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特許7417633パワーディバイダ、調整方法、電力分配方法、記憶媒体、及び電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】パワーディバイダ、調整方法、電力分配方法、記憶媒体、及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/19 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
H01P5/19 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021566123
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2020118315
(87)【国際公開番号】W WO2021063302
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】201910944533.8
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516010548
【氏名又は名称】セインチップス テクノロジー カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ベイ
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-247303(JP,A)
【文献】特開2014-138381(JP,A)
【文献】特開2012-178754(JP,A)
【文献】特開平09-321509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
M個の電力分配ユニットを備え、
前記M個の電力分配ユニットがカスケード接続されてN段のカスケード構造を形成し、各電力分配ユニットが1つの入力ポートと2つの出力ポートとを含み、前記カスケード構造における各々の第K段の電力分配ユニットが以下の関係を満たし、
すなわち、前記第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、かつ、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合し、ここで、N、Kはいずれも1以上の正の整数であり、Mは1よりも大きい正の整数であり、
アイソレーションインピーダンスユニットをさらに備え、
前記アイソレーションインピーダンスユニットは、前記電力分配ユニットの前記2つの出力ポートの間に接続され、前記アイソレーションインピーダンスユニットは、前記電力分配ユニットの前記出力インピーダンスと前記電力分配ユニットの前記負荷インピーダンスとが共役整合するように、前記電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整するように設置されており
前記アイソレーションインピーダンスユニットは、並列接続された抵抗とコンデンサを含む、
ことを特徴とするパワーディバイダ。
【請求項2】
N、Kがいずれも1、Mが1よりも大きい正の整数である場合、第1段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと予め設定された前記パワーディバイダの目標ソースインピーダンスとが共役整合し、かつ、前記第1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと予め設定された前記パワーディバイダの目標負荷インピーダンスとが共役整合し、
Mが3以上、Nが2以上、およびKが1の場合、第1段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと予め設定された前記パワーディバイダの目標ソースインピーダンスとが共役整合し、前記第1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと前記第1段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合し、
Mが3以上、Nが2以上、および、Kが2以上N未満の場合、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットに接続された第K-1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、かつ、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合し、
Mが3以上、Nが2以上、かつKがNの場合、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットに接続された第K-1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、かつ、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと予め設定された前記パワーディバイダの目標負荷インピーダンスとが共役整合する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーディバイダ。
【請求項3】
Mが3以上、及びNが2以上の場合、前記パワーディバイダにおける全てまたは一部の中間ポートに対応する入力インピーダンスが、前記パワーディバイダの目標ソースインピーダンスと等しくならなく、または、前記パワーディバイダにおける全てまたは一部の中間ポートに対応する出力インピーダンスが、前記パワーディバイダの目標負荷インピーダンスと等しくならなく、または、前記パワーディバイダにおける一部の中間ポートに対応する入力インピーダンスが、前記パワーディバイダの目標ソースインピーダンスと等しくならなく、且つパワーディバイダにおける一部の中間ポートに対応する出力インピーダンスが、前記パワーディバイダの目標負荷インピーダンスと等しくならなく、
そのうち、前記中間ポートは、前記パワーディバイダにおける前記パワーディバイダの入力ポートと前記パワーディバイダの出力ポートとの間の電力分配ユニットの入力ポートおよび電力分配ユニットの出力ポートの少なくとも一方である、
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーディバイダ。
【請求項4】
パワーディバイダに適用される調整方法であって、
各々の第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように、前記パワーディバイダの各々の第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスを調整することと、
前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整することと、を含み、
