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特許7417799磁性粒子を使って生体分子を固定化するデバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】磁性粒子を使って生体分子を固定化するデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/34 20060101AFI20240112BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240112BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01N1/34
G01N1/28 J
C12M1/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020515183
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018059543
(87)【国際公開番号】W WO2019057345
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】62/562,647
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509223601
【氏名又は名称】キアゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティートケ、ハンス - ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】クインテル、ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】ルッツェ、コンスタンティン
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063690(WO,A1)
【文献】特開2005-233931(JP,A)
【文献】特開2016-117032(JP,A)
【文献】特開2004-283728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0108392(US,A1)
【文献】特開2014-054633(JP,A)
【文献】特開2011-180111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
C12M 1/00-3/10
G01R 33/383
B03C 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子(4)を用いて生体分子を可逆的に固定化し、前記生体分子を含む液体で満たすことができる容器(5、51)と、磁性粒子と、前記容器(5、51)が挿入可能な磁石(3)とを備え、それにより、前記生体分子を固定化できる、具体的には可逆的に固定化できる前記磁性粒子(4)を、前記容器(5、51)内に固定できるように、前記磁石(3)が、前記容器(5、51)に面して配置されるデバイス(1)であって、
不均一な磁場を生じるために、ある領域では前記磁性粒子により強く作用し、他の領域では前記磁性粒子にはあまり強く作用しないように、前記磁石は、前記容器の周方向の前記磁石の部分の間に空間を有し、前記不均一な磁場は、前記容器(5、51)に配置される前記磁性粒子(4)がいくつかの孤立した島の前記容器(5、51)の壁上に配置されるようになるようにし、それにより、前記液体が前記磁性粒子(4)の前記孤立した島の間を流れ出ることができることを特徴とするデバイス(1)。
【請求項2】
前記磁石(3)が導磁性モジュール(2)を備え、その結果、前記容器内にある前記磁性粒子に作用する前記不均一な磁場が、前記導磁性モジュール(2)によって生成され得るよう実行される、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記導磁性モジュール(2)は、前記磁石(3)上の構成要素として配置されるか、又は前記導磁性モジュール(2)は、前記磁石(3)の統合された要素として設計される、請求項2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記導磁性モジュール(2)は、磁気増幅モジュール(21)及び/又は反磁性モジュール(22)である、請求項2又は3に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