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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】適応型車両用ヘッドライト
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/657 20180101AFI20240111BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20240111BHJP
   F21S 41/255 20180101ALI20240111BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20240111BHJP
   F21V 14/02 20060101ALI20240111BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20240111BHJP
   F21W 107/13 20180101ALN20240111BHJP
   F21W 102/19 20180101ALN20240111BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240111BHJP
【FI】
F21S41/657
F21S41/143
F21S41/255
F21S41/663
F21V14/02 200
F21W102:135
F21W107:13
F21W102:19
F21Y115:10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022034265
(22)【出願日】2022-03-07
(65)【公開番号】P2022145572
(43)【公開日】2022-10-04
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】110109927
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518205380
【氏名又は名称】誠益光電科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】王 正
(72)【発明者】
【氏名】郭 銘豐
(72)【発明者】
【氏名】張 文鴻
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-082409(JP,A)
【文献】特開2013-070943(JP,A)
【文献】実開平07-041808(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/657
F21S 41/143
F21S 41/255
F21S 41/663
F21V 14/02
F21W 102/135
F21W 107/13
F21W 102/19
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に搭載される適応型車両用ヘッドランプであって
載置部を有するベースと、前記ベースに対して回転し得る回転部材と、前記載置部に配置され照明ビームを出射するための発光ユニットと、を含むランプ本体と、
前記回転部材に一体的に接続され、前記照明ビームを外側に投射して水平状態の照明パターンを生成するように前記ランプ本体の内部に配置された光学レンズと、
前記ランプ本体の内部に配置され、前記回転部材を駆動する駆動部と、
前記ランプ本体の内部に配置され、前記車体の傾斜角度に応じて、前記回転部材が前記光学レンズを所定角度回転駆動して前記照明パターンを水平状態に維持する制御ユニットと、
を具備し、
前記ベースは、前記ランプ本体の内部に第1の空間と第2の空間とを区画定義するように、前記第1の空間と前記第2の空間とを仕切るスペーサを有し、前記載置部は、前記第1の空間に位置し、前記スペーサから延出することにより形成され、前記回転部材は前記載置部の周りに配置され、
前記光学レンズは光入射面を有し、前記載置部は前記光入射面に対向する第1の載置面を有し、前記発光ユニットは、前記光入射面に向けて前記照明ビームを放射するように前記第1の載置面に設けられ、前記制御ユニットは前記第2の空間に配置され、
前記駆動部は前記第1の空間に配置される、ことを特徴とする適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項2】
前記ランプ本体は、前記ベース、前記回転部材、及び前記発光ユニットを内部に収容する外筐体を有し、
前記回転部材は、外枠部、内枠部及び壁部を有し、前記回転部材の回転軸に垂直となる断面において、前記外枠部は前記内枠部と上下方向に間隔をあけて配置され、前記外枠部と前記内枠部との間には前記壁部が接続され、前記壁部は前記載置部に露出しており、前記光学レンズは前記外枠部に固定され、前記回転部材の回転軸、前記駆動部を含む前記断面において、前記駆動部は前記ベースの前記スペーサと前記回転部材の前記壁部との間に位置し、前記駆動部は前記ベースの前記載置部と前記外筐体との間に位置し、前記駆動部は前記回転部材を回転させるために用いられる、請求項1に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項3】
前記載置部の中心軸は、前記回転部材の回転軸である、請求項1に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項4】
前記ベースは、前記載置部は前記発光ユニットの配線用の第1の配線溝を有し、前記スペーサはコイル構造体の配線用の第2の配線溝を有する、請求項1に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項5】
前記駆動部は、前記第2の空間に配置され、前記駆動部は、前記第2の空間から前記第1の空間へ延びる駆動構造体を含み、前記駆動構造体は、前記外枠部に動力を伝達可能に接続される、請求項2に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項6】
前記載置部は、前記内枠部が軸受とともに配置される収容槽を有し、前記内枠部は前記軸受によって支持される、請求項2に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項7】
前記駆動部は、コイル構造体からなるステータ部と、磁性体からなるロータ部と、を有し、前記ロータ部が前記回転部材に接続される、請求項1に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項8】
前記ランプ本体は、前記光学レンズと前記発光ユニットとの間に配置され、前記回転部材に接続される光分配素子を含む、請求項2に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項9】
前記回転部材によって前記光分配素子を第1の位置または第2の位置に移動させ、前記発光ユニットを選択的に遮光し、前記発光ユニットは、第1の発光ユニットと第2の発光ユニットとを含み、前記第1の発光ユニットは前記第2の発光ユニットの上方に配置され、前記光分配素子は、前記第1の位置において、前記第2の発光ユニットを遮光し、前記照明パターンがロービーム照明パターンとなり、前記光分配素子は、前記第2の位置において、前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットを遮光せず、前記照明パターンがハイビーム照明パターンとなる、請求項8に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項10】
