(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20240112BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20240112BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20240112BHJP
F24F 3/00 20060101ALI20240112BHJP
F24F 110/30 20180101ALN20240112BHJP
F24F 110/40 20180101ALN20240112BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F3/044
F24F7/10 101Z
F24F3/00 Z
F24F110:30
F24F110:40
(21)【出願番号】P 2021080698
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】山西 悠也
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅弘
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-094899(JP,A)
【文献】特開2015-190669(JP,A)
【文献】特開2018-109459(JP,A)
【文献】特開2013-122358(JP,A)
【文献】特開平05-280791(JP,A)
【文献】特開平09-126521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/74
F24F 3/044
F24F 7/10
F24F 3/00
F24F 110/30
F24F 110/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引した空気の温度を調整して吹き出す空調装置と、
前記空調装置から吹き出された空気を部屋に送る搬送ファンと、
前記空調装置と前記搬送ファンとを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記部屋の部屋温度と、前記部屋に対する第1設定温度と、前記空調装置が吸引した前記空気の温度である吸気温度とを取得する取得部と、
前記取得部において取得した前記部屋温度と前記第1設定温度との温度差を第1間隔で導出する導出部と、
前記導出部において導出した前記温度差をもとに、前記搬送ファンの出力を前記第1間隔で導出する第1制御部と、
前記導出部において導出した
前記温度差が大きくなるほど大きい値を有するように対応付けられた温度である空調強度を前記第1間隔で導出するとともに、前記空調強度と、前記取得部において取得した前記吸気温度とをもとに、前記空調装置に対する第2設定温度を第2間隔で導出する第2制御部とを備え、
前記導出部は、前記空調装置が暖房運転を実行する場合に、前記第1設定温度から前記部屋温度を減算することによって前記温度差を導出し、前記空調装置が冷房運転を実行する場合に、前記部屋温度から前記第1設定温度を減算することによって前記温度差を導出し、
前記第2制御部は、前記空調装置が暖房運転を実行する場合に、前記吸気温度と前記空調強度とを加算することによって前記第2設定温度を導出し、前記空調装置が冷房運転を実行する場合に、前記吸気温度から前記空調強度を減算することによって前記第2設定温度を導出し、
前記第2間隔は前記第1間隔よりも短い空調システム。
【請求項2】
前記搬送ファンと前記部屋との間に設けられるダンパをさらに備え、
前記制御装置は、
前記導出部において導出した前記温度差をもとに、前記ダンパの開度を前記第1間隔で導出する第3制御部をさらに備え、
前記第2制御部は、前記導出部において導出した前記温度差をもとに、前記空調装置の風
量を前記第1間隔で導出する請求項
