(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240112BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240112BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240112BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20240112BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20240112BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20240112BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240112BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20240112BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240112BHJP
H01M 10/054 20100101ALN20240112BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/184 A
H01M50/186
H01M50/534
H01M50/557
H01M50/586
H01M50/591 101
H01M10/052
H01M10/054
(21)【出願番号】P 2020562918
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2019045136
(87)【国際公開番号】W WO2020137256
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2018248598
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英一
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/203474(WO,A1)
【文献】特開2011-198692(JP,A)
【文献】特開2016-001601(JP,A)
【文献】特開2009-224173(JP,A)
【文献】特開2016-001599(JP,A)
【文献】国際公開第2012/020699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/50-50/598
H01M 50/10-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に並列に接続された複数のセルと、
正極端子及び負極端子と、
を備え、
前記複数のセルのそれぞれは、
正極層及び負極層と、
前記正極層及び前記正極端子のそれぞれと電気的に接続された正極集電体と、
前記負極層及び前記負極端子のそれぞれと電気的に接続された負極集電体と、
前記正極集電体と前記負極集電体との間に位置する固体電解質層と、
を有し、
前記正極集電体と前記負極端子とは、間隙を介して互いに電気的に分離しており、
前記負極集電体と前記正極端子とは、間隙を介して互いに電気的に分離している、
電池であって、
前記複数のセルのそれぞれは、
前記正極端子に接続されており、かつ前記負極集電体と間隙を介して電気的に分離している第1アンカー部と、
前記負極端子に接続されており、かつ前記正極集電体と間隙を介して電気的に分離している第2アンカー部と、
をさらに有する、
電池。
【請求項2】
前記複数のセルのそれぞれは、前記正極集電体と前記負極集電体との間に位置するとともに、前記固体電解質層を囲んでいる絶縁性の封止部材をさらに有する、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1アンカー部の一部が前記正極端子に埋め込まれている、又は、前記第2アンカー部の一部が前記負極端子に埋め込まれている、請求項
1に記載の電池。
【請求項4】
前記第1アンカー部の端部から1μm以上の距離までの前記第1アンカー部の部分が前記正極端子に埋め込まれている、又は、前記第2アンカー部の端部から1μm以上の距離までの前記第2アンカー部の部分が前記負極端子に埋め込まれている、請求項
3に記載の電池。
【請求項5】
前記正極端子は、前記複数のセルのうち最も外側に位置するセルに含まれる正極集電体の主面を被覆している、又は、前記負極端子は、前記複数のセルのうち最も外側に位置するセルに含まれる負極集電体の主面を被覆している、請求項1から
4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記正極集電体の一部が前記正極端子に埋め込まれている、又は、前記負極集電体の一部が前記負極端子に埋め込まれている、請求項1から
5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
前記正極集電体の端部から1μm以上の距離までの前記正極集電体の部分が前記正極端子に埋め込まれている、又は、前記負極集電体の端部から1μm以上の距離までの前記負極集電体の部分が前記負極端子に埋め込まれている、請求項
6に記載の電池。
【請求項8】
前記正極集電体が第1合金を介して前記正極端子と電気的に接続されている、又は、前記負極集電体が第2合金を介して前記負極端子と電気的に接続されている、請求項1から
7のいずれか1項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池を電気的に並列に接続することによって容量を増加することができる。このような並列接続に関連する技術として、例えば、特許文献1には、積層された複数の単電池層内の集電体から電流を取り出すことができる電極タブを有するバイポーラ電池が開示されている。電極タブは、集電体に接続され、かつ電池の外部に引き出されている。特許文献2には、積層体の端面に端子用集電体が取り付けられた全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-310402号公報
【文献】特開2013-120717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、電池のさらなる小型化及び電池の信頼性の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
電気的に並列に接続された複数のセルと、
正極端子及び負極端子と、
を備え、
前記複数のセルのそれぞれは、
正極層及び負極層と、
前記正極層及び前記正極端子のそれぞれと電気的に接続された正極集電体と、
前記負極層及び前記負極端子のそれぞれと電気的に接続された負極集電体と、
前記正極集電体と前記負極集電体との間に位置する固体電解質層と、
を有し、
前記正極集電体と前記負極端子とは、間隙を介して互いに電気的に分離しており、
前記負極集電体と前記正極端子とは、間隙を介して互いに電気的に分離している、
電池を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、小型化に適しており、かつ高い信頼性を有する電池を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る電池の構成を模式的に説明するための断面図及び上面図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係る電池の構成を模式的に説明するための断面図及び上面図である。
【
図3】
図3は、実施形態3に係る電池の構成を模式的に説明するための断面図及び上面図である。
【
図4】
図4は、実施形態4に係る電池の構成を模式的に説明するための断面図及び上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様にかかる電池は、
電気的に並列に接続された複数のセルと、
正極端子及び負極端子と、
を備え、
前記複数のセルのそれぞれは、
正極層及び負極層と、
前記正極層及び前記正極端子のそれぞれと電気的に接続された正極集電体と、
前記負極層及び前記負極端子のそれぞれと電気的に接続された負極集電体と、
前記正極集電体と前記負極集電体との間に位置する固体電解質層と、
を有し、
前記正極集電体と前記負極端子とは、間隙を介して互いに電気的に分離しており、
前記負極集電体と前記正極端子とは、間隙を介して互いに電気的に分離している。
【0009】
