(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】病原体分布情報提供システム、病原体分布情報提供サーバー及び病原体分布情報提供方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/80 20180101AFI20240112BHJP
【FI】
G16H50/80
(21)【出願番号】P 2020516156
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014630
(87)【国際公開番号】W WO2019208123
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018086491
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】原 恒平
(72)【発明者】
【氏名】村田 晶子
(72)【発明者】
【氏名】高柳 哲也
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-275708(JP,A)
【文献】特開2009-271326(JP,A)
【文献】特開2016-218598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる位置に配置され、空気中の病原体を検出するための複数の病原体検出部と、
前記複数の病原体検出部で得られた複数の検出情報を、通信ネットワークを介して収集する通信部と、
収集された前記複数の検出情報と前記複数の病原体検出部の位置情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記複数の検出情報に基づいて、複数の病原体情報の分布を表す病原体分布情報を、前記通信部を介して情報端末に提供する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数の病原体検出部の各々に対応する粒度情報に基づいて、前記情報端末に表示される前記病原体分布情報における前記複数の病原体情報の各々の表示粒度を設定し、
設定された前記表示粒度及び前記位置情報に基づいて前記複数の病原体情報の各々を地図上に重畳することにより、前記病原体分布情報を作成し、
前記制御部は、前記病原体分布情報の作成において、前記複数の病原体情報の各々について、粒度情報が示す前記地図上の領域のサイズより小さいサイズを有する前記地図上の領域に当該病原体情報を重畳することを禁止する、
病原体分布情報提供システム。
【請求項2】
前記複数の病原体検出部は、第一位置に配置された第一病原体検出部を含み、
前記複数の検出情報は、前記第一病原体検出部で得られた第一検出情報を含み、
前記記憶部は、第一許可下限粒度を示す第一粒度情報を、前記第一病原体検出部に対応付けて記憶しており、
前記制御部は、前記通信部が第一縮尺の第一地図上における第一病原体分布情報の要求を前記情報端末から受信し、かつ、前記第一地図が前記第一位置を含む場合に、
(i)前記第一地図に対応する第一既定粒度を取得し、
(ii-1)前記第一既定粒度が前記第一許可下限粒度以上である場合に、前記第一検出情報に基づく第一病原体情報のための第一表示粒度として前記第一既定粒度を設定し、
(ii-2)前記第一既定粒度が前記第一許可下限粒度未満である場合に、前記第一表示粒度として前記第一許可下限粒度を設定し、
(iii)設定された前記第一表示粒度に対応する第一サイズを有する第一領域であって前記第一地図上の前記第一位置にある第一領域に前記第一病原体情報を重畳することにより、前記第一病原体分布情報を作成する、
請求項1に記載の病原体分布情報提供システム。
【請求項3】
前記複数の病原体検出部は、さらに、第二位置に配置された第二病原体検出部を含み、
前記複数の検出情報は、前記第二病原体検出部で得られた第二検出情報を含み、
前記記憶部は、さらに、第二許可下限粒度を示す第二粒度情報を、前記第二病原体検出部に対応付けて記憶しており、
前記制御部は、前記通信部が前記第一病原体分布情報の要求を前記情報端末から受信し、かつ、前記第一地図がさらに前記第二位置を含む場合に、
(ii-3)前記第一既定粒度が前記第二許可下限粒度以上である場合に、前記第二検出情報に基づく第二病原体情報のための第二表示粒度として前記第一既定粒度を設定し、
(ii-4)前記第一既定粒度が前記第二許可下限粒度未満である場合に、前記第二表示粒度として前記第二許可下限粒度を設定し、
(iii)前記第一領域に前記第一病原体情報を重畳し、かつ、設定された前記第二表示粒度に対応するサイズを有する第二領域であって前記第一地図上の前記第二位置にある第二領域に前記第二病原体情報を重畳することにより、前記第一病原体分布情報を作成する、
請求項2に記載の病原体分布情報提供システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記通信部が前記第一縮尺とは異なる第二縮尺の第二地図上における第二病原体分布情報の要求を前記情報端末から受信し、かつ、前記第二地図が前記第一位置を含む場合に、
(iv)前記第二地図に対応する第二既定粒度を取得し、
(v-1)前記第二既定粒度が前記第一許可下限粒度以上である場合に、前記第一病原体情報のための第三表示粒度として前記第二既定粒度を設定し、
(v-2)前記第二既定粒度が前記第一許可下限粒度未満である場合に、前記第三表示粒度として前記第一許可下限粒度を設定し、
(vi)設定された前記第三表示粒度に対応する第三サイズを有する第三領域であって前記第二地図上の前記第一位置にある第三領域に前記第一病原体情報を重畳することにより、前記第二病原体分布情報を作成する、
請求項2又は3に記載の病原体分布情報提供システム。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、前記複数の病原体検出部の各々について、当該病原体検出部で得られた検出情報に基づいて、当該病原体検出部が配置された位置における感染リスクを評価し、
前記複数の病原体情報の各々は、対応する検出情報に基づく前記感染リスクの評価結果を示す、
請求項1~4のいずれか1項に記載の病原体分布情報提供システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数の病原体検出部によって検出された病原体の濃度及び予め定められたHID50(50% human infectious dose)に基づいて、前記感染リスクを評価する、
請求項5に記載の病原体分布情報提供システム。
【請求項7】
前記複数の検出情報の各々は、対応する病原体検出部が配置された位置における湿度情報を含み、
前記制御部は、前記湿度情報から得られる絶対湿度に基づいて、前記感染リスクを評価する、
請求項5又は6に記載の病原体分布情報提供システム。
【請求項8】
前記制御部は、
さらに、前記複数の病原体検出部の各々が配置された位置における前記病原体による病気の流行レベル情報を取得し、
取得された前記流行レベル情報に基づいて、前記感染リスクを評価する、
請求項5~7のいずれか1項に記載の病原体分布情報提供システム。
【請求項9】
前記複数の検出情報の各々は、対応する病原体検出部が配置された位置における人の多さを示す混雑情報を含み、
前記制御部は、前記混雑情報に基づいて、前記感染リスクを評価する、
請求項5~8のいずれか1項に記載の病原体分布情報提供システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数の病原体情報の各々が示す感染リスクレベルが閾値レベルよりも低い場合に、前記粒度情報に関わらず、当該病原体情報に対応する病原体検出部の位置をピンポイントで指し示すマークを前記地図上に重畳する、
請求項5~9のいずれか1項に記載の病原体分布情報提供システム。
【請求項11】
異なる位置に配置され、空気中の病原体を検出するための複数の病原体検出部で得られた複数の検出情報を、通信ネットワークを介して収集する通信部と、
収集された前記複数の検出情報と前記複数の病原体検出部の位置情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記複数の検出情報に基づいて、複数の病原体情報の分布を表す病原体分布情報を前記通信部を介して情報端末に提供する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数の病原体検出部の各々に対応する粒度情報に基づいて、前記情報端末に表示される前記病原体分布情報における前記複数の病原体情報の各々の表示粒度を設定し、
設定された前記表示粒度及び前記位置情報に基づいて前記複数の病原体情報の各々を地図上に重畳することにより、前記病原体分布情報を作成し、
前記病原体分布情報の作成において、前記複数の病原体情報の各々について、粒度情報が示す前記地図上の領域のサイズより小さいサイズを有する前記地図上の領域に当該病原体情報を重畳することを禁止する、
