(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】線形加速器及び磁気共鳴撮像装置を互いに遮蔽する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A61N5/10 F
(21)【出願番号】P 2022077042
(22)【出願日】2022-05-09
(62)【分割の表示】P 2021110013の分割
【原出願日】2010-07-15
【審査請求日】2022-05-30
(32)【優先日】2009-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512129837
【氏名又は名称】ビューレイ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViewRay Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】シュバーツマン,シュマリュ
(72)【発明者】
【氏名】デミースター,ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】デンプジー,ジェームズ,エフ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック,ジョン,レスター セカンド
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-526036(JP,A)
【文献】特表2009-511222(JP,A)
【文献】特表2001-517132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0003010(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療システムのアイソセンターへ向けて放射線ビームを放出するように構成される線形粒子加速器(ライナック)と、
前記ライナックの構成部材の一部又は全部を少なくとも部分的に密閉し、少なくとも1層のRF吸収材料及び少なくとも1層のRF反射材料を含むRF遮蔽体と、
を備える、放射線治療システム。
【請求項2】
前記RF遮蔽体はさらに、前記少なくとも1層のRF吸収材料と前記少なくとも1層のRF反射材料との間に空気ギャップを含む、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記RF反射材料が銅又はアルミニウムを含む、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記RF吸収材料がカーボンファイバを含む、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記RF遮蔽体は前記RF遮蔽体を貫通する1つ又は複数のスロットを含む、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記RF遮蔽体は、前記放射線ビームが前記遮蔽体を均一に減衰するように通過するように構成される、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項7】
前記RF遮蔽体はRF吸収材料及びRF反射材料で構成された複数の繰り返し層を含む、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項8】
前記ライナックを磁場から遮蔽するように構成された磁気遮蔽体をさらに含み、当該磁気遮蔽体は少なくとも第1の磁気遮蔽体シェルと第2の磁気遮蔽体シェルとを含み、当該第2の磁気遮蔽体シェルは前記第1の磁気遮蔽体シェルの内側に配置され、前記第1の磁気遮蔽体シェルと前記第2の磁気遮蔽体シェルは少なくとも部分的に前記ライナックを取り囲む、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項9】
前記RF遮蔽体によって少なくとも部分的に密閉された前記ライナックの構成部材は、前記ライナック用の高出力RF源又は導波管を含む、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項10】
前記RF遮蔽体は、前記ライナックの全部の構成部材を収容するように延在する、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項11】
MRI磁石ギャップによって隔てられるとともに、長手軸に沿って配置され、かつ、少なくとも一部が前記長手軸に沿って延びる磁場を発生させるように構成される第1および第2の主MRI磁石を含むMRIシステムと、
前記MRI磁石ギャップ内に配置され、前記長手軸を中心に回転可能なガントリーと、
前記ライナックの対向する面上に配置された2つの平行な環状ディスクと、
をさらに備える、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項12】
前記2つの平行な環状ディスクは、前記第1および第2の主MRI磁石内の追加のコイルに近似するように構成される、請求項11に記載の放射線治療システム。
【請求項13】
MRI磁石ギャップによって隔てられるとともに、長手軸に沿って配置され、かつ、少なくとも一部が前記長手軸に沿って延びる磁場を発生させるように構成される第1および第2の主MRI磁石を含むMRIシステムと、
前記MRIシステムの一部である2つの平行な環状ディスクであって、当該2つの平行な環状ディスクのうちの第1の環状ディスクは前記第1の主MRI磁石に収容され、当該2つの平行な環状ディスクのうちの第2の環状ディスクは前記第2の主MRI磁石に収容され、当該2つの平行な環状ディスクは、前記第1および第2の主MRI磁石内の追加のコイルに近似するように構成される、2つの平行な環状ディスクと、
をさらに備える、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項14】
放射線治療システムのアイソセンターへ向けて放射線ビームを放出するように構成される線形粒子加速器(ライナック)と、
前記ライナックの構成部材の一部又は全部を少なくとも部分的に密閉し、カーボンファイバを含むRF遮蔽体と、
を備える、放射線治療システム。
【請求項15】
前記RF遮蔽体は、少なくとも1層のRF吸収材料と、少なくとも1層のRF反射材料と、前記少なくとも1層のRF吸収材料と前記少なくとも1層のRF反射材料との間の空気ギャップとを含む、請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項16】
前記RF反射材料が銅又はアルミニウムを含む、請求項15に記載の放射線治療システム。
【請求項17】
前記RF遮蔽体は前記RF遮蔽体を貫通する1つ又は複数のスロットを含む、請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項18】
前記RF遮蔽体は、前記放射線ビームが前記遮蔽体を均一に減衰するように通過するように構成される、請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項19】
前記RF遮蔽体はRF吸収材料及びRF反射材料で構成された複数の繰り返し層を含む、請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項20】
前記ライナック
を磁場から遮蔽するように構成された磁気遮蔽体をさらに含み、当該磁気遮蔽体は少なくとも第1の磁気遮蔽体シェルと第2の磁気遮蔽体シェルとを含み、当該第2の磁気遮蔽体シェルは前記第1の磁気遮蔽体シェルの内側に配置され、前記第1の磁気遮蔽体シェルと前記第2の磁気遮蔽体シェルは少なくとも部分的に前記ライナックを取り囲む、請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項21】
