノール樹脂は、水酸基当量が175g/eq~250g/eq、または180g/eq~200g/eq、または185g/eq~190g/eqであり得る。ここで、前記水酸基当量(OHEW、hydroxy equivalent weight)は、前記樹脂の数平均分子量(g/mol)を水酸基当量数(eq/mol)で割った値である。前記樹脂中の水酸基当量が上記の範囲を満たすことは、後続のエポキシ化段階により優れた熱安定性と共に高い柔軟性と屈折率を実現できることを意味する。
【0079】
また、前記フルオレン系ビフェノール樹脂は、融点(Tm)が現れないか、または融点(Tm)が150℃~230℃、または160℃~225℃、または170℃~222℃であり得る。一例として、前記フルオレン系ビフェノール樹脂の融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC、differential scanning calorimeter)を用いて測定することができる。具体的には、樹脂サンプルを常温以下の温度から10℃/minの速度で温度を増加させてDSC(Mettler社製)曲線の下に相当する吸熱ピーク(peak)の頂点に相当する温度を融点(Tm)とする。
【0080】
また、前記フルオレン系ビフェノール樹脂は、軟化点(Ts)が現れないか、または軟化点(Ts)が110℃~180℃、または120℃~165℃、または125℃~150℃であり得る。ここで、前記フルオレン系ビフェノール樹脂の軟化点(softening point)は、環球法(Ring and Ball method)を用いてASTM E28規格により測定することができる。
【0081】
一方、前記ノボラック反応で得られた非結晶性フルオレン系ビフェノール樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)は、エピハロヒドリンと水酸化塩の存在下で反応させて(段階2)、最終物質である非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂を製造する。
【0082】
具体的には、前記フルオレン系ビフェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させる段階は、水酸化塩の存在下で100Torr~300Torr、または120Torr~200Torr、または140Torr~180Torrの圧力条件で25℃~120℃、または30℃~120℃、または30℃~80℃で行うことができる。一例として、前記段階2のエポキシ化反応は、前述の条件で0.5時間~10時間、または2時間~6時間、または3時間~5時間行うことができる。
【0083】
前記段階2で、エピハロヒドリンの使用量は、フルオレン系ビフェノール樹脂の水酸基に対して1倍~20倍モルであり、具体的には4倍~8倍モルであり得る。
【0084】
また、前記エピハロヒドリンは、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、およびβ-メチルエピクロロヒドリンからなる群より選択される1種以上であり得、具体的には、エピクロロヒドリンを使用することができる。
【0085】
前記段階2で、前記水酸化塩の使用量は、フェノール樹脂の水酸基に対して0.85倍~1.2倍モルであり得る。
【0086】
また、前記水酸化塩は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物であり得、一例として、NaOH、KOH、CsOH、Ca(OH)2、およびMg(OH)2からなる群より選択される1種以上であり得る。具体的には、NaOH、KOHなどを使用することができる。ただし、これは一例に過ぎず、本発明の一実施形態はこれに限定されない。
【0087】
前記水酸化塩は、固体状態または水に溶解した水溶液状態で使用することができ、具体的には、100Torr~300Torrまたは120Torr~200Torrの圧力条件で25℃~120℃または30℃~120℃で0.5時間~6時間または2時間~5時間にわたって小分けして投入するか、または滴下する方式で投入して反応させ得る。
【0088】
以下、前述のような非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂の製造方法について、具体的な例を用いて上記方法の各工程について説明する。
【0089】
結晶性化合物である4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール(4,4’-(9-Fluorenylidene)diphenol)をシュウ酸(oxalic acid)存在下でホルムアルデヒド(Formalin)とノボラック(novolac)との反応によって下記化学式Aで表される固形の高分子樹脂を製造することができる。この時、ノボラック反応のモル比の変更により4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノールの反応性を調節することができ、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)分析による分子量分布を確認し、Ring and Ball methodによって生成物の軟化点(Ts、softening point)を測定した。したがって、下記中のn’=0(monomer)含有量の調節により結晶性/非結晶性特性を制御することができ、エポキシ樹脂の合成に好適な中間体樹脂として、下記化学式Aで表される4,4’-(9-Fluorenylidene)diphenol-novolac樹脂を製造することができる。この時、前記ノボラック反応の好ましいモル比の範囲および工程条件などは上述した通りである。
