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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】インバータ制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240112BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02M7/48 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022532612
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2020003605
(87)【国際公開番号】W WO2021112334
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2019-0159109
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス、エレクトリック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS ELECTRIC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】127,LS-ro,Dongan-gu,Anyang-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【復代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100232275
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 宣喜
(72)【発明者】
【氏名】シュー,チェンド
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161042(JP,A)
【文献】特開平07-231674(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータを制御する制御装置において、
複数のスイッチング素子で構成され、直流電圧を制御部の制御によって交流電圧に変換して出力するインバータ部;
前記インバータ部に流れる短絡電流を検出する短絡検出部; および
前記インバータの出力短絡を診断するための複数の有効ベクトルのうち少なくとも一つを前記インバータ部が出力するようにするパルス幅変調(PWM)制御信号を前記インバータ部に印加する前記制御部;を含み、
前記制御部は有効ベクトルの出力時間を設計時間より長く設定するように構成され、短路検出部が短路検出部の電流の遅延を考慮して短路電流を検出する、制御装置。
【請求項2】
前記インバータ部は、3相の交流電圧を出力する3相のレッグで構成され、
前記短絡検出部は、前記3相のレッグの下部レッグに流れる短絡電流を検出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記PWM制御信号は、
U-V相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 0 0]、[0 1 0]、[0 1 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つを出力するようにする信号を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記PWM制御信号は、
V-W相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 1 0]、[0 1 0]、[0 0 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記PWM制御信号は、
W-U相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 0 0]、[1 1 0]、[0 1 1]および[0 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
複数のスイッチング素子で構成されて直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ部を含む、インバータを制御する方法において、
前記インバータの運転指令を受信する段階;
前記インバータの出力短絡を診断するための複数の有効ベクトルのうち少なくとも一つを前記インバータ部が出力するようにする第1PWM制御信号を前記インバータ部に出力する段階;
前記インバータ部の短絡電流を短路検出部で検出する場合、前記インバータの出力を遮断する段階;を含み、
前記第1PWM制御信号を前記インバータ部に出力する段階の前に有効ベクトルの出力時間を設計時間より長く設定するように構成され、短路検出部が短路検出部の電流の遅延を考慮して短路電流を検出する段階をさらに含む、制御方法。
【請求項7】
前記第1PWM制御信号は、
U-V相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 0 0]、[0 1 0]、[0 1 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つを出力するようにする信号を含む、請求項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記第1PWM制御信号は、
V-W相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 1 0]、[0 1 0]、[0 0 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号を含む、請求項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記第1PWM制御信号は、
