(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】知識モデル構築システム及び知識モデル構築方法
(51)【国際特許分類】
G06N 5/02 20230101AFI20240112BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240112BHJP
【FI】
G06N5/02
G06N20/00 160
(21)【出願番号】P 2019197302
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】592032636
【氏名又は名称】学校法人トヨタ学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 大
(72)【発明者】
【氏名】酒井 隼樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】東 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕
【審査官】牛丸 太希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-147351(JP,A)
【文献】特開2018-190129(JP,A)
【文献】特開2019-57029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 5/022
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の因子と隣接する前記因子を接続するための接続条件とを備えた知識モデルを格納する記憶装置と、
前記記憶装置に接続された制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記因子である基準因子の因子値と、前記因子であって前記基準因子に直接的に接続される接続因子の因子値とを訓練データセットとする機械学習により生成された学習済みモデルであって、複数のアルゴリズムの各々を用いて生成された前記基準因子と前記接続因子との接続に関する複数の前記学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、
生成された複数の前記学習済みモデルのうち、各々の前記学習済みモデルによって得られる前記接続因子の予測因子値が、前記接続因子の前記因子値に対する誤差が最小となる前記学習済みモデルを判定する判定部と、
前記判定部によって判定された前記学習済みモデルを前記知識モデルの前記接続条件として前記知識モデルに記憶する知識モデル記憶部と
、を備
え、
前記学習済みモデル記憶部は、
複数の前記学習済みモデルとして、隣接する前記基準因子と前記接続因子との間に成立する複数の回帰モデルを記憶する、
知識モデル構築システム。
【請求項2】
前記接続条件は、
前記因子の前記因子値を段階的に任意の範囲に区切る区切り構造を有しており、
前記判定部によって判定された前記学習済みモデルによって得られた前記予測因子値に基づいて前記範囲を変更する、請求項
1に記載の知識モデル構築システム。
【請求項3】
一つ以上の因子と隣接する前記因子を接続するための接続条件とを備えた知識モデルを格納する記憶装置と、
前記記憶装置に接続された制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記因子である基準因子の因子値と、前記因子であって前記基準因子に直接的に接続される接続因子の因子値とを訓練データセットとする機械学習により生成された学習済みモデルであって、複数のアルゴリズムの各々を用いて生成された前記基準因子と前記接続因子との接続に関する複数の前記学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、
生成された複数の前記学習済みモデルのうち、各々の前記学習済みモデルによって得られる前記接続因子の予測因子値が、前記接続因子の前記因子値に対する誤差が最小となる前記学習済みモデルを判定する判定部と、
前記判定部によって判定された前記学習済みモデルを前記知識モデルの前記接続条件として前記知識モデルに記憶する知識モデル記憶部と
、を備
え、
前記接続条件は、
前記因子の前記因子値を段階的に任意の範囲に区切る区切り構造を有しており、
前記判定部によって判定された前記学習済みモデルによって得られた前記予測因子値に基づいて前記範囲を変更する、
知識モデル構築システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記基準因子の前記因子値と、前記接続因子の前記因子値とを前記訓練データセットとして取得する訓練データセット取得部と、
取得された前記訓練データセットに基づく機械学習により生成された学習済みモデルであって、複数のアルゴリズムの各々を用いて生成された前記基準因子と前記接続因子との接続に関する複数の前記学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部を備え、
前記学習済みモデル記憶部は、前記学習済みモデル生成部によって生成された複数の前記学習済みモデルを記憶する、請求項1-3のうちの何れか一項に記載の知識モデル構築システム。
【請求項5】
前記学習済みモデル生成部は、
前記知識モデルに新たな前記因子が格納された場合において、前記訓練データセット取得部によって取得された前記基準因子及び前記接続因子に新たな前記因子を加えて、複数の前記学習済みモデルを生成する、請求項4に記載の知識モデル構築システム。
【請求項6】
前記記憶装置に格納された前記知識モデルは複数の外部機器の各々に配置され、且つ、
前記制御装置は複数の前記外部機器の各々及び複数の前記外部機器に配置された前記記憶装置の各々とネットワークを介して接続されており、
前記訓練データセット取得部は、前記ネットワークを介して、複数の前記外部機器の各々から前記訓練データセットを取得し、
前記学習済みモデル生成部は、取得された前記訓練データセットに基づく機械学習により複数の前記学習済みモデルを生成し、
前記知識モデル記憶部は、前記判定部によって判定された前記学習済みモデルを前記知識モデルの前記接続条件とし、且つ、前記接続条件を前記ネットワークを介して前記知識モデルを格納する前記記憶装置に配信して記憶する、請求項4又は5に記載の知識モデル構築システム。
【請求項7】
前記訓練データセット取得部は、取得した前記因子値のうち予め設定された許容範囲に収まる前記因子値を抽出することにより取得し、
前記学習済みモデル記憶部は、抽出した前記因子値を用いて前記学習済みモデル生成部によって生成された複数の前記学習済みモデルを記憶する、請求項4-6のうちの何れか一項に記載の知識モデル構築システム。
【請求項8】
前記訓練データセット取得部は、更に、前記許容範囲に収まる前記因子値うち、予め設定された条件を満たす前記因子値を抽出する、請求項7に記載の知識モデル構築システム。
【請求項9】
前記学習済みモデル生成部は、
複数の前記学習済みモデルとして、隣接する前記基準因子と前記接続因子との間に成立する複数の回帰モデルを生成する、請求項4-8のうちの何れか一項に記載の知識モデル構築システム。
【請求項10】
前記知識モデルは、
機械加工分野に関する技術情報を前記因子とし、且つ、前記因子がネットワーク形態で相互に接続されることによって前記因子の関係性を表すものである、請求項
1-9のうちの何れか一項に記載の知識モデル構築システム。
【請求項11】
前記技術情報は、前記機械加工分野に関するノウハウであり、
前記知識モデルは、前記ノウハウを探索可能且つ更新可能に格納する、請求項
10に記載の知識モデル構築システム。
【請求項12】
前記技術情報は、切削加工に関する前記ノウハウである、請求項
11に記載の知識モデル構築システム。
【請求項13】
コンピュータによって実行される、一つ以上の因子と隣接する前記因子を接続するための接続条件とを備えた知識モデルを構築する知識モデル構築方法であって、
前記因子である基準因子の因子値と、前記因子であって前記基準因子に直接的に接続される接続因子の因子値とを訓練データセットとする機械学習により生成された学習済みモデルであって、複数のアルゴリズムの各々を用いて生成された前記基準因子と前記接続因子との接続に関する複数の前記学習済みモデルを記憶し、
