(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】空気清浄システム及び空気清浄方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20240112BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240112BHJP
F24F 120/12 20180101ALN20240112BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/74
F24F120:12
(21)【出願番号】P 2019233964
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】櫟原 勉
(72)【発明者】
【氏名】永谷 吉祥
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-061184(JP,A)
【文献】特開2011-174624(JP,A)
【文献】特開2019-150564(JP,A)
【文献】特開2021-103020(JP,A)
【文献】特開2021-103029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
F24F 8/80
F24F 7/007
A61L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を送出する送風ユニットと、
複数のマイクロフォンを含む検出ユニットと、
前記送風ユニットを制御する制御ユニットとを備え、
前記検出ユニットは、前記複数のマイクロフォンが咳又はくしゃみの音を検出することにより、前記音が発生した位置と前記音が伝わる方向とを検出し、
前記制御ユニットは、前記検出ユニットによって検出された位置と方向とに基づいて、前記咳又はくしゃみと共に生じる感染性物質の放出範囲を推定し、推定した放出範囲を含む領域に向かって前記風を送出するように前記送風ユニットを制御
し、
前記送風ユニットは、前記風を送出した後、前記複数のマイクロフォンによって前記音が検出された場合、前記音の検出後の風速を前記音の検出前の風速よりも大きくする
空気清浄システム。
【請求項2】
前記検出ユニットを複数備える
請求項1に記載の空気清浄システム。
【請求項3】
前記検出ユニットによる前記音の検出方向の角度分解能は、前記送風ユニットの送風方向の角度分解能より狭い
請求項1又は2に記載の空気清浄システム。
【請求項4】
複数のマイクロフォンが咳又はくしゃみの音を検出することにより、前記音が発生した位置と前記音が伝わる方向とを検出するステップと、
検出された位置と方向とに基づいて、前記咳又はくしゃみと共に生じる感染性物質の放出範囲を推定し、推定した放出範囲を含む領域に向かって風を送出するように送風ユニットを制御するステップとを含
み、
前記制御するステップでは、前記送風ユニットが前記風を送出した後、前記複数のマイクロフォンによって前記音が検出された場合、前記音の検出後の風速を前記音の検出前の風速よりも大きくする
空気清浄方法。
【請求項5】
請求項4に記載の空気清浄方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄システム及び空気清浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、音検知センサを用いて咳又はくしゃみの音が発生した位置を検出し、検出した位置に向けて、薬剤を含む気流を噴射する浄化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病人が咳又はくしゃみを行った場合、当該病人の口からインフルエンザウイルスなどのウイルス又は菌である感染性物質が放出される。感染性物質が濃い濃度で空間中を浮遊している場合、近くに居る人が一度に大量の感染性物質を吸い込み、病気に感染する可能性が高くなる。一方で、感染性物質の濃度を薄くすれば、人が吸い込む感染性物質の量が少なくなるので、病気には感染しにくくなる。このため、感染性物質を希釈することによる空気感染の抑制が期待される。
【0005】
咳又はくしゃみと同時に人の口から放出される感染性物質は、通常、人の顔の正面方向に向かって広がって浮遊する。このため、咳又はくしゃみの音が発生した位置に向けて気流を噴射したとしても、感染性物質の一部は口元から離れた位置に移動しており、効果的に浄化できないという問題がある。顔向きを検出する手段として、カメラなどの画像センサを利用することも考えられるが、システムの複雑化及び高コスト化が避けられない。
【0006】
そこで、本発明は、感染性物質を簡単かつ効率良く希釈することができる空気清浄システム及び空気清浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る空気清浄システムは、風を送出する送風ユニットと、複数のマイクロフォンを含む検出ユニットと、前記送風ユニットを制御する制御ユニットとを備え、前記検出ユニットは、前記複数のマイクロフォンが咳又はくしゃみの音を検出することにより、前記音が発生した位置と前記音が伝わる方向とを検出し、前記制御ユニットは、前記検出ユニットによって検出された位置と方向とに基づいて、前記咳又はくしゃみと共に生じる感染性物質の放出範囲を推定し、推定した放出範囲を含む領域に向かって前記風を送出するように前記送風ユニットを制御する。