病原体分布情報提供サーバー。
【請求項12】
コンピュータが行う病原体分布情報提供方法であって、
異なる位置に配置された複数の病原体検出部を用いて空気中の病原体を検出するステップと、
前記複数の病原体検出部で得られた複数の検出情報を、通信ネットワークを介して収集するステップと、
前記複数の検出情報に基づいて、複数の病原体情報の分布を表す病原体分布情報を情報端末に提供するステップと、を含み
前記病原体分布情報を提供するステップでは、
前記複数の病原体検出部の各々に対応する粒度情報に基づいて、前記情報端末に表示される前記病原体分布情報における前記複数の病原体情報の各々の表示粒度を設定し、
設定された前記表示粒度及び前記複数の病原体検出部の位置情報に基づいて前記複数の病原体情報の各々を地図上に重畳することにより、前記病原体分布情報を作成し、
前記病原体分布情報の作成において、前記複数の病原体情報の各々について、粒度情報が示す前記地図上の領域のサイズより小さいサイズを有する前記地図上の領域に当該病原体情報を重畳することを禁止する、
病原体分布情報提供方法。
【請求項13】
コンピュータが行う病原体分布情報提供方法であって、
第1検出器によって取得された第1雰囲気中の第1病原体の第1情報を取得し、
前記第1情報に基づいて感染が生じる度合いを示す第2情報を生成し、
前記第1検出器に対する連続領域のサイズを示す第3情報を取得し、
前記第3情報に基づいて、前記第1検出器の場所を含む第1の連続領域に前記第2情報が付加された地図を生成し、
前記地図は前記第2情報が前記第1検出器の場所を直接的に付加されていないことを示す、
病原体分布情報提供方法。
【請求項14】
前記第3情報が第1の町であり、前記第1検出器が第1建物に設置され、前記第1建物と第2建物が前記第1の町に含まれる場合、前記地図は前記第2情報が前記第1の町に付加されていることを示し、前記地図は前記第2情報が前記第1建物に直接的に付加されていないことを示す、
請求項
13に記載の病原体分布情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の異なる位置における複数の病原体情報の分布を表す病原体分布情報を提供する病原体分布情報提供システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インフルエンザ感染予防のためにウイルス伝搬情報を伝達するシステムとしては、医療機関、公共機関、又は個人の風邪ウイルス検知装置付き携帯情報端末で得られたインフルエンザ情報を蓄積し、通信ネットワークを介して情報を広く伝達するものがある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、風邪ウイルス伝搬情報伝達装置付き携帯情報端末、医療機関端末及び公共機関端末から風邪ウイルス情報が通信ネットワークを介して風邪ウイルス情報センタ装置へ送信される。そして、風邪ウイルス伝搬情報は、風邪ウイルス情報センタ装置から通信ネットワークを介して各端末へ送信される。
【0004】
また、人の体温の情報を地図上にマッピングし、発熱症状を有する患者の分布を地図上に視覚的に示すことで、風邪の流行の地理的な進行方向について推察可能な情報を提供する技術がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-275708号公報
【文献】特開2013-190875号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】G.J.Harper、“Airborne micro-organisms: survival tests with four viruses”、J.Hyg.,Camb.(1961),59,479
【文献】庄司眞、「季節とインフルエンザの流行」、J.Natl.Inst.Public Health,48(4):1999
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、感染後に症状が現れた患者の情報に基づいて、各種情報が作成される。例えば、特許文献1では、病気の発症後に病院で受診した患者に基づいて情報が作成される。また例えば、特許文献2では、発熱症状を有する患者に基づいて情報が作成される。そのため、感染者が病気を発症した後にしか情報を得ることができず、感染に対する情報の収集が遅れる。また、感染から発症までの間(つまり潜伏期間中)に伝染する病気もあるため、提供される情報だけでは感染予防に十分ではない。
【0008】
そこで、本開示は、感染予防に有益な情報を早期に提供することができる病原体分布情報提供システム等を提供する。
【0009】
本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムは、異なる位置に配置され、空気中の病原体を検出するための複数の病原体検出部と、前記複数の病原体検出部で得られた複数の検出情報を、通信ネットワークを介して収集する通信部と、収集された前記複数の検出情報と前記複数の病原体検出部の位置情報とを対応付けて記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記複数の検出情報に基づいて、複数の病原体情報の分布を表す病原体分布情報を、前記通信部を介して情報端末に提供する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の病原体検出部の各々に対応する粒度情報に基づいて、前記情報端末に表示される前記病原体分布情報における前記複数の病原体情報の各々の表示粒度を設定し、設定された前記表示粒度及び前記位置情報に基づいて前記複数の病原体情報の各々を地図上に重畳することにより、前記病原体分布情報を作成し、前記制御部は、前記病原体分布情報の作成において、前記複数の病原体情報の各々について、粒度情報が示す前記地図上の領域のサイズより小さいサイズを有する前記地図上の領域に当該病原体情報を重畳することを禁止する。
【0010】
なお、この包括的又は具体的な態様は、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能な記録媒体で実現されてもよく、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えばCD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の不揮発性の記録媒体を含む。
【0011】
本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムによれば、感染予防に有益な情報を早期に提供することができる。
【0012】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る感染リスクマップ提供システムの機能構成を示すブロック図
【
図2】実施の形態に係る感染リスクマップ提供システムのシーケンス図
【
図4】実施の形態における感染リスク評価に関する情報の一例を示す図
【
図5】実施の形態における粒度レベルの一例を示す図
【
図6】実施の形態における感染リスクの評価処理を示すフローチャート
【
図7】実施の形態における感染リスクマップの作成処理を示すフローチャート
【
図8】許可下限粒度として粒度レベル「1」が設定されている場合の感染リスクマップの一例を示す図
【
図9】許可下限粒度として粒度レベル「1」が設定されている場合の感染リスクマップの一例を示す図
【
図10】許可下限粒度として粒度レベル「1」が設定されている場合の感染リスクマップの一例を示す図
【
図11】許可下限粒度として粒度レベル「1」が設定されている場合の感染リスクマップの一例を示す図
【
図12】許可下限粒度として粒度レベル「1」が設定されている場合の感染リスクマップの一例を示す図
【
図13】許可下限粒度として粒度レベル「3」が設定されている場合の感染リスクマップの一例を示す図
【
図14】許可下限粒度として粒度レベル「3」が設定されている場合の感染リスクマップの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本開示の基礎となった知見)
発症前にウイルスに関する情報を収集するために、介護老人保健施設及び医療機関などに設置されたインフルエンザウイルスセンサーを用いてウイルスの検出情報を収集することが考えられる。このような検出情報をネットワーク上で共有することで、感染予防に有益な情報を早期に提供することができる。さらに、地図上に検出情報をマッピングすることで視覚的にウイルス分布情報を提供することができる。
【0015】