前記光分配素子は前記壁部に固定され、前記光分配素子は前記外枠部にバランス部材で連結され、前記光分配素子と前記外枠部との間に制限部材で制限され、前記第1の位置にある前記光分配素子は、前記バランス部材を初期状態にし、前記第2の位置にある前記光分配素子は、前記バランス部材を前記第1の位置とは異なる圧縮状態にする、請求項9に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項11】
前記載置部はリフト構造体を有し、前記光分配素子は案内構造体を有し、前記光分配素子は前記案内構造体に従って前記リフト構造体によって前記第2の位置に案内される、請求項10に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【請求項12】
前記案内構造体は第1の案内面を有し、前記リフト構造体は、前記光分配素子が前記リフト構造体に当接するための、前記第1の案内面と摺動配合する第2の案内面を有する、請求項11に記載の適応型車両用ヘッドランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ヘッドランプに関し、特に、バイク、自転車等の二輪車に好適な旋回時補助照明を提供する適応型車両用ヘッドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドライト(前照灯)は走行中の車両の目であり、安全を確保するために必要不可欠なものである。昔のヘッドランプは、ロービームとハイビームとのどちらかが提供する光のパターンが固定されており、カーブに進入する車両の角度に合わせることができなかった。例えば、車両がカーブを走行する場合、前方のライトパターンも左右に傾くため、車両前方に照明のデッドゾーンができ、運転者は道路のある部分をはっきり見えないことにつながることもある。
【0003】
自動車両の照明技術の継続的な進歩に伴い、ライトパターンを調整できるヘッドランプが出回っていた。このようなヘッドランプは、車両の傾斜角度に応じて、照射範囲や距離などを調整することができ、運転者に最適な視界を提供し、運転の安全性をさらに確保することができる。その中には、カーブの走行を補助するために多数の補助光源を使用するものがあるが、補助光源を配置するためにヘッドランプの大きさの小型化は困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存技術の欠点を解決し、より信頼性が高く耐久性のある車両用適応型ヘッドランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本発明が採用した技術的解決手段の一つは、ランプ本体、光学レンズ、駆動部及び制御ユニットを備える、車体に使用する適応型ヘッドランプを提供することである。ランプ本体は、ベース、回転部材、及び発光ユニットを備える。ベースは載置部を有し、回転部材はベースに対して回転するように構成される。発光ユニットは載置部に配置され、照明ビームを発光するように構成される。光学レンズは、ランプ本体の内部に配置され、照明ビームを外部に投射して水平状態の照明パターンを生成し、光学レンズは回転部材に一体的に接続されている。制御ユニットは、回転部材が光学レンズを車体の傾斜角度に応じて所定角度回転駆動して照明パターンを水平状態に維持するように、駆動部を動作させるようにランプ本体内に配置されている。
【0006】
上述した技術的課題を解決するために、本発明が採用した他の技術的解決手段は、ランプ本体、光学レンズ、駆動部及び制御ユニットを備える、車体に使用する適応型ヘッドランプを提供することである。ランプ本体は、ベースと、発光ユニットと、導光体と、回転部材と、光分配素子と、を備え、発光ユニットおよび導光体はベースに設けられ、発光ユニットは導光体に向けて照明ビームを照射するように構成される。前記回転部材は、前記ベースに対して回転可能に構成され、前記配光部材は、前記回転部材に一体的に接続されている。前記光学レンズは、前記ランプ本体の内に配置され、前記光分配素子は、前記光学レンズと前記発光部との間に配置される。駆動部は、ランプ本体の内部に配置され、回転部材を駆動する。制御ユニットは、回転部材が配光部材を第1の位置または第2の位置に移動させるように、近接光モードまたは遠方光モードに従って駆動部を操作するようにランプ本体内に配置される。
【発明の効果】
【0007】
要約すると、本発明の有益な効果は以下の通りである。
1.光学レンズ、駆動部、コントロールユニットをランプ本体内に内蔵し、外部環境から隔離することができるため、水や埃などの外部環境要因の影響を受けにくく、耐用年数を延ばすことができる。
2.車両が旋回道路を走行する場合、制御ユニットは車体の傾斜角度に応じて回転部品が光学レンズおよび/または配光部品を所定の角度で回転させることができ、それに伴い、補助照明領域を生成でき、車両前方のデッドゾーンを減少または解消し、運転の安全性を向上させることができる。
3.回転する部品(光学レンズや配光部品など)のみで、光源自体が回転しない構造のため、光源からランプ筐体への熱伝達、外部への放熱がスムーズに行える。
4.本構造の配線を不動部品に配置することで、回転機構の回転に配線が追従しないため、ランプ本体の信頼性が良好となる。
5.モーターがランプ本体の内部にあるため小型化され、モーターは回転部材および回転部材によって駆動される部分のみを回転させるため、モーター出力が小さく、モーターの体積も小さくなり、モーターの放熱も抑えられる。
6.この構造を利用することで、ロービームは追従型照明の効果を得ることができると共に、ハイビームの効果を得ることも可能となる。また、ロービームの移動中も対向車に眩しさを与えることなく規制に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプを二輪車に搭載した状態を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプを二輪車に搭載した状態を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプを二輪車に搭載した状態を示す模式図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る適応型ヘッドランプの一実施形態を示す立体組み合わせ模式図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る適応型ヘッドランプの一実施形態を示す立体分解図である。
図6A】本発明の第1の実施形態に係る適応型ヘッドランプの一実施態様を示す模式的断面図である。