生成された複数の前記学習済みモデルのうち、各々の前記学習済みモデルによって得られる前記接続因子の予測因子値が、前記接続因子の前記因子値に対する誤差が最小となる前記学習済みモデルを判定し、且つ、
判定された前記学習済みモデルを前記知識モデルの前記接続条件として前記知識モデルに記憶
し、
複数の前記学習済みモデルは、隣接する前記基準因子と前記接続因子との間に成立する複数の回帰モデルである、
知識モデル構築方法。
【請求項14】
前記基準因子の前記因子値と、前記接続因子の前記因子値とを前記訓練データセットに基づく機械学習により生成された学習済みモデルであって、複数のアルゴリズムの各々を用いて生成された前記基準因子と前記接続因子との接続に関する複数の前記学習済みモデルを生成し、
生成された複数の前記学習済みモデルを記憶する、請求項
13に記載の知識モデル構築方法。
【請求項15】
前記知識モデルは、
機械加工分野に関する技術情報を前記因子とし、且つ、前記因子がネットワーク形態で相互に接続されることによって前記因子の関係性を表すものである、請求項
13又は14に記載の知識モデル構築方法。
【請求項16】
前記技術情報は、前記機械加工分野に関するノウハウであり、
前記知識モデルは、前記ノウハウを探索可能且つ更新可能に格納する、請求項
15に記載の知識モデル構築方法。
【請求項17】
前記技術情報は、切削加工に関する前記ノウハウである、請求項
16に記載の知識モデル構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、知識モデル構築システム及び知識モデル構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に開示された知識モデル構築システム及び知識モデル構築方法(以下、単に「従来のシステム等」と称呼する。)も知られている。この従来のシステム等は、当該分野の技術情報の用語を知識モデル上の因子として抽出する因子抽出手段と、抽出される因子の関係性を抽出する関係性抽出手段と、抽出される因子の関係性を定型化して因子の相互関係の情報を生成する相互関係情報生成手段と、抽出される因子の関係性及び生成される因子の相互関係の情報に基づいて因子の相互関係の強さを示す因子間の寄与度を算出する因子間寄与度算出手段と、を備えている。
【0003】
又、従来のシステム等は、抽出される因子、抽出される因子の関係性、抽出される因子の相互関係の情報、及び、算出される因子間の寄与度を所定の形式に従って記述し、知識モデルに格納する知識モデル格納手段を備えている。これにより、従来のシステムは、容易に解釈し得る形態で表現された情報として知識モデルを構築できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のシステムでは、熟練者が当該分野の技術体系を表現する上で関係性が認められる因子の間の接続関係を指定すると共に、接続関係が指定された因子の間に接続条件を設定するようになっている。この場合、接続関係や接続条件は、指定や設定を行う熟練者の主観が反映されることによってバラつきが生じる可能性がある。又、熟練者が接続関係を指定したり、接続条件を設定したりする必要があり、煩雑である。
【0006】
本発明は、知識モデルを精度よく且つ容易に構築することができる知識モデル構築システム及び知識モデル構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第一の知識モデル構築システム)
第一の知識モデル構築システムは、1つ以上の因子と隣接する因子を接続するための接続条件とを備えた知識モデルを格納する記憶装置と、記憶装置に接続された制御装置と、を備え、制御装置は、因子である基準因子の因子値と、因子であって基準因子に直接的に接続される接続因子の因子値とを訓練データセットとする機械学習により生成された学習済みモデルであって、複数のアルゴリズムの各々を用いて生成された基準因子と接続因子との接続に関する複数の学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、生成された複数の学習済みモデルのうち、各々の学習済みモデルによって得られる接続因子の予測因子値が、接続因子の因子値に対する誤差が最小となる学習済みモデルを判定する判定部と、判定部によって判定された学習済みモデルを知識モデルの接続条件として知識モデルに記憶する知識モデル記憶部と、を備え、学習済みモデル記憶部は、複数の学習済みモデルとして、隣接する基準因子と接続因子との間に成立する複数の回帰モデルを記憶する。
(第二の知識モデル構築システム)
第二の知識モデル構築システムは、一つ以上の因子と隣接する因子を接続するための接続条件とを備えた知識モデルを格納する記憶装置と、記憶装置に接続された制御装置と、を備え、制御装置は、因子である基準因子の因子値と、因子であって基準因子に直接的に接続される接続因子の因子値とを訓練データセットとする機械学習により生成された学習済みモデルであって、複数のアルゴリズムの各々を用いて生成された基準因子と接続因子との接続に関する複数の学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、生成された複数の学習済みモデルのうち、各々の学習済みモデルによって得られる接続因子の予測因子値が、接続因子の因子値に対する誤差が最小となる学習済みモデルを判定する判定部と、判定部によって判定された学習済みモデルを知識モデルの接続条件として知識モデルに記憶する知識モデル記憶部と、を備え、接続条件は、因子の因子値を段階的に任意の範囲に区切る区切り構造を有しており、判定部によって判定された学習済みモデルによって得られた予測因子値に基づいて範囲を変更する。
【0009】
(第一の知識モデル構築方法)
第一の知識モデル構築方法は、コンピュータによって実行される、1つ以上の因子と隣接する因子を接続するための接続条件とを備えた知識モデルを構築する知識モデル構築方法であって、因子である基準因子の因子値と、因子であって基準因子に直接的に接続される接続因子の因子値とを訓練データセットとする機械学習により生成された学習済みモデルであって、複数のアルゴリズムの各々を用いて生成された基準因子と接続因子との接続に関する複数の学習済みモデルを記憶し、生成された複数の学習済みモデルのうち、各々の学習済みモデルによって得られる接続因子の予測因子値が、接続因子の因子値に対する誤差が最小となる学習済みモデルを判定し、且つ、判定された学習済みモデルを知識モデルの接続条件として知識モデルに記憶し、複数の学習済みモデルは、隣接する基準因子と接続因子との間に成立する複数の回帰モデルである。
【0011】
これらによれば、隣接する因子に関する接続条件を機械学習等を用いることにより設定することができる。これにより、別途、接続条件を設定する必要がなく、極めて容易に且つ簡便に知識モデルを構築することができる。そして、例えば、熟練者毎による因子の間の接続に関するバラつきが生じにくく、より正確な知識モデルを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】知識モデルの構成を説明するための図である。
【
図2】知識モデルにおける因子の相互接続の形態を説明するための図である。
【
図3】知識モデルにおける情報の紐付けを説明するための図である。
【
図4】
図3の接続条件に関する情報の紐付けを説明するための図である。
【
図5】接続条件の一例であってランク/ランク接続を示す図である。
【
図6】接続条件の一例であってランク/レンジ接続を示す図である。
【
図7】第一例に係る知識モデル構築システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】第二例に係る知識モデル構築システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】第三例に係る知識モデル構築システムの構成を示すブロック図である。
【
図10】第三例における因子の接続を説明するための図である。
【
図11】第三例における複数の基準因子の各々の因子値を説明するための図である。
