(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】分電盤及び通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 3/58 20060101AFI20240112BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H04B3/58
H02B1/40 A
(21)【出願番号】P 2020028821
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 憲一
(72)【発明者】
【氏名】水野 洋二
(72)【発明者】
【氏名】大垣 史迅
(72)【発明者】
【氏名】澤田 知行
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004855(JP,A)
【文献】特開平02-050632(JP,A)
【文献】特開2008-206199(JP,A)
【文献】特開2019-165604(JP,A)
【文献】特開2014-007546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/58
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線を用いた電力線搬送通信に利用可能な分電盤であって、
前記電力線搬送通信時の通信信号を送受信し、入力された前記通信信号としての入力信号
から前記入力信号よりも信頼性の高い出力信号を
生成し、生成した前記出力信号を前記通信信号として出力する中継器
と、
主幹ブレーカと、を備え、
前記中継器は、前記主幹ブレーカの二次側に設けられ、かつ分岐ブレーカが設置可能な領域に設置されている、
分電盤。
【請求項2】
前記中継器は、前記入力信号に対して、信号増幅及び波形整形のうち少なくとも一方を行い、前記出力信号を生成する、
請求項1に記載の分電盤。
【請求項3】
前記中継器は、電力の供給に用いられる複数の極のうち少なくとも1つの極に設けられている、
請求項1又は2に記載の分電盤。
【請求項4】
前記主幹ブレーカの二次側において、母線バーを有しており、
前記中継器は、前記母線バーに接続されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の分電盤。
【請求項5】
前記中継器は、前記主幹ブレーカと一体接続されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の分電盤。
【請求項6】
前記中継器は、前記分電盤の一次側と前記分電盤の二次側との間の通信を中継する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の分電盤。
【請求項7】
前記中継器は、前記電力線搬送通信時の前記通信信号を監視しており、前記通信信号の宛先の機器から応答がない場合には、前記機器に前記出力信号を出力する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の分電盤。
【請求項8】
前記中継器は、前記電力線搬送通信時の前記通信信号を監視しており、前記通信信号の宛先に応じて、中継方法を変更する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の分電盤。
【請求項9】
前記中継器は、前記入力信号を復調し、再度変調する信号処理を行う、
請求項1~8のいずれか一項に記載の分電盤。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の分電盤に前記中継器として用いられる、
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に分電盤及び通信装置に関し、より詳細には電力線搬送通信が可能な分電盤及びこれに用いられる通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力線に高周波の信号を重畳して伝送させる通信(電力線搬送通信)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、複数の伝送路の電力線搬送通信を行う場合に、伝送路間の干渉を抑制できる通信システムが記載されている。特許文献1の通信システムは、親機と子機とを備え、親機と子機との間の伝送路で電力線搬送通信を行う。親機と子機とは、信号周波数を通過させる高周波フィルタとしてコンデンサを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力線搬送通信において、より高い信頼性が要求されている。
