IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-表面実装コネクタ 図1
  • 特許-表面実装コネクタ 図2
  • 特許-表面実装コネクタ 図3
  • 特許-表面実装コネクタ 図4
  • 特許-表面実装コネクタ 図5
  • 特許-表面実装コネクタ 図6
  • 特許-表面実装コネクタ 図7
  • 特許-表面実装コネクタ 図8
  • 特許-表面実装コネクタ 図9
  • 特許-表面実装コネクタ 図10
  • 特許-表面実装コネクタ 図11
  • 特許-表面実装コネクタ 図12
  • 特許-表面実装コネクタ 図13
  • 特許-表面実装コネクタ 図14
  • 特許-表面実装コネクタ 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】表面実装コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/51 20110101AFI20240112BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01R12/51
H01R13/46 304G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020151244
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045577
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-103527(JP,A)
【文献】特開2010-055881(JP,A)
【文献】特開2002-222674(JP,A)
【文献】特開2004-119035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00 - 12/91
H01R 13/40 - 13/533
H01R 24/00 - 24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向を板厚方向とする回路基板上に取り付けられる表面実装コネクタであって、
複数の端子と、
前記複数の端子を保持する複数のインナーハウジングと、
前記複数のインナーハウジングを並列して収容するアウターハウジングと、を備え、
前記複数の端子の下端部には、前記回路基板に接続されるリードが設けられ、
前記複数のインナーハウジングのそれぞれは、前記アウターハウジングにおいて独立して上下方向に移動可能に支持されており
前記複数のインナーハウジングは、上下方向にのび、前記アウターハウジング側に突出するガイド部を有し、
前記アウターハウジングは、上下方向にのび、前記ガイド部に係合するガイド凹部を有し、
前記ガイド部と前記ガイド凹部とが係合することで、前記複数のインナーハウジングのそれぞれが独立して上下方向に移動することが案内される、表面実装コネクタ。
【請求項2】
前記複数のインナーハウジングは、前記アウターハウジング側に突出する係止突起を有し、
前記アウターハウジングは、下方から前記係止突起と係止する下方係止部を有し、
前記係止突起と前記下方係止部とが係止することで、前記複数のインナーハウジングは、前記アウターハウジングから下方に抜けないようになっており、
前記アウターハウジングが水平な前記回路基板上に固定された際に前記複数のインナーハウジングが配される上下方向の位置は、基準位置とされており、
前記基準位置において、前記係止突起と前記下方係止部との間には、上下方向に第1クリアランスが設定されている、請求項1に記載の表面実装コネクタ。
【請求項3】
前記係止突起および前記ガイド部は、上下方向および前記複数のインナーハウジングが並ぶ方向に直交する方向における前記インナーハウジングの両側に、それぞれ一対設けられている、請求項に記載の表面実装コネクタ。
【請求項4】
前記アウターハウジングは、上方から前記複数のインナーハウジングの上面と係止する上方係止部を有し、
前記上方係止部と前記複数のインナーハウジングの上面とが係止することで、前記複数のインナーハウジングは、前記アウターハウジングから上方に抜けないようになっており、
前記アウターハウジングが水平な前記回路基板上に固定された際に前記複数のインナーハウジングが配される上下方向の位置は、基準位置とされており、
前記基準位置において、前記複数のインナーハウジングの上面と前記上方係止部との間には、上下方向に第2クリアランスが設定されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の表面実装コネクタ。
【請求項5】
前記ガイド部の上面は、前記インナーハウジングの上面と面一に設けられ、前記上方係止部が上方から係止できるようになっている、請求項に記載の表面実装コネクタ。
【請求項6】