【
図12】第三例における接続因子の因子値を説明するための図である。
【
図13】第三例における接続情報の設定を説明するための図である。
【
図14】機械加工分野(切削加工)に関する知識モデルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.適用の知識モデル)
知識モデルは、技術分野の技術情報に係る知識を所定の形式で記述して格納するものである。即ち、知識モデルは、技術情報を因子とし、因子がネットワーク形態で相互接続されることによって因子の関係性が表現されるものであり、因子の関係性が所定の形式に従って記述される。そして、知識モデルは、因子の関係性を所定の形式に従って記述することにより、技術分野に係る知識、所謂、ノウハウを形式知として更新可能に格納する。ここで、技術分野としては、工学分野を一例と挙げることができ、更には、工学分野に含まれる機械加工分野を挙げることができる。ここで、機械加工分野には、例えば、切削加工や研削加工が含まれる。
【0014】
(2.適用の知識モデル構築システムの概要)
知識モデル構築システムは、記憶装置と、制御装置とを備える。記憶装置は、知識モデル等を記憶するデータベースである。制御装置は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース等を主要構成部品とするコンピュータであり、知識モデルを構築する。尚、記憶装置及び制御装置は、スタンドアロンであっても良いし、ネットワークを介して他のコンピュータ装置と通信して因子等を取得するサーバであっても良い。
【0015】
(3.知識モデルMの詳細)
知識モデルMは、
図1に示すように、技術情報のキーワードとなる技術用語を因子4とし、且つ、因子4をネットワーク形態で相互接続することにより、技術情報の関係性を表現し、ノウハウや知識を形式知として格納するものである。知識モデルMに格納される情報は、体系的に、且つ、汎用的な枠組みの中で、容易に解釈し得る形態で表現される。
【0016】
図2に示すように、処理対象となっている因子4は基準因子4aと呼ばれる。基準因子4aを含む各因子4には、自身の内部情報である因子情報5が紐付けられる。基準因子4aと直接的に接続される因子4は接続因子4bと呼ばれる。各々の因子4の間(例えば、基準因子4a及び接続因子4bの間)は、接続情報6が紐づけられている。接続情報6は、相互接続される2つの因子4(基準因子4a及び接続因子4b)の間の接続関係を示す。そして、接続情報6には接続条件7が紐付けられている。
【0017】
又、特に、基準因子4aと上下関係がある因子4は、
図2に示すように、知識モデルMにおいて上位の結合因子4c(又は下位の結合因子4c)と呼ばれる。基準因子4a及び結合因子4cには、互いの上下関係を示す結合情報8が紐付けられている。又、結合情報8には、
図3に示すように、結合条件9が紐付けられている。
【0018】
知識モデルMにおいては、
図1にて破線により囲んで示すように、隣接する2つの因子4(例えば、基準因子4a及び接続因子4b)が接続情報6によって相互接続されることを基本パターンとする。そして、知識モデルMにおいては、
図1に示すように、技術分野における一定の技術領域を表現するために必要な組み合わせについて基本パターンを繰り返すことにより、因子4のネットワーク形態が形成される。従って、知識モデルMにおいては、因子4をネットワーク形態により表すことにより、ノウハウや知識が形式知化される。
【0019】
次に、
図3を用いて、知識モデルMにおける各情報の中身と情報の紐付けを説明する。因子4は、因子コードCによって識別される。因子4には、因子名称Fn、因子表記タイプFt、因子情報コードCfが保持される。因子4は、因子情報コードCfによって因子情報5に紐付けられる。ここで、因子表記タイプFtは、因子4で扱うデータの表現形式を示すものであり、数値データを表現する数値表記、文字データを表現する文字表記等がある。
【0020】
数値表記は、例えば、実値表記、レンジ表記、ランク表記等を例示することができる。実値表記は、因子4に与えられる実際の値(実値)によって因子4が扱うデータを表現する表記である。レンジ表記は、レンジとして区切られる数値範囲に対応する数値範囲の代表値によって因子4が扱うデータを表現する表記である。ランク表記は、設定されたランク付けに対応するランク値によって因子4が扱うデータを表現する表記である。
【0021】
文字表記は、例えば、名称表記、記号表記等を例示することができる。名称表記は、名称によって因子4が扱うデータを表現する表記である。記号表記は、記号によって因子4が扱うデータを表現する表記である。
【0022】
因子情報5は、因子情報コードCfによって識別される。因子情報5には、実値表記コードCj、レンジ表記コードCh、ランク表記コードCr、名称区分コードCn、記号区分コードCsが保持される。尚、以下の説明においては、因子情報5が、実値表記コードCj、レンジ表記コードCh及びランク表記コードCrを保持しているものとする。
【0023】
又、因子4には、
図3に示すように、因子コードCを介して、技術的に関係性のある因子4と相互接続するときの接続に関する情報である接続情報6が紐付けられる。接続情報6は、接続情報コードCkによって識別される。接続情報6には、基準因子4aの因子コードCaと、接続因子4bの因子コードCbと、接続条件コードCdが保持される。そして、接続情報6は、接続条件コードCdを介して、基準因子4aと接続因子4bとの接続関係を示す接続条件7が紐付けられている。
【0024】
更に、因子4には、因子コードCを通じて上位因子又は下位因子との結合に関する情報である結合情報8が紐付けられている。結合情報8は、結合情報コードCvによって識別される。結合情報8には、基準因子4aの因子コードCaと、結合先である上位因子又は下位因子の因子コードCcと、結合先が上位因子か下位因子かを示す結合方向Dと、結合条件コードCmが保持される。結合情報8は、結合条件コードCmによって結合先の因子4との結合関係を示す結合条件9が紐付けられている。
【0025】
ここで、接続条件7と結合条件9について説明する。接続条件7は、技術体系を表現する上で技術的に相互関係にある因子4間で情報伝達を行うためのものである。具体的には、接続条件7は、基準となる因子4(即ち、基準因子4a)の因子値から接続関係にある接続先の因子4(即ち、接続因子4b)の因子値を決定するための条件として機能する。そして、接続条件7は、結合条件9のような後述する密接な上下関係を定義するものではなく、技術的な相互関係を隣接する因子4の接続条件7と合い交えて表現するものである。従って、基準因子4aの因子値が直接的に接続因子4bに反映されるのではなく、回帰式により、或いは、寄与度等に従った重み付けにより、限定的な形で接続因子4bに反映される。
【0026】
一方、結合条件9は、上下関係(親子関係や主従関係)を持つ因子4間で情報伝達を行うためのものである。具体的には、結合条件9は、基準となる因子4(即ち、基準因子4a)の因子値から上下関係にて結合される因子4(即ち、結合因子4c)の因子値を決定するための条件として機能する。そして、結合条件9は、密接な(例えば、物理的に)上下関係にある基準因子4aと結合因子4cとを結合するものである。このため、結合条件9によって基準因子4aの因子値が概ね直接的に結合因子4cに反映される。上下関係としては、例えば、下位概念因子及び上位概念因子の組み合わせ、構成要素因子及び被構成要素因子の組み合わせ、特性表現因子及び被特性表現因子の組み合わせ等を挙げることができる。
【0027】
図4は、接続条件7に関する情報の紐付けを示す図である。
図4は、接続条件7に紐付けられた更に詳細な下位の接続条件7の一例である。接続条件7は、基本パターン、即ち、隣接して相互接続する2つの因子4で扱うデータの因子表記タイプFtに従って定義される。
【0028】
接続条件7には、
図3及び
図4に示すように、自身の内部情報として因子関係コードCfrと、必要に応じて因子寄与度Fkと、共役接続条件コードCwとが保持される。そして、接続条件7には、更に接続条件コードCdによって下位の接続条件7が紐付けられている。因子関係コードCfrは、基準因子4aと接続因子4bとの関係を表すコードであり、現象・結果や要求・目標等に対応したコードがある。因子寄与度Fkは、例えば、接続因子4bに対する基準因子4aの相互関係の強さを表す寄与度であり、相互接続における因子4間の重み付けを表す。ここで、因子寄与度Fkは、「0」を含むように設定することも可能である。