【化14】
ここで、n’は0≦n’≦10の範囲を満たす値、つまり、n’は0以上~10以下、または0以上~6以下、または0以上~5以下の範囲を満たす値である。
【0090】
前記化学式Aで表される4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール-ノボラック樹脂(4,4’-(9-Fluorenylidene)diphenol-novolac resin)は、過剰のエピクロロヒドリン(Epichlorohydrin)に溶解して減圧条件下でNaOHとの反応によってエポキシ化を行い、最終生成物である下記化学式Bで表される非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂を製造するこができる。
【化15】
ここで、n’は0≦n’≦10の範囲を満たす値であり、m’は0≦m’≦10の範囲を満たす値であり、OGはグリシジルエーテル(glycidyl ether)基である。
【0091】
一例として、フェノール樹脂の水酸基に対して1倍~20倍の過剰モルのエピクロロヒドリン、好ましくは3倍~8倍モルのエピクロロヒドリンに、前記合成方法で製造されたフルオレン系フェノール樹脂を溶解して水酸化ナトリウムを固体または水溶液でさらに30℃~120℃の反応温度で0.5時間~10時間減圧下で反応させて得られる。この時、減圧下で反応を行う理由は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと反応して発生した水または反応に使用された水を除去するためであり、水を除去して反応を行うことによって副反応を抑制し、エポキシ化を行うことができる。
【0092】
エポキシ樹脂組成物および硬化物
本発明のさらに他の一実施形態においては、上述した非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物、およびこれから形成されたエポキシ樹脂硬化物を提供する。
【0093】
特に、前記エポキシ樹脂組成物は、上述した非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂と共に硬化剤などを含むエポキシ樹脂硬化性組成物であり得る。
【0094】
具体的には、下記化学式1で表されるフルオレン系エポキシ化合物と下記の繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物を含み、下記の繰り返し単位1を含むノボラック型フルオレン系エポキシ化合物を全体重量を基準にして3%~80%含む、非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒および溶媒を含むワニス組成物である、エポキシ樹脂硬化性組成物を提供する。
【化16】
前記化学式1中、
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基であり、
【化17】
前記繰り返し単位1中、
nは2≦n≦10の範囲を満たす値であり、
R
3およびR
4はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール基である。
【0095】
前記化学式1と前記繰り返し単位1に対する詳細な説明は、上述した通りであるのでここでの詳細な説明は省略する。
【0096】
前記エポキシ樹脂組成物は、上述のような非結晶性を示すエポキシ樹脂を含むことによって、優れた熱安定性と共に高い柔軟性と屈折率を実現しながらも作業性と貯蔵安定性を確保し、結晶化度を最適点に調節することによってノボラック化時に発生する流動性と平滑性低下の問題を解決した、半導体パッケージ用積層板、高周波伝送用積層板、銅張積層板(CCL:Copper clad laminate)、フレキシブルディスプレイ基板(Flexible display substrate)、絶縁板などの積層板に適用するのに好適である。
【0097】
前記エポキシ樹脂以外の成分は、当業界で一般的に知られているものを選択することができる。
【0098】
また、エポキシ樹脂は物性を調節するために、必要に応じて、フルオレン構造を含まない非フルオレン系エポキシ化合物をさらに含むこともできる。
【0099】
一例として、前記非フルオレン(non-Fluorene)系エポキシ化合物は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレンなどであるか;または前記化合物のアリル化物またはアリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化ノボラック樹脂などの2価フェノール類であるか;あるいはビスフェノールAノボラック、o-クレゾールノボラック、m-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂などの3価以上のフェノール類であるか;またはテトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン化ビスフェノール類であるか、またはこれらから選択される混合物のうちの一つから誘導されるグリシジルエーテル化合物であり得る。
【0100】
本発明の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂と前記非フルオレン系エポキシ化合物は1:3~3:1または1:2~2:1の重量比で使用することで、収縮率、弾性率および成形性のバランスに優れ、かつ高柔軟、高屈折、高耐熱の固有の特性を達成することができる。