第1態様によれば、複数のセルのそれぞれに含まれる集電体から電流を取り出すための配線又は電極タブを集電体に直接接続させて、電池の外部に引き出す必要がない。そのため、この電池は、小型化に適している。これにより、高いエネルギー密度を有し、大容量の電池を実現できる。さらに、複数のセルのそれぞれにおいて、正極集電体と負極端子とが間隙を介して互いに電気的に分離しており、負極集電体と正極端子とが間隙を介して互いに電気的に分離している。そのため、この電池は、高い信頼性を有する。
【0010】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様にかかる電池では、前記複数のセルのそれぞれは、前記正極集電体と前記負極集電体との間に位置するとともに、前記固体電解質層を囲んでいる絶縁性の封止部材をさらに有していてもよい。第2態様によれば、電池は、高い信頼性を有する。
【0011】
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様にかかる電池では、前記複数のセルのそれぞれは、前記正極端子に接続されており、かつ前記負極集電体と間隙を介して電気的に分離している第1アンカー部と、前記負極端子に接続されており、かつ前記正極集電体と間隙を介して電気的に分離している第2アンカー部と、をさらに有していてもよい。第3態様によれば、複数のセルのそれぞれは、アンカー部を有している。アンカー部によれば、応力、冷熱などの外的なストレスが電池に印加された場合であっても、正極端子及び負極端子が電池から外れにくい。そのため、アンカー部によれば、電池内での接続不良の可能性を低減することができ、電池の信頼性を向上できる。
【0012】
本開示の第4態様において、例えば、第3態様にかかる電池では、前記第1アンカー部の一部が前記正極端子に埋め込まれていてもよい、又は、前記第2アンカー部の一部が前記負極端子に埋め込まれていてもよい。第4態様によれば、複数のセルと、正極端子又は負極端子との接続の信頼性を向上できる。
【0013】
本開示の第5態様において、例えば、第4態様にかかる電池では、前記第1アンカー部の端部から1μm以上の距離までの前記第1アンカー部の部分が前記正極端子に埋め込まれていてもよい、又は、前記第2アンカー部の端部から1μm以上の距離までの前記第2アンカー部の部分が前記負極端子に埋め込まれていてもよい。第5態様によれば、複数のセルと、正極端子又は負極端子との接続の信頼性をより向上できる。
【0014】
本開示の第6態様において、例えば、第1から第5態様のいずれか1つにかかる電池では、前記正極端子は、前記複数のセルのうち最も外側に位置するセルに含まれる正極集電体の主面を被覆していてもよい、又は、前記負極端子は、前記複数のセルのうち最も外側に位置するセルに含まれる負極集電体の主面を被覆していてもよい。第6態様によれば、複数のセル同士の接合強度を向上できる。
【0015】
本開示の第7態様において、例えば、第1から第6態様のいずれか1つにかかる電池では、前記正極集電体の一部が前記正極端子に埋め込まれていてもよい、又は、前記負極集電体の一部が前記負極端子に埋め込まれていてもよい。第7態様によれば、複数のセルと、正極端子又は負極端子との接続の信頼性を向上できる。
【0016】
本開示の第8態様において、例えば、第7態様にかかる電池では、前記正極集電体の端部から1μm以上の距離までの前記正極集電体の部分が前記正極端子に埋め込まれていてもよい、又は、前記負極集電体の端部から1μm以上の距離までの前記負極集電体の部分が前記負極端子に埋め込まれていてもよい。第8態様によれば、複数のセルと、正極端子又は負極端子との接続の信頼性をより向上できる。
【0017】
本開示の第9態様において、例えば、第1から第8態様のいずれか1つにかかる電池では、前記正極集電体が第1合金を介して前記正極端子と電気的に接続されていてもよい、又は、前記負極集電体が第2合金を介して前記負極端子と電気的に接続されていてもよい。第9態様によれば、複数のセルと、正極端子又は負極端子との電気的な接続の信頼性を向上できる。
【0018】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0019】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0020】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0021】
(実施形態1)
[積層電池の概要]
まず、本実施形態に係る電池について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態1に係る電池100の構成を説明する概略図である。本実施形態において、電池100は、積層電池である。そのため、本明細書では、「電池100」を「積層電池100」と呼ぶことがある。
図1(a)は、本実施形態に係る電池100の断面図である。
図1(b)は、電池100の上面図である。
【0023】
図1(a)に示すように、電池100は、複数のセル30、正極端子16及び負極端子17を備える。本明細書では、「セル」を「固体電池セル」と呼ぶことがある。複数のセル30は、電気的に並列に接続されている。
図1(b)に示すように、複数のセル30のそれぞれは、例えば、平面視で矩形の形状を有する。複数のセル30のそれぞれは、互いに向かい合う1対の端面を2組有する。電池100において、複数のセル30が積層されている。本実施形態において、第1方向xは、特定のセル30の1対の端面の一方から他方に向かう方向である。第2方向yは、特定のセル30の他の1対の端面の一方から他方に向かう方向であり、第1方向xに直交する方向である。第3方向zは、複数のセル30の積層方向であり、第1方向x及び第2方向yのそれぞれに直交する方向である。
【0024】
複数のセル30の数は、特に限定されず、2以上100以下であってもよく、2以上10以下であってもよい。複数のセル30の数は、場合によっては、20以上100以下であってもよい。本実施形態では、電池100は、複数のセル30a,30b,30c及び30dを備えている。複数のセル30a,30b,30c及び30dがこの順番で積層されている。
【0025】
正極端子16及び負極端子17は、それぞれ、複数のセル30と電気的に接続されている。正極端子16及び負極端子17のそれぞれの形状は、例えば、板状である。正極端子16及び負極端子17は、互いに対向している。正極端子16及び負極端子17は、第1方向xに並んでいる。正極端子16と負極端子17との間に、複数のセル30が位置している。正極端子16及び負極端子17のそれぞれの表面は、例えば、絶縁層によって被覆されていない。本明細書では、正極端子16及び負極端子17を単に「端子」と呼ぶことがある。
【0026】
複数のセル30のそれぞれは、正極集電体11、正極層12、負極集電体13、負極層14及び固体電解質層15を有している。正極集電体11、正極層12、固体電解質層15、負極層14及び負極集電体13は、第3方向z又は第3方向zの反対方向にこの順番で並んでいる。本明細書では、正極集電体11及び負極集電体13を単に「集電体」と呼ぶことがある。
【0027】
正極集電体11は、例えば、板状の形状を有している。正極集電体11は、正極層12及び正極端子16のそれぞれと電気的に接続されている。正極集電体11は、正極層12及び正極端子16のそれぞれと直接接していてもよい。例えば、正極集電体11の主面が正極層12と直接接していてもよい。「主面」は、正極集電体11の最も広い面積を有する面を意味する。正極集電体11の端面が正極端子16と直接接していてもよい。正極集電体11と負極端子17とは、間隙を介して互いに電気的に分離している。正極集電体11と負極端子17との最短距離は、特に限定されず、1μm以上100μm以下であってもよく、1μm以上10μm以下であってもよい。正極集電体11と負極端子17との最短距離は、場合によっては、20μm以上100μm以下であってもよい。本明細書では、セル30の端面の近傍をセル30の「端部領域」と呼ぶことがある。正極集電体11と負極端子17とは、例えば、セル30の端部領域において、間隙を介して互いに電気的に分離している。
【0028】
正極層12は、例えば、平面視で矩形の形状を有する。正極層12は、正極集電体11の上に配置されている。正極層12は、例えば、正極集電体11の主面を部分的に被覆している。正極層12は、正極集電体11の主面の重心を含む領域を被覆していてもよい。正極層12は、例えば、セル30の端部領域に形成されていない。
【0029】
負極集電体13は、例えば、板状の形状を有している。負極集電体13は、負極層14及び負極端子17のそれぞれと電気的に接続されている。負極集電体13は、負極層14及び負極端子17のそれぞれと直接接していてもよい。例えば、負極集電体13の主面が負極層14と直接接していてもよい。負極集電体13の端面が負極端子17と直接接していてもよい。負極集電体13と正極端子16とは、間隙を介して互いに電気的に分離している。負極集電体13と正極端子16との最短距離は、特に限定されず、1μm以上100μm以下であってもよく、1μm以上10μm以下であってもよい。負極集電体13と正極端子16との最短距離は、場合によっては、20μm以上100μm以下であってもよい。負極集電体13と正極端子16とは、例えば、セル30の端部領域において、間隙を介して互いに電気的に分離している。