前記RF遮蔽体によって少なくとも部分的に密閉された前記ライナックの構成部材は、前記ライナック用の高出力RF源又は導波管を含む、請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項22】
前記RF遮蔽体は、前記ライナックの全部の構成部材を収容するように延在する、請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項23】
MRI磁石ギャップによって隔てられるとともに、長手軸に沿って配置され、かつ、少なくとも一部が前記長手軸に沿って延びる磁場を発生させるように構成される第1および第2の主MRI磁石を含むMRIシステムと、
前記MRI磁石ギャップ内に配置され、前記長手軸を中心に回転可能なガントリーと、 前記ライナックの対向する面上に配置された2つの平行な環状ディスクと、
をさらに備える、請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項24】
前記2つの平行な環状ディスクは、前記第1および第2の主MRI磁石内の追加のコイルに近似するように構成される、請求項23に記載の放射線治療システム。
【請求項25】
MRI磁石ギャップによって隔てられるとともに、長手軸に沿って配置され、かつ、少なくとも一部が前記長手軸に沿って延びる磁場を発生させるように構成される第1および第2の主MRI磁石を含むMRIシステムと、
前記MRIシステムの一部であるとともに前記ライナックの対向する面上に配置された2つの平行な環状ディスクであって、当該2つの平行な環状ディスクのうちの第1の環状ディスクは前記第1の主MRI磁石に収容され、当該2つの平行な環状ディスクのうちの第2の環状ディスクは前記第2の主MRI磁石に収容され、当該2つの平行な環状ディスクは、前記第1および第2の主MRI磁石内の追加のコイルに近似するように構成される、2つの平行な環状ディスクと、
をさらに備える、請求項14に記載の放射線治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、放射線治療と磁気共鳴撮像とを組み合わせたシステム及び方法に関し、特に、
放射線治療及び磁気共鳴撮像システムからの磁場と高周波放射線を遮蔽するシステム並び
に方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線形粒子加速器(ライナックとも呼ばれる)は、亜原子イオンを相当な速度に加速する
のに用いられる一種の粒子加速器である。ライナックはたとえば、非特許文献1に記載さ
れている。医療用仕様すなわち診療用ライナック(a.k.a. clinacs)は、調節された共振
導波路を用いることによって電子を加速させる。前記の調節された共振導波路では、高周
波(RF)出力が一般的に、医療目的の高エネルギー電子又は制動放射X線を発生させるため
の定在波又は進行波を生成する。
【0003】
磁気共鳴撮像(MRI)又は核磁気共鳴撮像(NMRI)は基本的には、人体の内部構造及び機能
を視覚化するため、放射線治療においてもっとも広く用いられている医療用撮像手法であ
る。MRIはたとえば、非特許文献2によって説明されている。
【0004】
MRI装置による撮像を可能にする一方で、ライナックを用いた放射線治療を同時に実行
できることが望ましい。しかしこれらの技術を、診療上許容できるように協働させるため
には、ライナックとMRI装置との間での克服されなければならない2つの主要な不調和が存
在する。第1の問題は、MRI装置の磁場が、その磁場中での荷電粒子を、式F=q(v×B)で決
定されるその磁場中での荷電粒子に作用するローレンツ力によって加速させることである
。ここで、Fは荷電粒子に作用する力、qは粒子の電荷、vは速度で、Bは磁場である。線形
加速器では、電子「イオン」は一般的に、熱電離性材料(加熱されたときに電子が脱離す
る材料)-陰極-を加熱することによって生成され、かつ、正の電圧が陽極(典型的には
ワイヤグリッド)に印加されるときに、電子は陰極から陽極へ移動する。陽極に100MHzの
パルスが印加されることで、電子の群はグリッドを通り抜けて、さらに加速され続ける。
陰極、陽極、及び以降の加速用構成部材は、所謂電子銃を構成する。さらに電子を加速し
ないように、外部磁場によってこの銃をシャットダウンすることができる。MRI磁石は通
常、その磁石を取り囲む磁場を減少させるように遮蔽される。通常この周辺磁場は、MRI
のアイソセンターから数mについては、地磁気の1ガウスの磁場の高さよりも高いままであ
る。患者の付近にライナックを設けるための最適距離は、線源が、放射線治療アイソセン
ターから約1mに設けられた状態である。MRI及び放射線治療アイソセンターが実質的に一
致するシステムでは、この一致により、容易に0.1テスラ(T:1T=10000ガウス)以上のオ
ーダーとなりうる周辺磁場内にライナックを設けることができる。磁場ベクトルBは、大
きく、かつMRシステムの軸方向(Z)を向く。速度ベクトルvは、光速に接近し、かつ、ベク
トルBに対して公称的に直角をなす方向(Y)を向く。非常に軽い電子に作用する力Fは、電
子を、その電子の所望の軌道から外れるように垂直に加速させる。
【0005】
第2の問題は、ライナックの高出力RF源が、MRI装置内の信号検出用高周波送受信機と干
渉を起こすことである。使用されるRF周波数送信コイル及び(特に)受信コイルは、極端
に感度が良く、かつ通常は、患者とRFコイル構造内での熱雑音による制限を受ける。勾配
磁場は、ある範囲の周波数を、この中心周波数付近に設定することで、周波数の関数とし
ての位置情報を供するのに用いられる。ライナック内の高出力RF源は一般的に、動作中、
数百Hzでの加速器の共振導波路に調節されたメガワットから数百メガワットのRF放射線の
バーストを発生させる。高出力RF放射線は一般的に、MRIの動作周波数とは共鳴せずに、M
RI周波数での側波帯を有し、かつ信号の劣化又はMRI電子機器の損傷さえ生じさせるMRIの
伝導構成部材での渦電流を誘起する恐れがある。MRIシステムは通常、外部RF源からの干
渉を制限するRF遮蔽室を有する。感受性を有するMRI受信RFコイルはまた、励起に利用さ
れるRF送信場から保護される必要がある。通常このような隔離は、PINダイオード及び/又
は背向ダイオードによって実行されることで、RF誘起信号を減衰させる入力/出力の調節/
未調節回路素子が切り換えられる。さらに、感受性を有するMRIプリアンプは、如何なる
放射線源からのRFエネルギーによっても飽和に達しないことは重要である。
【0006】
特許文献1は、MRIシステムと水平ライナックの組み合わせについて教示している。特許
文献1は、DCコイルが、水平ライナックの周囲で延在することで、ライナックによって生
成される磁場からMRIを遮蔽すること、及び、DCコイルが、MRIの周囲で用いられることで
、そのMRIの漏れ磁場からライナックを遮蔽することについて教示している。また特許文
献1は、電子ビームを利用するライナックについて、MRIの主磁石のパルスがオフにされな
ければならない一方で、そのライナックの電子ビームのパルスはオンにされることについ
て教示している。同様に特許文献2は、DCコイルをMRIの主磁石の設計に組み込むことで、
MRIの外側で環状の低磁場領域を生成することによって、MRIの漏れ磁場からライナックの
電子銃源を遮蔽することについて教示している。特許文献2はまた、ライナックの電子銃
での遮蔽を制限して、ライナックの標的に向かう加速経路に沿った高い磁場を可能にする
主磁石の設計についても教示している。とはいえ、これはビームをさらに劣化させる恐れ
