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特許7417666形成方法、物品の製造方法、プログラム、システム、およびリソグラフィ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】形成方法、物品の製造方法、プログラム、システム、およびリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022093816
(22)【出願日】2022-06-09
(62)【分割の表示】P 2021017736の分割
【原出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2022111342
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 英晃
(72)【発明者】
【氏名】張 劬
(72)【発明者】
【氏名】木島 渉
(72)【発明者】
【氏名】根谷 尚稔
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-147346(JP,A)
【文献】特開2005-092137(JP,A)
【文献】特開2019-086709(JP,A)
【文献】特開2004-294770(JP,A)
【文献】特開平11-109643(JP,A)
【文献】特開2006-032956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の層に第1装置で第1パターンの潜像を形成し、前記第1パターンの潜像が形成される領域とは異なる前記層の領域に、第2装置で第2パターンの潜像を形成する形成方法であって、
前記第1装置において、前記基板に形成されたマークの位置を計測し、前記第1パターンの潜像を前記基板上に形成する第1工程と、
前記第2装置において、前記マークの位置を計測し、前記第2パターンの潜像を前記基板上に形成する第2工程と、
を含み、
前記第1工程では、前記第1工程での計測結果を用いずに、前記第1パターンの潜像を前記基板上に形成し、
前記第2工程では、前記第1工程で前記マークの位置を計測した第1計測結果に基づく情報と前記第2工程で前記マークの位置を計測した第2計測結果に基づく情報を用いて決定された位置に前記第2パターンの潜像を形成する、ことを特徴とする形成方法。
【請求項2】
前記第2工程では、前記第1装置と前記第2装置との特性の差に起因する前記第1パターンの潜像と前記第2パターンの潜像との位置関係のずれが補正されるように、前記第1計測結果に基づく情報および前記第2計測結果に基づく情報を用いて、前記第2装置において前記基板上に形成される前記第2パターンの潜像の位置を補正する、ことを特徴とする請求項1に記載の形成方法。
【請求項3】
前記第2工程では、前記第1工程で計測された前記マークの位置と、前記第2工程で計測された前記マークの位置との差分に基づいて、前記第2装置において前記基板上に形成される前記第2パターンの潜像の位置を決定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の形成方法。
【請求項4】
前記第2工程では、前記第2パターンの潜像を形成すべき目標位置を前記差分により補正して得られた位置に基づいて、前記第2装置において前記第2パターンの潜像を前記基板上に形成する、ことを特徴とする請求項3に記載の形成方法。
【請求項5】
前記第1工程での計測結果を前記第1装置から前記第2装置に転送する工程を更に含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項6】
基板上の層に第1装置で第1パターンの潜像を形成し、前記第1パターンの潜像が形成される領域とは異なる前記層の領域に、第2装置で第2パターンの潜像を形成する形成工程であり、前記第1装置において、前記基板に形成されたマークの位置を計測し、前記第1パターンの潜像を前記基板上に形成する第1工程と、前記第2装置において、前記マークの位置を計測し、前記第2パターンの潜像を前記基板上に形成する第2工程と、を含み、前記第1工程では、前記第1工程での計測結果を用いずに、前記第1パターンの潜像を前記基板上に形成し、前記第2工程では、前記第1工程で前記マークの位置を計測した第1計測結果に基づく情報と前記第2工程で前記マークの位置を計測した第2計測結果に基づく情報を用いて決定された位置に前記第2パターンの潜像を形成する形成工程と、
パターンの潜像が形成された前記基板を現像する現像工程と、を含み、