【0030】
負極集電体13の位置は、例えば、正極集電体11の位置と第1方向xにずれている。平面視において、負極集電体13と正極端子16との間隙は、例えば、正極集電体11と負極端子17との間隙に重ならない。
【0031】
負極層14は、例えば、平面視で矩形の形状を有する。負極層14は、負極集電体13の上に配置されている。負極層14は、例えば、負極集電体13の主面を部分的に被覆している。負極層14は、負極集電体13の主面の重心を含む領域を被覆していてもよい。負極層14は、例えば、セル30の端部領域に形成されていない。
【0032】
固体電解質層15は、例えば、平面視で矩形の形状を有する。固体電解質層15は、正極集電体11と負極集電体13との間に位置する。言い換えると、固体電解質層15は、正極層12と負極層14との間に位置する。固体電解質層15は、正極端子16及び負極端子17のそれぞれに接していてもよい。固体電解質層15は、正極層12及び負極層14のそれぞれに接していてもよい。
【0033】
上述のとおり、電池100は、複数のセル30a,30b,30c及び30dを備えている。セル30aは、正極集電体11a、正極層12a、負極集電体13a、負極層14a及び固体電解質層15aを有している。セル30bは、正極集電体11b、正極層12b、負極集電体13a、負極層14b及び固体電解質層15bを有している。セル30cは、正極集電体11b、正極層12c、負極集電体13b、負極層14c及び固体電解質層15cを有している。セル30dは、正極集電体11c、正極層12d、負極集電体13b、負極層14d及び固体電解質層15dを有している。負極集電体13aは、セル30a及び30bに共用されている。負極集電体13bは、セル30c及び30dに共用されている。正極集電体11bは、セル30b及び30cに共用されている。複数の正極集電体11a,11b及び11cと、複数の負極集電体13a及び13bとは、第3方向zに交互に並んでいる。負極集電体13aと正極端子16との間隙において、固体電解質層15aは、固体電解質層15bと接していてもよい。正極集電体11bと負極端子17との間隙において、固体電解質層15bは、固体電解質層15cと接していてもよい。負極集電体13bと正極端子16との間隙において、固体電解質層15cは、固体電解質層15dと接していてもよい。
【0034】
複数のセル30のそれぞれは、第1アンカー部18及び第2アンカー部19をさらに有していてもよい。本明細書では、第1アンカー部18及び第2アンカー部19を単に「アンカー部」と呼ぶことがある。
【0035】
第1アンカー部18は、正極端子16に接続されており、かつ負極集電体13と間隙を介して電気的に分離している。第1アンカー部18は、正極端子16に直接接していてもよい。第1アンカー部18及び負極集電体13は、例えば、第1方向xに並んでいる。第1アンカー部18と負極集電体13との最短距離は、特に限定されず、1μm以上20μm以下であってもよく、1μm以上5μm以下であってもよい。第1アンカー部18と負極集電体13との最短距離は、場合によっては、10μm以上20μm以下であってもよい。
【0036】
第2アンカー部19は、負極端子17に接続されており、かつ正極集電体11と間隙を介して電気的に分離している。第2アンカー部19は、負極端子17に直接接していてもよい。第2アンカー部19及び正極集電体11は、例えば、第1方向xに並んでいる。第2アンカー部19と正極集電体11との最短距離は、特に限定されず、1μm以上20μm以下であってもよく、1μm以上5μm以下であってもよい。第2アンカー部19と正極集電体11との最短距離は、場合によっては、10μm以上20μm以下であってもよい。
【0037】
詳細には、電池100において、セル30aは、第1アンカー部18a及び第2アンカー部19aを有している。セル30bは、第1アンカー部18a及び第2アンカー部19bを有している。セル30cは、第1アンカー部18b及び第2アンカー部19bを有している。セル30dは、第1アンカー部18b及び第2アンカー部19cを有している。第1アンカー部18aは、セル30a及び30bに共用されている。第1アンカー部18bは、セル30c及び30dに共用されている。第2アンカー部19bは、セル30b及び30cに共用されている。
【0038】
第1アンカー部18及び第2アンカー部19は、基本的には、セル30の発電要素に影響しない領域に位置している。第1アンカー部18及び第2アンカー部19は、例えば、固体電解質層15の内部に埋め込まれている。
【0039】
以上の構成によれば、正極端子16及び負極端子17は、セル30の電池特性及びセル30の体積に影響を与えることなく、複数のセル30を一体構造で並列接続することができる。これにより、積層電池100の内部において、正極端子16及び負極端子17は、それぞれ、正極集電体11及び負極集電体13と強固に接合される。そのため、電池100を大容量化することができる。すなわち、小型形状で、かつ耐衝撃性を有し、さらに、集電体11及び13のたわみに起因する応力に対する信頼性を向上できるとともに、高いエネルギー密度及び高い信頼性を有する大容量の積層電池100を実現できる。
【0040】
複数のセル30のそれぞれにおいて、正極集電体11は、第1合金を介して正極端子16と電気的に接続されていてもよい。第1合金は、例えば、正極集電体11の材料と正極端子16の材料とを含む。第1合金は、例えば、正極集電体11と正極端子16との界面において、正極集電体11に含まれる金属と正極端子16に含まれる金属とが混合されることによって形成される。本明細書では、第1合金が形成されている領域を「第1合金部」又は「第1拡散層」と呼ぶことがある。正極集電体11及び正極端子16が第1拡散層を介して一体化している場合、アンカー効果を利用して正極集電体11及び正極端子16を接合する場合に比べて、熱衝撃及び振動に対する電池100の電気的接続の信頼性が向上する。第1合金部によれば、正極集電体11及び正極端子16の接続強度が向上する。第1合金部から周囲の部材に第1合金が拡散していると、正極集電体11及び正極端子16の接続強度がより向上する。
【0041】
複数のセル30のそれぞれにおいて、負極集電体13は、第2合金を介して負極端子17と電気的に接続されていてもよい。第2合金は、例えば、負極集電体13の材料と負極端子17の材料とを含む。第2合金は、例えば、負極集電体13と負極端子17との界面において、負極集電体13に含まれる金属と負極端子17に含まれる金属とが混合されることによって形成される。本明細書では、第2合金が形成されている領域を「第2合金部」又は「第2拡散層」と呼ぶことがある。負極集電体13及び負極端子17が第2拡散層を介して一体化している場合、アンカー効果を利用して負極集電体13及び負極端子17を接合する場合に比べて、熱衝撃及び振動に対する電池100の電気的接続の信頼性が向上する。第2合金部によれば、負極集電体13及び負極端子17の接続強度が向上する。第2合金部から周囲の部材に第2合金が拡散していると、負極集電体13及び負極端子17の接続強度がより向上する。
【0042】
複数のセル30のそれぞれにおいて、第1アンカー部18は、第3合金を介して正極端子16と接続されていてもよい。第3合金は、例えば、第1アンカー部18の材料と正極端子16の材料とを含む。第3合金は、例えば、第1アンカー部18と正極端子16との界面において、第1アンカー部18に含まれる金属と正極端子16に含まれる金属とが混合されることによって形成される。本明細書では、第3合金が形成されている領域を「第3合金部」又は「第3拡散層」と呼ぶことがある。第3合金部によれば、第1アンカー部18及び正極端子16の接続強度が向上する。
【0043】
複数のセル30のそれぞれにおいて、第2アンカー部19は、第4合金を介して負極端子17と接続されていてもよい。第4合金は、例えば、第2アンカー部19の材料と負極端子17の材料とを含む。第4合金は、例えば、第2アンカー部19と負極端子17との界面において、第2アンカー部19に含まれる金属と負極端子17に含まれる金属とが混合されることによって形成される。本明細書では、第4合金が形成されている領域を「第4合金部」又は「第4拡散層」と呼ぶことがある。第4合金部によれば、第2アンカー部19及び負極端子17の接続強度が向上する。
【0044】
以上の構成によれば、電気的に並列に接続された複数のセル30を強固に小型一体化することによって、高いエネルギー密度及び高い信頼性を有する電池100を提供できる。
【0045】
すなわち、以上の構成によれば、集電体11及び13から電流を取り出すための配線又は電極タブを集電体11及び13に接続させて、電池100の外部に引き出すことなく、一体化された並列接続の積層電池を得ることができる。さらに、アンカー部18及び19によって、並列接続された複数のセル30を強固に小型一体化できるため、大容量かつ高いエネルギー密度で、高い信頼性を有する電池100を実現できる。