上下方向を板厚方向とする回路基板上に取り付けられる表面実装コネクタであって、
複数の端子と、
前記複数の端子を保持する複数のインナーハウジングと、
前記複数のインナーハウジングを並列して収容するアウターハウジングと、を備え、
前記複数の端子の下端部には、前記回路基板に接続されるリードが設けられ、
前記複数のインナーハウジングのそれぞれは、前記アウターハウジングにおいて独立して上下方向に移動可能に支持されており
前記アウターハウジングは、上方から前記複数のインナーハウジングの上面と係止する上方係止部を有し、
前記上方係止部と前記複数のインナーハウジングの上面とが係止することで、前記複数のインナーハウジングは、前記アウターハウジングから上方に抜けないようになっており、
前記アウターハウジングが水平な前記回路基板上に固定された際に前記複数のインナーハウジングが配される上下方向の位置は、基準位置とされており、
前記基準位置において、前記複数のインナーハウジングの上面と前記上方係止部との間には、上下方向に第2クリアランスが設定されている、表面実装コネクタ。
【請求項7】
前記複数のインナーハウジングは、前記アウターハウジング側に突出する係止突起を有し、
前記アウターハウジングは、下方から前記係止突起と係止する下方係止部を有し、
前記係止突起と前記下方係止部とが係止することで、前記複数のインナーハウジングは、前記アウターハウジングから下方に抜けないようになっており、
前記基準位置において、前記係止突起と前記下方係止部との間には、上下方向に第1クリアランスが設定されている、請求項6に記載の表面実装コネクタ。
【請求項8】
前記アウターハウジングは、前記アウターハウジングを前記回路基板上に固定するペグを有している、請求項2から請求項5及び請求項7のいずれか一項に記載の表面実装コネクタ。
【請求項9】
前記インナーハウジングは、前記端子を複数保持している、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の表面実装コネクタ。
【請求項10】
前記アウターハウジングは、上方に開口するフード部を有し、
嵌合相手である相手方コネクタと下方から嵌合する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の表面実装コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面実装コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装型コネクタには、基板上の配線パターンに半田で接続されるリードが設けられている。複数のリードを基板に確実に接続するためには、複数のリードの下端部が基板面にほぼ一致して並んでいる必要がある。すなわち、リードのコプラナリティー(平坦度)を担保する必要がある。また、リードのコプラナリティーが良好な場合であっても、例えば、リフロー時に基板の反りが生じた場合には、リードと基板との接続が不良となるおそれがある。
【0003】
上記の課題を解決する表面実装型コネクタとして、従来、特開2010-146728号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。この表面実装型コネクタは、コンタクトと、コンタクトを保持する絶縁ハウジングと、を備えている。コンタクトは、バネ性を持った可動部と、プリント配線基板に半田付けにより接続されるリードと、を備え、リードは絶縁ハウジングのスタンドオフより下方に配されている。表面実装型コネクタをプリント配線基板に実装する際、コンタクトの可動部を撓ませることで、リードとプリント配線基板とを良好に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-146728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成では、実装の際、可動部を撓ませるために、表面実装型コネクタを下方に押し付ける必要がある。また、可動部の動きを規制する構成が設けられていないため、可動部が上下方向に撓むだけでなく、例えば左右方向にずれる可能性があり、実装がうまく行えないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表面実装コネクタは、上下方向を板厚方向とする回路基板上に取り付けられる表面実装コネクタであって、複数の端子と、前記複数の端子を保持する複数のインナーハウジングと、前記複数のインナーハウジングを並列して収容するアウターハウジングと、を備え、前記複数の端子の下端部には、前記回路基板に接続されるリードが設けられ、前記複数のインナーハウジングのそれぞれは、前記アウターハウジングにおいて独立して上下方向に移動可能に支持されている、表面実装コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回路基板の反り等によるリードと回路基板との接続不良を抑制可能な表面実装コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかる表面実装コネクタの斜視図である。
