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  • 特許-固体電解質材料、および、電池 図1
  • 特許-固体電解質材料、および、電池 図2
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  • 特許-固体電解質材料、および、電池 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】固体電解質材料、および、電池
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20240112BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240112BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240112BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240112BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240112BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240112BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240112BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0562
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019563934
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2018041895
(87)【国際公開番号】W WO2019135319
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-07-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018000424
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章裕
(72)【発明者】
【氏名】浅野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】境田 真志
(72)【発明者】
【氏名】西尾 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晃暢
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真也
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】棚田 一也
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/135315(WO,A1)
【文献】特許第6934626(JP,B2)
【文献】BOHNSACK Andreas et al.,Ternary Chlorides of the Rare-Earth Elements with Lithium,Li3MCl6(M=Tb-Lu,Y,Sc):Synthesis,Crystal,Structures,and Ionic Motion,Journal of Inorganic and General Chemistry,1997年,Vol.623,pp.1067-1073
【文献】BOHNSACK Andreas et al.,The Bromides Li3MBr6(M=Sm-Lu,Y):Synthesis,Crystal Structure,and Ionic Mobility,Journal of Inorganic and General Chemistry,1997年,Vol.623,pp.1352-1356
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の組成式(1)により表され、
Li 6-3d・・・式(1)
ここで、Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される二種以上の元素であり、
0<d<2、(但し、d=1を除く)を満たす、固体電解質材料。
【請求項2】
0.3≦d≦1.8、(但し、d=1を除く)を満たす、請求項1に記載の固体電解質材料。
【請求項3】
0.5≦d≦1.5、(但し、d=1を除く)を満たす、請求項2に記載の固体電解質材料。
【請求項4】
0.9≦d≦1.2、(但し、d=1を除く)を満たす、請求項3に記載の固体電解質材料。
【請求項5】
前記Xは、BrとClを含む、請求項1から4のいずれかに記載の固体電解質材料。
【請求項6】
下記の組成式(2)により表され、
Li 6-3dBr 6-xCl ・・・式(2)
1≦x≦5、を満たす、請求項5に記載の固体電解質材料。
【請求項7】
前記Xは、BrとIを含む、請求項1から4のいずれかに記載の固体電解質材料。
【請求項8】
下記の組成式(3)により表され、
Li 6-3dBr 6-x・・・式(3)
1≦x≦5、を満たす、請求項7に記載の固体電解質材料。
【請求項9】
下記の組成式(4)により表され、
Li 6-3dCl Br ・・・式(4)
ここで、l+m+n=6、を満たす、請求項1から4のいずれかに記載の固体電解質材料。
【請求項10】
0.5<l<5、
0.5<m<5、および
0.5<n<5、を満たす、請求項9に記載の固体電解質材料。
【請求項11】
2≦l≦3、
2≦m≦3、および
1≦n≦2、を満たす、請求項10に記載の固体電解質材料。
【請求項12】
l=2、
m=2、および
n=2、を満たす、請求項11に記載の固体電解質材料。
【請求項13】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に設けられる電解質層と、を備え、
前記正極と前記負極と前記電解質層とのうちの少なくとも1つは、請求項1から12のいずれかに記載の固体電解質材料を含む、電池。
【請求項14】
前記正極は、正極活物質の粒子と、
前記粒子の少なくとも一部を被覆する酸化物と、
を含む、請求項13に記載の電池。
【請求項15】
前記正極活物質は、Li(NiCoAl)O である、請求項14に記載の電池。
【請求項16】
前記酸化物は、LiNbO である、請求項14に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質材料、および、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、硫化物固体電解質を用いた全固体電池が開示されている。
【0003】
