IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧 ▶ オートリブ日信ブレーキシステムジャパン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電動パーキングブレーキ装置 図1
  • 特許-電動パーキングブレーキ装置 図2
  • 特許-電動パーキングブレーキ装置 図3
  • 特許-電動パーキングブレーキ装置 図4
  • 特許-電動パーキングブレーキ装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】電動パーキングブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20240111BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240111BHJP
   F16D 66/00 20060101ALI20240111BHJP
   F16D 65/54 20060101ALI20240111BHJP
   F16D 65/22 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B60T17/22 C
B60T13/74 H
F16D66/00 Z
F16D65/54 M
F16D65/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022505769
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2020047372
(87)【国際公開番号】W WO2021181808
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2020043290
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】315019735
【氏名又は名称】日立Astemo上田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】プラネ サンディプ
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真梨
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0236234(US,A1)
【文献】特開2007-203821(JP,A)
【文献】特開2016-43798(JP,A)
【文献】特開2018-184093(JP,A)
【文献】特開2019-7537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/22
B60T 13/74
F16D 66/00
F16D 65/54
F16D 65/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のブレーキシュー(15,16)およびブレーキドラム(14)間の間隙を自動的に調整する制動間隙自動調整手段(18)と、一対の前記ブレーキシュー(15,16)を前記ブレーキドラム(14)に摺接させてパーキングブレーキ状態を得る作動位置ならびにパーキングブレーキ状態を解除する非作動位置間で作動可能なパーキングブレーキレバー(34)とを有するドラムブレーキ(B)と;前記パーキングブレーキレバー(34)を駆動する動力を発揮し得る電動アクチュエータ(38)と;その電動アクチュエータ(38)の作動を制御する制御ユニット(C)と;を備える電動パーキングブレーキ装置において、前記制御ユニット(C)は、パーキングブレーキ状態を得るまでの前記電動アクチュエータ(38)のアプライ作動時間が、予め定めたアプライ作動終了判定時間(T2)を超えたときに前記制動間隙自動調整手段(18)が異常であると判定することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
【請求項2】
前記電動アクチュエータ(38)への通電電流を検出する電流検出手段(64)を備え、前記制御ユニット(C)が、前記電動アクチュエータ(38)の作動開始に応じて生じる突入電流の前記電流検出手段(64)による検出値が予め定めた電流閾値(A0)を超えたときに前記制動間隙自動調整手段(18)の異常判定を実行することを特徴とする請求項1に記載の電動パーキングブレーキ装置。
【請求項3】