図2図2は、表面実装コネクタの平面図である。
図3図3は、図2のA-A断面図である。
図4図4は、図3のB-B断面図である。
図5図5は、図4のC-C断面図である。
図6図6は、図2のA-A断面におけるアウターハウジングの断面斜視図である。
図7図7は、端子を保持するインナーハウジングの斜視図である。
図8図8は、水平な回路基板上に取り付けられた表面実装コネクタの背面図である。
図9図9は、図8のD-D断面図である。
図10図10は、下方に凸状をなして反っている回路基板上に取り付けられた表面実装コネクタの背面図である。
図11図11は、回路基板の下方反り量を示す図10の拡大図である。
図12図12は、図10のE-E断面図である。
図13図13は、上方に凸状をなして反っている回路基板上に取り付けられた表面実装コネクタの背面図である。
図14図14は、回路基板の上方反り量を示す図13の拡大図である。
図15図15は、図13のF-F断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0010】
(1)本開示の表面実装コネクタは、上下方向を板厚方向とする回路基板上に取り付けられる表面実装コネクタであって、複数の端子と、前記複数の端子を保持する複数のインナーハウジングと、前記複数のインナーハウジングを並列して収容するアウターハウジングと、を備え、前記複数の端子の下端部には、前記回路基板に接続されるリードが設けられ、前記複数のインナーハウジングのそれぞれは、前記アウターハウジングにおいて独立して上下方向に移動可能に支持されている、表面実装コネクタである。
【0011】
このような構成によると、回路基板の反りに合わせて、端子を保持する複数のインナーハウジングのそれぞれが、独立して上下方向に移動することで、リードと回路基板とが当接した状態を確保することができる。したがって、リードと回路基板との接続不良を抑制することができる。
【0012】
(2)前記複数のインナーハウジングは、前記アウターハウジング側に突出する係止突起を有し、前記アウターハウジングは、下方から前記係止突起と係止する下方係止部を有し、前記係止突起と前記下方係止部とが係止することで、前記複数のインナーハウジングは、前記アウターハウジングから下方に抜けないようになっており、前記アウターハウジングが水平な前記回路基板上に固定された際に前記複数のインナーハウジングが配される上下方向の位置は、基準位置とされており、前記基準位置において、前記係止突起と前記下方係止部との間には、上下方向に第1クリアランスが設定されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によると、基準位置において、係止突起と下方係止部との間には、上下方向に第1クリアランスが設定されているため、回路基板が下方に凸状をなして反っている場合、インナーハウジングは回路基板に追従して下方に移動することができ、回路基板とリードとの接続不良を抑制しやすい。
【0014】
(3)前記アウターハウジングは、前記アウターハウジングを前記回路基板上に固定するペグを有していることが好ましい。
【0015】
このような構成によると、アウターハウジングの下端から下方に出ているペグの上下方向の長さを変更することで、回路基板に対するアウターハウジングの上下方向の位置を変更することができる。したがって、第1クリアランスの大きさを変更することができる。
【0016】
(4)前記アウターハウジングは、上方から前記複数のインナーハウジングの上面と係止する上方係止部を有し、前記上方係止部と前記複数のインナーハウジングの上面とが係止することで、前記複数のインナーハウジングは、前記アウターハウジングから上方に抜けないようになっており、前記基準位置において、前記複数のインナーハウジングの上面と前記上方係止部との間には、上下方向に第2クリアランスが設定されていることが好ましい。
【0017】
このような構成によると、基準位置において、インナーハウジングの上面と上方係止部との間には、上下方向に第2クリアランスが設定されているため、回路基板が上方に凸状をなして反っている場合、インナーハウジングは回路基板に追従して上方に移動することができ、回路基板とリードとの接続不良を抑制しやすい。
【0018】
(5)前記複数のインナーハウジングは、上下方向にのび、前記アウターハウジング側に突出するガイド部を有し、前記アウターハウジングは、上下方向にのび、前記ガイド部に係合するガイド凹部を有し、前記ガイド部と前記ガイド凹部とが係合することで、前記複数のインナーハウジングのそれぞれが独立して上下方向に移動することが案内されることが好ましい。
【0019】
このような構成によると、インナーハウジングが上下方向に移動しやすくなる。