特許文献2には、インジウムを含むハロゲン化物を固体電解質として用いた全固体電池が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、LiYBrが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-353309号公報
【文献】特開2006-244734号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Z. anorg. allg. Chem. 623 (1997) 1352.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術においては、高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一様態における固体電解質材料は、下記の組成式(1)により表され、Li6-3d・・・式(1)ここで、Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される二種以上の元素であり、0<d<2、を満たす、固体電解質材料。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態2における電池の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、イオン伝導度の評価方法を示す模式図である。
図3図3は、固体電解質のイオン伝導度の温度依存性を示すグラフである。
図4図4は、初期放電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0012】
(実施の形態1)
実施の形態1における固体電解質材料は、下記の組成式(1)により表される固体電解質材料である。Li6-3d・・・式(1)
ここで、Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される二種以上の元素である。
【0013】
さらに、0<d<2、を満たす。
【0014】
実施の形態1記載の固体電解質材料の結晶構造は、LiX(Xは、Cl、BrおよびIからなる群より選択される二種以上の元素である)を母構造とする。前記母構造のリチウムカチオン(Li)とは異なる価数を有するイットリウムカチオン(Y3+)を結晶全体の電気的中性を満たす様にドープすることによって、結晶構造内には空孔が生じる。生じた空孔を経由して、Liイオンは結晶内を伝導することが可能となる。結晶構造の対称性は、結晶構造内のLi、Y、空孔の幾何的な元素配置またはアニオンのイオン半径とカチオンのイオン半径とのバランスで、前記母構造から変化する。空孔の多さは、dの値によって変化する。例えば、d=1では、平均的に3個のLiイオンに対して2個の空孔が存在することになる。
【0015】
以上の構成によれば、高いLiイオン伝導度を有するハロゲン化物固体電解質材料を実現できる。また、電池の想定動作温度域(例えば、-30℃から80℃の範囲)において、構造が安定である固体電解質材料を実現できる。すなわち、実施の形態1の固体電解質材料は、相転移温度が電池の動作温度域に存在する構成(例えば、特許文献2の構成)ではない。これにより、温度変化がある環境においても、電池の動作温度域で相転移が生じずに、高いイオン伝導度を安定的に維持できる。
【0016】
また、以上の構成によれば、1×10-4S/cm以上の高いLiイオン伝導度を示す固体電解質が実現可能となり、充放電特性に優れた全固体二次電池が実現可能となる。更に、組成を調整することによって7×10-4S/cmを超えるLiイオン伝導度が可能となり、より急速な充放電が可能な全固体二次電池が実現可能となる。更には、より限定的な組成領域おいて10×10-4S/cm以上の高いLiイオン伝導度が実現可能となり、より高性能な全固体二次電池が実現可能となる。
【0017】
また、実施の形態1の固体電解質材料を用いることで、硫黄を含まない全固体二次電池を実現することができる。すなわち、実施の形態1の固体電解質材料は、大気に曝露された際に硫化水素が発生する構成(例えば、特許文献1の構成)ではない。このため、硫化水素の発生が無く、安全性に優れた全固体二次電池を実現することができる。
【0018】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、0.3≦d≦1.8、を満たしてもよい。
【0019】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0020】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、0.5≦d≦1.5、を満たしてもよい。
【0021】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0022】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、0.9≦d≦1.2、を満たしてもよい。
【0023】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0024】
なお、実施の形態1における固体電解質材料においては、Xは、BrとClを含んでもよい。
【0025】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0026】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、下記の組成式(2)により表されてもよい。Li6-3dBr6-xCl・・・式(2)
このとき、組成式(2)において、1≦x≦5、が満たされてもよい。
【0027】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0028】
なお、実施の形態1における固体電解質材料においては、Xは、BrとIを含んでもよい。
【0029】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0030】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、下記の組成式(3)により表されてもよい。Li6-3dBr6-x・・・式(3)
このとき、組成式(3)において、1≦x≦5、が満たされてもよい。
【0031】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0032】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、下記の組成式(4)により表されてもよい。Li6-3dClBr・・・式(4)
このとき、組成式(4)において、l+m+n=6、が満たされてもよい。
【0033】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0034】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、組成式(4)において、0.5<l<5、0.5<m<5、および0.5<n<5、を満たしてもよい。