このようなウイルス分布情報の提供では、通常、より細かな粒度で提供されることが望ましい。しかしながら、ウイルスセンサーの設置位置が特定可能な状態でウイルスの検出情報が提供されれば、ウイルスセンサーの管理者の感染等に関するプライバシー情報の公開につながってしまう。また、ウイルスセンサーが飲食店又は小売店等に設置された場合、ウイルスセンサーの設置位置が特定されることで当該店舗への来店者の大幅な減少を招く場合もある。そのため、ウイルスセンサーの管理者は、ウイルスセンサーの設置及び検出情報の提供を躊躇する場合がある。
【0016】
したがって、ウイルスセンサーの設置及び検出情報の提供を促進するためには、ウイルスセンサーの管理者等のプライバシー保護を図る必要がある。
【0017】
そこで、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムは、異なる位置に配置され、空気中の病原体を検出するための複数の病原体検出部と、前記複数の病原体検出部で得られた複数の検出情報を、通信ネットワークを介して収集する通信部と、収集された前記複数の検出情報と前記複数の病原体検出部の位置情報とを対応付けて記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記複数の検出情報に基づいて、複数の病原体情報の分布を表す病原体分布情報を、前記通信部を介して情報端末に提供する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の病原体検出部の各々に対応する粒度情報に基づいて、前記情報端末に表示される前記病原体分布情報における前記複数の病原体情報の各々の表示粒度を設定し、設定された前記表示粒度及び前記位置情報に基づいて前記複数の病原体情報の各々を地図上に重畳することにより、前記病原体分布情報を作成する。
【0018】
これによれば、複数の病原体検出部で得られた複数の検出情報を収集し、複数の検出情報に基づいて、複数の病原体情報の分布を表す病原体分布情報を情報端末に提供することができる。したがって、病原体による病気の発症後に病院で受診して初めて情報が得られる従来技術よりも早期に病原体情報を病原体分布情報に反映することができる。その結果、発症後の患者だけではなく発症前の患者からの感染を防ぐために有益な情報を提供することが可能となり、感染予防に有益な情報を早期に提供することができる。
【0019】
さらに、複数の病原体検出部の各々に対応する粒度情報に基づいて、病原体分布情報における複数の病原体情報の各々の表示粒度を設定することができる。したがって、病原体情報の表示粒度を病原体検出部毎に調整することができる。つまり、病原体検出部の管理者が病原体分布情報から当該病原体検出部の設置位置が特定されることを望まない場合に、当該病原体検出部に対応する病原体情報の表示粒度を粗くすることができ、病原体検出部の管理者等のプライバシー保護を図ることができる。
【0020】
また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記制御部は、前記病原体分布情報の作成において、前記複数の病原体情報の各々について、粒度情報が示す前記地図上の領域のサイズより小さいサイズを有する前記地図上の領域に当該病原体情報を重畳することを禁止してもよい。
【0021】
これによれば、粒度情報が示す地図上の領域のサイズより小さいサイズを有する地図上の領域に病原体情報を重畳することを禁止することができる。したがって、病原体情報が重畳される領域のサイズが小さくなりすぎることを防ぐことができ、より確実に、病原体検出部の管理者等のプライバシー保護を図ることができる。
【0022】
また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記複数の病原体検出部は、第一位置に配置された第一病原体検出部を含み、前記複数の検出情報は、前記第一病原体検出部で得られた第一検出情報を含み、前記記憶部は、第一許可下限粒度を示す第一粒度情報を、前記第一病原体検出部に対応付けて記憶しており、前記制御部は、前記通信部が第一縮尺の第一地図上における第一病原体分布情報の要求を前記情報端末から受信し、かつ、前記第一地図が前記第一位置を含む場合に、(i)前記第一地図に対応する第一既定粒度を取得し、(ii-1)前記第一既定粒度が前記第一許可下限粒度以上である場合に、前記第一検出情報に基づく第一病原体情報のための第一表示粒度として前記第一既定粒度を設定し、(ii-2)前記第一既定粒度が前記第一許可下限粒度未満である場合に、前記第一表示粒度として前記第一許可下限粒度を設定し、(iii)設定された前記第一表示粒度に対応する第一サイズを有する第一領域であって前記第一地図上の前記第一位置にある第一領域に前記第一病原体情報を重畳することにより、前記第一病原体分布情報を作成してもよい。
【0023】
これによれば、第一地図に対応する第一既定粒度がデフォルトの表示粒度として用いられる場合に、第一表示粒度が第一許可下限粒度未満となることを防ぐことができ、第一地図において、より確実に、第一病原体検出部の管理者等のプライバシー保護を図ることができる。
【0024】
また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記複数の病原体検出部は、さらに、第二位置に配置された第二病原体検出部を含み、前記複数の検出情報は、前記第二病原体検出部で得られた第二検出情報を含み、前記記憶部は、さらに、第二許可下限粒度を示す第二粒度情報を、前記第二病原体検出部に対応付けて記憶しており、前記制御部は、前記通信部が前記第一病原体分布情報の要求を前記情報端末から受信し、かつ、前記第一地図がさらに前記第二位置を含む場合に、(ii-3)前記第一既定粒度が前記第二許可下限粒度以上である場合に、前記第二検出情報に基づく第二病原体情報のための第二表示粒度として前記第一既定粒度を設定し、(ii-4)前記第一既定粒度が前記第二許可下限粒度未満である場合に、前記第二表示粒度として前記第二許可下限粒度を設定し、(iii)前記第一領域に前記第一病原体情報を重畳し、かつ、設定された前記第二表示粒度に対応するサイズを有する第二領域であって前記第一地図上の前記第二位置にある第二領域に前記第二病原体情報を重畳することにより、前記第一病原体分布情報を作成してもよい。
【0025】
これによれば、第一地図内に2つの病原体検出部が配置されている場合に、病原体検出部ごとに病原体情報の表示粒度を設定することができ、より確実に、各病原体検出部の管理者等のプライバシー保護を図ることができる。
【0026】
また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記制御部は、前記通信部が前記第一縮尺とは異なる第二縮尺の第二地図上における第二病原体分布情報の要求を前記情報端末から受信し、かつ、前記第二地図が前記第一位置を含む場合に、(iv)前記第二地図に対応する第二既定粒度を取得し、(v-1)前記第二既定粒度が前記第一許可下限粒度以上である場合に、前記第一病原体情報のための第三表示粒度として前記第二既定粒度を設定し、(v-2)前記第二既定粒度が前記第一許可下限粒度未満である場合に、前記第三表示粒度として前記第一許可下限粒度を設定し、(vi)設定された前記第三表示粒度に対応する第三サイズを有する第三領域であって前記第二地図上の前記第一位置にある第三領域に前記第一病原体情報を重畳することにより、前記第二病原体分布情報を作成してもよい。
【0027】
これによれば、第一地図と縮尺が異なる第二地図でも、第一表示粒度が第一許可下限粒度未満となることを防ぐことができる。したがって、地図の縮尺が可変な場合でも、病原体検出部の管理者等のプライバシー保護を図ることができる。
【0028】
また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記制御部は、さらに、前記複数の病原体検出部の各々について、当該病原体検出部で得られた検出情報に基づいて、当該病原体検出部が配置された位置における感染リスクを評価し、前記複数の病原体情報の各々は、対応する検出情報に基づく前記感染リスクの評価結果を示してもよい。
【0029】
これによれば、検出情報に基づいて評価された感染リスクを地図上に重畳することができ、感染予防により有益な情報を提供することができる。
【0030】
また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記制御部は、前記複数の病原体検出部によって検出された病原体の濃度及び予め定められたHID50(50% human infectious dose)に基づいて、前記感染リスクを評価してもよい。また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記複数の検出情報の各々は、対応する病原体検出部が配置された位置における湿度情報を含み、前記制御部は、前記湿度情報から得られる絶対湿度に基づいて、前記感染リスクを評価してもよい。また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記制御部は、さらに、前記複数の病原体検出部の各々が配置された位置における前記病原体による病気の流行レベル情報を取得し、取得された前記流行レベル情報に基づいて、前記感染リスクを評価してもよい。また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記複数の検出情報の各々は、対応する病原体検出部が配置された位置における人の多さを示す混雑情報を含み、前記制御部は、前記混雑情報に基づいて、前記感染リスクを評価してもよい。