前記制御ユニット(C)は、前記突入電流の前記電流検出手段(64)による検出値が前記電流閾値(A0)以下であったときには前記電動アクチュエータ(38)のアプライ作動開始からのアプライ作動時間が予め定めた突入電流異常判定時間(T1)を超えていると判定したときに前記制動間隙自動調整手段(18)の異常判定を初期化することを特徴とする請求項2に記載の電動パーキングブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のブレーキシューおよびブレーキドラム間の間隙を自動的に調整する制動間隙自動調整手段と、一対の前記ブレーキシューを前記ブレーキドラムに摺接させてパーキングブレーキ状態を得る作動位置ならびにパーキングブレーキ状態を解除する非作動位置間で作動可能なパーキングブレーキレバーとを有するドラムブレーキと;前記パーキングブレーキレバーを駆動する動力を発揮し得る電動アクチュエータと;その電動アクチュエータの作動を制御する制御ユニットと;を備える電動パーキングブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような電動パーキングブレーキ装置は、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2016-175587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示されたものでは、一対のブレーキシューの一方にパーキングブレーキレバーが連結されており、パーキングブレーキレバーの作動に伴って制動間隙自動調整手段を介して他方のブレーキシューを拡開作動させることで、パーキングブレーキ状態を得るようにしているが、制動間隙自動調整手段で異常が生じていると、ブレーキシュー間およびブレーキドラム間の間隙が過大となってしまい、電動アクチュエータでパーキングブレーキレバーを作動位置側に駆動しても、必要なパーキングブレーキ力が得られなかったり、パーキングブレーキ状態を得るために時間がかかったりすることがある。このため制動間隙自動調整手段が正常に作動しているか否かを確認する必要がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、パーキングブレーキ状態を得る際に制動間隙自動調整手段の異常の有無を判定し得るようにした電動パーキングブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、一対のブレーキシューおよびブレーキドラム間の間隙を自動的に調整する制動間隙自動調整手段と、一対の前記ブレーキシューを前記ブレーキドラムに摺接させてパーキングブレーキ状態を得る作動位置ならびにパーキングブレーキ状態を解除する非作動位置間で作動可能なパーキングブレーキレバーとを有するドラムブレーキと;前記パーキングブレーキレバーを駆動する動力を発揮し得る電動アクチュエータと;その電動アクチュエータの作動を制御する制御ユニットと;を備える電動パーキングブレーキ装置において、前記制御ユニットは、パーキングブレーキ状態を得るまでの前記電動アクチュエータのアプライ作動時間が、予め定めたアプライ作動終了判定時間を超えたときに前記制動間隙自動調整手段が異常であると判定することを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記電動アクチュエータへの通電電流を検出する電流検出手段を備え、前記制御ユニットが、前記電動アクチュエータの作動開始に応じて生じる突入電流の前記電流検出手段による検出値が予め定めた電流閾値を超えたときに前記制動間隙自動調整手段の異常判定を実行することを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、第2の特徴の構成に加えて、前記制御ユニットは、前記突入電流の前記電流検出手段による検出値が前記電流閾値以下であったときには前記電動アクチュエータのアプライ作動開始からのアプライ作動時間が予め定めた突入電流異常判定時間を超えていると判定したときに前記制動間隙自動調整手段の異常判定を初期化することを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、パーキングブレーキ状態を得るための電動アクチュエータのアプライ作動時にパーキングブレーキ状態を得るまでの電動アクチュエータのアプライ作動経過時間が、アプライ作動判定時間を超えたときに制御ユニットは前記制動間隙自動調整手段が異常であると判定するので、パーキングブレーキ状態を得る際に制動間隙自動調整手段の異常の有無を判定することが可能となり、制動間隙自動調整手段のメンテナンスを速やかに行なうことができる。