【0046】
[積層電池の具体的な構成]
以下、電池100の各構成についてより具体的に説明する。
【0047】
まず、本発明の一実施形態の積層電池100の各構成について説明する。
【0048】
正極層12は、正極活物質を含む正極活物質層として機能する。正極層12は、正極活物質を主成分として含んでいてもよい。主成分とは、正極層12に重量比で最も多く含まれた成分を意味する。正極活物質は、負極よりも高い電位において、その結晶構造内にリチウム(Li)イオン、マグネシウム(Mg)イオンなどの金属イオンが挿入又は脱離され、それに伴って酸化又は還元が行われる物質をいう。正極活物質の種類は、電池の種類に応じて適宜選択することができ、公知の正極活物質が用いられうる。正極活物質としては、リチウムと遷移金属元素とを含む化合物が挙げられる。この化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物、及び、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が挙げられる。リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物としては、例えば、LiNixM1-xO2(Mは、Co、Al、Mn、V、Cr、Mg、Ca、Ti、Zr、Nb、Mo及びWからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、xは、0<x≦1を満たす)などのリチウムニッケル複合酸化物、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)などの層状酸化物、スピネル構造を有するマンガン酸リチウム(LiMn2O4、Li2MnO3、LiMnO2)などが用いられる。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO4)などが用いられる。正極活物質には、硫黄(S)、硫化リチウム(Li2S)などの硫化物を用いることもできる。硫化物を含む粒子に、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)などをコーティング又は添加したものを正極活物質として用いることもできる。正極活物質は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
上述のとおり、正極層12は、正極活物質を含んでいれば特に限定されない。正極層12は、正極活物質と他の添加材料との合剤から構成される合剤層であってもよい。他の添加材料としては、無機系固体電解質などの固体電解質、アセチレンブラックなどの導電助剤、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどが用いられうる。正極層12において、正極活物質と他の添加材料とを所定の割合で混合することによって、正極層12内でのリチウムイオン導電性を向上させることができるとともに、電子伝導性も向上させることができる。
【0050】
正極層12の厚さは、例えば、5μm以上300μm以下である。
【0051】
負極層14は、負極活物質などの負極材料を含む負極活物質層として機能する。負極層14は、負極材料を主成分として含んでいてもよい。負極活物質は、正極よりも低い電位において、その結晶構造内にリチウム(Li)イオン、マグネシウム(Mg)イオンなどの金属イオンが挿入又は脱離され、それに伴って酸化又は還元が行われる物質をいう。負極活物質の種類は、電池の種類に応じて適宜選択することができ、公知の負極活物質が用いられうる。負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素などの炭素材料、固体電解質と合剤化されるべき合金系材料などが用いられうる。合金系材料としては、LiAl、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sb、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C、LiC6などのリチウム合金、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)などのリチウムと遷移金属元素との酸化物、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiOx)などの金属酸化物などが用いられうる。負極活物質は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
上述のとおり、負極層14は、負極活物質を含んでいれば特に限定されない。負極層14は、負極活物質と他の添加材料との合剤から構成される合剤層であってもよい。他の添加材料としては、無機系固体電解質などの固体電解質、アセチレンブラックなどの導電助剤、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどが用いられうる。負極層14において、負極活物質と他の添加材料とを所定の割合で混合することによって、負極層14内でのリチウムイオン導電性を向上させることができるとともに、電子伝導性も向上させることができる。
【0053】
負極層14の厚さは、例えば、5μm以上300μm以下である。
【0054】
固体電解質層15は、固体電解質を含む。固体電解質は、イオン導電性を有していれば特に限定されず、公知の電池用の電解質を用いることができる。固体電解質としては、例えば、Liイオン、Mgイオンなどの金属イオンを伝導する電解質が用いられうる。固体電解質は、伝導イオン種に応じて適宜選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などの無機系固体電解質が用いられうる。硫化物系固体電解質としては、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-Ge2S2、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-GeS2-ZnSなどのリチウム含有硫化物が用いられうる。酸化物系固体電解質としては、Li2O-SiO2、Li2O-SiO2-P2O5などのリチウム含有金属酸化物、LixPyO1-zNzなどのリチウム含有金属窒化物、リン酸リチウム(Li3PO4)、リチウムチタン酸化物などのリチウム含有遷移金属酸化物などが用いられうる。固体電解質として、これらの材料の1種のみが用いられてもよく、これらの材料のうちの2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0055】
固体電解質層15は、上記の固体電解質に加えて、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどを含有しうる。
【0056】
固体電解質層15の厚さは、例えば、5μm以上150μm以下である。
【0057】
固体電解質は、粒子の形状を有していてもよい。固体電解質は、焼結体であってもよい。
【0058】
次に、正極端子16及び負極端子17について説明する。これらの端子16及び17は、例えば、低抵抗の導体で構成されている。端子16及び17としては、例えば、Agなどの導電性金属粒子を含む導電性樹脂を硬化したものが用いられる。導電性樹脂としては、例えば、後述する導電性樹脂ペーストを用いることができる。端子16及び17は、SUS板などの導電性の金属板に導電性接着剤を塗布したものであってもよい。導電性接着剤としては、例えば、後述する熱硬化性導電ペーストを用いることができる。導電性接着剤によれば、2つの金属板によって複数のセル30の積層体を挟持することができる。導電性接着剤は、積層電池100の使用温度の範囲及び積層電池100の製造プロセスにおいて、導電性及び接合性を維持できるものであれば特に限定されない。導電性接着剤の構成、厚さ及び材料は、積層電池100の使用環境下で要求される最大レートでの電流が導電性接着剤に通電されたときに、導電性接着剤が積層電池100の寿命特性及び電池特性に影響を与えず、導電性接着剤の耐久性を維持できる限り特に限定されない。端子16及び17は、Ni-Snなどによってめっき処理されていてもよい。
【0059】