があり、さらなるフィルタによる補正が必要となる。繰り返しになるが、同様に、特許文
献3は、特許文献1に開示されたように、シミングが可能になるように、ライナックとMRI
が互いに固定される場合にのみ、そのMRIとライナックとの間での遮蔽干渉が利用可能で
あることについて開示している。また特許文献3は、MRIの磁場に起因するライナック電子
ビームの偏差を検出及び補正するため、そのライナックに係るステアリングコイルを利用
することについて教示している。最後に特許文献4は、ライナックが、加速された電子の
経路が主磁場線と一致したMRI主磁石ボアの内部に完全に設けることが可能であることに
ついて教示している。しかしこのことで、アイソセンターからのライナックの距離が短く
なる。このため、ビーム経路もまた、磁石の主軸に厳密に沿うように制限される。水平ボ
ア磁石では、磁石のいずれかの端部に接近して、半径方向に回転させることで、磁場線は
、中心軸から遠ざかるように発散し始める。よってビームは、中心軸に厳密に沿っている
か、又は、磁場の半径方向成分によって、端部へ向かうように影響を受ける。MRIはまた
、中心軸から外れた大きな半径方向成分をも有しうる「パルス状勾配磁場」を利用する。
これらの参考文献のいずれも、MRI磁場からライナックの遮蔽について教示している。こ
のとき遮蔽材料は、ビーム源と患者との間に介在すなわち介入している。
【0007】
特許文献2及び3によって教示された装置の原型は、標準的なライナック(又はclinac)
室に適合できず、かつ多くの技術的課題-与えることできる放射線治療の質について妥協
せざるを得ない-を生じさせる恐れのある非常に大きな装置になってしまう。特許文献2
と3のいずれかは、ビームを散乱及び減衰させうる長距離又は大面積の材料を取り扱うこ
とが求められ、その結果放射線治療の質について妥協することになる。それに加えて、こ
れらの原型は、ライナックと処置室を完全に封止するRF遮蔽箱を利用することで、患者の
アクセスが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6198957号明細書
【文献】国際公開第2004/024235号パンフレット
【文献】国際公開第2007/045076号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2008/028036号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0197564号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】カーツマーク(C. J. KARZMARK)他、MEDICAL ELECTRON ACCELERATORS、McGraw-Hill, Inc刊、Health Professions Division、1993年
【文献】マークハーク(E. MARK HAACKE)他、MAGNETIC RESONANCE IMAGING: PHYSICAL PRINCIPLES AND SEQUENCE DESIGN、Wiley-Liss刊、1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これまでの説明で分かるように、とりわけ、放射線治療用ビームを多量の材料に通過さ
せ、又は長距離から通過させなければならないという欠点を緩和する、MRIとライナック
とを相互に遮蔽する解決法の改善が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願明細書には、ライナックとMRIとを組み合わせた製造を可能にする方法及び装置の
実施例が開示されている。MRIを封止することなくライナックのRF放射線を遮蔽する方法
も記載されている。本明細書に開示された実施例は、前記MRIの磁石の磁場から前記ライ
ナックを隔離し、かつ、前記ライナックのRF場からRF送受信コイルを隔離する遮蔽体につ
いて記載している。前記患者と入射ビームとの間に遮蔽材料を設けることなく、標準的な
位置-つまり前記放射線治療アイソセンターから約1m-の前記MRIの漏れ磁場から、前記
ライナックを遮蔽することで前記ビームの劣化を防止する新規の方法は、ガントリーとMR
Iボアが設けられたシムによる、均一なMRI磁場のシミング及び補正によって教示される。
前記ガントリーが設けられたシムは、前記ライナックと共に回転することができる。磁気
遮蔽は、前記ライナックの周辺に設けられて、前記ビーム路内には設けられていない、強
磁性遮蔽及び/又は局所コイルによって実行されて良い。当該MRIシステムのRF遮蔽は、均
一なRF放射線吸収材料-たとえばカーボンファイバメッシュ-と、RF放射線反射材料-た
とえば銅の遮蔽体-とを組み合わせたものを選択的に利用することによって実現される。
前記RF遮蔽体は、平坦なフィルタ減衰の一部として構成され、かつ前記ビームを通過させ
るこの部分すなわち穴を有するように作られることで、前記ビームは、前記RF遮蔽体を通
過することができる。前記吸収及び減衰材料は、前記ライナックからのRF放射線を、反射
、減衰、及び/又は吸収するように順次積層されて良い。吸収されたRF放射線によって発
生する熱を取り除くのに必要なこととして、前記吸収材料が冷却されても良い。
【0012】
本発明のある態様によると、磁場は、ライナックの周囲で与えられて良い。前記遮蔽体
は、前記ライナックの適切な動作を可能にするためにMRIシステムの磁場から前記ライナ
ックを遮蔽する、高磁気感受率及び透磁率層、電流輸送コイル、並びに/又は永久磁石を
有して良い。シェルは円筒形であることが好ましいが、他の形状が用いられても良い。
【0013】
2つ以上のシェルを有する実施例では、前記シェルは、互いに磁気的に隔離されている
ことが好ましい。
【0014】
前記遮蔽体の配置は、当該MRIシステムの磁場が、前記放射線治療ビームを減衰しない
ようなものである。前記遮蔽体は、ライナックを設置する好適距離で動作して良い。前記
遮蔽体の内側層は高い透磁率を有して良いが、低磁束密度で飽和する。前記MRI磁場の均
一な領域への前記遮蔽体の影響は、対向するダミーの遮蔽体によって、減少し、かつ均衡
が保たれる。
【0015】
前記MRI磁場への前記遮蔽体の影響は、シムによって補正されて良い。たとえばガント
リーが設けられたシムは、ライナックのガントリー角に追随する摂動を補正して良い。MR
Iボアが設けられたシム及び/又は磁石の設計は、前記ライナックのガントリー角に独立な
摂動を補正して良い。
【0016】
本発明の他の態様によると、ライナックの周囲のRF遮蔽体は、当該MRIを適切に動作さ
せるため、前記RF放射線を含み、かつ/又は前記ライナックによって生成される高出力RF
放射線から当該MRIを遮蔽する、1層以上のRF吸収材料及び/又はRF反射材料を有して良い
。
【0017】
前記RF遮蔽体の配置は、前記ビームが、前記遮蔽体を均一に減衰するように通過するよ
うなものである。前記RF遮蔽体の配置はまた、前記平坦フィルタが前記RF遮蔽体の一部と
なるようなものであっても良い。薄い部分又は穴が、ビームの減衰を制限するのに用いら
れて良い。
【0018】
遮蔽は、1層以上のRF室の内壁、MRI表面、及び勾配コイルを巻く形成器具に、RF吸収材
料を設けることによって改善されて良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】スプリットマグネット放射線治療システムの上面図を表している。
【
図1B】
図1Aに図示されたスプリットマグネット放射線治療システムの斜視図を表している。
【
図1C】
図1Aに図示されたスプリットマグネット放射線治療システムの簡略化されたブロック図を表している。
【
図1D】