【0010】
また本発明の第2の特徴によれば、電動アクチュエータの作動開始に応じて生じる突入電流が電流閾値を超えたときに制動間隙自動調整手段の異常判定を実行するので、突入電流が正常に生じている状態での制動間隙自動調整手段の異常判定を行なうことができ、電動アクチュエータやその他の故障に起因した異常判定と差別化することができる。
【0011】
さらに本発明の第3の特徴によれば、突入電流が電流閾値以下であったときには突入電流経過時間が突入電流判定時間を超えていると判定したときに制動間隙自動調整手段の異常判定を初期化するので、電動アクチュエータやその他の故障に起因して異常な突入電流が生じている状態での制動間隙自動調整手段の異常判定を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1はドラムブレーキ装置の正面図である。(第1の実施の形態)
図2図2はドラムブレーキの背面図である。(第1の実施の形態)
図3図3は電動アクチュエータを制御するための構成を示すブロック図である。(第1の実施の形態)
図4図4は制御手順を示すフローチャートである。(第1の実施の形態)
図5図5はパーキングブレーキ状態を得るまでの電流値の変化の一例を示す図である。(第1の実施の形態)
【符号の説明】
【0013】
14・・・ブレーキドラム
15,16・・・ブレーキシュー
18・・・制動間隙自動調整手段
34・・・パーキングブレーキレバー
38・・・電動アクチュエータ
64・・・電流検出手段
A0・・・電流閾値
B・・・ドラムブレーキ
C・・・制御ユニット
T1・・・突入電流異常判定時間
T2・・・アプライ作動終了判定時間
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、添付の図1図5を参照しながら説明する。
【第1の実施の形態】
【0015】
先ず図1において、四輪車両の車輪たとえば左後輪にドラムブレーキBが設けられており、このドラムブレーキBは、前記左後輪の車軸11を貫通させる貫通孔12を中央部に有する固定のバックプレート13と、前記左後輪とともに回転するブレーキドラム14の内周に摺接することを可能として前記バックプレート13内に配置される第1および第2のブレーキシュー15,16と、第1および第2のブレーキシュー15,16が拡張作動する力を発揮するようにして前記バックプレート13に固定されるホイールシリンダ17と、第1および第2のブレーキシュー15,16および前記ブレーキドラム14間の間隙を自動的に調整する制動間隙自動調整手段(所謂オートアジャスタ)18と、第1および第2のブレーキシュー15,16間に設けられるリターンスプリング19とを備える。
【0016】
第1および第2のブレーキシュー15,16は、前記ブレーキドラム14の内周に沿うようにして弓形の平板状に形成される第1および第2のウエブ15a,16aと、それらの第1および第2のウエブ15a,16aの外周に直交するように連設される第1および第2のリム15b,16bと、第1および第2のリム15b,16bの外周に貼着される第1および第2のライニング15c,16cとから成る。
【0017】
前記バックプレート13には、第1および第2のブレーキシュー15,16の拡張、収縮時の支点となるアンカープレート21が、第1および第2のウエブ15a,16aの一端部(この実施の形態では下端部)を回動可能に支持するようにして固設される。また前記ホイールシリンダ17は、ブレーキペダルで操作されるマスタシリンダ(図示せず)の出力液圧によって作動して、前記アンカープレート21を支点として第1および第2のブレーキシュー15,16を拡張する側に駆動する力を発揮するようにして、第1および第2のブレーキシュー15,16の他端部間で前記バックプレート13に固定されており、このホイールシリンダ17が備える一対のピストン20の外端部は、第1および第2のウエブ15a,16aの他端部(この実施の形態では上端部)に対向するように配置される。
【0018】
第1および第2のウエブ15a,16aの前記一端部間には、それらの第1および第2のウエブ15a,16aの前記一端部を前記アンカープレート21側に付勢するコイルスプリング22が設けられ、第1および第2のウエブ15a,16aの他端部間には、第1および第2のブレーキシュー15,16を収縮方向に付勢する一対の前記リターンスプリング19が設けられる。
【0019】
前記制動間隙自動調整手段18は、第1および第2のブレーキシュー15,16が有する第1および第2のウエブ15a,16a間に設けられるとともにアジャストギヤ23の回動によって伸長し得る収縮位置規制ストラット24と、前記アジャストギヤ23に係合する送り爪25aを有して第1および第2のブレーキシュー15,16のうち第2のブレーキシュー16の前記第2のウエブ16aに回動可能に支持されるアジャストレバー25と、前記収縮位置規制ストラット24を伸長させる方向に前記アジャストギヤ23を回動させる側に前記アジャストレバー25を回動付勢するアジャストスプリング26とで構成される。
【0020】
前記収縮位置規制ストラット24は、第1および第2のブレーキシュー15,16の収縮位置を規制するものであり、第1および第2のブレーキシュー15,16のうち第1のブレーキシュー15が備える前記第1のウエブ15aの前記他端部寄りに係合する第1係合連結部27aを有する第1ロッド27と、第2のブレーキシュー16が備える第2のウエブ16aの前記他端部寄りに係合する第2係合連結部28aを有して第1ロッド27と同軸に配置される第2ロッド28と、第1ロッド27に一端部が軸方向相対移動可能に挿入されるとともに第2ロッド28に他端部が同軸に螺合されるアジャストボルト29とを有しており、前記アジャストギヤ23は、第1および第2ロッド27,28間に配置されて前記アジャストボルト29の外周に形成される。
【0021】
第1のウエブ15aの前記他端部寄りの前記車軸11側に臨む側縁には、第1係合連結部27aを係合させる第1係止凹部30が設けられ、また第2のウエブ16aの前記他端部寄りの前記車軸11側に臨む側縁には、第2係合連結部28aを係合させる第2係止凹部31が設けられる。
【0022】
前記アジャストギヤ23に係合する送り爪25aを有するアジャストレバー25は、前記第2のウエブ16aに支軸32を介して回動可能に支持され、前記第2のウエブ16aおよび前記アジャストレバー25間に前記アジャストスプリング26が設けられる。しかも前記アジャストスプリング26のばね力は、前記リターンスプリング19のばね力よりも小さく設定される。
【0023】
このような制動間隙自動調整手段18によれば、第1および第2のブレーキシュー15,16が前記ホイールシリンダ17の作動によって拡張作動する際に前記第1および第2のライニング15c,16cの摩耗に起因して一定値以上拡張した場合には、前記アジャストスプリング26のばね力によって前記アジャストレバー25が前記支軸32の軸線まわりに回動し、それによって前記アジャストギヤ23が回動するのに応じて前記収縮位置規制ストラット24の有効長さが増加補正される。
【0024】
ところで、このドラムブレーキBは、作動に応じてパーキングブレーキ力を発生させ得るパーキングブレーキレバー34を備えており、このパーキングブレーキレバー34は、第1のブレーキシュー15における前記第1のウエブ15aの一部に、前記ブレーキドラム14の回転軸線に沿う方向での正面視(図1で示す方向)で重なるように配置され、前記第1のウエブ15aの長手方向に沿って長く延びる。
【0025】
前記パーキングブレーキレバー34の一端部(この実施の形態では下端部)には、ブレーキケーブル37の一端部に固定された係合駒36が係合され、前記パーキングブレーキレバー34の他端部(この実施の形態では上端部)は、第1のブレーキシュー15における前記第1のウエブ15aの他端部にピン35を介して連結される。
【0026】
車両のパーキングブレーキ作動時には、前記ブレーキケーブル37から入力される牽引力により、前記パーキングブレーキレバー34が前記ピン35を支点として図1の反時計方向に回動、駆動されるものであり、このパーキングブレーキレバー34の回動によって、第2のブレーキシュー16に、当該ブレーキシュー16が有する前記第2のライニング16cを前記ブレーキドラム14の内周に圧接させる方向の力が前記収縮位置規制ストラット24を介して作用する。さらに前記パーキングブレーキレバー34が図1の反時計方向に続けて回動、駆動されると、前記パーキングブレーキレバー34が前記収縮位置規制ストラット24の第1係合連結部27aとの係合部を支点として回動し、今度は、前記ピン35を介して第1のブレーキシュー15が拡張作動し、第1のブレーキシュー15の前記第1のライニング15cが前記ブレーキドラム14の内周に圧接することになる。すなわち前記パーキングブレーキレバー34は、第1および第2のブレーキシュー15,16の前記第1および第2のライニング15c,16cが前記ブレーキドラム14の内周に圧接するようにした作動位置に作動し、この状態でパーキングブレーキ状態が得られることになる。
【0027】
