(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】河川水位レベル観測システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240111BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240111BHJP
G01F 23/292 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N23/60 500
G01F23/292 Z
(21)【出願番号】P 2022076568
(22)【出願日】2022-05-06
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】500037528
【氏名又は名称】株式会社サイバーリンクス
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】増田 琢
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛士
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092238(WO,A1)
【文献】特開2019-102987(JP,A)
【文献】特開2017-174348(JP,A)
【文献】特開2021-190729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 23/60
G01F 23/00-23/2965
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視カメラが撮影した河川の画像から河川水位を判定する河川水位
レベル観測システムであって、
前記監視カメラが撮影した画像に仮想量水標を書き込む量水標書き込み部と、
前記量水標書き込み部が前記仮想量水標を書き込んだ学習用画像において前記仮想量水標に基づいて判定された河川水位を反復して学習する学習部と、
前記学習部による学習結果に基づいて、前記監視カメラが撮影した判定用画像における河川水位を前記仮想量水標に基づいて判定する水位判定部と、を備
え、
前記量水標書き込み部では、前記監視カメラが撮影した画像に表示された水面に対して、人が略垂直に直線を描画することにより、前記仮想量水標が書き込まれることを特徴とする河川水位
レベル観測システム。
【請求項2】
前記量水標書き込み部では、
前記仮想量水標に複数段階の水位レベルが設定可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の河川水位
レベル観測システム。
【請求項3】
前記水位判定部により判定された河川水位が、所定の前記水位レベル以上であるときにアラート信号を出力するアラート出力部を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の河川水位
レベル観測システム。
【請求項4】
前記学習用画像には、前記監視カメラが撮影した画像における水面を画像処理によって加工した水面加工画像が含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の河川水位
レベル観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラが撮影した河川の画像から河川水位を判定する河川水位観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、河川の水位の計測は、主に、橋脚等に設置された量水標の目盛にかかる水面の位置を観測することによって行われている。また、監視地点に設置されたカメラで量水標を含む水面の画像を撮影し、その画像に含まれる量水標の目盛や水面の位置を検出して河川水位を計測することもある。
【0003】
この種のものとして、監視地点の水面の画像を撮影する撮影装置と、上流側の水位計測地点に設けられた上流水位計測装置と、下流側の水位計測地点設けられた下流水位計測装置と、を備えた河川監視装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この河川監視装置では、上流水位計測装置や下流水位計測装置の各々から第一水面標高を取得し、これら第一水面標高に基づいて監視地点における推定水面標高を算出することで、監視地点での水面標高の検出精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたような河川監視装置は、量水標が設置された、比較的、大きな河川に適用されることを想定したものであり、中小規模の河川では、量水標が設置されていないことも珍しくない。近年では、ゲリラ豪雨等の局所的な大雨によって中小規模の河川が氾濫する水害が多発しており、このような中小規模の河川において、所定の監視地点を撮影した画像から、適時に河川水位を観測したいという需要がある。