図1Aに図示されたスプリットマグネット放射線治療システムの他の簡略化されたブロック図を表している。
【
図1E】
図1Aに図示されたスプリットマグネット放射線治療システムの他の簡略化されたブロック図を表している。
【
図2A】
図1A-1Dに図示されたシステムのMRIの主磁石によって発生する磁場を図示している。
【
図2B】
図1A-1Dに図示されたシステムのMRIの主磁石によって発生する磁場を図示している。
【
図3A】
図1A-1Dに図示されたシステムの実施例において用いられる磁気遮蔽材料のB-H曲線を図示している。
【
図3B】
図1A-1Dに図示されたシステムの実施例において用いられる磁気遮蔽材料の相対透磁率を図示している。
【
図4A】
図1Cと
図1Dに図示された主磁石の断面図を含む、
図1A-1Dに図示されたシステムの実施例の簡略化されたブロック図を表している。
【
図4B】
図1A-1Dに図示されたシステムで利用可能な遮蔽体の実施例をより詳細に図示している。
【
図4C】
図1A-1Dに図示されたシステムで利用可能な遮蔽体の実施例をより詳細に図示している。
【
図4D】
図1A-1Dに図示されたシステムで利用可能な遮蔽体の実施例をより詳細に図示している。
【
図4E】
図1A-1Dに図示されたシステムで利用可能な遮蔽体の実施例をより詳細に図示している。
【
図5A】一部の実施例によるMRIの主磁石によって発生する遮蔽された磁場B
zと遮蔽されていない磁場B
zの比較を図示している。
【
図5B】一部の実施例によるMRIの主磁石によって発生する遮蔽された磁場B
zと遮蔽されていない磁場B
zの比較を図示している。
【
図6A】好適実施例によるMRIの主磁石によって発生する遮蔽された磁場B
zと遮蔽されていない磁場B
zの比較を図示している。
【
図6B】好適実施例によるMRIの主磁石によって発生する遮蔽された磁場B
zと遮蔽されていない磁場B
zの比較を図示している。
【
図7A】Z=10mmのXY平面での磁場の好適実施例内部の磁場B
zのマップを図示している。
【
図7B】Z=20mmのXY平面での磁場の好適実施例内部の磁場B
zのマップを図示している。
【
図8】
図1Cと
図1Dに図示された主磁石の断面図を含む、
図1A-1Dに図示されたシステムの実施例の簡略化されたブロック図を表している。
【
図9】一部の実施例のように遮蔽された主MRI磁石によって発生する磁場B
zを図示している。
【
図10】
図1A-1Dに図示されたシステムの実施例の簡略化されたブロック図を表している。
【
図11】
図1A-1Dに図示されたシステムの実施例において利用可能な能動的遮蔽体の実施例を図示している。
【
図12A】
図11に図示された能動的コイルが起動する前に主MRI磁石によって発生する磁場のZ成分を図示している。
【
図12B】
図11に図示された能動的コイルが起動した後に主MRI磁石によって発生する磁場のZ成分を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1A-1Eは、スプリットマグネット放射線治療システム100の様々な図を表している。図
1Aは、スプリットマグネット放射線治療システム100の上面図を表す。
図1Bは、スプリッ
トマグネット放射線治療システム100の斜視図を表す。システム100は、一体化された線形
加速器107とMRIシステム102を有し、かつ、線形加速器107からの照射とMRI102からの撮像
とを同時に行うことを可能にする。たとえば、MRI102は、照射される対象物の位置を正確
に示すのに用いられて良く、かつ、この情報は、線形加速器107からの照射を制御するの
に用いられて良い。本開示は、図示された特定のMRI及びライナックシステムには必ずし
も限定されず、他のMRI及びライナックシステムにも同様に適用されて良い。たとえば、
本明細書に開示されたRF及び/又は磁気遮蔽システム並びに方法は、図示され、かつ以降
で説明されるMRI及びライナックシステムとは異なる既知のMRI及びライナックシステムと
併用されて良い。
【0021】
放射線治療システム100は、開口ソレノイダル磁気共鳴撮像(MRI)装置102、放射線源104
、ライナックを格納し、かつ放射線源104の角度を変化させるガントリー106、患者カウチ
108、及び撮像及び処置用の位置にいる患者110を有する。同様のシステムは特許文献5に
記載されている。
【0022】
本開示の放射線治療システム100は、特許文献5に開示されたものとは多くの点で異なる
。基本的な差異は、本開示の放射線治療システム100は、特許文献5に開示された等方的な
放射線システムではなくライナック107を有することである。本明細書に記載されたもの
を除き、ライナック107は従来設計に係るものであって良い。一部の実施例では、
図1Eで
最良に図示されたライナック107は、調節された共振導波管107aを用いることによって電
子を加速させるように構成された医療用仕様又は診療用ライナック(clinic)であって良い
。調節された共振導波管107a内では、高周波(RF)出力が、電子銃107bから高エネルギー電
子を発生させる定在波又は進行波を生成する。X線/光子ビーム治療用に設置され、かつ電
子ビーム治療用に取り除かれる任意の標的107cが含まれて良い。X線/光子ビーム及び電子
ビームは、ライナック放射線ビームの例を構成する。一部の実施例では、システム100は
、ライナック107からの電子ビームEB用に、たとえば特許文献5に開示されているようなプ
レコリメータ107d及びマルチリーフコリメータ107eを有して良い。以降で詳述するように
、ライナック107-特に導波管107a-は、磁気並びに/又はRF遮蔽体118、120、及び/若し
くは122によって保護されて良い。磁気並びに/又はRF遮蔽体118、120、及び/若しくは122
は、1つ以上のシェルの形態をとっても良い。前記1つ以上のシェルは円筒形であることが
好ましいが、他の形状が用いられても良い。また以降で詳述するように、冷却系115はた
とえば、液体冷却系及び/又は空気冷却系を有して良い。
【0023】
放射線治療システム100は、たとえば特許文献5に記載されたようなスプリットマグネッ
トシステムを有して良い。前記スプリットマグネットシステムは、MRI装置102の一部とし
て、
図1Cに図示された一対の主磁石112aと112bを有する。MRI装置はまた、図示されてい
ない従来のMRI構成部材をも有して良い。従来のMRI構成部材とはたとえば、スプリット勾
配コイル、1つ以上のシムコイル(シムとも呼ばれる)、及びRFコイルを含むRFシステム
である。主磁石112aと112bによって発生する磁場強度は変化して良い。しかし説明を簡単
にするため、システム100については、主磁場強度が0.35Tの実施例を参照しながら説明す
る。この主磁場強度は、患者内の2次電子に作用するローレンツ力によって生じる照射量
分布の摂動を防止するように選ばれている。磁石112aと112bは、中央のギャップ-たとえ
ば0.28m-によって隔離されている。MRI装置102は、たとえば磁場の中心として直径50cm
のMRI視野を供し、かつ同時に、MRI装置102のスプリット勾配コイルによって、ギャップ1
14内に非減衰放射線ビームを供するように設計されて良い。システム100の構築は、スプ
リット勾配コイルからの放射線ビームが、RFコイル、患者110、及び患者カウチ108のみを
通過するようなものであることが好ましい。
【0024】
図1C及び
図1Dは、システム100の簡略化されたブロック図を表している。
図1Cでは、MRI
システム102の主磁石のみが図示されている。
図1Dでは、主磁石112aと112b及びライナッ
ク107のみが図示されている。
図1C及び
図1Dに図示され、かつ本開示全体を通じて用いら