【0008】
本発明の一態様に係る空気清浄方法は、複数のマイクロフォンが咳又はくしゃみの音を検出することにより、前記音が発生した位置と前記音が伝わる方向とを検出するステップと、検出された位置と方向とに基づいて、前記咳又はくしゃみと共に生じる感染性物質の放出範囲を推定し、推定した放出範囲を含む領域に向かって風を送出するように送風ユニットを制御するステップとを含む。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記空気清浄方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現することができる。あるいは、当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感染性物質を簡単かつ効率良く希釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る空気清浄装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る空気清浄装置による音の検出方向の角度分解能と送風方向の角度分解能とを示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る空気清浄装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る空気清浄装置による送風範囲を示す図である。
【
図5】
図5は、比較例に係る空気清浄装置による送風範囲を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2に係る空気清浄システムの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2の変形例に係る空気清浄システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態に係る空気清浄システム及び空気清浄方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0014】
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る空気清浄システムの構成について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る空気清浄装置1の構成を示すブロック図である。空気清浄装置1は、空気清浄システムの一例であり、空気清浄システムが備える構成要素を一体的に備える装置である。
【0016】
図1に示されるように、空気清浄装置1は、送風ユニット10と、検出ユニット20と、制御ユニット30とを備える。送風ユニット10、検出ユニット20及び制御ユニット30は、空気清浄装置1の外郭筐体の内部に収納され、又は、外部に取り付けられている。
【0017】
送風ユニット10は、風80を送出する。本実施の形態では、送風ユニット10は、指向性の強い風80を送出する。具体的には、送風ユニット10は、一の直線方向に沿って直進性が高く、かつ、広がりの少ない風80を送出するサーキュレータである。風80の送出方向(以下、送風方向と記載)は、風80の直進方向を意味する。
【0018】
図1に示されるように、送風ユニット10は、風向調整部11と、風速調整部12とを備える。
【0019】
風向調整部11は、風80の送出方向を調整する。例えば、風向調整部11は、所定の範囲内で送風方向をスイングさせる。送風ユニット10による送風方向の調整の具体例については、後で説明する。
【0020】
風向調整部11は、例えば、送風ユニット10自体の向きを回転させる回転台である。あるいは、風向調整部11は、送風ユニット10の風80の吹出口に設けられた可動式のルーバーであってもよい。送風方向の変更ができれば、風向調整部11の具体的な構成は特に限定されない。
【0021】
風速調整部12は、風80の風速を調整する。風速調整部12は、例えば、風80を生成するファンの回転数を調整することで、風80の風速を調整する。風速調整部12は、ファンを回転させるモータに電流を供給する電源及び制御回路などで実現される。
【0022】
検出ユニット20は、複数のマイクロフォンを含んでいる。本実施の形態では、
図1に示されるように、検出ユニット20は、マイクアレイ21を含んでいる。検出ユニット20は、マイクアレイ21が咳又はくしゃみの音を検出することにより、音が発生した位置(以下、音源位置と記載)と音が伝わる方向(以下、伝搬方向と記載)とを検出する。
【0023】
マイクアレイ21は、所定の面内に配置された複数のマイクロフォンを含んでいる。例えば、複数のマイクロフォンは、環状に並んで配列されているが、行列状に配列されていてもよい。あるいは、複数のマイクロフォンは、直線状に並んで配列されていてもよい。検出ユニット20は、マイクアレイ21に含まれる複数のマイクロフォンの各々が検出した音の位相差及び減衰の程度などに基づいて音源位置及び伝搬方向を検出する。