W-U相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 0 0]、[1 1 0]、[0 1 1]および[0 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号を含む、請求項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記インバータ部の短絡電流が検出されなかった場合、前記インバータの正常運転のための第2PWM制御信号を出力する段階をさらに含む、請求項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインバータ制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にインバータは電気的に直流(DC)を交流(AC)に変換する逆変換装置であって、産業界で使われるインバータは常用電源から供給された電力が入力されて自主的に電圧と周波数を可変して電動機に供給することによって、電動機の速度を高効率で利用するように制御する一連の装置と定義される。このようなインバータは、可変電圧可変周波数(variable voltage variable frequency、VVVF)方式によって制御され、パルス幅変調(pulse width modulation、PWM)出力により電動機に入力される電圧と周波数を可変することができる。
【0003】
図1は、一般的なインバータの構成図である。
【0004】
一般的に、インバータ100は電源部200から3相の交流電源が印加されて整流部110がこれを整流し、平滑部120は整流部110が整流した直流電圧を平滑して貯蔵する。インバータ部130は平滑部120の直流リンクキャパシタに貯蔵された直流電圧を、PWM制御信号によって所定電圧および周波数を有する交流電圧を出力してこれを電動機300に提供する。
【0005】
この時、インバータ100のインバータ部130は3相のレッグで構成され、各レッグには2個のスイッチング素子が直列で連結されて構成される。
【0006】
インバータ100の短絡は、インバータ100の出力のうち2相以上が互いに短絡して非常に大きな短絡電流がインバータ100の内部に流れる場合であって、インバータ100の出力線の被覆の劣化によって被覆がむけて発生するか、電動機300内部の被覆が劣化によってむけて発生するか、または作業者の作ミスによって発生する。
【0007】
インバータ100の短絡時のインバータ100に流れる電流は定格の何倍以上にも達するため、インバータ100が焼損し得、人身事故まで発生し得る可能性がある。
【0008】
したがって、電動機300を駆動するインバータ100は出力短絡時に使用者にこれを知らせ、インバータ100の運転を停止して電動機300および使用者を安全に保護する機能を提供している。
【0009】
しかし、このような短絡検出回路にはハードウェア的な回路遅延区間が存在し、有効ベクトルの大きさが小さい場合、このような遅延によって出力短絡を検出できない区間が発生することになる問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、インバータを運転する前に短絡を診断することによって、安定してインバータを駆動するためのインバータ制御装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような技術的課題を解決するために、本発明の一実施例によってインバータを制御する装置は、複数のスイッチング素子で構成され、直流電圧を制御部の制御によって交流電圧に変換して出力するインバータ部;前記インバータ部に流れる短絡電流を検出する短絡検出部;および前記インバータの出力短絡を診断するための複数の有効ベクトルのうち少なくとも一つを前記インバータ部が出力するようにするパルス幅変調(PWM)制御信号を前記インバータ部に印加する前記制御部を含むことができる。
【0012】
本発明の一実施例において、前記インバータ部は、3相の交流電圧を出力する3相のレッグで構成され、前記短絡検出部は、前記3相のレッグの下部レッグに流れる短絡電流を検出することができる。
【0013】
本発明の一実施例において、前記PWM制御信号は、U-V相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 0 0]、[0 1 0]、[0 1 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つを出力するようにする信号を含むことができる。
【0014】
本発明の一実施例において、前記PWM制御信号は、V-W相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 1 0]、[0 1 0]、[0 0 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号を含むことができる。
【0015】
本発明の一実施例において、前記PWM制御信号は、W-U相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 0 0]、[1 1 0]、[0 1 1]および[0 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号を含むことができる。
【0016】
本発明の一実施例において、前記制御部は、前記インバータ部が前記複数の有効ベクトルのうち少なくとも一つを所定時間以上出力できるように前記PWM制御信号を出力することができる。
【0017】
本発明の一実施例において、前記所定時間は前記短絡検出部の回路的な特性から決定され得る。
【0018】
また、前記のような技術的課題を解決するために、本発明の一実施例によって複数のスイッチング素子で構成されて直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ部を含む、インバータを制御する方法は、前記インバータの運転指令を受信する段階;前記インバータの出力短絡を診断するための複数の有効ベクトルのうち少なくとも一つを前記インバータ部が出力するようにする第1PWM制御信号を前記インバータ部に出力する段階;および前記インバータ部の短絡電流を検出する場合、前記インバータの出力を遮断する段階を含むことができる。