図6B】本発明の第1の実施形態に係る適応型ヘッドランプの一実施態様の変形例を示す断面図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る適応型ヘッドランプの代替実施形態を示す断面図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る適応型ヘッドランプの代替実施形態を示す立体分解図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る適応型ヘッドランプの代替実施形態を示す模式的断面図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での近接光による光パターンを示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での近接光による光パターンを示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での近接光による光パターンを示す図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での近接光による光パターンを示す図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での近接光による光パターンを示す図である。
図15】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での路面照度光パターンを示す図である。
図16】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での路面照度光パターンを示す図である。
図17】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での路面照度光パターンを示す図である。
図18】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での路面照度光パターンを示す図である。
図19】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプが傾斜状態または傾斜でない状態での路面照度光パターンを示す図である。
図20】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプの発光ユニットの構成の一例を示す模式図である。
図21】本発明の第1の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプの発光ユニットの代替実施形態を示す模式図である。
図22】本発明の第2の実施形態に係る適応型ヘッドランプの一実施態様を立体的に部分分解して示す断面模式図である。
図23】本発明の第2の実施形態に係る適応型自動車両用ヘッドランプの一実施形態を示す断面模式図である。
図24】本発明の第2の実施形態に係る適応型ヘッドランプの他の実施形態を示す立体部分分解断面模式図である。
図25】本発明の第2の実施形態に係る適応型ヘッドランプの代替実施形態を示す断面図である。
図26】回転部材の回転により光分配素子を第1の位置に移動させる本発明の第2の実施形態の適応型車両用ヘッドランプの模式図である。
図27】回転部材の回転により光分配素子を第2の位置に移動させる本発明の第2の実施形態の適応型車両用ヘッドランプの模式図である。
図28】本発明の第2の実施形態に係る適応型自動車両用ヘッドランプにおける光分配素子とリフティング構造との関係を示す模式図である。
図29】本発明の第2の実施形態に係る適応型自動車両用ヘッドランプにおける光分配素子とリフティング構造との関係を示す模式図である。
図30】本発明の第2の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプの光学設計を示す模式図である。
図31】本発明の第3実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプの一実施形態の立体部分分解断面を示す模式図である。
図32】本発明の第3の実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプの一実施形態の断面を示す模式図である。
図33】本発明の第3実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプの他の実施形態を示す立体部分分解断面模式図である。
図34】本発明の第3の実施形態の適応型ヘッドランプの代替実施形態の断面模式図である。
図35】回転部材の回転が光分配素子を第1の位置に移動させる本発明の第3実施形態の適応型車両用ヘッドランプの模式図である。
図36】回転部材の回転が光分配素子を第2の位置に移動させる本発明の第3の実施形態の適応型車両用ヘッドランプの模式図である。
図37】本発明の第3実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプにおける配光部材とリフティング構造との関係を示す模式図である。
図38】本発明の第3実施形態に係る適応型車両用ヘッドランプにおける配光部材とリフティング構造との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、本発明に関する詳細な説明と添付図面とを参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明とのために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。下記より、具体的な実施例で本発明が開示する実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更とを行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0010】
本発明に記載されている照明タイプは、ECE R113規則の対称型ヘッドランプの照明要件を満たす照明タイプである場合がある。
【0011】
[第1の実施形態]
図1図6Bを参照すると、本発明の第1の実施形態は、ランプ本体1、光学レンズ2、駆動部3および制御ユニット4を備える車両用適応型ヘッドランプZを提供する。光学レンズ2、駆動部3および制御ユニット4は、以下でより詳細に説明するように、ランプ本体1の内部に一体化されるように内蔵される。したがって、光学レンズ2、駆動部3および制御ユニット4を外部環境から隔離することができ、水、埃、汚れなどの外部環境要因の影響を受けにくくすることができる。本発明の適応型車両用ヘッドランプZは、燃料式二輪車、電動式二輪車、一般自転車、電動アシスト自転車等の二輪車に適しており、車体Vに装着することにより、車両旋回時に十分な前方照度を提供し、車両前方視野の死角を低減、あるいは解消し、運転の安全性を向上させることができる。
【0012】
具体的には、ランプ本体1は、ベース11と、回転部材12と、発光ユニット13と、を備え、ベース11は、載置部11aを有し、回転部材12は、基部11に対して回転可能に構成され、発光ユニット13は、載置部11aに配置され、照明ビームを出射するように構成されている。光学レンズ2は、照明ビーム配光を制御するために回転部材12と一体に接続されており、すなわち、光学レンズ2を通して照明ビームを外部に投射し、明暗のカットラインを有する照明パターンを生成する。駆動部3は、回転部材12を駆動するように構成され、制御ユニット4は、車両Vの傾斜角度に応じて、回転部材12が光学レンズ2を所定角度回転させるように駆動部3を作動させる。
【0013】