れている座標系は、MRIボアを貫通する長手軸をZ軸とする。Z軸は、主磁石112aと112bと
の間のギャップ114内で少なくとも実質的に中心をとる、中心軸面CP-横方向又は中心面C
Pとも呼ばれる-に対して垂直である。また主磁石112aと112bはいずれも、Z軸について半
径方向に延びる。中心面CPはまた、X軸とY軸によっても定義される。X軸は、Z軸に対して
垂直であって、MRIシステム102の側部から側部まで延びる。Y軸は、Z軸に対して垂直であ
って、MRIシステムの底部から上部まで延びる。
【0025】
本実施例のシステム100では、中心面CP上のマグネットアイソセンターICから1mの距離
では、点P1で示されたように、約0.1Tの磁場Bzが存在する。この距離は、ライナック107
の放射線源についてのアイソセンターからの所望の距離である。磁場は、点P2で示されて
いるように、0.81mの半径距離で+Bzから-Bzへ反転する。アイソセンターから1mでの磁場
は、後述するように、強磁性遮蔽体又は多層遮蔽体内に含まれうる程度に低い。ここでは
ライナック107の放射線源は最適放射線治療操作が行えるように位置設定されていること
が好ましい。中心軸面CPでは、コイルの対称性ゆえに、主として軸方向の磁場Bzが存在す
る。中心面CPでは、Yは垂直軸で、かつ、ライナック107を遮蔽する高い磁気感受率(及び
/又は1次元磁区での透磁率)を有する材料-たとえば非配向のケイ素鋼シェル-の軸であ
ると仮定する。
【0026】
中心面CP付近の主磁石112aと112bによって発生した磁場が
図2Aに図示されている。ライ
ナック107が適切に動作するためには、加速構造の中心での磁場は、Y=1000mm(たとえば
点P1)付近での非遮蔽磁場よりもはるかに小さいことが望ましい。
図2Aはまた、磁場方向
の反転に起因して常に起こることとして、磁場B
zが反転するy≒810mm付近でゼロ点(B
z=0)
が存在することも図示している。
図2Bは、Y=900mm付近での関心領域内に同一の磁場を図
示しているが、Y軸は縮尺が変更されている。
【0027】
ライナック107は、
図1DのY軸と揃う長手軸ρを有する。ライナック107が、Y軸に沿って
位置合わせされているものとして図示及び記載されているが、ライナック107がZ軸の周り
で回転可能であることが好ましい。たとえば
図1A及び
図1Bに図示されたガントリー106は
、ライナック107を支持し、かつZ軸の周りで、(長手軸ρは中心面内に残したまま)
図1D
に図示された回転方向RDにライナック107を運んで良い。それによりライナック107は、Z
軸の周りの任意の範囲の回転位置からアイソセンターICへ電子ビームEBを放出することが
できる。またガントリー106及びライナック107は、システム100の他の構成部材とは独立
にZ軸の周りで回転して良い。たとえばガントリー106及びライナック107は、MRI102とは
独立に回転して良い。
【0028】
次に
図3A-
図3B及び
図4A-
図4Bに移り、MRIシステム102の磁場からライナック107を磁気
的に遮蔽する一般的な方法について説明する。具体的な例が与えられているとはいえ、こ
の具体的な例は、同一の目的を実現するための同様な手法又は形態若しくは材料の変化を
排除しない。ライナック107が設けられた領域での磁場Bを抑制するため、高い磁気感受率
及び透磁率を有する材料で作られた磁気遮蔽体すなわちシェル118が、ライナック加速構
造107の周辺に設けられている。シェル118は、円筒形状で、かつライナック107の軸ρに
沿って位置合わせされて良い。このときシェル118の一端又は両端は開いている。円筒形
状が好ましいが、開示された遮蔽シェルは他の形状であっても良い。シェル118の少なく
とも一端は、ライナック107からの電子ビームEB(
図1Dに図示されている)に対して開い
ている。磁気遮蔽体118は、シェル材料の特性に従って選ばれた厚さを有して良い。磁気
遮蔽体118(本明細書に開示された他の磁気遮蔽体も同様)は、非配向ケイ素鋼-たとえ
ば530-50APの名称でThyssenKrupp社から販売されているニッケル鉄-合金-で形成され、
かつたとえば約5mmの厚さを有して良い。「530-50AP」材料のB-H曲線及び相対透磁率がそ
れぞれ、
図3A及び
図3Bに図示されている。磁気遮蔽体118用の他の材料の選択肢(本明細
書に開示された他の磁気遮蔽体も同様)には、M19鋼、M45鋼、及びCarpenter High Per
meability「49」鋼が含まれる。
【0029】
磁石112aと112b及び磁気遮蔽体118の位置が
図4Aに図示されている。他方、磁気遮蔽体1
18の拡大斜視図が
図4Bに図示されている。磁気遮蔽体118の外径OD及び長さLは変化して良
い。本実施例においては、外径ODは約30cmで、長さLは約70cmである。磁気遮蔽体118の底
部端118Aは、磁場B
zの反転位置(付近)であるアイソセンターICからの一定距離(本実施
例では80cm)に位置している。磁気遮蔽体118の位置及びサイズは、ライナック107を含め
るのに十分な大きさでなければならないが、ライナック107によって放出されるビームの
サイズを制限するほどの長さ又は狭さではない。磁気遮蔽体118の構成は、スプリット主
磁石112a,112b及び勾配コイルセットと組み合わせられるときの放射線治療にとって最適
である。その理由は、磁気遮蔽体118は、ライナック107の放射線源と患者110との間に介
装されないからである。これにより、高品質及び高強度のライナック107の放射線治療用
ビームの生成が可能となる。一部の実施例では、たとえば
図4Cに図示されているように、
磁気遮蔽体は、多重遮蔽体シェルによって供されて良い。
図4Cでは、磁気遮蔽体は、磁気
遮蔽体118及び第2磁気遮蔽体120によって供される。ここで遮蔽体118と120は、同心円を
なす鋼鉄層であって良い。遮蔽体118と120は、空気又は他の絶縁材料層によって分離され
て良い。
【0030】
主磁石112aと112bが存在する中での材料-本実施例では鋼鉄-の影響のモデルは、境界
要素法によってマクスウエル方程式を用いることによって解かれた。
図5Aは、磁気遮蔽体
が外側磁気遮蔽体118と内側磁気遮蔽体120を有し、遮蔽体118と120は空気の層によって分
離されている実施例によって遮蔽されている主磁石112a,112bによって発生する磁場B
zと
、主磁石112a,112bによって発生する磁場B
zとのZ成分との比較を図示している。
図5Bは、
図5Aに図示された遮蔽体118と120によって遮蔽されている主磁石112a,112bによって発生
する磁場B
zのZ成分のY=1200mm付近での関心領域を拡大した図である。表1は、
図5A及び図
5Bに係る実施例による磁気遮蔽体118と120の材料及び寸法を列挙している。表1において
、"ID"は内径で、"OD"は外径で、長さはシェルの長さLで、かつ「開始のY座標位置」は、
アイソセンター(Z軸)から遮蔽体118と120のそれぞれの底端部までの距離である。
【0031】
【表1】
1つの厚さ5mmのシェルの軸に沿った残留磁場は、4.5Gで、地磁気よりも約10倍大きくて
、ライナック107の最適よりも大きい。この残留磁場をさらに減少させるためには複数の
選択肢が存在する。
図4Cに図示されているように、1つの選択肢は、磁気遮蔽体118の内側
に第2磁気遮蔽体120を追加することで、第1磁気遮蔽体から磁気的に分離した磁場をさら
に減少させることである。たとえば、第2磁気遮蔽体120は、第1シェル118の内部に設けら
れている。このとき2つのシェルは、ライナック107の長手軸ρに沿って同軸である。係る
実施例では、第2シェル120は、高磁気感受率だが、外側シェル118が磁場を顕著に減少さ
せるので、外側のシェル118の飽和磁束密度は低くなりうる(たとえばミューメタル)。