ここで、前記パワーディバイダがM個の電力分配ユニットを備え、前記M個の電力分配ユニットがカスケード接続されてN段のカスケード構造を形成し、各々の電力分配ユニットが1つの入力ポートと2つの出力ポートとを含み、N、Kはいずれも1以上の正の整数であり、Mは1よりも大きい正の整数であり、
Mが3以上、及びNが2以上の場合、調整後の前記パワーディバイダにおける全てまたは一部の中間ポートに対応する入力インピーダンスが、前記パワーディバイダの目標ソースインピーダンスと等しくならなく、または、前記パワーディバイダにおける全てまたは一部の中間ポートに対応する出力インピーダンスが、前記パワーディバイダの目標ソースインピーダンス又は目標負荷インピーダンスと等しくならなく、または、前記パワーディバイダにおける一部の中間ポートに対応する入力インピーダンスが、前記パワーディバイダの目標ソースインピーダンスと等しくならなく、且つパワーディバイダにおける一部の中間ポートに対応する出力インピーダンスが、前記パワーディバイダの目標負荷インピーダンスと等しくならなく、
そのうち、前記中間ポートは、前記パワーディバイダにおける前記パワーディバイダの入力ポートと前記パワーディバイダの出力ポートとの間の電力分配ユニットの入力ポートおよび電力分配ユニットの出力ポートの少なくとも一方であ
前記アイソレーションインピーダンスユニットは、並列接続された抵抗とコンデンサを含む、
ことを特徴とする調整方法。
【請求項5】
前記の各々の第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように、前記パワーディバイダの各々の第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスを調整し、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整することは、
N、Kがいずれも1、Mが1よりも大きい正の整数である場合、第1段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと予め設定された前記パワーディバイダの目標ソースインピーダンスとが共役整合するように調整し、かつ、前記第1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと予め設定された前記パワーディバイダの目標負荷インピーダンスとが共役整合するように調整することと、
Mが3以上、Nが2以上、およびKが1の場合、第1段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと予め設定された前記パワーディバイダの目標ソースインピーダンスとが共役整合するように調整し、前記第1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと前記第1段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように調整することと、
Mが3以上、Nが2以上、及び、Kが2以上N未満の場合、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットに接続された第K-1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように調整し、かつ、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように調整することと、
Mが3以上、Nが2以上、かつKがNの場合、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットに接続された第K-1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように調整し、かつ、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと予め設定された前記パワーディバイダの目標負荷インピーダンスとが共役整合するように調整することと、
を含むことを特徴とする請求項に記載の調整方法。
【請求項6】
以下の少なくとも1つの方式によって前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整し、すなわち、
前記電力分配ユニットの特性インピーダンス及びマイクロストリップラインの長さの少なくとも一方を調整し、
前記電力分配ユニットの前記2つの出力ポートの間に接続されたアイソレーションインピーダンスユニットによって前記電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整する、
ことを特徴とする請求項に記載の調整方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のパワーディバイダを用いて電力分配を行うことを特徴とする電力分配方法。
【請求項8】
稼働時に請求項のいずれか1項に記載の調整方法を実行するように設定されているコンピュータプログラムを記憶した、ことを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【請求項9】
コンピュータプログラムを記憶したメモリと、
前記コンピュータプログラムを稼働することで請求項のいずれか1項に記載の調整方法を実行するように設置されたプロセッサと、
を備えることを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2019年09月30日に中国特許局に提出された中国特許出願201910944533.8に基づく優先権を主張し、その開示全体は援用により本願に組み込まれるものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、通信分野に関し、例えば、パワーディバイダ(Power Divider、電力分配器)、調整方法、電力分配方法、記憶媒体、及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
移動通信、電子逆探および衛星通信などは、小型化、広帯域およびより高い動作周波数帯への発展により、周波数および帯域幅に対する要求も高周波数、広帯域の方向へ進化している。第5世代移動通信システム(the 5th Generation mobile communication system、5G)技術が急激に発展している時代において、ミリ波帯は、その広い帯域幅及び高容量の特性から広く検討されている。高周波信号の伝送中に損失が大きく通信品質に影響を与えるため、マルチチャネルフェーズドアレイ技術を適用する必要があり、パワーディバイダ(電力分配器)は必要不可欠な一部である。RFデバイスの集積小型化の要請から、マイクロ波集積回路式のパワーディバイダは研究され始めている。パワーディバイダの性能はシステム全体の性能に影響するため、小型化されたパワーディバイダを設けることは重要な意義を持っている。