【0006】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、電力線搬送通信においてより信頼性を高めることができる分電盤及び通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る分電盤は、電力線を用いた電力線搬送通信に利用可能である。前記分電盤は、中継器と、主幹ブレーカと、を備える。前記中継器は、前記電力線搬送通信時の通信信号を送受信する。前記中継器は、入力された前記通信信号としての入力信号から前記入力信号よりも信頼性の高い出力信号を生成し、生成した前記出力信号を前記通信信号として出力する。前記中継器は、前記主幹ブレーカの二次側に設けられ、かつ分岐ブレーカが設置可能な領域に設置されている。
【0008】
本開示の一態様に係る通信装置は、前記分電盤に前記中継器として用いられる通信装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、電力線搬送通信においてより信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る分電盤の構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、同上の分電盤を介した電力線搬送通信を説明する図である。
【
図3】
図3は、同上の分電盤が備える通信装置の構成を説明する図である。
【
図4】
図4は、変形例1に係る分電盤の構成を説明する図である。
【
図5】
図5は、変形例2に係る通信装置の接続形態を説明する図である。
【
図6】
図6は、変形例3に係る分電盤の構成を説明する図である。
【
図7】
図7は、変形例4に係る分電盤の構成を説明する図である。
【
図8】
図8は、変形例5に係る通信装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。以下の実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
(実施形態)
以下、本実施形態に係る分電盤及び当該分電盤に設けられる中継器としての通信装置50について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0013】
(1)概要
本実施形態に係る分電盤1は、電力線を用いた通信である電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)に利用可能に構成されている。電力線搬送通信(PLC)とは、電力を供給する電力線(電源線40)に高周波の信号を重畳して伝送させる通信である。以下、PLCによる通信で伝送される信号をPLC信号という。
【0014】
複数の施設6の各々は、分電盤1を備える。分電盤1は、
図1に示すように、主幹ブレーカ10と、複数の分岐ブレーカ20と、中継器としての通信装置50と、を備える。以下、複数の施設を区別する必要はある場合には、施設6a,6b,6cを記載する。ここで、本実施形態では、各施設6が戸建住宅である場合を例示するが、この例に限らない。施設6は、例えば集合住宅の各住戸、事務所、店舗、工場、及び病院等、分電盤1が設置可能であればよい。
【0015】
主幹ブレーカ10は、電力を供給する系統電源5(商用電源)に、電力の供給に用いられる電源線40を介して接続されている。主幹ブレーカ10は、導電バー21(母線バー)を介して複数の分岐ブレーカ20に接続されている。
【0016】
複数の分岐ブレーカ20は、複数の負荷(機器)とそれぞれ接続されている。複数の分岐ブレーカ20は、主幹ブレーカ10が挿入されている主幹回路を、複数の分岐回路にそれぞれ分岐させる。ここで、主幹回路は、分電盤1の内部において電源線40から各分岐ブレーカ20の電源側の端子までの電路を意味し、分岐回路は、各分岐ブレーカ20の電源側の端子よりも下流側の電路を意味する。一例として、各分岐回路には、負荷(機器)が1つずつ含まれている。負荷は、対応する分岐ブレーカ20を介して、系統電源5から電力を受け取る。
【0017】
本実施形態では、施設6において分電盤1に接続された複数の負荷(機器60)は、電力線搬送通信を用いた信号の送受信を行う。以下、複数の機器60を区別する必要がある場合には、機器61、機器62、機器63と記載する。
【0018】
例えば、
図2に示すように、施設6aの分電盤1に接続された複数の機器61~63のうち1つの機器は、施設6aとは別の施設6bに設けられた機器又はコンセントレータ80とPLCによる通信を行う。ここで、機器61~63はPLCによる通信が可能な機器である。
【0019】
なお、本実施形態において、主幹ブレーカ10の一次側とは、主幹ブレーカ10から系統電源5の間の電路を意味する。主幹ブレーカ10の二次側とは、主幹ブレーカ10から各分岐ブレーカ20の電源側の端子までの電路を意味する。
【0020】