前記現像工程で現像された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の形成方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
基板上の層に第1パターンの潜像を形成し、前記第1パターンの潜像が形成される領域とは異なる前記層の領域に、第2パターンの潜像を形成するシステムであって、
前記基板上に形成されたマークの位置を計測する第1計測部と、前記基板上に前記第1パターンの潜像を形成する第1形成部と、を有する第1装置と、
前記マークの位置を計測する第2計測部と、前記基板上に第2パターンの潜像を形成する第2形成部と、を有する第2装置と、
を含み、
前記第1形成部は、前記第1計測部での計測結果を用いずに、前記第1パターンの潜像を前記基板上に形成し、
前記第2形成部は、前記第1計測部で前記マークの位置を計測して得られた情報と前記第2計測部で前記マークの位置を計測して得られた情報とに基づいて決定された位置に前記第2パターンの潜像を形成する、ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
基板上の層に第1パターンの潜像を形成するリソグラフィ装置であり、前記第1パターンの潜像が形成される領域とは異なる前記層の領域に、前記リソグラフィ装置とは別のリソグラフィ装置によって第2パターンの潜像が形成される前に、前記第1パターンの潜像を形成するリソグラフィ装置であって、
前記基板上に形成されたマークの位置を計測する計測部と、
前記第1パターンの潜像を形成する形成部と、
前記計測部で得られた前記マークの位置を示す情報を前記別のリソグラフィ装置に出力する制御部と、
を含み、
前記形成部は、前記計測部での計測結果を用いずに、前記第1パターンの潜像を前記基板上に形成する、ことを特徴とするリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形成方法、物品の製造方法、プログラム、システム、およびリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に液晶表示デバイスにおいては基板サイズが大型化しており、基板を無駄なく利用することが求められている。そのため、1枚の基板に複数の異なるサイズのデバイスを複数の装置を用いて形成する、いわゆるMMG(Multi Model on Glass)と呼ばれる技術が提案されている(特許文献1参照)。このようなMMG技術では、複数の装置によって基板上の1つの層に形成された複数のパターン全体での寸法と位置とが、パターンの形成精度の評価指標として用いられうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-092137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MMG技術に用いられる複数の装置では、パターンの形成特性に個体差が生じていることがある。この場合、複数の装置によりそれぞれ形成された複数のパターンの位置関係が目標値(設計値)に対してずれてしまい、基板上にパターンを精度よく形成することが困難になりうる。
【0005】
そこで、本発明は、パターンの形成精度を向上させるために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての形成方法は、基板上の層に第1装置で第1パターンの潜像を形成し、前記第1パターンの潜像が形成される領域とは異なる前記層の領域に、第2装置で第2パターンの潜像を形成する形成方法であって、前記第1装置において、前記基板に形成されたマークの位置を計測し、前記第1パターンの潜像を前記基板上に形成する第1工程と、前記第2装置において、前記マークの位置を計測し、前記第2パターンの潜像を前記基板上に形成する第2工程と、を含み、前記第1工程では、前記第1工程での計測結果を用いずに、前記第1パターンの潜像を前記基板上に形成し、前記第2工程では、前記第1工程で前記マークの位置を計測した第1計測結果に基づく情報と前記第2工程で前記マークの位置を計測した第2計測結果に基づく情報を用いて決定された位置に前記第2パターンの潜像を形成する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、パターンの形成精度を向上させるために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】形成システムの全体構成を示す概略図である。
図2】第1露光装置の構成例を示す図である。
図3】基板上に形成された第1パターンP1、第2パターンP2、およびマークAMを示す図である。
図4】従来例1に係るパターン形成精度の低下を説明するための模式図である。