記磁石(3)の形状は、前記容器(5、51)の形状に適合され、それにより前記容器(5、51)は、前記導磁性モジュール(2)内に挿入可能である、請求項2から4までのいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記容器(5)はマルチウェル・プレートであり、前記マルチウェル・プレートは複数のウェルを有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記磁石(3)は、前記マルチウェル・プレートの前記複数のウェルに配置される、請求項6に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記磁石(3)は、前記容器(5)を挿入するための穴及び/又は窪みを有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
第1の磁石の第1の磁場が、第2の磁石の第2の磁場の影響を受け得るよう、前記第1の磁石に対して前記第2の磁石配置される、請求項1又は6に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
前記磁石(3)が切欠きを有し、その結果、前記不均一な磁場が、周囲の磁場よりも弱い前記切り欠きの位置で、前記容器内に発生される磁場によって、生成され得る、請求項1から8までのいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
前記磁石(3)は、永久磁石及び/又は電磁石である、請求項1から10までのいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
前記デバイス(1)が、前記液体を除去するための器具(6)を備える、請求項1から11までのいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれに一項に記載のデバイス(1)内の生体分子を可逆的に固定化する方法であって、
a) 磁性粒子(4)及び生体分子を含む液体(6)を容器(5、51)内に配置するステップと、
b) 前記生体分子を前記磁性粒子(4)と結合形成する、具体的には可逆的に結合形成するステップと、
c) 前記磁性粒子(4)が、いくつかの孤立した島の前記容器(5、51)の容器の壁上に配置されるように、前記容器(5)内の前記磁性粒子(4)を、前記磁石(3)によって生成された不均一な磁場の中で固定するステップと、
d) 液体を除去する器具を使って前記液体を除去するステップであって、前記液体は、いくつかの孤立した島の前記磁性粒子(4)の前記配置によって、前記孤立した島の間の前記磁性粒子(4)から流れ出るステップと、
e) 前記磁性粒子(4)から前記生体分子を分離するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか一項に記載のデバイス(1)を備える、生体分子の自動処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の導入部分に記載の、生体分子を可逆的に固定化するデバイスに関する。本発明はさらに、独立請求項13の導入部分に記載の、生体分子を可逆的に固定化する方法に関する。本発明はさらに、独立請求項15の導入部分に記載の、生体分子を可逆的に固定化するデバイスを備える、生体分子の自動処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現況技術で、DNA及び他の生体分子を精製するための多くの方法が知られている。精製の一種に、DNAが非極性の環境で沈殿する、DNA抽出がある。DNAは、たとえば細胞破砕後の遠心分離によっても、又は電気泳動法によっても、精製することができる。
【0003】
生体分子は、不溶性の担体に固定化することによっても、合成及び精製することができる。生体分子を固定化する一般的な基板は、ガラス、並びに金、プラチナ、酸化物、半導体、及び様々なポリマー基板など、他のあまり一般的ではない基板である。
【0004】
手動で精製し、多くの作業を処理するには、あまりにも長い時間が必要になるので、今日では処理が完全に自動化されている。いわゆる「磁性粒子」は、実験用の方法を自動化する上で、重要な役割を果たす。「磁気ビーズベースの浄化」及び「磁気ビーズベースのノーマライゼーション」は、核酸の固定化、精製、及び濃度調整に広く使用されている方法である。こうした方法の典型的な応用分野は、DNA配列決定又はDNA検出(たとえば、PCR、ポリメラーゼ連鎖反応によって)に関するサンプル製剤である。