通信装置50は、主幹ブレーカ10の一次側、主幹ブレーカ10の二次側、及び主幹ブレーカ10の一次側と主幹ブレーカ10の二次側との間に設けられる。通信装置50は、PLCによる通信において通信信号(PLC信号)を送受信し、入力された通信信号としての入力信号を、入力信号よりも信頼性の高い出力信号を通信信号として出力する。ここで、信頼性の高い出力信号とは、入力信号よりも信号のレベルが高いこと、及び入力信号よりも信号の歪みが小さいことのうち少なくとも一方を含む信号である。
【0021】
(2)構成
以下の説明では、特に断りがない限り、
図1の上下左右を分電盤1の上下左右と規定し、
図1の紙面に垂直な方向を分電盤1の前後方向(手前が前)と規定する。詳しくは、主幹ブレーカ10と分岐ブレーカ20とが並ぶ方向を左右方向、キャビネット本体1100の底部と主幹ブレーカ10及び分岐ブレーカ20とが並ぶ方向を前後方向と規定する。また、左右方向及び前後方向と直交する方向を上下方向と規定する。
【0022】
分電盤1は、
図1に示すように、キャビネット1000と、主幹ブレーカ10と、複数の分岐ブレーカ20と、通信装置50と、を備えている。
【0023】
キャビネット1000は、前面が開口した箱状のキャビネット本体1100と、キャビネット本体1100の開口を塞ぐ蓋と、を備えている。
図1においては、蓋の図示を省略している。キャビネット1000の内部には、主幹ブレーカ10、複数の分岐ブレーカ20及び通信装置50が収容されている。
【0024】
(2.1)主幹ブレーカ
主幹ブレーカ10は、電源線40を介して系統電源5に接続されている。本実施形態では、系統電源5からの電力供給方式が単相三線方式であって、電源線40は、第1電圧極としての第1の電圧線(L1相)411、第2電圧極としての第2の電圧線(L2相)412、中性極としての中性線(N相)413の3線で構成されている。第1の電圧線411は、電線421,431を含む。第2の電圧線412は、電線422,432を含む。中性線413は、電線423,433を含む。
【0025】
主幹ブレーカ10は、複数(本実施形態では3つ)の一次側端子11と、複数(本実施形態では3つ)の二次側端子とを備えている。本実施形態の分電盤1では配電方式として単相三線式を想定しているので、主幹ブレーカ10の一次側端子11には、系統電源5の単相三線式の引き込み線が電気的に接続される。具体的には、複数の一次側端子11のうち一次側端子111は第1の電圧線(L1相)411と、一次側端子112は第2の電圧線(L2相)412と、一次側端子113は中性線(N相)413と、それぞれ電気的に接続されている。
【0026】
また、主幹ブレーカ10の複数(本実施形態では3つ)の二次側端子は、複数(本実施形態では3つ)の導電バー21とそれぞれ電気的に接続されている。複数(本実施形態では3つ)の導電バー21は、第1電圧極(L1相)の第1導電バー211、第2電圧極(L2相)の第2導電バー212、及び中性極(N相)の第3導電バー213を含む。
【0027】
主幹ブレーカ10の複数の二次側端子のうち1つ目の二次側端子(第1端子)は第1電圧極(L1相)の第1導電バー211に電気的に接続されている。2つ目の二次側端子(第2端子)は第2電圧極(L2相)の第2導電バー212に電気的に接続されている。3つ目の二次側端子(第3端子)は中性極(N相)の第3導電バー213に電気的に接続されている。各導電バー21は、導電部材により左右方向に長い長尺板状に形成されており、キャビネット1000の内部において、上下方向の中央であって主幹ブレーカ10の右側の位置に配置されている。
【0028】
(2.2)分岐ブレーカ
複数の分岐ブレーカ20は、中性極の第3導電バー213の上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、
図1に示すように、中性極の第3導電バー213の上側に、10個の分岐ブレーカ20が左右方向に並ぶように配置されている。また、中性極の第3導電バー213の下側に、10個の分岐ブレーカ20が左右方向に並ぶように配置されている。
【0029】
各分岐ブレーカ20は、一対の一次側端子と、一対の二次側端子とを備えている。分岐ブレーカ20には100V用と200V用がある。100V用の分岐ブレーカ20が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の第1導電バー211及び第2電圧極の第2導電バー212のうちの一方と、中性極の第3導電バー213とにそれぞれ電気的に接続される。200V用の分岐ブレーカ20が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の第1導電バー211と、第2電圧極の第2導電バー212とにそれぞれ電気的に接続される。これにより、各分岐ブレーカ20は、系統電源5から主幹ブレーカ10を介して交流の電圧が供給される。
【0030】
各分岐ブレーカ20は、導電バー21に対して上側または下側からプラグイン接続することで、分岐ブレーカ20の一次側が主幹ブレーカ10の二次側に電気的に接続される。
【0031】