図5】従来例2に係るパターン形成精度の低下を説明するための模式図である。
図6】従来例3に係るパターン形成精度の低下を説明するための模式図である。
図7】基板上へのパターン形成処理を示すフローチャートである。
図8】マークAM、第1パターンP1および第2パターンP2が基板上に形成される様子を経時的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態の形成システム100(形成装置)について説明する。本実施形態の形成システム100は、複数のリソグラフィ装置を用いて、基板上の1つの層(同一層)における互いに異なる位置にパターンをそれぞれ形成する、いわゆるMMG(Multi Model on Glass)技術を実行するシステムである。リソグラフィ装置としては、例えば、基板を露光してマスクのパターンを基板に転写する露光装置、モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置、荷電粒子線を用いて基板上にパターンを形成する描画装置などが挙げられる。
【0012】
また、本発明に係るMMG技術が適用される「基板上の1つの層」は、例えば、パターンが未だ形成されていないベア基板上に最初に形成される層(いわゆる第1層)でありうるが、それに限られず、第2層以降であってもよい。本実施形態では、複数の露光装置10を有する形成システム100を用いて、基板上の1つのレジスト層(感光剤)にパターン(潜在パターン)を形成する例について説明する。ここで、基板Wとしては、例えば、ガラスプレートや半導体ウェハなどが適用されうるが、本実施形態では、基板Wとしてガラスプレートを用いる例について説明する。また、以下では、「基板上の1つの層」を単に「基板上」と称することがある。
【0013】
図1は、第1実施形態の形成システム100の全体構成を示す概略図である。形成システム100は、第1露光装置10(第1装置)と、第2露光装置20(第2装置)と、搬送部30と、主制御部40とを含みうる。搬送部30は、第1露光装置10および第2露光装置20に基板Wを搬送する。主制御部40は、例えばCPUやメモリを有するコンピュータで構成され、形成システム100の全体を統括的に制御するとともに、第1露光装置10と第2露光装置20との間でのデータや情報の転送を制御しうる。
【0014】
第1露光装置10は、例えば、パターン形成部11(第1形成部)と、マーク形成部12と、マーク計測部13(第1計測部)と、制御部14とを含みうる。パターン形成部11は、マスクMのパターンを基板上に転写することにより基板上に第1パターンP1を形成する。例えば、パターン形成部11は、第1パターンP1を形成すべき目標位置座標を示す第1情報(例えば設計データ)に基づいて、基板上の第1領域に第1パターンP1を形成する。マーク形成部12は、アライメントマークを形成すべき目標位置座標を示す情報(例えば設計データ)に基づいて、基板上にアライメントマークを形成する。マーク計測部13は、マーク形成部12によって形成されたアライメントマークの位置を計測する。制御部14は、例えばCPUやメモリなどを有するコンピュータによって構成され、装置座標系に従ってパターン形成部11、マーク形成部12およびマーク計測部13を制御する(即ち、第1露光装置10による各処理を制御する)。本実施形態では、制御部14は、主制御部40と別体として設けられているが、主制御部40の構成要素として設けられてもよい。
【0015】
第2露光装置20は、例えば、パターン形成部21(第2形成部)と、マーク計測部23(第2計測部)と、制御部24とを含みうる。本実施形態の第2露光装置20では、マーク形成部が設けてられていないが、マーク形成部が設けられてもよい。パターン形成部21は、マスクMのパターンを基板上に転写することにより基板上に第2パターンP2を形成する。例えば、パターン形成部21は、第2パターンP2を形成すべき目標位置座標を示す第2情報(例えば設計データ)に基づいて、第1パターンP1が形成された第1領域とは異なる基板上の第2領域に第2パターンP2を形成する。マーク計測部23は、第1露光装置10のマーク形成部12によって形成されたマークAMの位置を計測する。制御部24は、例えばCPUやメモリなどを有するコンピュータによって構成され、装置座標系に従ってパターン形成部21およびマーク計測部23を制御する(即ち、第2露光装置20による各処理を制御する)。本実施形態では、制御部24は、主制御部40と別体として設けられているが、主制御部40の構成要素として設けられてもよい。
【0016】