【0019】
本発明の一実施例において、前記第1PWM制御信号は、U-V相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 0 0]、[0 1 0]、[0 1 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つを出力するようにする信号を含むことができる。
【0020】
本発明の一実施例において、前記第1PWM制御信号は、V-W相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 1 0]、[0 1 0]、[0 0 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号を含むことができる。
【0021】
本発明の一実施例において、前記第1PWM制御信号は、W-U相の短絡に対して、前記インバータ部が前記有効ベクトルである[1 0 0]、[1 1 0]、[0 1 1]および[0 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号を含むことができる。
【0022】
本発明の一実施例において、前記第1PWM制御信号は、前記インバータ部が前記複数の有効ベクトルのうち少なくとも一つを所定時間以上出力するようにすることができる。
【0023】
本発明の一実施例において、前記所定時間は短絡電流を検出する短絡検出部の回路的な特性から決定され得る。
【0024】
本発明の一実施例の方法は、前記インバータ部の短絡電流が検出されなかった場合、前記インバータの正常運転のための第2PWM制御信号を出力する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0025】
前記のような本発明は、短絡が発生した場合、インバータに運転指令が受信されると、診断PWM制御信号によって短絡診断を遂行して予めインバータの出力を遮断することによって、インバータを保護し、作業者を保護するようにする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一般的なインバータの構成図である。
【0027】
図2】インバータ出力のうちU相とV相が短絡した場合の電流経路を示したものである。
【0028】
図3】インバータ出力のうちU相とW相が短絡した場合の電流経路を示したものである。
【0029】
図4】インバータ出力のうちV相とW相が短絡した場合の電流経路を示したものである。
【0030】
図5】インバータの空間ベクトルパルス幅変調方式(spacial vector pulse width modulation、SVPWM)を説明するための例示図である。
【0031】
図6図5の第1セクターでの有効ベクトルを示す例示図である。
【0032】
図7】第1セクターでU-V相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0033】
図8】第1セクターでV-W相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0034】
図9】第1セクターでW-U相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0035】
図10】第2セクターでU-V相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0036】
図11】第2セクターでV相とW相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図である。
【0037】
図12】第2セクターでW-U相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0038】
図13】第3セクターでU-V相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0039】
図14】第3セクターでV-W相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0040】
図15】第3セクターでW-U相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0041】
図16】第4セクターでU-V相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0042】
図17】第4セクターでV-W相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0043】
図18】第4セクターでW-U相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0044】
図19】第5セクターでU-V相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0045】
図20】第5セクターでV-W相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0046】
図21】第5セクターでW-U相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0047】
図22】第6セクターでU-V相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0048】
図23】第6セクターでV-W相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0049】
図24】第6セクターでW-U相の出力短絡の場合の電流経路を示した例示図である。
【0050】