1に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和技術に関し、特に部屋の空気調和を制御する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1台の空調装置により、複数の部屋を空調する全館空調システムが提案されている。このような全館空調システムとして、特許文献1には、複数の部屋を効率よく空調しうる換気空調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全館空調システムでは、空調装置と搬送ファンが空調ボックスの中に収納されており、空調装置から吹き出された空気が搬送ファンにより各部屋に搬送される。また、全館空調システムでは、複数の部屋の温度と、複数の部屋の設定温度とに基づいて、空調装置の設定温度が決定され、設定温度をもとに空調制御がなされる。空調制御の精度を向上するために、空調装置が吸引した空気の温度(以下、「吸気温度」という)も空調制御に使用される。このような状況において、吸気温度の変化に対する追従性を向上することが望まれる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、吸気温度の変化に対する追従性を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の空調システムは、吸引した空気の温度を調整して吹き出す空調装置と、空調装置から吹き出された空気を部屋に送る搬送ファンと、空調装置と搬送ファンとを制御する制御装置とを備える。制御装置は、部屋の部屋温度と、部屋に対する第1設定温度と、空調装置が吸引した空気の温度である吸気温度とを取得する取得部と、取得部において取得した部屋温度と第1設定温度との温度差を第1間隔で導出する導出部と、導出部において導出した温度差をもとに、搬送ファンの出力を第1間隔で導出する第1制御部と、導出部において導出した温度差が大きくなるほど大きい値を有するように対応付けられた温度である空調強度を第1間隔で導出するとともに、空調強度と、取得部において取得した吸気温度とをもとに、空調装置に対する第2設定温度を第2間隔で導出する第2制御部とを備える。導出部は、空調装置が暖房運転を実行する場合に、第1設定温度から部屋温度を減算することによって温度差を導出し、空調装置が冷房運転を実行する場合に、部屋温度から第1設定温度を減算することによって温度差を導出する。第2制御部は、空調装置が暖房運転を実行する場合に、吸気温度と空調強度とを加算することによって第2設定温度を導出し、空調装置が冷房運転を実行する場合に、吸気温度から空調強度を減算することによって第2設定温度を導出する。第2間隔は第1間隔よりも短い。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、吸気温度の変化に対する追従性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例に係る空調システムの構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)-(c)は、
図2の制御装置において使用されるテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図4】
図2の制御装置による制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例の概要を説明する。本実施例は、住宅等の施設に設けられ、施設に対する全館空調を実行する空調システムに関する。空調システムにおける空調ボックスは、空調装置、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ、搬送ファンを含む。空調装置は、施設の外部の空気(以下、「外気」という)と施設の内部の空気(以下、「内気」という)を吸引し、空調制御がなされた空気を吹き出す。HEPAフィルタは、空調装置から吹き出された空気を清浄する。搬送ファンは、HEPAフィルタにおいて清浄された空気を搬送ダクト経由で部屋に搬送する。搬送ダクトにはダンパが設けられ、ダンパは部屋に吹き出される空気の量を調整可能である。
【0011】
空調システムでは、空調アルゴリズムにより、空調装置、搬送ファン、ダンパの動作が制御される。例えば、部屋で測定された温度(以下、「部屋温度」という)と、部屋に対する設定温度(以下、「第1設定温度」という)との温度差をもとに、空調装置に対する設定温度(以下、「第2設定温度」という)、空調装置の風量、搬送ファンの出力、ダンパの開度のそれぞれが決定される。空調装置、搬送ファン、ダンパは、決定された値により動作する。空調アルゴリズムによる制御の精度を高めるために、第2設定温度を決定する際に空調装置の吸気温度が反映される。
【0012】
このような空調アルゴリズムは、空調装置から吹き出された空気が部屋に到達し、部屋温度を測定するための温度センサに反応する前の時間を考慮して、例えば、10分間隔で実行される。空調アルゴリズムを10分間よりも短い間隔において実行する場合、部屋温度を測定するための温度センサが、空調装置から吹き出された空気を検知する前に、温度センサの情報がフィードバックされてしまう。その結果、空調システムは正しいフィードバックをもとに空調アルゴリズムを実行できなくなり、空調制御の精度が低下する。