また前記ブレーキケーブル37を緩めることで前記パーキングブレーキレバー34に対する回動駆動力の付与を停止したときには、前記ブレーキドラム14の内周から離反する方向に前記リターンスプリング19のばね力によって作動する第1および第2のブレーキシュー15,16とともに前記パーキングブレーキレバー34は非作動位置に戻ることになり、前記パーキングブレーキレバー34は非作動位置側に向けて付勢されている。
【0028】
図2を併せて参照して、前記ブレーキケーブル37は、電動アクチュエータ38が発揮する動力で牽引されるものであり、この電動アクチュエータ38は、前記ブレーキケーブル37に連結されるねじ軸39と、当該ねじ軸39をその回転を阻止しつつ軸線方向の往復運動を可能として支持するアクチュエータケース40と、正逆回転を自在として前記アクチュエータケース40内に収容される電動モータ41と、その電動モータ41で発生する回転運動を前記ねじ軸39の直線運動に変換することを可能としつつ前記電動モータ41および前記ねじ軸39間に介設されて前記アクチュエータケース40に収容される運動変換機構(図示せず)とを備える。
【0029】
この電動アクチュエータ38の前記アクチュエータケース40は、前記ホイールシリンダ17とは反対側で前記バックプレート13に取付け部材43を介して取付けられる。前記取付け部材43は、前記アクチュエータケース40に固着されており、この取付け部材43が複数個たとえば3個のボルト44で前記バックプレート13に締結される。
【0030】
前記電動アクチュエータ38の前記ねじ軸39は、ケーブルジョイント51を介して前記ブレーキケーブル37に連結されており、そのねじ軸39および前記ブレーキケーブル37の連結部は、前記アクチュエータケース40に結合される保護筒50で覆われる。
【0031】
前記バックプレート13の下部の車両前後方向に沿う前部には筒部13aが一体に突設されており、前記ブレーキケーブル37は、前記筒部13aから前記バックプレート13内に導入される。また前記保護筒50および前記筒部13a間で前記ブレーキケーブル37は、鉄製の線材をコイル状に巻回して成るアウターケーブル45で覆われる。そのアウターケーブル45の前記電動アクチュエータ38側の端部は、ガイドチューブ52を介して前記保護筒50に取付けられ、前記アウターケーブル45の前記バックプレート13側の端部はガイドチューブ53を介して前記筒部13aに取付けられる。
【0032】
また前記第1および第2のウエブ15a,16aの一端部間で、前記アンカープレート21を前記バックプレート13との間に挟む押さえ板46が、前記アンカープレート21とともに一対のリベット47によって前記バックプレート13の下部に取付けられ、前記押さえ板46に、前記アウターケーブル44とともに前記ブレーキケーブル37をガイドするガイド部46aが、略U字状の横断面形状を有するようにして一体に設けられる。
【0033】
図3において、前記電動アクチュエータ38における前記電動モータ41には、電源61の電力が駆動回路62を介して供給されるものであり、前記電動モータ41の作動すなわち前記駆動回路62の作動は制御ユニットCで制御される。この制御ユニットCには、車両ユーザーが電動アクチュエータ38の作動によってパーキングブレーキ状態を得るための操作を行なったことを検出してパーキングブレーキ状態を得るための信号を出力する指示手段63と、前記電動モータ41への通電電流を検出する電流検出手段64と、前記制御ユニットCによる前記制動間隙自動調整手段18の異常判定ならびに突入電流の異常判定の結果を報知する報知手段65とが接続される。
【0034】
パーキングブレーキ状態を得る際に、前記制御ユニットCは図4で示す手順に従って前記制動間隙自動調整手段18の異常判定ならびに突入電流の異常判定を実行するものであり、前記電動アクチュエータ38がパーキングブレーキ状態を得るようにしたアプライ作動状態にあるとステップS1で判断した後のステップS2では、前記電流検出手段64で検出した電流値A(n)を取得し、次のステップS3でタイマのカウントを実行した後にステップS4に進む。このステップS4でフラグFが「1」であるか否かを判断するが、このフラグFは、前記電動アクチュエータ38の作動開始に応じて生じる突入電流が正常であったか否かを判定するためのものであり、フラグFが「0」であると判定したときには、ステップS4からステップS5に進み、前記電流検出手段64による検出値すなわちステップS2で取得した電流値A(n)が予め定めた電流閾値A0を超えるか否かを判定する。
【0035】