分岐ブレーカ20の二次側端子には、1つ以上の負荷(機器)が電気的に接続される。例えば、分岐ブレーカ20aの二次側端子には機器61が、分岐ブレーカ20bの二次側端子には機器62が、分岐ブレーカ20cの二次側端子には機器63が、それぞれ接続されている。
【0032】
機器61とコンセントレータ80とがPLCによる通信を行う場合、機器61から出力されたPLCによる通信時の信号(PLC信号)は、分岐ブレーカ20a、一対の導電バー21(例えば、第1導電バー211と第3導電バー213との組)及び通信装置50を介して、コンセントレータ80に入力される。コンセントレータ80から出力されたPLC信号は、通信装置50、一対の導電バー21(例えば、第1導電バー211と第3導電バー213との組)及び分岐ブレーカ20aに入力される。分岐ブレーカ20aに入力されたPLC信号は、機器61で受信される。
【0033】
(2.3)通信装置
中継器としての通信装置50は、
図3に示すように、信号処理部501と、接続端子521~523,531~533と、を含む。
【0034】
通信装置50は、PLCによる通信時の通信信号を送受信する。通信装置50は、入力された通信信号としての入力信号を、当該入力信号よりも信頼性の高い出力信号を通信信号として出力する。
【0035】
通信装置50は、主幹ブレーカ10の一次側と主幹ブレーカ10の二次側との間に設けられる。本実施形態では、通信装置50は、主幹ブレーカ10の一次側に設けられている。
【0036】
信号処理部501は、接続端子521~523と電気的に接続されている。接続端子521は電線421に接続される。接続端子522は電線422に接続される。接続端子523は電線423に接続される。ここで、接続端子521は端子台に設けられ、電線421を端子台の接続端子521にねじ止めすることで、接続端子521と電線421とを接続する。または、接続端子521は、速結端子として電線421と接続してもよい。接続端子522は端子台に設けられ、電線422を端子台の接続端子522にねじ止めすることで、接続端子522と電線422とを接続する。または、接続端子522は、速結端子として電線422と接続してもよい。接続端子523は端子台に設けられ、電線423を端子台の接続端子523にねじ止めすることで、接続端子523と電線423とを接続する。または、接続端子523は、速結端子として電線423と接続してもよい。
【0037】
信号処理部501は、接続端子531~533と電気的に接続されている。接続端子531は電線431に接続される。接続端子532は電線432に接続される。接続端子533は電線433に接続される。ここで、接続端子531は端子台に設けられ、電線431を端子台の接続端子531にねじ止めすることで、接続端子531と電線431とを接続する。または、接続端子531は、速結端子として電線431と接続してもよい。接続端子532は端子台に設けられ、電線432を端子台の接続端子532にねじ止めすることで、接続端子532と電線432とを接続する。または、接続端子532は、速結端子として電線432と接続してもよい。接続端子533は端子台に設けられ、電線433を端子台の接続端子533にねじ止めすることで、接続端子533と電線433とを接続する。または、接続端子533は、速結端子として電線433と接続してもよい。
【0038】
本実施形態において、PLCによる通信は、施設6内の機器60と施設6外の機器での通信を想定している。そのため、通信装置50は、伝送中に減衰され、歪んだPLC信号、つまり信頼性が低下したPLC信号を、信頼性の高いPLC信号とする必要がある。
【0039】
本実施形態では、通信装置50の信号処理部501は、
図3に示すように、第1波形整形部551、第1増幅部552、第2増幅部553及び第2波形整形部554を有している。
【0040】
第1波形整形部551は、入力された通信信号(PLC信号)の波形が所定の波形(例えば、正弦波)に近づくように、当該通信信号(PLC信号)の波形を整形して出力する。具体的には、第1波形整形部551は、施設6外から出力された通信信号(PLC信号)を入力信号として受け取る。第1波形整形部551は、受け取ったPLC信号に対して、当該PLC信号の波形が所定の波形に近づくように、当該PLC信号の波形を整形する。
【0041】
第1増幅部552は、例えばローノイズアンプである。第1増幅部552は、第1波形整形部551で波形整形されたPLC信号を信号増幅して、出力信号としての通信信号を生成する。第1増幅部552は、生成した通信信号を出力信号として施設6内の機器60に出力する。
【0042】
第2増幅部553は、例えばパワーアンプである。第2増幅部553は、入力された通信信号(PLC信号)を信号増幅する。具体的には、第2増幅部553は、施設6内の機器(例えば機器61)外から出力された通信信号(PLC信号)を、入力信号として受け取る。第2増幅部553は、受け取ったPLC信号を信号増幅する。
【0043】
