(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20240112BHJP
F04C 23/02 20060101ALI20240112BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F04B39/00 106D
F04C23/02 J
F04C29/00 T
(21)【出願番号】P 2022555274
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027966
(87)【国際公開番号】W WO2022074906
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020171354
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】西山 典禎
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-264175(JP,A)
【文献】特開2009-287407(JP,A)
【文献】特開平01-219381(JP,A)
【文献】中国実用新案第205977686(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04C 23/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器には、冷媒を吸入する吸入管と、前記冷媒を吐出する吐出管とが接続され、
前記密閉容器の内部には、前記吸入管から吸入された前記冷媒を圧縮する圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動する電動機構部とが配置され、
前記電動機構部は、前記密閉容器に固定されるステータと、前記ステータの内周に配置されるロータとからなり、
前記ロータは、円盤状のロータコアシートが積層されて筒状に形成されるロータコアを有し、
前記ロータコアには、軸方向に複数の冷媒通路を有し、
前記冷媒通路の流入側となる前記ロータの冷媒流入側ロータ端面に、冷媒流入側バランスウエイトを備え、
前記圧縮機構部で圧縮された前記冷媒は、前記冷媒通路を通過し、前記吐出管から吐出される圧縮機であって、
前記冷媒流入側ロータ端面における前記冷媒流入側バランスウエイトの設置範囲を設置角度X、
前記設置角度Xの範囲内をウエイト設置エリアA、
前記設置角度Xの範囲外をウエイト非設置エリアB
とし、
前記ウエイト設置エリアAに位置する前記冷媒通路の合計ウエイト設置エリア開口面積をAs、
前記ウエイト非設置エリアBに位置する前記冷媒通路の合計ウエイト非設置エリア開口面積をBs
とすると、
前記合計ウエイト設置エリア開口面積の単位角度当たりのウエイト設置エリア単位開口面積(As/X)より、前記合計ウエイト非設置エリア開口面積の単位角度当たりのウエイト非設置エリア単位開口面積(Bs/(360°-X))を大きくし
、
前記ロータの回転方向の前方に位置する前記ウエイト非設置エリアBを前方ウエイト非設置エリアBf、
前記ロータの前記回転方向の後方に位置する前記ウエイト非設置エリアBを後方ウエイト非設置エリアBbとし、
前記前方ウエイト非設置エリアBfに位置する前記冷媒通路の合計ウエイト非設置エリア前方開口面積をBfs、
前記後方ウエイト非設置エリアBbに位置する前記冷媒通路の合計ウエイト非設置エリア後方開口面積をBbs
とすると、
前記合計ウエイト非設置エリア前方開口面積Bfsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア前方単位開口面積より、前記合計ウエイト非設置エリア後方開口面積Bbsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア後方単位開口面積を大きくした
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記冷媒通路を円周上に規則的に配置し、
前記ウエイト設置エリアAに位置する前記冷媒通路のウエイト設置エリア開口面積より、前記ウエイト非設置エリアBに位置する前記冷媒通路のウエイト非設置エリア開口面積を大きくした
ことを特徴とする
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記冷媒通路を円周上に規則的に配置し、
前記前方ウエイト非設置エリアBfに位置する前記冷媒通路のウエイト非設置エリア前方開口面積より、前記後方ウエイト非設置エリアBbに位置する前記冷媒通路のウエイト非設置エリア後方開口面積を大きくした
ことを特徴とする
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記冷媒通路を等間隔に配置した
ことを特徴とする
請求項2又は