【0035】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0036】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、組成式(4)において、2≦l≦3、2≦m≦3、および1≦n≦2、を満たしてもよい。
【0037】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0038】
なお、実施の形態1における固体電解質材料は、組成式(4)において、l=2、m=2、およびn=2、を満たしてもよい。
【0039】
以上の構成によれば、より高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を実現できる。
【0040】
実施の形態1における固体電解質材料の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、針状、球状、楕円球状など、であってもよい。例えば、実施の形態1における固体電解質材料は、粒子であってもよい。また、実施の形態1における固体電解質材料は、複数の粒子を積層した後、加圧によりペレット状もしくは板状に成形してもよい。また、実施の形態1における固体電解質材料は結晶相を含むものであってもよいし、非晶質相を含むものであってもよい。
【0041】
例えば、実施の形態1における固体電解質材料の形状が粒子状(例えば、球状)の場合、メジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。
【0042】
また、実施の形態1においては、メジアン径は0.5μm以上かつ10μm以下であってもよい。
【0043】
以上の構成によれば、イオン伝導性をより高めることができる。また、実施の形態1における固体電解質材料と活物質などとのより良好な分散状態を形成できる。
【0044】
また、実施の形態1においては、固体電解質材料は、活物質のメジアン径より小さくてもよい。
【0045】
以上の構成によれば、実施の形態1における固体電解質材料と活物質などとのより良好な分散状態を形成できる。
【0046】
<固体電解質材料の製造方法>
実施の形態1における固体電解質材料は、例えば、下記の方法により、製造されうる。
【0047】
目的とする組成の配合比となるような二元系ハロゲン化物の原料粉を用意する。例えば、LiYBrClを作製する場合には、LiBrとYClを、3:1のモル比で用意する。原料については特に限定されず、たとえば前述の原料以外にLiCl、LiI、YBr、YI等を使用してもよい。このとき、原料粉の種類を選択することで、組成式(1)におけるXを決定することができる。また、原料とモル比を調整することで、上述の値「x」、「l」、「m」、「n」を調整できる。原料粉をよく混合した後、メカノケミカルミリングの方法を用いて原料粉同士を混合・粉砕・反応させる。これに代えて、原料粉をよく混合した後、真空中、もしくはアルゴン・窒素雰囲気のような不活性雰囲気で焼結してもよい。
【0048】
これにより、前述したような結晶相を含む固体電解質材料が得られる。
【0049】
なお、固体電解質材料における結晶相の構成(すなわち、結晶構造)は、原料粉どうしの反応方法および反応条件の調整により、決定することができる。
【0050】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2が説明される。上述の実施の形態1と重複する説明は、適宜、省略される。
【0051】
実施の形態2における電池は、上述の実施の形態1で説明された固体電解質材料を用いて構成される。
【0052】
実施の形態2における電池は、正極と、負極と、電解質層と、を備える。
【0053】
電解質層は、正極と負極との間に設けられる層である。
【0054】
正極と電解質層と負極とのうちの少なくとも1つは、実施の形態1における固体電解質材料を含む。
【0055】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を向上させることができる。
【0056】
以下に、実施の形態2における電池の具体例が、説明される。
【0057】
図1は、実施の形態2における電池1000の概略構成を示す断面図である。
【0058】
実施の形態2における電池1000は、正極201と、負極203と、電解質層202とを備える。
【0059】
正極201は、正極活物質粒子204と固体電解質粒子100とを含む。
【0060】
電解質層202は、正極201と負極203との間に配置される。
【0061】
電解質層202は、電解質材料(例えば、固体電解質材料)を含む。
【0062】
負極203は、負極活物質粒子205と固体電解質粒子100とを含む。
【0063】
固体電解質粒子100は、実施の形態1における固体電解質材料からなる粒子、または、実施の形態1における固体電解質材料を主たる成分として含む粒子である。
【0064】
正極201は、金属イオン(例えば、Liイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。正極201は、例えば、正極活物質(例えば、正極活物質粒子204)を含む。
【0065】
正極活物質には、例えば、Li含有遷移金属酸化物(例えば、Li(NiCoAl)O、LiCoO、など)、遷移金属フッ化物、ポリアニオン材料、フッ素化ポリアニオン材料、遷移金属硫化物、遷移金属オキシフッ化物、遷移金属オキシ硫化物、遷移金属オキシ窒化物、など、が用いられうる。
【0066】
正極活物質はより高性能な電池動作を行うために、正極活物質とは異なる酸化物等によって表面の一部またはすべてをコートされていてもよい。代表的なコート材料としては、LiNbO等が考えられる。電池動作を行えれば表面コート材料はLiNbOに限定されず、またそのコート方法も限定されない。典型的にはコート材料の厚みは1~100nm程度が高性能な電池の実現に望ましい。コート材料としては、例えば、LiNbOなどのLi-Nb-O化合物、LiBO、LiBOなどのLi-B-O化合物、LiAlOなどのLi-Al-O化合物、LiSiOなどのLi-Si-O化合物、LiSO、LiTi12などのLi-Ti-O化合物、LiZrOなどのLi-Zr-O化合物、LiMoOなどのLi-Mo-O化合物、LiVなどのLi-V-O化合物、LiWOなどのLi-W-O化合物などが用いられうる。
【0067】
正極活物質粒子204のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。正極活物質粒子204のメジアン径が0.1μm以上の場合、正極において、正極活物質粒子204とハロゲン化物固体電解質材料とが、良好な分散状態を形成し得る。この結果、電池の充放電特性が向上する。また、正極活物質粒子204のメジアン径が100μm以下の場合、正極活物質粒子204内のLi拡散が速くなる。このため、電池が高出力で動作し得る。
【0068】
正極活物質粒子204のメジアン径は、ハロゲン化物固体電解質材料のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、正極活物質粒子204とハロゲン化物固体電解質材料との良好な分散状態を形成できる。