第2波形整形部554は、入力された通信信号(PLC信号)の波形が所定の波形(例えば、正弦波)に近づくように、当該通信信号(PLC信号)の波形を整形して出力する。具体的には、第2波形整形部554は、第2増幅部553で信号増幅された通信信号(PLC信号)の波形が所定の波形(例えば、正弦波)に近づくように、当該通信信号(PLC信号)の波形を整形して、出力信号としての通信信号を生成する。第2波形整形部554は、生成した通信信号(整形した通信信号)を出力信号として、施設6外の機器(例えば、他の施設6の機器60、コンセントレータ80)に送信する。
【0044】
(3)利点
以上説明したように、本実施形態の分電盤1は、電力線を用いた通信に利用可能な分電盤である。分電盤1は、中継器(通信装置50)を備える。中継器は、電力線搬送通信時の通信信号を送受信する。中継器は、入力された通信信号としての入力信号を、入力信号よりも信頼性の高い出力信号を通信信号として出力する。
【0045】
より詳細には、中継器(の信号処理部501)は、入力信号に対して、波形整形に係る処理、及び信号増幅に係る処理を施す。
【0046】
この構成により、通信信号が伝送されている間に減衰された場合であっても、信号増幅に係る処理により通信信号を適切なレベルとすることができる。また、通信信号が伝送されている間に波形が変形した場合であっても、波形整形に係る処理により通信信号の波形を適切な波形とすることができる。したがって、電力線搬送通信においてより信頼性を高めることができる。
【0047】
(4)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、変形例について列記する。なお、以下に説明する変形例は、上記実施形態と適宜組み合わせて適用可能である。
【0048】
(4.1)変形例1
上記実施形態では、通信装置50は主幹ブレーカ10の一次側に設ける構成としたが、この構成に限定されない。
【0049】
通信装置50は、主幹ブレーカ10の二次側に設けてもよい。例えば、通信装置50は、主幹ブレーカ10と導電バー21との間に設けてもよい(
図4参照)。この場合、通信装置50は、主幹ブレーカ10の複数(ここでは、3つ)の二次側端子(第1端子、第2端子、第3端子)と、第1導電バー211、第2導電バー212及び第3導電バー213との間に設けられる。
【0050】
通信装置50の接続端子521(
図3参照)が第1端子に電気的に接続される。通信装置50の接続端子531(
図3参照)が第1導電バー211に電気的に接続される(
図4参照)。通信装置50の接続端子522(
図3参照)が第2端子に電気的に接続される。通信装置50の接続端子532(
図3参照)が第2導電バー212に電気的に接続される(
図4参照)。通信装置50の接続端子523(
図3参照)が第3端子に電気的に接続される。通信装置50の接続端子533(
図3参照)が第3導電バー213に電気的に接続される(
図4参照)。
【0051】
本変形例においても、実施形態と同様に、PLCによる通信で伝送される通信信号の信頼性を高めることができる。
【0052】
(4.2)変形例2
上記実施形態において、通信装置50は、電力を供給する電源である系統電源5と電源線40(電線)を介して電気的に接続され、かつ電源線40とは別の電線と接続される送り端子を有してもよい。
【0053】
例えば、通信装置50は、接続端子531,533を送り端子として機能させて、外部装置70とさらに接続してもよい(
図5参照)。この場合、接続端子531は、電源線40の電線431とは異なる電線471を介して外部装置71の第1端子と接続される。接続端子533は、電源線40の電線433とは異なる電線473を介して外部装置71の第2端子と接続される。外部装置71は、例えば、電流センサである。
【0054】
なお、本変形例では、接続端子531,533を送り端子として機能させる構成としたが、この構成に限定されない。接続端子531,532,533のうち2つの接続端子を送り端子として機能させてもよい。
【0055】
または、通信装置50は、接続端子531,532,533とは異なる2つの端子を送り端子として有してもよい。
【0056】
または、通信装置50は、接続端子531,532,533とは異なる1つの端子を送り端子として有し、接続端子531,532,533のうち1つの接続端子を送り端子として機能させてもよい。
【0057】
(4.3)変形例3
図6に示すように、通信装置50を、導電バー21の終端に設けてもよい。ここで、導電バー21の終端とは、導電バー21の両端のうち、主幹ブレーカ10の一次側端子と接続されない端部である。
【0058】
この場合、例えば、本変形例の通信装置50では、接続端子521は第1導電バー211と接続され、接続端子522は第2導電バー212と接続され、接続端子523は第3導電バー213と接続される。なお、接続端子531,532,533は不要である。
【0059】