【0029】
共役接続条件コードCwは、2つ以上の因子4が一対となって1つの因子4と接続する場合の条件である(例えば、
図10を参照)。尚、共役接続条件コードCwに従って接続される2つ以上の因子4に紐づく因子コードCは、特に、「共役因子コード」と呼ばれる。
【0030】
下位の接続条件7としては、
図4に示すように、例えば、論理式接続条件71、算術式接続条件72、レンジ接続条件73、ランク接続条件74、実値接続条件75、記号接続条件76、名称接続条件77等を例示することができる。これら下位の接続条件7には、更に接続条件7の具体的な情報が記述された下位へ繋がる共役接続条件コードCwを含むアドレスコードが保持される。そして、これらのコードを辿っていくことにより、具体的な接続条件7の情報を得ることができる。
【0031】
アドレスコードは、
図4に示すように、共役接続条件コードCwに紐付けされた論理式接続条件71に保持されている論理式コードClや制約条件コードCxを例示することができる。又、共役接続条件コードCwに紐付けされた算術式接続条件72に保持されている登録近似式コードCpを例示することができる。又、下位の接続条件7が複数存在する場合には、論理式接続条件71及び算術式接続条件72に示すように、どの条件を優先して用いるかを示す優先度Pを設定することもできる。
【0032】
登録近似式コードCpは、後述するように生成される回帰モデル、より詳しくは、生成される回帰モデルに該当する関数に紐付けされる。ここで、回帰モデル(関数)は、知識モデルMの外部、例えば、知識モデルMを探索するための探索プログラム内に保存されるようになっている。これにより、回帰モデルを探索する際には、該当する一対の因子4との間に割り当てられた共役接続条件コードCwを辿り、且つ、登録近似式コードCpを参照することにより、知識モデルMの外部から回帰モデルを呼び出す。尚、登録近似式コードCpは、数式であれば、論理式等にも紐付けて登録することも可能である。又、登録近似式コードCpは、共役接続条件コードCwと紐付けされることに限定されず、例えば、因子4の1対1の接続に関する接続条件コードCdに紐付けされることも可能である。
【0033】
又、アドレスコードは、レンジ接続条件73に保持されているレンジ/実値接続コードChj、レンジ/レンジ接続コードChh、レンジ/ランク接続コードChr、レンジ/名称接続コードChn、レンジ/記号接続コードChsを例示することができる。又、アドレスコードは、ランク接続条件74に保持されているランク/実値接続コードCrj、ランク/レンジ接続コードCrh、ランク/ランク接続コードCrr、ランク/名称接続コードCrn、ランク/記号接続コードCrsを例示することができる。
【0034】
又、アドレスコードとして、実値接続条件75に保持されている実値/実値接続コードCjj、実値/レンジ接続コードCjh、実値/ランク接続コードCjr、実値/名称接続コードCjn、実値/記号接続コードCjsを例示することができる。又、アドレスコードとして、記号接続条件76に保持されている記号/実値接続コードCsj、記号/レンジ接続コードCsh、記号/ランク接続コードCsr、記号/名称接続コードCsn、記号/記号接続コードCssを例示することができる。更に、アドレスコードとして、名称接続条件77に保持されている名称/実値接続コードCnj、名称/レンジ接続コードCnh、名称/ランク接続コードCnr、名称/名称接続コードCnn、名称/記号接続コードCnsを例示することができる。
【0035】
尚、結合条件9にも、図示を省略するが、同様の形態で下位の結合条件9が紐付けられる。下位の結合条件9としては、論理式結合条件、算出式結合条件、レンジ結合条件、ランク結合条件、実値結合条件、記号結合条件、名称結合条件等を挙げることができる。結合条件9においても、接続条件7と同様に、結合条件9の具体的な情報が記述された下位へ繋がるアドレスコードを辿っていくことにより、具体的な結合条件9の情報を得ることができる。
【0036】
図5は、知識モデルMに格納される接続条件7の具体例を示している。接続条件7は、「因子A」と「因子B」の2つの因子4を接続するためのものであり、ランク/ランク接続である。尚、ランク/ランク接続以外に、レンジ/ランク接続等、他の接続条件7を同一の因子4の間に重複して定義することも可能である。知識モデルMを探索する際には、それぞれの接続条件7毎に定義された優先順位によって採用される接続条件7が決定される。
【0037】
図5に例示するように、ランク/ランク接続の接続条件7としては、「因子A」のランク値と「因子B」のランク値との対応関係が定義される。そして、この対応関係を参照することによって、「因子A」は基準因子4aであり、「因子A」のランク値は「因子A」という基準因子4aの因子値である。又、「因子B」は接続因子4bとなり、「因子B」のランク値は「因子B」という接続因子4bの因子値となる。尚、各ランク値には、それぞれ、ランク値に対応するランク指標が別途定義されても良い。
【0038】
接続条件7としては、名称/ランク接続、名称/実値接続、名称/レンジ接続等を用いても良い。即ち、数値表記の具体的な形態として、実値表記、レンジ表記、ランク表記がある。名称/実値接続は名称表記の因子値と実値表記の因子値を接続する接続条件7である。又、名称/レンジ接続は名称表記の因子値とレンジ表記の因子値を接続する接続条件7である。ここで、実値表記とは数値で表される度量衡を実際の数値で表記することを意味する。又、レンジ表記とは度量衡の値を段階的に任意の範囲に区切ると共に、区切った範囲をレンジ値で代表して表記することを意味する。
【0039】
図6は、知識モデルMに格納される接続条件7のランク/レンジ接続の例を示している。接続条件7は、「因子C」と「因子D」の2つの因子4を接続するためのものである。ランク/レンジ接続の接続条件7としては、「因子C」のランク値と「因子D」のレンジ値との対応関係が定義される。尚、
図6に示す「レンジ称呼値」は、レンジ値を定める度量衡下限値と度量衡上限値で仕切られた特定範囲の代表値である。
【0040】
そして、この対応関係を参照することによって、「因子C」は基準因子4aであり、「因子C」のランク値は「因子C」という基準因子4aの因子値である。又、「因子D」は接続因子4bとなり、「因子D」のレンジ値は「因子D」という接続因子4bの因子値となる。
【0041】
ここで、上述したように、接続条件7は、下位の接続条件7として、共役接続条件コードCw及び登録近似式コードCpに紐付けされた論理式接続条件71や算術式接続条件72と紐付けられることが可能である。論理式コードClに紐付けられた論理式や登録近似式コードCpに紐付けられた算術式も数値表記の具体的な形態の1つである。特に、算術式によって数値表記は実値表記やレンジ表記、ランク表記よりも因子4の関係性を高精度に表記できる。よって、共役接続条件コードCwに算術式接続条件72より具体的には登録近似式コードCpを紐付けることにより、接続条件7に算術式が加われば、基準因子4aと接続因子4bとの関係性の表現精度が飛躍的に向上する。
【0042】
以上の通り、知識モデルMは、技術情報を因子4とし、因子4がネットワーク形態で相互接続されることにより、技術情報の関係性が表現される。そして、知識モデルMは、技術情報の関係性が所定の形式に従って記述されることにより、ノウハウ又は知識が形式知として格納される。知識モデルMによれば、技術情報の因子4を、接続情報6及び接続条件7等を介してネットワーク形態で相互接続することができ、人の頭脳を模擬した形態でノウハウや知識を定型化された形態の形式知としてデジタル情報により保存できる。
【0043】
(4.第一例の制御装置10の構成の詳細)
次に、
図7を参照しながら、第一例の制御装置10の構成を説明する。制御装置10は、記憶装置2に記憶された知識モデルMを形成する基準因子4aの因子値及び基準因子4aに接続される接続因子4bの因子値を訓練データセットとし、複数のアルゴリズムを用いて機械学習を行う。これにより、制御装置10は、因子4間の相関についての複数の学習済みモデルを生成する。