図25】有効ベクトル[1 0 0]区間が短く形成される場合、短絡の検出が不可能となることを説明するための例示図である。
【0051】
図26】U-V相の出力短絡が発生した場合、短絡電流の検出が不可能な区間を説明するための例示図である。
【0052】
図27】本発明の一実施例のインバータシステムの構成図である。
【0053】
図28】本発明の一実施例の制御方法を説明するための一例示図である。
【0054】
図29】U-V相が短絡した場合に各有効ベクトルによって短絡電流が流れる場合を示したものである。
【0055】
図30】V-W相が短絡した場合に各有効ベクトルによって短絡電流が流れる場合を示したものである。
【0056】
図31】W-U相が短絡した場合に各有効ベクトルによって短絡電流が流れる場合を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の構成および効果を十分に理解するために、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。しかし、本発明は以下で開示される実施例に限定されるものではなく、多様な形態で具現され得、多様な変更を加えることができる。単に、本実施例に対する説明は本発明の開示を完全なものとし、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。添付された図面で構成要素は説明の便宜のためにその大きさを実際より拡大して図示したものであり、各構成要素の比率は誇張または縮小され得る。
【0058】
「第1」、「第2」等の用語は多様な構成要素の説明に使われ得るが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使われ得る。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく「第1構成要素」は「第2構成要素」と命名され得、同様に「第2構成要素」も「第1構成要素」と命名され得る。また、単数の表現は文脈上明白に異なって表現しない限り、複数の表現を含む。本発明の実施例で使われる用語は異なって定義されない限り、該当技術分野で通常の知識を有する者に通常的に知られている意味で解釈され得る。
【0059】
以下では、図面を参照して、従来のインバータ出力短絡方式を説明し、本発明の一実施例に係るインバータ制御装置を説明することにする。
【0060】
図2はインバータ出力のうちU相とV相が短絡した場合の電流経路を示したもので、図3はインバータ出力のうちU相とW相が短絡した場合の電流経路を示したものであり、図4はインバータ出力のうちV相とW相が短絡した場合の電流経路を示したものである。
【0061】
すなわち、図2図4のように、インバータ出力が「短絡」したとは、「短絡電流」が流れるということを意味し、これはインバータ部130の上部と下部のスイッチがともにオンとなる状況を意味し得る。
【0062】
図5はインバータの空間ベクトルパルス幅変調方式(spacial vector pulse width modulation、SVPWM)を説明するための例示図であり、図6図5の第1セクターでの有効ベクトルを示す例示図である。
【0063】
また、図7は第1セクターでU相とV相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図8は第1セクターでV相とW相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図9は第1セクターでW相とU相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図である。
【0064】
一般的に、SVPWMは指令電圧と隣接した2個の有効ベクトルとゼロ電圧を利用して一周期の間平均的に合成する方式で変調を遂行する。図5の陰影部分が第1セクター5Aであり、第1セクター5Aでの有効ベクトルは[1 0 0]と[1 1 0]である。
【0065】
このように、第1セクター5AでU相とV相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[1 0 0]で短絡電流が流れることになり、この時の電流経路が図7の(a)と同じである。この時、有効ベクトル[1 1 0]である場合には図7の(b)のように電流が流れることになるが、この場合、電位差がないため短絡電流が流れない。すなわち、第1セクターでU相とV相の出力が短絡した場合には、有効ベクトルが[1 0 0]である場合にのみ短絡電流が流れることになる。
【0066】
一方、第1セクター5AでV相とW相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[1 1 0]で短絡電流が流れることになり、この時の電流経路が図8の(b)と同じである。有効ベクトルが[1 0 0]である場合には図8の(a)のように短絡電流が流れない。すなわち、第1セクターでV相とW相の出力が短絡した場合には有効ベクトルが[1 1 0]である場合にのみ短絡電流が流れることになる。
【0067】
また、第1セクター5AでW相とU相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[1 0 0]および[1 1 0]ですべて短絡電流が流れることになり、この時の電流経路がそれぞれ図9の(a)および(b)と同じである。すなわち、第1セクターでW相とU相の出力が短絡した場合には有効ベクトル[1 0 0]および[1 1 0]ですべて短絡電流が流れることになる。
【0068】
【0069】
これと同様に、図5の第2セクター5Bでは、有効ベクトルが[1 1 0]と[0 1 0]である。
【0070】
図10は第2セクターでU相とV相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図11は第2セクターでV相とW相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図12は第2セクターでW相とU相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図である。
