(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】フレット付き弦楽器演奏補助具、及びフレット付き弦楽器を演奏する方法
(51)【国際特許分類】
G10G 7/00 20060101AFI20240111BHJP
G09B 15/06 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G10G7/00
G09B15/06
(21)【出願番号】P 2023089455
(22)【出願日】2023-05-31
【審査請求日】2023-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523204097
【氏名又は名称】松下 康広
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 康広
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0262057(US,A1)
【文献】特開2000-352924(JP,A)
【文献】特開2004-069998(JP,A)
【文献】特開2018-128653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 7/00
G09B 15/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1指の爪からMP関節の下部にわたって、該第1指の表側に装着するように構成される、補助具本体と、
前記補助具本体を前記第1指に固定可能なように設けられる、固定部材と、
を備え
、
前記補助具本体は、末節骨カバー領域、基節骨カバー領域、及びMP関節下部カバー領域を有し、
前記末節骨カバー領域は、前記第1指の前記爪から、末節骨及び基節骨の間のIP関節までをカバーする領域であり、
前記基節骨カバー領域は、前記第1指の前記IP関節から、前記基節骨及び中手骨の間の前記MP関節までをカバーする領域であり、
前記MP関節下部カバー領域は、前記MP関節から前記MP関節の下部までをカバーする領域であり、
前記補助具本体の裏側の形状は、脱力して伸ばした第1指の表側の形状と略同じであり、
前記固定部材は、前記基節骨カバー領域と前記第1指の基節骨を固定可能なように設けられる、フレット付き弦楽器演奏補助具。
【請求項2】
前記補助具本体の前記基節骨カバー領域に、前記固定部材を固定可能な固定部材固定部をさらに有する、請求項
1に記載のフレット付き弦楽器演奏補助具。
【請求項3】
前記固定部材は弾性材料であり、前記固定部材固定部は前記
固定部材を通すことができる孔部である、請求項
2に記載のフレット付き弦楽器演奏補助具。
【請求項4】
請求項1に記載のフレット付き弦楽器演奏補助具を
使用する方法であって、
前記フレット付き弦楽器演奏補助具の前記固定部材を第1指の基節骨に固定することによって、前記フレット付き弦楽器演奏補助具を第1指に固定するステップと、
前記固定されたフレット付き弦楽器演奏補助具を装着したまま、フレット付き弦楽器を演奏するステップと、
を含む、フレット付き弦楽器
演奏補助具を
使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレット付き弦楽器演奏補助具、及び、該フレット付き弦楽器演奏補助具を用いてフレット付き弦楽器を演奏する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギター、ウクレレ等に代表される、フレット付き弦楽器の演奏において、初心者が技術的に乗り越えるべき「壁」の1つに、指で弦を指板に確実に押し付けて、弦の振動をフレットで正しく受け止めて鳴らすことができる、というものがある。特に、バレー又はセーハと呼ばれる奏法において、指1本で複数の弦を同時に押圧(押弦)することは、難易度が高く、訓練が必要とされる。
【0003】
指1本で複数の弦を同時に押圧(押弦)する場合、各弦から押し戻される力が強く、特に、指の力が弱いか正しいフォームで効果的に押すことができない初心者には、長時間の訓練が必要であった。
【0004】
そのような長時間の訓練において、人差し指(第2指)の腹の痛みが発生することも多いため、該痛みを緩和する補助具を利用することが知られている(特許文献1参照)。
また、弦を押さえること自体を補助する演奏補助具を利用することも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3235946公報
【文献】特開2019-211606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような痛み緩和のための補助具は、第2指の痛みを緩和するだけであり、バレー奏法に求められる正しい手指の形を体得するには、痛み緩和のための補助具がない場合と同等の訓練を要することに変わりはない。また、痛み緩和のための補助具を人差し指(第2指)に装着して演奏すると、弦を指以外の材質の補助具で押さえるため、音質が変わってしまったり、バレー奏法を必要としない部分の演奏に支障を来たしてしまったり、という課題があった。