【0044】
制御装置10は、生成した複数の学習済みモデルのうち、各々の学習済みモデルを用いて算出した接続因子4bの因子値が、接続因子4bの目標因子値に対する誤差が最小となる学習済みモデルを最適として判定する。そして、制御装置10は、最適として判定した学習済みモデルを接続条件7として知識モデルMに格納する。又、制御装置10は、知識モデルMに格納した接続条件7を用いて、新たな基準因子4aと接続因子4bとの関係性を設定して知識モデルMを構築する。このため、
図7に示すように、制御装置10は、学習フェーズを実行可能な学習処理装置11と、推論フェーズを実行可能な知識モデル構築装置12とを備える。
【0045】
学習処理装置11は、訓練データセット取得部111と、訓練データセット記憶部112と、学習済みモデル生成部113と、判定部114とを備える。訓練データセット取得部111は、記憶装置2に記憶されている知識モデルMの全ての因子4の因子値を訓練データセットとして取得する。尚、学習フェーズを実行する際には、訓練データセット取得部111は、知識モデルMの基本パターン即ち隣接した2つの因子4が接続情報6によって相互接続される複数の基準因子4aの因子値及び1つの接続因子4bの因子値を訓練データセットとして取得する。
【0046】
ここで、訓練データセット取得部111は、複数の基準因子4aの因子値及び1つの接続因子4bの因子値を取得する際に、予め設定された許容範囲に収まる因子値を抽出することにより取得する。これにより、取得した因子値のバラつきを抑えることができ、学習済みモデル生成部113の学習精度を向上させることができる。
【0047】
又、訓練データセット取得部111は、許容範囲に収まる因子値を取得する際、予め設定された条件を満たすように、例えば、時間的に連続する因子値については特定のタイミングで因子値を取得することもできる。これにより、訓練データセット取得部111は、学習に有効な因子値を抽出して取得することができ、学習済みモデル生成部113の学習精度を向上させることができる。
【0048】
尚、訓練データセット取得部111は、
図7にて二点鎖線により示すように、複数の外部機器Oの各々から訓練データセットを取得することも可能である。取得された訓練データセットは、訓練データセット記憶部112に記憶される。
【0049】
学習済みモデル生成部113は、訓練データセット記憶部112に記憶された複数の基準因子4aの因子値及び1つの接続因子4bの因子値を用いて機械学習を行う。本例における学習済みモデル生成部113は、例えば、サポートベクタマシン(SVM)、ランダムフォレスト、ディープラーニング等の複数の異なるアルゴリズムを用いて機械学習を行う。
【0050】
具体的に、学習済みモデル生成部113は、複数の異なるアルゴリズムを用いて、例えば、訓練データセット記憶部112に記憶された基準因子4a及び接続因子4bの関係性を抽出して関係性を定型化する。又、学習済みモデル生成部113は、複数の異なるアルゴリズムを用いて、隣接する基準因子4aと接続因子4bとの相互関係の情報を生成する。
【0051】
更に、学習済みモデル生成部113は、複数の異なるアルゴリズムを用いて、基準因子4aと接続因子4bとの関係性、及び、基準因子4aと接続因子4bとの相互関係の情報に基づいて、因子寄与度Fkを算出する。これにより、学習済みモデル生成部113は、基準因子4aと接続因子4bとの接続条件7に関する学習済みモデルを、各々のアルゴリズムに応じて複数生成する。ここで、基準因子4aと接続因子4bとの相互関係の情報や、因子寄与度Fkについては、例えば、熟練者が手動により予め設定することも可能である。
【0052】
尚、本例においては、複数の学習済みモデル生成部113の各々が異なるアルゴリズムにより、各々のアルゴリズムに対応する複数の学習済みモデルを生成する。しかしながら、1つの学習済みモデル生成部113が複数のアルゴリズムを実行して、各々のアルゴリズムを用いて学習済みモデルを生成することも可能である。
【0053】
判定部114は、学習済みモデル生成部113によって生成された複数の学習済みモデルのうち、知識モデルMにおいて最適な学習済みモデル即ち接続条件7を判定する。即ち、判定部114は、生成された学習済みモデルに従い、基準因子4aと接続因子4bとを接続した際の接続因子4bの因子値が、接続因子4bにおける目標因子値(実際の因子値である実値)に対して最も誤差の小さくなる学習済みモデルを最適と判定する。
【0054】
具体的に、判定部114は、例えば、基準因子4a及び接続因子4bが共にランク表記(
図5を参照)である場合、生成された各々の学習済みモデルを用いて接続因子4bのランク値を算出する。そして、判定部114は、接続因子4bのランク値(目標因子値)に対して算出されたランク値の誤差を判定する。これにより、判定部114は、知識モデル構築装置12が接続条件7を設定するために最適な学習済みモデルとして、誤差が最も小さいと判定した学習済みモデル(接続条件7)を特定する。
【0055】
尚、学習処理装置11は、最適な学習済みモデルを生成した後において、新たに未知の因子4が知識モデルMに追加される際には、再度、複数の学習済みモデルを生成し、且つ、最適な学習済みモデルを特定する。具体的に、学習処理装置11の学習済みモデル生成部113は、以前の機械学習に用いた因子4(基準因子4a及び接続因子4b)に対して、新たに追加される因子4(基準因子4a又は接続因子4b)を含めて、上述したように複数の学習済みモデルを生成する。そして、判定部114は、上述したように、複数の学習済みモデルのうちから最適な学習済みモデルを特定する。これにより、知識モデルMは、最適な状態に維持され、その結果、探索された際には正確な結果を提供することができる。
【0056】
知識モデル構築装置12は、学習済みモデル記憶部121と、因子値取得部122と、接続条件設定部123と、知識モデル記憶部124とを主に備える。学習済みモデル記憶部121は、例えば、知識モデルMの外部に設けられ、学習済みモデル生成部113が接続条件7を設定するために生成した学習済みモデルを共役接続条件コードCw及び登録近似式コードCpに紐付けて記憶する。因子値取得部122は、知識モデルMを構築するために新たに入力された因子4を取得する。
【0057】
接続条件設定部123は、因子値取得部122が取得した因子4の因子値と、学習済みモデル記憶部121に記憶された学習済みモデルとに基づいて、新たに入力された因子4に関する接続条件7を設定する。知識モデル記憶部124は、新たに入力された因子4、接続条件7、及び、接続条件7に基づく接続情報6(即ち、基準因子4aの因子コードCa及び接続因子4bの因子コードCb等)を知識モデルMに格納する。
【0058】
尚、記憶装置2が外部機器Oの各々に配置されている場合には、知識モデル記憶部124は、各々の記憶装置2に対して、接続条件設定部123によって設定された接続条件7及び接続情報6を、ネットワークを介して供給(配信)する。これにより、例えば、外部機器Oを利用する未熟作業者は、常に最新の知識モデルMを利用することができる。
【0059】
以上の説明からも理解できるように、第一例の制御装置10を備える知識モデル構築システム1(知識モデル構築方法)によれば、隣接する基準因子4aと接続因子4bとに関する学習済みモデル即ち接続条件7を機械学習により生成することができる。これにより、別途、接続条件7を設定する必要がなく、極めて容易に且つ簡便に知識モデルMを構築することができる。又、因子値に基づいて最適な接続条件7を設定することができる。このため、例えば、熟練者毎による基準因子4a及び接続因子4bの接続に関するバラつきが生じにくく、より正確な知識モデルMを構築することができる。
【0060】
(5.第二例の制御装置20の構成の詳細)
次に、
図8を参照しながら、第二例の制御装置20の構成を説明する。上述したように、第一例においては、制御装置10が複数のアルゴリズムを用いて複数の学習済みモデルを生成し、接続条件7を設定するために最適な学習済みモデルを判定して選択する。第二例においては、制御装置20は、複数のアルゴリズムを用いた機械学習により各々の学習済みモデルを回帰モデルとして生成し、因子4の間を接続して知識モデルMを構築する。
