(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】車両内装構造
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20240101AFI20240112BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
(21)【出願番号】P 2019187081
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】植松 良太
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-148493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00-37/06
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに設けられた開口部に取付けられるガーニッシュを有し、該ガーニッシュは、車両正面視で、車両幅方向が長手方向の第1構成部と、車両上下方向が長手方向の第2構成部を有し、前記第1構成部には、電装部品を取付けるための第1開口部が設けられている車両内装構造において、
前記ガーニッシュは、前記第1構成部と前記第2構成部の両方に接続される第3構成部を有
し、
前記第3構成部には、スイッチ操作部が取付けられ、前記第3構成部は、前記スイッチ操作部の車両幅方向の両側に位置し、かつ前記ガーニッシュの車両後方側に配置されたシートへ向かって膨出する膨出部を有し、
前記スイッチ操作部は、前記膨出部の上端部よりも車両下方に位置していることを特徴とする車両内装構造。
【請求項2】
前記第2構成部には、シフトレバーを取付けるための第2開口部が設けられ、ドライブレンジのレバー位置にある前記シフトレバーと前記膨出部とが、車両側面視で重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両内装構造。
【請求項3】
前記膨出部の上面は、平面部を一部に有していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両内装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内装材の取付構造の中には、シフトレバーパネル及び操作パネルが内嵌される開口部が形成された正面パネルをインストルメントパネルに取付け、結合手段によりシフトレバーパネルを操作パネルに結合して隣接配置するようにした構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。このような内装材の取付構造は、シフトレバーパネル及びその周囲の内装材との間に隙間が生じるのを抑制することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の内装材の取付構造においては、周辺部品等との接触対策の構造や正面パネル等の捩れ剛性を確保する構造が設けられていないので、改善の余地があった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、ガーニッシュが第1構成部と第2構成部の両方に接続される第3構成部を有することにより、ガーニッシュの捩れ剛性を向上させることが可能な車両内装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、インストルメントパネルに設けられた開口部に取付けられるガーニッシュを有し、該ガーニッシュは、車両正面視で、車両幅方向が長手方向の第1構成部と、車両上下方向が長手方向の第2構成部を有し、前記第1構成部には、電装部品を取付けるための第1開口部が設けられている車両内装構造において、前記ガーニッシュは、前記第1構成部と前記第2構成部の両方に接続される第3構成部を有し、前記第3構成部には、スイッチ操作部が取付けられ、前記第3構成部は、前記スイッチ操作部の車両幅方向の両側に位置し、かつ前記ガーニッシュの車両後方側に配置されたシートへ向かって膨出する膨出部を有し、前記スイッチ操作部は、前記膨出部の上端部よりも車両下方に位置している。
【発明の効果】
【0007】
上述の如く、本発明に係る車両内装構造は、インストルメントパネルに設けられた開口部に取付けられるガーニッシュを有し、該ガーニッシュは、車両正面視で、車両幅方向が長手方向の第1構成部と、車両上下方向が長手方向の第2構成部を有し、前記第1構成部には、電装部品を取付けるための第1開口部が設けられており、前記ガーニッシュは、前記第1構成部と前記第2構成部の両方に接続される第3構成部を有している。
すなわち、本発明の車両内装構造においては、ガーニッシュが第1構成部、第2構成部及び第3構成部を有し、第3構成部が第1構成部と第2構成部の両方に接続されているので、インストルメントパネルの開口部に取付けられるガーニッシュの捩じれ剛性を向上させることが可能となり、ガーニッシュを取付ける際にガーニッシュが捩じれ難く、ガーニッシュの取付作業性を高めることができる。
また、本発明の車両内装構造では、捩じれ剛性が高い第3構成部に別の電子部品や収納部を設けることが可能になるので、設計の自由度や乗員の快適性の向上に寄与することができ、車両内装の外観品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両内装構造が適用されたインストルメントパネルの全体を車両後方側から見た正面図である。
【
図2】
図1におけるインストルメントパネルの開口部に取付けられるガーニッシュを拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図1におけるインストルメントパネルとフロントシートとの位置関係を示す側面図である。