金属の飽和を再起動することによって、最高の遮蔽を得るため、シェル118と120を磁気的
に分離することが好ましい。
【0032】
あるいはその代わりに、2次遮蔽素子120は、残留磁場を打ち消すために1次シェル118の
内側に設けられた電流を流すコイルであって良い。残留磁場が十分低くて、かつその値と
空間内での方向が既知である場合には、ライナックの加速部内でわずかな調節を行うこと
が可能である。現在のライナックは、少なくとも実質的に真っ直ぐな電子ビームを供する
ように構成されている。ビームが、磁場によってわずかにしか曲がらない場合、予想され
るビーム路を計算することが可能で、かつビームを曲げるように加速板を変化させること
が可能である。周辺磁場の方位角的に対称な特性が与えられているので、電子ビームのビ
ーム路のずれは、ガントリーの位置に対してほとんど独立でなければならない。あるいは
その代わりに、第2遮蔽素子120は、後述するようにRF遮蔽体120であっても良い。
【0033】
システムの主磁石112aと112b及び二重シェルのピーク間磁場の不均一性は、45cmのDSV
にわたって623.8ppmである。この不均一性は、MRIシステム102には大きすぎるので、追加
のシミングが必要である。磁場の不均一性は大抵、いくつかの方域調和関数によって表さ
れる。そのような方域調和関数とは、S1,1→Y、C2,2→(X2-Y2)、S3,1→Z2X、及びS3,3→X
3である。重要な主要調和関数をすべて表2に列挙する。
【0034】
【表2】
帯域調和関数はシミングによって処理されて良い。シムの設定は、Z軸の周りでのライ
ナックの回転によっては変化しない。従ってシムはMRIボア上に設けられて良い。負の帯
域調和関数が磁石112aと112bが組み込まれることで、磁石112a,112bと磁気遮蔽体118との
組み合わせが、これらの項を取り除く。方域調和関数は大きな問題がある。その理由は、
方域調和関数はライナックの配置に伴って移動するからである。方域調和関数は、ガント
リー106上の中心面CP付近のパッシブシムによってシムアウトされて良い。パッシブシム
は、ガントリー106/ライナック107の回転及び/又は勾配コイルに組み込まれた抵抗シムと
共に移動する。勾配コイルは、ガントリー106の回転と一致するように電気的に調節され
て良い。
【0035】
一部の実施例によると、
図1A-
図1Dに図示されたシステム100は、垂直加速軸を有するラ
イナックを有し、かつガントリー106上に載置されている。それによりライナック107は、
放射線治療及びMRI102のアイソセンターの周りで回転することができる。ライナック107
はまた、低エネルギー-4~6MVの範囲-で、かつライナックを小型に保つために定在波導
波管を有することが好ましい。ライナック107は、強度が変調される放射線治療又はコン
フォーマルな放射線治療に用いることのできる光子ビームのみを生成するように構成され
て良い。ライナック107は、S帯又はX帯の周波数のいずれかで動作して良いが、高出力及
び安定性のためにはS帯が好ましい。
図4Cを参照すると、この実施例では、素子120は、RF
遮蔽体120として機能するように構成されて良い。RF遮蔽体を供するため、RF遮蔽シェル1
20は、適切な遮蔽材料-たとえば銅ホイル、アルミニウムホイル、又は炭素ファイバ-で
作られて良い。銅やアルミニウムのような金属は、その表面の渦電流を発生させる特性が
あるため、RF放射線を反射する傾向にある。炭素ファイバ材料は、RFエネルギーを吸収す
る傾向にある。
【0036】
一部の実施例-特にRF遮蔽シェルが導電性材料で構成される場合-では、渦電流は、遮
蔽シェルを貫通するように1つ以上のスロットを供することによって減少させることがで
きる。たとえば、遮蔽シェル120は、
図4Cではスロット120Aと120Bを有するものとして図
示されている。しかしスロットのサイズ、数、及び構成は、
図4Cに図示されたものから変
化して良い。スロットを備えた遮蔽シェル120が図示されているが、そのようなスロット
はまた、遮蔽シェル118内に供されても良い。また任意の数のそのようなスロットが、2つ
以上の遮蔽シェルを有する実施例において、任意の1つ以上の遮蔽シェル内に供されても
良い。そのようなスロットはまた、磁気遮蔽シェル内にあることも望ましいので、磁気遮
蔽シェルの実施例に含まれても良い。
【0037】
図4Cが2つの層(遮蔽シェル120と118)を図示しているが、他の実施例は任意の数の層
を有して良い。一部の実施例では、遮蔽シェルの層は、様々な材料を組み合わせたもので
作られても良いし、又は同一材料で作られても良い。たとえば一部の実施例では、遮蔽シ
ェル層は、RF吸収材料及びRF反射材料で構成された繰り返し層を有して良い。係る実施例
では、遮蔽シェル層間に空気ギャップを供することが望ましい。
【0038】
冷却が、RF遮蔽体120内の吸収材料に対して必要なので、冷却系115(
図1E)によって供
されて良い。様々な既知の冷却方法が、RF遮蔽体120を冷却するのに用いられて良い。冷
却系115はたとえば、RF遮蔽体120を構成する1つ以上の遮蔽シェル付近で流体を巡回させ
る流体運搬導管を有して良い。またRF遮蔽体120を構成する遮蔽シェルの1つ以上の表面に
わたって空気を動かすシステムを組み込むことによって、空冷が供されても良い。
【0039】
磁気遮蔽体118及びRF遮蔽体120は、地磁気の強度のオーダーである磁場強度に対して、
ライナック107の電子銃107bから標的までの電子の経路を遮蔽するように、ライナックの
周囲に設けられる。磁気遮蔽体118は、たとえば
図4A及び
図4Cに図示されているように、
放射線治療ビームの経路内に位置しないように配置される。RF遮蔽体120はまた、MRI102
ではなく、ライナック107の周囲に設けられ、かつ、ライナック107によって発生するRF放
射線がMRIの機能を損なわせる前に、そのRF放射線を消滅及び吸収する吸収層と反射層の
両方を有する。吸収層と反射層は、平坦フィルタの一部として機能して良い。一部の実施
例では、RF遮蔽体120は、標準的なボアが設けられたMRIのRF遮蔽体と共同して動作して良
い。ライナック107からのビームは、(複数の)RF遮蔽体が均一かつわずかしか放射線治
療ビームを減衰しない限り、RF遮蔽体120(及び係る実施例におけるボアが設けられたMRI
のRF遮蔽体)を通過することができる。一部の実施例では、RF遮蔽体120は、RF遮蔽のみ
であることが望ましい磁気遮蔽体118のない状態で供されても良いことに留意して欲しい
。
【0040】
上述したように、一部の実施例では、
図4Cに図示されている第2遮蔽素子120は第2磁気
遮蔽体120であって良い。
図4Dを参照すると、ライナック107が設けられている領域内での
磁場Bをさらに抑制するため、磁気遮蔽素子122は、1つ以上の同心円の磁気遮蔽体を有し
て良い。1つ以上の同心円の磁気遮蔽体は、磁気遮蔽体118と120及び1つ以上の追加の磁気
遮蔽体を有して良い。磁気遮蔽素子122は、高い磁気感受率(及び透磁率)を有する材料
で作られる多重磁気遮蔽体-遮蔽体118と120を含む-を有して良い。磁気遮蔽素子122の
遮蔽体は、ライナック107の加速構造の周りを互いの内部で同心円状に設けられて良い。
磁気遮蔽素子122の磁気遮蔽体は、適切な誘電材料-たとえば空気又はプラスチック-に
よって、互いに磁気的及び電気的に分離されて良い。多重磁気遮蔽体を有することは有利
である。その理由は、材料の磁場遮蔽は、深さに伴って飽和し始めるからである。新たな
磁場が導入されることで、遮蔽を増大させる飽和効果が再度起こる。また一部の実施例-
たとえば
図4Eに図示された実施例-は、放射線治療用のスプリットマグネット126と128を