請求項3に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記冷媒流入側ロータ端面と前記冷媒流入側バランスウエイトとの間に端板を設け、
前記端板によって、前記ウエイト設置エリアAに位置する前記冷媒通路の少なくとも一部を塞ぐ
ことを特徴とする請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記冷媒流入側ロータ端面と前記冷媒流入側バランスウエイトとの間に端板を設け、
前記端板によって、前記ウエイト設置エリアAに位置する前記冷媒通路の少なくとも一部を塞ぐ
ことを特徴とする
請求項1に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に空気調和機、給湯器、冷蔵庫等の冷凍装置に用いられる、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉容器の内部に圧縮機構部と電動機構部とが配置され、冷媒が圧縮機構部で圧縮された後に、電動機構部を通過して吐出管から吐出される圧縮機では、電動機構部を通過する際の冷媒の圧力損失を低減することで、圧縮機特性を向上することができる。
特許文献1は、流出側の通路面積が流入側の通路面積よりも大きくした冷媒通路をロータに形成することを開示している。特許文献1は、流出側の通路面積を流入側の通路面積よりも大きくすることで、流出側での冷媒の流速を低下させて潤滑油を分離させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、冷媒通路を通る冷媒量を増加させることはできない。
ところで、圧縮機は、構造上の不釣り合いを低減するために、ロータの端面にはバランスウエイトを備えている。
このバランスウエイトによって、ロータに形成されている複数の冷媒通路には、流入する冷媒量に差異が生じる。
図6は、複数の冷媒通路に流入するそれぞれの冷媒量の相違を示す図である。
図6(a)は、ロータの冷媒流入側端面を示している。
図6(a)に示すように、ロータ14bには複数の冷媒通路44を有し、ロータ14bの端面の一部には、周方向にバランスウエイト17を備えている。それぞれの冷媒通路44は、同一開口面積であり、円周上に等間隔に配置している。
図6(a)に示す矢印Rは、ロータ14bの回転方向を示している。
図6(b)は、
図6(a)に示す、それぞれの冷媒通路44に流れる冷媒流量を示している。
図6(b)に示すように、それぞれの冷媒通路44での冷媒量は異なっており、バランスウエイトが設置された範囲に位置する冷媒通路44-5、44-6では冷媒流量は少なく、バランスウエイトが設置された範囲外に位置する冷媒通路44-1、44-2、44-3、44-4では冷媒流量が多い。
【0005】
そこで本発明は、ロータを通過する冷媒量を増加させ、圧縮機性能を向上させることができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の圧縮機は、密閉容器1には、冷媒を吸入する吸入管11と、前記冷媒を吐出する吐出管12とが接続され、前記密閉容器1の内部には、前記吸入管11から吸入された前記冷媒を圧縮する圧縮機構部13と、前記圧縮機構部13を駆動する電動機構部14とが配置され、前記電動機構部14は、前記密閉容器1に固定されるステータ14aと、前記ステータ14aの内周に配置されるロータ14bとからなり、前記ロータ14bは、円盤状のロータコアシートが積層されて筒状に形成されるロータコア41を有し、前記ロータコア41には、軸方向に複数の冷媒通路44を有し、前記冷媒通路44の流入側となる前記ロータ14bの冷媒流入側ロータ端面に、冷媒流入側バランスウエイト17aを備え、前記圧縮機構部13で圧縮された前記冷媒は、前記冷媒通路44を通過し、前記吐出管12から吐出される圧縮機であって、前記冷媒流入側ロータ端面における前記冷媒流入側バランスウエイト17aの設置範囲を設置角度X、前記設置角度Xの範囲内をウエイト設置エリアA、前記設置角度Xの範囲外をウエイト非設置エリアBとし、前記ウエイト設置エリアAに位置する前記冷媒通路44A1、44A2の合計ウエイト設置エリア開口面積をAs、前記ウエイト非設置エリアBに位置する前記冷媒通路44Bb1、44Bb2、44Bb3、44Bf1、44Bf2の合計ウエイト非設置エリア開口面積をBsとすると、前記合計ウエイト設置エリア開口面積Asの単位角度当たりのウエイト設置エリア単位開口面積(As/X)より、前記合計ウエイト非設置エリア開口面積Bsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア単位開口面積(Bs/(360°-X))を大きくし、前記ロータ14bの回転方向の前方に位置する前記ウエイト非設置エリアBを前方ウエイト非設置エリアBf、前記ロータ14bの前記回転方向の後方に位置する前記ウエイト非設置エリアBを後方ウエイト非設置エリアBbとし、前記前方ウエイト非設置エリアBfに位置する前記冷媒通路44Bf1、44Bf2の合計ウエイト非設置エリア前方開口面積をBfs、前記後方ウエイト非設置エリアBbに位置する前記冷媒通路44Bb1、44Bb2、44Bb3の合計ウエイト非設置エリア後方開口面積をBbsとすると、前記合計ウエイト非設置エリア前方開口面積Bfsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア前方単位開口面積より、前記合計ウエイト非設置エリア後方開口面積Bbsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア後方単位開口面積を大きくしたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の圧縮機において、前記冷媒通路44を円周上に規則的に配置し、前記ウエイト設置エリアAに位置する前記冷媒通路44A1、44A2のウエイト設置エリア開口面積44As1、44As2より、前記ウエイト非設置エリアBに位置する前記冷媒通路44Bb1、44Bb2、44Bb3のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs1、44Bbs2、44Bbs3を大きくしたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の圧縮機において、前記冷媒通路44を円周上に規則的に配置し、前記前方ウエイト非設置エリアBfに位置する前記冷媒通路44Bf1、44Bf2のウエイト非設置エリア前方開口面積より、前記後方ウエイト非設置エリアBbに位置する前記冷媒通路44Bb1、44Bb2、44Bb3のウエイト非設置エリア後方開口面積を大きくしたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の圧縮機において、前記冷媒通路44を等間隔に配置したことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の圧縮機において、前記冷媒流入側ロータ端面と前記冷媒流入側バランスウエイト17aとの間に端板18aを設け、前記端板18aによって、前記ウエイト設置エリアAに位置する前記冷媒通路44の少なくとも一部を塞ぐことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の圧縮機において、前記冷媒流入側ロータ端面と前記冷媒流入側バランスウエイト17aとの間に端板18aを設け、前記端板18aによって、前記ウエイト設置エリアAに位置する前記冷媒通路44の少なくとも一部を塞ぐことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷媒通路を流れる冷媒量を増大させることができる。また本発明によれば、1枚ごとに異なる形状のロータコアシートを用いる必要がなく、また1枚ごとにロータコアシートをずらして積層する必要がないため、ロータの製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例による圧縮機を用いた冷凍装置の構成図
【
図5】本発明の各実施例によるロータの冷媒通路を流れる冷媒量及び冷媒流速を示すグラフ
【
図6】複数の冷媒通路に流入するそれぞれの冷媒量の相違を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による圧縮機は、冷媒流入側ロータ端面における冷媒流入側バランスウエイトの設置範囲を設置角度X、設置角度Xの範囲内をウエイト設置エリアA、設置角度Xの範囲外をウエイト非設置エリアBとし、ウエイト設置エリアAに位置する冷媒通路の合計ウエイト設置エリア開口面積をAs、ウエイト非設置エリアBに位置する冷媒通路の合計ウエイト非設置エリア開口面積をBsとすると、合計ウエイト設置エリア開口面積の単位角度当たりのウエイト設置エリア単位開口面積(As/X)より、合計ウエイト非設置エリア開口面積の単位角度当たりのウエイト非設置エリア単位開口面積(Bs/(360°-X))を大きくし、ロータの回転方向の前方に位置するウエイト非設置エリアBを前方ウエイト非設置エリアBf、ロータの回転方向の後方に位置するウエイト非設置エリアBを後方ウエイト非設置エリアBbとし、前方ウエイト非設置エリアBfに位置する冷媒通路の合計ウエイト非設置エリア前方開口面積をBfs、後方ウエイト非設置エリアBbに位置する冷媒通路の合計ウエイト非設置エリア後方開口面積をBbsとすると、合計ウエイト非設置エリア前方開口面積Bfsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア前方単位開口面積より、合計ウエイト非設置エリア後方開口面積Bbsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア後方単位開口面積を大きくしたものである。