【0101】
また、前記硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、およびジシアンジアミドを含む群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうちの2以上の混合物を含み得る。例えば、前記フェノールノボラック樹脂は2個以上の水酸基を有し、水酸基当量(OHEW、hydroxy equivalent weight)は80g/eq~200g/eqであり得る。ここで、前記水酸基当量は、前記樹脂の数平均分子量(g/mol)を水酸基当量数(eq/mol)で割った値である。
【0102】
前記エポキシ樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂と硬化剤の組成比は、前記硬化剤中の水酸基に対する前記エポキシ樹脂中のエポキシ基数、または前記硬化剤中のアミン活性水素基に対する前記エポキシ樹脂中のエポキシ基数のモル比率で、0.8~1.2(エポキシ基/(水酸基またはアミン活性水素基))であることが好ましい。
【0103】
また、前記溶媒は、ケトン系溶媒、アセテート系溶媒、カルビトール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、およびアミド系溶媒を含む群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうちの2以上の混合物であり得る。
【0104】
前記ケトン系溶媒の例としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどがあり、前記アセテート系溶媒の例としては、エチルアセテート、ブチルアセテート、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、前記カルビトール系溶媒の例としては、セロソルブ、ブチルカルビトールなどがあり、前記芳香族炭化水素系溶媒の例としては、トルエン、キシレンなどがあり、前記アミド系溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどがある。
【0105】
一方、前記エポキシ樹脂組成物は、硬化触媒をさらに含み得る。この時、前記硬化触媒は、イミダゾール類化合物、ホスフィン類化合物、ホスホニウム塩、および第三アミンを含む群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうちの2以上の混合物であり得る。
【0106】
本発明のさらに他の一実施形態においては、上述したエポキシ樹脂組成物から形成されたエポキシ樹脂硬化物を提供する。
【0107】
具体的には、前記エポキシ樹脂硬化物は、目的とする用途や機能により、前記エポキシ樹脂組成物を完全硬化状態または半硬化状態に形成したものであり得る。前記エポキシ樹脂組成物に対する説明は、上述した通りであるのでここでの説明は省略する。
【0108】
また、前記エポキシ樹脂硬化物は、場合によっては前記エポキシ樹脂組成物が含浸されたガラス繊維などを乾燥して形成されたプリプレグ(Prepreg)形態であり得る。
【0109】
積層板
本発明のさらに他の一実施形態においては、前記エポキシ樹脂組成物が適用された積層板を提供する。
【0110】
具体的には、基板と、前記基板の一面または両面上に位置する樹脂層と、を含み、上述したエポキシ樹脂組成物から前記樹脂層が形成された積層板を提供する。
【0111】
前記樹脂層は、目的とする用途や機能により、前記エポキシ樹脂組成物を硬化または半硬化状態に形成したものであり得る。前記エポキシ樹脂組成物に対する説明は、上述した通りであるのでここでの説明は省略する。
【0112】
一方、前記基板は、半導体基板、銅箔板、および絶縁板を含む群より選択されるいずれか一つの基板であり得る。例えば、後述する実施例1-1およびそれに伴う評価例でのように、前記基板に銅箔板を使用して、前記積層板をCCL(Copper Clad Laminate)で実現することができる。ただし、これは一例に過ぎず、本発明の一実施形態はこれに限定されない。
【0113】
積層板の製造方法
本発明のさらに他の一実施形態においては、組成物をガラス繊維に含浸させる段階と、前記組成物が含浸されたガラス繊維を乾燥して、プリプレグ(Prepreg)を得る段階と、前記プリプレグを基板上に積層した後に圧着して積層板を得る段階と、を含む、積層板の製造方法を提供する。
【0114】
これは、上述した積層板を製造するいくつかの方法のうちの一つである。前記プリプレグは一枚だけを使用することも可能であり、複数枚を製造して使用することも可能である。
【0115】
また、前記基板は一枚だけを使用することも可能であり、複数枚を使用することも可能である。前記基板を複数枚使用する場合、前記プリプレグを基板上に積層した後に圧着して積層板を得る段階においては、互いに異なる二つの基板の間に前記プリプレグを位置させた後に圧着する。
【0116】
前記プリプレグおよび前記積層板の個数に関係なく、前記プリプレグを基板上に積層した後に圧着して積層板を得る段階において、圧着圧力、温度、時間などは当業界で一般に知られているものに従う。
【0117】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されたものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0118】