【0013】
本実施例では、空調アルゴリズムを10分間隔で実行して、部屋温度と第1設定温度との温度差を導出し、これをもとに空調装置の風量、搬送ファンの出力、ダンパの開度を決定する。吸気温度の変化への追従性を向上するために、本実施例では、10分間隔で導出した温度差に対して、10分よりも短い間隔で取得した吸気温度を反映させることによって、第2設定温度を10分よりも短い間隔で導出する。10分よりも短い間隔は、例えば30秒間隔である。
【0014】
以下に説明する実施例は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示す。よって、以下の実施例で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。したがって、以下の実施例における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0015】
図1は、空調システム1000の構成を示す。空調システム1000は、換気制御システム、換気システム、全館空調システムとも呼ばれ、住宅、非住宅を含む施設100に設置される。施設100は、部屋110と総称される第1部屋110a、第2部屋110b、第3部屋110cを含む。部屋110には、例えば、リビングルーム、ダイニングルーム、キッチンが含まれてもよい。施設100に含まれる部屋110の数は「3」に限定されない。空調システム1000は、外気導入口200、外気導入ダクト202、外気導入ファン204、内気導入ファン210、内気導入口212、内気導入ダクト214、空調ボックス300、搬送ダクト400、分岐チャンバ410、分岐搬送ダクト420と総称される第1分岐搬送ダクト420a、第2分岐搬送ダクト420b、第3分岐搬送ダクト420c、ダンパ430と総称される第1ダンパ430a、第2ダンパ430b、第3ダンパ430c、吹出口440と総称される第1吹出口440a、第2吹出口440b、第3吹出口440c、部屋温度センサ450と総称される第1部屋温度センサ450a、第2部屋温度センサ450b、第3部屋温度センサ450c、加湿装置500、制御装置600を含む。
【0016】
施設100の外壁には外気導入口200が設置される。外気導入口200から施設100の内部に向かって外気導入ダクト202が延びる。外気導入ダクト202は、外気導入ファン204に接続される。外気導入ファン204は、制御装置600と通信する機能を有し、制御装置600からの制御をもとに回転することによって、外気を施設100内に取り入れる。外気導入ダクト202は、外気導入ファン204からさらに延びて空調ボックス300に接続される。そのため、外気導入ファン204は、外気を空調ボックス300に流入させる。
【0017】
内気導入ファン210は、制御装置600と通信する機能を有し、制御装置600からの制御をもとに回転することによって、内気を内気導入口212から取り入れる。内気導入ファン210から延びる内気導入ダクト214は空調ボックス300に接続される。そのため、内気導入ファン210は、内気を空調ボックス300に流入させる。空調ボックス300に内気導入用の隙間を設けることで、内気導入ファン210を使用せずに、空調ボックス300に内気を導入する構成としてもよい。
【0018】
空調ボックス300には、外気と内気の混合空気(以下、単に「空気」ともいう)が流入される。空調ボックス300は、空気の温度を調整して複数の部屋110のそれぞれに搬送することにより、複数の部屋110の温度を制御する。空調ボックス300は、空調装置310と、HEPAフィルタ320と、搬送ファン330を含む。空調装置310はエアコンディショナである。空調装置310は、制御装置600と通信する機能を有し、制御装置600の制御をもとに、空調ボックス300内の空気を吸引して、吸引した空気の温度を調整する。また、空調装置310は、制御装置600の制御をもとに、温度が調整された空気を吹き出す。空調装置310には吸気温度センサ312が備えられ、吸気温度センサ312は、空調装置310が吸引した空気の温度である吸気温度を計測する。空調装置310は、吸気温度センサ312において計測した吸気温度を制御装置600に定期的に送信する。
【0019】
空調装置310から吹き出された空気はHEPAフィルタ320に流入される。HEPAフィルタ320は、エアフィルタであり、空調装置310において空調がなされた空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄された空気を出力する。HEPAフィルタ320を通過した空気は搬送ファン330に流入される。搬送ファン330は、制御装置600と通信する機能を有し、制御装置600の制御をもとに、空調装置310によって温度が調整され吹出された空気であって、かつHEPAフィルタ320を通過した空気を複数の部屋110のそれぞれに搬送する。