本実施の形態によれば、ロータとともに回転する冷媒流入側バランスウエイトにより生じる圧力差を利用して、冷媒通路に流入する冷媒量を増大させることができる。また、更に冷媒通路に流入する冷媒量を増大させることができる。更に冷媒通路に流入する冷媒量を増大させることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による圧縮機において、冷媒通路を円周上に規則的に配置し、ウエイト設置エリアAに位置する冷媒通路のウエイト設置エリア開口面積より、ウエイト非設置エリアBに位置する冷媒通路のウエイト非設置エリア開口面積を大きくしたものである。本実施の形態によれば、一般的に冷媒通路は規則的に配置されるため、開口面積を変更するだけで冷媒流量を増加させることができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による圧縮機において、冷媒通路を円周上に規則的に配置し、前方ウエイト非設置エリアBfに位置する冷媒通路のウエイト非設置エリア前方開口面積より、後方ウエイト非設置エリアBbに位置する冷媒通路のウエイト非設置エリア後方開口面積を大きくしたものである。本実施の形態によれば、一般的に冷媒通路は規則的に配置されるため、開口面積を変更するだけで冷媒流量を増加させることができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第2又は第3の実施の形態による圧縮機において、冷媒通路を等間隔に配置したである。本実施の形態によれば、一般的に冷媒通路は等間隔に配置されるため、開口面積を変更するだけで冷媒流量を増加させることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかに記載の圧縮機において、冷媒流入側ロータ端面と冷媒流入側バランスウエイトとの間に端板を設け、端板によって、ウエイト設置エリアAに位置する冷媒通路の少なくとも一部を塞ぐものである。冷媒通路の非対称配置は不釣り合いの影響が大きくなるが、本実施の形態によれば、端板によって開口面積を変更できるため、不釣り合いの影響を少なくできる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1に記載の圧縮機において、冷媒流入側ロータ端面と冷媒流入側バランスウエイトとの間に端板を設け、端板によって、ウエイト設置エリアAに位置する冷媒通路の少なくとも一部を塞ぐものである。冷媒通路の非対称配置は不釣り合いの影響が大きくなるが、本実施の形態によれば、端板によって開口面積を変更できるため、不釣り合いの影響を少なくできる。
【実施例】
【0015】
以下本発明の実施例による圧縮機について説明する。なお、以下の実施例によって本発明が限定されるものではない。
図1は、本実施例による圧縮機を用いた冷凍装置の構成図である。
密閉容器1には、冷媒を吸入する吸入管11と、冷媒を吐出する吐出管12とが接続されている。密閉容器1の内部には、吸入管11から吸入された冷媒を圧縮する圧縮機構部13と、圧縮機構部13を駆動する電動機構部14とが配置されている。
圧縮機構部13は、シリンダ13aと、ピストン13bと、ベーン(図示せず)と、主軸受13cと、副軸受13dとから構成されている。シリンダ13aは、密閉容器1に固定される。ピストン13bは、シリンダ13a内を貫通するシャフト15の偏心部15aに自転自在に嵌合される。ベーンは、シリンダ13aの内壁面に沿って転動するピストン13bに追従して、ベーン溝を往復動する。主軸受13cと副軸受13dは、シリンダ13aの上端面と下端面を密閉するとともに、シャフト15を支持する。
電動機構部14は、密閉容器1に固定されるステータ14aと、ステータ14aの内周に配置されるロータ14bとからなる。
ロータ14bの端面には、バランスウエイト17を備えている。
冷媒流入側バランスウエイト17aはロータ14bの下端面に、冷媒流出側バランスウエイト17bはロータ14bの上端面に備えている。
【0016】
冷媒は、吸入管11から圧縮機構部13に吸入され、圧縮機構部13で圧縮される。その後、冷媒は、電動機構部14を通過して吐出管12から吐出される。
本実施例による冷凍装置は、圧縮機10、凝縮器21、減圧装置22、及び蒸発器23が配管によって環状に接続されている。凝縮器21では吐出管12から吐出される冷媒を凝縮し、減圧装置22では凝縮器21で凝縮された冷媒を減圧し、蒸発器23では減圧装置22で減圧された冷媒を蒸発させる。
蒸発器23で蒸発された冷媒は、アキュムレータ16を介して圧縮機10に戻される。
【0017】
図2は、本発明の第1実施例によるロータの構成図である。
図2(a)は冷媒流出側となるロータ端面の上面図、
図2(b)は軸方向側面図、
図2(c)は冷媒流入側となるロータ端面の底面図、