本実施形態の一例では、図6Aに示すように、ベース11は、ランプ本体1の内部空間を第1の空間S1と第2の空間S2とに分割し、載置部11a、回転部材12、発光ユニット13、光学レンズ2および駆動部3が第1の空間S1に、制御ユニット4が第2の空間S2に配置するように構成される。さらに、載置部11aは、光学レンズ2の入射面200と対向する、好ましくは対向して光学レンズ2に平行な第1の載置面111を有し、発光ユニット13は、第1の載置面111上に配置されて、光学レンズ2の入射面200に向けて照明ビームを直接出射させる。さらに、回転部材12は載置部11aの周囲に配置され(回転軸34が載置部11aの中心軸となる)、駆動部3は回転部材12と載置部11aとの間に配置され、回転部材12を光学レンズ2とともに回転させるように非接触で(例えば、非接触力)回転部材12を駆動できるようになっている。なお、上記はあくまで可能な実施形態であり、本発明を限定するものではない。
【0014】
また、実際には、ベース11は、ランプ本体1を第1の空間S1と第2の空間S2とに仕切るスペーサ11bを有してもよい。載置部11aはスペーサ11bから延在して形成されてもよい。回転部材12は、外枠部12a、内枠部12bおよび壁部12cを含んでもよい。外枠部12aは内枠部12bと上下方向に間隔をあけて配置されてもよい。壁部12cは外枠部12aと内枠部12bとの間に、載置部11aの第1の載置面111を露出するように連結されてもよい。光学レンズ2は外枠部12aに固定されてもよい。光学レンズ2は水平方向と垂直方向とで曲率が異なる非円対称の光学レンズである。駆動部3は、コイル構造体31と磁性体32とを含む雲台回転用ブラシレスモーターであってもよい。コイル構造体31と磁性体32とは、外枠部12aと内枠部12bと壁部12cとの間に一定の距離をおいて配置されてもよい。コイル構造体31は複数の鉄心と複数のコイルとからなり、磁性体32は1つまたは複数の磁石により形成されていてもよい。また、制御ユニット4は、制御回路基板(PCB)及び傾斜センサ(図示せず)を有し、少なくとも発光ユニット13および駆動部3を制御する機能を有することが好ましい。
【0015】
図4図6Aに示すように、ランプ本体1の外部構造体14は、外筐体14a、ランプシェード14bおよび裏蓋14cで構成されている。なお、外筐体14aは、円筒状であって、互いに対向する第1の開口141a及び第2の開口142aを有し、外筐体14aの内側がベース11と一体的に形成されていてもよいが、これに限定されるものではない。ランプシェード14bは、外筐体14aの第1の開口部141aに組み込まれ、ランプシェード14b、外筐体14aの一方部(前部)およびベース11が一緒に第1の空間S1を画定している。裏蓋14cは、外筐体14aの第2の開口部142aと組み合わされ、外筐体14aの他方部(後部)とベース11とが一緒に第2の空間S2を画定する。本実施形態においては、駆動部3はベース11の仕切るスペーサ11bと回転部材12の壁部12cとの間に位置し、駆動部3はベース11の載置部11aと外筐体14aとの間に位置する。
【0016】
さらに、図6Aに示すように、ベース11における載置部11aは、発光ユニット13の配線用の第1の配線溝G2を有し、ベース11におけるスペーサ11bは、コイル構造体31の配線用の第2の配線溝G3を有していてもよい。これにより、これらの配線がメカニズムに干渉することなく、車両用ヘッドランプを長時間正常に動作させることができるようになる。
【0017】
特定の実施形態では、コストまたは様々なニーズを配慮することで、図6Bに示すように、制御ユニット4を、発光ユニット13および駆動部3(例えば駆動部3のコイル構造体31)に電気的に接続するようにランプ本体1の外部に配置してもよい。また、さらにコストを削減する場合、ランプシェード14bを省略しても可能である。
【0018】
ベース11と回転部材12と駆動部3とを一体化にするために、載置部11aが収容槽G1を有してもよい。回転部材12における内枠部12bが軸受Bとともに収容槽G1に配置され、内枠部12bが軸受Bによって支持されてもよい。また、載置部11aは、収容槽G1の外周側に位置し、第1の載置面111と直交する第2の載置面112を有していてもよい。このように、コイル構造体31を載置部11aの第2の載置面112に固定し、磁性体32を回転部材12の外枠部12aに固定して、コイル構造体31と磁性体32とが相俟って、回転部材12を時計方向または反時計方向に回転させるための電磁トルクを発生させることができる。
【0019】
図7を参照すると、回転部材12の一部を分離して、駆動部3の一部として形成してもよい。より詳細には、駆動部3は、ステータ部3aとロータ部3bとを含む。ステータ部3aはコイル構造体31を含み、ロータ部3bは磁性体32を含み、ロータ部3bは回転部材12に接続されているように構成される。そのため、コイル構造体31のコイルに通電すると、ロータ部3bは、回転部材12と光学レンズ2とを同期に回転駆動させることができる。
【0020】
図8及び図9を参照すると、本実施形態の代替実施形態において、駆動部3は、ランプ本体1の第2の空間S2に配置され、回転部材12への伝達接続のために第2の空間S2から第1の空間S1へ延びる駆動構造体33(例えば駆動シャフト)を有するステッピングモータであってもよい。実際には、駆動構造体33の前端は、ギアセット(図面には示されていない)によって回転部材12に接続することができ、ギアセットは、異なる直径を有する複数のギアから構成することができる。これによって、駆動構造体33は、ギアセットによって載置部11aに配置された回転部材12を回転させることができ、すなわち、ギアセットは、駆動構造体33の回転運動を回転部材12の回転運動に変換するようになる。
【0021】
なお、ステッピングモータを使用する場合、駆動部3はランプ本体1の外側に配置され、駆動構造体33を介してランプ本体1の内に位置する回転部材12に接続されて、回転部材12を左右回りに回転させることも可能である。
【0022】
図10図19を参照して、本発明の適応型車両用ヘッドランプZは、以下に例示するように、走行中の車両(2輪車)に対して、車両前方の照明死角領域BAを解消または低減するために十分な前方照明が得られる。車両が直線道路を走行している場合、車体Vが路面に対して垂直に保たれているため光学レンズ2が回転されず、図10に示すように、適応型車両用ヘッドランプZが作り出す照明パターンPは水平な姿勢となる。こうすることで、図15に示すように、車両前方に照明死角領域を作らないようにしている。
【0023】
また、車両が左カーブを走行する場合、車両Vが(道路に対して)左に傾くと、光学レンズ2が回転しなければ、ヘッドランプZが作り出す照明パターンPは左に傾き、図11のように、V-Vの左側、H-H線より下に暗部DAが存在することになる。このようにすると、図16に示すように、車両左側面前方には照明死角領域BAが存在する。これに対し、本発明では、図12に示すように、光学レンズ2を回転部材12によって所定角度(運転者から見て時計回り)に左回転させることで、照明パターンPが水平(H-H線より上に光がある)のままとすることができる。このようにして、図17に示すように、車両左側前方の照明死角領域をなくし、補助照明領域IAを形成する。
【0024】