【0020】
搬送ファン330には搬送ダクト400が接続され、搬送ダクト400には分岐チャンバ410が接続される。また、分岐チャンバ410には第1分岐搬送ダクト420aから第3分岐搬送ダクト420cが接続される。第1分岐搬送ダクト420aは、第1部屋110aまで延びて、第1部屋110aに設けられた第1吹出口440aに接続される。第1吹出口440aには第1ダンパ430aが設置される。第2分岐搬送ダクト420bは、第2部屋110bまで延びて、第2部屋110bに設けられた第2吹出口440bに接続される。第2吹出口440bには第2ダンパ430bが設置される。第3分岐搬送ダクト420cは、第3部屋110cまで延びて、第3部屋110cに設けられた第3吹出口440cに接続される。第3吹出口440cには第3ダンパ430cが設置される。このようにダンパ430は、搬送ファン330と部屋110との間に設けられる。第1ダンパ430aから第3ダンパ430cのそれぞれは、制御装置600と通信する機能を有し、制御装置600の制御をもとに、開度を調節する。ダンパ430の開度の調節により、吹出口440から部屋110に吹き出される空気の風量が調節される。このような構成により、搬送ファン330からの空気は、搬送ダクト400、分岐チャンバ410、分岐搬送ダクト420、ダンパ430を介して吹出口440から部屋110に吹き出される。
【0021】
第1部屋110aには第1部屋温度センサ450aが設置される。第1部屋温度センサ450aは、第1部屋110aの中の温度である部屋温度を計測する。第1部屋温度センサ450aは通信機能を有し、計測された部屋温度を示す温度データを制御装置600に定期的に送信する。第2部屋110bには第2部屋温度センサ450bが設置され、第3部屋110cには第3部屋温度センサ450cが設置される。第2部屋温度センサ450bと第3部屋温度センサ450cは第1部屋温度センサ450aと同様に構成される。そのため、第2部屋温度センサ450bは、第2部屋110bの部屋温度を示す温度データを制御装置600に定期的に送信し、第3部屋温度センサ450cは、第3部屋110cの部屋温度を示す温度データを制御装置600に定期的に送信する。
【0022】
加湿装置500は、制御装置600と通信する機能を有し、制御装置600の制御をもとに、施設100の内気の湿度を上昇させる。制御装置600は、空調システム1000全体を制御するシステムコントローラである。本実施例において制御装置600は、特に空調装置310、搬送ファン330、ダンパ430を制御する。制御装置600は、通信機能を有し、外気導入ファン204、内気導入ファン210、空調装置310、搬送ファン330、ダンパ430、部屋温度センサ450、加湿装置500と通信する。
【0023】
図2は、制御装置600の構成を示す。制御装置600は、操作部610、通信部620、制御部630を含む。制御部630は、取得部640、導出部642、第1制御部644、第2制御部646、第3制御部648を含む。
【0024】
操作部610は、ユーザの操作を受け付けるユーザインターフェースである。操作部610は、例えば、液晶パネルまたは有機EL(ElectroLuminescence)パネルなどの表示パネルと一体化されたタッチパネルによって実現されるが、タッチパネル以外にハードウエアボタンを含んでもよい。操作部610は、ユーザの操作により、第1部屋110aから第3部屋110cのそれぞれの設定温度である第1設定温度を受けつける。第1部屋110aに対する第1設定温度、第2部屋110bに対する第1設定温度、第3部屋110cに対する第1設定温度は、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0025】
通信部620は、通信機能を実行する通信モジュール(通信回路)であり、外気導入ファン204、内気導入ファン210、空調装置310、搬送ファン330、ダンパ430、部屋温度センサ450、加湿装置500と通信する。通信部620によって実行される通信は、例えば、無線通信であるが、有線通信であってもよい。通信部620は、各部屋温度センサ450から、部屋温度を示す温度データを定期的に受信する。また、通信部620は、吸気温度センサ312において計測した吸気温度を空調装置310から定期的に受信する。
【0026】
