(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】磁気スケール
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
G01D5/245 110J
G01D5/245 110L
(21)【出願番号】P 2020067175
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】津島 卓史
(72)【発明者】
【氏名】島崎 幸博
(72)【発明者】
【氏名】服部 崇幸
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-323935(JP,A)
【文献】特開2005-311235(JP,A)
【文献】特開2017-135323(JP,A)
【文献】特開昭58-75023(JP,A)
【文献】特開平10-300514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0284788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
G01R 33/00-33/18
H01F 7/02、
10/00-10/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に第1の粘着層を設けた支持基板と、
前記支持基板における第1の粘着層の上面に設けた磁性層と、
前記磁性層を第2の粘着層を介して磁性層の上面および側面を覆うように設けたバリアフィルムとを備えた磁気スケール。
【請求項2】
前記支持基板の上面に凹部を設け、前記磁性層が支持基板における凹部に埋設された請求項1記載の磁気スケール。
【請求項3】
前記支持基板の上面よりも磁性層の上面の高さが高い構造とした請求項2に記載の磁気スケール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気エンコーダに適用可能な磁気スケールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の磁気スケールとしては、特許文献1に記載されている構造が知られている。特許文献1は、非磁性支持体上に磁性層及び保護層を積層した構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の磁気スケールの構成においては、支持基板1の上面に設けた磁性層2の上面のみに保護膜3を設けているのみであるため、支持基板1と磁性層2とを固着するとともに、磁性層2と保護膜3とを互いに固着するバインダー樹脂(図示せず)の加水分解対策としては不十分である。バインダー樹脂(図示せず)の加水分解は、磁性層2が大気と触れており高温高湿環境下となることで反応が加速していくことが知られており、高温環境下での耐湿性に課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、高温環境下での耐湿性の向上した磁気スケールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の発明は、上面に第1の粘着層を設けた支持基板と、前記支持基板における第1の粘着層の上面に設けた磁性層と、前記磁性層を第2の粘着層を介して磁性層の上面および側面を覆うように設けたバリアフィルムとを備えたもので、この構成によれば、前記磁性層を前記バリアフィルムで真空封止することが可能であるため、前記磁性層は大気と非接触であり、前記バリアフィルムが酸素透過や水分透過を抑制し、前記磁性層に用いている樹脂の酸化劣化や加水分解を防止することが可能となる。その結果、高温環境下での耐湿性向上の作用効果を有するものである。
【0007】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記支持基板の上面に凹部を設け、前記磁性層が支持基板における凹部に埋設されたもので、この構成によれば、真空封止空間内の気体部体積を小さくすることが可能であり、貼り合わせ面の段差を少なくできるため、封止内部の気体膨張の抑制やフィルムのしわ発生の低減が可能である。その結果、フィルム剥がれの発生を抑制する作用効果を有するものである。
【0008】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記支持基板の上面よりも前記磁性層の上面の高さが高い構造としたもので、この構成によれば、前記支持基板の上面よりも前記磁性層の上面の高さが高いため、前記磁性層に接触させて用いる着磁ヘッドによる着磁や、センサで磁気スケールを読み取る際に、前記支持基板と接触する心配がないため、磁性層幅や着磁ヘッド幅、センサ幅に制約がなく、形状の自由度を高めるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の磁気スケールは、上面に第1の粘着層を設けた支持基板と、前記支持基板における第1の粘着層の上面に設けた磁性層と、前記磁性層を第2の粘着層を介して磁性層の上面および側面を覆うように設けたバリアフィルムとを備えたもので、この構成によれば、前記磁性層を前記バリアフィルムで真空封止することが可能であるため、前記磁性層は大気と非接触であり、前記バリアフィルムが酸素透過や水分透過を抑制し、前記磁性層に用いている樹脂の酸化劣化や加水分解を防止することが可能となり、高温環境下での耐湿性の向上した磁気スケールを提供することができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態における磁気スケールの上面図
【
図2】同磁気スケールの10A~10B間の側断面図
【
図3】本発明の一実施の形態におけるなお書き記載の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態における磁気スケールについて、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1、
図2において、11はALからなる支持基板で、この支持基板11の上面には熱硬化性樹脂からなる第1の粘着層12を設けている。13は熱硬化性樹脂と磁性粉末からなる磁性層で、この磁性層13は前記支持基板11における第1の粘着層の上面に設けている。また、前記磁性層13の上面には、第2の粘着層14を設けており、この第2の粘着層14を介して前記磁性層13の上面および側面を覆うように、アルミ箔と有機フィルムを貼り合わせた構造またはアルミ蒸着されたフィルムからなるバリアフィルム15を設けている。
【0013】
また、ALを材料として用いると、酸素、水分の透過率が低いことに加え、磁性層13をラミネートする際に、磁性層13の縁部へのバリアフィルム15の追従性が向上し、封止空間内の体積を小さくすることができる。
【0014】
それに加え、本発明の構造は、磁性層13をバリアフィルム15で保護するという構造上、経年劣化による磁性層13からの粉落ち等の不具合も防ぐことが可能となる。
【0015】
次に、本発明の一実施の形態におけるバリアフィルムついて、その組立方法を説明する。
【0016】
第2の粘着層14を塗布したバリアフィルム15を、真空ラミネーター(図示せず)を用いて磁性層13と貼り合わせる。貼り合わせの際の空気穴の生成を防止可能であり、磁性層を真空封止することができる。その結果、酸素透過や水分透過を遮断し、樹脂の酸化劣化や加水分解を防止することができるという作用効果を有するものである。
【0017】
なお、本発明の一実施の形態の磁気スケールにおいては、
図3に示している支持基板22のように、支持基板22の上面に凹部23を設け、磁性層24が支持基板22の凹部23に埋設されていてもよい。この際、磁性層24の上面は支持基板22の上面と同一の高さか、磁性層13の上面が支持基板22の上面よりも高いほうが好ましい。そして、支持基板22の上面と、磁性層24の上面との高さの差を小さくすることにより、真空封止空間内の気体部体積を小さくすることが可能であり、貼り合わせ面の段差を少なくできるため、封止内部の気体膨張の抑制やバリアフィルム15のしわ発生の低減が可能であり、フィルム剥がれの発生を抑制する作用効果を有するものである。
【0018】
また、磁性層11の上面が支持基板22の上面と同一の高さか、磁性層11の上面が支持基板22の上面よりも高いことにより、磁性層13に接触させて用いる着磁ヘッド(図示せず)による着磁や、センサ(図示せず)で磁気スケールの着磁パターンを読み取る際に、支持基板22と着磁ヘッド(図示せず)およびセンサ(図示せず)とを互いに接触させることがないため、磁性層幅や着磁ヘッド幅、センサ幅に制約がなく、形状の自由度を高める作用効果を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の磁気センサは、高温環境下での耐湿性の向上した磁気スケールを提供することができるもので、磁気エンコーダに適用可能な磁気スケールとして有用である。
【符号の説明】
【0020】
11、22 支持基板
12 第1の粘着層
13、24 磁性層
14 第2の粘着層
15 バリアフィルム
23 凹部