【0004】
パワーディバイダは、1ウェイの入力信号エネルギーを2ウェイまたは複数ウェイに分けて出力するマイクロ波デバイスであり、パワーディバイダは多くの場合、等分配(3dB)の形式であるが、異なる電力分配比もある。パワーディバイダは、出力に応じて、通常2ウェイ(2分配:1入力2出力)パワーディバイダ、3ウェイ(3分配:1入力3出力)パワーディバイダ等に分類される。パワーディバイダの主な技術パラメータには、電力損失(挿入損失、分配損失及び反射損失を含む)、ポート毎の電圧定在波比、出力ポート間のアイソレーション、振幅バランス、位相バランス、電力容量、周波数帯域幅などがある。
【0005】
パワーディバイダは、最もシンプルな構成がTジャンクションであり、Tジャンクションパワーディバイダは、1つのシンプルな3ポートネットワークであり、通常、無損失のT型パワーディバイダと抵抗パワーディバイダがある。無損失のT型パワーディバイダは、全てのポートでマッチングすることができず、また、出力ポート間には何ら隔離がない。一方、抵抗パワーディバイダは、全てのポートでマッチングすることができるが、無損失ではなく、しかもアイソレーションは依然として良くない。また、Wilkinson(ウィルキンソン型)パワーディバイダは、ポートマッチングが可能であるとともに、伝送損失が小さく、また、出力部にアイソレーション抵抗を導入することで、複数の出力ポート間のアイソレーションが比較的良好となるため、回路に広く適用されている。
【0006】
従来のWilkinson(ウィルキンソン型)パワーディバイダは、いずれも、1/4波長のインピーダンス変換特性に基づいて入出力マッチングを実現する2ウェイ(2分配)パワーディバイダであり、2ウェイ(2分配)パワーディバイダは、複数の2ウェイWilkinsonパワーディバイダをカスケード接続することで実現される。このような従来の設計方法は、各セクションの2ウェイパワーディバイダのいずれにおいても少なくとも1/4波長のマイクロストリップラインの長さを必要とし、ロスを大きくしただけではなく、大きすぎる面積も占め、コストを高くし、チップにとっても集積には不利である。図1は、2ウェイWilkinsonパワーディバイダの構成を示す図であり、図2は、2ウェイWilkinsonパワーディバイダの構成を示す図であり、図1および図2に示すように、入力ポートおよび出力ポートは、いずれも特性インピーダンスZ=50ohmとマッチングし、入力と出力の間の1/4波長ラインの特性インピーダンスが、
であり、アイソレーション抵抗が2Zである。偶奇モード解析から、このパワーディバイダは信号の2等分を実現できることが分かる。一方、Wilkinson2ウェイパワーディバイダは、合計N段のパワーディバイダを有し、第1段には一つの2ウェイパワーディバイダがあり、2段目には二つの2ウェイパワーディバイダがあり、・・・・・・N段目には2(N-1)個の2ウェイパワーディバイダがある。この2-1個の全く同様なパワーディバイダが接続されて2ウェイパワーディバイダを構成し、その全体構成模式図を図2に示す。しかしながら、各2ウェイパワーディバイダの入力と出力の間の信号線の長さが一定の1/4波長であるので、パワーディバイダの面積を増やすだけでなく、大きな損失をもたらしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、少なくともパワーディバイダの信号線長が長いことに起因するパワーディバイダの面積が大きいという問題を解決するように、パワーディバイダ、調整方法、電力分配方法、記憶媒体、及び電子装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一種のパワーディバイダを提供し、このパワーディバイダは、M個の電力分配ユニットを備え、前記M個の電力分配ユニットがカスケード接続されてN段のカスケード構造を形成し、各電力分配ユニットが1つの入力ポートと2つの出力ポートとを含み、前記カスケード構造における各々の第K段の電力分配ユニットが以下の関係を満たし、すなわち、前記第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合(共役マッチング)し、かつ、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合し、ここで、N、K、Mはいずれも1以上の正の整数である。
【0009】
さらに、一種の調整方法を提供し、パワーディバイダに適用される調整方法であって、
第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように、各々の第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスを調整することと、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと前記第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように、前記第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整することと、を含み、ここで、N、K、Mはいずれも1以上の正の整数であり、前記パワーディバイダがM個の電力分配ユニットを備え、前記M個の電力分配ユニットがカスケード接続されてN段のカスケード構造を形成し、各電力分配ユニットが1つの入力ポートと2つの出力ポートとを含む。
【0010】
さらに、上述したパワーディバイダを用いて電力分配を行うことを含む電力分配方法を提供する。
【0011】
また、稼働時に前記調整方法を実行するように設定されているコンピュータプログラムを記憶した、コンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【0012】
また、コンピュータプログラムを記憶したメモリと、前記コンピュータプログラムを稼働することで前記調整方法を実行するように設置されたプロセッサと、を備える電子装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、2ウェイWilkinsonパワーディバイダの構成を示す図である。
図2図2は、2ウェイWilkinsonパワーディバイダの構成を示す図である。
図3図3は、本発明の実施例によるパワーディバイダの構成を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施例による調整方法のフローチャートである。
図5図5は、本発明の代替実施形態による小型化パワーディバイダの実施フローを示す図である。
図6図6は、本発明の代替実施形態による16ウェイパワーディバイダの構成を示す図である。
図7図7は、本発明の代替実施形態による16ウェイパワーディバイダの入力ポートから16個の出力ポートへの挿入損失を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施形態を併せて本発明を説明する。