次に、第1露光装置10の具体的な構成例について説明する。図2は、第1露光装置10の構成例を示す図である。ここで、第2露光装置20は、第1露光装置10と比べ、マーク形成部12が設けられていない点で異なるが、それ以外の構成は同様でありうる。つまり、第2露光装置20のパターン形成部21およびマーク計測部13は、第1露光装置10のパターン形成部11およびマーク形成部23とそれぞれ同様に構成されうる。
【0017】
第1露光装置10は、パターン形成部11として、照明光学系11bと、マスクステージ11cと、投影光学系11dと、基板ステージ11eとを含みうる。照明光学系11bは、光源11aからの光を用いてマスクMを照明する。マスクステージ11cは、マスクMを保持して移動可能に構成される。投影光学系11dは、マスクMに形成されたパターンを基板Wに投影する。基板ステージ11eは、基板Wを保持して移動可能に構成される。このように構成された第1露光装置10では、マスクMと基板Wとが投影光学系11dを介して光学的に共役な位置(投影光学系11dの物体面および像面)にそれぞれ配置され、投影光学系11dによりマスクMのパターンが基板上に投影される。これにより、基板上のレジスト層に潜在パターンを形成することができる。
【0018】
また、図2に示す第1露光装置10には、上述したマーク形成部12とマーク計測部13とが設けられる。マーク形成部12は、MF(Mark Former)とも呼ばれ、荷電粒子線などのエネルギを基板上に照射することにより基板上にアライメントマークを形成する。以下では、マーク形成部12によって基板上に形成されたアライメントマークを「マークAM」と呼ぶことがある。マーク計測部13は、マーク形成部12によって基板上に形成されたマークAMを検出することでマークAMの位置を計測する。例えば、マーク計測部13は、イメージセンサと光学素子とを有するスコープ(オフアクシススコープ)を含み、基板Wの位置(XY方向)と当該スコープの視野内でのマークAMの位置とに基づいて、マークAMの位置を計測することができる。
【0019】
[パターン形成精度について]
次に、形成システム100(第1露光装置10、第2露光装置20)による基板上への第1パターンP1、第2パターンP2、およびマークAMの形成について説明する。図3は、形成システム100によって基板上に形成された第1パターンP1、第2パターンP2、およびマークAMを示す図である。
【0020】
第1パターンP1は、第1露光装置10のパターン形成部11により、基板上の第1領域に形成されうる。第2パターンP2は、第2露光装置20のパターン形成部21により、第1パターンP1が形成される第1領域とは異なる基板上の第2領域に形成されうる。図3に示す例では、第1パターンP1および第2パターンP2が同じ寸法(サイズ)で1個ずつ基板上に形成されているが、それに限られず、互いに異なる寸法および個数であってもよい。
【0021】
また、マークAMは、第1露光装置10のマーク形成部12により、第1パターンP1および第2パターンP2が形成される領域(第1領域、第2領域)とは異なる領域における複数個所に形成されうる。図3に示す例では、3個のマークAM1~AM3が、同一直線上に配置されないように、基板Wの角付近に形成されている。このように3個のマークAM1~AM3を基板上に形成すると、3個のマークAM1~AM3の位置の計測結果に基づいて、X方向シフト、Y方向シフト、回転、X方向倍率、Y方向倍率を求めることができる。
【0022】
ここで、形成システム100(MMG技術)によるパターンの形成精度は、基板上に形成されたパターン全体の寸法と位置とに基づいて評価されうる。基板上に形成されたパターン全体の寸法は、例えば、基板上に形成されたパターン全体における対角線の長さを表す第1指標TP(Total Pitch)によって規定されうる。本実施形態では、第1露光装置10によって基板上に形成された第1パターンP1の右下の端点EP1と、第2露光装置20によって基板上に形成された第2パターンP2の左上の端点EP2とを結ぶ直線の長さが、第1指標TPとして決定されうる。一方、基板上に形成されたパターン全体の位置は、例えば、基板上に形成されたパターン全体における中心点の位置を示す第2指標CS(Center Shift)によって規定されうる。本実施形態では、端点EP1と端点EP2とを結ぶ直線の中心点が、第2指標CSとして決定されうる。
【0023】
[従来のパターン形成での課題]
複数の装置(第1露光装置10、第2露光装置20)を有する形成システム100では、上述した第1指標TPおよび第2指標CSがそれぞれ許容範囲(所望の範囲)に収まるように、基板上にパターンを形成することが求められる。従来の方法では、第1露光装置10および第2露光装置20のそれぞれにおいて、基板上に形成されたマークAMの位置を計測し、その計測結果に基づいてパターン(第1パターンP1、第2パターンP2)を基板上に形成していた。しかしながら、マーク形成部12によるマークAMの形成精度は不十分であり、基板上の目標位置座標(設計位置)にマークAMが形成されないことがある。そのため、マークAMの位置の計測結果に基づいて基板上にパターンを形成すると、以下の従来例に示すように、マークAMの形成精度に応じて、基板上にパターンを精度よく形成することが困難になりうる。