正極集電体11及び負極集電体13は、導電性を有する材料で構成されていれば特に限定されない。集電体11及び13の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銅、パラジウム、金及び白金が挙げられる。これらの集電体11及び13の材料は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた合金として使用してもよい。集電体11及び13は、箔状体、板状体、網目状体などであってもよい。集電体11及び13の材料は、電池100の製造プロセス、電池100の使用温度、及び、電池100内の圧力によって、集電体11及び13が溶融及び分解しなければ特に限定されず、集電体11及び13に印加される電池100の動作電位と、集電体11及び13の導電性を考慮して適宜選択できる。さらに、集電体11及び13の材料は、集電体11及び13に要求される引張強度及び耐熱性に応じても選択されうる。集電体11及び13の材料の例としては、銅、アルミ及びそれらを主成分として含む合金が挙げられる。集電体11及び13は、高い強度を有する電解銅箔、又は、異種金属箔を積層したクラッド材であってもよい。集電体11及び13の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0060】
第1アンカー部18及び第2アンカー部19の材料は、特に限定されない。アンカー部18及び19の材料としては、例えば、集電体11及び13の材料として例示した材料が挙げられる。第1アンカー部18の材料は、負極集電体13の材料と同じであってもよい。第2アンカー部19の材料は、正極集電体11の材料と同じであってもよい。アンカー部18及び19の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0061】
上述の積層電池100の構成は、適宜、互いに組み合わされてもよい。
【0062】
本実施形態の電池100の構成は、特許文献1及び特許文献2に記載された電池の構成と比べて下記の点で相違している。
【0063】
特許文献1には、積層された複数の単電池層内の集電体から電流を取り出すための電極タブを当該集電体に接続させて、電池の外部に引き出している構造を有するバイポーラ電池が開示されている。特許文献1の電池の構造において、複数の単電池層は、リジッドに一体化されていない。
【0064】
特許文献2には、並列集電体を含む積層体の端面に、端子用集電体を取り付けた全固体電池が開示されている。しかし、特許文献2の全固体電池において、端子用集電体と並列集電体との間には間隙が存在しない。さらに、特許文献2の全固体電池は、アンカー部を有していない。
【0065】
特許文献1及び特許文献2に記載の電池の構成では、集電体から電流を取り出すための電極の配置、集電体の構成、及び、アンカー部の有無が本実施形態の電池100の構成と異なるため、下記の問題が生じることがある。
【0066】
特許文献1の電池の構成では、電極タブを集電体と接続させ、電池の外部に引き出す。このような電池を小型化すること、及び、電池に含まれる部材の接続強度などの信頼性を維持することは難しいことがある。そのため、特許文献1の電池は、大容量化及び小型化に適していない。特許文献1の電池に衝撃が加わった場合、電池の電気的な接続の信頼性も低い。このように、特許文献1の電池の構成では、電池を小型化及び大容量化しづらく、耐衝撃性などの電池の信頼性に関する特性に問題があることがある。
【0067】
特許文献2の電池では、積層体の端面に端子用集電体が配置されている。端子用集電体は、電池の特性を引き出す部材である。そのため、端子用集電体は、初期特性のみならず、様々な条件における電気的な接続の信頼性を有している必要がある。しかし、特許文献2の電池では、板状の端子用集電体で積層体を挟持し、かつアンカー部を有さない構造で電池セル同士の間を電気的に接続している。そのため、特許文献2の電池は、衝撃に対する機械的強度及び電気的な接続強度に問題があることがある。さらに、特許文献2では、端子用集電体に絶縁層が形成されている。特許文献2の電池に衝撃が加わり、並列集電体にずれが生じた場合、絶縁層に接していた並列集電体の端面が端子用集電体に接触することがある。これにより、短絡が生じることがある。
【0068】
特許文献1及び2に対して、本実施形態の電池100では、複数のセル30が電気的に並列に接続されており、かつ一体化されている。電池100では、正極集電体11と負極端子17とが間隙を介して互いに電気的に分離しており、かつ、負極集電体13と正極端子16とが間隙を介して互いに電気的に分離している。さらに、本実施形態の電池100において、例えば、アンカー部18及び19が端子16及び17に接続されている。そのため、本実施形態の電池100では、上述のような問題が生じにくい。特許文献1及び2は、本実施形態の電池100における上記の構成を開示していない。
【0069】
[電池の製造方法]
次に、本実施形態に係る電池100の製造方法の一例を説明する。本実施形態に係る電池100は、例えば、シート作製法によって作製することができる。
【0070】
本明細書では、セル30を作製する工程を「シート作製工程」と呼ぶことがある。シート作製工程では、例えば、本実施形態に係る電池100に含まれるセル30の各構成の前駆体が積層された積層体を作製する。積層体では、例えば、正極集電体11の前駆体、正極層12のシート、固体電解質層15のシート、負極層14のシート及び負極集電体13の前駆体がこの順番で積層されている。並列接続されるべきセル30の数に併せて、所定の数の積層体を作製する。積層体に含まれる部材を形成する順番は、特に限定されない。
【0071】
まず、シート作製工程について説明する。シート作製工程は、セル30の各構成の前駆体であるシートを作製し、そのシートを積層する工程を含む。
【0072】
正極層12のシートは、例えば、次の方法で作製できる。まず、正極活物質、合剤としての固体電解質、導電助剤、バインダー及び溶媒を混合し、正極層12のシートを作製するためのスラリーを得る。本明細書では、正極層12のシートを作製するためのスラリーを「正極活物質スラリー」と呼ぶことがある。次に、正極活物質スラリーを正極集電体11の前駆体上に、印刷法などを利用して塗布する。得られた塗布膜を乾燥させることによって、正極層12のシートが形成される。
【0073】
正極集電体11の前駆体としては、例えば、約30μmの厚さを有する銅箔を用いることができる。正極活物質としては、例えば、約5μmの平均粒子径を有するとともに、層状構造を有するLi・Ni・Co・Al複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)の粉末を用いることができる。合剤としての固体電解質としては、例えば、約10μmの平均粒子径を有するとともに、三斜晶系結晶を主成分として含むLi2S-P2S5系硫化物のガラス粉末を用いることができる。固体電解質は、例えば、2×10-3S/cm以上3×10-3S/cm以下の高いイオン導電性を有する。
【0074】
正極活物質スラリーは、例えば、スクリーン印刷法によって、正極集電体11の前駆体である銅箔の片方の表面上に塗布することができる。得られた塗布膜は、例えば、所定形状を有するとともに、約50μm以上100μm以下の厚さを有する。次に、塗布膜を乾燥させることによって、正極層12のシートが得られる。塗布膜の乾燥は、80℃以上130℃以下の温度で行ってもよい。正極層12のシートの厚さは、例えば、30μm以上60μm以下である。
【0075】
負極層14のシートは、例えば、次の方法で作製できる。まず、負極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー及び溶媒を混合し、負極層14のシートを作製するためのスラリーを得る。本明細書では、負極層14のシートを作製するためのスラリーを「負極活物質スラリー」と呼ぶことがある。負極活物質スラリーを負極集電体13の前駆体上に、印刷法などを利用して塗布する。得られた塗布膜を乾燥させることによって、負極層14のシートが形成される。
【0076】
負極集電体13の前駆体としては、例えば、約30μmの厚さを有する銅箔を用いることができる。負極活物質としては、例えば、約10μmの平均粒子径を有する天然黒鉛の粉末を用いることができる。固体電解質としては、例えば、正極層12のシートの作製方法で例示したものを用いることができる。
【0077】
負極活物質スラリーは、例えば、スクリーン印刷法によって、負極集電体13の前駆体である銅箔の片方の表面上に塗布することができる。得られた塗布膜は、例えば、所定形状を有するとともに、約50μm以上100μm以下の厚さを有する。次に、塗布膜を乾燥させることによって、負極層14のシートが得られる。塗布膜の乾燥は、80℃以上130℃以下の温度で行ってもよい。負極層14のシートの厚さは、例えば、30μm以上60μm以下である。
【0078】
固体電解質層15のシートは、正極層12のシートと負極層14のシートとの間に配置される。固体電解質層15のシートは、例えば、次の方法で作製できる。まず、固体電解質、導電助剤、バインダー及び溶媒を混合し、固体電解質層15のシートを作製するためのスラリーを得る。本明細書では、固体電解質層15のシートを作製するためのスラリーを「固体電解質スラリー」と呼ぶことがある。固体電解質スラリーを正極層12のシートの上に塗布する。同様に、固体電解質スラリーを負極層14のシートの上に塗布する。固体電解質スラリーの塗布は、例えば、メタルマスクを用いた印刷法によって行う。得られた塗布膜は、例えば、約100μmの厚さを有する。次に、塗布膜を乾燥させる。塗布膜の乾燥は、80℃以上130℃以下の温度で行ってもよい。これにより、正極層12のシートの上、及び、負極層14のシートの上のそれぞれに固体電解質層15のシートが形成される。