【0020】
(6)前記ガイド部の上面は、前記インナーハウジングの上面と面一に設けられ、前記上方係止部が上方から係止できるようになっていることが好ましい。
【0021】
このような構成によると、インナーハウジングと上方係止部とが係止する部分が大きくなるため、インナーハウジングがアウターハウジングの上方に抜けることをさらに抑制することができる。
【0022】
(7)前記係止突起および前記ガイド部は、上下方向および前記複数のインナーハウジングが並ぶ方向に直交する方向における前記インナーハウジングの両側に、それぞれ一対設けられていることが好ましい。
【0023】
このような構成によると、インナーハウジングがアウターハウジングの上方および下方に抜けることをさらに抑制することができ、インナーハウジングが上下方向にさらに移動しやすくなる。また、複数のインナーハウジングが並ぶ方向におけるインナーハウジングおよびアウターハウジングの寸法を小さくすることができる。
【0024】
(8)前記インナーハウジングは、前記端子を複数保持していることが好ましい。
【0025】
このような構成によると、多極の表面実装コネクタを構成しやすい。
【0026】
(9)前記アウターハウジングは、上方に開口するフード部を有し、嵌合相手である相手方コネクタと下方から嵌合することが好ましい。
【0027】
このような構成によると、表面実装コネクタと相手方コネクタとの嵌合方向が上下方向となり、インナーハウジングが移動可能とされる方向と一致するので、複数のインナーハウジングが独立して上下方向に移動しても、表面実装コネクタと相手方コネクタとの嵌合が阻害されにくい。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0029】
<実施形態>
本開示の実施形態について、図1から図15を参照しつつ説明する。以下の説明においては、矢線Zの示す方向を上方、矢線Xの示す方向を前方、矢線Yの示す方向を左方として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0030】
[表面実装コネクタ]
本実施形態の表面実装コネクタ10は、例えば車両等に搭載されるものであって、図1および図2に示すように、複数の端子11と、一対の端子11を保持する複数のインナーハウジング20(実施形態では7個)と、複数のインナーハウジング20を並列して収容するアウターハウジング30と、を備える。本実施形態では、複数のインナーハウジング20が並ぶ方向は、左右方向とされている。表面実装コネクタ10は、図8に示すように、上下方向に板厚方向を有する回路基板5上に取り付けられ、嵌合相手となる相手方コネクタ(図示せず)に下方から嵌合するようになっている。
【0031】
[端子、リード]
端子11は、導電性金属により構成され、図4に示すように、上方に突出するタブ形状をなす端子接続部12と、下端部において前方または後方にのびるリード13と、を有する。リード13は、回路基板5上の導電路(図示せず)に半田付けにより電気的に接続されるようになっている(図9参照)。
【0032】
[インナーハウジング、係止突起]
インナーハウジング20は、絶縁性の合成樹脂からなり、図7に示すように、ブロック状をなしている。インナーハウジング20は、一対の端子11を前後方向に並べて保持している。端子11はインナーハウジング20に圧入あるいはインサート成形され、インナーハウジング20と一体となっている。図4に示すように、インナーハウジング20の前側に配された端子11のリード13は前方にのび、インナーハウジング20の後側に配された端子11のリード13は後方にのびている。図7に示すように、インナーハウジング20の前面の右側には、前方に突出する係止突起21Aが設けられ、インナーハウジング20の背面の左側には、後方に突出する係止突起21Bが設けられている。すなわち、図5に示すように、インナーハウジング20は平面視で点対称な断面形状を有している。インナーハウジング20がアウターハウジング30に収容された状態で、係止突起21A,21Bは、アウターハウジング30側に突出している。図7に示すように、係止突起21A,21Bの上側部分には、下方に向かうにつれてアウターハウジング30側に近づくように傾斜している傾斜面21Tが設けられている。図4に示すように、係止突起21Bの下面21Sは、水平面に平行になっている。図示しないが、係止突起21も同様の下面21Sを有する。以下では、一対の係止突起21A,21Bを区別せず、単に係止突起21として説明することがある。
【0033】
[ガイド部]