【0031】
これらによれば、様々な情報に基づいて感染リスクを評価することができ、より正確に感染リスクを評価することができる。
【0032】
また、本開示の一態様に係る病原体分布情報提供システムにおいて、前記制御部は、前記複数の病原体情報の各々が示す感染リスクレベルが閾値レベルよりも低い場合に、前記粒度情報に関わらず、当該病原体情報に対応する病原体検出部の位置をピンポイントで指し示すマークを前記地図上に重畳してもよい。
【0033】
これによれば、感染リスクが低い場所を明示することができる。したがって、感染リスクが高い地域内において、病原体の感染対策を十分に行うことで感染リスクが低い場所を差別化することができる。その結果、病原体検出部の設置に対する動機を向上させ、より多くの検出情報の収集を容易にすることができる。
【0034】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0035】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0036】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0037】
(実施の形態)
本実施の形態では、病原体がインフルエンザウイルスである場合を例として説明する。なお、以下において、インフルエンザウイルスは、単に、ウイルスと記載される場合がある。
【0038】
[システムの機能構成]
本実施の形態に係る感染リスクマップ提供システムの機能構成について、
図1を参照しながら具体的に説明する。
図1は、実施の形態に係る感染リスクマップ提供システムの機能構成を示すブロック図である。
【0039】
図1において、感染リスクマップ提供システム10は、複数のウイルスセンサー100と、環境情報データベース200と、情報提供サーバー300と、1以上の情報端末400と、1以上の空質浄化機器500と、を備える。複数のウイルスセンサー100、環境情報データベース200、情報提供サーバー300、1以上の情報端末400、及び1以上の空質浄化機器500は、通信ネットワーク600に接続されている。通信ネットワーク600は、特に限定される必要はないが、例えばインターネットである。以下に、各装置について説明する。
【0040】
[ウイルスセンサー]
複数のウイルスセンサー100は、異なる位置に配置され、空気中の病原体を検出するための複数の病原体検出部の一例である。複数のウイルスセンサー100は、あらゆる閉鎖された空間に配置され得る。例えば、複数のウイルスセンサー100は、公共施設(例えば病院、学校、保育園、介護老人保健施設、駅等)、非公共施設(例えばオフィス、店舗、住居等)及び移動手段(例えば電車、バス、飛行機、自動車等)内に配置される。複数のウイルスセンサー100の各々は、配置された空間中のウイルスを検出する。
【0041】
図1に示すように、複数のウイルスセンサー100の各々は、制御部101と、捕集部102と、検出部103と、表示部104と、通信部105と、記憶部106と、を備える。
【0042】
捕集部102は、例えば、サイクロン捕集器又はフィルターを備え、空気中のウイルスを捕集する。
【0043】
検出部103は、捕集部102によって捕集されたウイルスを検出することにより、空気中のウイルス濃度を測定する。例えば、検出部103は、イムノクロマトグラフィーを用いてウイルス濃度を測定することができる。なお、ウイルスの検出方法は、イムノクロマトグラフィーに限られず、どのような方法が用いられてもよい。
【0044】
本実施の形態では、検出部103は、さらに、温度センサー、湿度センサー、人感センサー及びGPSセンサーを備え、ウイルスセンサー100が配置された周囲の温度、湿度及び人、並びに、ウイルスセンサー100が配置された位置を検出する。人感センサーとしては、例えば人の放射熱を検出する非接触型の温度センサー又は赤外線センサー等を用いることができる。
【0045】
表示部104は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を備え、制御部101の指示に従って情報を表示する。
【0046】
通信部105は、例えばネットワークアダプタ等を備え、制御部101の指示に従って各種データを送信し、通信ネットワーク600上の他の装置から各種データを受信する。
【0047】
記憶部106は、例えば半導体メモリー又はハードディスクドライブを備え、制御部101の指示に従って各種データを記憶する。
【0048】
制御部101は、捕集部102、検出部103、表示部104、通信部105、及び記憶部106を制御する。例えば、制御部101は、検出部103によって検出されたウイルス濃度、温度、湿度、人の有無、及び、位置を示す検出情報を記憶部106に格納する。そして、制御部101は、任意のタイミングで、記憶部106に格納された検出情報を読み出し、読み出した検出情報を通信部105を介して情報提供サーバー300へ送信する。
【0049】
情報提供サーバー300に送信される検出情報はウイルス検出結果を含む。本実施の形態では、ウイルス検出結果は、基準値を用いてウイルス濃度を分類した結果である。ウイルス濃度の分類に用いる基準値としては、例えば、HID50(50% human infectious dose)に基づく濃度値を用いることができる。
【0050】
HID50とは、感染性ウイルスを吸入した人のうち50%の人がインフルエンザに感染するウイルス数である。したがって、例えば一般的な人の1時間の呼吸量にHID50のウイルス数が含まれる場合のウイルス濃度の値を基準値として用いることができる。例えば、HID50が300個であり、人の1分間あたりの呼吸量が6リットルである場合に、ウイルス濃度の基準値は、0.83(=300/(6×60))個/リットルと算出される。なお、ウイルスを含む粒子の大きさ、及び、その粒子が口又は鼻から吸引されて体内のどこまで到達するか等によってHID50は変動するため、基準値は一義的に定まる値ではない。
【0051】
このように算出されるHID50に基づく濃度値を基準値として用いて、検出部103によって検出されたウイルス濃度が分類される。例えばウイルス濃度値が基準値以上である場合にウイルス濃度は「H」に分類され、ウイルス濃度値が基準値未満であり、かつ、0より大きい場合にウイルス濃度は「L」に分類される。この分類結果がウイルス検出結果として情報提供サーバー300に送信される。
【0052】
なお、このようなウイルス濃度の分類は一例であり、これに限定されない。例えば、基準値は、0.8個/リットルに固定される必要はなく、必要に応じて更新されてもよい。また、分類は、情報提供サーバー300で行われてもよい。この場合、情報提供サーバー300に送信されるウイルス検出結果は、ウイルス濃度値であればよい。
【0053】
[環境情報データベース]
環境情報データベース200は、地図情報、インフルエンザ流行情報、気象情報、交通・混雑情報などを格納している。地図情報は、例えば国土地理院又は地図製作会社から取得することができる。インフルエンザ流行情報は、例えば病院におけるインフルエンザ患者数に基づくインフルエンザの流行度合いを示す情報である。インフルエンザ流行情報は、例えば国立感染症研究所又は地方自治体から取得することができる。気象情報は、各地の気温、湿度及び天候を示す情報であり、例えば気象庁又は気象情報会社から取得することができる。交通・混雑情報は、人による混雑状況を示す情報であり、例えば交通インフラ関連企業又は個人携帯情報端末から取得することができる。
【0054】
[情報提供サーバー]
情報提供サーバー300は、複数のウイルスセンサー100で得られた検出情報に基づいて、各ウイルスセンサー100が配置された位置における感染リスクを評価する。さらに、情報提供サーバー300は、感染リスク情報を地図上に重畳することにより、感染リスクマップを作成する。作成された感染リスクマップは、情報端末400に提供される。
【0055】
感染リスク情報とは、病原体情報の一例であり、感染リスクの評価結果を示す。具体的には、感染リスク情報は、ウイルス感染の確率の大きさを示し、例えば感染確率が高い順(つまり降順)で、「危険」、「注意」及び「安心」の3段階に分類される。
【0056】