【0006】
また、量水標が設置されていない河川では、監視地点を撮影した画像中に、例えば、目安となる水位の基準線を描画した上で河川水位を判定することが考えられる。ところが、監視システムの運用にあたる一般の自治体職員にとって、このような基準線の描画設定を行うことは容易ではない。そのため、特に、規模の小さい自治体では、運用上のハードルが高いと懸念され、システム導入に躊躇されることがある。また、多くの自治体では、河川水位観測に専門の人員を配置する余裕もなく、限られた人員で河川水位観測を持続的に運用することができるシステムの開発及びサービスの提供が望まれている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、量水標が無いような河川においても、監視地点を撮影した画像から、河川水位を正確に判定することができ、しかも限られた人員で容易に且つ持続的に運用することができる河川水位レベル観測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、監視カメラが撮影した河川の画像から河川水位を判定する河川水位レベル観測システムであって、前記監視カメラが撮影した画像に仮想量水標を書き込む量水標書き込み部と、前記量水標書き込み部が前記仮想量水標を書き込んだ学習用画像において前記仮想量水標に基づいて判定された河川水位を反復して学習する学習部と、前記学習部による学習結果に基づいて、前記監視カメラが撮影した判定用画像における河川水位を前記仮想量水標に基づいて判定する水位判定部と、を備え、前記量水標書き込み部では、前記監視カメラが撮影した画像に表示された水面に対して、人が略垂直に直線を描画することにより、前記仮想量水標が書き込まれることを特徴とする。
【0010】
上記河川水位レベル観測システムにおいて、前記量水標書き込み部では、前記仮想量水標に複数段階の水位レベルが設定可能とされていることが好ましい。
【0011】
上記河川水位レベル観測システムにおいて、前記水位判定部により判定された河川水位が、所定の前記水位レベル以上であるときにアラート信号を出力するアラート出力部を更に備え
ることが好ましい。
【0012】
上記河川水位レベル観測システムにおいて、前記学習用画像には、前記監視カメラが撮影した画像における水面を画像処理によって加工した水面加工画像が含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、量水標書き込み部によって監視カメラが撮影した画像中に、仮想量水標を描画することで、量水標が設置されていない河川でも水位を判定することができる。また、仮想量水標を、簡易に設定することができるので、運用上のハードルが低く、導入が容易である。また、学習部により自動的に河川水位を判定できるので、自治体は、限られた人員で河川水位観測を持続的に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る河川水位
レベル観測システムの全体構成を示す概略図。
【
図2】上記河川水位
レベル観測システムの導入フェーズで行われるステップを示すフローチャート。
【
図3】上記河川水位
レベル観測システムにおける自治体側システムと、そのシステムで用いられる表示画面を示す図。
【
図4】自治体側システムの表示部の表示例であって、仮想水位標設定ステップの作業手順を説明するための図。
【
図5】自治体側システムの表示部の表示例であって、仮想水位標設定ステップの作業手順を説明するための図。
【
図6】自治体側システムの表示部の表示例であって、教師データ作成ステップの作業手順を説明するための図。
【
図7】自治体側システムの表示部の表示例であって、教師データ作成ステップの作業手順を説明するための図。
【
図8】自治体側システムの表示部の表示例であって、教師データ作成ステップの作業手順を説明するための図。
【
図9】自治体側システムの表示部の表示例であって、教師データ作成ステップの作業手順を説明するための図。
【
図10】自治体側システムの表示部の表示例であって、学習モデル作成ステップの作業手順を説明するための図。
【
図11】(a)は学習モデル評価ステップにおける学習回数と精度の変化を示すグラフ、(b)は学習回数と損失の関係を示すグラフ。
【
図12】(a)(b)は、上記実施形態の変形例において、画像処理により水面加工画像を作成する工程を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る河川水位