【0015】
ここで、「第1」、「第2」などの用語は、類似する対象物を区別するために用いられるが、特定の順序または前後の順を説明するために使用する必要はない。
【0016】
実施例1
本発明の実施例は、一種のパワーディバイダを提供し、図3は、本発明の実施例によるパワーディバイダの構成を示すブロック図である。図3に示すように、M個の電力分配ユニットを備え、M個の電力分配ユニットがカスケード接続されてN段のカスケード構造を形成し、各電力分配ユニットが1つの入力ポートと2つの出力ポートとを含み、カスケード構造における各々の第K段の電力分配ユニットが以下の関係を満たし、すなわち、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、かつ、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合し、ここで、N、K、Mはいずれも1以上の正の整数である。
【0017】
本発明の実施例によれば、各段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと、各段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、且つ、各段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと各段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するため、すなわち、パワーディバイダの段間インピーダンスが一定のインピーダンス値に限らず、一つの指定された複素インピーダンスとすることができるため、各段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの長さを短くし、関連技術におけるパワーディバイダの信号線長さが長いことに起因するパワーディバイダの面積が大きいという問題を解決し、パワーディバイダ全体の面積の減少を図りつつ、パワーディバイダ損失を低減した。
【0018】
一つの代替実施形態において、N、MおよびKがいずれも1である場合、第1段の電力分配ユニットの入力インピーダンスとパワーディバイダの目標ソースインピーダンスとが共役整合し、かつ、第1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとパワーディバイダの目標負荷インピーダンスとが共役整合し、パワーディバイダの目標ソースインピーダンスと目標負荷インピーダンスとが予め設定されている。Mが3以上、Nが2以上、およびKが1の場合、第1段の電力分配ユニットの入力インピーダンスとパワーディバイダの目標ソースインピーダンスとが共役整合し、第1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと第1段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合する。Mが3以上、Nが2以上、及び、Kが2以上N未満の場合、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと第K-1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、かつ、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合し、ここで、Kは、[2、N-1]における任意の正の整数である。Mが3以上、Nが2以上、かつKがNの場合、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと第K-1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、かつ、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとパワーディバイダの目標負荷インピーダンスとが共役整合する。
【0019】
一つの代替実施形態において、パワーディバイダは、アイソレーションインピーダンスユニットをさらに備え、アイソレーションインピーダンスユニットは、電力分配ユニットの2つの出力ポートの間に接続され、アイソレーションインピーダンスユニットは、電力分配ユニットの出力インピーダンスと電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように、電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整するように設置されている。
【0020】
一つの代替実施形態において、アイソレーションインピーダンスユニットは、並列接続された抵抗とコンデンサを含む。
【0021】
一つの代替実施形態において、Mが3以上、及びNが2以上の場合、パワーディバイダにおける全てまたは一部の中間ポートに対応する入力インピーダンス及び/又は出力インピーダンスは、パワーディバイダの目標ソースインピーダンス又は目標負荷インピーダンスと等しくならなく、そのうち、中間ポートは、パワーディバイダにおけるパワーディバイダ入力ポートとパワーディバイダ出力ポートとの間の入力ポート又は出力ポートである。
【0022】
パワーディバイダが2段または2段以上の電力分配ユニット構造を備える場合、一部または全ての中間ポートの入力インピーダンスまたは出力インピーダンスは、当該パワーディバイダの目標ソースインピーダンスまたは目標負荷インピーダンスと等しくなくてもよく、そのうち、中間ポートは、パワーディバイダにおけるパワーディバイダ入力ポートとパワーディバイダ出力ポートとの間の入力ポート又は出力ポートである。例えば、パワーディバイダの第1段の電力分配ユニットの出力ポートから当該パワーディバイダの最終段の電力分配ユニットの入力ポートに至るまでの全てのポートを含み、第1段の電力分配ユニットの出力ポートと最終段の電力分配ユニットの入力ポートも含む。
【0023】
本発明の他の実施例によれば、例えば上記実施例に述べたパワーディバイダのようなパワーディバイダに適用される調整方法をさらに提供する。図4は、本発明の実施例による調整方法のフローチャートであり、図4に示すように、以下のステップを含んでいる。
【0024】
スステップS402:第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスを調整する。
【0025】
ステップS404:第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整し、ここで、N、K、Mはいずれも1以上の正の整数であり、パワーディバイダがM個の電力分配ユニットを備え、M個の電力分配ユニットがカスケード接続されてN段のカスケード構造を形成し、各電力分配ユニットが1つの入力ポートと2つの出力ポートとを含む。
【0026】