【0024】
なお、マイクアレイ21が検出した音が、咳又はくしゃみの音であるか否かは、パターン解析によって判定される。例えば、検出ユニット20は、咳又はくしゃみの音声パターンをメモリに予め記憶している。検出ユニット20は、マイクアレイ21が検出した音と、メモリに記憶された音声パターンとを比較することにより、マイクアレイ21が検出した音が咳又はくしゃみの音であるか否かを判定する。咳又はくしゃみの音声パターンは、標準的な咳又はくしゃみの音声パターンであるが、特定の人物の咳又はくしゃみの音声パターンであってもよい。例えば、検出ユニット20は、空気清浄装置1が配置される空間の利用者(例えば、居住者又は訪問者など)の咳又はくしゃみの音声パターンを比較対象として記憶してもよい。これにより、咳又はくしゃみの判定精度を高めることができる。また、検出ユニット20は、機械学習を行うことで、咳又はくしゃみの音の判定を行ってもよい。
【0025】
制御ユニット30は、送風ユニット10を制御する。具体的には、制御ユニット30は、検出ユニット20による検出結果に基づいて、送風ユニット10を制御する。より具体的には、制御ユニット30は、検出ユニット20によって検出された音の位置と方向とに基づいて、咳又はくしゃみと共に生じる感染性物質の放出範囲を推定し、推定した放出範囲を含む領域に向かって風80を送出するように送風ユニット10を制御する。
【0026】
感染性物質は、例えば、病人の口から咳又はくしゃみとともに放出されて、空気中を浮遊する。感染性物質は、人が咳又はくしゃみを行った場合、当該人の口元から、当該人の正面の前方に向かって所定範囲(すなわち、放出範囲)内を浮遊する。また、咳又はくしゃみが行われた場合、その音の伝搬方向は、通常、顔の正面方向、すなわち、感染性物質が放出される方向と一致する。このため、音の伝搬方向を検出することにより、感染性物質の放出範囲を推定することができる。
【0027】
制御ユニット30は、検出ユニット20によって検出された音源位置を起点とし、検出された伝搬方向に所定の距離進んだ地点までの範囲を、感染性物質の放出範囲として推定する。所定の距離は、例えば1mなどの予め定められた距離であるが、咳若しくはくしゃみを行った人の個人的な特徴、又は、咳若しくはくしゃみが行われた空間の環境に応じて適宜変更されてもよい。例えば、制御ユニット30は、空間内に風が流れている場合、風向き及び風速に応じて距離を変更してもよい。これにより、感染性物質の放出範囲の推定精度を高めることができる。また、咳の音が検出された場合の放出範囲と、くしゃみの音が検出された場合の放出範囲とは異なっていてもよい。例えば、くしゃみの場合は咳の場合よりも感染性物質が顔の正面方向の遠い位置まで届きやすくなるので、くしゃみの場合の放出範囲は、咳の場合の放出範囲よりも、音源位置から離れた位置を含んでいてもよい。
【0028】
また、制御ユニット30は、検出ユニット20によって咳又はくしゃみの音が検出された場合に、風速が大きい風80を送出させるように送風ユニット10を制御する。例えば、制御ユニット30は、風速調整部12を制御することにより、咳又はくしゃみの音が検知される前の風80の風速よりも、咳又はくしゃみの音が検知された後の風80の風速を大きくする。
【0029】
制御ユニット30は、例えば、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)によって実現される。なお、集積回路は、LSIに限られず、専用回路又は汎用プロセッサであってもよい。例えば、制御ユニット30は、マイクロコントローラであってもよい。プロセッサ又はマイクロコントローラは、例えば、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを含んでいる。また、制御ユニット30は、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内の回路セルの接続及び設定が再構成可能なリコンフィギュラブルプロセッサであってもよい。制御ユニット30が実行する機能は、ソフトウェアで実現されてもよく、ハードウェアで実現されてもよい。
【0030】
[音の検出と風向の調整]
次に、マイクアレイ21による音の検出方向の角度分解能と送風方向の角度分解能との関係について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る空気清浄装置1による音の検出方向の角度分解能と送風方向の角度分解能とを示す図である。
【0031】
図2には、空気清浄装置1が風80を送出する空間を上面視した場合を示している。ここでは、空気清浄装置1は、水平方向に風80を送出する場合であって、水平面内で送風方向を変更可能である場合を想定する。なお、送風方向は、水平面内だけでなく、鉛直面内でも変更可能であってもよい。また、風80の吹出口の位置を変更可能であってもよい。例えば、空気清浄装置1自体が移動可能であってもよい。
【0032】