【0061】
即ち、制御装置20は、
図1にて破線により囲んで示すように、互いに隣接する複数の基準因子4a及び各々の基準因子4aに接続される1つの接続因子4bを訓練データセットとする機械学習を行う。これにより、制御装置20は、隣接する基準因子4aと接続因子4bとの相関についての学習済みモデルである回帰モデルを生成する。そして、制御装置20は、生成した回帰モデルを共役接続条件コードCw及び登録近似式コードCpと紐付けして、基準因子4aと接続因子4bとの関係性即ち接続条件7として設定して知識モデルMに記憶する。尚、登録近似式コードCpに紐付けされた回帰モデルは、例えば、知識モデルMの外部に記憶されており、知識モデルMの探索時において共役接続条件コードCw及び登録近似式コードCpを辿ることにより、紐付けされた回帰モデルが取得される。
【0062】
このため、
図8に示すように、第二例における制御装置20は、学習フェーズを実行可能な知識モデル構築装置21と、推論フェーズを実行可能な因子値予測装置22とを備える。知識モデル構築装置21は、訓練データセット取得部211と、訓練データセット記憶部212と、学習済みモデル生成部213と、判定部214と、知識モデル記憶部215とを備える。訓練データセット取得部211は、記憶装置2に記憶されている知識モデルMの全ての因子4の因子値を訓練データセットとして取得する。
【0063】
ここで、第二例においては、訓練データセット取得部211は、接続情報6(接続条件7)の有無に拘わらず、知識モデルMにおいて複数の基準因子4a及び各々の基準因子4aに直接的に隣接する1つの接続因子4bを訓練データセットとして取得する。又、訓練データセット取得部211は、複数の基準因子4aの因子値及び1つの接続因子4bの因子値を取得する際に、予め設定された許容範囲に収まる因子値を抽出することにより取得する。これにより、取得した因子値のバラつきを抑えることができ、学習済みモデル生成部213の学習精度を向上させることができる。
【0064】
又、訓練データセット取得部211は、許容範囲に収まる因子値を取得する際、予め設定された条件を満たすように、例えば、時間的に連続する因子値については特定のタイミングで因子値を取得することもできる。これにより、訓練データセット取得部211は、学習に有効な因子値を抽出して取得することができ、学習済みモデル生成部213の学習精度を向上させることができる。
【0065】
尚、訓練データセット取得部211は、
図8にて二点鎖線により示すように、複数の外部機器Oの各々から訓練データセットを取得することも可能である。取得された訓練データセットは、訓練データセット記憶部212に記憶される。
【0066】
学習済みモデル生成部213は、訓練データセット記憶部212に記憶された複数の基準因子4aの因子値及び1つの接続因子4bの因子値に基づき、紐付けされた各々の因子値を訓練データセットする機械学習を行う。この第二例においても、学習済みモデル生成部213は、複数のアルゴリズムを用いた機械学習により、各々のアルゴリズムに応じた学習済みモデルを生成する。これにより、学習済みモデル生成部213は、複数の基準因子4aの因子値と1つの接続因子4bの因子値とに関する複数の学習済みモデル即ち複数の回帰モデルを生成する。
【0067】
ここで、学習済みモデル生成部213は、回帰モデルを生成するに当たり、基準因子4aと接続因子4bとの間に成立する物理法則に基づいて、回帰モデルを生成することができる。例えば、基準因子4aが温度を因子値とするものであり、接続因子4bが伸びを因子値とするものである場合、学習済みモデル生成部213は、材料物性に関し温度と伸びの間に成立する物理法則に基づいて回帰モデルを生成する。
【0068】
尚、本例においても、複数の学習済みモデル生成部213の各々が異なるアルゴリズムにより、各々のアルゴリズムに対応する複数の学習済みモデルを生成する。しかしながら、1つの学習済みモデル生成部213が複数のアルゴリズムを実行して、各々のアルゴリズムを用いて学習済みモデルを生成することも可能である。
【0069】
判定部214は、学習済みモデル生成部213によって生成された複数の学習済みモデルのうち、知識モデルMにおいて最適な回帰モデルである学習済みモデルを判定する。即ち、判定部214は、生成された学習済みモデルに従って算出される接続因子4bの因子値が、接続因子4bにおける目標因子値(実際の因子値である実値)に対して最も誤差の小さくなる学習済みモデルを最適な回帰モデルと判定する。
【0070】
ここで、学習済みモデル生成部213によって生成され、且つ、判定部214によって判定された最適な回帰モデルは、隣接する基準因子4aと接続因子4b、換言すれば、基本パターン毎に設けられる。そして、判定部214によって判定された最適な回帰モデルは、知識モデル記憶部215に出力される。
【0071】
知識モデル記憶部215は、判定部214によって判定された最適な回帰モデルを互いに隣接する複数の基準因子4aと接続因子4bとの間の接続条件7(より具体的には、共役接続条件コードCwに紐付けされた下位の論理式接続条件71又は算術式接続条件72)とする。そして、知識モデル記憶部215は、接続情報6(即ち基準因子4aの因子コードCa及び接続因子4bの因子コードCb等)と共に接続条件7を知識モデルMに記憶する。
【0072】
尚、記憶装置2が外部機器Oの各々に配置されている場合には、知識モデル記憶部215は、各々の記憶装置2に対して、判定部214によって判定された最適な回帰モデルを有する接続条件7及び接続情報6を、ネットワークを介して供給(配信)する。これにより、例えば、外部機器Oを利用する未熟作業者は、常に最新の知識モデルMを利用することができる。
【0073】
更に、知識モデル構築装置21は、最適な学習済みモデル(回帰モデル)を生成した後において、新たに未知の因子4が知識モデルMに追加される際には、再度、複数の学習済みモデル(回帰モデル)を生成し、且つ、最適な学習済みモデルを特定する。具体的に、知識モデル構築装置21の学習済みモデル生成部213は、以前の機械学習に用いた因子4(基準因子4a及び接続因子4b)に対して、新たに追加される因子4(基準因子4a又は接続因子4b)を含めて、上述したように複数の学習済みモデル(回帰モデル)を生成する。そして、判定部214は、上述したように、複数の学習済みモデルのうちから最適な学習済みモデル(回帰モデル)を特定する。これにより、知識モデルMは、最適な状態に維持され、その結果、探索された際には正確な結果を提供することができる。
【0074】
因子値予測装置22は、学習済みモデル記憶部221と、因子値取得部222と、因子値予測部223と、出力部224とを主に備える。学習済みモデル記憶部221は、例えば、知識モデルMの外部に設けられており、学習済みモデル生成部213が生成した学習済みモデルのうち、判定部214によって最適な回帰モデルと判定された学習済みモデルを記憶する。因子値取得部222は、知識モデルMを利用する際に新たに入力された因子4の因子値を取得する。
【0075】
因子値予測部223は、因子値取得部222が取得した因子4の因子値と、学習済みモデル記憶部221に記憶されていて共役接続条件コードCw及び登録近似式コードCpを辿ることにより取得可能な学習済みモデル(最適な回帰モデル)とに基づいて、予測因子値を出力する。即ち、因子値予測部223は、新たに入力された因子4即ち基準因子4aの因子値から接続因子4b側に対応する予測因子値を出力する。
【0076】
出力部224は、因子値予測部223によって予測された予測因子値を出力する。出力部224は、例えば、未熟作業者が操作するコンピュータ装置の表示器や、ネットワークを介して接続された各種機器(具体的には、複数の切削装置等)に予測因子値を出力する。
【0077】
以上の説明からも理解できるように、第二例の制御装置20を備える知識モデル構築システム1(知識モデル構築方法)によれば、接続条件7を設定することなく、隣接する基準因子4aと接続因子4bとに関する回帰モデルを機械学習により生成することができる。これにより、別途、接続条件7を設定する必要がなく、極めて容易に且つ簡便に知識モデルMを構築することができる。
【0078】