図7に示すように、インナーハウジング20の前面の左側には、上下方向にのび、前方に突出するガイド部22Aが設けられ、インナーハウジング20の背面の右側には、上下方向にのび、後方に突出するガイド部22Bが設けられている。ガイド部22A,22Bの上面22Sは、インナーハウジング20の上面20Sと面一に設けられ、水平面に平行になっている。図5に示すように、インナーハウジング20がアウターハウジング30に収容された状態で、ガイド部22A,22Bは、アウターハウジング30側に突出している。以下では、一対のガイド部22A,22Bを区別せず、単にガイド部22として説明することがある。
【0034】
[アウターハウジング、フード部]
アウターハウジング30は、絶縁性の合成樹脂からなり、図1および図2に示すように、左右方向に長く、上下方向に開口した箱状に形成されている。アウターハウジング30の右壁30Cおよび左壁30Dには、ペグ装着部31が設けられており、金属板からなるペグ32をペグ装着部31に装着し、固定できるようになっている。図8に示すように、ペグ32を回路基板5上の固定ランド(図示せず)に半田付けすることにより、アウターハウジング30が回路基板5上に固定される。図1に示すように、アウターハウジング30は、上方に開口するフード部33を有し、相手方コネクタ(図示せず)を受け入れるようになっている。
【0035】
[上方係止部]
図2および図5に示すように、アウターハウジング30の内部には、アウターハウジング30の前壁30Aと後壁30Bとを接続する隔壁34が左右方向に並列して設けられている。前壁30Aと、後壁30Bと、隣り合う一対の隔壁34(一方が右壁30Cあるいは左壁30Dである場合も含む)と、により構成されるアウターハウジング30の内壁は、周壁37とされている。周壁37の内部には、1個のインナーハウジング20が収容されるようになっている。図4に示すように、アウターハウジング30の前壁30Aには、後方に突出する突壁35Aが設けられ、アウターハウジング30の後壁30Bには、前方に突出する突壁35Bが設けられている。インナーハウジング20がアウターハウジング30に収容された状態で、突壁35A,35Bは、インナーハウジング20側に突出している。突壁35A,35Bの下面は、水平面に平行になっており、上方係止部36とされている。
【0036】
[下方係止部、ガイド凹部]
図6に示すように、周壁37を構成する前壁30Aには、下方係止部38Aと、ガイド凹部39Aと、が形成されている。下方係止部38Aは周壁37の右側に配され、ガイド凹部39Aは周壁37の左側に配されている。図5に示すように、後壁30Bにおいても、周壁37の左側に下方係止部38Bが設けられ、周壁37の右側にガイド凹部39Bが設けられている。すなわち、1個の周壁37は、一対の下方係止部38A,38Bと、一対のガイド凹部39A,39Bと、を有し、平面視で点対称な形状とされている。
【0037】
図4に示すように、下方係止部38Bは、周壁37の上下方向中央部に位置し、周壁37の内部に収容されたインナーハウジング20の係止突起21Bの下面21Sに対向するように配されている。詳細には図示しないが、下方係止部38Aも同様に、周壁37の上下方向中央部に位置し、周壁37の内部に収容されたインナーハウジング20の係止突起21Aの下面21Sに対向するように配されている(図5参照)。以下では、下方係止部38A,38Bを区別せず、単に下方係止部38として説明することがある。図4および図6に示すように、ガイド凹部39Aは、上下方向にのび、溝状をなしている。図4に示すように、ガイド凹部39Aの上端部は、突壁35Aの下面(上方係止部36)に接続されている。図示しないが、ガイド凹部39Bも同様に設けられている。
【0038】
図3および図5に示すように、インナーハウジング20および周壁37の左右方向の側面は、平面とされており、左右方向においてインナーハウジング20と周壁37とが係止あるいは係合するための部材を備えていない。これにより、インナーハウジング20およびアウターハウジング30の左右方向の寸法を小さくすることができる。
【0039】
端子11、インナーハウジング20、およびアウターハウジング30は、以上のような構成であって、以下に表面実装コネクタ10の組み付け方法の一例を示す。
端子11を保持する複数のインナーハウジング20は、下方からアウターハウジング30に挿入され、周壁37の内部に収容される。図4に示すように、アウターハウジング30の下端部の内周側には、下方に向かうほど外周側に位置するように傾斜している誘い込み部30Tが設けられている。アウターハウジング30の誘い込み部30Tと、インナーハウジング20の係止突起21の傾斜面21Tと、が係合することによって、インナーハウジング20をアウターハウジング30の内部に下方からスムーズに挿入することができる。また、図5に示すように、インナーハウジング20のガイド部22A,22Bは、アウターハウジング30のガイド凹部39A,39Bと係合し、インナーハウジング20のアウターハウジング30内への挿入を案内する。
【0040】