特許文献2のような弦を押すこと自体を補助する演奏補助具は、そもそも指の訓練にならないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、演奏指導者でもある発明者は上記課題を鑑みて鋭意検討し、フレット付き弦楽器の演奏練習において、特にバレー奏法のための指の訓練を効率的かつ効果的に行うことができ、かつ、演奏に支障がない、フレット付き弦楽器演奏補助具を発明するに至った。
【0008】
本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具は、第1指の爪からMP関節の下部にわたって、該第1指の表側に装着するように構成される、補助具本体と、前記補助具本体を前記第1指に固定可能なように設けられる、固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記補助具本体は、末節骨カバー領域、基節骨カバー領域、及びMP関節下部カバー領域を有し、前記末節骨カバー領域は、前記第1指の前記爪から、末節骨及び基節骨の間のIP関節までをカバーする領域であり、前記基節骨カバー領域は、前記第1指の前記IP関節から、前記基節骨及び中手骨の間の前記MP関節までをカバーする領域であり、前記MP関節下部カバー領域は、前記MP関節から前記MP関節の下部までをカバーする領域であり、前記補助具本体の内側の形状は、脱力して伸ばした第1指の表側の形状と略同じであり、前記固定部材は、前記基節骨カバー領域と前記第1指の基節骨を固定可能なように設けられることが望ましい。
【0010】
前記補助具本体は、変形しにくい材料で作られることが望ましい。
【0011】
前記補助具本体の前記基節骨カバー領域に、前記固定部材を固定可能な固定部材固定部をさらに有することが望ましい。
【0012】
前記固定部材は弾性材料であり、前記固定部材固定部は前記弾性部材を通すことができる孔部であってもよい。
【0013】
本発明のフレット付き弦楽器を演奏する方法は、上記フレット付き弦楽器演奏補助具を用い、前記フレット付き弦楽器演奏補助具の前記固定部材を第1指の基節骨に固定することによって、前記フレット付き弦楽器演奏補助具を第1指に固定するステップと、前記固定されたフレット付き弦楽器演奏補助具を装着したまま、フレット付き弦楽器を演奏するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、フレット付き弦楽器の演奏練習において、特にバレー奏法のための指の訓練をすることができ、かつ、演奏に支障がない、フレット付き弦楽器演奏補助具を提供することができる。また、該フレット付き弦楽器演奏補助具を用いて、演奏や音質に支障なくフレット付き弦楽器を演奏する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の補助具本体の側面図の一例である。
【
図2】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の補助具本体の上面図(表側)の一例である。
【
図3】
図3(a)は本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の上面図(表側)、
図3(b)は底面図(裏側)の一例である。
【
図4】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の補助具本体の側面図の3D表示の一例である。
【
図5】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の補助具本体の斜視図の3D表示の一例である。
【
図6】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の補助具本体の斜視図(表側)の3D表示の一例である。
【
図7】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の補助具本体の斜視図(裏側)の3D表示の一例である。
【
図8】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の補助具本体の斜視図の3D表示の一例である。
【
図9】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の補助具本体の上面図(表側)の3D表示の一例である。
【
図10】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具の補助具本体の側面図の3D表示の他の一例である。