有するライナック107及び2つの孤立したシェル130と132で作られた磁気遮蔽体を有して良
い。
図4A-
図4Eに図示された実施例の磁気遮蔽体の厚さは、たとえば5mmとなるように選ば
れて良い。材料は、530-50AP鋼材料が選ばれて良い。磁気遮蔽体118(及び本明細書に開
示されている他の磁気遮蔽体)についての他の材料の選択肢には、M19鋼、M45鋼、及び53
0-50APの名称でThyssenKrupp社から販売されている鋼鉄が含まれて良い。遮蔽シェルの外
径OD及び長さLはたとえば、
図4Cに図示された2つのシェルの実施例においては、それぞれ
27cm及び30cmである。シェル118と120はいずれも、磁場B
zの反転位置(付近)であるアイ
ソセンターICからの一定距離(本実施例では約85cm)に設けられて良い。ただしこれは必
須ではない。遮蔽体118、120、130、132を含む磁気遮蔽体及び磁気遮蔽素子122のさらな
る磁気遮蔽体の位置とサイズは、ライナック107が含まれるのに十分な大きさでなければ
ならないが、ライナック107からのビームのサイズを制限するほど長くも狭くもない。
【0041】
図6Aは、主磁石112aと112bによって発生する遮蔽された磁場B
zと、3つの同心円状のシ
ェルを含む磁気遮蔽素子122を用いて遮蔽された磁石112aと112bによって発生する磁場B
z
のZ成分との比較を図示している。
図6Bは、磁気遮蔽素子122によって遮蔽された主磁石11
2aと112bによって発生した磁場B
zのZ成分のY=1000mm付近の関心領域の拡大図である。表3
は、
図6A及び
図6Bに係る実施例による磁気遮蔽素子122の材料と寸法を列挙している。
図6
Aと
図6Bに係る実施例及び表3では、磁気遮蔽素子122は、空気の層によって互いに分離さ
れた3つの同心円状のシェルを有する。本明細書で開示された他の遮蔽シェルと共に、遮
蔽素子のシェルは円筒形状であることが好ましいが、他の形状であっても良い。表3にお
いて、"ID"は内径で、"OD"は外径で、長さはシェルの長さLで、かつ「開始のY座標位置」
は、アイソセンター(Z軸)から遮蔽素子122の層の底端部までの距離である。
【0042】
【表3】
残留磁場Bは、1100mm<y<1400mの領域内において1ガウス未満である。これは大まかに言
って、軸ρの近くでの地磁気に匹敵する。磁場の調和関数は、
図4Bに図示された実施例に
係る単一シェルモデルに近い。主磁石112aと112b及び磁気遮蔽体118と120によって発生す
る45cmのDSVにわたるピーク間磁場の不均一性は623.6ppmである。ライナック107の電子銃
107bに対する最善の遮蔽を有することが好ましい。加速構造の標的端には遮蔽がなされな
くて良い。このような磁場の不均一性の大半はy軸方向の調和関数によって表される。球
面調和関数が表4に列挙される。
【0043】
【表4】
この不均一性をシムアウトするのに用いられる方法は、単一シェルモデルの場合に提案
された方法と同一である。
図7A及び
図7Bはそれぞれ、Z=10mm及びZ=20mmでのXY平面におけ
る内側シェル内部での磁場B
zのマップを図示している。
【0044】
次に
図8を参照すると、ライナックの遮蔽体-たとえば
図4A及び
図4Bに図示された遮蔽
体118-の存在によって生じる磁場の不均一性を緩和することが可能な他の実施例が記載
されている。
図8に図示された実施例は
図4A及び
図4Bに図示された実施例と相似して良い
。同様の構成部材には同一の素子番号が付されている。これらの構成部材の記載はこの実
施例についても同じように適用されるので、ここでは説明を繰り返さない。
図8に図示さ
れた実施例では、第1遮蔽体118は第1長手軸ρ
1に沿って延び、かつ、第2遮蔽体140(任意
で第2ライナック107'を有して良い)は、第1磁気遮蔽体118の第1長手軸ρ
1から180°対称
となるように離れた第2長手軸ρ
2に沿って延びる。一部の実施例では、第2遮蔽体140は、
磁気遮蔽体118で関連して説明したように、磁気遮蔽材料-530-50APの名称でThyssenKrup
p社から販売されている鋼鉄-で構成されて良い。磁気遮蔽体118(及び本明細書で開示さ
れた他の磁気遮蔽体)についての他の材料の選択肢には、M19鋼、M45鋼、及びカーペンタ
ー(Carpenter)49鋼が含まれる。第2の対称性を有する遮蔽体140しか存在しない場合、こ
の解は、1次シェル118についての対称性を有するシムと考えることができる。一部の実施
例では、磁気遮蔽体118及び/又は140は、たとえば
図4C又は
図4Dに図示されたような、2つ
以上の同心円状の磁気遮蔽シェルを有する磁気遮蔽素子であって良い。
【0045】
図9は、磁気遮蔽体118と磁気遮蔽体140の両方が2つの同心円状の磁気遮蔽シェルを有す
る実施例において、主磁石112aと112bによって発生する磁場B
zを図示している。この実施
例では、システムの主磁石112aと112b及び2つの二重シェル遮蔽体(118+140)によって発生
する45cmのDSVにわたるピーク間の磁場の不均一性は416.96ppmである。このような磁場の
不均一性のほとんどはZ
2調和関数によって表される。Y軸方向の調和関数のすべては、Y軸
で対称性を有しているため無視できるほどに小さくなる。この場合についての調和関数が
表5に列挙されている。
【0046】
【表5】
ここで帯域調和関数は、
図4Bに図示された実施例に係る単一シェルモデルの2倍である
。しかし、帯域調和関数はパッシブシミングによって処理されて良く、かつ、シムの設定
はZ軸の周りでのライナック107の回転によっては変化しない。負の帯域調和関数が磁石11
2aと112bが組み込まれることで、磁石112a,112bと磁気遮蔽体118との組み合わせが、これ
らの項を取り除く。方域調和関数は大きな問題がある。その理由は、方域調和関数はライ
ナック107の配置に伴って移動するからである。しかし対称性は最悪の調和関数を除去す
る。方域調和関数は、ガントリー106上の中心面付近のパッシブシム及び/又は抵抗性電気
シムによってシムアウトされて良い。回転ガントリー106に組み込まれるパッシブシムは
、これらの磁場レベル(より多くのシムの選択肢についての配向した磁化シム)での永久
磁石シムであって良い。パッシブシムは、シム内で必要とされる材料を減らすため、より
小さな半径で加えられて良い。勾配中での抵抗性電気シムは、ライナックのガントリーの
回転と共に変化する。
【0047】
他の実施例では、磁気遮蔽体118と同一又は類似のN組の磁気遮蔽シェルが存在して良い
。N組の磁気遮蔽シェルの各々は軸ρ
1~ρ
Nの各対応する軸を有する。係る実施例は、
図8
に図示された実施例と同様の方法で配置されて良い。軸ρ
1~ρ
Nの各々は、中心面CP上に
存在し、かつ角度=360°/Nだけ角度方向に隔てられている。Nが大きくなればなるほど、
方域調和関数の正味の効果を打ち消すことができる。また磁気遮蔽体シェルはRF遮蔽体と
して機能しようとするので、多重シェルは、RF遮蔽を供する上で有利である。
【0048】
一部の実施例では、
図10に図示されているように、高い相対透磁率を有する材料で作ら
れた2つの平行な環状ディスク144と146が存在して良い。2つの平行な環状ディスク144と1
46は、ガントリー106の一部で、かつライナック107の対向する面上に存在して良い。この
場合、方域調和関数は相対的に小さくなければならず、かつ、帯域調和関数は相対的に大
きくなければならない。ある意味では、2つの環状ディスク144と146を設けることは、主
磁石112aと112b内の追加のコイルを設けることと等価である。最適には、主磁石112aと11
2bは、2つの環状ディスク144と146を収容するように設計されて良い。
【0049】