【0024】
従来例1
図4は、従来例1に係るパターン形成精度の低下を説明するための模式図である。従来例1では、図4(a)に示すように、3個のマークAM1~AM3が、目標位置座標TAMから一方向にシフトして基板上に形成された例を示している。この場合において、第1露光装置10では、マークAM1~AM3の位置の計測結果に基づいて、マークAM1~AM3と第1パターンP1とが目標位置関係(例えば、設計データでの位置関係)になるように、第1パターンP1を形成する(図4(b))。また、第2露光装置20では、マークAM1~AM3の位置の計測結果に基づいて、マークAM1~AM3と第2パターンP2とが目標位置関係になるように、第2パターンP2を形成する(図4(c))。この例では、マークAM1~AM3の目標位置座標TAMからのシフトに依存して、第1パターンP1および第2パターンP2が目標位置座標TP1、TP2からシフトして基板上に形成されることとなる。つまり、この例では、パターン全体の寸法としての第1指標TPは許容範囲に収めることができるが、パターン全体の位置としての第2指標CSを許容範囲に収めることができなくなる。
【0025】
従来例2
図5は、従来例2に係るパターン形成精度の低下を説明するための模式図である。従来例2では、図5(a)に示すように、+Y方向側のマークAM1~AM2が、目標位置座標TAMから+Y方向にシフトして基板上に形成され、-Y方向側のマークAM3が、目標位置座標TAMから-Y方向にシフトして基板上に形成された例を示している。この場合において、第1露光装置10では、マークAM1~AM3の位置の計測結果に基づいて、マークAM1~AM3と第1パターンP1とが目標位置関係になるように第1パターンP1を形成する(図5(b))。また、第2露光装置20では、マークAM1~AM3の位置の計測結果に基づいて、マークAM1~AM3と第2パターンP2とが目標位置関係になるように、第2パターンP2を形成する(図5(c))。この例では、マークAM1~AM3の目標位置座標TAMからのシフトに依存して、第1パターンP1および第2パターンP2が、その±Y方向の倍率が変更されて基板上に形成されることとなる。つまり、この例では、パターン全体の位置としての第2指標CSを許容範囲に収めることができるが、パターン全体の寸法としての第1指標を許容範囲に収めることができなくなる。
【0026】
従来例3
図6は、従来例3に係るパターン形成精度の低下を説明するための模式図である。従来例3では、図6(a)に示すように、3個のマークAM1~AM3が、目標位置座標TAMから一方向にシフトして基板上に形成された例を示している。この場合において、第1露光装置10では、マークAM1~AM3の位置の計測結果を用いずに、第1パターンP1を形成すべき目標位置座標を示す情報(設計データ)に基づいて、第1露光装置10の座標系のもとで第1パターンP1を形成する(図6(b))。一方、第2露光装置20では、マークAM1~AM3の位置の計測結果に基づいて、マークAM1~AM3と第2パターンP2とが目標位置関係になるように、第2パターンP2を形成する(図6(c))。この例では、第1パターンP1は、マークAM1~AM3のシフトに依存せずに基板上に形成されるが、第2パターンP2は、マークAM1~AM3のシフトに依存し、目標位置座標TP1からシフトして基板上に形成されることとなる。つまり、この例では、第1パターンP1と第2パターンP2との位置関係が目標位置関係からズレてしまい、パターン全体の寸法としての第1指標TP、およびパターン全体の位置としての第2指標CSを許容範囲に収めることができなくなる。
【0027】
[本実施形態のパターン形成処理]
本実施形態では、上述した従来のパターン形成での課題を解決するため、第1パターンP1および第2パターンP2の双方とも、目標位置座標を示す情報(例えば設計データ)に基づいて、各露光装置の座標系のもとで基板上に形成される。具体的には、第1露光装置10は、第1パターンP1を形成すべき目標位置座標を示す情報に基づいて、第1露光装置10の座標系における目標位置座標で基板上に第1パターンP1を形成する。同様に、第2露光装置20は、第2パターンP2を形成すべき目標位置座標を示す情報に基づいて、第2露光装置20の座標系における目標位置座標で基板上に第2パターンP2を形成する。
【0028】