又、因子値に基づいて最適な回帰モデルを決定することにより、接続条件7を設定することができる。このため、例えば、熟練者毎による基準因子4a及び接続因子4bの接続に関するバラつきが生じにくく、より正確な知識モデルMを構築することができる。
【0079】
(6.第三例の制御装置30の構成の詳細)
次に、
図9を参照しながら、第三例の制御装置30の構成を説明する。この第三例においては、例えば、熟練者によって1つ以上の因子4(具体的には、基準因子4a)の因子値と、1つの因子4(具体的には、接続因子4b)の因子値が設定されている場合を想定する。即ち、基準因子4aと接続因子4bとが接続されることは設定されているものの、基準因子4aと接続因子4bとの間の具体的な接続条件7が未だ設定されていない場合を想定する。この場合、制御装置30は、接続因子4bの具体的な因子値が与えられることにより、予め設定された算術式(近似式)を用いて、因子4の間の接続条件7を設定して知識モデルMを構築する。
【0080】
このため、第三例における制御装置30は、
図9に示すように、因子値取得部31と、接続条件設定部32と、知識モデル記憶部33とを備える。因子値取得部31は、知識モデルMを構築する因子4(1つ以上の基準因子4a及び1つの接続因子4b)の因子値を取得する。又、因子値取得部31は、例えば、実験や生産等により得られて、知識モデルMに新たに入力された接続因子4bの実因子値も取得可能である。
【0081】
接続条件設定部32は、後述するように、接続因子4bの実因子値と予め設定された算術式(近似式)とを用いて、因子値取得部31によって取得された1つ以上の基準因子4a及び1つの接続因子4bの間に成立する接続条件7を生成する。具体的に、接続条件設定部32は、1つ以上の基準因子4a及び1つの接続因子4bが接続されるように、各々の基準因子4aが接続因子4bに接続する際の因子寄与度Fk及び基準因子4aの因子値(ランク値)に対応する接続因子4bの因子値(例えば、レンジ値等)を繰り返し計算により算出する。これにより、接続条件設定部32は、1つ以上の基準因子4a及び1つの接続因子4bの間に成立する接続条件7を生成する。知識モデル記憶部33は、接続条件設定部32によって設定された接続条件7を知識モデルMに記憶する。
【0082】
次に、制御装置30による接続条件7の設定(知識モデル構築方法)について具体的に説明する。この具体例においては、
図10に示すように、「因子A」、「因子B」及び「因子C」が基準因子4aであり、「因子D」が接続因子4bであるとする。即ち、この具体例においては、2つ以上の基準因子4a(因子4)が一対になって1つの接続因子4b(因子4)に接続される共役接続の関係を示している。
【0083】
そして、
図10に示すように、「因子A」の因子値(例えば、ランク値)に対応する「因子D」の因子値(例えば、レンジ値)が「a」であり、「因子D」から見た「因子A」の因子寄与度Fkが「p」であるとする。又、「因子B」の因子値(例えば、ランク値)に対応する「因子D」の因子値が「b」(例えば、レンジ値)であり、「因子D」から見た「因子B」の因子寄与度Fkが「q」であるとする。更に、「因子C」の因子値(例えば、ランク値)に対応する「因子D」の因子値(例えば、レンジ値)が「c」であり、「因子D」から見た「因子C」の因子寄与度Fkが「r」であるとする。そして、実験や生産等により得られ、且つ、知識モデルに新たに入力された「因子D」の実因子値が「x」(例えば、レンジ値)であるとする。
【0084】
尚、「因子A」、「因子B」及び「因子C」の各々の因子値(例えば、ランク値)と「因子D」の因子値(レンジ値)との間には、予め、「因子A」、「因子B」及び「因子C」の変化傾向に対する「因子D」の変化傾向が把握(学習)されている。例えば、「因子A」のランク値が大きくなる程「因子D」のレンジ称呼値は大きくなる傾向を有し、「因子B」及び「因子C」のランク値が大きくなる程「因子D」のレンジ称呼値が小さくなる傾向を有する等を挙げることができる。
【0085】
接続条件設定部32は、因子値「a」、「b」、「c」の各々と因子寄与度Fkである「p」、「q」、「r」の各々とを乗算して合算することにより成立する下記式1を用いて、実因子値xを満たす場合の因子値「a」、「b」、「c」と因子寄与度Fkである「p」、「q」、「r」とを繰り返し計算により算出する。
x=a×p+b×q+c×r… ・・・式1
【0086】
尚、前記式1を用いた繰り返し計算を実行する場合、例えば、因子値「a」、「b」、「c」には、論理的に正しい数値範囲(例えば、度量衡下限値及び度量衡上限値)が設定されると良い。これにより、計算に要する時間の短縮が可能になると共に、計算精度を向上させることができる。又、因子寄与度Fkは如何なる値であっても良いが、「1」よりも大きい因子寄与度Fkが設定された場合には、因子寄与度Fkを統計学的に正規化しても良い。即ち、前記式1において、右辺各項の因子寄与度Fkである「p」、「q」、「r」の各々を「(p+q+r)」で除算することにより因子寄与度Fkを正規化することができる。
【0087】
具体的に、
図11に示すように、基準因子4aである「因子A」、「因子B」及び「因子C」の各々について、因子情報5として、ランク値(因子値)が設定されているとする。又、
図12に示すように、接続因子4bである「因子D」について、因子情報5として、レンジ称呼値(因子値)が設定されると共に、度量衡下限値及び度量衡上限値が設定されているとする。そして、実験や生産により「因子D」の実因子値「x」として、例えば、「351,25」が新たに入力されたとする。
【0088】
接続条件設定部32は、前記式における「x」に「351.25」を代入し、因子値「a」、「b」、「c」を
図12のレンジ値に従って順次変化させると共に因子寄与度Fkである「p」、「q」、「r」を順次変化させる。そして、接続条件設定部32は、接続因子4bである「因子D」に設定された度量衡下限値及び度量衡上限値を参照し、「351.25」が成立する場合の因子値「a」、「b」、「c」(レンジ値)と因子寄与度Fkである「p」、「q」、「r」との組み合わせを決定する。
【0089】
これにより、
図13に示すように、接続条件設定部32は、3つの基準因子4aである「因子A」、「因子B」及び「因子C」と、1つの接続因子4bである「因子D」との間における接続条件7を設定する。具体的に、接続条件設定部32は、「351.25」を含む「因子D」のレンジ称呼値「350」に接続する際の接続条件7として、「因子A」、「因子B」及び「因子C」に各々の因子寄与度Fkである「p」、「q」、「r」を「0.25」、「0.50」、「0.25」と設定する。ここで、接続条件設定部32は、「因子D」のレンジ称呼値が「350」の場合、
図13にて梨地により示すように、「因子A」のランク値「0」が接続する接続因子である「因子D」の「55」に「因子A」の因子寄与度Fk「0.25」を用いた「0.25/(0.25+0.5+0.25)」を乗算した値「13.75」を得ることができる。この値「13.75」は、「因子A」の寄与によって定まる「因子D」の実因子値が「351.25」(即ち、レンジ称呼値「350」)であるときの「因子A」の因子値成分である。
【0090】
同様に、接続条件設定部32は、「因子D」のレンジ称呼値が「350」の場合、
図13にて梨地により示すように、「因子B」のランク値「2」が接続する接続因子である「因子D」の「450」に「因子B」の因子寄与度Fk「0.5」を用いた「0.5/(0.25+0.5+0.25)」を乗算した値「225」を得ることができる。この値「225」は、「因子B」の寄与によって定まる「因子D」の実因子値が「351.25」(即ち、レンジ称呼値「350」)であるときの「因子B」の因子値成分である。更に、接続条件設定部32は、「因子D」のレンジ称呼値が「350」の場合、
図13にて梨地により示すように、「因子C」のランク値「2」が接続する接続因子である「因子D」の「450」に「因子B」の因子寄与度Fk「0.25」を用いた「0.25/(0.25+0.5+0.25)」を乗算した値「112.5」を得ることができる。この値「112.5」は、「因子C」の寄与によって定まる「因子D」の実因子値が「351.25」(即ち、レンジ称呼値「350」)であるときの「因子C」の因子値成分である。