図2(d)はロータの斜視図、
図2(e)は
図2(c)のII-II断面図である。
【0018】
ロータ14bは、円盤状のロータコアシートが積層されて筒状に形成されるロータコア41と、ロータコア41の外周部に配置される永久磁石42とを有している。
ロータコア41は、中心部にはシャフト15を配置する貫通孔43を有し、貫通孔43の周囲には軸方向に複数の冷媒通路44を備えている。
冷媒通路44は、圧縮機構部13で圧縮された冷媒を通過させる。
本実施例では、冷媒通路44は、円周上に規則的に、更には等間隔に配置している。
【0019】
図2(a)に示すように、冷媒流出側バランスウエイト17bは冷媒通路の流出側となるロータ14bの冷媒流出側ロータ端面に備えている。ロータ14bの冷媒流出側ロータ端面には端板18bを設けている。端板18bは、冷媒流出側ロータ端面と冷媒流出側バランスウエイト17bとの間に配置される。本実施例では、端板18bには、冷媒通路44の開口と同一位置に開口を形成している。開口は、冷媒通路44の開口と同一の大きさである。
また
図2(c)に示すように、冷媒流入側バランスウエイト17aは冷媒通路の流入側となるロータ14bの冷媒流入側ロータ端面に備えている。ロータ14bの冷媒流入側ロータ端面には端板18aを設けている。端板18aは、冷媒流入側ロータ端面と冷媒流入側バランスウエイト17aとの間に配置される。本実施例では、端板18aには、冷媒通路44の開口と同一位置に開口を形成している。開口は、冷媒通路44の開口と同一大きさである。
冷媒流入側バランスウエイト17a及び冷媒流出側バランスウエイト17bは、ロータ14bに締結リベット19によって固定されている。
締結リベット19は、冷媒流入側バランスウエイト17a、端板18a、ロータ14b、端板18b、及び冷媒流出側バランスウエイト17bを貫通している。
【0020】
冷媒流入側バランスウエイト17a及び冷媒流出側バランスウエイト17bは、ロータ14bの周方向の一部に、ロータ14bの軸方向に所定の高さをもって配置される。
図2(c)に示すように、ロータ14bの回転中心と、冷媒流入側バランスウエイト17aの両端とを結ぶ角度を、冷媒流入側ロータ端面における冷媒流入側バランスウエイト17aの設置角度Xとする。すなわち、この設置角度Xの範囲内が、冷媒流入側バランスウエイト17aの設置範囲であり、この設置範囲をウエイト設置エリアAとする。
また、設置角度Xの範囲外(360°-X)をウエイト非設置エリアBとする。
図2(c)では、冷媒通路44A1、及び冷媒通路44A2がウエイト設置エリアAに位置し、冷媒通路44Bf1、及び冷媒通路44Bb1、冷媒通路44Bb2、及び冷媒通路44Bb3がウエイト非設置エリアBに位置している。
【0021】
冷媒通路44Bb1、冷媒通路44Bb2、及び冷媒通路44Bb3は、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、及び冷媒通路44Bf1よりも通路面積を大きく、すなわちロータ14bの冷媒流入側ロータ端面における開口面積を大きくしている。
冷媒通路44A1のウエイト設置エリア開口面積44As1と、冷媒通路44A2のウエイト設置エリア開口面積44As2との合計が、合計ウエイト設置エリア開口面積Asとなる。
また、冷媒通路44Bf1のウエイト非設置エリア開口面積44Bfs1と、冷媒通路44Bb1のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs1と、冷媒通路44Bb2のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs2と、冷媒通路44Bb3のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs3との合計が、合計ウエイト非設置エリア開口面積Bsとなる。
そして、合計ウエイト設置エリア開口面積Asの単位角度当たりのウエイト設置エリア単位開口面積(As/X)より、合計ウエイト非設置エリア開口面積Bsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア単位開口面積(Bs/(360°-X))を大きくする。
このように、ウエイト非設置エリア単位開口面積(Bs/(360°-X))をウエイト設置エリア単位開口面積(As/X)より大きくする。そうすることで、ロータ14bとともに回転する冷媒流入側バランスウエイト17aにより生じる圧力差を利用して、冷媒通路44に流入する冷媒量を増大させることができる。
【0022】
また、
図2(c)に示すように、ロータ14bの回転方向の前方に位置するウエイト非設置エリアBを前方ウエイト非設置エリアBfとし、ロータ14bの回転方向の後方に位置するウエイト非設置エリアBを後方ウエイト非設置エリアBbとする。