【0071】
図10に図示された通り、第2セクター5BでU相とV相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 1 0]で短絡電流が流れることになり((b)参照)、有効ベクトル[1 1 0]では電位差がないため短絡電流が流れない((a)参照)。
【0072】
図11に図示された通り、第2セクター5BでV相とW相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[1 1 0]および[0 1 0]ですべて短絡電流が流れることになる。
【0073】
また、図12に図示された通り、第2セクター5BでW相とU相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[1 1 0]で短絡電流が流れることになり((a)参照)、有効ベクトル[0 1 0]では短絡電流が流れない((b)参照)。
【0074】
【0075】
図5の第3セクター5Cでは、有効ベクトルが[0 1 0]と[0 1 1]である。
【0076】
図13は第3セクターでU相とV相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図14は第3セクターでV相とW相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図15は第3セクターでW相とU相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図である。
【0077】
図13に図示された通り、第3セクター5CでU相とV相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 1 0]で短絡電流が流れることになり((a)参照)、有効ベクトル[0 1 1]でも短絡電流が流れることになる((b)参照)。
【0078】
図14に図示された通り、第3セクター5CでV相とW相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 1 0]で短絡電流が流れることになり((a)参照)、有効ベクトル[0 1 1]では電位差がないため短絡電流が流れない((b)参照)。
【0079】
また、図15に図示された通り、第3セクター5CでW相とU相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 1 1]で短絡電流が流れることになり((b)参照)、有効ベクトル[0 1 0]では短絡電流が流れない((a)参照)。
【0080】
【0081】
図5の第4セクター5Dで有効ベクトルは[0 1 1]と[0 0 1]である。
【0082】
図16は第4セクターでU相とV相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図17は第4セクターでV相とW相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図18は第4セクターでW相とU相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図である。
【0083】
図16に図示された通り、第4セクター5DでU相とV相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 1 1]で短絡電流が流れることになり((a)参照)、有効ベクトル[0 0 1]では短絡電流が流れない((b)参照)。
【0084】
図17に図示された通り、第4セクター5DでV相とW相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 1 1]では電位差がないため短絡電流が流れず((a)参照)、有効ベクトル[0 0 1]では短絡電流が流れることになる((b)参照)。
【0085】
また、図18に図示された通り、第4セクター5DでW相とU相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 1 1]で短絡電流が流れることになり((a)参照)、有効ベクトル[0 0 1]でも短絡電流が流れることになる((b)参照)。
【0086】
【0087】
図5の第5セクター5Eで有効ベクトルは[0 0 1]と[1 0 1]である。
【0088】
図19は第5セクターでU相とV相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図20は第5セクターでV相とW相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図21は第5セクターでW相とU相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図である。
【0089】
図19に図示された通り、第5セクター5EでU相とV相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 0 1]では短絡電流が流れず((a)参照)、有効ベクトル[1 0 1]では短絡電流が流れることになる((b)参照)。
【0090】
図20に図示された通り、第5セクター5EでV相とW相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 0 1]では短絡電流が流れることになり((a)参照)、有効ベクトル[1 0 1]でも短絡電流が流れることになる((b)参照)。
【0091】
また、図21に図示された通り、第5セクター5EでW相とU相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[0 0 1]で短絡電流が流れることになり((a)参照)、有効ベクトル[1 0 1]では電位差がないため短絡電流は流れない((b)参照)。
【0092】
【0093】
図5の第6セクター5Fで有効ベクトルは[1 0 1]と[1 0 0]である。