【
図4】
図1におけるインストルメントパネルの開口部に取付けられたガーニッシュ及びシフトレバーを示す側面図である。
【
図5】
図4におけるガーニッシュの膨出部とスイッチ操作部を示す側面図である。
【
図6】
図4におけるガーニッシュの開口部に設けられる電装部品、シフトレバー、スイッチ類を車両前方側から見た正面図である。
【
図7】
図6において、ガーニッシュのみを車両前方側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1~
図7は本発明の実施形態に係る車両内装構造を示すものである。なお、図において矢印Fr方向は車両前方を示し、矢印U方向は車両上方を示し、矢印X方向は車両幅方向を示している。
【0010】
図1~
図4に示すように、本発明の実施形態の車両内装構造が適用される車両のインストルメントパネル1は、各種の車載機器が搭載される大型樹脂成形部品であり、車室内の車両前方側に設けられ、車両幅方向の全幅にわたって配置されている。そして、インストルメントパネル1は、内部に設けられ、かつ車両幅方向に沿って延びるステアリングサポートメンバ(図示せず)に支持され、該ステアリングサポートメンバを介して車体側部を構成するダッシュサイドパネル(図示せず)に取付けられている。また、インストルメントパネル1の車両幅方向のほぼ中央部分には、後述する電装部品(エアコンディショナー等)、スイッチ類、シフトレバーなどを取付けるための開口部11が設けられており、該開口部11には、内装部品であるガーニッシュ2が
図7に示すような係合爪21などによって取付けられている。
【0011】
本実施形態のガーニッシュ2は、
図1~
図7に示すように、車両正面視で、車両幅方向が長手方向の第1構成部3と、車両上下方向が長手方向の第2構成部4を有しているとともに、これら第1構成部3と第2構成部4の両方に接続される第3構成部5を有しており、第3構成部5が第1構成部3と第2構成部4の両方に接続されることによって、ガーニッシュ2の捩じれ剛性が向上するように構成されている。
すなわち、本実施形態のガーニッシュ2は、第1構成部3、第2構成部4及び第3構成部5という3つの構成部を有する樹脂製の一体成形部品であり、横長の第1構成部3と縦長の第2構成部4とは、車両幅方向に並んで配置され、第3構成部5は、第1構成部3の下部と第2構成部4の側部とで画成される箇所に配置されている。そして、第2構成部4の下半分は、第1構成部3よりも車両下方に位置する長さに形成され、第3構成部5は、第1構成部3の車両幅方向の幅よりも小さく、かつ第2構成部4の下半分の車両上下方向の長さよりも短く形成されている。また、第1構成部3には、電装部品のエアコンパネル(スイッチを含む)6を取付けるための第1開口部31が設けられており、該第1開口部31は、車両正面視で、車両幅方向に長く、かつエアコンパネル6の形状及び大きさに対応した四角形状を有している。
【0012】
本実施形態の第3構成部5には、
図1、
図2及び
図5~
図7に示すように、スイッチ類7を操作するためのスイッチ操作部71が取付けられており、該スイッチ操作部71は、スイッチ類7の前面側(車両後方側)に設けられている。そのため、第3構成部5には、スイッチ操作部71を取付けるための第3開口部51が設けられており、該第3開口部51は、車両正面視で、車両幅方向に長く、かつスイッチ操作部71の形状及び大きさに対応した四角形状を有している。
また、第3構成部5は、
図2~
図5に示すように、スイッチ操作部71の車両幅方向の左右両側に位置し、かつガーニッシュ2の車両後方側に配置されたシート(助手席のフロントシート)8へ向かって膨出する膨出部52を有しており、該膨出部52を設けることによって、第3構成部5自体の剛性やガーニッシュ2の捩れ剛性が向上するように構成されている。しかも、スイッチ操作部71は、膨出部52の上端部52aよりも車両下方に位置しており、
図3の鎖線で示す軌跡Bのように、シート8のシートバック81を車両前方へ向かって倒した際に、シートバック81の側部が膨出部52に最初に接触し、シートバック81がスイッチ操作部71に接触することによるスイッチの誤操作が起こらないようになっている。
【0013】
そして、スイッチ操作部71のスイッチは、トグルスイッチである。その結果、トグルスイッチの場合、シートバック81が回動中心Cを中心にして、車両上方から車両下方へ向かって回動することで、シートバック81の接触によるスイッチの誤作動が起きやす。ただし、通常のプッシュ式のスイッチの場合であっても、シートバック81が倒れた状態で車両前方に移動するとスイッチと接触して誤作動を起こすおそれがあるため、膨出部52は、いずれの場合にも適用可能に構成されている。すなわち、膨出部52は、
図5に示すように、2つのタイプのスイッチの誤作動を防止するため、スイッチ操作部71と車両側面視で重なる位置に設けられているとともに、スイッチ操作部71の後端71aよりも車両後方側に位置するように、車両後方へ向かって膨出する大きさに形成されている。
なお、第3構成部5には、スノーモード、グリップコントロールモード、ヒルディーセントコントロール等の4WD専用スイッチが設けられている。また、2WDの場合には、第3構成部5が、収納ケースとして用いられ、スマートフォン等を収納できるように構成されている。
【0014】
さらに、本実施形態の第2構成部4には、
図1~
図4、
図6及び
図7に示すように、シフトレバー9を取付けるための第2開口部41が設けられており、該第2開口部41は、車両正面視で、車両上下方向に長く、かつシフトレバー9の形状及び大きさに対応した略四角形状を有している。しかも、第2構成部4においてドライブレンジのレバー位置にあるシフトレバー9と、第3構成部5の膨出部52とは、