また、車両が右カーブを走行する場合、車両Vが(道路に対して)右に傾くと、光学レンズ2が回転しなければ、ヘッドランプZが作り出す照明パターンPは右に傾き、図13のように、V-Vの右側、H-H線より下に暗部DAが存在することになる。このようにすると、図18に示すように、車両右側面前方には照明死角領域BAが存在する。これに対し、本発明では、図14に示すように、光学レンズ2を回転部材12によって所定角度(運転者から見て反時計回り)に右回転させることで、照明パターンPが水平(H-H線より上に光がある)のままとすることができる。このようにして、図19に示すように、車両右側前方の照明死角領域をなくし、補助照明領域IAを形成する。
【0025】
図20を参照して、本実施形態において、発光ユニット13は、第1の発光ユニット13a及び第2の発光ユニット13bを含む。なお、発光ユニット13は、実用上のニーズを満たす光学特性を達するために、第1の発光ユニット13a及び第2の発光ユニット13bを覆うように1以上の波長変換層(例えば、蛍光層、図示せず)をさらに備えてもよい。また、発光ユニット13は、回路基板に実装されていてもよく、発光ダイオードのパッケージ構造(LED Package Structure)であってもよいが、これに限定されるものではない。第1の発光部13a及び第2の発光部13bは、いずれもレンズ焦点201の近傍に配置され、第1の発光部13aは第2の発光部13bの上方に配置されている。第1の発光ユニット13aは、少なくとも2枚の第1の発光ダイオードチップ131aを含み、第2の発光ユニット13bは、少なくとも1枚の第2の発光ダイオードチップ131bで構成されていてもよい。第1の発光ユニット13aが点けられると、それによる照明ビームは光学レンズ2によって外部に投影され近光の照明パターンを生成する。第1の発光ユニット13aと第2の発光ユニット13bとが同時に点けられると、それによる照明ビームは光学レンズ2によって外部に投影され遠光の照明パターンを生成する。なお、上記はあくまで可能な実施手段であり、本発明を限定するものではない。
【0026】
具体的に、第1の発光ダイオードチップ131aの個数が2つ、第2の発光ダイオードチップ131bの個数が1つの構成において、2つの第1の発光ダイオードチップ131aは、レンズ焦点201の上方で、レンズ焦点201を通る上下対称面201sに対して左右対称に配置され、第2の発光ダイオードチップ131bは、レンズ焦点201上に配置されるように構成されてもよい。使用時、光学レンズ2が回転していない場合、ロービームモードでは、2つの第1の発光ダイオードチップ131aを点灯させ、ハイビームモードでは、2つの第1の発光ダイオードチップ131a及び第2の発光ダイオードチップ131bを共に点灯させるようにする。
【0027】
光学レンズ2を左に回転させた場合、ロービームモードでは、2つの第1の発光ダイオードチップ131aを点灯させてもよいし、左側の第1の発光ダイオードチップ131aのみを点灯させてもよい。なお、第1の発光ダイオードチップ131aを両方点灯させた場合、得られる照明パターンPは、H-H線の上方に光こぼれが生じる、すなわち、照明パターンPの明暗カットラインCFがH-H線の上方にあることに注意する必要がある。左側の第1の発光ダイオードチップ131aのみを点灯させた時、光のこぼれがなくなり、すなわち、図12に示すように、照明パターンPの明暗カットラインCFは、H-H線に近隣するようにH-H線より下方にあることにある。また、ハイビームモードでは、2つの第1の発光ダイオードチップ131a及び第2の発光ダイオードチップ131bを共に点灯させてもよいし、左側の第1の発光ダイオードチップ131a、及び第2の発光ダイオードチップ131bのみを点灯させてもよい。
【0028】
光学レンズ2を右に回転させた場合、ロービームモードでは、2つの第1の発光ダイオードチップ131aを点灯させてもよいし、右側の第1の発光ダイオードチップ131aのみを点灯させてもよい。なお、第1の発光ダイオードチップ131aを両方点灯させた場合、得られる照明パターンPは、H-H線の上方に光こぼれが生じる、すなわち、照明パターンPの明暗カットラインCFがH-H線の上方にあることに注意する必要がある。右側の第1の発光ダイオードチップ131aのみを点灯させた時、光のこぼれがなくなり、すなわち、図12に示すように、照明パターンPの明暗カットラインCFは、H-H線に近隣するようにH-H線より下方にあることにある。また、ハイビームモードでは、2つの第1の発光ダイオードチップ131a及び第2の発光ダイオードチップ131bを共に点灯させてもよいし、右側の第1の発光ダイオードチップ131a、及び第2の発光ダイオードチップ131bのみを点灯させてもよい。
【0029】
図21を参照すると、一部の応用では、照明を強化するために、第1の発光ダイオード(LED)チップ131aの数を4つに増やし、第2の発光ダイオードチップ131bの数を2つに増やしてもよい。さらに、4つの第1の発光ダイオードチップ131aは、レンズ焦点201の上方に配置され、上下対称面201sに対して左右に対称に2×2グループで分布していてもよい。2つの第2の発光ダイオードチップ131bは、レンズ焦点201に対向して配置され、上下対称面201sに対して左右対称に配置され、2つの第2の発光ダイオードチップ131bは、真ん中の2つの第1の発光ダイオードチップ131aに対応するように配置されている。使用時、ロービームモードでは、光学レンズ2が回転していない場合、4つの第1の発光ダイオードチップ131aを点灯させてもよいし、真ん中の2つの第1の発光ダイオードチップ131aのみを点灯させてもよい。ハイビームモードでは、4つの第1の発光ダイオードチップ131a及び2つの第2の発光ダイオードチップ131bを全て点灯させてもよいし、真ん中の2つの第1の発光ダイオードチップ131a及び2つの第2のLED131bのみを点灯させてもよい。
【0030】
光学レンズ2を左回転させた場合、ロービームモードでは、4つの第1の発光ダイオード(LED)ウエハ131aを点灯させてもよいし、上下対称201sの左側に位置する1つ目又は/および2つ目の第1の発光ダイオードチップ131aのみを点灯させてもよい。同様に、4つの第1の点灯131aが全て点灯した場合、得られる照明パターンPは、図12に示すように、H-H線よりも上方に光がこぼれる、すなわち、照明パターンPの明暗カットオフ線CFがH-H線よりも上方にある。上下対称面201sの左側に位置する1つ目又は/および2つ目の第1の発光ダイオードチップ131aのみを点灯させた時、光こぼれをなくすことができ、すなわち、照明パターンPの明暗カットラインCFはH-H線より下方により近接するように位置するとなる。また、ハイビームモードでは、4つの第1の発光ダイオードチップ131a及び2つの第2の発光ダイオードチップ131bを点灯させてもよいし、上下対称201sの左側に位置する1つ目又は/および2つ目の第1の発光ダイオードチップ131a、及び2つの第2の発光ダイオードチップ131bのみを点灯させてもよい。
【0031】
光学レンズ2を右回転させた場合、ロービームモードでは、4つの第1の発光ダイオード(LED)ウエハ131aを点灯させてもよいし、上下対称201sの右側に位置する1つ目又は/および2つ目の第1の発光ダイオードチップ131aのみを点灯させてもよい。同様に、4つの第1の点灯131aが全て点灯した場合、得られる照明パターンPは、図12に示すように、H-H線よりも上方に光がこぼれる、すなわち、照明パターンPの明暗カットオフ線CFがH-H線よりも上方にある。上下対称面201sの右側に位置する1つ目又は/および2つ目の第1の発光ダイオードチップ131aのみを点灯させた時、光こぼれをなくすことができ、すなわち、照明パターンPの明暗カットラインCFはH-H線より下方により近接するように位置するとなる。また、ハイビームモードでは、4つの第1の発光ダイオードチップ131a及び2つの第2の発光ダイオードチップ131bを点灯させてもよいし、上下対称201sの右側に位置する1つ目又は/および2つ目の第1の発光ダイオードチップ131a、及び2つの第2の発光ダイオードチップ131bのみを点灯させてもよい。