【0005】
現況技術では、磁性粒子は通常、容器を取り囲むリング磁石によって容器内に保持される。これにより、生体分子が結合した磁性粒子は容器内に残る一方で、不純物を含む溶液はピペットで除去することができる。
【0006】
磁性粒子は、PCR産物を精製するために、1995年にホワイトヘッド研究所で開発された。磁性粒子の大部分は常磁性で、鉄でコーティングされたポリスチレンで構成することができる。その場合、カルボキシル基を持つ様々な分子を、鉄に付着させることができる。このカルボキシル基は、DNA分子と可逆的に結合できる。そうすることで、DNA分子が固定化される。
【0007】
磁性粒子を用いるプロセスは、通常、以下のステップを含む。最初に、PCR産物が磁性粒子に結合する。続いて、PCR産物が付着した磁性粒子を不純物から分離する(このステップは、たとえば、溶液を固体からピペットで除去することにより実施される)。次いで、PCR産物が付着した磁性粒子を洗浄する。洗浄後、PCR産物は、磁性粒子から溶出され、新しいプレートに移される。
【0008】
完全に自動化されたプロセスでは、出発材が分離プロセスに導入された後、必要な試薬が自動的にサンプルに分注され、ピペット・チップを用いて再度除去される。磁性粒子に結合した核酸は、キャビティの底部及び端部に集められ、ルーチンに応じて、再度最適化された分注により溶解される。最後に、DNA又はRNAは、直接保管するためか、又は別の用途のために、蓋付きの別個の容器内に溶出される。
【0009】
現況技術では吸着方法も知られており、この方法では、たとえばわずかに酸性の環境で、DNAはシリカゲルと結合形成する。
【0010】
生体分子の合成、ノーマライゼーション、及び精製のための最も重要なプロセスの1つは、磁性粒子を使用したプロセスである。ここで、生体分子は磁性粒子の表面に結合する。次いで磁性粒子は磁石を用いて固定され、副産物及び不純物を含む溶液は簡単に分離できる。したがって、生体分子を迅速且つ簡単に精製及び分離できる。磁気球の利点は、テスト・バッチで小球が自由に移動できることであり、これは、結合ステップにとって重要である。たとえば、洗浄ステップで容器からの液体の除去を望む場合、磁石を容器に単に保持するだけで、液体を分離できる。
【0011】
磁性粒子は小さな常磁性又は強磁性の小球であり、必要な特性をもたらす様々な材料でコーティングされる。プラスチックでコーティングされたニッケル粒子が使用されることが多い。
【0012】
たとえば、DNAプローブ及び遺伝子は、自動固相法で合成することもできる。ポリペプチドのようなDNA鎖は、不溶性マトリックス(磁性粒子)に結合した成長鎖に活性化モノマーを連続的に付着させることにより合成することができる。保護ホスホルアミダイトは、ここで活性化モノマーとして使用することができる。
【0013】
この手順により、高純度の生体分子を優れた収率で分離できる。磁性粒子分離の基礎となるプロセスは、使用される抽出容器のキャビティ内で、完全に自動化して実行できる。
【0014】
完全に自動化されたプロセスでは、出発材が分離プロセスに導入された後、必要な試薬が自動的にサンプルに分注され、たとえばピペットを用いて再度除去される。磁性粒子に結合した核酸は、キャビティの底部と端部に集められ、ルーチンに応じて、最適化された分注により再度溶解される。最後に、DNA又はRNAは、直接保管するためか、又は別の用途のために、蓋付きの別個の容器内に溶出される。
【0015】
現況技術では、磁性粒子は通常、容器を取り囲むリング磁石によって容器内で保持される。その結果、磁性粒子が、内部容器内にリング状に自ずと配置される。
【0016】
現況技術の重大な欠点は、リング磁石を使用することにより、容器内の磁性粒子も、リング状に自ずと配置されることである。これにより、液体の除去がより困難になるだけでなく、固体リングに除去できない液体残留物が依然として残ることも意味する。液体の除去が不完全な場合、洗浄効率が低下し、溶出後の使用可能な量が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、生体分子を固定化するデバイス、生体分子を可逆的に固定化する方法、及び生体分子を固定化するデバイスを備えた生体分子の自動処理装置を提供し、それにより現況技術で知られている悪影響を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本目的は、独立請求項1の特徴を有する生体分子の可逆的固定化デバイス、独立請求項13の特徴を有する生体分子の可逆的固定化方法、及び独立請求項15の特徴を有する可逆的固定化デバイスを備える、生体分子の自動処理装置によって達成される。