インナーハウジング20のアウターハウジング30への挿入が進むと、インナーハウジング20の係止突起21が、アウターハウジング30の前壁30Aおよび後壁30Bと係合して弾性変形した状態から、自然状態に復帰する。すなわち、係止突起21の下面21Sが、下方係止部38よりも上方に配されることで、表面実装コネクタ10の組み付けは完了する(図4参照)。
【0041】
図4に示すように、複数のインナーハウジング20のそれぞれは、アウターハウジング30において独立して上下方向に移動可能に支持されている。すなわち、インナーハウジング20の上面20S(およびガイド部22の上面22S)がアウターハウジング30の上方係止部36に係止するまで、インナーハウジング20はアウターハウジング30に対して上方に移動することができる。また、インナーハウジング20の係止突起21の下面21Sが、アウターハウジング30の下方係止部38に係止するまで、インナーハウジング20はアウターハウジング30に対して下方に移動することができる。図4では、インナーハウジング20は、自重により、係止突起21の下面21Sが下方係止部38に係止した状態となっている。
【0042】
次に、表面実装コネクタ10が回路基板5上に固定された状態について、図8から図15を参照しつつ説明する。図8に示すように、リード13およびペグ32が回路基板5に半田付けされることで、表面実装コネクタ10は、回路基板5上に取り付けられる。表面実装コネクタ10の回路基板5への半田付けは、リフロー等によりなされる。
【0043】
[水平な回路基板、基準位置、第1クリアランス、第2クリアランス]
図8は、水平な回路基板5A(回路基板の一例)上に取り付けられた表面実装コネクタ10の背面図である。アウターハウジング30が水平な回路基板5A上に固定された際に複数のインナーハウジング20が配される上下方向の位置は、図9に示す基準位置とされている。図9に示すように、基準位置では、リード13が水平な回路基板5Aに接触しており、インナーハウジング20は、図4に示す自重による係止位置よりもアウターハウジング30に対して上方で支持されている。すなわち、基準位置において、係止突起21の下面21Sと下方係止部38との間には、上下方向に第1クリアランスCL1が設定されている。また、基準位置において、複数のインナーハウジング20の上面20S(およびガイド部22の上面22S)と上方係止部36との間には、上下方向に第2クリアランスCL2が設定されている。
【0044】
図8に示すように、本実施形態では、ペグ32の下端は、アウターハウジング30の下端より下方に位置するようになっているため、アウターハウジング30の下端より下方に出ているペグ32の上下方向の長さによって、回路基板5に対するアウターハウジング30の上下方向の位置が決まっている。したがって、ペグ32の上下方向の長さを変更することで、回路基板5に対するアウターハウジング30の上下方向の位置を変更することができ、第1クリアランスCL1および第2クリアランスCL2も変更することができる(図9参照)。
【0045】
図10は、下方に凸状をなして反っている回路基板5B(回路基板の一例)上に取り付けられた表面実装コネクタ10の背面図である。回路基板5Bは、インナーハウジング20が並ぶ左右方向について反っており、前後方向については反っていないものとする。回路基板5Bは、リフロー処理中に熱変形したものだけでなく、表面実装コネクタ10が取り付けられる前から反っているものも含む。図10において、一対のペグ32の下端部を結ぶ一点鎖線は、水平な基準面Hを示しており、リード13が実装される部分の回路基板5Bの表面S1は基準面Hより下方に位置している。図11に示すように、基準面Hと回路基板5Bの表面S1との上下方向の距離を、下方反り量W1と定義する。下方反り量W1は、ペグ32に近づくほど小さく、左右方向中央位置で大きくなっている(図10参照)。
【0046】
図12に示すように、回路基板5Bは下方に凸状をなしているため、インナーハウジング20は、自重によって、図9の基準位置よりも下方に移動する。インナーハウジング20は、係止突起21の下面21Sと下方係止部38とが係止する、もしくはリード13と回路基板5Bの表面S1とが接触するまで下方に移動する。ここで、第1クリアランスCL1(図9参照)を下方反り量W1(図11参照)の最大値以上に設定することで、リード13を回路基板5Bの表面S1に確実に接触させることができる。したがって、回路基板5Bが下方に凸状をなして反っている場合でも、リード13と回路基板5Bとの半田付けの接続不良を抑制することが可能である。
【0047】
図13は、上方に凸状をなして反っている回路基板5C(回路基板の一例)上に取り付けられた表面実装コネクタ10の背面図である。回路基板5Cは、インナーハウジング20が並ぶ左右方向について反っており、前後方向については反っていないものとする。回路基板5Cは、リフロー処理中に熱変形したものだけでなく、表面実装コネクタ10が取り付けられる前から反っているものも含む。図13において、一対のペグ32の下端部を結ぶ一点鎖線は、水平な基準面Hを示しており、リード13が実装される部分の回路基板5Cの表面S2は基準面Hより上方に位置している。図14に示すように、基準面Hと回路基板5Cの表面S2との上下方向の距離を、上方反り量W2と定義する。上方反り量W2は、ペグ32に近づくほど小さく、左右方向中央位置で大きくなっている(図13参照)。