上記のステップにより、各段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと、各段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、且つ、各段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと各段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するため、すなわち、パワーディバイダの段間インピーダンスが一定のインピーダンス値に限らず、一つの指定された複素インピーダンスとすることができるため、各段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの長さを短くし、関連技術におけるパワーディバイダの信号線長さが長いことに起因するパワーディバイダの面積が大きいという問題を解決し、パワーディバイダ全体の面積の減少を図りつつ、パワーディバイダ損失を低減した。
【0027】
一つの代替実施形態において、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスを調整し、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整することは、以下の内容を含む。すなわち、N、MおよびKがいずれも1である場合、第1段の電力分配ユニットの入力インピーダンスとパワーディバイダの目標ソースインピーダンスとが共役整合するように調整し、かつ、第1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとパワーディバイダの目標負荷インピーダンスとが共役整合するように調整し、パワーディバイダの目標ソースインピーダンスと目標負荷インピーダンスとが予め設定されている。Mが3以上、Nが2以上、およびKが1の場合、第1段の電力分配ユニットの入力インピーダンスとパワーディバイダの目標ソースインピーダンスとが共役整合するように調整し、第1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと第1段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように調整する。Mが3以上、Nが2以上、及び、Kが2以上N未満の場合、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと第K-1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように調整し、かつ、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように調整し、ここで、Kは、[2、N-1]における任意の正の整数である。Mが3以上、Nが2以上、かつKがNの場合、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと第K-1段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように調整し、かつ、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスとパワーディバイダの目標負荷インピーダンスとが共役整合するように調整する。
【0028】
一つの代替実施形態において、以下の方式によって第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整する。すなわち、電力分配ユニットの特性インピーダンス及び/又はマイクロストリップラインの長さを調整すること、及び/又は、電力分配ユニットの二つの出力ポートの間に接続されたアイソレーションインピーダンスユニットによって電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整することである。
【0029】
一つの代替実施形態において、Mが3以上、およびNが2以上の場合、調整後のパワーディバイダにおける全てまたは一部の中間ポートに対応する入力インピーダンス及び/又は出力インピーダンスは、パワーディバイダの目標ソースインピーダンスまたは目標負荷インピーダンスと等しくなく、そのうち、中間ポートは、パワーディバイダにおけるパワーディバイダ入力ポートとパワーディバイダ出力ポートとの間の入力ポートまたは出力ポートである。
【0030】
本発明の一つの実施例によれば、上記いずれの実施例に記載のパワーディバイダを用いて電力分配を行うことを含む電力分配方法がさらに提供される。
【0031】
代替実施形態
本発明の実施例は、パワーディバイダを小型化する設計方法を提供し、この設計方法により、少なくとも面積を元の3分の1に縮小し、伝送損失も低減したパワーディバイダが得られる。
【0032】
図5は、本発明の代替実施形態による小型化パワーディバイダの実施フローを示す図であり、図5に示すように、本発明の実施例に記載の、パワーディバイダを小型化する方法は、以下のステップを含んでいる。
【0033】
第1ステップ:まず、2分配が要求されるパワーディバイダのソースインピーダンスZと負荷インピーダンスZを明確にし、例えば、予めパワーディバイダの目標ソースインピーダンスと目標負荷インピーダンスとを設定し、パワーディバイダの入出力インピーダンスとソースインピーダンス及び負荷インピーダンスとを共役整合させる。
【0034】
第2ステップ:入力がZin1であることから出力が負荷ZL1に整合したことまでの2ウェイ(2分配)パワーディバイダを実現する。
【0035】
本発明の実施例に記載のパワーディバイダの入力ポートは、信号源インピーダンスZに整合し、入力インピーダンスは、Zin1=Zsであり、第1段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの負荷インピーダンスは、ZL1である。パワーディバイダに用いられるマイクロストリップラインの特性インピーダンスは、Z01であり、アームの長さは、lである。
【0036】
良好な伝送特性を得るように、第1段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの出力インピーダンスと負荷インピーダンスを共役整合させる。第1段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの2つの出力ポートの間は、アイソレーションインピーダンスで接続され、アイソレーションインピーダンスZは、抵抗RとコンデンサCとが並列接続して構成されてもよい。アイソレーション抵抗RとコンデンサCは、アイソレーションを改善するだけでなく、出力インピーダンスを調整して負荷インピーダンスとの共役整合も図る。
【0037】
第3ステップ:入力インピーダンスがZin2であることから出力が負荷ZL2にに整合したことまでの2ウェイ(2分配)パワーディバイダを実現し、上記第2ステップで設計したパワーディバイダとカスケード接続して4ウェイ(4分配)パワーディバイダを実現する。