図2に示される例では、送風ユニット10の送風可能範囲16は、空気清浄装置1の風80の吹出口を中心として、180°の範囲である。送風可能範囲16は、左側範囲13、中央範囲14及び右側範囲15を含んでいる。左側範囲13、中央範囲14及び右側範囲15は、送風可能範囲16を均等に三分割した範囲である。左側範囲13、中央範囲14及び右側範囲15はそれぞれ、空気清浄装置1の風80の吹出口を中心として、中心角が60°の範囲である。
【0033】
なお、
図2では、図示の都合上、空気清浄装置1から等距離の位置に描いた破線の円弧によって送風可能範囲16、左側範囲13、中央範囲14及び右側範囲15を規定しているが、左側範囲13、中央範囲14及び右側範囲15は、中心角の大きさとその向きとで定義される範囲である。つまり、破線の円弧の外側も送風可能範囲16とみなしてよい。このことは、後述する
図4~
図6においても同様である。
【0034】
風向調整部11は、左側範囲13、中央範囲14及び右側範囲15から1つ以上の範囲を選択し、選択した範囲内で送風方向をスイングする。例えば、中央範囲14を選択した場合、風向調整部11は、左側範囲13との境界から右側範囲15の境界まで、送風方向が滑らかに繰り返し往復させる。
【0035】
送風方向の角度分解能は、送風可能範囲16の大きさ及び分割数によって定められる。具体的には、送風方向の角度分解能は、送風可能範囲16の中心角を分割数で割った値である。
図2に示される例では、送風方向の角度分解能は、60°(=180°÷3)である。つまり、送風方向の角度分解能は、送風方向をスイングさせる最小範囲の角度αである。
【0036】
また、音の検出方向の角度分解能は、音源位置が位置する範囲22を表す角度の最小値に相当する。例えば、
図2に示されるように、音の検出方向の角度分解能は、空気清浄装置1を中心とする角度βで表される。
【0037】
本実施の形態では、音の検出方向の角度分解能は、送風方向の角度分解能より狭い。つまり、角度βは、角度αより小さい。例えば、角度βは、30°以下であるが、これに限らない。これにより、音の検出方向を高い精度で検出することができるので、音源位置及び伝搬方向の検出精度を高めることができる。したがって、感染性物質の放出範囲の推定精度を高めることができるので、感染性物質を拡散させるために適した方向に風80を送出させることができる。よって、感染性物質の希釈を効果的に行うことができる。
【0038】
なお、音の検出方向の角度分解能と送風方向の角度分解能とは、一致していてもよい。あるいは、音の検出方向の角度分解能は、送風方向の角度分解能よりも広くてもよい。具体的には、角度βは、角度αに等しくてもよく、角度αよりも大きくてもよい。
【0039】
[動作]
続いて、本実施の形態に係る空気清浄装置1の動作について、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0040】
図3は、本実施の形態に係る空気清浄装置1の動作を示すフローチャートである。
図4は、本実施の形態に係る空気清浄装置1による送風範囲81を示す図である。
【0041】
図3に示されるように、検出ユニット20のマイクアレイ21が、人90が行う咳又はくしゃみの音を検出するまで、空気清浄装置1は待機する(S10でNo)。待機中は、送風ユニット10は、送風可能範囲16の全体に風80を送出するように、180°の範囲で送風方向をスイングしている。あるいは、送風ユニット10は、送風方向を一方向に固定して風80を送出していてもよい。あるいは、送風ユニット10は、風80の送出を停止していてもよい。
【0042】
マイクアレイ21が咳又はくしゃみの音を検出した場合(S10でYes)、検出ユニット20は、検出した音に基づいて音源位置91及び伝搬方向92を検出する(S11)。
図4に示されるように、音源位置91は、咳又はくしゃみを行った人90の口元である。伝搬方向92は、人90の顔の正面方向である。次に、制御ユニット30は、検出された音源位置91及び伝搬方向92に基づいて、感染性物質の放出範囲93を推定する(S12)。
【0043】
次に、制御ユニット30は、推定した放出範囲93を含む領域に向かって強い風80を送出するように送風ユニット10を制御する(S13)。
図4に示される例では、放出範囲93は、送風可能範囲16のうち中央範囲14及び右側範囲15内に位置している。このため、制御ユニット30は、中央範囲14及び右側範囲15を送風範囲81として決定する。制御ユニット30は、送風範囲81の全体に風80を送出するように、具体的には、120°の範囲で送風方向が変更されるように、送風ユニット10を制御する。このとき、制御ユニット30は、咳又はくしゃみの音が検出される前に送出していた風よりも風速が大きい風80を送出するように送風ユニット10を制御する。これにより、放出範囲93に含まれる感染性物質は、強い風80によって拡散されて希釈される。
【0044】
[効果など]
図5は、比較例に係る空気清浄装置1xによる送風範囲を示す図である。比較例に係る空気清浄装置1xは、放出範囲93の推定を行わずに、音源位置91のみに基づいて送風範囲81を決定する。
【0045】
この場合、音源位置91が中央範囲14内に位置しているので、
図5に示されるように、送風範囲81は中央範囲14として決定される。このため、咳又はくしゃみとともに発生した感染性物質の多くが存在する放出範囲93には、ほとんど風80が届かない。したがって、感染性物質が放出範囲93に留まって浮遊することになって、感染性物質を拡散させて希釈することができない。