感染リスクマップとは、病原体分布情報の一例であり、感染リスク情報の分布を表す。具体的には、感染リスクマップは、感染リスク情報を地図上に表した情報である。例えば、感染リスクマップには、地域ごとに感染リスク情報に対応する色が付される。感染リスク情報と色との対応関係は、例えば、「危険」=「赤」、「注意」=「黄」及び「安心」=「無色」とすることができる。
【0057】
図1に示すように、情報提供サーバー300は、制御部301と、通信部302と、記憶部303と、を備える。
【0058】
通信部302は、例えばネットワークアダプタ等を備え、制御部301の指示に従って各種データを送信し、通信ネットワーク600上の他の装置から各種データを受信する。具体的には、通信部302は、複数のウイルスセンサー100で得られた複数の検出情報を、通信ネットワーク600を介して収集する。また、通信部302は、通信ネットワーク600を介して、感染リスクマップを情報端末400に送信する。
【0059】
記憶部303は、例えば半導体メモリー又はハードディスクドライブを備え、制御部301の指示に従って各種データを記憶する。具体的には、記憶部303は、収集された複数の検出情報と複数のウイルスセンサー100の位置情報とを対応付けて記憶する。
【0060】
制御部301は、複数の検出情報に基づいて、複数の感染リスク情報の分布を表す感染リスクマップを、通信部302を介して情報端末400に提供する。具体的には、制御部301は、複数のウイルスセンサー100の各々に対応する粒度情報に基づいて、情報端末400に表示される感染リスクマップにおける複数の感染リスク情報の各々の表示粒度を設定する。
【0061】
表示粒度とは、感染リスク情報が地図上に重畳される領域のサイズを表す。表示粒度が粗ければ重畳領域のサイズが大きく、表示粒度が細かければ重畳領域のサイズが小さい。(感染リスク情報iの表示粒度i)>(感染リスク情報jの表示粒度j)である場合、(感染リスク情報iが地
図A上に重畳される連続領域の面積i)>(感染リスク情報jが地
図A上、または、地
図Aと同じ尺度を有する地
図B上に重畳される連続領域の面積j)であってもよい。
【0062】
さらに、制御部301は、設定された表示粒度及び複数のウイルスセンサー100の位置情報に基づいて、複数の感染リスク情報の各々を地図上に重畳することにより感染リスクマップを作成する。このとき、制御部301は、複数の感染リスク情報の各々について、粒度情報が示す地図上の領域のサイズより小さいサイズを有する地図上の領域に、当該感染リスク情報を重畳することを禁止する。つまり、複数の感染リスク情報の各々が重畳される地図上の領域のサイズが、粒度情報が示す地図上の領域のサイズより小さくなることが禁止される。
【0063】
[情報端末]
1以上の情報端末400は、例えばスマートフォン、タブレットコンピューター又はパーソナルコンピューター等であり、情報提供サーバー300から受信した感染リスクマップを表示する。
図1に示すように、1以上の情報端末400の各々は、制御部401と、入力部402と、表示部403と、通信部404と、記憶部405と、を備える。
【0064】
入力部402は、例えばタッチパネル、マウス又はキーボード等を備える。入力部402は、使用者から入力を受け、入力信号を制御部401に出力する。例えば、入力部402は、感染リスクマップの縮尺に関する入力を使用者から受ける。
【0065】
表示部403は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイを備える。なお、表示部403は、タッチディスプレイとして、入力部402と一体化されてもよい。表示部403は、制御部401の指示に従って各種情報を表示する。具体的には、表示部403は、感染リスクマップを表示する。
【0066】
通信部404は、例えばネットワークアダプタ等を備え、制御部401の指示に従って各種データを送信し、通信ネットワーク600上の他の装置から各種データを受信する。例えば、通信部404は、感染リスクマップの要求メッセージを情報提供サーバー300に送信する。
【0067】
記憶部405は、例えば半導体メモリー又はハードディスクドライブを備え、制御部401の指示に従って各種データを記憶する。
【0068】
制御部401は、入力部402からの入力信号に基づいて、通信部404を介して、感染リスクマップの要求メッセージを情報提供サーバー300に送信する。要求メッセージは、例えば位置情報及び縮尺情報を含む。位置情報は、例えばGPSセンサーを用いて取得されてもよい。さらに、制御部401は、通信部404が情報提供サーバー300から感染リスクマップを受信した場合に、その感染リスクマップを表示部403に表示する。
【0069】
[空質浄化機器]
1以上の空質浄化機器500の各々は、周囲の空気を浄化する。1以上の空質浄化機器500は、例えば空気清浄機である。また、1以上の空質浄化機器500は、次亜塩素酸等の殺菌成分を空気中に噴霧する機器であってもよい。1以上の空質浄化機器500の各々は、情報提供サーバー300から運転条件情報を受信し、受信した運転条件情報に基づいて、フィルター又はファン等を制御する。
【0070】
[システムの動作]
次に、以上のように構成された感染リスクマップ提供システム10の処理動作について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図2は、実施の形態に係る感染リスクマップ提供システムのシーケンス図である。以降において、複数のウイルスセンサー100のうちの1つをウイルスセンサー100と記載し、1以上の情報端末400のうちの1つを情報端末400と記載し、1以上の空質浄化機器500のうちの1つを空質浄化装置500と記載する。
【0071】
ウイルスセンサー100は、ウイルス等を検出し、検出結果を示す検出情報を情報提供サーバー300に送信する(S102)。
図3は、実施の形態における検出情報の一例を示す。
【0072】
ウイルスセンサー100は、機器ごとに固有の識別子として機器IDを有する。この機器IDが検出情報に含まれることによって、どの機器の検出情報であるのかが情報提供サーバー300において区別できる。日付及び時刻は、検出情報に対応する日時を示す。
【0073】
「ウイルス」は、HID50に基づく濃度値を基準値として用いて、計測されたウイルス濃度を分類した結果を示す。「ウイルス」において、「-」は、ウイルスが検出されなかったことを示し、「L」は、HID50に基づく基準値未満のウイルスが検出されたことを示し、「H」は、HID50に基づく基準値以上のウイルスが検出されたことを示す。
【0074】
「位置」は、ウイルスセンサー100の位置情報を示し、具体的には緯度及び経度の情報を含む。位置情報は、例えば、ウイルスセンサー100に含まれるGPSセンサーによって検出される。
図3では、「9:00」及び「12:00」の時刻で位置情報が検出されているが、どのようなタイミングで位置情報が検出されてもよい。例えば、位置情報は、ウイルスセンサー100が設置されたとき、ウイルスセンサー100が移動されたとき、又は、予め設定された時刻に検出されてもよい。
【0075】
「温度」及び「湿度」は、ウイルスセンサー100が設置された空間における摂氏温度(気温)及び相対湿度を示す。摂氏温度及び相対湿度は、例えばウイルスセンサー100に含まれる温度センサー及び湿度センサーによって検出される。
【0076】
「人」は、ウイルスセンサー100周辺の人の多さを示し、「混雑」及び「-」に分類される。人の多さは、例えば、ウイルスセンサー100に含まれる人感センサーによって検出される。
【0077】
次に、情報提供サーバー300は、ウイルスセンサー100から受信した検出情報に含まれる位置情報に基づいて、環境情報を環境情報データベース200に要求する。環境情報データベース200は、環境情報の要求に含まれる位置情報の近傍の環境情報(例えば、気象情報、地図情報、交通・混雑情報及びインフルエンザ流行情報)を情報提供サーバー300に送信する。情報提供サーバー300は、検出情報及び環境情報に基づいて、感染リスクを評価する(S104)。感染リスクの評価の詳細については、
図4及び
図5を用いて後述する。
【0078】
ウイルスセンサー100は、必要に応じて、感染リスクの評価結果を示す感染リスク情報を情報提供サーバー300に要求し、情報提供サーバー300から感染リスク情報を受信する。そして、ウイルスセンサー100は、感染リスク情報を表示部104に表示する(S106)。例えば、ウイルスセンサー100は、「危険」、「注意」及び「安心」のいずれかを表示する。
【0079】
情報提供サーバー300は、感染リスクマップの要求を情報端末400から受信した場合に、感染リスク情報及び粒度情報に基づいて感染リスクマップを作成し、情報端末400に送信する(S108)。感染リスクマップの作成の詳細については、
図6~
図14を用いて後述する。
【0080】
情報端末400は、情報提供サーバー300から受信した感染リスクマップを表示する(S110)。
【0081】