図3及び
図4に示すように、車両側面視で重なる位置に配置されている。これにより、前突時において乗員の頭部が、最初に膨出部52とシフトノブ91に接触し、比較的に剛性の高い電装部品などに接触しないように構成されている。なお、シフトレバー9は、先端部にシフトノブ91を有している。
【0015】
一方、本実施形態の車両内装構造において、第3構成部5の膨出部52の上面は、
図4及び
図5に示すように、平面部52bを一部に有している。この平面部52bが存在することによって、スイッチ操作部71のスイッチを操作する際に、当該平面部52bが乗員の指置きになり、スイッチの操作性が向上するようになっている。また、膨出部52の平面部52bは、車両上方から来るシート8のシートバック81を受け止める機能を有し、シートバック81が膨出部52の下側へ向かってそれ以上進めなくなり、シートバック81との接触によるスイッチ操作部71のスイッチの誤操作が防げるようになっている。
なお、膨出部52は、車両後方側に位置する後端部52cが車両後方へ突出する湾曲形状を有しており、膨出部52と接触する乗員の保護効果が向上するように構成されている。また、膨出部52の裏側(車両前方側)は、空洞となっており、第3構成部5の膨出部52に衝撃荷重が入力された時に、当該膨出部52が変形するストロークの距離が確保され、衝撃荷重吸収性能の向上が促進されるようになっている。
【0016】
このように、本発明の実施形態に係る車両内装構造は、インストルメントパネル1に設けられた開口部11に取付けられるガーニッシュ2を有している。ガーニッシュ2は、車両正面視で、車両幅方向が長手方向の第1構成部3と、車両上下方向が長手方向の第2構成部4を有しており、第1構成部3には、電装部品を取付けるための第1開口部31が設けられている。そして、ガーニッシュ2は、第1構成部3と第2構成部4の両方に接続される第3構成部5を有している。
したがって、本実施形態の車両内装構造では、ガーニッシュ2が第1構成部3、第2構成部4及び第3構成部5を有し、第3構成部5が第1構成部3と第2構成部4の両方に接続された構造となっているので、インストルメントパネル1の開口部11に取付けられるガーニッシュ2の捩じれ剛性を向上させることができる。これに伴い、本実施形態の車両内装構造では、インストルメントパネル1の開口部11にガーニッシュ2を取付ける際に、ガーニッシュ2が捩じれ難くなるので、ガーニッシュ2の取付作業性を高めることができる。
しかも、本実施形態の車両内装構造では、捩じれ剛性が高い第3構成部5に別の電子部品や、小物を収納する収納部を設けることが可能になるので、設計の自由度や乗員の快適性の向上に寄与することができ、優れた外観品質を有する車両内装構造を提供できる。
【0017】
また、本実施形態の車両内装構造において、第3構成部5には、スイッチ操作部71が取付けられている。そして、第3構成部5は、スイッチ操作部71の車両幅方向の両側に位置し、かつガーニッシュ2の車両後方側に配置されたシート8へ向かって膨出する膨出部52を有している。したがって、本実施形態の車両内装構造では、膨出部52の存在によって第3構成部5の剛性が向上することになるので、それに伴ってガーニッシュ2の捩れ剛性をより一層高めることができる。
それに加えて、本実施形態の車両内装構造では、スイッチ操作部71が膨出部52の上端部52aよりも車両下方に位置しているので、シート8のシートバック81を車両前方へ向かって倒した際に、シートバック81の側部などが膨出部52に最初に接触することになり、シートバック81がスイッチ操作部71に接触することによって起こるスイッチの誤操作を防止でき、高い信頼性を有している。
【0018】
さらに、本実施形態の車両内装構造において、第2構成部4には、シフトレバー9を取付けるための第2開口部41が設けられている。また、ドライブレンジのレバー位置にあるシフトレバー9と膨出部52とは、車両側面視で重なる位置に配置されている。したがって、本実施形態の車両内装構造では、前突時において乗員の頭部が、最初に膨出部52とシフトノブ91に接触することになり、比較的に剛性の高い電装部品には接触しないので、乗員保護の効果を促進することができる。
【0019】
そして、本実施形態の車両内装構造において、第3構成部5の膨出部52の上面は、平面部52bを一部に有しているので、スイッチ操作部71のスイッチを操作する際に、当該平面部52bを乗員の指置きとして用いることが可能となり、スイッチの操作性を向上させることができる。しかも、本実施形態の車両内装構造では、シート8を構成するシートバック81の前倒れ時に、膨出部52の平面部52bが車両上方から来るシートバック81を受け止めるので、シートバック81が膨出部52の下側へそれ以上進めなくなり、シートバック81との接触によるスイッチ操作部71のスイッチの誤操作を効果的に防止することができる。
【0020】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0021】
例えば、既述の実施形態におけるガーニッシュ2は、第1構成部3、第2構成部4及び第3構成部5という3つの構成部を有する樹脂製の一体成形部品であるが、第3構成部5は、一体成形の第1構成部3及び第2構成部4とは別体に形成され、第3構成部品として係合爪などにより第1構成部3及び第2構成部4に取付けるような構造に構成されていても良い。
【符号の説明】
【0022】
1 インストルメントパネル
2 ガーニッシュ
3 第1構成部
4 第2構成部
5 第3構成部
6 エアコンパネル
7 スイッチ類
8 シート
9 シフトレバー
11 開口部
31 第1構成部の第1開口部
41 第2構成部の第2開口部
51 第3構成部の第3開口部
52 膨出部
52a 上端部
52b 平面部
52c 後端部
71 スイッチ操作部
81 シートバック