(I)1次反応(段階1):ノボラック反応によるフルオレン系ビフェノール樹脂の製造
下記反応式1で表されるように、結晶性化合物である4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール(4,4’-(9-fluorenylidene)diphenol)を酸触媒存在下でホルムアルデヒドとノボラック(novolac)との反応によって生成された重合体を含む固形の高分子樹脂を製造した。
【化18】
前記反応式1中、xは0≦x≦10の範囲を満たす値、つまり、xは0以上~10以下、または0以上~6以下、または0以上~5以下の範囲を満たす値である。特に、x=0である場合、反応物であるモノマーを示す。
【0119】
実施例1-1
まず、1L容量の反応容器に4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール100g(0.285mol)と酸触媒としてシュウ酸(oxalic acid dihydrate)1g(0.011mol)を、メチルセロソルブ(methyl cellosolve、2-methoxyethanol)200gに添加して80℃で溶解させた。その後、37%(w/v)のホルムアルデヒド3.9g(0.048mol)を添加し、120℃まで昇温させた後、4時間反応させた。この時、前記4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物とホルムアルデヒドは6:1のモル比で反応させ、シュウ酸は、前記4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物100モルを基準にして3.86モルで反応させた。180℃まで昇温しながらメチルセロソルブを常圧(25℃)で回収し、さらに減圧回収を20torr以下まで進行した。溶媒回収を完了した樹脂は常温で固形化させ、実施例1-1の軟化点は135℃であった。
【0120】
実施例2-1
1L容量の反応容器に4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール(4,4’-(9-Fluorenylidene)diphenol)100g(0.285mol)と酸触媒としてシュウ酸(oxalic acid)1g(0.011mol)を、メチルセロソルブ(methyl cellosolve、2-methoxyethanol)200gに添加して80℃で溶解させた。その後、37%ホルムアルデヒド2.9g(0.036mol)を添加し、120℃まで昇温させた後、4時間反応させた。この時、前記4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物とホルムアルデヒドは8:1のモル比で反応させ、シュウ酸は、前記4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物100モルを基準にして3.86モルで反応させた。反応終了後、180℃まで昇温しながらメチルセロソルブを常圧(25℃)で回収し、さらに減圧回収を20torr以下まで進行した。溶媒回収を完了した樹脂は常温で固形化させ、実施例2-1の軟化点は127℃であった。
【0121】
比較例1-1
4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物にノボラック反応を進行しない純度99.9%のモノマー(monomer)を比較群として結晶化特性を評価した。
【0122】
比較例2-1
4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物とホルムアルデヒドのモル比を0.55:1とし、シュウ酸は、前記4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物100モルを基準にして9.8モルで反応させたことを除いて、実施例1と同様の条件で進行した。生成された樹脂は常温で非結晶性特性を示し、軟化点は197℃であった。
【0123】
前記実施例1-1~実施例2-1と比較例1-1~比較例2-1の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール-ノボラック樹脂(4,4’-(9-Fluorenylidene)diphenol-novolac resin)に対して、具体的な反応モル比の条件と樹脂に対する物性測定の結果は下記表1の通りである。
【0124】
特に、樹脂の結晶性評価において、融点(Tm、℃)、および水酸基当量(OHEW、g/eq)、軟化点(℃)を測定し、GPC分析により数平均分子量(Mn、g/mol)、および重量平均分子量(Mw、g/mol)、分子量分布(Mn/Mw)、前記化学式1で表されるモノマー化合物の含有量(n=1のモノマー含有量、%)および前記繰り返し単位1を含むノボラック重合体(n=2以上の重合体含有量、%)を測定した。この時、前記化学式1で表されるモノマー化合物および前記繰り返し単位1を含むノボラック重合体(n=2以上の重合体含有量、%)の全体重量を基準にして測定した値である。
【0125】
この時、前記物性測定は、それぞれ示差走査熱量計(Differential scanning calorimetry、DSC)およびゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)を用いて行い、具体的な測定方法は上述した通りである。
【表1】
【0126】