【0069】
正極201に含まれる、正極活物質粒子204とハロゲン化物固体電解質材料の体積比率「v:100-v」について、30≦v≦95であってもよい。30≦vの場合、十分な電池のエネルギー密度を確保し得る。また、v≦95では、高出力での動作を実現し得る。
【0070】
正極201の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。なお、正極の厚みが10μm以上の場合には、十分な電池のエネルギー密度を確保し得る。なお、正極の厚みが500μm以下の場合には、高出力での動作を実現し得る。
【0071】
電解質層202は、電解質材料を含む層である。当該電解質材料は、例えば、固体電解質材料である。すなわち、電解質層202は、固体電解質層であってもよい。
【0072】
なお、固体電解質層は、上述の実施の形態1における固体電解質材料を、主成分として、含んでもよい。すなわち、固体電解質層は、上述の実施の形態1における固体電解質材料を、例えば、固体電解質層の全体に対する重量割合で50%以上(すなわち、50重量%以上)、含んでもよい。
【0073】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0074】
また、固体電解質層は、上述の実施の形態1における固体電解質材料を、例えば、固体電解質層の全体に対する重量割合で70%以上(すなわち、70重量%以上)、含んでもよい。
【0075】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0076】
なお、固体電解質層は、上述の実施の形態1における固体電解質材料を主成分として含みながら、さらに、不可避的な不純物、または、上述の固体電解質材料を合成する際に用いられる出発原料および副生成物および分解生成物など、を含んでいてもよい。
【0077】
また、固体電解質層は、実施の形態1における固体電解質材料を、例えば、混入が不可避的な不純物を除いて、固体電解質層の全体に対する重量割合で100%(すなわち、100重量%)、含んでもよい。
【0078】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0079】
以上のように、固体電解質層は、実施の形態1における固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0080】
もしくは、固体電解質層は、実施の形態1における固体電解質材料とは異なる固体電解質材料のみから構成されていてもよい。実施の形態1における固体電解質材料とは異なる固体電解質材料として、例えば、LiMgX、LiFeX、Li(Al,Ga,In)X、Li(Al,Ga,In)X、LiI、など、が用いられうる。ここで、Xは、Cl、Br、およびIからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【0081】
固体電解質層は、実施の形態1における固体電解質材料と、上述の実施の形態1における固体電解質材料とは異なる固体電解質材料とを、同時に含んでもよい。このとき、両者が均一に分散していてもよい。これに代えて、実施の形態1における固体電解質材料からなる層と、上述の実施の形態1における固体電解質材料とは異なる固体電解質材料からなる層とが、電池の積層方向に対して、順に配置されていてもよい。
【0082】
固体電解質層の厚みは、1μm以上かつ100μm以下であってもよい。固体電解質層の厚みが1μm以上の場合には、正極201と負極203とを分離しやすくなる。また、固体電解質層の厚みが100μm以下の場合には、高出力での動作を実現し得る。
【0083】
負極203は、金属イオン(例えば、Liイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。負極203は、例えば、負極活物質(例えば、負極活物質粒子205)を含む。
【0084】
負極活物質には、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物、など、が使用されうる。金属材料は、単体の金属であってもよい。もしくは、金属材料は、合金であってもよい。金属材料の例として、リチウム金属、リチウム合金、など、が挙げられる。炭素材料の例として、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、非晶質炭素、など、が挙げられる。容量密度の観点から、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物、錫化合物、を使用できる。平均反応電圧が低い負極活物質を用いた場合に、実施の形態1における固体電解質材料による電気分解抑制の効果が、より良く発揮される。
【0085】
負極活物質粒子205のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。負極活物質粒子205のメジアン径が0.1μm以上の場合、負極において、負極活物質粒子205と固体電解質粒子100とが、良好な分散状態を形成し得る。これにより、電池の充放電特性が向上する。また、負極活物質粒子205のメジアン径が100μm以下の場合、負極活物質粒子205内のリチウム拡散が速くなる。このため、電池が高出力で動作し得る。
【0086】
負極活物質粒子205のメジアン径は、固体電解質粒子100のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、負極活物質粒子205とハロゲン化物固体電解質材料との良好な分散状態を形成できる。
【0087】
負極203に含まれる、負極活物質粒子205と固体電解質粒子100の体積比率「v:100-v」について、30≦v≦95であってもよい。30≦vの場合、十分な電池のエネルギー密度を確保し得る。また、v≦95の場合、高出力での動作を実現し得る。
【0088】
負極203の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。負極の厚みが10μm以上の場合には、十分な電池のエネルギー密度を確保し得る。また、負極の厚みが500μm以下の場合には、高出力での動作を実現し得る。
【0089】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、イオン伝導性を高める目的で、硫化物固体電解質または酸化物固体電解質が含まれてもよい。硫化物固体電解質として、LiS-P、LiS-SiS、LiS-B、LiS-GeS、Li3.25Ge0.250.75、Li10GeP12、など、が用いられうる。酸化物固体電解質として、LiTi(POおよびその元素置換体を代表とするNASICON型固体電解質、(LaLi)TiO系のペロブスカイト型固体電解質、Li14ZnGe16、LiSiO、LiGeOおよびその元素置換体を代表とするLISICON型固体電解質、LiLaZr12およびその元素置換体を代表とするガーネット型固体電解質、LiNおよびそのH置換体、LiPOおよびそのN置換体、など、が用いられうる。