【0019】
本発明にしたがって、磁性粒子を用いた生体分子の可逆的固定化デバイスを提案する。このデバイスは、生体分子を含む液体で満たすことができる容器、及び磁石を備える。磁石は、容器内に配置することができ、生体分子を固定化することができ、具体的には生体分子を可逆的に固定化することができる磁性粒子を、容器内に固定できるように、容器に面して配置される。容器内にある磁性粒子に作用する不均一な磁場は、磁石の配置によって生成することができる。磁性粒子は、不均一な磁場の影響による、構造化されたやり方で配置することができる。
【0020】
本発明にとって、磁石の配置によって磁場に不均一性を生じさせることが不可欠である。それなので、不均一な磁場内での磁性粒子の構造化された配置によって磁性粒子から液体がより容易に流れ出ることができるように、磁石の配置によって容器内にある磁性粒子に作用する不均一な磁場を生成する。不均一な磁場によって制御された磁性粒子が、容器の壁上の孤立した島に配置されると、液体は、磁性粒子間を簡単に流れ出ることができ、それによって液体をより簡単に容器から除去することができる。
【0021】
本発明の枠組みの中で、磁石の配置には、多種多様な設計があると理解することができる。磁石の配置とは、容器内の磁性粒子に作用する、かかる不均一な磁場を生成し、それにより磁性粒子が、容器の壁上の本発明による構造に配置される機能を指す。磁石の磁束密度の向きを変えることにより、磁性粒子は、液体がより簡単に流れ出ることができ、より簡単に除去できるように、容器内に配置される。「本発明による構造」という用語は、液体が容器内の磁性粒子からより容易に流れ出ることを可能にする構造を指す。したがって、たとえば、孤立した島での磁性粒子の配置は、「本発明による構造」又は「構造化された配置」として理解することができるが、配置はこれに限定されるものではない。磁性粒子は、たとえば、ピラミッド状又は溝の中に配置することもできる。上記の容器の壁上の磁性粒子のすべての構造化された配置により、液体が磁性粒子から、又は磁性粒子間を容易に流去することが可能となる。磁石の配置の設計の実例を挙げると、磁石を配置する様々な手法は以下の通りである。本発明の枠組みの中で、磁石の配置は、磁石の特別な形態と理解することができ、それにより、その形態は、永久磁石の外側の設計又は電磁石のコイルの巻線を指すことができる。さらに、磁石の配置は、磁束密度が変化し、それによって不均一な磁場が生成される導磁性モジュール(magnetically conductive module)と理解することができる。磁石の配置は、あらかじめ定め得る距離(容器からの距離及び磁石間の距離)にある容器の周りのいくつかの磁石の配置とも理解でき、その結果不均一な磁場の形態で生じる磁場が、容器内の磁性粒子に作用する。ここで、結果として生じる不均一な磁場は、一部の領域では磁性粒子により強く作用し、他の領域では磁性粒子にはあまり強く作用しない。もちろん、他の配置でも同じ効果が生じる。なぜなら、導磁性モジュール及び磁石の形態により、容器の一部の領域内の磁場が容器内の磁性粒子により強く作用するためである。こうした可能性については、以下の説明はもちろん、図の説明の中でもより詳細に説明する。構造化された配置は、現況技術で知られている磁性粒子のリング状又は類似の配置を意味しないことに再度留意されたい。
【0022】
磁石はまた、磁性粒子が、反応ステップ中に容器内を自由に移動でき、洗浄ステップ中に容器の磁石の位置を変えることにより適所に固定されるように、容器上を移動可能に配置することができる。具体的には、磁石は、磁石が容器の第1の位置に配置されて磁性粒子を固定し、磁石を容器上の又は容器の周りの第2の位置に動かすことにより、磁性粒子が可動になるように、移動可動であり得る。もちろん、たとえば自動化されたデバイスでは、同じ効果を達成するために、磁石に対して容器を移動させることもできる。
【0023】
本発明の枠組みの中で、生体分子という用語は、DNA、RNA、核酸、タンパク質、生体分子の開始シーケンス、モノマー、又は他の生物学的活性分子を指す。
【0024】
以下において、洗浄ステップは、概して、弁を作動させることにより液体が容器から排出され、生体分子が付着している磁性粒子の不純物が分離されるプロセスのステップである。洗浄ステップには、洗浄液(水又はその他)を使った洗浄も含まれ得る。
【0025】
以下において、反応ステップは、概して、磁性粒子に結合した生体分子を変換、粒子に結合、又は伸長する(鎖伸長、たとえばPCR「ポリメラーゼ連鎖反応」)プロセスのステップである。