情報提供サーバー300は、ウイルスセンサー100から運転条件の要求を受信した場合に、ウイルスセンサー100の位置情報及び感染リスクマップに基づいて、運転条件をウイルスセンサー100に送信する。ウイルスセンサー100は、情報提供サーバー300から受信した運転条件に基づいて運転を制御する(S112)。例えば、ウイルスセンサー100が設置された位置でウイルス感染リスクが高い場合に、高い検出頻度でウイルスが検出される。逆に、ウイルスセンサー100が設置された位置でウイルス感染リスクが低い場合に、低い検出頻度でウイルスが検出される。
【0082】
また、情報提供サーバー300は、空質浄化機器500から運転条件の要求を受信した場合に、空質浄化機器500の位置情報及び感染リスクマップに基づいて、運転条件を空質浄化機器500に送信する。空質浄化機器500は、情報提供サーバー300から受信した運転条件に基づいて運転を制御する(S114)。例えば、空質浄化機器500が設置された位置でウイルス感染リスクが高い場合に、高い浄化能力を実現する運転条件に基づいて空質浄化機器500が運転される。逆に、空質浄化機器500が設置された位置でウイルス感染リスクが低い場合に、低い浄化能力を実現する運転条件に基づいて空質浄化機器500が運転される。
【0083】
[感染リスクの評価]
以下に、感染リスクの評価の詳細について図面を参照しながら具体的に説明する。
図4は、実施の形態における感染リスク評価に関する情報の一例を示す。
【0084】
図4に示す情報は、複数のウイルスセンサー100から収集された複数の検出情報と、環境情報データベース200から受信した環境情報と、情報提供サーバー300によって生成された情報とを含む。例えば、
図4では、複数のウイルスセンサー100の各々における最新の検出情報が管理されている。
【0085】
「時刻」、「機器ID」、「ウイルス」、「位置」、「温度」、「相対湿度」及び「人」は、ウイルスセンサー100から収集された検出情報に含まれる情報である。これらは、
図3と同様であるので説明を省略する。
【0086】
「流行レベル」は、環境情報データベース200から受信した環境情報に含まれる。「流行レベル」は、ウイルスセンサーが設置された位置におけるインフルエンザの流行レベルを示し、例えば、「無し」、「注意」及び「警報」の3段階に分類される。この流行レベルは、例えば医療機関でインフルエンザと診断された患者の数に基づいて地域ごとに提供される。
【0087】
「絶対湿度」は、「温度」及び「相対湿度」から算出され、ここでは空気1m3中に水蒸気が何グラム含まれているかを示す。
【0088】
絶対湿度は、ウイルスの感染性に深く関係しており、例えば非特許文献1では室温と相対湿度とウイルス生存率の相関性が示されている。さらに非特許文献2において非特許文献1のデータ解析によって絶対湿度とウイルス生存率の高い相関が示されている。また、非特許文献2によれば、絶対湿度が7g/m3のときインフルエンザウイルスの6時間後生存率は20%であり、絶対湿度が5g/m3のときインフルエンザウイルスの6時間後生存率は50%である。したがって、絶対湿度が低いほうがウイルスの生存率が高い傾向にある。つまり、絶対湿度が低いほうが、感染リスクが高いと言える。
【0089】
「許可下限粒度レベル」は、粒度情報であり、感染リスクマップにおいて感染リスク情報の表示粒度として許可される粒度の下限レベルを示す。機器IDに対応する許可下限粒度レベルは、例えばマスターデータとして情報提供サーバー300の記憶部303に記憶されている。この場合、マスターデータを参照して、検出情報に含まれる機器IDに対応する許可下限粒度レベルが得られる。また例えば、許可下限粒度レベルは、検出情報に含まれてもよい。いずれの場合も、粒度情報(ここでは許可下限粒度レベル)は、ウイルスセンサー100の管理者によって入力されればよい。粒度情報の入力は、ウイルスセンサー100の設置時又はウイルスセンサー100の利用者登録時にウイルスセンサー100本体に対して行われてもよい。また、粒度情報の入力は、必要に応じて、情報端末400を介して情報提供サーバー300に対して行われてもよい。
【0090】
なお、許可下限粒度レベルの入力において、予め定められた粒度レベルより大きい粒度レベルの入力が禁止されてもよい。つまり、予め定められた粒度よりも粗い粒度の入力が禁止されてもよい。予め定められた粒度レベルとしては、例えば粒度レベル「3」を用いることができる。
【0091】
ここでは、「許可下限粒度レベル」の値が小さいほど、粒度が細かいことを示す。粒度が細かいとは、重畳領域が小さいことを意味する。
図5は、実施の形態における粒度レベルの一例を示す。例えば、粒度レベルが「1」である場合、部屋の範囲で感染リスク情報を重畳することが許可される。粒度レベルが「2」である場合、建物の範囲で感染リスク情報を重畳することが許可される。粒度レベルが「3」である場合、地区の範囲で感染リスク情報を重畳することが許可される。粒度レベルが「4」である場合、市または区または町または村の範囲で感染リスク情報を重畳することが許可される。粒度レベルが「5」である場合、都または道または府または県の範囲で感染リスク情報を重畳することが許可される。
【0092】
都道府県及び市区町村は、行政区画であり、その領域のサイズ及び位置は予め定められている。一方、地区、建物及び部屋の領域は、ウイルスセンサー100の設置位置を中心とする円領域である。円領域のサイズは、粒度レベルによって異なる。例えば、粒度レベル「3」では、円の半径は1キロメートルである。また例えば、粒度レベル「2」では、円の半径は100メートルである。また例えば、粒度レベル「1」では、円の半径は10メートルである。
【0093】
「感染リスク」は、後述する感染リスクの評価によって得られる評価結果を示す。「感染リスク」は、後述する感染リスクの評価後に設定される。
【0094】
ここで、感染リスクの評価方法の一例について
図6を参照しながら説明する。
図6は、実施の形態における感染リスクの評価処理を示すフローチャートである。この評価処理は、
図2のステップS104に対応し、情報提供サーバー300の制御部301によって行われる。
【0095】
まず、制御部301は、検出情報に含まれるウイルス検出結果が「H」、「L」及び「無し」のいずれであるかを判定する(S202)。検出結果が「L」である場合(S202でL)、制御部301は、絶対湿度が7g/m3以下であるか否かを判定する(S204)。
【0096】
検出結果が「H」である場合(S202でH)、又は、絶対湿度が7g/m3以下である場合(S204でYes)、制御部301は、感染リスクを「危険」と評価する(S206)。
【0097】
絶対湿度が7g/m3より大きい場合(S204でNo)、制御部301は、感染リスクを「注意」と評価する(S208)。
【0098】
検出結果が「無し」である場合(S202で無し)、制御部301は、流行レベルが「警告」、「注意」及び「無し」のいずれであるかを判定する(S210)。
【0099】
流行レベルが「警告」である場合(S210で警告)、制御部301は、絶対湿度が5g/m3以下であるか否かを判定する(S212)。絶対湿度が5g/m3以下である場合(S212でYes)、制御部301は、感染リスクを「危険」と評価する(S206)。絶対湿度が5g/m3より大きい場合(S212でNo)、制御部301は、感染リスクを「注意」と評価する(S208)。
【0100】
流行レベルが「注意」である場合(S210で注意)、制御部301は、絶対湿度が7g/m3以下であるか否かを判定する(S214)。絶対湿度が7g/m3以下である場合(S214でYes)、制御部301は、ウイルスセンサーの周辺が人で混雑しているか否かを判定する(S216)。ウイルスセンサーの周辺が人で混雑している場合(S216でYes)、制御部301は、感染リスクを「注意」と評価する(S208)。
【0101】
流行レベルが「無し」である場合(S210で無し)、絶対湿度が7g/m3より大きい場合(S214でNo)、又は、ウイルスセンサーの周辺が人で混雑していない場合(S216でNo)、制御部301は、感染リスクを「安心」と評価する(S218)。
【0102】
[感染リスクマップの作成]
次に、感染リスクマップの作成の詳細について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図7は、実施の形態における感染リスクマップの作成処理を示すフローチャートである。この作成処理は、
図2のステップS108に対応し、情報提供サーバー300の制御部301によって行われる。
【0103】