【0090】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、イオン伝導性を高める目的で、有機ポリマー固体電解質が含まれてもよい。有機ポリマー固体電解質として、例えば高分子化合物と、リチウム塩との化合物が用いられうる。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有することで、リチウム塩を多く含有することができ、イオン導電率をより高めることができる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、など、が使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で、使用されうる。もしくは、リチウム塩として、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が、使用されうる。
【0091】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、リチウムイオンの授受を容易にし、電池の出力特性を向上する目的で、非水電解質液、ゲル電解質、およびイオン液体が含まれてもよい。
【0092】
非水電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶けたリチウム塩と、を含む。非水溶媒としては、環状炭酸エステル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状エーテル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、フッ素溶媒、など、が使用されうる。環状炭酸エステル溶媒の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、など、が挙げられる。鎖状炭酸エステル溶媒の例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、など、が挙げられる。環状エーテル溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、など、が挙げられる。鎖状エーテル溶媒の例としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、など、が挙げられる。環状エステル溶媒の例としては、γ-ブチロラクトン、など、が挙げられる。鎖状エステル溶媒の例としては、酢酸メチル、など、が挙げられる。フッ素溶媒の例としては、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、フルオロジメチレンカーボネート、など、が挙げられる。非水溶媒として、これらから選択される1種の非水溶媒が、単独で、使用されうる。もしくは、非水溶媒として、これらから選択される2種以上の非水溶媒の組み合わせが、使用されうる。非水電解液には、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、フルオロジメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素溶媒が含まれていてもよい。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、など、が使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で、使用されうる。もしくは、リチウム塩として、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が、使用されうる。リチウム塩の濃度は、例えば、0.5~2mol/リットルの範囲にある。
【0093】
ゲル電解質は、ポリマー材料に非水電解液を含ませたものを用いることができる。ポリマー材料として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、エチレンオキシド結合を有するポリマー、など、が用いられてもよい。
【0094】
イオン液体を構成するカチオンは、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウムなどの脂肪族鎖状4級塩類、ピロリジニウム類、モルホリニウム類、イミダゾリニウム類、テトラヒドロピリミジニウム類、ピペラジニウム類、ピペリジニウム類などの脂肪族環状アンモニウム、ピリジニウム類、イミダゾリウム類などの含窒ヘテロ環芳香族カチオンなどであってもよい。イオン液体を構成するアニオンは、PF 、BF 、SbF 、AsF 、SOCF 、N(SOCF 、N(SO 、N(SOCF)(SO、C(SOCF などであってもよい。また、イオン液体はリチウム塩を含有してもよい。
【0095】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、粒子同士の密着性を向上する目的で、結着剤が含まれてもよい。結着剤は、電極を構成する材料の結着性を向上するために、用いられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、など、が挙げられる。また、結着剤としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、およびヘキサジエンからなる群より選択された2種以上の材料の共重合体が用いられうる。また、これらのうちから選択された2種以上が混合されて、結着剤として用いられてもよい。
【0096】
また、正極201および負極203のうちの少なくとも一方は、必要に応じて、導電助剤を含んでもよい。
【0097】
導電助剤は、電極抵抗を低減するために、用いられる。導電助剤としては、天然黒鉛または人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物、など、が挙げられる。なお、導電助剤として、炭素導電助剤を用いることで、低コスト化が図れる。
【0098】
なお、実施の形態2における電池は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型、など、種々の形状の電池として、構成されうる。
【実施例
【0099】
以下、実施例および比較例を用いて、本開示の詳細が説明される。
【0100】
≪実施例1≫
以下、本実施例におけるLi6-3d(BrCl)の合成・評価方法について説明する。
【0101】
[固体電解質材料の作製]
露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、原料粉LiBr、YBr、LiCl、およびYClを、モル比でLi:Y:Br:Cl=6-3d:d:6-x:xとなるように、つまり、Li6-3dBr6-xClとなるように秤量した。これらを乳鉢で粉砕して混合した。その後、遊星型ボールミルを用い、25時間、600rpmでミリング処理した。