【0046】
これに対して、本実施の形態に係る空気清浄システムの一例である空気清浄装置1は、風80を送出する送風ユニット10と、複数のマイクロフォンを含む検出ユニット20と、送風ユニット10を制御する制御ユニット30とを備える。検出ユニット20は、複数のマイクロフォンが咳又はくしゃみの音を検出することにより、音が発生した位置である音源位置91と音が伝わる方向である伝搬方向92とを検出する。制御ユニット30は、検出ユニット20によって検出された音源位置91と伝搬方向92とに基づいて、咳又はくしゃみと共に生じる感染性物質の放出範囲93を推定し、推定した放出範囲93を含む領域に向かって風80を送出するように送風ユニット10を制御する。
【0047】
このように、複数のマイクロフォンによる音の検出結果に基づいて、感染性物質の放出範囲93を精度良く推定することができる。このため、推定された放出範囲93内を浮遊する感染性物質を、風80によって効率良く拡散させることができ、空間内の感染性物質を効率良く希釈することができる。
【0048】
空間内に長期間、感染性物質の濃度が高い領域が存在するのを抑制することができるので、病気の空気感染の拡大を抑制することができる。希釈された感染性物質は、空間内に配置された浄化装置(例えば、次亜塩素酸発生器又はオゾン発生器など)によって収集され、必要に応じて分解などの無害化処理が行われる。
【0049】
また、マイクロフォン以外のセンサ(例えば、カメラなど)を利用しなくてもよいので、空気清浄システムの構成の複雑化を抑制することができる。つまり、空気清浄装置1によれば、感染性物質を簡単に希釈することができる。また、カメラを用いて人の顔を撮影することによって人の顔向きを判定する場合に比べて、プライバシーを保護することができる。
【0050】
また、例えば、検出ユニット20による音の検出方向の角度分解能は、送風ユニット10の送風方向の角度分解能より狭い。
【0051】
これにより、音の検出方向を高い精度で検出することができるので、音源位置91及び伝搬方向92の検出精度を高めることができる。したがって、感染性物質の放出範囲93の推定精度を高めることができるので、感染性物質を拡散させるために適した方向に風を送出させることができる。よって、感染性物質の希釈を効果的に行うことができる。
【0052】
また、例えば、本実施の形態に係る空気清浄方法は、複数のマイクロフォンが咳又はくしゃみの音を検出することにより、音が発生した位置と音が伝わる方向とを検出するステップと、検出された位置と方向とに基づいて、咳又はくしゃみと共に生じる感染性物質の放出範囲93を推定し、推定した放出範囲93を含む領域に向かって風を送出するように送風ユニットを制御するステップとを含む。また、例えば、本実施の形態に係るプログラムは、上記空気清浄方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0053】
これにより、上述した空気清浄システムの場合と同様に、感染性物質を簡単かつ効率良く希釈することができる。
【0054】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
【0055】
実施の形態2に係る空気清浄システムは、実施の形態1に係る空気清浄システムと比較して、検出ユニットを複数備える点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0056】
図6は、本実施の形態に係る空気清浄システム100の構成を示す図である。
図6に示されるように、空気清浄システム100は、2つの空気清浄装置1a及び1bを備える。空気清浄装置1a及び1bはそれぞれ、実施の形態1に係る空気清浄装置1と同じ構成を有する。つまり、空気清浄装置1a及び1bはそれぞれが、送風ユニット10と、検出ユニット20と、制御ユニット30とを備える。空気清浄装置1aの制御ユニット30と空気清浄装置1bの制御ユニット30とは、互いに通信可能に有線又は無線で接続されており、各々の検出ユニット20による検出結果を共有する。これにより、音源位置91及び伝搬方向92の検出精度を高めることができる。
【0057】
空気清浄装置1a及び1bは、空間内の互いに異なる位置に配置されている。例えば、空気清浄装置1aの送風可能範囲16aと空気清浄装置1bの送風可能範囲16bとは、一部が重なっている。例えば、送風可能範囲16aの右側範囲15aと、送風可能範囲16bの左側範囲13bとが重なっている。このため、2方向から風80を送出することにより、放出範囲93に存在する感染性物質を速やかに拡散させることができる。
【0058】
空気清浄装置1a及び1bは、互いに向かい合って配置されていてもよい。つまり、送風可能範囲16aの中央範囲14aと、送風可能範囲16bの中央範囲14bとが重なっていてもよい。送風可能範囲16aの左側範囲13a、中央範囲14a及び右側範囲15a、並びに、送風可能範囲16bの左側範囲13b、中央範囲14b及び右側範囲15bはそれぞれ、大きさ(角度)が互いに異なっていてもよい。
【0059】