【0079】
固体電解質層15のシートの作製方法は、上述の方法に限定されない。固体電解質層15のシートは、次の方法によって作製されてもよい。まず、印刷法などを利用して、固体電解質スラリーを基材上に塗布する。基材としては、その上に固体電解質層15のシートを形成できるものであれば特に限定されず、例えば、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを含む。基材の形状は、例えば、フィルム状又は箔状である。次に、基材上に形成された塗布膜を乾燥させることによって固体電解質層15のシートが得られる。固体電解質層15のシートは、基材から剥がして用いることができる。
【0080】
正極活物質スラリー、負極活物質スラリー及び固体電解質スラリーに用いられる溶媒は、バインダーを溶解可能であり、かつ電池特性へ悪影響を及ぼさないものであれば、特に限定されない。溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールエチルエーテル、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶剤及び水を用いることができる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
本実施形態では、正極活物質スラリー、負極活物質スラリー及び固体電解質スラリーを塗布する方法として、スクリーン印刷法を例示したが、塗布方法は、これに限られない。塗布方法として、ドクターブレード法、カレンダー法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、オフセット法、ダイコート法、スプレー法などを用いてもよい。
【0082】
正極活物質スラリー、負極活物質スラリー及び固体電解質スラリーには、上述した正極活物質、負極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー及び溶媒の他に、必要に応じて可塑剤などの助剤が混合されていてもよい。スラリーの混合方法は、特に限定されない。スラリーには、必要に応じて、増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0083】
次に、正極層12のシートの上に形成された固体電解質層15のシートと、負極層14のシートの上に形成された固体電解質層15のシートとを重ね合わせる。これにより、正極集電体11の前駆体、正極層12、固体電解質層15、負極層14及び負極集電体13の前駆体がこの順番で積層された積層体が得られる。積層体において、正極集電体11の前駆体の端面は、例えば、平面視で負極集電体13の前駆体の端面と重なっている。
【0084】
次に、正極集電体11が得られるように正極集電体11の前駆体を切断する。詳細には、負極端子17を配置したときに、正極集電体11と負極端子17とが間隙を介して互いに電気的に分離するように、正極集電体11の前駆体を切断する。正極集電体11の切断面は、例えば、第2方向yにまっすぐ延びている。正極集電体11の前駆体の切断は、例えば、レーザーによって行うことができる。正極集電体11の前駆体を切断することによって、正極集電体11とともに第2アンカー部19を形成することができる。正極集電体11と第2アンカー部19との最短距離は、例えば、10μmである。正極集電体11と第2アンカー部19との間の間隙によって、正極集電体11と第2アンカー部19とが互いに電気的に分離している。すなわち、正極集電体11と第2アンカー部19との間の間隙は、電気的に絶縁している。
【0085】
次に、負極集電体13が得られるように負極集電体13の前駆体を切断する。詳細には、正極端子16を配置したときに、負極集電体13と正極端子16とが間隙を介して互いに電気的に分離するように、負極集電体13の前駆体を切断する。負極集電体13の切断面は、例えば、第2方向yにまっすぐ延びている。負極集電体13の前駆体の切断は、例えば、レーザーによって行うことができる。負極集電体13の前駆体を切断することによって、負極集電体13とともに第1アンカー部18を形成することができる。負極集電体13と第1アンカー部18との最短距離は、例えば、10μmである。負極集電体13と第1アンカー部18との間の間隙によって、負極集電体13と第1アンカー部18とが互いに電気的に分離している。すなわち、負極集電体13と第1アンカー部18との間の間隙は、電気的に絶縁している。
【0086】
正極集電体11の前駆体の切断、及び、負極集電体13の前駆体の切断の順番は、特に限定されない。正極集電体11の前駆体を切断したあとに負極集電体13の前駆体を切断してもよく、負極集電体13の前駆体を切断したあとに正極集電体11の前駆体を切断してもよい。正極集電体11の前駆体の切断、及び、負極集電体13の前駆体の切断は、正極層12のシートの上に形成された固体電解質層15のシートと、負極層14のシートの上に形成された固体電解質層15のシートとを重ね合わせる前に行ってもよい。正極集電体11の前駆体の切断、及び、負極集電体13の前駆体の切断は、ダイシングなどの手段を用いて行ってもよい。正極集電体11の前駆体を切断するとともに、その前駆体の一部を除去することによって絶縁部を設けてもよい。負極集電体13の前駆体を切断するとともに、その前駆体の一部を除去することによって絶縁部を設けてもよい。
【0087】
以上のとおり、正極集電体11の前駆体を切断し、さらに、負極集電体13の前駆体を切断することによってセル30が得られる。セル30において、正極集電体11は、セル30の外部に露出した主面を有している。負極集電体13もセル30の外部に露出した主面を有している。
【0088】
次に、所定の数のセル30を準備する。セル30の外部に露出した正極集電体11の主面、及び、セル30の外部に露出した負極集電体13の主面のそれぞれに、例えば導電性接着剤を塗布する。導電性接着剤を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法が挙げられる。本明細書では、正極集電体11及び負極集電体13において、接着性材料が塗布された主面を「接着面」と呼ぶことがある。次に、セル30の正極集電体11の接着面を他のセル30の正極集電体11の接着面と接着させる、又は、セル30の負極集電体13の接着面を他のセル30の負極集電体13の接着面と接着させる。これにより、複数のセル30を積層することができる。接着面同士は、例えば、加圧接着によって互いに接着させることができる。接着面同士を接着させるときの温度は、例えば、50℃以上100℃以下である。接着面同士を接着させるときに、セル30に印加する圧力は、例えば、300MPa以上400MPa以下である。セル30に圧力を印加する時間は、例えば、90秒以上120秒以下である。接着には、導電性接着剤に代えて、低抵抗の導電性テープを用いることもできる。導電性接着剤に代えて、ペースト状の銀粉又は銅粉を用いることもできる。ペースト状の銀粉又は銅粉が塗布されたセル30の接着面を他のセル30の接着面に加圧圧着すれば、金属粒子を介して集電体同士をアンカー効果によって機械的に接合できる。接着性及び導電性が得られる方法である限り、複数のセル30を積層する方法は、特に限定されない。
【0089】
次に、複数のセル30のそれぞれと、正極端子16及び負極端子17とを電気的に接続させる。複数のセル30のそれぞれと端子16及び17とは、例えば、次の方法によって電気的に接続させることができる。まず、複数のセル30の積層体において、端子16及び17が配置されるべき面に、導電性樹脂ペーストを塗布する。導電性樹脂ペーストを硬化させることによって、端子16及び17が形成される。これにより、本実施形態に係る電池100が得られる。導電性樹脂ペーストを硬化させるときの温度は、例えば、約100℃以上300℃以下である。導電性樹脂ペーストを硬化させる時間は、例えば、60分である。
【0090】