ところで、形成システム100に用いられる複数の露光装置(第1露光装置10、第2露光装置20)では、装置固有の特性に個体差が生じていることがある。特性とは、例えば、装置座標系の誤差、基板ステージ上に搬送された基板の置き誤差など、装置固有に生じる誤差のことである。このように、第1露光装置10と第2露光装置20とに特性の個体差が生じていると、第1露光装置10で形成された第1パターンP1と第2露光装置20で形成された第2パターンP2との位置関係が目標位置関係からずれてしまう。その結果、パターン全体の寸法としての第1指標TP、およびパターン全体の位置としての第2指標CSが不十分になりうる(特に、第1指標TPが不十分になりうる)。
【0029】
そこで、本実施形態の形成システム100では、第1露光装置10の座標系のもとでマーク計測部13により計測されたマークAMの位置と、第2露光装置20の座標系のもとでマーク計測部23により計測されたマークAMの位置との差分を求める。そして、当該差分に基づいて、第2露光装置20の座標系のもとで基板上に形成される第2パターンP2の位置を決定(補正)する。具体的には、第1露光装置10と第2露光装置20とでのパターンの形成特性の個体差に起因する第1パターンP1と第2パターンP2との位置関係のずれが補正されるように、基板上に形成される第2パターンP2の位置を決定しうる。これにより、第1指標TPおよび第2指標CSのそれぞれが許容範囲に収まるように、第1パターンおよび第2パターンを基板上に形成することができる。
【0030】
以下に、本実施形態の形成システム100における基板上へのパターン形成処理(MMG技術)について、図7図8を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係る基板上へのパターン形成処理を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートの各工程は、主制御部40による制御のもとで実行されうる。また、図8は、マークAM、第1パターンP1および第2パターンP2が基板上に形成される様子を経時的に示す模式図である。
【0031】
S11では、搬送部30により基板Wを第1露光装置10に搬送する。
S12では、マークAMを形成すべき目標位置座標を示す情報(例えば設計データ)に基づいて、第1露光装置10の座標系のもとで、第1露光装置10のマーク形成部12により基板上にマークAMを形成する(マーク形成工程)。即ち、第1露光装置10の座標系における当該目標位置座標にマークAMを形成する。ここで、上述したように、マーク形成部12によるマークAMの形成精度は不十分であるため、マークAMは、目標位置座標に形成されず、目標位置座標からシフトした位置に形成されうる。本実施形態では、3個のマークAMが基板上に形成され、当該3個のマークAMには、X方向のシフト成分(配列ずれ成分の一例)とY方向の倍率成分(形状変化成分の一例)とを含む形成誤差が生じているものとする。
【0032】
S13では、第1露光装置10の座標系のもとで、第1露光装置10のマーク計測部13により、S12の工程で基板上に形成されたマークAMの位置を計測する(第1計測工程)。これにより、第1露光装置10の座標系におけるマークAMの位置座標を示すマーク座標情報C1を得ることができる。このマーク座標情報C1は、マーク計測部13で計測誤差が生じていないと仮定すると、第1露光装置10で固有に生じる誤差成分CM1と、マーク形成部12によるマークAMの形成誤差成分CMXとを有する。誤差成分CM1は、例えば、第1露光装置10における装置座標系の誤差、基板ステージ上への基板Wの置き誤差などを含み、X方向シフト、Y方向シフト、回転(θ方向)、X方向倍率およびY方向倍率の複数要素で表されうる。また、マークAMの形成誤差成分CMXも、誤差成分CM1と同様に複数要素で表されうるが、本実施形態ではX方向シフトおよびY方向倍率から成る。
【0033】
S14では、第1パターンP1を形成すべき目標位置座標を示す第1情報(例えば設計データ)に基づいて、第1露光装置10の座標系のもとで、第1露光装置10のパターン形成部11により基板上に第1パターンP1を形成する(第1形成工程)。即ち、S13の工程で得られたマーク座標情報C1(マーク計測部13での計測結果)を用いずに、第1露光装置10の座標系における当該目標位置座標に第1パターンP1を形成する。本工程によれば、図8(a)に示すように、第1情報の目標位置座標に対し、第1露光装置10における固有の誤差成分CM1は生じるが、マーク形成部12によるマークAMの形成誤差成分CMXに依存せずに第1パターンP1を基板上に形成することができる。
【0034】