制御部630は、空調装置310、搬送ファン330、ダンパ430を制御するための空調アルゴリズムを実行する。取得部640は、各部屋110に対する第1設定温度を操作部610から取得するとともに、各部屋110の部屋温度と、吸気温度とを通信部620から定期的に取得する。
【0027】
導出部642は、第1部屋110aの部屋温度と第1部屋110aの第1設定温度との温度差を第1間隔で導出する。第1間隔は、空調アルゴリズムを実行する間隔、例えば、10分間隔である。また、導出部642は、第2部屋110bの部屋温度と第2部屋110bの第1設定温度との温度差を第1間隔で導出し、第3部屋110cの部屋温度と第3部屋110cの第1設定温度との温度差を第1間隔で導出する。つまり、部屋110毎に温度差が導出される。温度差は、複数の部屋110のそれぞれにおいて不足している温度を示し、複数の部屋110のそれぞれの部屋温度が第1設定温度となるために必要な温度である。具体的に説明すると、導出部642は、空調装置310が暖房運転を実行する場合に、第1設定温度から部屋温度を減算することによって温度差を導出する。一方、導出部642は、空調装置310が冷房運転を実行する場合に、部屋温度から第1設定温度を減算することによって温度差を導出する。この温度差は、空調に必要な温度差である。
【0028】
第2制御部646は、導出部642において導出した温度差をもとに空調強度を第1間隔で導出する。空調強度は温度の単位を有する。具体的に説明すると、第2制御部646は、各部屋110に対する温度差の平均値を導出する。
図3(a)-(c)は、制御装置600において使用されるテーブルのデータ構造を示し、特に
図3(a)は、第2制御部646に保持されるテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、温度差の平均値に対する「条件」と「空調強度」との対応関係が示される。「A1」、「A2」、・・・「AL」がしきい値として規定され、これらは「A1」>「A2」>・・・>「AL」の関係を有する。温度差の平均値が「A1」以上であれば、第2制御部646は、空調強度「B1」を選択する。また、温度差の平均値が「A1」より小さく、かつ「A2」以上であれば、第2制御部646は、空調強度「B2」を選択する。空調強度は、「B1」>「B2」>・・・>「BL」の関係を有する。つまり、温度差が大きくなるほど空調強度が大きくされる。このように空調強度は、複数の部屋110のそれぞれの第1設定温度と部屋温度との温度差をもとに決定される。また、空調強度は、温度差に対応した温度であるともいえる。
図3(b)は後述し、
図2に戻る。
【0029】
第2制御部646は、各部屋110に対する温度差の平均値の代わりに、各部屋110に対する温度差の合計値を導出し、温度差の合計値から空調強度を第1間隔で導出してもよい。その際、温度差の合計値に対する「条件」と「空調強度」との対応関係を示すテーブルが使用される。また、第2制御部646は、各部屋110に対する温度差の平均値の代わりに、各部屋110に対する温度差の最大値あるいは中間値あるいは最小値を選択し、温度差の最大値あるいは中間値あるいは最小値から空調強度を第1間隔で導出してもよい。その際、温度差の最大値あるいは中間値あるいは最小値に対する「条件」と「空調強度」との対応関係を示すテーブルが使用される。
【0030】
第2制御部646は、空調強度と吸気温度とをもとに、空調装置310に対する第2設定温度を第2間隔で導出する。第2間隔は、第1間隔よりも短く、例えば、30秒間隔に設定される。具体的に説明すると、第2制御部646は、空調装置310が暖房運転を実行する場合に、吸気温度と空調強度とを加算することによって第2設定温度を第2間隔で導出する。一方、第2制御部646は、空調装置310が冷房運転を実行する場合に、吸気温度から空調強度を減算することによって第2設定温度を第2間隔で導出する。ここで、空調強度は第1間隔で導出され、吸気温度は少なくとも第2間隔で取得される。そのため、第1間隔で導出される空間強度に対して、吸気温度を第2間隔で変えながら使用することによって、第2設定温度が第2間隔で導出される。
【0031】
さらに、第2制御部646は、導出部642において導出した温度差をもとに、空調装置310の風量を第1間隔で導出する。具体的に説明すると、第2制御部646は、複数の部屋110のそれぞれについて、当該部屋110における第1設定温度と部屋温度との温度差と、搬送ファン330の出力とをもとに、当該部屋110に対する空気量を決定する。また、空気量の決定には、公知の空調アルゴリズムが使用されればよいので、ここでは説明を省略する。これに続いて、第2制御部646は、複数の部屋110のそれぞれに搬送される空気量の合計と等しいか、あるいは当該空気量の合計を下回る値となるように、空調装置310の風量を決定する。