【0038】
本発明の実施例に記載の第2段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの入力ポートは、第1段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの出力インピーダンスZL1 に整合し、入力インピーダンスは、Zin2=ZL1である。パワーディバイダに用いられるマイクロストリップラインの特性インピーダンスは、Z02であり、アームの長さは、lである。
【0039】
良好な伝送特性を得るように、第2段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの出力インピーダンスと負荷インピーダンスを共役整合させる。第2段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの2つの出力ポートの間は、アイソレーションインピーダンスで接続され、アイソレーションインピーダンスZは、抵抗RとコンデンサCとが並列接続して構成される。アイソレーション抵抗RとコンデンサCは、アイソレーションを改善するだけでなく、出力インピーダンスを調整して負荷インピーダンスとの共役整合も図る。
【0040】
第4ステップ:入力インピーダンスがZinkであることから出力が負荷ZLkにに整合したことまでの2ウェイ(2分配)パワーディバイダを実現し、第3ステップで設計したパワーディバイダとカスケード接続して2ウェイ(2分配)パワーディバイダを実現する。ここで、K=2、3、…、N-1である。
【0041】
本発明の実施例に記載の第K段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの入力ポートは、第(K-1)段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの出力インピーダンスZL(k-1) に整合し、入力インピーダンスは、Zink=ZL(k-1)であり、第K段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの負荷インピーダンスは、それぞれZLkである。ZinkとZLkとの関係は、下記の通りである。

ここで、Z0kは、第K段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの特性インピーダンスであり、lは、第K段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの長さであり、ZLkは、第K段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの負荷インピーダンスであり、Zinkは、第K段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの入力インピーダンスであり、β=2π/λであり、λは波長である。
【0042】
良好な伝送特性を得るように、第K段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの出力インピーダンスと負荷インピーダンスとを共役整合させる。第K段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの2つの出力ポートの間は、アイソレーションインピーダンスで接続され、アイソレーションインピーダンスZは、抵抗RとコンデンサCとが並列接続して構成される。アイソレーション抵抗RとコンデンサCは、アイソレーションを改善するだけでなく、出力インピーダンスを調整して負荷インピーダンスとの共役整合も図る。
【0043】
第5ステップ:入力インピーダンスがZinNであることから出力が負荷ZLNに整合したことまでの2ウェイ(2分配)パワーディバイダを実現し、第4ステップで設計したパワーディバイダとカスケード接続して2ウェイ(2分配)パワーディバイダを実現する。
【0044】
本発明の実施例に記載の第N段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの入力ポートは、第(N-1)段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの出力インピーダンスZL(N-1) に整合し、第N段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの入力ポートの入力インピーダンスは、ZinN=ZL(N-1)である。第N段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの負荷インピーダンスは、それぞれZLN=Zである。パワーディバイダに用いられるマイクロストリップラインの特性インピーダンスは、Z0Nであり、アームの長さは、lである。
【0045】
良好な伝送特性を得るように、第N段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの出力インピーダンスと負荷インピーダンスとを共役整合させる。第N段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの2つの出力ポートの間は、アイソレーションインピーダンスで接続され、アイソレーションインピーダンスZは、抵抗RとコンデンサCとが並列接続して構成される。アイソレーション抵抗RとコンデンサCは、アイソレーションを改善するだけでなく、出力インピーダンスを調整して負荷インピーダンスとの共役整合も図る。
【0046】
第6ステップ:上記のパワーディバイダをカスケード接続して、2ウェイ(2分配)パワーディバイダを構成する。
【0047】
本発明の実施例で設計された2ウェイ(2分配)パワーディバイダは、合計N段であり、2-1個のパワーディバイダで接続してなる。第1段には一つの2ウェイパワーディバイダがあり、第2段には二つの2ウェイパワーディバイダがあり、第3段には四つの2ウェイパワーディバイダがあり、・・・、これによって類推し、第N段には2(N-1)個の2ウェイパワーディバイダがある。
【0048】
第1段の2ウェイパワーディバイダの入力ポートとソースインピーダンスとが接続され、ソースインピーダンスから第1段の2ウェイパワーディバイダの入力ポートに信号が伝達され、第1段の2ウェイパワーディバイダによって電力の2等分分配が実現される。第1段の2ウェイパワーディバイダの2つの出力ポートは、それぞれ、第2段の2つの2ウェイパワーディバイダの入力ポートに接続され、信号は、第1段と第2段のパワーディバイダにより電力の4等分分配が実現される。これによって類推し、第N-1段の2ウェイパワーディバイダの2つの出力ポートは、それぞれ、第N段の2つの2ウェイパワーディバイダの入力ポートに接続され、信号は、このN段のパワーディバイダにより電力の2等分分配が実現される。
【0049】