【0091】
これにより、前記式1に従い、「因子A」の因子値成分「13.75」と、「因子B」の因子値成分「225」と、「因子C」の因子値成分「112.5」と、を合算すると、「因子D」の実因子値「x」である「351.25」が得られる。従って、接続条件設定部32は、前記式1に従い、「因子D」の実因子値「351.25」を満たすように、「因子A」、「因子B」及び「因子C」と「因子D」との接続条件7を正確に設定することができる。そして、知識モデル記憶部33は、接続条件設定部32によって設定された接続条件7を知識モデルMに記憶する。
【0092】
ところで、例えば、技術分野における熟練者が接続条件7を手動で設定することを想定すると、熟練者はこれまでの経験に基づいて接続条件7を設定する傾向がある。この場合、各々の熟練者の経験に基づく主観が異なるため、接続条件7即ち接続先にバラつきが生じる可能性がある。
【0093】
これに対して、接続条件設定部32は、例えば、前記式1を用いて、客観的に接続先を決定することができる。これにより、接続先のバラつきが生じることを防止することができる。又、知識モデル記憶部33は、接続条件設定部32が設定した接続条件7を知識モデルMに自動的に記憶(格納)することができる。従って、熟練者を含む人間が接続条件7を設定して知識モデルMに記憶する必要がなく、極めて正確に且つ簡単に知識モデルMを構築することができる。
【0094】
(7.その他の具体例)
上述したように、第一例及び第二例においては、学習済みモデルを用いることにより、接続因子4b因子値を算出することができる。又、第三例においては、前記式1を満たすように、接続条件7を設定することができる。ところで、接続因子4bの因子表記タイプFtが、例えば、
図12に示したようなレンジ表記である、換言すれば、接続因子4bが区切り構造を有している場合がある。この場合、通常、区切り構造としては、レンジ称呼値が中央値となるように度量衡下限値と度量衡上限値とが単純に設定される。しかしながら、単純に均等割とした区切り構造を設けた場合には、接続因子4bの因子値が含まれる範囲を正確に表せない可能性がある。
【0095】
これに対して、上述した第一例及び第二例においては、学習済みモデル(回帰モデル)を用いて算出された(予測された)接続因子4bの因子値に基づいて、区切り構造を即ち度量衡下限値と度量衡上限値を適宜変更することが可能である。例えば、制御装置10,20は、一つの接続因子4bについて複数回に亘って因子値を算出した場合、算出した因子値の統計的な偏りを考慮することにより、レンジ表記の度量衡下限値及び度量衡上限値を変更することができる。又、第三例においては、接続因子4bの実因子値に応じて、レンジ表記の度量衡下限値及び度量衡上限値を変更することができる。
【0096】
これにより、基準因子4aと接続因子4bとの接続に関する精度を向上させることができる。又、制御装置10,20がレンジ表記における度量衡下限値及び度量衡上限値を変更することにより、例えば、熟練者が変更作業を行う必要がない。このため、知識モデルMのメンテナンスを簡略化することができる。
【0097】
(8.知識モデルMの具体例と利用について)
機械加工分野として、例えば、切削加工分野における熟練者は、切削加工機を用いて工作物を切削加工する場合、これまでの経験やノウハウに基づく加工条件を切削加工機に設定する。具体的に、熟練者は、被削材諸元(被削材熱特性や、被削材硬、被削材伸び等)又は加工要件(高品質化や、高能率化、工具長寿命化等)に対応して、種々の条件を設定する。
【0098】
種々の条件としては、熟練者は、工具に要求される工具要求性能として要求工具耐熱性、要求工具刃先強度、要求工具耐凝着成、要求推定面粗さ等、或いは、工具緒言として工具コーティングの有無、バイトすくい角、バイト逃げ角、バイトR等を挙げることができる。そして、熟練者は、被削材諸元、加工要件、工具要求性能、工具緒言を勘案した結果として、加工条件として切削速度、回転送り、軸切込み等を切削加工装置に設定する。
【0099】
このように、熟練者が被削材諸元、加工要件、工具要求性能、工具緒言及び加工条件を切削加工装置に設定すると、これら各項目が因子4となり、制御装置10又は制御装置20に対して出力される。これにより、制御装置10又は制御装置20は、上述したように、因子値取得部122又は因子値取得部222が出力された因子4の因子値を取得し、基準因子4aと接続因子4bとの関係性を表す知識モデルMを構築する。これにより、例えば、
図12に示すように、機械加工分野(特に、切削加工分野)におけるノウハウを表現した知識モデルM1が構築される。
【0100】
一方、未熟作業者は、例えば、切削加工を行う際、切削加工に適した加工条件を知りたい場合がある。この場合、未熟作業者は、熟練者のノウハウが表現された知識モデルM1を利用して適切な加工条件を得ることができる。即ち、未熟作業者は、知識モデルM1を探索可能な図示省略のコンピュータ装置を利用して、入力因子としての初期条件を入力すると共に、出力因子としての加工条件を要求する。
【0101】
ここで、初期条件は、未熟作業者により入力されるものである。具体的に、初期条件は、
図14に示すように、例えば、工作物を形成する被削材諸元(被削材熱特性、被削材硬度、被削材伸び)及び工作物の加工要件(高品位化、高能率化、工具長寿命化)等、文字、数値及び記号を含む所定の形式で記述された技術情報である。又、加工条件は、
図14に示すように、未熟作業者が入力した初期条件を満たすことが可能な条件であり、例えば、回転送り等の熟練者のノウハウが反映されたものである。
【0102】
コンピュータ装置においては、接続情報6及び接続条件7を辿りながら知識モデルM1を探索することにより、未熟作業者が要求する加工条件を提供する。ここで、提供される加工条件は、上述したように、熟練者の経験やノウハウが反映されたものである。従って、未熟作業者であっても、提供された加工条件を用いることにより、熟練者と同様に切削加工を行うことが可能となる。即ち、未熟作業者は、熟練者から直接ノウハウを伝承することに代えて、デジタル情報とされたノウハウを常に利用することが可能となる。
【0103】
尚、知識モデルM1が構築されている場合、未熟作業者が要求に応じて、提供された加工条件がどのように設定されたのかという考え方をも提供することも可能である。例えば、コンピュータ装置の表示画面に
図14に示す知識モデルM1を表示することができる。これにより、入力因子と出力因子との間における経路過程である複数の因子4(
図14において太い破線により示す)とこれら複数の因子4の繋がり(関係性)である経路探索(
図14において太実線により示す)を提示(所謂、見える化)することができる。これにより、未熟作業者は、所望の状態となる切削加工を実現するための加工条件を設定する際に、検討すべき因子及び因子間の繋がり(関係性)を容易に習得することができる。
【0104】
そして、未熟作業者に提示される経路過程及び繋がりは、熟練者によって入力されたノウハウに基づくものである。このため、未熟作業者は、知識モデルM1を利用して、検討すべき因子4及び因子4間の繋がり(関係性)を習得することができる。これにより、未熟作業者は、熟練者の経験やノウハウを未熟作業者に伝承することが可能となる。
【符号の説明】
【0105】
1…知識モデル構築システム、2…記憶装置、4…因子、4a…基準因子、4b…接続因子、5…因子情報、6…接続情報、7…接続条件、71…論理式接続条件、72…算術式接続条件、Fk…因子寄与度、10…制御装置、11…学習処理装置、111…訓練データセット取得部、112…訓練データセット記憶部、113…学習済みモデル生成部、114…判定部、12…知識モデル構築装置、121…学習済みモデル記憶部、122…因子値取得部、123…接続条件設定部、124…知識モデル記憶部、20…制御装置、21…知識モデル構築装置、211…訓練データセット取得部、212…訓練データセット記憶部、213…学習済みモデル生成部、214…判定部、215…知識モデル記憶部、22…因子値予測装置、221…学習済みモデル記憶部、222…因子値取得部、223…因子値予測部、224…出力部、30…制御装置、31…因子値取得部、32…接続条件設定部、33…知識モデル記憶部、M,M1…知識モデル、O…外部機器