本実施例では、冷媒通路44Bf1が前方ウエイト非設置エリアBfに位置し、冷媒通路44Bb1、冷媒通路44Bb2、及び冷媒通路44Bb3が後方ウエイト非設置エリアBbに位置している。
【0023】
冷媒通路44Bf1のウエイト非設置エリア開口面積44Bfs1が合計ウエイト非設置エリア前方開口面積Bfsとなり、冷媒通路44Bb1のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs1と、冷媒通路44Bb2のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs2と、冷媒通路44Bb3のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs3との合計が、合計ウエイト非設置エリア後方開口面積Bbsとなる。
そして、合計ウエイト非設置エリア前方開口面積Bfsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア前方単位開口面積より、合計ウエイト非設置エリア後方開口面積Bbsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア後方単位開口面積を大きくする。
このように、ウエイト非設置エリア後方単位開口面積をウエイト非設置エリア前方単位開口面積より大きくする。そうすることで、ロータ14bとともに回転する冷媒流入側バランスウエイト17aにより生じる圧力差を利用して、冷媒通路44に流入する冷媒量を増大させることができる。
【0024】
なお、本実施例では、冷媒通路44Bb1、冷媒通路44Bb2、及び冷媒通路44Bb3を、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、及び冷媒通路44Bf1よりも通路面積を大きくすることで、ロータ14bの冷媒流入側ロータ端面における開口面積を大きくしている。しかしながら、冷媒通路44Bb1、冷媒通路44Bb2、冷媒通路44Bb3、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、及び冷媒通路44Bf1は全て通路面積を同じとし、端板18aに形成する開口の大きさを変えることで、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、及び冷媒通路44Bf1の開口面積を小さくしてもよい。このように、端板18aによって、ウエイト設置エリアAや前方ウエイト非設置エリアBfに位置する冷媒通路44の少なくとも一部を塞ぐことで、冷媒通路44を設けない場合に比較して不釣り合いの影響を少なくできる。
【0025】
また、前方ウエイト非設置エリアBfと後方ウエイト非設置エリアBbとの区分は、冷媒通路44の開口面積を考慮することなく任意の位置とすることができる。
例えば、冷媒通路44Bf1及び冷媒通路44Bb1が前方ウエイト非設置エリアBfに位置し、冷媒通路44Bb2及び冷媒通路44Bb3が後方ウエイト非設置エリアBbに位置していてもよい。この場合には、冷媒通路44Bf1のウエイト非設置エリア開口面積44Bfs1及び冷媒通路44Bb1のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs1が、合計ウエイト非設置エリア前方開口面積Bfsとなる。また、冷媒通路44Bb2のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs2と、冷媒通路44Bb3のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs3との合計が、合計ウエイト非設置エリア後方開口面積Bbsとなる。さらに、合計ウエイト非設置エリア前方開口面積Bfsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア前方単位開口面積より、合計ウエイト非設置エリア後方開口面積Bbsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア後方単位開口面積が大きくなる。
【0026】
図3は、本発明の第2実施例によるロータの構成図である。
図3(a)は冷媒流出側となるロータ端面の上面図、
図3(b)は軸方向側面図、
図3(c)は冷媒流入側となるロータ端面の底面図、
図3(d)はロータの斜視図、
図3(e)は
図3(c)のIII-III断面図である。なお、第1実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
本実施例では、第1実施例における、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、及び冷媒通路44Bf1がない。
すなわち、ウエイト設置エリアA、及び前方ウエイト非設置エリアBfには冷媒通路44を設けず、後方ウエイト非設置エリアBbだけに、冷媒通路44Bb1、冷媒通路44Bb2、及び冷媒通路44Bb3を設けている。