【0026】
以下において、不純物は、概して、磁性粒子、溶媒、副産物、及び汚染物質、並びに上記の2つ以上の混合物と、完全に反応又は結合しない物質である。
【0027】
本発明の枠組みの中で、液体は、溶液、具体的には生体分子、試薬、及び/又は不純物の反応混合物であり得る。
【0028】
以下において、磁性粒子は、概ね、マイクロメートル又はミリメートル範囲の粒子であり得る。磁性粒子は、多孔性でもあり得る。以下において、生体分子は、概して、チオール基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、ニトリル基、アミン基、及び/又は他の任意の官能基を介して、磁性粒子の表面に結合することができる。磁性粒子は、コーティングされたニッケル粒子、又は他の任意の強磁性粒子若しくは常磁性粒子でもあり得る。磁性粒子の直径は、典型的には、約1マイクロメートルである。本発明の枠組みの中で、「約1マイクロメートル」という用語は、0.5から1.5マイクロメートル、とりわけ0.7から1.3マイクロメートル、特に0.9から1.1マイクロメートルを意味する。
【0029】
本発明によるデバイス及び本発明による方法の利点は、以下の通りである。
- より速い流出による、短いプロセス時間
- 高収率
- 汚れのより少ない産物
- 効率的で費用対効果が高い
- 自動化が容易
- 縮小サイズのデバイスも可能
- 既存のマシンを容易に変更できる
- 使い捨て部を動かさずに(電磁石だけで)、分離を切り替えることができる
【0030】
実際には、本デバイス及び方法は、核酸連結後の精製に使用できる。
【0031】
本発明によるデバイスの磁石は、永久磁石及び/又は電磁石として設計することができる。永久磁石の形状は、磁場の均一性に影響する一方で、電磁石での均一性は、巻線によって決定され得る。したがって、永久磁石の形状により、磁性粒子が磁場の影響のために構造化されたやり方で配置される程度に、磁場を確実に不均一にすることができる。「構造化されたやり方で配置する」という用語は、たとえば、液体がそこからうまく流れ出ることができるいくつかの空間的に分離された島の配置を指すことができる。ただし、電磁石を使用すると、場所によって密度がより高い巻線によって、適所に強い磁場を生成でき、その結果、磁性粒子が構造化されたやり方で配置される不均一な磁場も生成される。
【0032】
磁石はやはり、磁石が導磁性モジュールを備え、その結果、導磁性モジュールによって、容器内にある磁性粒子に作用する不均一な磁場が生成されるように配置され得る。したがって、導磁性モジュールは、磁性粒子が本発明による構造で配置されるように、磁石の磁場の磁力線に影響を与える必要がある。この目的のために、磁石の磁場は、導磁性モジュールによって、容器のあらかじめ定め得るポイントで増幅又は減衰でき、その結果磁性粒子は、増幅された領域にますます配置されるか、又は磁性粒子は、容器の減衰された領域で減少するように配置される。このようにして、増幅された磁場又は減衰された磁場によって、容器内で交互の部分的領域を生成できる。導磁性モジュールが、あらかじめ定め得る領域で磁石の磁場を増幅し、増幅されない領域で磁場を減衰させることも考えられる。磁石の形状は、磁場が容器のあらかじめ定め得る領域で増幅され、増幅されない領域で減衰されるように適合することもできる。
【0033】
加えて、導磁性モジュールは、磁石上の構成要素として配置され得るか、又は導磁性モジュールは、磁石の統合された要素として設計され得る。したがって、導磁性モジュールは、磁石の付属物であり、容器と磁石との間に配置される要素でもあり得る。たとえば、リング磁石では、導磁性モジュールを、容器と磁石との間で、窪み又は他の変形を設けた、より小さなリングとして配置することができる。導磁性モジュールは、概ね、磁石上に直接配置するか、又は磁石からあらかじめ定め得る距離に配置することができる。磁石の均一磁場は、導磁性モジュールによって不均一磁場に変えられる。導磁性モジュールは、磁気増幅モジュール及び/又は反磁性モジュールとして設計できる。磁石の磁場は、磁気増幅モジュールによって容器のあらかじめ定め得る領域で増幅され、また磁石の磁場は、反磁性モジュールによって容器のあらかじめ定め得る領域で減衰される。反磁性モジュールは、複数の反磁性シールドとして設計することもでき、容器内の磁石の磁場が場所によって遮断され、それによって弱められるよう、磁石上に配置される。
【0034】