【
図11】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具を第1指に装着した概要図の一例である。
【
図12】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具を第1指に装着して弦楽器を演奏したときの写真の一例である。
【
図13】本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具を第1指に装着して弦楽器を演奏したときの写真の他の一例である。
【
図14】第1指(親指)の骨及び関節を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、以下に具体的に符号を付して説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具Aは、補助具本体1と固定部材2を備えるものである(
図1~
図13参照)。
【0018】
フレット付き弦楽器とは、フレットの付いた弦楽器である。
フレットとは、弦楽器の指板に複数ある柱状の隆起であり、フレットとフレットとの間において指で弦を押圧(押弦)することにより、弦の振動を手前のフレットで止めることで目的の音の高さを出すことができる。
弦楽器とは、弦に何らかの刺激を与えることによって得られる弦の振動を、音とする楽器の総称である。弦楽器には、撥弦楽器(弦を指、爪、またはそれに変わるものではじくもの)、擦弦楽器(弦を弓のつるで擦るもの)等があり、撥弦楽器はフレットを備えるものが多い。擦弦楽器はフレットを備えるものは少ないが、備えるものもある。
【0019】
フレット付き弦楽器には、ギター、ウクレレ、バンジョー、マンドリン、ベース、三味線、三線(蛇皮線)、ウッドベース、二胡、タール、琵琶、リュート等が例示される。
【0020】
補助具本体1は、第1指(母指、親指)3の爪からMP関節(中手指節関節、基節骨と中手骨の間の関節)の下部までの表側に装着するように構成される。本明細書で指の「表側」とは、手の甲に繋がる第1指の面をいう。
【0021】
補助具本体1は、末節骨カバー領域1a、基節骨カバー領域1b、及びMP関節下部カバー領域1cを有する。
末節骨カバー領域1aは、第1指の爪から、末節骨及び基節骨の間のIP関節(指節間関節、爪に近い関節)までをカバーする領域である。基節骨カバー領域1bは、第1指のIP関節から、基節骨及び中手骨の間のMP関節(爪からみて2番目の関節)までをカバーする領域である。MP関節下部カバー領域1cは、MP関節からMP関節の下部(中手骨の上部)までをカバーする領域である。MP関節下部カバー領域1cのMP関節に対応する位置から補助具本体1の下端部までの長さは、適宜設定されるが、0.5cm~2.0cmの範囲が例示される。
【0022】
補助具本体1の裏側の形状は、脱力して伸ばした第1指の表側の形状と略同じである。すなわち、末節骨カバー領域1a及び基節骨カバー領域1bの角度は、140°~160°程度、好ましくは145°~155°程度に調整される。また、基節骨カバー領域1b及びMP関節下部カバー領域1cの角度は、170°~180°(ほぼ直線)程度に調整される。
【0023】
補助具本体1の表側の形状は、裏側の形状とほぼ同じでもよいし、演奏時に邪魔にならない形状であれば特に限定されない。また、補助具本体1の厚みは、材料によるが、使用時に割れにくい1.0mm~3.0mm程度、好ましくは1.5cm~2.5cm程度が例示される。補助具本体1の周縁部は、指や爪に当たったときに痛くないように、面取り形状や曲線状にすることが望ましい。
【0024】
補助具本体1は、変形しにくい材料で作られることが望ましい。材料として、合成樹脂、強化樹脂、木材、動植物、金属等のうち、変形しにくいもの、かつ、好ましくは軽量のものが選択される。演奏中の第1指の動きが、脱力して伸ばした第1指の形から大きく逸脱するときに、第1指の形を矯正するように、変形しにくいものがよい。また、第1指の形を矯正しながら全体を演奏するため、軽量のものがよい。
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)を含むポリオレフィン、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリスチロール(PS)、ポリエステル(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)を含むポリオレフィン、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリスチロール(PS)、ポリエステル(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等)、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(UF)、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)等)が例示される。