一方、実施例1-1のフルオレン系ビフェノール樹脂および比較例1-1の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物に対する示差走査熱量計(Differential scanning calorimetry、DSC)の分析グラフをそれぞれ
図1および
図2に示す。
【0127】
特に、
図1に示すように、実施例1-1のDSC曲線ではモノマーを結合させて分子量の大きい化合結合で作られたノボラック型化合物を含むフルオレン系ビフェノール樹脂で製造され、非結晶性固体として融点が現れず、
図2に示すように、比較例1-1のDSC曲線では単量体構造を有する結晶性樹脂の特性として融点は232℃であった。
【0128】
また、実施例1-1のフルオレン系ビフェノール樹脂および比較例1-1の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物に対するゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)の分析グラフをそれぞれ
図3および
図4に示す。
【0129】
特に、
図3に示すように、実施例1-1のGPC曲線ではn=2または3以上の繰り返し単位を有するノボラック型構造の化合物が含まれているフルオレン系ビフェノール樹脂の分子量分布図を確認することができ、
図4に示すように、比較例1-1のGPC曲線では繰り返し単位n=1を有する単量体またはモノマー(monomer)構造として4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物の単一ピークとして現れることを確認することができた。
【0130】
一方、前記表1に示すように、実施例1-1、実施例2-1、比較例2-1の分子量分布を確認した結果、二量体より大きい重合体が合成されたことを確認することができ、示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimeter)で融点(Tm)を測定して結晶性が十分に制御されたことを確認した。
【0131】
(II)2次反応(段階2):エポキシ化反応で最終物質製造
下記反応式2で表されるように、上記で製造した4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール-ノボラック樹脂(4,4’-(9-Fluorenylidene)diphenol-novolac resin)をエピハロヒドリンと水酸化塩の存在下で反応させて、非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂を最終物質として製造した。
【化19】
【0132】
前記反応式2中、xは0≦x≦10の範囲を満たす値であり、yは0≦y≦10の範囲を満たす値であり、OGはグリシジルエーテル基(glycidyl ether)である。具体的には、xおよびyはそれぞれ0以上~10以下、または0以上~6以下、または0以上~5以下の範囲を満たす値である。特に、x=0およびy=0である場合、それぞれの反応物に相当するモノマーを示す。
【0133】
実施例1-2
1L容量の反応容器に、実施例1-1の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール-ノボラック樹脂100g(0.53モル)を、エピクロロヒドリン296g(3.2モル)に添加し、65℃で溶解させた。その後、50%NaOH 42g(0.525mol)を30℃~80℃で4時間、180torrの減圧下で滴下して反応させた。この時、前記4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール-ノボラック樹脂の水酸基に対して、前記エピクロロヒドリンは3倍~8倍のモル含有量で反応させ、NaOHは0.85倍~1.2倍のモル含有量で反応させた。圧力は180torrを維持し、30℃~120℃で反応を進行し、反応過程で水による副反応を抑制するために水を連続的に除去して反応を進行した。反応が完了した後、メチルイソブチルケトン(MIBK、methyl isobutyl ketone)、トルエン(toluene)と蒸留水を用いて発生した塩と副反応物を除去した。このように製造された非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂のエポキシ当量は250g/eqであった。
【0134】
このように製造した実施例1-2の生成物をGPC分析による分子量分布を確認した結果、二量体より大きい重合体が合成され、エポキシ化反応を進行した2次反応生成物はBall and Ring方法によって軟化点(softening point)を測定した。
【0135】
実施例2-2
実施例2-1の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール-ノボラック樹脂100gを使用したことを除いては、実施例1-2の2次反応条件と同様にしてエポキシ化反応を進行した。
【0136】
このように製造した実施例2-2の生成物をGPC分析による分子量分布を確認した結果、二量体より大きい重合体が合成され、エポキシ化反応を進行した2次反応生成物はBall and Ring方法によって軟化点(softening point)を測定した。
【0137】
比較例1-2
比較例1-1の純度99.9%の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール化合物を使用したことを除いては、実施例1-1と同様の方法でエポキシ樹脂を製造した。
【0138】
比較例2-2