【0048】
図15に示すように、回路基板5Cは上方に凸状をなしているため、回路基板5Cがリード13に当接することで、インナーハウジング20は、図9の基準位置よりも上方に移動する。インナーハウジング20は、インナーハウジング20の上面20S(およびガイド部22の上面22S)と上方係止部36とが係止するまでアウターハウジング30に対して上方に移動することができる。ここで、第2クリアランスCL2(図9参照)を上方反り量W2(図14参照)の最大値以上に設定することで、回路基板5Cがリード13に当接して、インナーハウジング20を上方に移動させても、インナーハウジング20によってアウターハウジング30が上方に押し上げられないようにすることができる。これにより、アウターハウジング30が上方に移動して、ペグ32およびペグ32の近くに配されたリード13が回路基板5C上から離れることを抑制することができる(図13参照)。また、中央位置付近において回路基板5Cが当接しているリード13に、アウターハウジング30の荷重がかからないようにすることができる。したがって、回路基板5Cが上方に凸状をなして反っている場合でも、リード13と回路基板5Cとの半田付けの接続不良を抑制することができる。
【0049】
[実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
本実施形態にかかる表面実装コネクタ10は、上下方向を板厚方向とする回路基板5上に取り付けられる表面実装コネクタ10であって、複数の端子11と、複数の端子11を保持する複数のインナーハウジング20と、複数のインナーハウジング20を並列して収容するアウターハウジング30と、を備え、複数の端子11の下端部には、回路基板5に接続されるリード13が設けられ、複数のインナーハウジング20のそれぞれは、アウターハウジング30において独立して上下方向に移動可能に支持されている。
【0050】
上記の構成によれば、回路基板5の反りに合わせて、端子11を保持する複数のインナーハウジング20のそれぞれが、独立して上下方向に移動することで、リード13と回路基板5とが当接した状態を確保することができる。したがって、リード13と回路基板5との接続不良を抑制することができる。
【0051】
本実施形態では、複数のインナーハウジング20は、アウターハウジング30側に突出する係止突起21A,21Bを有し、アウターハウジング30は、下方から係止突起21A,21Bと係止する下方係止部38A,38Bを有し、係止突起21A,21Bと下方係止部38A,38Bとが係止することで、複数のインナーハウジング20は、アウターハウジング30から下方に抜けないようになっており、アウターハウジング30が水平な回路基板5A上に固定された際に複数のインナーハウジング20が配される上下方向の位置は、基準位置とされており、基準位置において、係止突起21A,21Bと下方係止部38A,38Bとの間には、上下方向に第1クリアランスCL1が設定されている。
【0052】
上記の構成によれば、基準位置において、係止突起21A,21Bと下方係止部38A,38Bとの間には、上下方向に第1クリアランスCL1が設定されているため、回路基板5Bが下方に凸状をなして反っている場合、インナーハウジング20は回路基板5Bに追従して下方に移動することができ、回路基板5Bとリード13との接続不良を抑制しやすい。
【0053】
本実施形態では、アウターハウジング30は、アウターハウジング30を回路基板5上に固定するペグ32を有している。
【0054】
このような構成によると、アウターハウジング30の下端から下方に出ているペグ32の上下方向の長さを変更することで、回路基板5に対するアウターハウジング30の上下方向の位置を変更することができる。したがって、第1クリアランスCL1の大きさを変更することができる。
【0055】
本実施形態では、アウターハウジング30は、上方から複数のインナーハウジング20の上面20Sと係止する上方係止部36を有し、上方係止部36と複数のインナーハウジング20の上面20Sとが係止することで、複数のインナーハウジング20は、アウターハウジング30から上方に抜けないようになっており、基準位置において、複数のインナーハウジング20の上面20Sと上方係止部36との間には、上下方向に第2クリアランスCL2が設定されている。
【0056】
上記の構成によれば、基準位置において、インナーハウジング20の上面20Sと上方係止部36との間には、上下方向に第2クリアランスCL2が設定されているため、回路基板5Cが上方に凸状をなして反っている場合、インナーハウジング20は回路基板5Cに追従して上方に移動することができ、回路基板5Cとリード13との接続不良を抑制しやすい。