【0032】
好ましくは、垂直対称面201sの左側又は右側の2つの第1の発光ダイオードチップ131aはそれらの間に第1のピッチD1を有し、2つの中間の第1の発光ダイオードチップ131aはそれらの間に第2のピッチD2を有し、2つの第2の発光ダイオードチップ131bはそれらの間に第3のピッチD3を有し、2つの第2の発光ダイオードチップ131bのそれぞれは、対応する第1の発光ダイオードウェハ131aとの間に第4のピッチD4を有している。第1のピッチD1、第2のピッチD2、第3のピッチD3、第4のピッチD4は、式(1)~式(4)を満たす。
0<第1のピッチD1≦1mm 式(1)
0.01mm≦第2のピッチD2≦2mm 式(2)
0<第3のピッチD3≦1mm 式(3)
0<第4のピッチD4≦1mm 式(4)
【0033】
いくつかの用途において、適応型車両ヘッドランプZは、1つの発光ユニット13aのみを含み、第1の発光ダイオードチップ131aの数は1つまたは複数であってよい。例えば、1つの発光ユニット13aは、上述した構成で式(1)及び式(2)を満たす4枚の第1の発光ダイオードチップ131aで構成されていてもよい。このように、適応型車両用ヘッドランプZは、ロービームの照明パターンのみを生成することができる。
【0034】
[第2の実施形態]
図22図29を参照して、図1図4と併せて、本発明における第2の実施形態は、ランプ本体1、光学レンズ2、駆動部3および制御ユニット4を備え、光学レンズ2、駆動部3および制御ユニット4がランプ本体1内に統合されている車両用適応型ヘッドランプZを提供している。具体的には、ランプ本体1は、ベース11と、回転部材12と、発光ユニット13と、を備え、ベース11は載置部11aを有し、回転部材12はベース11に対して回転可能に構成され、発光ユニット13は載置部11a上で照明ビームを出射するように構成される。照明ビームを配光するための光学レンズ2は、回転部材12に接続されており、光学レンズ2を通して照明ビームを外部に投射し、明暗のカットオフラインが明確な照明パターンを生成することが可能である。駆動部3は、回転部材12を駆動するように構成され、制御ユニット4は、車両Vの傾斜角度に応じて駆動部3を回転させ、回転部材12が光学レンズ2を所定角度回転させるように構成される。ランプ本体1、光学レンズ2、駆動部3および制御ユニット4の必要な詳細については、第1の実施形態で説明したので、ここでは繰り返さない。
【0035】
本実施形態が第1の実施形態との相違点は、ランプ本体1が、光学レンズ2と発光ユニット13との間に構成される光分配素子15をさらに含む点である。なお、光分配素子15は、得られる照明パターンが明暗カットオフラインとプロファイルが明確になるように、また、ロービームの照明パターンの場合、明暗カットオフラインの位置がH-H線より下方にする(H-H線より上には配光しない)ように、照明ビームの配光を調整できることは特筆すべきことである。なお、光分配素子15は、自由端(接続されていない端部)に光学的有効縁151(またはカットオフエッジ)を設けて、異なる配光を生成するシェードとすることもできるが、本発明ではこれに限定されない。
【0036】
本実施形態では、光分配素子15は、回転部材12によって第1の位置(図26に示す位置)と第2の位置(図27に示す位置)との間を往復移動して発光ユニット13を選択的に遮光できるように、回転部材12に一体的に連結されている。このように、ヘッドランプは、光分配素子15が第1の位置にあるロービームモードと、光分配素子15が第2の位置にあるハイビームモードと、に切り替えることができる。
【0037】
本実施形態の一態様では、回転部材12は、非接触方式で駆動される。具体的には、図22および図23に示すように、駆動部3は、外枠部12a、内枠部12bおよび壁部12cの間に配置され、互いに距離を置いて、回転部材12を時計方向に沿って駆動させるように電磁トルクを発生するコイル構造体31および磁性体32からなるブラシレスモーターであれば良い。これらは、回転部材12を時計回りまたは反時計回りに回転させるための電磁トルクを発生させるために、互いに距離を置いて配置されている。なお、コイル構造体31は、複数の鉄心と複数のコイルとで構成され、磁性体32は、1つ以上の磁石で形成されていてもよいが、本発明では、これに限定されない。
【0038】
本実施形態の代替実施形態では、回転部材12は、接触手段によって駆動される。具体的には、図24及び図25に示すように、駆動部3は、回転部材12に伝動接続され、回転部材12を回転中に時計回り又は反時計回りに回転させる駆動力を与える駆動構造体33(例えば、駆動軸)を有するステッピングモータとすることができる。駆動構造33は、ギアセット(図面には示されていない)によって回転部材12に接続されてもよく、ここで、ギアセットは、直径の異なる複数のギアで構成されてもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0039】
ロービームモードとハイビームモードとの両方を有する光学系を実現するために、発光ユニット13は、第1の発光ユニット13aと第2の発光ユニット13bとを含み、第1の発光ユニット13aおよび第2の発光ユニット13bはともにレンズ焦点201付近に配置され、第1の発光ユニット13aは第2の発光ユニット13bの上方に配置されてもよい。発光ユニット13の更なる詳細は、第1の実施形態及び図20及び図21に記載されているため、ここでは繰り返さない。第1の位置にある光分配素子15は、第2の発光ユニット13bを隠蔽し(図26に示すように)、この場合、得られる照明パターンはロービーム照明パターンとなり、第2の位置にある光分配素子15は、第1の発光ユニット13aおよび第2の発光ユニット13bを露出し(図27に示すように)、この場合、得られる照明パターンはハイビーム照明パターンとなる。
【0040】
なお、本実施形態の光学系において、発光ユニット13の構成は、図20及び図21に示すものに限定されない。光分配素子15がある場合、発光ダイオードチップの枚数は1枚であってもよいし、複数枚であってもよい。
【0041】
さらに、光分配素子15を回転部材12の壁部12cに固定し、光分配素子15を回転部材12の外枠部12aにバランス部材16で連結してもよい。バランス部材16はバネでもよいが、これに限定されるものではない。使用時、ロービームモードでは、バランス部材16は、光分配素子15を第1の位置まで上昇させる初期状態にある。ハイビームモードでは、バランス部材16は、光分配素子15を第2の位置にさせる圧縮状態となる。
【0042】