【0102】
また、本実施例におけるBrとClの比率についてはx=1、3、5とし、それぞれのxにおいて、dの値はd=0.3、0.5、0.8、0.9、1.1、1.2、1.4、1.5、1.8であった。
【0103】
以上により、実施例1-1~1-27の固体電解質材料であるLi6-3dBr6-xClの粉末を得た。
【0104】
[リチウムイオン伝導度の評価]
図2は、イオン伝導度の評価方法を示す模式図である。加圧成形用ダイス300は、電子的に絶縁性のポリカーボネート製の枠型301と、電子伝導性のステンレス製のパンチ上部303およびパンチ下部302とから構成される。
【0105】
図2に示す構成を用いて、下記の方法にて、イオン伝導度の評価を行った。露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、実施例1の固体電解質材料の粉末(固体電解質粒子100の実施例)を加圧成形用ダイス300に充填し、400MPaで一軸加圧し、実施例1の伝導度測定セルを作製した。加圧状態のまま、パンチ上部303とパンチ下部302のそれぞれから導線を取り回し、周波数応答アナライザを搭載したポテンショスタット(Princeton Applied Research社 VersaSTAT4)に接続し、電気化学的インピーダンス測定法により、室温におけるイオン伝導度の測定を行った。
【0106】
22℃で測定した、実施例1の固体電解質材料のイオン伝導度は、以下の表1に示されるものであった。
【0107】
【表1】
【0108】
[相転移の評価]
図3は、固体電解質のイオン伝導度の温度依存性を示すグラフである。本実施例1の典型的な振る舞いとして実施例1-14(Li2.71.1BrCl)について測定の結果を図3に示す。-30℃から80℃の温度範囲において、すべての実施例1-1~1-27で、相変化(すなわち、相転移)を示す伝導度の急激な変化は見られなかった。
【0109】
図3に示される結果は、下記の方法により、測定された。測定の方法は絶縁性外筒の中で、実施例1-1~1-27の固体電解質材料を700μm厚相当分挿入した。これを40MPaの圧力で加圧成型することで、固体電解質層を得た。次に、固体電解質層の上下面に50μm厚相当分のアルミニウム粉末を積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、積層体を作製した。次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉した。上記の方法で得られた積層体を含む試験体を、恒温槽に入れ、イオン伝導度の温度依存性を昇温過程と降温過程でそれぞれ測定した。
【0110】
[組成の評価]
実施例1の固体電解質材料についてICP(Inductive coupled Plasma)発光分光分析法を用いて組成の評価を行った。その結果、実施例1-1~1-27のいずれについてもLi/Yが仕込み組成からのずれが3%以内であった。すなわち、遊星型ボールミルによる仕込み組成と実施例記載の固体電解質材料の組成はほとんど同様であったと言える。
【0111】
[二次電池の作製]
露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、実施例1の固体電解質材料1-1~1-27と、正極活物質であるLiCoOを、50:50の体積比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、正極合剤を作製した。
【0112】
絶縁性外筒の中で、実施例1の固体電解質材料を700μm厚相当分、正極合剤を12.3mgの順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極と固体電解質層を得た。
【0113】
次に、固体電解質層の正極と接する側とは反対側に、金属In(厚さ200μm)を積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、正極、固体電解質層、および負極からなる積層体を作製した。
【0114】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉した。
【0115】
以上により、実施例2の二次電池を作製した。実施例1-1~1-27で得られた固体電解質を用いて二次電池を作製した。
【0116】
[充放電試験]
図4に代表的な初期放電特性としての実施例1-14のグラフ(Li2.71.1BrCl)を示す。
【0117】
図4に示される結果は、下記の方法によって測定した。すなわち、実施例1の二次電池を、25℃の恒温槽に、配置した。電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値で、定電流充電し、電圧3.6Vで充電を終了した。次に、同じく0.05Cレートとなる電流値で、放電し、電圧1.9Vで放電を終了した。以上の測定の結果から初期放電容量が得られる。
【0118】
すべての実施例1-1~1-27において同様の測定を行い、その初期放電容量を表1に示す。
【0119】
以下、比較例となる固体電解質を用いた2次電池の作製・評価方法について説明する。
【0120】
≪比較例1-1≫
露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、原料粉LiBrとInBrとを、モル比でLiBr:InBr=3:1となるように、秤量した。これらを乳鉢で粉砕して混合した。その後、ペレット状に加圧成形した試料を、ガラス管中に真空封入を行い、200℃で1週間焼成を行った。
【0121】
以上により、比較例1の固体電解質材料であるLiInBrを得た。
【0122】
上記方法以外は、上記の実施例1と同様の方法で、イオン伝導度と相転移の評価を実施した。22℃で測定されたイオン伝導度は、1×10-7S/cm未満であった。
【0123】
比較例1-1の固体電解質材料のイオン伝導度の温度依存性は、上述の図3に示される。図3に示されるように、伝導度の温度依存性により、昇温過程において、55℃付近で急激に伝導度が変化した。すなわち、比較例1-1の固体電解質材料では、相変化が見られた。
【0124】
≪比較例1-2≫
固体電解質の原料粉として、LiClとFeClとを用い、LiCl:FeCl=2:1のモル比で混合した。これにより、比較例1-2の固体電解質材料であるLiFeClを得た。
【0125】
これ以外は、上記の実施例1と同様の方法で、イオン伝導度の評価を、実施した。測定されたイオン伝導度は、8.7×10-6S/cmであった。
【0126】
正極合剤と固体電解質層に用いる固体電解質として、比較例1-2の固体電解質材料を用いた。これ以外は、上記の実施例1-1~1-27と同様の方法で、二次電池の作製および充放電試験を、実施した。比較例1-2の二次電池の初期放電特性は、上述の図4に示される。比較例1-2の二次電池の初期放電容量は、1μAh以下であった。すなわち、比較例1-2の二次電池では、充放電動作は確認できなかった。
【0127】
≪考察≫