【0057】
本実施形態では、複数のインナーハウジング20は、上下方向にのび、アウターハウジング30側に突出するガイド部22A,22Bを有し、アウターハウジング30は、上下方向にのび、ガイド部22A,22Bに係合するガイド凹部39A,39Bを有し、ガイド部22A,22Bとガイド凹部39A,39Bとが係合することで、複数のインナーハウジング20のそれぞれが独立して上下方向に移動することが案内される。
【0058】
上記の構成によれば、インナーハウジング20が上下方向に移動しやすくなる。
【0059】
ガイド部22A,22Bの上面22Sは、インナーハウジング20の上面20Sと面一に設けられ、上方係止部36が上方から係止できるようになっている。
【0060】
上記の構成によれば、インナーハウジング20と上方係止部36とが係止する部分が大きくなるため、インナーハウジング20がアウターハウジング30の上方に抜けることをさらに抑制することができる。
【0061】
本実施形態では、係止突起21A,21Bおよびガイド部22A,22Bは、上下方向および複数のインナーハウジング20が並ぶ方向に直交する方向(前後方向)におけるインナーハウジング20の両側に、それぞれ一対設けられている。
【0062】
上記の構成によれば、インナーハウジング20がアウターハウジング30の上方および下方に抜けることをさらに抑制することができ、インナーハウジング20が上下方向にさらに移動しやすくなる。また、複数のインナーハウジング20が並ぶ方向(左右方向)におけるインナーハウジング20およびアウターハウジング30の寸法を小さくすることができる。
【0063】
本実施形態では、インナーハウジング20は、端子11を複数保持している。
【0064】
上記の構成によれば、多極の表面実装コネクタ10を構成しやすい。
【0065】
本実施形態では、アウターハウジング30は、上方に開口するフード部33を有し、嵌合相手である相手方コネクタと下方から嵌合する。
【0066】
上記の構成によれば、表面実装コネクタ10と相手方コネクタとの嵌合方向が上下方向となり、インナーハウジング20が移動可能とされる方向と一致するので、複数のインナーハウジング20が独立して上下方向に移動しても、表面実装コネクタ10と相手方コネクタとの嵌合が阻害されにくい。
【0067】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、アウターハウジング30は、上方に開口するフード部33を有し、相手方コネクタと下方から嵌合する構成としたが、これに限られることはなく、例えば、アウターハウジングは前方に開口するフード部を有し、相手方コネクタと後方から嵌合する構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、インナーハウジング20は、一対の係止突起21A,21Bと、一対のガイド部22A,22Bと、を備える構成としたが、これに限られることはなく、インナーハウジングは、1個または3個以上の係止突起と、1個または3個以上のガイド部と、を備える構成としてもよい。また、インナーハウジングは、ガイド部を備えない構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、インナーハウジング20は、一対の端子11を備える構成としたが、これに限られることはなく、インナーハウジングは、1個または3個以上の端子を備える構成としてもよい。
(4)上記実施形態では、端子11はタブ形状を有する雄端子とされていたが、これに限られることはなく、端子は筒状をなす雌端子としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
5: 回路基板
5A: 水平な回路基板
5B: 下方に凸状をなして反っている回路基板
5C: 上方に凸状をなして反っている回路基板
10: 表面実装コネクタ
11: 端子
12: 端子接続部
13: リード
20: インナーハウジング
20S: インナーハウジングの上面
21,21A,21B: 係止突起
21S: 係止突起の下面
21T: 係止突起の傾斜面
22,22A,22B: ガイド部
22S: ガイド部の上面
30: アウターハウジング
30A: 前壁
30B: 後壁
30C: 右壁
30D: 左壁
30T: 誘い込み部
31: ペグ装着部
32: ペグ
33: フード部
34: 隔壁
35A,35B: 突壁
36: 上方係止部
37: 周壁
38,38A,38B: 下方係止部
39A,39B: ガイド凹部
CL1: 第1クリアランス
CL2: 第2クリアランス
H: 基準面
S1,S2: 回路基板の表面
W1: 下方反り量
W2: 上方反り量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15