レベル観測システムについて、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の河川水位
レベル観測システム1は、監視カメラが撮影した河川の画像から河川水位を判定するものであり、河川の水面の画像を撮影する監視カメラ2と、本システムに基づくサービスを提供する運営会社側システム3と、本システムに基づくサービスを享受する自治体側システム4と、を備える。なお、以下の説明は、本システムの提供元となる運営会社が存在し、且つ本システムが自治体に導入されるという一つのモデルケースに基づいているが、本システムの提供元や導入先がこれらに限られるものではなく、「運営会社側システム3」「自治体側システム4」は、本モデルケースにおける各構成要件をカテゴライズするための便宜上の称呼に過ぎない。
【0016】
運営会社側システム3には、監視カメラ2で撮影された画像を受信、収集するデータ収集サーバ5が設けられている。なお、データ収集サーバ5は、運営会社外に設けられていてもよく、例えば、インターネットで接続されたクラウド上のサーバシステムを利用したものであってもよい。なお、図例では、ある監視地点に1つの監視カメラ2が設置される形態を示しているが、実際には、複数の監視カメラ2が複数の監視地点に設置され、多数の監視カメラ2が撮影した画像がデータ収集サーバ5に収集される。監視カメラ2には個別の識別番号が割り当てられており、同じ監視カメラ2から送信された画像は、互いに紐づけされた状態でデータ収集サーバ5に保存される。
【0017】
監視カメラ2は、対象となる河川の監視地点において、水面を撮影することができるように、自治体職員や業者等によって設置される。監視カメラ2の設置場所は、観測地点において想定される最大水位及び最小水位のいずれの場合の水面も撮影することができ、少なくとも最大水位において監視カメラ2が水没しない位置であればよい。例えば、監視カメラ2は、河川から所定の離れた位置に設置され、望遠レンズにより水面を撮影するようにしてもよい。監視カメラ2は、定時的に水面を撮影して、撮影した画像をデータ収集サーバ5に送信することができ、また、運営会社側システム3又は自治体側システム4からの制御信号によっても作動する。なお、監視カメラ2は、映像を撮影し、持続的に映像をデータ収集サーバ5に送信するものであってもよい。また、監視カメラ2には、夜間撮影用のフラッシュ等が適宜に備えられる。
【0018】
運営会社側システム3は、上述のデータ収集サーバ5に加えて、処理端末6を備える。処理端末6は、データ収集サーバ5に収集された画像を表示する表示部61や、運営会社の職員による画像処理等の操作情報を入力するための操作部62、操作情報に従って各種処理を実行する処理部63、処理部63によって実行された処理データをデータ収集サーバ5に記録する記録部64、インターネット又は専用回線を介して監視カメラ2、データ収集サーバ5及び自治体側システム4と通信するための通信部65等を備える。また、処理部63には、後述する教師データ作成部66、学習部67及び水位判定部68が含まれており、処理部63の仕様が後述する自治体側システム4の操作端末7とは異なる。
【0019】
自治体側システム4は、運営会社側システム3の処理端末6と同様の操作端末7を備える。操作端末7は、データ収集サーバ5に収集された画像を表示する表示部71や、自治体職員による操作情報を入力するための操作部72、操作情報に従って各種処理を実行する処理部73、処理部73によって実行された処理データをデータ収集サーバ5に記録する記録部74、インターネット又は専用回線を介して監視カメラ2、運営会社側システム3及びデータ収集サーバ5と通信するための通信部75等を備える。また、処理部73には、量水標書き込み部76及びアラート出力部77が含まれている。量水標書き込み部76は、本システムの運営会社から提供される運用アプリケーションに組み込まれている。
【0020】
図2に示すように、河川水位観測システム1の導入フェーズには、学習データ収集ステップS1、仮想水位標設定ステップS2、教師データ作成ステップS3、学習モデル作成ステップS4、学習モデル評価ステップS5が含まれ、これらのステップを経て、河川水位観測システム1は運用フェーズに移る。
【0021】
学習データ収集ステップS1に先立って、監視カメラ2が、対象となる河川の監視地点に自治体職員によって設置される。自治体職員は、監視カメラ2の初期設定を行うと共に、監視カメラ2の試験撮影を行い、試験撮影による画像がデータ収集サーバ5に適切に送信されるかを確認する。初期設定情報には、カメラの撮影範囲の設定や、時間あたりの撮影回数等が含まれる。また、自治体職員は、設置した監視カメラ2で撮影した画像を、データ収集サーバ5を介して、操作端末7で確認できるかを確認する。また、自治体職員は、操作端末7から監視カメラ2の動作を制御することができるかを確認する。