この場合、本変形例の通信装置50は、施設6外から出力された通信信号(PLC信号)を入力信号として受け取る。本変形例の通信装置50は、受け取った入力信号に対して、第1波形整形部551による波形整形に係る処理、及び第1増幅部552による信号増幅に係る処理を施して、入力信号よりも信頼性の高い出力信号を生成する。通信装置50は、生成した出力信号を施設6内の機器60に出力する。
【0060】
本変形例の通信装置50は、施設6内の機器60から出力された通信信号(PLC信号)を入力信号として受け取る。本変形例の通信装置50は、受け取った入力信号に対して、第2増幅部553による信号増幅に係る処理、及び第2波形整形部554による波形整形に係る処理を施して、入力信号よりも信頼性の高い出力信号を生成する。通信装置50は、生成した出力信号を、施設6外の機器に出力する。
【0061】
通信装置50を、導電バー21の終端に設けることで、他の機器との分岐接続が可能となる。
【0062】
(4.4)変形例4
通信装置50は、分岐ブレーカ20と同様に、導電バー21とプラグイン接続が可能な構成であってもよい。すなわち、通信装置50は、分岐ブレーカ20が設置可能な領域に設置されてもよい。
【0063】
この場合、通信装置50は、分岐ブレーカ20の設置スペースに配置される(
図7参照)。これにより、通信装置50の取り付けが容易になる。また、通信装置50と各分岐ブレーカ20との接続も簡単に行うことができる。
【0064】
ここで、通信装置50の筐体は、分岐ブレーカ20の筐体と同一のデザインとすることが好ましい。これにより、分電盤1内のデザインに統一感を持たせることができる。
【0065】
(4.5)変形例5
通信装置50(の信号処理部501)は、実施形態で説明した構成要素に加えて、監視部555を更に備えてもよい(
図8参照)。
【0066】
監視部555は、通信信号の送信先(宛先)である機器が、通信信号に対する応答を行ったか否かを監視する。
【0067】
本変形例の通信装置50は、入力された通信信号が表すデータを一時的に記憶する。
【0068】
本変形例の通信装置50は、データを一時的に記憶した後、更に別の通信信号が入力されると、入力された別の通信信号が一時的に記憶するデータに対する送信先からの応答に係る通信信号であるか否かを判断する。
【0069】
本変形例の通信装置50は、データを一時的に記憶してから所定時間が経過するまでの間に、一時的に記憶するデータに対する送信先からの応答に係る通信信号が入力されないと判断する場合には、一時的に記憶しているデータに係る通信信号を、当該データの宛先に送信する。
【0070】
通信信号(第1通信信号)の宛先である機器から応答に係る通信信号(第2通信信号)が送信されていない場合には、第1通信信号が宛先である機器で受信されていない可能性がある。そこで、通信装置50が再度第1通信信号を送信することで、第1通信信号が宛先である機器で受信される可能性を高めることができる。
【0071】
なお、通信装置50が再度第1通信信号を送信する場合には、信号処理部501は増幅率をより高くしてもよい。
【0072】
(4.6)変形例6
通信装置50は、通信信号を監視して、通信信号の宛先に応じて中継の方法を変更してもよい。
【0073】
例えば、本変形例の通信装置50は、通信信号の宛先に応じて通信信号の増幅率を変更してもよい。具体的には、本変形例の通信装置50は、通信信号の宛先である機器までの距離、通信信号の送信先である機器の数に応じて、通信信号の増幅率を変更してもよい。通信装置50は、変形例6で記載した監視部555の機能とは異なる機能を有する監視部を有する。本変形例の監視部は、入力された通信信号の内容、例えば通信信号に含まれる通信信号の宛先を監視する。
【0074】
本変形例の通信装置50は、本変形例の監視部で得られた通信信号の宛先を基に、宛先である機器までの距離を特定する。本変形例の通信装置50は、通信信号の宛先である機器までの距離が短い場合には通信信号の増幅率を小さくし、距離が長い場合には通信信号の増幅率を高くする。また、本変形例の通信装置50は、通信信号の宛先である機器の数が少ない場合には、通信信号の増幅率を小さくし、機器の数が多い場合には通信信号の増幅率を高くする。
【0075】
また、同一の通信信号又は互いに異なる通信信号を、施設6内又は施設6外の複数の機器60に出力する場合、本変形例の通信装置50は、宛先の複数の機器60の各々に送信対象の通信信号を送信するタイミングをずらしてもよい。これにより、各通信信号による干渉を回避することができる。
【0076】
(4.7)変形例7
通信装置50は、通信信号を復調して、出力する際に再度変調する機能を有してもよい。これにより、本変形例の通信装置50は、入力された通信信号の内容を解釈することができる。そのため、本変形例を上記変形例5,6に適用することはより有効である。
【0077】
(4.8)変形例8
上記実施形態において通信装置50は、主幹ブレーカ10と一体接続されてもよい。ここで、一体接続とは、2つの装置の各々の端子が直接接続されることである。
【0078】