【0032】
第1制御部644は、導出部642において導出した温度差をもとに搬送ファン330の出力を第1間隔で導出する。具体的に説明すると、第1制御部644は、第2制御部646と同様に、各部屋110に対する温度差の平均値を導出する。
図3(b)は、第1制御部644に保持されるテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、温度差の平均値に対する「条件」と「出力」との対応関係が示される。「C1」、「C2」、・・・「CM」がしきい値として規定され、これらは「C1」>「C2」>・・・>「CM」の関係を有する。温度差の平均値が「C1」以上であれば、第1制御部644は、出力「D1」を選択する。また、温度差の平均値が「C1」より小さく、かつ「C2」以上であれば、第1制御部644は、出力「D2」を選択する。出力は、「D1」>「D2」>・・・>「DM」の関係を有する。つまり、温度差が大きくなるほど搬送ファン330の出力が大きくされる。このように搬送ファン330の出力は、複数の部屋110のそれぞれの第1設定温度と部屋温度との温度差をもとに決定される。
図3(c)は後述し、
図2に戻る。
【0033】
第3制御部648は、導出部642において導出した第1部屋110aの温度差をもとに、第1ダンパ430aの開度を第1間隔で導出し、導出部642において導出した第2部屋110bの温度差をもとに、第2ダンパ430bの開度を第1間隔で導出する。また、第3制御部648は、導出部642において導出した第3部屋110cの温度差をもとに、第3ダンパ430cの開度を第1間隔で導出する。
図3(c)は、第3制御部648に保持されるテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、温度差に対する「条件」と「開度」との対応関係が示される。「E1」、「E2」、・・・「EN」がしきい値として規定され、これらは「E1」>「E2」>・・・>「EN」の関係を有する。温度差が「E1」以上であれば、第3制御部648は、開度「F1」を選択する。また、温度差が「E1」より小さく、かつ「E2」以上であれば、第1制御部644は、開度「F2」を選択する。開度は、「F1」>「F2」>・・・>「FN」の関係を有する。つまり、温度差が大きくなるほどダンパ430の開度が大きくされる。このようにダンパ430の開度は、該当する部屋110の第1設定温度と部屋温度との温度差をもとに決定される。また、ダンパ430の開度は、温度差に対応した温度であるともいえる。
図2に戻る。
【0034】
通信部620は、第2制御部646において導出した第2設定温度を第2間隔で空調装置310に送信するとともに、第2制御部646において導出した風量を第1間隔で空調装置310に送信する。また、通信部620は、第1制御部644において導出した出力を第1間隔で搬送ファン330に送信する。さらに、通信部620は、第3制御部648において導出した第1ダンパ430aの開度を第1間隔で第1ダンパ430aに送信し、第2ダンパ430bの開度を第1間隔で第2ダンパ430bに送信し、第3ダンパ430cの開度を第1間隔で第3ダンパ430cに送信する。
【0035】
その結果、空調装置310は、第2設定温度を第2間隔で更新しながら、風量を第1間隔で更新することによって、空調を実行する。また、搬送ファン330は、出力を第1間隔で更新することによって空気を搬送する。さらに、各ダンパ430は、第1間隔で開度を変更する。
【0036】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウエア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0037】
以上の構成による空調システム1000の動作を説明する。
図4は、制御装置600による制御手順を示すフローチャートである。取得部640は、部屋温度、第1設定温度、吸気温度を取得する(S10)。制御部630は、空調装置310の運転モードを取得する(S12)。運転モードは、例えば、暖房、冷房、送風、停止のいずれかである。導出部642は、温度差を導出する(S14)。第2制御部646は、第2設定温度を導出し(S16)、風量を導出する(S18)。第1制御部644は、搬送ファン330の出力値を導出する(S20)。第3制御部648は、ダンパ430の開度を導出する(S22)。制御してから第1間隔が経過すれば(S24のY)、ステップ10に戻る。制御してから第1間隔が経過していない場合(S24のN)、温度を制御してから第2間隔が経過すれば(S26のY)、取得部640は吸気温度を取得する(S28)。第2制御部646は、第2設定温度を導出し(S30)、ステップ24に戻る。温度を制御してから第2間隔が経過しない場合(S26のN)、ステップ24に戻る。