比較例2-1の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール-ノボラック樹脂100g(0.52モル)を、エピクロロヒドリン296g(3.2モル)に添加し、65℃で溶解させた。その後、50%NaOH 42g(0.525モル)を30℃~80℃で4時間、180torrの減圧下で滴下して反応させ、反応が完了した後、メチルイソブチルケトン(MIBK、methyl isobutyl ketone)、トルエン(toluene)と蒸留水を用いて発生した塩と副反応物を除去した。
【0139】
このように製造した比較例2-2の生成物をGPC分析による分子量分布を確認した結果、二量体より大きい重合体が合成され、エポキシ化反応を進行した2次反応生成物はBall and Ring方法によって軟化点(softening point)を測定した。
【0140】
比較例3-2
市販のフェノールノボラックエポキシ樹脂(商品名:YDPN-638EK80、国都化学社製、EEW179.7g/eq、粘度370cps@25℃)を用い、前記エポキシ樹脂(YDPN-638EK80)の構造式は以下の通りである。
【化20】
前記構造式中、zは1≦z≦10の範囲を満たす値である。
【0141】
前記実施例1-2~実施例2-2と比較例1-2~比較例2-2のフルオレン系エポキシ樹脂に対して、樹脂の結晶性の評価について測定した融点(Tm、℃)、およびエポキシ当量(EEW、g/eq)、軟化点(Ts、℃)、GPC分析による数平均分子量(Mn、g/mol)、および重量平均分子量(Mw、g/mol)、分子量分布(Mn/Mw)、溶融粘度(cps@150℃)、貯蔵安定性(シクロヘキサノン50%稀釈)、屈折率(R.I)の測定結果は、下記表2に示す通りである。
【0142】
この時、前記物性測定はそれぞれ、示差走査熱量計(Differential scanning calorimetry、DSC)およびゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)を用いて行い、具体的な測定方法は上述した通りである。
【0143】
ただし、前記フルオレン系エポキシ樹脂の溶融粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)社製の回転式粘度計を用いて150℃で測定し、貯蔵安定性はシクロヘキサノン溶剤に試料を1:1の重量比で溶解した後、常温(RT、23℃~25℃)で結晶化して析出される現象を測定し、屈折率(R.I)は、プリズムに接合して光の入射角を変化させて波長404nmで測定した。
【表2】
【0144】
上記表2に示すように、実施例1-2および実施例2-2の非結晶性フルオレン系エポキシ樹脂は、結晶化度を下げながらこれと同時に軟化点と溶融粘度は比較例2-2のエポキシ樹脂より低くなった。これは、最小限の変形でフルオレン(fluorene)構造が有する高屈折率などの固有の特性は維持させながら、高機能性が求められる電子材料など多様な分野に適用可能に固形化された樹脂で製造した。
【0145】
<試験例>
以下の方法で、実施例1-2~実施例2-2と比較例1-2、比較例2-2、および比較例3-2のエポキシ樹脂に対して、銅張積層板(CCL:Copper clad laminate)の製造時の物性評価を測定し、測定結果は下記表3に示す通りである。
【0146】
1)CCL評価用試験片の製造
実施例および比較例の各エポキシ樹脂と硬化剤、硬化触媒を固形分含有量の総重量を基準にしてそれぞれ32重量%、0.02重量%の組成で混合し、溶媒としてはメチルエチルケトン(MEK、methyl ethyl ketone)を使用して、固形分含有量が70重量%のワニス溶液をそれぞれ製造した。ここで、硬化剤としては、軟化点が95.2℃のフェノールノボラック硬化剤を使用し、触媒としては2-メチルイミダゾール(2MI、2-methylimidazole)を使用した。このように製造したワニス溶液に対してBrookfield社製の回転式粘度計を用いて25℃で溶液粘度を測定し、測定結果は下記表3に示す通りである。
【0147】
このように製造したそれぞれのワニス溶液を2116 type E-glassガラス繊維に含浸させた後、175℃のオーブンに入れて2分間乾燥させて、それぞれのプリプレグ(Prepreg)を製造した。
【0148】
それぞれのプリプレグ8枚を1オンス(oz)の2枚の銅箔の間に位置させた後、180℃の温度と200psiの圧力で1時間30分間熱間圧延(hot press)して、それぞれのCCL物性評価用試験片を得た。
【0149】
2)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度(Tg)は、各実施例および比較例の樹脂組成物を180℃で6時間維持して硬化した後、示差走査熱量計(DSC)を用いてIPC TM-650 2.4.25の規格により測定した。
【0150】
3)熱膨張係数(Coefficients of thermal expansion、CTE)
熱膨張係数(CTE)は、各実施例および比較例の樹脂組成物を180℃で6時間維持して硬化した後、IPC TM-650 2.4.24規格により測定した。
【0151】
4)曲げ弾性率(Flexural modulus)
曲げ弾性率は、各実施例および比較例の樹脂組成物を金属箔に付着させることによってそれぞれの樹脂付き金属箔を製造し、それぞれの樹脂付き金属箔2枚に対して樹脂面に対向して重なることで両面の銅張積層板を製作した。それぞれの両面の銅張積層板を全面エッチングした後、幅5mm×長さ30mmに切断し、DMA(Dynamic Mechanical Analysis)を用いて算出した。
【表3】