【0094】
図22は第6セクターでU相とV相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図23は第6セクターでV相とW相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図であり、図24は第6セクターでW相とU相の出力が短絡した場合の電流経路を説明するための例示図である。
【0095】
図22に図示された通り、第6セクター5FでU相とV相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[1 0 1]および[1 0 0]ですべて短絡電流が流れることになる((a)および(b)参照)。
【0096】
図23に図示された通り、第6セクター5FでV相とW相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[1 0 1]では短絡電流が流れることになり((a)参照)、有効ベクトル[1 0 0]では短絡電流が流れない((b)参照)。
【0097】
また、図24に図示された通り、第6セクター5FでW相とU相の出力が短絡した場合、有効ベクトル[1 0 1]では電位差がないため短絡電流が流れず((a)参照)、有効ベクトル[1 0 0]では短絡電流は流れることになる((b)参照)。
【0098】
【0099】
このように、U相とV相が短絡した場合、有効ベクトル[1 0 0]、[0 1 0]、[0 1 1]、および[1 0 1]で短絡電流が流れることになる。また、V相とW相が短絡した場合、有効ベクトル[1 1 0]、[0 1 0]、[0 0 1]および[1 0 1]で短絡電流が流れることになる。また、W相とV相が短絡した場合、有効ベクトル[1 0 0]、[1 1 0]、[0 1 1]および[0 0 1]で短絡電流が流れることになる。
【0100】
従来の短絡検出方式によると、短絡発生時に有効ベクトルに流れる短絡電流を検出してインバータの出力を遮断し、故障の髪生を知らせることによって、インバータを保護し、作業者を保護することになる。
【0101】
すなわち、従来のインバータ出力短絡検出方式は、短絡が発生した場合、有効ベクトルが印加される区間で電流経路が形成されるため、短絡検出回路で短絡電流を検出することができる。しかし、短絡検出回路にハードウェア的な遅延時間が存在し、遅延時間によって短絡電流を正確に検出できない場合が発生することになる。
【0102】
図25は、有効ベクトル[1 0 0]区間が短く形成される場合、短絡の検出が不可能となることを説明するための例示図である。
【0103】
短絡検出回路に回路的な遅延時間が存在して有効ベクトル[1 0 0]区間が短く形成されるインバータ低速運転区間では、有効ベクトルの大きさが短絡経路を作る時間と同一になるため、有効ベクトルの大きさが減るほど短絡検出回路では遅延により検出が不可能となる問題点がある。
【0104】
図26はU-V相の出力短絡が発生した場合、インバータの低速運転により有効ベクトルの大きさが小さく形成されることにより(1.8us)短絡電流の検出が不可能な区間を説明するためのものである。
【0105】
このように、従来の短絡電流検出回路は、ハードウェア的に検出可能な時間に限界があるため短い時間の短絡電流は検出が不可能であり、この不可能な区間が反復的かつ持続的に続く場合、瞬間性短絡電流が持続的にインバータに累積されてインバータの焼損に達することになる問題点がある。
【0106】
【0107】
本発明はこのような問題点を解決するためのものであり、インバータの運転を開始する前に短絡を診断することによって、インバータの出力短絡を事前に検出してインバータの損傷を防止するためのものである。
【0108】
図27は、本発明の一実施例のインバータシステムの構成図である。
【0109】
図面に図示された通り、本発明の一実施例のインバータシステムは、インバータ1と、インバータ1の出力によって駆動される電動機2およびインバータ1を制御する制御部3を含むことができる。また、本発明の一実施例のシステムは、ディスプレイ部4および通信部5をさらに含むことができる。また、本発明の一実施例のシステムは、短絡検出部6をさらに含むことができる。
【0110】
インバータ1は、入力される3相の電源を平滑する整流部11、整流部11により整流された直流電圧を平滑する平滑部12および平滑部12に貯蔵された直流電圧を制御部3の制御によって3相の交流電圧に変換するインバータ13を含むことができる。
【0111】
インバータ部13は所定トポロジーによって配列される複数のスイッチング素子で構成され、3個のレッグで出力される単相の交流電圧がそれぞれ電動機2に出力され得る。
【0112】
制御部3は所定の指令電圧によって平滑部12に貯蔵された直流電圧を交流電圧に変換するようにパルス幅制御(PWM)制御信号をインバータ部13に出力することができる。
【0113】
インバータ1の停止状態では制御部3のPWM制御信号が印加されないので、短絡が形成されても短絡経路が形成されないため正常に見える。しかし、インバータ1が運転指令によって制御部3からPWM制御信号が印加されると、短絡経路が形成されて短絡電流が流れてインバータ1に損傷が発生し得る。
【0114】
したがって、本発明の制御部3はインバータ1が運転指令を受けた場合、運転PWM制御信号をインバータ部13に印加する前に短絡を診断するための診断PWM制御信号を印加する方式で事前に診断して、短絡が検出されるとインバータ1の出力を遮断し、故障情報を上位制御システム(図示されず)に通信部5を通じて知らせるか、またはディスプレイ部4に作業者が確認可能に視覚的に故障が発生したことを知らせる情報を表示することができる。
【0115】
また、制御部3は短絡が検出されないと、インバータ1のインバータ部13に正常なPWM制御信号を印加して正常運転を開始することができる。
【0116】
この時短絡検出部6はインバータ部13の下部レッグを流れる短絡電流を検出して制御部3に検出の有無を提供することができる。短絡検出部6は例えば、変流器(CT)を含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0117】