実施例1-1~1-27と比較例1-1とを比較すると、本実施例1-1~1-27の固体電解質では-30℃から80℃の範囲において、相転移をしないのに対して、比較例1-1では相転移することがわかる。すなわち、本実施例の固体電解質は、電池の想定動作温度域において、構造が安定であることがわかる。
【0128】
また、実施例1-1~1-27と比較例1-1および1-2とを比較すると、室温で、実施例1-1~1-27は、1×10-5S/cm以上のより高いイオン伝導性を示すのに対して、比較例1-1および1-2は、1×10-5S/cm未満のイオン伝導性であることがわかる。また、0.5≦d≦1.5の範囲の実施例1-2~1-8、1-11~1-17および1-20~1-26においては、0.9×10-4S/cm以上の伝導度を示す。また、0.9≦d≦1.2の範囲における実施例1-4~1-6、1-13~1-15および1-22~1-24においては、7×10-4S/cm以上の伝導度を示す。
【0129】
また、本実施例に記載される固体電解質材料においては、いずれも室温において電池の充放電動作を示した。一方で、比較例1-1においては、放電容量がほとんど取れず、電池動作の確認ができなかった。
【0130】
以上により、本開示による固体電解質材料は、硫化水素の発生が無く、かつ、高いリチウムイオン伝導度を安定的に維持することができる電解質材料であることが示される。さらに、硫化水素の発生が無く、かつ、充放電特性に優れた全固体電池を実現することができることが示される。
【0131】
≪実施例2≫
以下、本実施例におけるLi6-3d(BrI)の合成・評価方法について説明する。
【0132】
[固体電解質材料の作製]
露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、原料粉LiBr、YBr、LiI、YIを、モル比でLi:Y:Br:I=6-3d:d:6-x:xとなるように、つまり、Li6-3dBr6-xとなるように秤量した。これらを乳鉢で粉砕して混合した。その後、遊星型ボールミルを用い、25時間、600rpmでミリング処理した。
【0133】
また、本実施例におけるBrとIの比率についてはx=2、3、5とし、それぞれのxにおいて、dの値はd=0.3、0.5、0.8、0.9、1.1、1.2、1.4、1.5、1.8であった。
【0134】
以上により、実施例2-1~2-27の固体電解質材料であるLi6-3dBr6-xの粉末を得た。
【0135】
[リチウムイオン伝導度の評価]
イオン伝導度の測定については実施例1と同様の方法・条件で測定を行った。実施例2の固体電解質材料のイオン伝導度は、以下の表2に示されるものであった。
【0136】
【表2】
【0137】
[相転移の評価]
本実施例の相転移の評価については実施例1と同様の方法で行った。その結果、-30℃から80℃の温度範囲において、すべての実施例2-1~2-27で、相変化(すなわち、相転移)を示す伝導度の急激な変化は見られなかった。実施例2の典型的な振る舞いとして実施例2-5(Li2.71.1Br)について測定の結果を図3に示す。
【0138】
[組成の評価]
実施例2の固体電解質材料についての組成分析をICP発光分光分析法によって行った。その結果、実施例2-1~2-27のいずれについてもLi/Yが仕込み組成からのずれが3%以内であった。この結果、遊星型ボールミルによる仕込み組成と実施例記載の固体電解質材料の組成はほとんど同様であると考えることが出来る。
【0139】
[正極活物質被覆層の作製]
アルゴングローブボックス内で、金属Li(本荘ケミカル製)0.06mgとペンタエトキシニオブ(高純度化学製)2.87mgとを、超脱水エタノール(和光純薬製)0.2mLに溶解して、被覆溶液を作製した。
【0140】
メノウ乳鉢上で、100mgの正極活物質であるLi(NiCoAl)Oに、作製した被覆溶液を徐々に添加しながら、攪拌した。
【0141】
被覆溶液を全て添加した後、30℃のホットプレート上で、目視で乾固が確認できるまで、攪拌を行った。
【0142】
乾固後の粉末を、アルミナ製るつぼに入れ、大気雰囲気下に取り出した。
【0143】
次いで、大気雰囲気下300℃、1時間の熱処理を行った。
【0144】
熱処理後の粉末を、メノウ乳鉢にて再粉砕することで、被覆層を粒子表層に形成した実施例1の正極活物質を得た。すなわち、正極活物質の複数の粒子が得られ、これら複数の粒子のうちの全て又は一部の粒子は、粒子表面の少なくとも一部に被覆層が形成されていた。
【0145】
当該被覆層の材料は、LiNbOである。
【0146】
[二次電池の作製]
以下、本実施例2-1~2-27における二次電池の作製・評価方法について説明する。
【0147】
露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、実施例1の固体電解質材料と、LiNbOで粒子表面をコートした正極活物質であるLi(NiCoAl)Oを、50:50の体積比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、正極合剤を作製した。
【0148】
絶縁性外筒の中で、実施例2の固体電解質材料を700μm厚相当分、正極合剤を12.3mgの順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極と固体電解質層を得た。
【0149】
次に、固体電解質層の正極と接する側とは反対側に、金属In(厚さ200μm)を積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、正極、固体電解質層、および負極からなる積層体を作製した。
【0150】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉した。
【0151】
以上により、実施例2の二次電池を作製した。実施例2-1~2-27で得られた固体電解質を用いて二次電池を作製した。
【0152】
[充放電試験]
本実施例2の二次電池の初期放電容量について実施例1と同様の方法で評価した。図4に代表的な初期放電特性として実施例2-5のグラフ(Li2.71.1Br)を示す。また本実施例で得られた初期放電容量を表2に示す。
【0153】
≪考察≫
実施例2-1~2-27と比較例1-1とを比較すると、本実施例2-1~2-27の固体電解質では-30℃から80℃の範囲において、相転移をしないのに対して、比較例1-1は相転移することがわかる。すなわち、電池の想定動作温度域において、構造が安定であることがわかる。
【0154】
また、すべての実施例2-1~2-27において1×10-5S/cm以上のより高いイオン伝導性を示すことがわかる。また、0.5≦d≦1.5の範囲の実施例2-2~2-8、2-11~2-17および2-20~2-26においては、1×10-4S/cm以上の伝導度を示す。また、0.9≦d≦1.2かつ2≦x≦3の範囲の実施例2-4~2-6および2-13~2-15においては、7×10-4S/cm以上の伝導度を示す。
【0155】
また、本実施例2-1~2-27の固体電解質材料においては、いずれも室温において電池の充放電動作を示した。一方で、比較例1-1においては、放電容量がほとんど取れず、電池動作の確認ができなかった。