まず、制御部301は、情報端末400から要求された地図に対応する既定粒度(デフォルト粒度)を取得する(S302)。既定粒度は、例えば地図の縮尺に応じて予め定められている。例えば、第一縮尺に第一既定粒度が対応付けられ、第一縮尺と異なる第二縮尺に第二既定粒度が対応付けられているとする。この場合に、通信部302が第一縮尺の第一地図上における第一感染リスクマップの要求を情報端末400から受信すれば、制御部301は、第一地図に対応する第一既定粒度(例えば粒度レベル「1」)を取得する。また例えば、通信部302が第二縮尺の第二地図上における第二感染リスクマップの要求を情報端末400から受信すれば、制御部301は、第二地図に対応する第二既定粒度(例えば粒度レベル「3」)を取得する。なお、感染リスクマップの表示ウィンドウサイズが可変である場合には、既定粒度は、縮尺だけではなく、表示ウィンドウサイズにも依存してもよい。
【0104】
制御部301は、要求された地図内に位置情報を有する検出情報を選択する(S304)。具体的には、制御部301は、例えば
図4の複数のデータセット(レコード)の中から、要求された地図内に含まれる「位置」を有するデータセットを選択する。
【0105】
制御部301は、選択された検出情報が得られたウイルスセンサーに対応する許可下限粒度を取得する(S306)。例えば、
図4において「VS1234567」の機器IDを有するデータセットが選択されている場合に、制御部301は、「VS1234567」の機器IDで識別される第一ウイルスセンサーに対応する第一許可下限粒度として「1」を取得する。また例えば、
図4において「VS1323456」の機器IDを有するデータセットが選択されている場合に、制御部301は、「VS1323456」の機器IDで識別される第二ウイルスセンサーに対応する第二許可下限粒度として「3」を取得する。
【0106】
制御部301は、既定粒度と許可下限粒度とを比較する(S308)。ここで、既定粒度が許可下限粒度以上である場合(S308でYes)、制御部301は、既定粒度を、感染リスク情報のための表示粒度として設定する(S310)。一方、既定粒度が許可下限粒度未満である場合、制御部301は、許可下限粒度を、感染リスク情報のための表示粒度として設定する(S312)。
【0107】
例えば、第一地図上における第一感染リスクマップの要求を情報端末400から受信しているとする。ここで、
図4において「VS1234567」の機器IDを有するデータセットが選択されている場合、第一地図に対応する第一既定粒度「1」は第一許可下限粒度「1」以上であるので、制御部301は、第一既定粒度「1」を第一感染リスク情報「注意」のための第一表示粒度として設定する。また、
図4において「VS1323456」の機器IDを有するデータセットが選択されている場合に、第一既定粒度「1」は第二許可下限粒度「3」」未満であるので、制御部301は、第二許可下限粒度「3」を第二感染リスク情報「危険」のための第二表示粒度として設定する。
【0108】
また例えば、第二地図上における第二感染リスクマップの要求を情報端末400から受信しているとする。ここで、
図4において「VS1234567」の機器IDを有するデータセットが選択されている場合、第二地図に対応する第二既定粒度「3」は第一許可下限粒度「1」以上であるので、制御部301は、第二既定粒度「3」を第一感染リスク情報「注意」のための第一表示粒度として設定する。また、
図4において「VS1323456」の機器IDを有するデータセットが選択されている場合に、第二既定粒度「3」は第二許可下限粒度「3」以上であるので、制御部301は、第二既定粒度「3」を第二感染リスク情報「危険」のための第二表示粒度として設定する。
【0109】
制御部301は、設定された表示粒度及び位置情報に基づいて、感染リスク情報を重畳する領域を決定する(S314)。重畳領域のサイズは、表示粒度に依存する。具体的には、表示粒度が粗くなるほど(つまり粒度レベルが大きいほど)重畳領域のサイズは増加する。逆に、表示粒度が細かくなるほど(つまり粒度レベルが小さいほど)重畳領域のサイズは減少する。また、重畳領域の位置は、選択された検出情報に対応する位置情報に依存する。具体的には、重畳領域は、選択されたデータセットに含まれる緯度経度で特定される地図上の位置を含む。
【0110】
制御部301は、検出情報の選択が終了したか否かを判定する(S316)。例えば、制御部301は、要求された地図内に含まれる位置情報に対応付けられた検出情報のすべてを選択したか否かを判定する。ここで、検出情報の選択が終了していないと判定された場合(S316でNo)、ステップS304に戻る。一方、検出情報の選択が終了したと判定された場合(S316でYes)、制御部301は、要求された地図内に配置されたウイルスセンサーに対応する感染リスク情報の各々を、決定された重畳領域に重畳することにより、感染リスクマップを作成する(S318)。
【0111】
このように作成された感染リスクマップの具体例を
図8~
図14を参照しながら説明する。
図8~
図14では、色の代わりにハッチングを用いられている。
【0112】
図8~
図12の各々は、許可下限粒度として粒度レベル「1」が設定されている場合の感染リスクマップの一例を示す。
図8~
図12では、すべてのウイルスセンサーに対して許可下限粒度として粒度レベル「1」が設定されている。
【0113】
図8の感染リスクマップ800は、日本全域を含む小縮尺の地図であり、例えば100万分の1の縮尺を有する。ここでは、感染リスクマップ800のための既定粒度レベルは「5」である。この場合、既定粒度レベル「5」が許可下限粒度レベル「1」以上であるので、各感染リスク情報の表示粒度は、既定粒度レベル「5」に設定される。
【0114】
感染リスクマップ800において、濃いハッチングが付された領域810は、感染リスク情報として「危険」が重畳された領域である。薄いハッチングが付された領域820は、感染リスク情報として「注意」が重畳された領域である。これらの領域810及び820のサイズは、表示粒度として設定された粒度レベル「5」(ここでは都道府県)に対応する。
【0115】
この感染リスクマップ800に対して領域830を拡大するための入力が行われれば、より大きい縮尺の感染リスクマップが情報端末400から情報提供サーバー300に要求される。その結果、
図9の感染リスクマップ900が作成され、情報端末400に送信される。
【0116】
図9の感染リスクマップ900は、
図8の領域830を含む小縮尺又は中縮尺の地図であり、例えば10万分の1の縮尺を有する。ここでは、感染リスクマップ900のための既定粒度レベルは「4」である。この場合、既定粒度レベル「4」が許可下限粒度レベル「1」以上であるので、各感染リスク情報の表示粒度は、既定粒度レベル「4」に設定される。
【0117】
感染リスクマップ900において、濃いハッチングが付された領域910は、感染リスク情報として「危険」が重畳された領域である。薄いハッチングが付された領域920は、感染リスク情報として「注意」が重畳された領域である。これらの領域910及び920のサイズは、表示粒度として設定された粒度レベル「4」(ここでは市区町村)に対応する。なお、領域940に付されたハッチングは流行レベルを示す。
【0118】
この感染リスクマップ900に対して領域930を拡大するための入力が行われれば、より大きい縮尺の感染リスクマップが情報端末400から情報提供サーバー300に要求される。その結果、
図10の感染リスクマップ1000が作成され、情報端末400に送信される。
【0119】
図10の感染リスクマップ1000は、
図9の領域930を含む中縮尺の地図であり、例えば2万5000分の1の縮尺を有する。ここでは、感染リスクマップ1000のための既定粒度レベルは「3」である。この場合、既定粒度レベル「3」が許可下限粒度レベル「1」以上であるので、各感染リスク情報の表示粒度は、既定粒度レベル「3」に設定される。
【0120】
感染リスクマップ1000において、ハッチングが付された領域1010は、感染リスク情報として「危険」が重畳された領域である。領域1010のサイズは、表示粒度として設定された粒度レベル「3」(ここでは地区)に対応する。なお、感染リスクマップ1000全域に付されたハッチングは流行レベルを示す。
【0121】
この感染リスクマップ1000に対して領域1030を拡大するための入力が行われれば、より大きい縮尺の感染リスクマップが情報端末400から情報提供サーバー300に要求される。その結果、
図11の感染リスクマップ1100が作成され、情報端末400に送信される。
【0122】
図11の感染リスクマップ1100は、
図10の領域1030を含む中縮尺又は大縮尺の地図であり、例えば1万分の1の縮尺を有する。ここでは、感染リスクマップ1100のための既定粒度レベルは「2」である。この場合、既定粒度レベル「2」が許可下限粒度レベル「1」以上であるので、各感染リスク情報の表示粒度は、既定粒度レベル「2」に設定される。
【0123】
感染リスクマップ1100において、ハッチングが付された領域1110は、感染リスク情報として「危険」が重畳された領域である。領域1110のサイズは、表示粒度として設定された粒度レベル「2」(ここでは建物)に対応する。なお、感染リスクマップ1100全域に付されたハッチングは流行レベルを示す。