従来のWilkinson(ウィルキンソン型)パワーディバイダでは、1/4波長のパワーディバイダアーム長さを用いて、出力ポートから入力ポートへの50ohmマッチングを実現している。本発明の実施例において、多段の2ウェイパワーディバイダは柔軟なインピーダンス整合によって、1/4波長に制限される必要がなく、それにより、パワーディバイダのアーム長さを短縮し、パワーディバイダのサイズを小さくする効果を達成している。この方法は、ボードレベル回路でもチップ回路でも、適用可能で効果的である。本発明の実施例に記載の方法によれば、伝送損失を低減し、面積を節約し、製造コスト等を低減している。
【0050】
また、本発明の実施例で述べた理論設計に基づく16ウェイ(16分配)パワーディバイダは、上記従来のパワーディバイダの問題点を効果的に解決し、16ウェイ(16分配)パワーディバイダの全体構成の模式図を図6に示し、図6は、図3における2ウェイ(2分配)パワーディバイダの具体例である。
【0051】
本発明の実施例で設計した各段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダに、入力インピーダンスZinと負荷インピーダンスZの関係は、下記の通りである。
ここで、

である。
λは、マイクロストリップライン媒体における信号の波長であり、λは、真空における信号の波長であり、εは、マイクロストリップラインにおける媒体の誘電率である。
【0052】
従来のパワーディバイダの設計と異なり、ここでのZinとZは、固定の50ohmではなく、実現可能な一つの中間インピーダンス値である。同様に、パワーディバイダのアーム長さlも、1/4波長ではなく、入出力インピーダンスで決まる値である。
【0053】
本発明の実施例に係るパワーディバイダは、マイクロストリップラインからなり、信号線は上層の厚い金属E1層であり、下層M1金属はグランドプレーンとされ、動作周波数帯は37GHz~40GHzであり、1/4波長は約1200μmであり、入出力インピーダンスは50ohmである。
【0054】
本発明の実施例に係る16ウェイ(16分配)パワーディバイダの第1段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダにおいて、入力インピーダンスは50ohmとマッチングする必要があり、出力インピーダンスは50ohmとマッチングする必要がないので、マイクロストリップラインの長さは、1/4波長の長さを必要としない。マイクロストリップラインの特性インピーダンスは50ohm、出力ポートの出力インピーダンスは56ohm-j25ohm、長さは387μmで、1/4波長の3分の1となるように設計する。出力ポートの間のアイソレーションは、アイソレーション抵抗及びコンデンサによって最適化される。
【0055】
本発明の実施例に係る16ウェイ(16分配)パワーディバイダの第2段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダにおいて、第1段のパワーディバイダとマッチングするように、入力インピーダンスを56ohm+j25ohmとして設計し、同じく50ohmの特性インピーダンスのマイクロストリップラインで電力の2分配の機能を実現する。マイクロストリップラインの長さは、330μmで、1/4波長の3分の1とした。出力ポートの出力インピーダンスは、40ohm-j40ohmであり、出力ポートの間のアイソレーションは、アイソレーション抵抗およびコンデンサによって最適化される。
【0056】
本発明の実施例に係る16ウェイ(16分配)パワーディバイダの第3段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダにおいて、第2段のパワーディバイダとマッチングするように、入力インピーダンスを40ohm+j40ohmとして設計し、同じく50ohmの特性インピーダンスのマイクロストリップラインで電力の2分配の機能を実現し、マイクロストリップラインの長さは、290μmである。出力ポートの出力インピーダンスは、30ohm-j42ohmであり、出力ポートの間のアイソレーションは、アイソレーション抵抗およびコンデンサによって最適化される。
【0057】
本発明の実施例に係る16ウェイ(16分配)パワーディバイダの第4段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダにおいて、第3段のパワーディバイダとマッチングするように、入力インピーダンスを30ohm+j42ohmとして設計し、出力インピーダンスは、50ohmの負荷とマッチングする必要がある。出力ポートの間のアイソレーションは、アイソレーション抵抗およびコンデンサによって最適化される。
【0058】
上記第1段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダ、第2段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダ、第3段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダ、及び第4段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダをカスケード接続して、16ウェイ(16分配)パワーディバイダを得る。本発明の実施例に係る16ウェイ(16分配)パワーディバイダは、一つの第1段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダと、二つの第2段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダと、四つの第3段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダと、八つの第4段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダとを含んでいる。従来のWilkinson(ウィルキンソン型)パワーディバイダの各段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの長さは、1/4波長であるが、本発明の実施例で設計したパワーディバイダの各段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの長さは、いずれも従来のパワーディバイダの長さの1/3のみである。パワーディバイダの総面積は、1.3mm*1.3mmであり、従来のパワーディバイダに比べ、チップの面積コストを大幅に小さくした。
【0059】
また、16ウェイ(16分配)パワーディバイダの長さの短縮により、マイクロストリップ信号線の寄生による損失も小さくなるので、本発明の実施例で設計したパワーディバイダでは、伝送損失も低減された。
【0060】
37GHz~40GHz周波数帯域では、設計された16ウェイ(16分配)パワーディバイダの損失が1dB未満であり、複数の出力ポートのアイソレーションが、いずれも-20dB未満であり、入力ポートのリターンロスがS11<-10dBである。設計された16ウェイ(16分配)パワーディバイダのリターンロス、挿入ロス及びアイソレーション曲線は、図7に示す通りである。