導電性樹脂ペーストとしては、例えば、Ag、Cu、Ni、Zn、Al、Pd、Au、Pt又はこれらの合金を含む高融点の高導電性金属粒子と、低融点の金属粒子と、樹脂とを含む熱硬化性導電ペーストを用いることができる。高導電性金属粒子の融点は、例えば、400℃以上である。低融点の金属粒子の融点は、導電性樹脂ペーストの硬化温度以下であってもよく、300℃以下であってもよい。低融点の金属粒子の材料としては、例えば、Sn、SnZn、SnAg、SnCu、SnAl、SnPb、In、InAg、InZn、InSn、Bi、BiAg、BiNi、BiSn、BiZn及びBiPbが挙げられる。このような低融点の金属粉末を含有する導電性ペーストを使用することによって、低融点の金属粒子の融点よりも低い熱硬化温度で、導電性ペーストと、集電体又はアンカー部との接触部位において、固相及び液相反応が進行する。これにより、例えば、導電性ペーストに含まれる金属と、集電体又はアンカー部に含まれる金属とを含む合金が形成される。集電体又はアンカー部と端子との接続部近傍に、合金を含む拡散層が形成される。導電性粒子としてAg又はAg合金を使用し、集電体にCuを使用した場合には、AgCuを含む高導電性合金が形成される。さらに、導電性粒子の材料と集電体の材料との組み合わせによって、AgNi、AgPdなども形成されうる。このようにして、端子と集電体又はアンカー部とは、合金を含む拡散層によって一体的に接合される。以上の構成によれば、端子と集電体又はアンカー部とは、アンカー効果よりも強固に接続される。そのため、電池100の各部材での熱サイクルなどによる熱膨張の差、又は、衝撃に起因して、各部材の接続が外れるという問題が生じにくい。
【0091】
高導電性金属粒子及び低融点の金属粒子の形状は、特に限定されず、球状、鱗片状、針状などであってもよい。これらの金属粒子の粒子サイズは、小さければ小さいほど、低温度で合金化反応及び合金の拡散が進行する。そのため、これらの金属粒子の粒子サイズ及び形状は、プロセス設計及び電池特性への熱履歴の影響を考慮して、適宜調節されうる。
【0092】
熱硬化性導電ペーストに用いられる樹脂は、結着用バインダーとして機能するものであれば特に限定されず、印刷法に対する適性、塗布性など、採用するべき製造プロセスによって適切なものを選択できる。熱硬化性導電ペーストに用いられる樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂などのアミノ樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、脂環式などのエポキシ樹脂、オキセタン樹脂、レゾール型、ノボラック型などのフェノール樹脂、シリコーンエポキシ、シリコーンポリエステルなどのシリコーン変性有機樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
本実施形態の製造方法では、圧粉プロセスで電池100を作製する例を示している。ただし、焼成プロセスを使用して焼結体の積層体を作製し、さらに、焼け付けプロセスによって端子16及び17を作製してもよい。
【0094】
(実施形態2)
図2は、本実施形態2に係る電池200の構成を説明する概略図である。
図2(a)は、本実施形態に係る電池200の断面図である。
図2(b)は、電池200の上面図である。
図2に示すように、積層電池200において、複数のセル30のそれぞれは、絶縁性の封止部材20をさらに有している。以上を除き、電池200の構造は、実施形態1の電池100の構造と同じである。したがって、実施形態1の電池100と本実施形態の電池200とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。すなわち、以下の各実施形態に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用されうる。さらに、技術的に矛盾しない限り、各実施形態は、相互に組み合わされてもよい。
【0095】
封止部材20は、正極集電体11と負極集電体13との間に位置している。封止部材20は、固体電解質層15を囲んでいる。すなわち、封止部材20は、平面視で固体電解質層15よりも外側に位置している。封止部材20は、固体電解質層15に接していてもよい。詳細には、封止部材20は、固体電解質層15の側面全体に接していてもよい。封止部材20は、正極端子16及び負極端子17のそれぞれと接していてもよい。電池200において、固体電解質層15は、例えば、端子16及び17に接していない。
【0096】
封止部材20は、正極集電体11、負極集電体13、第1アンカー部18及び第2アンカー部19のそれぞれに接していてもよい。正極集電体11の一部は、封止部材20に埋め込まれていてもよい。負極集電体13の一部は、封止部材20に埋め込まれていてもよい。第1アンカー部18は、封止部材20に埋め込まれていてもよい。第2アンカー部19は、封止部材20に埋め込まれていてもよい。
【0097】
詳細には、電池200において、セル30aは、封止部材20aを有している。セル30bは、封止部材20bを有している。セル30cは、封止部材20cを有している。セル30dは、封止部材20dを有している。負極集電体13aと正極端子16との間隙において、封止部材20aは、封止部材20bと接していてもよい。正極集電体11bと負極端子17との間隙において、封止部材20bは、封止部材20cに接していてもよい。負極集電体13bと正極端子16との間隙において、封止部材20cは、封止部材20dに接していてもよい。
【0098】
封止部材20の材料は、絶縁性を有していれば特に限定されない。封止部材20の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドなどの絶縁性樹脂が挙げられる。
【0099】
以上の構成により、正極集電体11と負極集電体13とが接触して短絡することを抑制できる。正極集電体11と負極端子17とが接触して短絡することを抑制できる。負極集電体13と正極端子16とが接触して短絡することを抑制できる。封止部材20によれば、水などで劣化しやすい固体電解質層15を外部環境から遮断できる。これにより、高いエネルギー密度及び高い信頼性を有し、かつ大容量の積層電池200の耐環境性を向上させることができる。
【0100】
封止部材20は、端子及びアンカー部と一体化して衝撃緩衝層として機能する。衝撃緩衝層は、電池200の内部の発電要素を保護するため、電池200の耐衝撃性能がより向上する。封止部材20は、発電要素の外側に位置していてもよい。発電要素の外側とは、電気特性に影響を与えないセル30の部分であり、例えば、正極層12及び負極層14によって囲まれた部分の外側を意味する。ただし、セル30における短絡を防止し、耐衝撃性を向上するために、封止部材20は、発電要素の内側に位置していてもよい。発電要素の内側とは、例えば、正極層12及び負極層14によって囲まれた部分の内側を意味する。
【0101】
第1アンカー部18及び第2アンカー部19は、例えば、セル30において、発電要素に影響しない領域に位置している。ただし、電池100の特性変化が許容できる範囲であれば、セル30の外部を遮断し、保護性能を向上させるために、アンカー部18及び19は、発電要素の内側に位置していてもよい。
【0102】
第1アンカー部18及び第2アンカー部19において、固体電解質層15又は封止部材20と接する面には、必要に応じて、粗面化処理が施されていてもよく、凹凸が形成されていてもよく、屈曲部が形成されていてもよい。アンカー部18及び19の表面には、孔が形成されていてもよい。このとき、アンカー部18及び19において、固体電解質層15又は封止部材20に対するグリップ性を向上できる。これにより、電池200の耐衝撃性をより向上できる。このように、第1アンカー部18及び第2アンカー部19によるアンカー効果を高めることによって、さらに高い信頼性を有する積層電池200を得ることができる。第1アンカー部18及び第2アンカー部19は、その導電性により高い熱伝導性を有する。そのため、アンカー部18及び19によれば、端子16及び17を介して、積層電池200の内部に発生する熱を発電要素の外部に放出する効果も得られる。これにより、大容量化した電池で顕在化することがある高温条件下での動作に起因した寿命の劣化を抑制することもできる。
【0103】
(実施形態3)
図3は、本実施形態3に係る電池300の構成を説明する概略図である。
図3(a)は、本実施形態に係る電池300の断面図である。
図3(b)は、電池300の上面図である。
図3に示すように、電池300において、正極端子22は、複数のセル30のうち最も外側に位置するセル30a及び30dに含まれる正極集電体11a及び11cのそれぞれの主面を被覆している。正極端子22は、正極集電体11a及び11cの主面を部分的に被覆していてもよく、全体的に被覆していてもよい。言い換えると、正極端子22は、電池300の上端に位置する正極集電体11aの上面の少なくとも一部、及び、電池300の下端に位置する正極集電体11cの下面の少なくとも一部を被覆している。
【0104】
詳細には、正極端子22は、本体部22aと固定部22b及び22cとを有する。本体部22aは、第3方向zに延びている。固定部22b及び22cは、複数のセル30を固定している。複数のセル30が固定部22b及び22cに挟持されている。固定部22b及び22cは、それぞれ、本体部22aの一対の端面に接続されている。固定部22b及び22cのそれぞれは、第1方向xに延びている。固定部22bが正極集電体11aの主面を被覆している。固定部22cが正極集電体11cの主面を被覆している。