また、送風可能範囲16aと送風可能範囲16bとは、全く重なっていなくてもよい。例えば、空気清浄装置1a及び1bは、互いに反対方向を向くように配置されていてもよい。これにより、より広い範囲に風80を送出することができるので、空気清浄装置1aからの風80では届かない範囲の感染性物質を効果的に拡散させることができる。
【0060】
空気清浄システム100は、3つ以上の空気清浄装置1を備えてもよい。あるいは、空気清浄システム100は、1つのみの送風ユニット10と、複数の検出ユニットとを備えてもよい。
【0061】
図7は、本実施の形態の変形例に係る空気清浄システム101の構成を示すブロック図である。
図7に示されるように、空気清浄システム101は、送風ユニット10と、2つの検出ユニット120と、制御ユニット30とを備える。送風ユニット10及び制御ユニット30は、実施の形態1と同じである。
【0062】
図7に示される検出ユニット120は、マイクアレイ21の代わりに、複数のマイクロフォン21a及び21bを備える。なお、検出ユニット120が備えるマイクロフォンの個数は、3個以上であってもよい。複数のマイクロフォン21a及び21bはそれぞれ、互いに異なる位置に配置される。
【0063】
複数の検出ユニット120の各々の検出結果は、制御ユニット30に出力される。これにより、制御ユニット30は、各々の検出ユニット120による検出結果を利用することで、音源位置91及び伝搬方向92の検出精度を高めることができる。
【0064】
なお、検出ユニット120による音源位置91及び伝搬方向92の検出のための信号処理と、制御ユニット30による放出範囲93の推定処理とは、同一のハードウェア資源を用いて実現されてもよい。例えば、1つのプロセッサが、複数のマイクロフォン21a及び21bからの音声信号に基づいて音源位置91及び伝搬方向92を検出し、かつ、放出範囲93を推定してもよい。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係る空気清浄システム100又は101では、検出ユニット20又は120を複数備える。
【0066】
これにより、検出ユニット20又は120を複数備えることにより、音源位置及び伝搬方向の検出精度を高めることができる。
【0067】
(その他)
以上、本発明に係る空気清浄システム及び空気清浄方法について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0068】
例えば、送風ユニット10は、直進性が弱く、広がりやすい風を送出してもよい。例えば、送風ユニット10は、扇風機、エアコン、空気清浄機などの送風機能を有する機器であってもよい。
【0069】
また、例えば、送風ユニット10は、風速調整部12を備えなくてもよい。送風ユニット10は、咳又はくしゃみの音の検出結果に関わらず、一定速度の風80を送出してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態で説明した装置間の通信方法については特に限定されるものではない。装置間で無線通信が行われる場合、無線通信の方式(通信規格)は、例えば、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は、無線LAN(Local Area Network)などの近距離無線通信である。あるいは、無線通信の方式(通信規格)は、インターネットなどの広域通信ネットワークを介した通信でもよい。また、装置間においては、無線通信に代えて、有線通信が行われてもよい。有線通信は、具体的には、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)又は有線LANを用いた通信などである。
【0071】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、空気清浄システムが備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。また、空気清浄システムは、単一の装置として実現されてもよい。
【0072】
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
【0073】
また、上記実施の形態において、制御ユニットなどの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0074】
また、制御ユニットなどの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0075】
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
【0076】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0077】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1、1a、1b 空気清浄装置(空気清浄システム)
10 送風ユニット
20、120 検出ユニット
21 マイクアレイ
21a、21b マイクロフォン
30 制御ユニット
80 風
81 送風範囲
90 人
91 音源位置
92 伝搬方向
93 放出範囲
100、101 空気清浄システム