例えば、主幹ブレーカ10の複数(本実施形態では3つ)の一次側端子11と、通信装置50の接続端子531~533とが、それぞれ電源線40を介することなく一対一に直接接続される。より詳細には、主幹ブレーカ10の一次側端子111は、通信装置50の接続端子531に、電線431を介することなく直接接続される。主幹ブレーカ10の一次側端子112は、通信装置50の接続端子532に、電線432を介することなく直接接続される。主幹ブレーカ10の一次側端子113は、通信装置50の接続端子533に、電線433を介することなく直接接続される。
【0079】
また、通信装置50が、変形例1で示したように、主幹ブレーカ10の二次側に設けられている場合には、主幹ブレーカ10の複数(本実施形態では3つ)の二次側端子と、通信装置50の接続端子521~523とが、それぞれ電線を介することなく一対一に直接接続される。
【0080】
(4.9)変形例9
上記実施形態において、通信装置50は、主幹ブレーカ10とは別体に設けられる構成としたが、この構成に限定されない。
【0081】
通信装置50は、主幹ブレーカ10に内蔵されてもよい。この場合、主幹ブレーカ10の一次側端子111,112,113と、主幹ブレーカ10の複数(ここでは、3つ)の二次側端子との間の経路に通信装置50が設けられる。
【0082】
(4.10)変形例10
上記実施形態では、通信装置50は、第1電圧極(L1相)、第2電圧極(L2相)及び中性極(N相)のそれぞれに通信装置50が接続される構成としたが、この構成に限定されない。
【0083】
通信装置50は、第1電圧極(L1相)及び中性極(N相)の組、第2電圧極(L2相)及びN相の組、並びにL1相及びL2N相の組の少なくとも一組に接続されてもよい。または、第1電圧極、第2電圧極及び中性極のうち1つの極に接続されてもよい。すなわち、通信装置50は、第1電圧極(L1相)、第2電圧極(L2相)及び中性極(N相)のうち少なくとも1つの極に接続される。
【0084】
(4.11)変形例11
上記実施形態において、通信装置50は、PLCによる通信において施設6外から受け取ったPLC信号、及び施設6内から受け取ったPLC信号の双方に対して、信頼性を高める処理(増幅に係る処理、波形整形に係る処理)を施す構成とした。しかしながら、この構成に限定されない。
【0085】
通信装置50は、施設6外から受け取ったPLC信号、及び施設6内から受け取ったPLC信号の一方に対して、信頼性を高める処理を施してもよい。つまり、通信装置50は、施設6外から受け取ったPLC信号、及び施設6内から受け取ったPLC信号のうち少なくとも一方に対して、信頼性を高める処理(信号増幅に係る処理、波形整形に係る処理)を施してもよい。
【0086】
(4.12)変形例12
上記実施形態において、通信装置50は、信号増幅に係る処理及び波形整形に係る処理の双方を行う構成としたが、この構成に限定されない。通信装置50は、信号増幅に係る処理及び波形整形に係る処理のうち一方の処理のみを行ってもよい。すなわち、通信装置50は、信号増幅に係る処理及び波形整形に係る処理のうち少なくとも一方の処理を行う構成であればよい。
【0087】
(4.13)変形例13
上記実施形態において、分電盤1は、電線(例えば電源線40)ごとに、双方向の通信信号(PLC信号)に対して1つの通信装置50を設ける構成としたが、この構成に限定されない。
【0088】
分電盤1は、電線(例えば電源線40)ごとに、通信信号を施設6外から受け取り、施設6内の機器60に出力する通信装置と、通信信号を施設6内の機器60から受け取り、施設6外に送信する通信装置と、を個別に備えてもよい。
【0089】
(4.14)変形例14
上記実施形態において、L1相及びN相の組、L2相及びN相の組、並びにL1相及びL2N相の組の内のいずれかの組から他の組へと通信信号が伝送される場合、フォトカプラが設けられてもよい。
【0090】
この場合、通信装置50の下流側、つまり通信装置50において電気的に接続される2つの接続端子(例えば、接続端子521,531)のうち系統電源5に対して離れている接続端子側にフォトカプラが設けられる。
【0091】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の分電盤(1)は、電力線(例えば電源線40)を用いた電力線搬送通信に利用可能である。分電盤(1)は、中継器(通信装置50)を備える。中継器は、電力線搬送通信時の通信信号を送受信する。中継器は、入力された通信信号としての入力信号を、入力信号よりも信頼性の高い出力信号を通信信号として出力する。
【0092】
この構成によると、電力線搬送通信においてより信頼性を高めることができる。
【0093】
第2の態様の分電盤(1)では、第1の態様において、中継器は、入力信号に対して、信号増幅及び波形整形のうち少なくとも一方を行い、出力信号を生成する。
【0094】
この構成によると、信号増幅及び波形整形のうち少なくとも一方を行うことで、電力線搬送通信においてより信頼性を高めることができる。