強化樹脂として、カーボンファイバー強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂、セルロース繊維強化樹脂等が例示される。
補助具本体1は、材料1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。補助具本体1は変形しにくく軽量であれば、複数パーツを組み合わせてもよいし、一体的に成形してもよい。補助具本体1の長手方向のサイズは、5cm~7cm程度であるため、3Dプリンタで成形してもよい。また、補助具本体1の材料には、安定化剤、着色剤等の各種添加剤を配合してもよいし、接着剤やコーティング剤を塗布してもよい。
【0025】
補助具本体1には、後述する固定部材2を固定可能な、固定部材固定部1hをさらに有してもよい。
固定部材固定部1hは、固定部材2の形状や材質により、適宜形成される。固定部材2が弾性材料である場合、固定部材固定部1hは、該弾性材料の固定部材2を通すことができる孔部を設けること等が例示される。
固定部材2が平板状のゴムバンド(繊維にゴムが編みこまれたもの)の場合は、基節骨カバー領域1bの2か所に、固定部材固定部1hの孔部を該ゴムバンド2枚重ねた幅及び厚み程度(若干広めもしくは狭め)に設け、一方の固定部材固定部1hに固定部材2を補助具本体1の表面側から通し、他方の固定部材固定部1hに補助具本体1の裏面側から表面側へ通し、さらに、補助具本体1の裏側から該一方の固定部材固定部1hに固定部材2を表側に通すことにより、フレット付き弦楽器演奏補助具を作製することができる(
図3(a)、
図3(b)、
図11~
図13等参照)。該一方の固定部材固定部1hには固定部材2が2つ貫通するが、平板状のゴムバンドの表面の繊維の摩擦により、固定部材2は第1指の基節骨を固定することができる。
【0026】
固定部材固定部1hとしては、固定部材2の形状により、引っ掛け部や引っ掛け金具等であってもよい。また、固定部材2が面ファスナーやその他各種弾性材料である場合も、固定部材固定部1hを適宜の形状の孔部としてもよい。
【0027】
固定部材2は、補助具本体1を第1指に固定可能なように設けられる。好ましくは、基節骨カバー領域1bと第1指の基節骨を固定するように設けられる。
固定部材2は、長さ調整が簡単である、伸縮可能な弾性材料であることが望ましい。平板状のゴムバンド等、弾性材料が含まれる伸縮可能な材料が例示される。
また、固定部材2は、ベルトとバックル、複数本の紐、布、テープ、柔らかい樹脂等でもよい。固定部材2単独では固定できない場合は、固定部材固定部1hを利用して固定する。
【0028】
本発明のフレット付き弦楽器を演奏する方法は、上述したフレット付き弦楽器演奏補助具Aの固定部材2を第1指の基節骨に固定することによって、フレット付き弦楽器演奏補助具Aを第1指に固定するステップと、固定されたフレット付き弦楽器演奏補助具Aを装着したまま、フレット付き弦楽器を演奏するステップと、を含むものである。
【0029】
フレット付き弦楽器演奏補助具Aを第1指に固定するステップは、補助具本体1を固定部材2で第1指の基節骨に固定するステップである。
【0030】
固定部材2が平板状のゴムバンドである場合は、該ゴムバンドの間に、下から第1指を通し、第1指の爪の先が補助具本体1の末節骨カバー領域1aの端部周辺に当たるようにし、IP関節が末節骨カバー領域1aと基節骨カバー領域1bの境目の凹部に当たるようにし、MP関節が基節骨カバー領域1bとMP関節下部カバー領域1cの境目に当たるようにして、該ゴムバンドを引っ張り、補助具本体1を第1指の基節骨に動かないように固定する(
図11、
図12等参照)。
固定部材2が他の形状や材料である場合も、必要に応じて固定部材固定部1hとともに、補助具本体1を第1指の基節骨に動かないように固定する。
【0031】
固定されたフレット付き弦楽器演奏補助具Aを装着したまま、フレット付き弦楽器を演奏するステップは、バレー奏法が必要な場合も不要な場合も含め、通常の演奏に支障を来たすことなくフレット付き弦楽器を演奏するステップである(
図12、
図13参照)。
本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具Aは、第1指の訓練を主眼においているため、フレット奏法が必要なときには、第1指が必要以上に反らないように矯正され、フレット奏法が不要な他の奏法のときは、第1指を補助具本体1より内側に曲げられる(すなわち、第1指の末節骨は、末節骨カバー領域1aより内側に曲がる。
図13参照。)。また、フレット奏法の有無にかかわらず、第2指(人差し指)や、第3指(中指)、第4指(薬指)、第5指(小指)にフレット付き弦楽器演奏補助具Aの影響はないため、音質にも演奏練習にも影響はない。