実際には、図28及び図29に示すように、ベース11の載置部11aは、リフト構造体113を有していてもよく、リフト構造体113は、第1の案内面1131を有していてもよい。これに対し、光分配素子15は、案内構造体152を有していてもよく、案内構造体152は、第2の案内面1521を有していてもよい。第1の案内面1131および第2の案内面1521は、それぞれ、円弧状の案内面を有してもよい。このように、光分配素子15は、案内構造体152の案内でリフト構造体113によって第2の位置まで持ち上げられることができ、すなわち、案内構造体152の第2の案内面1521とリフト構造体113の第1の案内面1131との滑り嵌めによって、光分配素子15はリフト構造体113に当接するようになる。なお、上記はあくまで可能な実施形態であり、本発明を限定するものではない。
【0043】
なお、図27図29では、光分配素子15とベース11の載置部11aとの間に接触力を発生させて光分配素子15を上方に移動させているが、実際には、光分配素子15とベース11の載置部11aとの間に非接触力を発生させて光分配素子15を上方に移動させることも可能である。図示しない実施形態では、光分配素子15とベース11の載置部11aとの間に磁気アセンブリを設けてもよく、磁気アセンブリは、光分配素子15を所定の高さに上げるための磁気吸引などの磁力、又は光分配素子15を初期の高さに下げるための反発などの別の磁力を発生させてもよい。
【0044】
また、他の実施形態において、図23図26図27に示すように、光分配素子15と回転部材12の外枠部12aとの間に、バランス部材16に制限を与える(例えば、バランス部材16の水平方向の変位を制限する)制限部材17を設けてもよい。なお、制限部材17は、制限ピンであってもよいが、これに限定されない。さらに、光分配素子15の底面には、ピンホール153が設けられており、このピンホール153を介して、制限部材17がその端部を回転部材12の外枠部12aに挿入されて固定されても良い。
【0045】
図30を参照して、本発明にかかる好ましい実施例の光学系において、発光ユニット13は発光面130を有し、発光面130の中心点130pは光分配素子15の光学的に有効なエッジ151と面一であり、光分配素子15は発光面130と対抗する内面150を有し、内面150と発光面130との間に水平距離D5が設けられ、水平距離D5は、0mm<D5≦1.0mmを満す。
【0046】
[第3の実施形態]
図31図38を参照すると、本発明の第3の実施形態は、ランプ本体1、光学レンズ2、駆動部3及び制御ユニット4を備え、光学レンズ2、駆動部3及び制御ユニット4がランプ本体1内に統合されている適応型車両用ヘッドランプZを提供している。具体的には、ランプ本体1は、ベース11と、発光ユニット13と、導光体18と、回転部材12と、光分配素子15と、を備え、発光ユニット13及び導光体18はベース11上に配置され、発光ユニット13は導光体18に向けて照明ビームを出射するように構成され、回転部材12はベース11に対して回転可能に構成され、光分配素子15は回転部材12に一体的に接続されている。光学レンズ2は、照明ビームを外部に透過させて明暗カットオフラインを有する照明パターンを生成するように構成されており、光学レンズ2と発光ユニット13との間に光分配素子15が配置されている。駆動部3は、回転部材12を駆動するように構成され、制御ユニット4は、回転部材12が光分配素子15を第1の位置または第2の位置に移動させるように、ロービームモードまたはハイビームモードに応じて駆動部3を動作させるように構成される。
【0047】
本実施形態では、ベース11は、光学レンズ2の光入射面200に対して垂直であり、レンズ光軸202の下方に位置する載置面111’を有している。発光ユニット13と導光体18とは、載置面111’上に配置され、発光ユニット13が発する照明ビームは、導光体18によって所定の経路を経て光学レンズ2の光入射面200まで導かれる。また、回転部材12は駆動部3に接続され、回転部材12と駆動部3とは共に照明ビームの所定の伝達経路を避けるように配置され、光分配素子15と光学レンズ2とは照明ビームの所定の伝達経路上に配置される。
【0048】
上記構成に基づき、第1の位置の光分配素子15(図35に示す)は、所定経路に沿った照明ビームの一部を遮断して、ロービーム照明パターンを生成することができる。第2の位置(図36に示す)の光分配素子15は、所定の経路に沿った照明ビームを光入射面200から光学レンズ2に向けて、ハイビーム照明パターンを生成するようになる。
【0049】
さらに、ベース11は、載置部11aとスペーサ11bとを有し、スペーサ11bは、ランプ本体1の内部において第1の空間S1と第2の空間S2とを仕切るために使用される。スペーサ11bは開口部114を有し、第1の空間S1は開口部114を介して第2の空間S2に連通し、載置部11aは第2の空間S2に位置し、載置部11aは載置面111’を有している。さらに、回転部材12、光分配素子15および光学レンズ2は第1の空間S1に、発光ユニット13、導光部18および制御ユニット4は第2の空間S2に配置され、駆動部3は第1の空間S1および第2の空間S2のいずれかに配置されてもよい。
【0050】
なお、ランプ本体1内の第1の空間S1および第2の空間S2の定義は、回転部材12、発光ユニット13、光分配素子15および光学レンズ2の位置を説明するためのものであり、本発明を限定するものではないことに留意する必要がある。また、実施形態によっては、回転部材12および光分配素子15は、発光ユニット13と光学レンズ2との間に位置するように第2の空間S2に配置されてもよい。この構成において、スペーサ11bが発光ユニット13に近ければ、回転部材12および光分配素子15は発光ユニット13から離れ、スペーサ11bが発光ユニット13から離れれば、回転部材12および光分配素子15は発光ユニット13に近接するようにすることが好ましい。
【0051】
図31および図32に示すように、ランプ本体1の外部構造は、外筐体14aとランプシェード14bとで構成されていてもよい。なお、外筐体14aは、円筒状で開放端140aと閉鎖端(図示せず)とを有し、ランプシェード14bは外筐体14aの開放端140aに組み込まれ、外筐体14aの内側がベース11とランプシェード14bと一体的に形成されていても良いが、これに限られるものではない。外筐体14aの一部(前部)とベース11のスペーサ11bとが一緒になって第1の空間S1を画定し、ハウジング14aの別の一部(後部)とベース11のスペーサ11bとが一緒になって第2の空間S2を画定するように構成されてもよい。
【0052】
実用上の必要性に応じて、外筐体14aの閉鎖端は、裏蓋によって閉鎖されている別の開放端によって置き換えてもよい。関連する詳細は、第1の実施形態および図4図6Aに記載されている。
【0053】
本実施形態の一態様では、回転部材12は非接触で駆動される。具体的には、図31及び図32に示すように、駆動部3は、ランプ本体1の第1の空間S1に配置されており、駆動部3は、ステータ部3a及びロータ部3bからなるブラシレスヘッドモータとすることができる。ステータ部3aは、ベース11のスペーサ11bに接続してもよい。ロータ部3bは、ステータ部3aとの相互作用によってロータ軸34に沿って時計回りまたは反時計回りに回転し、レンズ光軸202と一致またはわずかに逸脱することが可能である。実際には、ステータ部3aは、複数の鉄心と複数のコイルとからなるコイル構造体(図示せず)で構成されてもよく、ロータ部3bは、1つまたは複数の磁石によって形成されてもよい磁性体(図示せず)で構成されてもよい。回転部材12は、ロータ部3bに接続され、ロータ部3bと同期して回転してもよく、回転部材12は、円盤状であって、スペーサ部11bの開口部114に対応する位置に中空部が形成されていてもよいが、これに限定されるものではない。