反磁性モジュールは、比透磁率が1未満である、グラファイトなどの反磁性材料からなる。磁気増幅モジュールは、比透磁率が1を超える強磁性且つ/又は常磁性の材料からなる。典型的な強磁性材料は、たとえば鉄、ニッケル、及びコバルトである。典型的な常磁性物質は、たとえばアルカリ土類金属である。本発明の一実施例では、反磁性モジュールと磁気増幅モジュールとの混合物を使用することもでき、そのモジュールは、相異なる反磁性及び強磁性/常磁性の部分的範囲を有する。
【0035】
実際には、磁石の形状を、容器を導磁性モジュールに挿入できるように、容器の形状に適合させることができる。もちろん、導磁性モジュールの形状も、容器に適合させることができる。加えて、磁石は、容器を挿入するための穴及び/又は窪みを有することができる。導磁性モジュールも、容器を挿入するための穴及び/又は窪みを有することができる。
【0036】
容器は、いかなる形状にもできる。本発明の一実施例では、容器は、マルチウェル・プレートであってもよく、ここでマルチウェル・プレートは、複数のウェルを有する。マルチウェル・プレートは、具体的には、マイクロタイタ・プレートでもあり得る。容器は、毛細管を備えることができ、毛細管内で磁性粒子を含む液体は毛細管力により保持され、且つ/又は液体は圧力により除去されるので、特に有利である。
【0037】
磁石をマルチウェル・プレートの複数のウェルに配置することができる。このようにして、磁性粒子を、同時にいくつかのウェルに固定することができる。
【0038】
磁石の配置は、磁石の第1の磁場が、第2の磁石の第2の磁場の影響を受け得るよう、磁石に対して第2の磁石を配置し、その結果、容器内にある磁性粒子に作用する不均一な磁場が生成され得るように設計することもできる。複数の永久磁石を第2の磁石として使用する場合、磁石の磁場がいくつかの場所で減衰及び/又は増幅されるように、永久磁石を磁石に対して配置できる。電磁石を第2の磁石として使用することもでき、電磁石は、その第2の磁場によって、磁石の磁場を所望のように不均一化する。
【0039】
本発明の一実施例では、磁石が1つ又は複数の切欠きを有し、その結果不均一な磁場が磁石の切欠きによって生成されるように、磁石の配置を設計することもできる。容器内で、磁石の切欠きの位置には、より弱い磁場が生成され、その結果、切欠きの位置には、磁性粒子はほとんど又はまったく集まらない。
【0040】
実際には、デバイスは、磁性粒子の表面に生体分子を固定化した後に容器から液体を除去できるように、液体を除去する器具を備えることができる。液体を除去する器具は、ピペット、弁、圧縮空気、又は別の好適な器具であり得る。
【0041】
本発明にしたがって、さらに、生体分子の可逆的固定化方法を提案する。本方法は、以下のステップを含む。最初に、磁性粒子及び生体分子を含む液体を容器内に配置する。次いで、生体分子は磁性粒子に結合し、具体的には可逆的に結合する。
【0042】
生体分子が固定化された磁性粒子は、容器内で、磁石の配置によって生成された不均一な磁場の中で固定され、それによって磁性粒子は、構造化されたやり方で配置される。続いて、液体は、液体を除去する器具を使って除去され、ここで液体は、磁性粒子の構造化された配置によって磁性粒子から流れ出し、その結果、容器内及び磁性粒子上に液体残留物はまったく又はほとんど残らない。磁性粒子に結合した生体分子は、磁性粒子の表面から分離され、次いで使用され得る。
【0043】
上記の方法は、本発明によるデバイスを使って実行されることが好ましい。
【0044】
本発明にしたがって、本発明によるデバイスを備える、生体分子の自動処理装置も提案する。たとえば、生体分子の自動処理装置では、本発明による方法を実行することができる。かかる装置の利点は、生体分子及び磁性粒子を含む液体を容器内に供給し、好適な要素を使って容器から除去できることである。加えて、必要に応じて、たとえば容器から磁性粒子を除去するために、容器上の磁石の位置を変更できる。マルチウェル・プレートは、典型的に、生体分子の自動処理装置の容器として使用される。
【0045】
以下では、本発明及び現況技術を、実施例を使用して、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】マルチウェル・プレート及び導磁性モジュールを備えた、生体分子の可逆的固定化デバイスの概略図である。
図2】様々な形状の、磁石及び導磁性モジュールの概略図である。
図3】生体分子の可逆的固定化デバイスの、別の実施例の概略図である。
図4】クラウン形状の導磁性モジュールを備えた磁石の概略図である。
図5】上からの図である、本発明と比較した現況技術の概略図、並びに本発明の実施例の側面図である。