【0032】
本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具Aの着眼点は、特にフレット奏法において第2指(人差し指)の押圧の弱さや不具合の原因が、第2指よりも第1指(親指)の形にあると考え、演奏練習中に第1指の角度等の形状の矯正を行う点にある。多くの初心者が陥りやすいのが、フレット奏法において第2指で複数の弦を押さえるときに、第1指のIP関節が必要以上に反り返ってしまうということである。この矯正を行うメカニズムは、概ね以下のとおりである。第1指のIP関節が、補助具本体1の末節骨カバー領域1a及び基節骨カバー領域1bの角度より反り返った場合は、まず、第1指の爪の先が補助具本体1を押す。変形しにくい補助具本体1の末節骨カバー領域1aが反り返った爪から受けた力により、MP関節下部カバー領域1cと第1指の中手骨の上部が接触し、この接触で該中手骨の上部が補助具本体1を押し返す。該中手骨の上部により補助具本体1のMP関節下部カバー領域1cを押し返した力は、再び補助具本体1の末節骨カバー領域1aに伝達され、該第1指の爪の先を強く押し返す。このメカニズムで訓練を繰り返すことにより、第1指のIP関節が必要以上に反り返らなくなり、正しい第1指の形に近づき、フレット奏法を克服できるようになる、というものである。
フレット付き弦楽器演奏補助具Aを使用していても、他の奏法においては、第1指のIP関節を補助具本体1の角度か、より内側に曲げるため、MP関節下部カバー領域1cと第1指の中手骨の上部が接触することもなく、フレット付き弦楽器演奏補助具Aと関係なく演奏練習することが可能である。
さらに、フレット奏法であってもなくても、第2指(人差し指)、第3指(中指)、第4指(薬指)、第5指(小指)へのフレット付き弦楽器演奏補助具Aの演奏への影響はない。
【0033】
なお、本発明のフレット付き弦楽器演奏補助具Aは、指板を押さえる手の第1指に装着するものであり、左手用を念頭に置いて明細書や図面を記載したが、右手用であってもよい。
【0034】
本発明は以下に示した項目の構成を有し得る。
[項1]
第1指の爪からMP関節の下部にわたって、該第1指の表側に装着するように構成される、補助具本体と、
前記補助具本体を前記第1指に固定可能なように設けられる、固定部材と、
を備える、フレット付き弦楽器演奏補助具。
[項2]
前記補助具本体は、末節骨カバー領域、基節骨カバー領域、及びMP関節下部カバー領域を有し、
前記末節骨カバー領域は、前記第1指の前記爪から、末節骨及び基節骨の間のIP関節までをカバーする領域であり、
前記基節骨カバー領域は、前記第1指の前記IP関節から、前記基節骨及び中手骨の間の前記MP関節までをカバーする領域であり、
前記MP関節下部カバー領域は、前記MP関節から前記MP関節の下部までをカバーする領域であり、
前記補助具本体の裏側の形状は、脱力して伸ばした第1指の表側の形状と略同じであり、
前記固定部材は、前記基節骨カバー領域と前記第1指の基節骨を固定可能なように設けられる、上記項1に記載のフレット付き弦楽器演奏補助具。
[項3]
前記補助具本体は、変形しにくい材料で作られる、上記項1又は2に記載のフレット付き弦楽器演奏補助具。
[項4]
前記補助具本体の前記基節骨カバー領域に、前記固定部材を固定可能な固定部材固定部をさらに有する、上記項1~3いずれか一項に記載のフレット付き弦楽器演奏補助具。
[項5]
前記固定部材は弾性材料であり、前記固定部材固定部は前記弾性部材を通すことができる孔部である、上記項4に記載のフレット付き弦楽器演奏補助具。
[項6]
上記項1~5いずれか一項に記載のフレット付き弦楽器演奏補助具を用いて、フレット付き弦楽器を演奏する方法であって、
前記フレット付き弦楽器演奏補助具の前記固定部材を第1指の基節骨に固定することによって、前記フレット付き弦楽器演奏補助具を第1指に固定するステップと、
前記固定されたフレット付き弦楽器演奏補助具を装着したまま、フレット付き弦楽器を演奏するステップと、
を含む、フレット付き弦楽器を演奏する方法。
【符号の説明】
【0035】
A フレット付き弦楽器演奏補助具
1 補助具本体
1a 末節骨カバー領域
1b 基節骨カバー領域
1c MP関節下部カバー領域
1h 固定部材固定部
2 固定部材
3 第1指(母指、親指)
【要約】 (修正有)
【課題】フレット付き弦楽器の演奏練習において、特にバレー奏法のための指の訓練をすることができ、かつ、演奏に支障がない、フレット付き弦楽器演奏補助具及びそれを用いてフレット付き弦楽器を演奏する方法を提供する。
【解決手段】フレット付き弦楽器演奏補助具Aは、第1指の爪からMP関節の下部にわたって、該第1指の表側に装着するように構成される補助具本体1と、補助具本体1を第1指に固定可能なように設けられる固定部材2と、を備える。
【選択図】
図3