【0095】
第3の態様の分電盤(1)では、第1又は第2の態様において、中継器は、電力の供給に用いられる複数の極(例えば、第1電圧極、第2電圧極、中性極)のうち少なくとも1つの極に設けられている。
【0096】
この構成によると、電力線搬送通信に用いる極に応じて中継器を設定することができる。
【0097】
第4の態様の分電盤(1)は、第1~第3のいずれかの態様において、主幹ブレーカ(10)を備える。中継器は、主幹ブレーカ(10)の一次側に設けられている。
【0098】
この構成によると、リミッタスペース等の空きスペースに中継器を配置することが可能となる。
【0099】
第5の態様の分電盤(1)では、第4の態様において、中継器は、電力を供給する電源(例えば、系統電源5)と電線(例えば電源線40)を介して電気的に接続され、かつ当該電線とは別の電線と接続される送り端子(接続端子531~533)を有する。
【0100】
この構成によると、電線の送りが可能となる。つまり、別の機器等にも電力の供給が可能となる。
【0101】
第6の態様の分電盤(1)は、第1~第3のいずれかの態様において、主幹ブレーカ(10)を備える。中継器は、主幹ブレーカ(10)の二次側に設けられている。
【0102】
この構成によると、中継器は、主幹ブレーカ(10)の二次側として、主幹ブレーカ(10)の二次側端子と導電バー(21)との間に配置されることが可能となる。
【0103】
第7の態様の分電盤(1)では、第6の態様において、主幹ブレーカ(10)の二次側において、母線バー(導電バー21)を有している。中継器は、母線バーに接続されている。
【0104】
この構成によると、中継器を主幹ブレーカと母線バーとの間に配置することで省スペース化を図ることができる。
【0105】
第8の態様の分電盤(1)では、第4~第7のいずれかの態様において、中継器は、主幹ブレーカと一体接続されている。
【0106】
この構成によると、中継器を主幹ブレーカ(10)に直接接続するため、中継器と主幹ブレーカ(10)との間の電線は不要となる。
【0107】
第9の態様の分電盤(1)は、第1~第3のいずれかの態様において、主幹ブレーカ(10)を備える。中継器は、主幹ブレーカ(10)に内蔵されている。
【0108】
この構成によると、中継器を主幹ブレーカ(10)に内蔵することで、省スペース化及び施工時の低コスト化を図ることができる。
【0109】
第10の態様の分電盤(1)では、第6の態様において、中継器は、分岐ブレーカ(20)が設置可能な領域に設置されている。
【0110】
この構成によると、分岐ブレーカ(20)が設置可能な領域のうち空きスペースに中継器を配置することが可能となる。
【0111】
第11の態様の分電盤(1)では、第1~第10のいずれかの態様において、中継器は、分電盤(1)の一次側と分電盤(1)の二次側との間の通信を中継する。
【0112】
この構成によると、分電盤(1)が設けられた施設(6)内の機器(60)と施設(6)外とで通信が可能となる。
【0113】
第12の態様の分電盤(1)では、第1~第11のいずれかの態様において、中継器は、電力線搬送通信時の通信信号を監視しており、通信信号の宛先の機器(例えば、機器60)から応答がない場合には、上記機器に出力信号を出力する。
【0114】
この構成によると、通信信号が宛先である機器で受信査定ない場合において、中継器が通信信号を送信することで、通信信号が宛先である機器で受信される可能性を高めることができる。
【0115】
第13の態様の分電盤(1)では、第1~第12のいずれかの態様において、中継器は、電力線搬送通信時の通信信号を監視しており、通信信号の宛先に応じて、中継方法を変更する。
【0116】
この構成によると、通信信号の宛先に応じて中継方法を変更することで、より信頼性が高い通信を行うことができる。
【0117】
第14の態様の分電盤(1)では、第1~第13のいずれかの態様において、中継器は、入力信号を復調し、再度変調する信号処理を行う。
【0118】
この構成によると、入力信号を復調し、再度変調する信号処理を行うことで、より信頼性が高い通信を行うことができる。
【0119】
第15の態様の通信装置(50)は、第1~第14のいずれかの態様の分電盤(1)に上記中継器として用いられる。
【0120】
この構成によると、より信頼性が高い通信を行うことができる。
【符号の説明】
【0121】
1 分電盤
5 系統電源
10 主幹ブレーカ
20,20a,20b,20c 分岐ブレーカ
21 導電バー(母線バー)
40 電源線(電力線)
50 通信装置(中継器)
60,61,62,63 機器
211 第1導電バー(母線バー、第1電圧極)
212 第2導電バー(母線バー、第2電圧極)
213 第3導電バー(母線バー、中性極)
411 第1の電圧線(L1相、第1電圧極)
412 第2の電圧線(L2相、第2電圧極)
413 中性線(N相、中性極)
531,532,533 接続端子(送り端子)