図6】磁気増幅モジュール及び反磁性モジュールとしての、導磁性モジュールを備えたリング磁石の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、マルチウェル・プレート51及び導磁性モジュール2を備えた、生体分子の可逆的固定化デバイス1aの概略図を示す。図示のデバイス1では、磁石3の配置は、導磁性モジュール2を備えるよう構成される。導磁性モジュール2は、磁石3とマルチウェル・プレート51のウェル50との間に位置するように、磁石3上の付属物として配置される。
【0048】
上記の導磁性モジュール2を備えた磁石3の配置により、磁性粒子4は、容器内に構造化されたやり方で配置される。動作状態では、磁性粒子の表面上に生体分子を固定化した後、液体を除去する器具(ここでは図示せず)を使って液体を除去することができ、液体は、構造的に配置された磁性粒子間を簡単に流れ出ることができる。
【0049】
図2は、様々な形状の、磁石3及び導磁性モジュール2の概略図を示す。磁石3は、たとえば、クラウン形状の磁石201、波状の磁石202、及び切欠きの付いた磁石203として設計することができる。もちろん、導磁性モジュールも、クラウン形状、波状、又は切欠き付きであり得る。クラウン形状により、磁性粒子は、いくつかの孤立した島に配置される。磁性粒子の島の数は、クラウンの歯の数と一致する。磁性粒子も同様に、波状に配置されることになる。ただし、切欠き付きの場合、磁性粒子は2つの孤立した島に配置される。
【0050】
図3は、生体分子の可逆的固定化デバイス1の、別の実施例の概略図を示す。生体分子を含む液体6が満たされている容器5を示す。
【0051】
動作状態では、生体分子は磁性粒子(ここでは図示せず)の表面に固定化されることになる。続いて、液体6が容器から除去されることになる。
【0052】
さらに図3は、導磁性モジュール2を備えた磁石3が容器に面して配置され得ることを示している。ここで、導磁性モジュール2は、クラウン形状の付属物として設計されている。別法として、クラウン形状の磁石201を容器に面して配置することもできる。図示した両方の配置は、容器を磁石内又は導磁性モジュール内に部分的に挿入できるように、容器5の形状に適合した形状を有する。
【0053】
図4は、クラウン形状の導磁性モジュール2を備えた磁石の概略図を示す。ここで、導磁性モジュール2は、磁石3の付属物として設計されている。導磁性モジュール2は、容器をしっかり留めるために挿入できる穴20を有する。
【0054】
図5は、容器5を上から見た図である、現況技術Aを本発明Bと比較した概略図、並びに本発明の実施例Cの、容器5の側面図を示す。
【0055】
現況技術Aでは、磁性粒子4は、磁石の均一な磁場により、容器5の端部でリング状に配置される。液体は流れ出ることができないので、除去する際にこのリングに残る。
【0056】
発明Bでは、磁性粒子4は、磁石の不均一な磁場により、容器の壁上に構造化されたやり方で配置される。ここに示すように、いくつかの孤立した島に磁性粒子4を配置することにより、液体は、磁性粒子4間を簡単に流れ出ることができる。
【0057】
図5の部分Cでは、容器5の容器の壁上の、本発明による不均一磁場における磁性粒子4の、可能な配置の3つの実施例を示す。いくつかの丸みを帯びた島の配置も示し、磁性粒子4の溝状及びピラミッド状の配置も示す。これらの配置はすべて例示にすぎず、限定的なものではない。多様な可能性だけが、指摘されるべきである。本発明による不均一な磁場において、磁性粒子はもちろん任意の好適な構造に配置することができ、液体が簡単に流れ出ることを可能にする。
【0058】
図6は、磁気増幅モジュール及び反磁性モジュールとしての、導磁性モジュール2を備えたリング磁石3の概略図を示す。
【0059】
図6の部分Aでは、導磁性モジュール2は、磁気増幅モジュールである。磁気増幅モジュールは、リング磁石3の挿入部として構成され、リング磁石3と容器5との間に配置される。磁気増幅モジュールにより、リング磁石3の磁場は、間隙23のない領域でより増幅され、したがって不均一になる。それによって磁性粒子5は、間隙23間の容器5の壁上に構造化されて配置される。
【0060】
図6の部分Bでは、導磁性モジュール2は、反磁性モジュールである。反磁性モジュールは、リング磁石3の挿入部として構成され、リング磁石3と容器5との間に配置される。反磁性モジュールにより、リング磁石3の磁場は、間隙23のない領域でより大きく減衰し、したがって不均一になる。それによって磁性粒子5は、間隙23内の容器5の壁上に構造化されて配置される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B