S15では、搬送部30により第1露光装置10から第2露光装置20に基板Wを搬送するとともに、S13の工程で第1露光装置10により得られたマーク座標情報C1を第2露光装置20に転送(通知)する。本実施形態では、マーク座標情報C1の転送が、第2露光装置20への基板Wの搬送時に行われているが、それに限られず、S13とS17との間に行われればよい。
【0035】
S16では、第2露光装置20の座標系のもとで、第2露光装置20のマーク計測部23により、S12の工程で第1露光装置10のマーク形成部12により基板上に形成されたマークAMの位置を計測する(第2計測工程)。これにより、第2露光装置20の座標系におけるマークAMの位置座標を示すマーク座標情報C2を得ることができる。このマーク座標情報C2は、マーク計測部23で計測誤差が生じていないと仮定すると、第2露光装置20で固有に生じる誤差成分CM2と、マーク形成部12によるマークAMの形成誤差成分CMXとを有する。誤差成分CM2は、例えば、第2露光装置20における装置座標系の誤差、基板ステージ上への基板Wの置き誤差などを含み、X方向シフト、Y方向シフト、回転(θ方向)、X方向倍率およびY方向倍率の複数要素で表されうる。
【0036】
S17では、第2露光装置20の座標系のもとで第2パターンP2を基板上に形成する際に用いる補正値CVを求める。補正値CVは、第1露光装置10と第2露光装置20との特性の個体差、即ち、第1露光装置10で固有に生じる誤差と第2露光装置20で固有に生じる誤差との差を補正(低減)するためのものであり、以下の式(1)によって求められうる。式(1)では、S13の工程で第1露光装置10により得られたマーク座標情報C1と、S16の工程で第2露光装置20により得られたマーク座標情報C2との差分が、補正値CVとして求められうる。マーク座標情報C1およびマーク座標情報C2には、マークAMの形成誤差成分CMXが共通に含まれる。そのため、結果として、補正値CVは、第1露光装置10で固有に生じる誤差成分CM1と第2露光装置20で固有に生じる誤差成分CM2との差分となる。
CV=C2-C1
=(CM2+CMX)-(CM1+CMX)
=CM2-CM1 ・・・(1)
【0037】
S18では、第2パターンP2を形成すべき目標位置座標を示す第2情報(例えば設計データ)に基づいて、第2露光装置20の座標系のもとで、第2露光装置20のパターン形成部21により基板上に第2パターンP2を形成する(第2形成工程)。このとき、S17の工程で求めた補正値CVに基づいて、第2露光装置20の座標系のもとで基板上に形成される第2パターンP2の位置を決定する。具体的には、補正値CVによって第2情報の目標位置座標を補正し、それにより得られた位置座標に基づいて第2パターンP2を基板上に形成する。このように基板上に形成された第2パターンP2の誤差は、図8(b)に示すように、第2露光装置20における固有の誤差成分CM2から補正値CVを差し引いた誤差成分CM1のみとなる。即ち、第1パターンP1と第2パターンP2とで同様の誤差成分CM1とし、第1露光装置10と第2露光装置20との特性の個体差を補正(低減)することができる。その結果、パターン全体の寸法としての第1指標TP、およびパターン全体の位置としての第2指標CSをそれぞれ許容範囲に収めることができる。また、S19では、搬送部30により基板Wを第2露光装置20から搬出する。
【0038】
上述したように、本実施形態の形成システム100は、第1露光装置10で得られたマーク座標情報C1と第2露光装置20で得られたマーク座標情報C2との差分に基づいて、第2露光装置20により基板上に形成される第2パターンP2の位置を決定する。これにより、第1露光装置10と第2露光装置20との特性の個体差を補正(低減)し、MMG技術によるパターンの形成精度を向上させることができる。
【0039】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板に塗布された感光剤に上記の露光装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板を露光する工程)と、かかる工程で潜像パターンが形成された基板を現像(加工)する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0040】
<その他の実施例>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
10:第1露光装置、11:パターン形成部、12:マーク形成部、13:マーク計測部、20:第2露光装置、21:パターン形成部、23:マーク計測部、30:搬送部、40:主制御部、100:形成システム
図1
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図8