【0061】
以上のように、本発明の実施例で提案した2ウェイ(2分配)パワーディバイダの設計方法に基づいて設計された16ウェイ(16分配)パワーディバイダは、性能指標が良好であると共に、面積が従来のWilkinson(ウィルキンソン型)パワーディバイダの3分の1程度に縮小され、回路設計のコストを大幅に節約し、回路設計において普及するのに適する。
【0062】
上述した実施形態の説明により、上記実施例の方法は、ソフトウェアと必要な汎用のハードウェアプラットフォームによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよい。本開示の技術案は、本質的にソフトウェア製品の形で具体化することができ、このコンピュータソフトウェア製品は、一つの記憶媒体(例えば、Read-Only Memory、ROM)/Random Access Memory、RAM)、磁気ディスク、光ディスクなど)に格納され、1台の端末装置(携帯電話、コンピュータ、サーバ、ネットワーク機器などでもよい)が本発明の実施例に記載された方法を実行できるようにするための複数の命令を含む。
【0063】
本発明の実施例は、コンピュータ読取可能な記憶媒体をさらに提供し、このコンピュータ読取可能な記憶媒体には、稼働時に、上記のいずれかの方法実施例におけるステップを実行するように設定されたコンピュータプログラムが記憶されている。
【0064】
あるいは、本実施例において、上記コンピュータ読取可能な記憶媒体は、以下のステップを実行するためのコンピュータプログラムを記憶するように設定されてもよい。
【0065】
S1:第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスを調整する。
【0066】
S2:第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整し、ここで、N、K、Mはいずれも1以上の正の整数であり、パワーディバイダがM個の電力分配ユニットを備え、M個の電力分配ユニットがカスケード接続されてN段のカスケード構造を形成し、各電力分配ユニットが1つの入力ポートと2つの出力ポートとを含む。
【0067】
上記のステップにより、各段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと、各段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、且つ、各段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと各段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するため、すなわち、パワーディバイダの段間インピーダンスが一定のインピーダンス値に限らず、一つの指定された複素インピーダンスとすることができるため、各段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの長さを短くし、関連技術におけるパワーディバイダの信号線長さが長いことに起因するパワーディバイダの面積が大きいという問題を解決し、パワーディバイダ全体の面積の減少を図りつつ、パワーディバイダ損失を低減した。
【0068】
あるいは、本実施例において、上記の記憶媒体は、Uディスク、ROM、RAM、モバイルハードディスク、磁気ディスク、または光ディスクなど、コンピュータプログラムを記憶可能な複数種の媒体を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0069】
また、本発明の実施例は、電子装置をさらに提供し、コンピュータプログラムを記憶したメモリと、コンピュータプログラムを稼働することで上記のいずれかの方法実施例におけるステップを実行するように設置されたプロセッサと、を備える。
【0070】
あるいは、上記の電子装置は、上記プロセッサと接続された伝送機器と、上記プロセッサと接続された入出力機器とをさらに備えても良い。
【0071】
あるいは、本実施例において、上記のプロセッサは、コンピュータプログラムによって以下のステップを実行するように設定されてもよい。
【0072】
S1:第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合するように、第K段の電力分配ユニットの入力インピーダンスを調整する。
【0073】
S2:第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと第K段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するように、第K段の電力分配ユニットの出力インピーダンスを調整し、ここで、N、K、Mはいずれも1以上の正の整数であり、パワーディバイダがM個の電力分配ユニットを備え、M個の電力分配ユニットがカスケード接続されてN段のカスケード構造を形成し、各電力分配ユニットが1つの入力ポートと2つの出力ポートとを含む。
【0074】
上記のステップにより、各段の電力分配ユニットの入力インピーダンスと、各段の電力分配ユニットの入力ポートに接続されたユニットの出力インピーダンスとが共役整合し、且つ、各段の電力分配ユニットの出力インピーダンスと各段の電力分配ユニットの負荷インピーダンスとが共役整合するため、すなわち、パワーディバイダの段間インピーダンスが一定のインピーダンス値に限らず、一つの指定された複素インピーダンスとすることができるため、各段の2ウェイ(2分配)パワーディバイダの長さを短くし、関連技術におけるパワーディバイダの信号線長さが長いことに起因するパワーディバイダの面積が大きいという問題を解決し、パワーディバイダ全体の面積の減少を図りつつ、パワーディバイダ損失を低減した。
【0075】
あるいは、本実施例における具体的な例は、上記の実施例及び代替実施形態において説明した例を参照してもよいが、ここでは説明を省略する。
【0076】
上述した本開示の複数のモジュールまたは複数のステップは、汎用の演算装置で実現されることができ、単一の演算装置に集約されてもよいし、複数の演算装置からなるネットワーク上に分散してもよい。あるいは、演算装置が実行可能なプログラムコードで実現できるため、記憶装置に記憶させて演算装置により実行することができる。そして、場合によっては、示したステップや記述のステップを、こことは異なる順序で実行したり、それぞれを複数の集積回路モジュールとして作成したり、それらの複数のモジュールやステップを単一の集積回路モジュールとして作成したりすることができる。これにより、本開示は、如何なる特定のハードウェアとソフトウェアとの組合せに制限されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7