【0124】
ピンマーク1120は、感染リスクレベルが閾値レベルよりも低いことを示す。ここでは、閾値レベルとして、「注意」が用いられている。つまり、ピンマーク1120は、感染リスクレベルが「安心」と評価された位置をピンポイントで指し示す。
【0125】
この感染リスクマップ1100に対して領域1130を拡大するための入力が行われれば、より大きい縮尺の感染リスクマップが情報端末400から情報提供サーバー300に要求される。その結果、
図12の感染リスクマップ1200が作成され、情報端末400に送信される。
【0126】
図12の感染リスクマップ1200は、
図11の領域1130を含む大縮尺の地図であり、例えば2500分の1の縮尺を有する。ここでは、感染リスクマップ1200のための既定粒度レベルは「1」である。この場合、既定粒度レベル「1」が許可下限粒度レベル「1」以上であるので、各感染リスク情報の表示粒度は、既定粒度レベル「1」に設定される。
【0127】
感染リスクマップ1200において、ハッチングが付された領域1210は、感染リスク情報として「危険」が重畳された領域である。領域1210のサイズは、表示粒度として設定された粒度レベル「1」(ここでは部屋)に対応する。なお、感染リスクマップ1200の全域に付されたハッチングは流行レベルを示す。
【0128】
以上のように、
図8~
図12では、すべてのウイルスセンサーに対して許可下限粒度として最も小さい粒度レベル「1」が設定されているので、地図に対応する既定粒度が表示粒度として採用される。
【0129】
ここで、すべてのウイルスセンサーに対して粒度レベル「3」が許可下限粒度として設定されている場合について、
図13及び
図14を参照しながら説明する。
図13及び
図14の各々は、許可下限粒度として粒度レベル「3」が設定されている場合の感染リスクマップの一例を示す。
【0130】
なお、既定粒度レベル「1」~「3」に対応する感染リスクマップについては、粒度レベル「1」が許可下限粒度として設定されている
図8~
図10と同じであるので、図示及び説明を省略する。
【0131】
図13の感染リスクマップ1300は、
図11と同様に
図10の領域1030を含む中縮尺又は大縮尺の地図であり、例えば1万分の1の縮尺を有する。ここでは、感染リスクマップ1300のための既定粒度レベルは「2」である。この場合、既定粒度レベル「2」は、許可下限粒度レベル「3」未満であるので、各感染リスク情報の表示粒度は、許可下限粒度レベル「3」に設定される。
【0132】
感染リスクマップ1300において、ハッチングが付された領域1310は、感染リスク情報として「危険」が重畳された領域である。領域1310のサイズは、表示粒度として設定された粒度レベル「3」(ここでは地区)に対応する。
【0133】
ピンマーク1320は、感染リスクレベルが閾値レベルよりも低いことを示す。ここでは、閾値レベルとして、「注意」が用いられている。つまり、ピンマーク1320は、感染リスクレベルが「安心」と評価された位置をピンポイントで指し示す。
【0134】
この感染リスクマップ1300に対して領域1330を拡大するための入力が行われれば、より大きい縮尺の感染リスクマップが情報端末400から情報提供サーバー300に要求される。その結果、
図14の感染リスクマップ1400が作成され、情報端末400に送信される。
【0135】
図14の感染リスクマップ1400は、
図12と同様に
図13の領域1330を含む大縮尺の地図であり、例えば2500分の1の縮尺を有する。ここでは、感染リスクマップ1300のための既定粒度レベルは「1」である。この場合、既定粒度レベル「1」は、許可下限粒度レベル「3」未満であるので、各感染リスク情報の表示粒度は、許可下限粒度レベル「3」に設定される。
【0136】
感染リスクマップ1400において、ハッチングが付された領域1410は、感染リスク情報として「危険」が重畳された領域である。領域1410のサイズは、表示粒度として設定された粒度レベル「3」(つまり地区)に対応する。そのため、領域1410は、感染リスクマップ1400の全領域を覆う。
【0137】
[効果等]
以上のように、本実施の形態に係る感染リスクマップ提供システム10によれば、複数のウイルスセンサー100で得られた複数の検出情報を収集し、複数の検出情報に基づいて、複数の感染リスク情報の分布を表す感染リスクマップを情報端末400に提供することができる。したがって、インフルエンザ発症後に病院で受診して初めて情報が得られる従来のインフルエンザ流行レベルマップよりも早期にウイルス情報を感染リスクマップに反映することができる。したがって、発症後の患者だけではなく発症前の患者からの感染を防ぐために有益な情報を提供することが可能となり、感染予防に有益な情報を早期に提供することができる。
【0138】
さらに、本実施の形態に係る感染リスクマップ提供システム10によれば、複数のウイルスセンサー100の各々に対応する粒度情報に基づいて、感染リスクマップにおける複数の感染リスク情報の各々の表示粒度を設定することができる。したがって、感染リスク情報の表示粒度をウイルスセンサー毎に調整することができる。つまり、ウイルスセンサーの管理者が感染リスクマップから当該ウイルスセンサーの設置位置が特定されることを望まない場合に、当該ウイルスセンサーに対応する感染リスク情報の表示粒度を粗くすることができ、ウイルスセンサーの管理者等のプライバシー保護を図ることができる。
【0139】
例えば、ウイルスセンサー100の設置場所を特定されたくない管理者(例えば飲食店又は小売店の事業者等)は、許可下限粒度レベルとして粒度レベル「3」を設定すれば、感染リスクが高い店舗の場所が特定されることを防ぐことができ、来店者の減少を防ぐことができる。また、安全性をアピールしたい管理者(例えば空質浄化機器が設置された店舗の事業者等)は、許可下限粒度レベルとして粒度レベル「1」を設定すれば、感染リスクが低い店舗を特定することができ、来店者の増加を期待することができる。このような許可下限粒度レベルの設定において、予め定められた粒度レベルより大きい粒度レベルの設定を禁止することで、粗すぎる粒度での感染リスク情報の提供を防ぐことができ、感染予防に対する有益性が低くなることを抑制することができる。
【0140】
(他の実施の形態)
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る感染リスクマップ提供システム10について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0141】
例えば、上記実施の形態における制御部101、301及び401の各々は、専用の電子回路によって実現されてもよい。専用の電子回路は、1個のチップ上に集積されてもよいし、複数のチップ上に形成されてもよい。また、制御部101、301及び401の各々は、汎用プロセッサーと、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが格納されたメモリーとによって実現されてもよい。この場合、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが実行されたときに、プロセッサーは、制御部101、301又は401として機能する。
【0142】
なお、上記実施の形態では、病原体がインフルエンザウイルスの場合について説明していたが、これに限定されない。例えば、他のウイルス、カビ、細菌、花粉又はPM2.5などに対してもインフルエンザウイルスと同様に上記システムを適用することができる。
【0143】
なお、上記実施の形態では、感染リスク情報を地図上に重畳していたが、重畳される情報は感染リスク情報に限られない。例えば、ウイルスの検出結果を示すウイルス情報が地図上に重畳されてもよい。
【0144】
なお、上記実施の形態では、複数の感染リスク情報の重畳領域が重複する場合について特に説明していなかったが、複数の重畳領域が重複する場合には、その重複領域では、感染リスク情報の代表値が用いられてもよい。代表値としては、例えば、平均値、最大値、最小値、又は中央値等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本開示は、インフルエンザへの感染リスクを視覚的に表す感染リスクマップを提供する感染リスクマップ提供システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0146】
10 感染リスクマップ提供システム
100 ウイルスセンサー
101、301、401 制御部
102 捕集部
103 検出部
104、403 表示部
105、302、404 通信部
106、303、405 記憶部
200 環境情報データベース
300 情報提供サーバー
400 情報端末
402 入力部
500 空質浄化機器
600 通信ネットワーク