すなわち図5で示すように、通電開始時刻t1から生じると突入電流が予め定めた電流閾値A0を超えるか否かで突入電流が正常に生じたか否かを判定しており、ステップS5でA(n)>A0であることを確認したときには、ステップS5からステップS6に進み、突入電流が正常に生じたとしてフラグFを「1」に設定した後にステップS2に戻る。またステップS5でA(n)≦A0であると判定したときには、ステップS5からステップS7に進んでフラグFを「0」とし、次のステップS8で、アプライ作動時間すなわち図5の時刻t1からの経過時間が予め定めた突入電流異常判定時間T1を超えるか否かを判定し、突入電流異常判定時間T1以下であると判定したときにはステップS2に戻る。
【0036】
ステップS4においてフラグFが「1」であることを確認したときには、ステップS4からステップS9に進み、電動アクチュエータ38のアプライ作動が終了してパーキングブレーキ状態が得られたか否かを判断する。このアプライ作動の終了は、たとえば電動モータ41の正転作動によって一対のブレーキシュー15,16のライニング15c,16cがブレーキドラム14に圧接することで前記電動モータ41の回転負荷が設定値となるときの電流値を前記電流検出手段64が検出することで判断する。
【0037】
ステップS9において、前記電動アクチュエータ38のアプライ作動が終了せず、パーキングブレーキ状態が得られていないと判断したときには、ステップS2に戻り、前記電動アクチュエータ38のアプライ作動が終了したと判断したときにはステップS9からステップS10に進む。このステップS10では、パーキングブレーキ状態を得るまでの前記電動アクチュエータ38のアプライ作動経過時間が予め定めたアプライ作動終了判定時間T2以上となったか否かを判定する。このステップS10において、たとえば図4の鎖線で示すように、時刻t1から時刻t2までの前記アプライ作動終了判定時間T2以上となって前記電動アクチュエータ38のアプライ作動が終了したと判断したときには、ステップS11において制動間隙自動調整手段18が異常であると定め、その旨をステップS12において報知手段65によって報知する。
【0038】
またステップS10において、図4の実線で示すように、時刻t1から時刻t2までの前記アプライ作動終了判定時間T2未満の経過時間で前記電動アクチュエータ38のアプライ作動が終了したと判断したときには、ステップS13において制動間隙自動調整手段18が正常であると定め、その旨をステップS14において報知手段65によって報知し、さらにステップS15でタイマカウント値を「0」として前記制動間隙自動調整手段18の異常判定を初期化する。
【0039】
また突入電流が生じている状態で、ステップS2で取得した電流値A(n)が電流閾値A0以下である状態が突入電流異常判定時間T1を超えても持続しているとステップS8で判定したときには、ステップS16において突入電流が異常であると定め、ステップS16からステップS15に進んでタイマカウント値を「0」に定め、前記制動間隙自動調整手段18の異常判定を初期化する。
【0040】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、パーキングブレーキレバー34を駆動する動力を発揮し得る電動アクチュエータ38の作動を制御する制御ユニットCが、パーキングブレーキ状態を得るまでの前記電動アクチュエータ38のアプライ作動経過時間が、予め定めたアプライ作動終了判定時間T2を超えたときに制動間隙自動調整手段18が異常であると判定するので、パーキングブレーキ状態を得る際に前記制動間隙自動調整手段18の異常の有無を判定することが可能となり、前記制動間隙自動調整手段18のメンテナンスを速やかに行なうことができる。
【0041】
また前記制御ユニットCは、前記電動アクチュエータ38の作動開始に応じて生じる突入電流の電流検出手段64による検出値A(n)が予め定めた電流閾値A0を超えたときに前記制動間隙自動調整手段18の異常判定を実行するので、突入電流が正常に生じている状態での制動間隙自動調整手段18の異常判定を行なうことができ、前記電動アクチュエータ38やその他の故障に起因した異常判定と差別化することができる。
【0042】
さらに前記制御ユニットCは、前記突入電流の前記電流検出手段64による検出値が電流閾値A0以下であったときには前記電動アクチュエータ38のアプライ作動開始からのアプライ作動時間が予め定めた突入電流異常判定時間T1を超えていると判定したときに前記制動間隙自動調整手段の異常判定を初期化するので、前記電動アクチュエータ38やその他の故障に起因して異常な突入電流が生じている状態での前記制動間隙自動調整手段18の異常判定を避けることができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5