アイソセンターからY軸に沿って1mの位置に存在する主磁石112aと112bからの磁場は、
受動的遮蔽体-たとえば上述した遮蔽体118-の磁場を減少させることなく遮蔽するのは
難しい。しかし強磁性材料によって供された磁気遮蔽後では、残留磁場は5~7ガウス付近
である。この残留磁場は、たとえば
図4Cに図示された2次遮蔽素子120がコイル120'である
実施例では、コイル中でのDC電流によって容易にシムアウトすることができる。遮蔽コイ
ル120'の概略図が
図11に図示されている。コイル120'は、半分の長さL及び半径Rを有する
円筒形で、かつ以下の方法に従って設計されて良い(円筒形以外の形状が使用されて良い
)。遮蔽コイル120'は、主磁石112aと112bによって発生する(本来の座標系での)磁場の
B
z成分を打ち消す(局所的な座標系での)磁束B
xを生成することが好ましい。
【0050】
半径Rのシリンダ上での電流密度は、以下の式で与えられる。
【0051】
【数1】
この電流により発生する磁気ポテンシャルは以下のように表すことができる。
【0052】
【数2】
この式において、I
n(kρ)とK
n(kρ)は修正されたベッセル関数である。磁場の横方向成
分は以下の式で与えることができる。
【0053】
【数3】
コイル120'のシリンダ内部での磁束のB
x成分は次式で表される。
【0054】
【数4】
(局所的な座標系での)このB
x成分は、磁石によって発生するB
z'成分を打ち消さなけ
ればならない。このことは、電流密度f
z(z)を求めるのに(勾配設計の手続同様に)最小
化手続が適用できることを示唆している。最小化されるべき関数を考える。
【0055】
【数5】
上式において、Eはコイル120'のエネルギーで、第2項は、主磁石112aと112bの磁場から
の、遮蔽コイル120'によって発生する磁場のずれを最小化するためで、第3項は、撮像体
積内での磁場の不均一性への遮蔽コイル120'の影響を最小化するためで、かつ、最後の項
は、電流密度を制限するものとして導入される。係数Λ、β、及びλは重み付け因子であ
る。λは、コイル120'内での電流を最小限に抑制する規則化パラメータであって良い。
【0056】
電流密度fz(z)は基底関数で表されて良い。電流密度fz(z)は、遮蔽コイル120'の端部で
はゼロであることに留意して欲しい。
【0057】
【数6】
係数a
nは以下の式から求めることができる。
【0058】
【数7】
これから、係数a
nについての1次元の式からなる系が導かれる。エネルギーEは以下のよ
うな表式を有する。
【0059】
【数8】
遮蔽コイル120'によって生成される磁場は以下のような表式を有する。
【0060】
【数9】
よって未知のAについての式は、以下のようになる。
【0061】
【数10】
行列Zα
,βは正と定義され、かつゼロの固有値を有さない。よって次式が得られる。
【0062】
【数11】
この式は、電流密度についての解を定めている。
【0063】
一部の実施例は、受動的遮蔽体と能動的コイルとが組み合わせられたものを有して良い
。
図5b(単一シェルの場合)に図示された残留磁場B
zが入力データとして用いられた。コ
イル120'の半径は75mmに選ばれた。半分の長さLは180mmに選ばれた。コイル120'の中心は
y=1051mmに位置している。
図12Aは、コイル120'を起動する(つまり電流を印加する)前
の、能動的遮蔽コイル120'上での電流密度のz成分を図示している。
図12Bは、遮蔽コイル
120'の起動後における残留磁場B
zを図示している。
【0064】
以下のパラメータΛ、β、K及びλが用いられた。Λ=1、β=0、K=1及びλ=0.0001であ
る。DSV内部での不均一性を補正する効果を説明するパラメータはゼロに選ばれた。その
理由は、
図5Bの残留磁場のレベルは既に小さく(7ガウスのオーダー)で、かつ、能動的
遮蔽コイルは、撮像体積から遙かに離れた位置に設けられているからである。
【0065】
一部の実施例は、完全な能動コイルの遮蔽系を有して良い。係る実施例では、ライナッ
ク107の遮蔽は、上述した実施例の受動的磁気遮蔽体に代わって、上述した能動的な電流
を流すコイル-たとえばコイル120'-のみを用いることによって局所的に実現されて良い
。コイル120'は、ライナック107での磁場を単純に打ち消すように配置され、かつ、主磁
場の均一性への影響を減少させるように能動的遮蔽体をも組み込んで良い。
【0066】
ライナック107を局所的に遮蔽するさらに他の方法は、永久磁石の分布を利用すること
である。永久磁石は、ライナック107での磁場を単純に打ち消すように配置され、かつ能
動的コイル-たとえばコイル120'-を組み込むことで、主磁石112aと112bからの主磁場の
均一性への影響を減少させても良い。
【0067】
開示された実施例のすべての組み合わせもまた可能である。遮蔽材料の遮蔽と配置、電
流を流すコイル、及び磁場分布をわずかに変化させることもまた可能である。
【0068】
本明細書に記載された磁気遮蔽体-たとえば遮蔽体118、120、122、130、132-及び他
の遮蔽体は、MRI102の主磁石112aと112bからの力を受けることに留意して欲しい。よって
遮蔽体の載置は、そのような磁力に耐えられるように設計されることが好ましい。
【0069】
ライナック107用の高出力RF源及び導波管もまた、本明細書に開示された磁気遮蔽体内
部で(部分的に)密閉されて良い。RF遮蔽は、ライナック107の一部又は前部の構成部材
を含むように延びて良い。
【0070】
MRI102についてのRF遮蔽に関しては、ライナック107として使用されるのに適した診療
用ライナックが、~3GHzでのRFマイクロ波共振器を用いることによって、約6MeVに電子を
加速させるS周波数帯範囲で動作して良い。この周波数は、MRIシステム102の15MHzを十分
に上回っているが、数百ヘルツの周波数を有するRF出力パルスを含んでいる。RF出力源で
の側波帯は、他の材料を励起し、その他の材料からの反射を受けることで、MRIシステム1
02の動作との干渉を引き起こす恐れがある。
図4Bと関連づけて説明したように、素子120
は、RF吸収材料及び/又はRF反射材料で作られたライナック107の周囲に設けられたRF遮蔽
体であって良く、MRIシステム102との干渉を実効的に取り除くことができる。それに加え
て、MRIのRF室-ライナック107からのRFをMRI102へ入り込むように跳ね返すことのできる
RF反射材料で作られて良い-は、RF吸収材料の壁面被覆体によって内側表面が覆われ、か
つMRIに到達するRFを除去することができる。RF吸収材料とはたとえば、メッシュドカー
ボン、チョップドカーボン、カーボンファイバ壁紙、カーボンファイバパネル、又はカー
ボンファイバ塗料である。ガントリー106及びライナック107のRF源の周辺領域は、周辺(
環境)のRF電場を減少させるRF吸収体及び/又はRF反射体で覆われて良い。3GHz(電子レ
ンジは2.45GHz)では、RFは、分極分子(たとえば水)を電気的に加熱させる。よって、
様々な分極分子が、RFエネルギーのRF吸収体として利用されて良い。スプリットマグネッ
トシステムでは、閉じた系内でRFエネルギーを発散させる導電性表面の一部は、磁石のギ
ャップ114内で失われる。MRIの周囲のRF遮蔽体は、上述した他の遮蔽方法と併用されて良
い。RF遮蔽体は、放射線治療の品質を大きく損なうようなさらなるビームの減衰を生じさ
せない。導電性表面は磁石に対して接地されても良いし、又は接地されていなくても良い
。これらの表面がアルミニウム-たとえばアルミニウムホイル-で作られる場合、ビーム
の減衰は、銅を用いるよりもはるかに小さくなる。勾配コイルが、形成器上で巻かれてい
る場合、ライナックシステムから隔離するためにカーボンファイバの外に形成器を構築し
ても良い。