【0022】
上述したような初期設定が完了した後、学習データ収集ステップS1が行われる。学習データ収集ステップS1では、初期設定に基づいて、監視カメラ2によって水面を含む河川が定期的に撮影され、撮影された画像がデータ収集サーバ5に送信される。なお、監視カメラ2による撮影は、自治体職員又は運営会社の職員の遠隔操作によって行われてもよい。また、監視カメラ2の初期設定は、自治体職員又は運営会社の職員が適宜に変更することができる。データ収集サーバ5は、監視カメラ2から送信された画像を受信・保存すると共に、保存された画像を自治体側システム4の操作端末7からアクセスに従って、操作端末7の表示部71に表示する。
図3は、自治体側システム4の操作端末7における、表示部71に表示される画像の表示例を示す。
【0023】
仮想水位標設定ステップS2では、まず、運営会社の職員が、運営会社側システム3の処理端末6を用いて、データ収集サーバ5に保存された画像から、学習用画像を選択すると共に、後述する画像処理に適したサイズにリサイズし、記録部64を介してリサイズした学習用画像をデータ収集サーバ5に保存する。学習用画像の選択は、河川水位が同程度である画像のうち代表的なものを選出することで、選出された画像には、互いに水位が異なるものが多く含まれるようにすることが望ましい。また、河川水位が同程度であっても、明るさ、天候、季節等の条件が異なるものが学習用画像に含まれるようすることが望ましい。
【0024】
自治体職員は、自治体側システム4の操作端末7を用いて、データ収集サーバ5にアクセスし、リサイズされた学習用画像から任意の学習用画像を選択して、表示部71に表示させる。そして、自治体職員は、量水標書き込み部76を用いて、選択した学習用画像に仮想量水標を書き込む。ここでは、
図4に示すように、仮想量水標描画アイコン76aを用いて、学習用画像に表示された水面に対して、略垂直に直線が描画されることにより、仮想量水標VBが書き込まれる。
【0025】
続いて、自治体職員は、仮想量水標VBに複数段階の水位レベルを設定する。ここでは、
図5に示すように、水防待機レベル、氾濫注意レベル、避難判断レベル、氾濫危険レベル、氾濫発生レベルの5段階で水位レベルを設定することができる。また、自治体職員は、仮想量水標VBにおいて、各水位レベルの割合を設定する。例えば、川幅が広い河川では、水位の上昇が緩やかなので、水防待機レベルの割合を多く設定できるが、川幅が狭い河川では、水位の上昇も急なので、水防待機レベルの割合を少なく、氾濫注意レベル以上の水位レベルの割合を多く設定する必要がある。なお、水位レベルは、上記の5段階に限らず、2段階以上の複数段階で任意に設定することができる。このように、本システムでは、河川の状況に応じて柔軟に水位レベルを設定することができる。
【0026】
上記のようにして描画された仮想量水標VBは、設定された水位レベルと共に、記録部74を介してデータ収集サーバ5に保存され、識別番号が共通する監視カメラ2が撮影した学習用画像が読み出された際には、同じ仮想量水標VB及び水位レベルが自動的に描画される。なお、仮想量水標VBを、複数、描画する際には、上述した作業を繰り返せばよい。
【0027】
教師データ作成ステップS3では、
図6に示すように、自治体職員が、データ収集サーバ5に備蓄された学習用画像から任意の学習用画像を選択する。そして、その学習用画像における河川水位が、仮想量水標VBで設定されたいずれの水位レベルにあるかを目視により判定する。例えば、
図6に示した学習用画像では、仮想量水標VBと画像中の水面との交点が、避難判断レベルの領域にあるので、
図7に示すように、自治体職員は避難判断レベルのセレクタ(下から3つめ)にチェックを入れる。
【0028】
これと同様に、例えば、
図8に示す学習用画像では、仮想量水標VBと画像中の水面との交点が、氾濫危険レベルの領域にあるので、自治体職員は氾濫危険レベルのセレクタ(下から4つめ)にチェックを入れる。また、例えば、
図9に示す学習用画像では、仮想量水標VBと画像中の水面との交点が、氾濫注意レベルの領域にあるので、自治体職員は氾濫注意レベルのセレクタ(下から2つめ)にチェックを入れる。このように、学習用画像における水位が、仮想量水標VBのどの水位レベルにあるかを目視で確認してチェックする作業が繰り返される。教師データ作成部66は、学習用画像と仮想量水標VBにおける水位レベルとを相関づけたデータが所定数以上、蓄積されると、それらの蓄積データに基づいて、教師データを作成する。なお、学習用画像には、水位レベルや撮影状況が異なる様々なケースのものが選択され、水位レベルの偏りが少なくなることが望ましい。
【0029】
教師データ作成部66によって教師データが作成されると、学習モデル作成ステップS4に移行する。