【0038】
本実施例によれば、第1間隔で導出した空調強度に対して吸気温度を使用して第2設定温度を第2間隔で導出するので、第1間隔よりも短い第2間隔で第2設定温度を更新できる。また、第1間隔よりも短い第2間隔で第2設定温度が更新されるので、空調装置の吸気温度の変化に対する追従性を向上できる。また、暖房運転を実行する場合に、第1設定温度から部屋温度を減算することによって温度差を導出し、冷房運転を実行する場合に、部屋温度から第1設定温度を減算することによって温度差を導出するので、第1設定温度に到達していない程度を示すための温度差を正確に導出できる。また、暖房運転を実行する場合に、吸気温度と空調強度とを加算することによって第2設定温度を導出し、冷房運転を実行する場合に、吸気温度から空調強度を減算することによって第2設定温度を導出するので、第2設定温度を正確に導出できる。
【0039】
また、温度差が大きくなるほど空調強度を大きくするので、空調装置310を正確に制御できる。また、ダンパ430の開度を第1間隔で導出するので、空調アルゴルズムを正確に実行できる。また、空調装置310の風量を第1間隔で導出するので、空調アルゴルズムを正確に実行できる。
【0040】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の空調システム(1000)は、吸引した空気の温度を調整して吹き出す空調装置(310)と、空調装置(310)から吹き出された空気を部屋(110)に送る搬送ファン(330)と、空調装置(310)と搬送ファン(330)とを制御する制御装置(600)とを備える。制御装置(600)は、部屋(110)の部屋温度と、部屋(110)に対する第1設定温度と、空調装置(310)が吸引した空気の温度である吸気温度とを取得する取得部(640)と、取得部(640)において取得した部屋温度と第1設定温度との温度差を第1間隔で導出する導出部(642)と、導出部(642)において導出した温度差をもとに、搬送ファン(330)の出力を第1間隔で導出する第1制御部(644)と、導出部(642)において導出した温度差をもとに空調強度を第1間隔で導出するとともに、空調強度と、取得部(640)において取得した吸気温度とをもとに、空調装置(310)に対する第2設定温度を第2間隔で導出する第2制御部(646)とを備える。第2間隔は第1間隔よりも短い。
【0041】
導出部(642)は、空調装置(310)が暖房運転を実行する場合に、第1設定温度から部屋温度を減算することによって温度差を導出し、空調装置(310)が冷房運転を実行する場合に、部屋温度から第1設定温度を減算することによって温度差を導出し、第2制御部(646)は、空調装置(310)が暖房運転を実行する場合に、吸気温度と空調強度とを加算することによって第2設定温度を導出し、空調装置(310)が冷房運転を実行する場合に、吸気温度から空調強度を減算することによって第2設定温度を導出してもよい。
【0042】
第2制御部(646)は、温度差が大きくなるほど空調強度を大きくしてもよい。
【0043】
搬送ファンと部屋(110)との間に設けられるダンパ(430)をさらに備えてもよい。制御装置(600)は、導出部(642)において導出した温度差をもとに、ダンパ(430)の開度を第1間隔で導出する第3制御部(648)をさらに備えてもよい。第2制御部(646)は、導出部(642)において導出した温度差をもとに、空調装置(310)の風量を第1間隔で導出してもよい。
【0044】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0045】
100 施設、 110 部屋、 200 外気導入口、 202 外気導入ダクト、 204 外気導入ファン、 210 内気導入ファン、 212 内気導入口、 214 内気導入ダクト、 300 空調ボックス、 310 空調装置、 312 吸気温度センサ、 320 HEPAフィルタ、 330 搬送ファン、 400 搬送ダクト、 410 分岐チャンバ、 420 分岐搬送ダクト、 430 ダンパ、 440 吹出口、 450 部屋温度センサ、 500 加湿装置、 600 制御装置、 610 操作部、 620 通信部、 630 制御部、 640 取得部、 642 導出部、 644 第1制御部、 646 第2制御部、 648 第3制御部、 1000 空調システム。