【0054】
本実施形態の代替実施形態では、回転部材12は、接触手段によって駆動される。具体的には、図33及び図34に示すように、駆動部3は、ランプ本体1の第2の空間S2に配置されており、駆動部3は、回転部材12に伝達可能に接続された駆動構造33(例えば、駆動軸)を有するステッピングモータであって、回転部材12をローラ軸34に沿って時計方向又は反時計方向に回転させるための回転時の駆動力を与えることが可能である。実際には、駆動構造33は、第2の空間S2から第1の空間S1まで延び、ギアセット(図面に示されていない)によって回転部材12に接続されてもよく、ギアセットは、異なる直径を有する多数のギアから構成されてもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
制御ユニット4は、少なくとも発光ユニット13と駆動部3との制御機能を有する制御回路基板(PCB)で構成されてもよい。図32では、制御ユニット4が導光体18の上方に位置するように示されているが、制御ユニット4の位置は、実際のニーズに応じて調整することが可能である。いくつかの実施形態では、制御ユニット4は、コストの理由から、または異なる使用要件のために、ランプ本体1の外側に配置され、発光ユニット13および駆動部3(例えば、駆動部3のコイル構造体31)に電気的に接続されることが可能である。
【0056】
本実施形態の光学系では、載置面111’は、レンズ光軸202の下方に配置されている。さらに、導光体18は、第1の焦点F1および第2の焦点F2として定義できる反射面180を有しており、導光体18は、反射型ランプカップであってもよいが、これに限定されない。第1の焦点F1は、導光体18によって覆われる領域に位置し、また、レンズ光軸202の上または下、好ましくはレンズ光軸202の下方に位置する。第2の焦点F2は、導光体18のカバーエリアの外側に位置し、また、レンズ焦点201と一致するか、またはレンズ焦点201に隣接してもよいが、好ましくはレンズ焦点201と一致する。
【0057】
発光ユニット13は、発光面130を上向きにして載置面111’に配置され(発光面130は載置面111’と平行)、発光ユニット13は、第1の焦点F1上またはその近傍に配置されてもよい。発光ユニット13は、1枚以上の発光ダイオードチップからなる発光ダイオードパッケージ構造であってもよく、さらに、発光ダイオードチップの上に1枚以上の波長変換層(蛍光層)を設けて、実用上の要求を満たす光学特性を達成させてもよい。発光ユニット13が複数のLEDを含む構成では、複数のLEDの配置方は、特に制限なく、実際のニーズに応じて調整することが可能である。使用時には、発光ユニット13が発した照明ビームは、導光体18の反射面180で反射され、光学レンズ2の光入射面200に向かって透過される。また、発光ユニット13の光出力の観点から、載置部11aは、載置面111’に連なり、スペーサ11bに対して下り傾斜で延びる段差面112’の部分を有していてもよい。このように、載置部11aは、照明ビームの透過に道を譲ることができるので、光透過損失を低減することができる。
【0058】
光分配素子15は、直立部15aと傾斜部15bとを有し、直立部15aは回転部材12に固定され、傾斜部15bは直立部15aからベース11に近いスペーサ11bの方向に延びるように形成され、傾斜部15bの自由端(未装着端)には光学的に有効なエッジ151が形成されている。実際には、光学レンズ2は、水平方向の曲率が垂直方向と同じである円対称の光学レンズである。光分配素子15が第1の位置にあるとき、レンズ焦点201は、光学的に有効なエッジ151上またはその近傍、好ましくは光学的に有効なエッジ151上であってよい。したがって、光分配素子15は、光学レンズ2の光入射面200に向かって透過する光の一部を遮ることができ、この状態で生じる照明パターンは、ロービーム照明パターンとなる。光分配素子15が第2の位置にあるとき、光学的に有効なエッジ151は、レンズの焦点201よりも上方にある。このように、光分配素子15は、光学レンズ2の光入射面200に向かって透過する光を全て透過させ、この状態で生成される照明パターンは、ハイビーム照明パターンとなる。光学レンズ2は、円対称の光学レンズであってもよい。
【0059】
光分配素子15は、図31図38において、直立部15a及び傾斜部15bを有するものとして示されているが、いくつかの実施形態において、光分配素子15は、直立部15a又は傾斜部15bのみを有してもよい。
【0060】
実際には、図37及び図38に示すように、ベース11のスペーサ11bにリフト構造体113を設け、リフト構造体113が第1の案内面1131を有していてもよく、これに対して、光分配素子15の直立部15aが案内構造体152を有し、案内構造体152が第2の案内面1521を有していてもよい。第1の案内面1131および第2の案内面1521は、それぞれ、円弧状の案内面であってもよい。このように、光分配素子15は、案内構造体152の案内作用の下でリフト構造体113によって第2の位置に持ち上げられることができ、すなわち、案内構造体152の第2の案内面1521とリフト構造体113の第1の案内面1131とのスライド協力によって光分配素子15がリフト構造体113に当接するようになる。なお、上記はあくまで可能な実施形態であり、本発明を限定するものではない。
【0061】
以上に開示された内容は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。そのため、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0062】
Z:適応型車両用ヘッドライト
1:ランプ本体
11:ベース
11a:載置部
11b:スペーサ
111:第1の載置面
112:第2の載置面
111’:載置面
112’:段差面
113:リフト構造体
1131:第1の案内面
114:開口部
12:回転部材
12a:外枠部
12b:内枠部
12c:壁部
13:発光ユニット
13a:第1の発光ユニット
13b:第2の発光ユニット
130:発光面
130p:中心点
131a:第1の発光ダイオードチップ
131b:第2の発光ダイオードチップ
14:外部構造体
14a:外筐体
140a:開放端
141a:第1の開口
142a:第2の開口
14b:ランプシェード
14c:裏蓋
15:光分配素子
15a:直立部
15b:傾斜部
150:内面
151:光学的に有効なエッジ
152:案内構造体
1521:第2の案内面
153:ピンホール
16:バランス部材
17:制限部材
18:導光体
180:反射面
2:光学レンズ
200:光入射面
201:レンズ焦点
201s:垂直対称面
202:レンズ光軸
3:駆動部
3a:ステータ部
3b:ロータ部
31:コイル構造体
32:磁性体
33:駆動構造体
34:ロータ軸
4:制御ユニット
B:軸受
D1:第1のピッチ
D2:第2のピッチ
D3:第3のピッチ
D4:第4のピッチ
D5:水平距離
F1:第1の焦点
F2:第2の焦点
G1:収容槽
G2:第1の配線溝
G3:第2の配線溝
P:照明パターン
S1:第1の空間
S2:第2の空間
V:車体
BA:照明死角領域
CF:明暗カットオフライン
DA:暗部
IA:補助照明領域
図1
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