図10に示すように、自治体職員が操作端末7を用いて「学習」を実行することで、運営会社側システム3の学習部67が起動する。学習部67は、ニューラルネットワークを用いた人工知能(AI)であり、上記のようにして作成された教師データを入力することで、監視カメラ2が撮影した任意の画像における河川水位が、いずれの水位レベルにあるかを自動的に判定することができるようになる。運営会社側システム3では、上記学習を複数、繰り返し行うことで、学習の精度を高め、学習モデルを作成する。
【0030】
学習モデル評価ステップS5では、自治体職員が、データ収集サーバ5にアクセスし、教師データの作成に使用していない画像から任意の画像(水位判定画像)を選択する。水位判定画像が選択されると、運営会社側システム3では、水位判定部68が起動し、上記のようにして作成された学習モデルを用いて、水位判定画像における水位レベルを判定し、判定結果を自治体側システム4に送信し、判定結果が表示部71に表示される。これらの作業は、想定される結果が得られるまで、繰り返される。
【0031】
本件発明者らが実際に行った学習モデル評価試験では、学習用画像として150枚の画像を用い、上記の人工知能を用いた学習モデルの作成を10回行った。その結果、
図11(a)(b)に示すように、5回目以降は、学習の精度が100%になり、損失も最終的に0.00064となり、本システムで、非常に高い精度で河川水位レベルを判定することができることが分かった。
【0032】
上記のような設定フェーズを経て、本システムは、実際の運営フェーズに移行する。自治体側システム4には、水位判定部68により判定された河川水位が、所定の水位レベル以上であるときにアラート信号を出力するアラート出力部77を更に備える。アラート出力部77は、各自治体で運用されている防災システムに適応される。これにより、実際にゲリラ豪雨等により河川の氾濫が発生し得る場合に、住民各位に氾濫注意情報等を適切に報知することができる。
【0033】
このように、本実施形態の河川水位観測システム1によれば、量水標書き込み部76を用いて、監視カメラ2が撮影した画像中に、仮想量水標VBを描画するので、量水標が設置されていない中小規模の河川でも水位を判定することができる。また、仮想量水標VBは、画像中の水面に対して略垂直な直線を描画す作業で設定することができる。画像中の河川は、実際には奥行のある3次元の存在であるのに対して、本システムでは、画像を2次元で把握し、その画像中に直線を描画するだけでよいので、仮想量水標VBの描画が特に簡易である。そのため、例えば、専門性を持ち合わせていない一般の自治体職員でも、容易に行うことができ、運用上のハードルが低く、規模の小さい自治体でも、本システムを導入し易い。また、学習モデルを作成した後は、学習部67により自動的に河川水位を判定できるので、自治体は、河川水位観測に専門の人員を配置する必要もなく、限られた人員で河川水位観測を持続的に運用することができる。
【0034】
次に、上記実施形態の変形例に係る河川水位観測システムを説明する。本変形例に係る河川水位観測システムでは、教師データを作成する際に用いられる学習用画像には、監視カメラ2が撮影した画像における水面を画像処理によって加工した水面加工画像が含まれるものである。実際の河川において、氾濫危険レベル等の水位になることは稀であり、それらに相当する現実の学習用画像を、教師データ作成期間中に得ることは容易でない。
【0035】
そこで、本変形例では、画像処理によって、氾濫危険レベル等の水位レベルに相当する画像を作成し、その水面加工画像を学習用画像に用いるものである。例えば、
図12(a)に示すように、本来は水防待機レベルの画像を、画像処理により、
図12(b)に示すような、氾濫危険レベルの画像に加工する。これにより、任意の水位の学習用画像を得ることができ、学習モデルの精度を向上させることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。上記実施形態で説明した運営会社側システム3の機能の一部が自治体側システム4で行われるようにしてもよいし、それとは逆に、自治体側システム4の機能の一部が運営会社側システム3で行われたり、自治体職員の作業が運営会社の職員によって行われてもよい。また、上記実施形態では、水位レベルの設定は、自治体職員が行うものとしているが、例えば、人工知能を用いた画像解析により、川幅や水面の傾斜、河原の傾斜等を読み取り、水位レベルの設定も自動的に行われるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 河川水位レベル観測システム
2 監視カメラ
67 学習部
68 水位判定部
76 量水標書き込み部
77 アラート出力部
VB 仮想量水標