従って、合計ウエイト設置エリア開口面積Asはゼロであるため、ウエイト非設置エリア単位開口面積(Bs/(360°-X))は、ウエイト設置エリア単位開口面積(As/X)より大きくなる。そうすることで、ロータ14bとともに回転する冷媒流入側バランスウエイト17aにより生じる圧力差を利用して、冷媒通路44に流入する冷媒量を増大させることができる。
また、ウエイト非設置エリア前方開口面積はゼロであるため、ウエイト非設置エリア後方単位開口面積は、ウエイト非設置エリア前方単位開口面積より大きくなる。そうすることで、ロータ14bとともに回転する冷媒流入側バランスウエイト17aにより生じる圧力差を利用して、冷媒通路44に流入する冷媒量を増大させることができる。
【0028】
なお、本実施例では、第1の実施例で示す、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、及び冷媒通路44Bf1を設けないものとして説明したが、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、及び冷媒通路44Bf1を端板18aによって閉塞してもよい。
冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、及び冷媒通路44Bf1を設けない場合には、冷媒通路44が非対称配置となり、不釣り合いの影響が大きくなる。しかしながら、端板18aによって開口を閉塞することで、不釣り合いの影響を少なくできる。
【0029】
図4は、本発明の第3実施例によるロータの構成図である。
図4(a)は冷媒流出側となるロータ端面の上面図、
図4(b)は軸方向側面図、
図4(c)は冷媒流入側となるロータ端面の底面図、
図4(d)はロータの斜視図、
図4(e)は
図4(c)のIV-IV断面図である。なお、第1実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
本実施例では、第1実施例における冷媒通路44Bb1を、冷媒通路44Bb1よりも開口面積が小さい冷媒通路44Bf2に変更している。なお、冷媒通路44Bf2は冷媒通路44Bf1と同じ開口面積としている。
本実施例では、冷媒通路44Bf1及び冷媒通路44Bf2が前方ウエイト非設置エリアBfに位置し、冷媒通路44Bb2及び冷媒通路44Bb3が後方ウエイト非設置エリアBbに位置している。
冷媒通路44Bf1のウエイト非設置エリア開口面積44Bfs1、及び冷媒通路44Bf2のウエイト非設置エリア開口面積44Bfs2が合計ウエイト非設置エリア前方開口面積Bfsとなり、冷媒通路44Bb2のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs2と、冷媒通路44Bb3のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs3との合計が、合計ウエイト非設置エリア後方開口面積Bbsとなる。
そして、合計ウエイト非設置エリア前方開口面積Bfsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア前方単位開口面積より、合計ウエイト非設置エリア後方開口面積Bbsの単位角度当たりのウエイト非設置エリア後方単位開口面積を大きくする。
このように、ウエイト非設置エリア後方単位開口面積をウエイト非設置エリア前方単位開口面積より大きくする。そうすることで、ロータ14bとともに回転する冷媒流入側バランスウエイト17aにより生じる圧力差を利用して、冷媒通路44に流入する冷媒量を増大させることができる。
【0031】
なお、本実施例では、冷媒通路44Bb2及び冷媒通路44Bb3を、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、冷媒通路44Bf1、及び冷媒通路44Bf2よりも通路面積を大きくすることで、ロータ14bの冷媒流入側ロータ端面における開口面積を大きくしている。しかしながら、冷媒通路44Bb1、冷媒通路44Bb2、冷媒通路44Bb3、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、及び冷媒通路44Bf1は全て通路面積を同じとし、端板18aに形成する開口の大きさを変えることで、冷媒通路44A1、冷媒通路44A2、冷媒通路44Bf1、及び冷媒通路44Bf2の開口面積を小さくしてもよい。このように、端板18aによって、ウエイト設置エリアAや前方ウエイト非設置エリアBfに位置する冷媒通路44の少なくとも一部を塞ぐことで、冷媒通路44を設けない場合に比較して不釣り合いの影響を少なくできる。
また、本実施例についても、前方ウエイト非設置エリアBfと後方ウエイト非設置エリアBbとの区分は、冷媒通路44の開口面積を考慮することなく任意の位置とすることができる。