【0118】
図28は、本発明の一実施例の制御方法を説明するための一例示図である。
【0119】
図面に図示された通り、本発明の一実施例の制御部3は、運転指令が受信される前は動作しないが、運転指令を受信する場合(S10)、正常なPWM制御信号の印加前に診断PWM制御信号を印加することができる(S15)。
【0120】
診断PWM制御信号は、U-V相の短絡に対してインバータ部13が有効ベクトル[1 0 0]、[0 1 0]、[0 1 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つを出力するようにするPWM制御信号であり得、V-W相の短絡に対してインバータ部13が有効ベクトル[1 1 0]、[0 1 0]、[0 0 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号であり得、W-U相の短絡に対して有効ベクトル[1 0 0]、[1 1 0]、[0 1 1]および[0 0 1]のうちいずれか一つ以上を出力するようにする信号であり得る。
【0121】
まず、制御部3はインバータ部13が有効ベクトル[1 0 0]、[0 1 0]、[0 1 1]のうち[1 0 1]いずれか一つを出力するようにするPWM制御信号を印加してU相とV相の短絡の有無を決定することができる。図29は、U-V相が短絡した場合に各有効ベクトルによって短絡電流が流れる場合を示したものである。
【0122】
すなわち、制御部3が前記有効ベクトルのうち一つを出力するようにするPWM制御信号を印加して、図29のようにインバータ部13の下部レッグに流れる電流を短絡検出部6が検出した場合(S20)、制御部3はU-V相の短絡を確認してインバータ1の出力を遮断し(S25)、通信部5を通じて上位制御システムに故障情報を伝送し、ディスプレイ部4に故障情報を表示することができる(S30)。この時、有効ベクトルの出力時間は、短絡検出部6の回路的な遅延を考慮して短絡電流を検出できる設計時間以上を設定することができる。短絡電流検出可能設計時間は短絡検出部6の回路的な構成によって変わり得るものであって、いずれか一つの値に限定されるものではない。
【0123】
このような診断PWM制御信号は、U-V相、V-W相、W-U相に対してすべて遂行できる(S35)。
【0124】
すなわち、制御部3はインバータ部13が有効ベクトル[1 1 0]、[0 1 0]、[0 0 1]および[1 0 1]のうちいずれか一つを出力するようにするPWM制御信号を印加してV相とW相の短絡の有無を確認することができる。図30は、V-W相が短絡した場合に各有効ベクトルによって短絡電流が流れる場合を示したものである。
【0125】
制御部3が前記有効ベクトルのうち一つを出力するようにするPWM制御信号を印加して、図30のようにインバータ部13の下部レッグに流れる電流を短絡検出部6が検出した場合(S20)、制御部3はU-V相の短絡を確認してインバータ1の出力を遮断し(S25)、通信部5を通じて上位制御システムに故障情報を伝送し、ディスプレイ部4に故障情報を表示することができる(S30)。
【0126】
また、制御部3は、有効ベクトル[1 0 0]、[1 1 0]、[0 1 1]および[0 0 1]のうちいずれか一つを出力するようにするPWM制御信号を印加してW相とU相の短絡の有無を確認することができる。図31は、W-U相が短絡した場合に各有効ベクトルによって短絡電流が流れる場合を示したものである。
【0127】
制御部3が前記有効ベクトルのうち一つを出力するようにするPWM制御信号を印加して、図31のようにインバータ部13の下部レッグに流れる電流を短絡検出部6が検出した場合(S20)、制御部3はU-V相の短絡を確認してインバータ1の出力を遮断し(S25)、通信部5を通じて上位制御システムに故障情報を伝送し、ディスプレイ部4に故障情報を表示することができる(S30)。
【0128】
一方、図29図31のような短絡電流が流れない場合には、制御部3はインバータ1のインバータ部13に正常なPWM制御信号を印加して正常運転を開始することができる(S40)。
【0129】
このように、本発明の一実施例によると、短絡が発生した場合、インバータ1に運転指令が受信されると、制御部3が予め診断PWM制御信号によって短絡診断を遂行して予めインバータの出力を遮断することによって、インバータを保護し、作業者を保護することができる。短絡が発生しなかった場合に診断PWM制御信号が出力されるが、電動機2のインピーダンスによって短い診断PWM区間で大きな電流が流れることはないので誤診断の可能性が少ない。
【0130】
以上、本発明に係る実施例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該分野で通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形および均等な範囲の実施例が可能であることが理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は下記の特許請求の範囲によって定められるべきである。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
図9(a)】
図9(b)】
図10(a)】
図10(b)】
図11(a)】
図11(b)】
図12(a)】
図12(b)】
図13(a)】
図13(b)】
図14(a)】
図14(b)】
図15(a)】
図15(b)】
図16(a)】
図16(b)】
図17(a)】
図17(b)】
図18(a)】
図18(b)】
図19(a)】
図19(b)】
図20(a)】
図20(b)】
図21(a)】
図21(b)】
図22(a)】
図22(b)】
図23(a)】
図23(b)】
図24(a)】
図24(b)】
図25
図26
図27
図28
図29(a)】
図29(b)】
図29(c)】
図29(d)】
図30(a)】
図30(b)】
図30(c)】
図30(d)】
図31