【0105】
電池300において、負極端子23は、複数のセル30のうち最も外側に位置するセル30a及び30dに含まれる第2アンカー部19a及び19cのそれぞれの主面を被覆していてもよい。言い換えると、負極端子23は、電池300の上端に位置する第2アンカー部19aの上面、及び、電池300の下端に位置する第2アンカー部19cの下面を被覆していてもよい。
【0106】
詳細には、負極端子23は、本体部23aと固定部23b及び23cとを有する。本体部23aは、第3方向zに延びている。固定部23b及び23cは、複数のセル30を固定している。複数のセル30が固定部23b及び23cに挟持されている。固定部23b及び23cは、それぞれ、本体部23aの一対の端面に接続されている。固定部23b及び23cのそれぞれは、第1方向xと反対方向に延びている。固定部23bが第2アンカー部19aの主面を被覆している。固定部23cが第2アンカー部19cの主面を被覆している。
【0107】
複数のセル30の配置によっては、負極集電体13及び第1アンカー部18が電池300の上端又は下端に位置していることがある。このとき、負極端子23は、複数のセル30のうち最も外側に位置するセル30に含まれる負極集電体13の主面を被覆していてもよい。負極端子23は、最も外側に位置するセル30に含まれる負極集電体13の主面を部分的に被覆していてもよく、全体的に被覆していてもよい。言い換えると、負極端子23は、電池300の上端に位置する負極集電体13の上面の少なくとも一部、又は、電池300の下端に位置する負極集電体13の下面の少なくとも一部を被覆していてもよい。さらに、電池300において、正極端子22は、複数のセル30のうち最も外側に位置するセル30に含まれる第1アンカー部18の主面を被覆していてもよい。言い換えると、正極端子22は、電池300の上端に位置する第1アンカー部18の上面、又は、電池300の下端に位置する第1アンカー部18の下面を被覆していてもよい。
【0108】
以上の構成によって、より高い接合強度により一体化された積層電池300を実現することができる。特に、この構成により、端子22及び23周辺に集中して発生する、集電体11及び13のたわみに起因する応力に対する電池300の信頼性を向上させることができる。
【0109】
端子22及び23の固定部22b,22c,23b及び23cは、例えば、次の方法で作製できる。まず、複数のセル30の積層体の上端に位置する正極集電体11aの上面、及び、第2アンカー部19aの上面に導電性樹脂ペーストを塗布する。複数のセル30の積層体の上端に負極集電体13及び第1アンカー部18が位置している場合には、積層体の上端に位置する負極集電体13の上面、及び、第1アンカー部18の上面に導電性樹脂ペーストを塗布する。さらに、複数のセル30の積層体の下端に位置する正極集電体11cの下面、及び、第2アンカー部19cの下面に導電性樹脂ペーストを塗布する。複数のセル30の積層体の下端に負極集電体13及び第1アンカー部18が位置している場合には、積層体の下端に位置する負極集電体13の下面、及び、第1アンカー部18の下面に導電性樹脂ペーストを塗布する。導電性樹脂ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷法によって行うことができる。導電性樹脂ペーストを熱硬化することによって、固定部22b,22c,23b及び23cが形成される。
【0110】
このとき、正極集電体11aと第2アンカー部19aとが短絡しないように、固定部22b及び23bを形成するべきである。同様に、正極集電体11cと第2アンカー部19cとが短絡しないように、固定部22c及び23cを形成するべきである。
【0111】
この端子22及び23の構成により、固定部22b,22c,23b及び23cによって、複数のセル30の積層体を挟持できる。これにより、多方向からの衝撃への耐久性が向上した積層電池300を実現できる。
【0112】
導電性樹脂ペーストとして、上述した高導電性金属粒子、低融点の金属粒子及び樹脂を含有する熱硬化性樹脂ペーストを用いることにより、固定部22b及び22cと正極集電体11a及び11cとの界面、並びに、固定部23b及び23cと第2アンカー部19a及び19cとの界面に合金を含む拡散層を形成することができる。複数のセル30の積層体の上端又は下端に負極集電体13が位置している場合、負極集電体13と固定部23b又は23cとの界面に合金を含む拡散層を形成することができる。これにより、端子22及び23と複数のセル30の積層体とをより強固に一体化することができる。そのため、耐衝撃性に一層優れた積層電池300を実現できる。
【0113】
(実施の形態4)
図4は、本実施形態4に係る電池400の構成を説明する概略図である。
図4(a)は、本実施形態に係る電池400の断面図である。
図4(b)は、電池400の上面図である。
図4に示すように、正極集電体24a,24b及び24c、並びに、第1アンカー部26a及び26bは、正極端子16に部分的に埋め込まれている。電池400における複数の正極集電体24及び複数の第1アンカー部26のうちの少なくとも1つが正極端子16に部分的に埋め込まれていてもよい。同様に、負極集電体25a及び25b、並びに、第2アンカー部27a,27b及び27cは、負極端子17に部分的に埋め込まれている。電池400における複数の負極集電体25及び複数の第2アンカー部27のうちの少なくとも1つが負極端子17に部分的に埋め込まれていてもよい。これにより、端子16及び17と、複数のセル30の積層体との接続の信頼性がより向上する。この構成により、電池400の冷熱サイクルの信頼性及び衝撃に対する信頼性をさらに向上できる。
【0114】
正極端子16に埋め込まれている正極集電体24の部分及び第1アンカー部26の部分が正極端子16の厚さ方向に正極端子16を貫通しない限り、これらの部分の大きさは、特に限定されない。例えば、正極集電体24の端部から1μm以上の距離までの正極集電体24の部分が正極端子16に埋め込まれている。例えば、第1アンカー部26の端部から1μm以上の距離までの第1アンカー部26の部分が正極端子16に埋め込まれている。
【0115】
同様に、負極端子17に埋め込まれている負極集電体25の部分及び第2アンカー部27の部分が負極端子17の厚さ方向に負極端子17を貫通しない限り、これらの部分の大きさは、特に限定されない。例えば、負極集電体25の端部から1μm以上の距離までの負極集電体25の部分が負極端子17に埋め込まれている。例えば、第2アンカー部27の端部から1μm以上の距離までの第2アンカー部27の部分が負極端子17に埋め込まれている。
【0116】
電池400の集電体24及び25、並びに、アンカー部26及び27は、例えば、次の方法で作製することができる。まず、固体電解質層15に含まれる固体電解質として、端子16及び17を作製するときの熱硬化処理中に焼結する固体電解質を用いる。このような固体電解質としては、Li2S-P2S5系硫化物のガラスなどが挙げられる。固体電解質は、焼結することによって収縮する。このような固体電解質によれば、端子16及び17を作製するときに、複数のセル30に含まれる集電体24及び25、並びに、アンカー部26及び27に対して第3方向z及び第3方向zの反対方向に圧力が印加される。これらの圧力の作用効果により、正極端子16に向かって正極集電体24及び第1アンカー部26が突出する。さらに、負極端子17に向かって負極集電体25及び第2アンカー部27が突出する。これにより、正極集電体24、負極集電体25、第1アンカー部26及び第2アンカー部27が、それぞれ、対応する端子16及び17に部分的に埋め込まれた積層電池400を作製できる。電池400の集電体24及び25、並びに、アンカー部26及び27は、複数のセル30の積層体を加圧処理することによっても作製できる。加圧処理において、圧力は、例えば、第3方向zに印加される。加圧処理の圧力は、例えば、20kg/cm2以上100kg/cm2以下である。
【0117】
電池400の構成によれば、正極集電体24、負極集電体25、第1アンカー部26及び第2アンカー部27と、端子16及び17との電気的接続及び機械的接続がより強固であるため、熱衝撃による接続不良を抑制でき、さらに耐衝撃性に優れた、高信頼性の積層電池400が得られる。
【0118】
以上、本開示に係る電池について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本開示に係る電池は、各種の電子機器、自動車などに用いられる全固体電池などの二次電池として利用されうる。
【符号の説明】
【0120】
11,24 正極集電体
12 正極層
13,25 負極集電体
14 負極層
15 固体電解質層
16,22 正極端子
17,23 負極端子
18,26 第1アンカー部
19,27 第2アンカー部
20 封止部材
30 セル
100,200,300,400 電池