【0032】
図5は本発明の各実施例によるロータの冷媒通路を流れる冷媒量及び冷媒流速を示すグラフである。
図5(a)は比較例1によるロータ端面の底面図、
図5(b)は比較例2によるロータ端面の底面図である。比較例2における冷媒通路44の合計開口面積は、比較例1における冷媒通路44の合計開口面積に対して1.94倍としている。
図5(c)は、比較例1、比較例2、第1実施例、第2実施例、及び第3実施例における冷媒通路44を流れる冷媒量の比較を示すグラフである。
【0033】
第1実施例は
図2に示すロータ14b、第2実施例は
図3に示すロータ14b、及び第3実施例は
図4に示すロータ14bである。
比較例2は、比較例1に対して冷媒通路44の合計開口面積を約2倍にしている。このように冷媒通路44の合計開口面積を約2倍にすれば、冷媒流量も約2倍となる。しかしながら、冷媒通路44を拡大すると、ロータ14bの磁路が減少し、モータ特性に悪影響が出る場合がある。
図5(c)に示すように、第1実施例によるロータ14bは比較例1に対して冷媒通路44の合計開口面積が1.46倍であるが、冷媒流量は1.82倍となっている。また、第2実施例によるロータ14bは比較例1に対して冷媒通路44の合計開口面積が0.97倍であるが、冷媒流量は1.66倍となっている。また、第3実施例によるロータ14bは比較例1に対して冷媒通路44の合計開口面積が1.29倍であるが、冷媒流量は1.48倍となっている。すなわち、それぞれの実施例では、冷媒通路44の合計開口面積の拡大比以上に冷媒流量が増加している。従って、モータ特性の悪化を抑制して冷媒流量を増加し、圧縮機10の性能が向上する。
【0034】
以上のように本実施例によれば、ウエイト非設置エリア単位開口面積(Bs/(360°-X))をウエイト設置エリア単位開口面積(As/X)より大きくする。そうすることで、ロータ14bとともに回転する冷媒流入側バランスウエイト17aにより生じる圧力差を利用して、冷媒通路44に流入する冷媒量を増大させることができる。
また本実施例によれば、ウエイト非設置エリア後方単位開口面積をウエイト非設置エリア前方単位開口面積より大きくする。そうすることで、ロータ14bとともに回転する冷媒流入側バランスウエイト17aにより生じる圧力差を利用して、冷媒通路44に流入する冷媒量を増大させることができる。
また本実施例によれば、ウエイト設置エリアAに位置する冷媒通路44A1、44A2のウエイト設置エリア開口面積44As1、44As2より、ウエイト非設置エリアBに位置する冷媒通路44Bb1、44Bb2、44Bb3、44Bf1、44Bf2のウエイト非設置エリア開口面積44Bbs1、44Bbs2、44Bbs3、44Bfs1、44Bfs2を大きくする。そうすることで、ロータ14bに流入する冷媒流量を増加させることができる。
また本実施例によれば、前方ウエイト非設置エリアBfに位置する冷媒通路44のウエイト非設置エリア前方開口面積より、後方ウエイト非設置エリアBbに位置する冷媒通路44のウエイト非設置エリア後方開口面積を大きくする。そうすることで、ロータ14bに流入する冷媒流量を増加させることができる。
なお、本実施例では、圧縮機構部13として1つのピストン13bからなるロータリー圧縮機構を用いて説明したが、2つのピストン13bを有するロータリー圧縮機構でもよく、またスクロール圧縮機構など、他の圧縮機構であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の圧縮機は、温水暖房装置、空気調和装置、給湯器、又は冷凍機などの、冷凍サイクル装置に有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 密閉容器
10 圧縮機
11 吸入管
12 吐出管
13 圧縮機構部
13a シリンダ
13b ピストン
13c 主軸受
13d 副軸受
14 電動機構部
14a ステータ
14b ロータ
15 シャフト
15a 偏心部
16 アキュムレータ
17 バランスウエイト
17a 冷媒流入側バランスウエイト
17b 冷媒流出側バランスウエイト
18a 端板
18b 端板
19 締結リベット
21 凝縮器
22 減圧装置
23 蒸発器
41 ロータコア
42 永久磁石
43 貫通孔
44 冷媒通路
44A1、44A2 冷媒通路
44As1、44As2 ウエイト設置エリア開口面積
44Bb1、44Bb2、44Bb3、44Bf1、44Bf2 冷媒通路
44Bbs1、44Bbs2、44Bbs3、44Bfs1、44Bfs2 ウエイト非設置エリア開口面積
A ウエイト設置エリア
As 合計ウエイト設置エリア開口面積
B ウエイト非設置エリア
Bs 合計ウエイト非設置エリア開口面積
Bb 後方ウエイト非設置エリア
Bf 前方ウエイト非設置エリア
Bfs 合計ウエイト非設置エリア前方開口面積
Bbs 合計ウエイト非設置エリア後方開口面積
X 設置角度