【0156】
以上により、本開示による固体電解質材料は、硫化水素の発生が無く、かつ、高いリチウムイオン伝導度を安定的に維持することができる電解質材料であることが示される。さらに、硫化水素の発生が無く、かつ、充放電特性に優れた全固体電池を実現することができることが示される。
【0157】
≪実施例3≫
以下、本実施例におけるLi6-3dClBrIの合成・評価方法について説明する。
【0158】
[固体電解質材料の作製]
露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、原料粉LiBr、YBr、LiCl、YCl、LiI、YIを使用し、モル比でLi:Y=6-3d:dとなるように、調整した。これらを乳鉢で粉砕して混合した。その後、遊星型ボールミルを用い、25時間、600rpmでミリング処理した。
【0159】
dの値はd=0.3、0.5、0.8、1.1、1.5、1.8であった。また、ハロゲンで構成されるアニオンの組み合わせとしては、表3に示すとおりである。
【0160】
以上により実施例3の固体電解質材料であるLi6-3dClBrの粉末を得た。
【0161】
【表3】
【0162】
[イオン伝導度の評価]
図2に示す構成を用いて、下記の方法にて、イオン伝導度の評価を行った。露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、実施例3の固体電解質材料の粉末(固体電解質粒子100の実施例)を加圧成形用ダイス300に充填し、400MPaで一軸加圧し、実施例3の伝導度測定セルを作製した。加圧状態のまま、パンチ上部303とパンチ下部302のそれぞれから導線を取り回し、周波数応答アナライザを搭載したポテンショスタット(Princeton Applied Research社 VersaSTAT4)に接続し、電気化学的インピーダンス測定法により、室温におけるイオン伝導度の測定を行った。22℃で測定した、実施例3の固体電解質材料のイオン伝導度は、表3に示されるものであった。
【0163】
[相転移の評価]
本実施例の相転移の評価については実施例1と同様の方法で行った。その結果、-30℃から80℃の温度範囲において、すべての実施例3-1~3-18で相変化(すなわち相転移)を示す伝導度の急激な変化は見られなかった。
【0164】
[組成の評価]
実施例3の固体電解質材料についての組成分析をICP発光分光分析法によって行った。その結果、実施例3-1~3-18のいずれについてもLi/Yが仕込み組成からのずれが3%以内であった。この結果、遊星型ボールミルによる仕込み組成と実施例記載の固体電解質材料の組成はほとんど同様であると考えることが出来る。
【0165】
[二次電池作製に使用する正極活物質の被覆層の作製]
アルゴングローブボックス内で、金属Li(本荘ケミカル製)0.06mgとペンタエトキシニオブ(高純度化学製)2.87mgとを、超脱水エタノール(和光純薬製)0.2mLに溶解して、被覆溶液を作製した。
【0166】
メノウ乳鉢上で、100mgの正極活物質であるLi(NiCoAl)Oに、作製した被覆溶液を徐々に添加しながら、攪拌した。
【0167】
被覆溶液を全て添加した後、30℃のホットプレート上で、目視で乾固が確認できるまで、攪拌を行った。
【0168】
乾固後の粉末を、アルミナ製るつぼに入れ、大気雰囲気下に取り出した。
【0169】
次いで、大気雰囲気下300℃、1時間の熱処理を行った。
【0170】
熱処理後の粉末を、メノウ乳鉢にて再粉砕することで、被覆層を粒子表層に形成した実施例5の正極活物質を得た。すなわち、正極活物質の複数の粒子が得られ、これら複数の粒子のうちの全て又は一部の粒子は、粒子表面の少なくとも一部に被覆層が形成されていた。当該被覆層の材料は、LiNbOである。
【0171】
[二次電池の作製]
以下、本実施例における2次電池の作製・評価方法について説明する。
【0172】
露点-90℃以下、酸素値5ppm以下のドライ・低酸素雰囲気で保たれるグローブボックス内で、実施例3の固体電解質材料と、LiNbOで粒子表面をコートした正極活物質であるLi(NiCoAl)Oを、30:70の体積比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、正極合剤を作製した。
【0173】
絶縁性外筒の中で、実施例3の固体電解質材料を700μm厚相当分、正極合剤を12.3mgの順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極と固体電解質層を得た。
【0174】
次に、固体電解質層の正極と接する側とは反対側に、金属In(厚さ200μm)を積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、正極、固体電解質層、および負極からなる積層体を作製した。
【0175】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉した。
【0176】
以上により、実施例3の材料を用いた二次電池を作製した。
【0177】
[充放電試験]
実施例3-4の二次電池を、25℃の恒温槽に、配置した。電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値で、定電流充電し、電圧3.7Vで充電を終了した。次に、同じく0.05Cレートとなる電流値で、放電し、電圧1.9Vで放電を終了した。その結果、実施例3-4では650μAhの初期放電容量が得られた。
【0178】
上記の方法を用いて、実施例3-1~3-3および3-5~3-18において同様の測定を行い、すべての実施例において良好な放電容量が得られた。
【0179】
≪考察≫
実施例3-1~3-18と比較例1-1とを比較すると、本実施例3-1~3-18の固体電解質では-30℃から80℃の範囲において、相転移をしないのに対して、比較例1-1では相転移をしていることがわかる。すなわち、電池の想定動作温度域において、構造が安定であることがわかる。
【0180】
また、すべての実施例3-1~3-18において1×10-4S/cm以上のより高いイオン伝導性を示すことがわかる。0.8≦d≦1.5の範囲の実施例3-3~3-5、3-9~3-11、および3-15~3-17であれば、7×10-4S/cm以上の伝導度を示す。
【0181】
また、本実施例3-1~3-18の固体電解質材料においては、いずれも室温において電池の充放電動作を示した。一方で、比較例1-1においては、放電容量がほとんど取れず、電池動作の確認ができなかった。
【0182】
以上により、本開示による固体電解質材料は、硫化水素の発生が無く、かつ、高いリチウムイオン伝導度を安定的に維持することができる電解質材料であることが示される。さらに、硫化水素の発生が無く、かつ、充放電特性に優れた全固体電池を実現することができることが示される。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本開示の電池は、例えば、全固体リチウム二次電池などとして、利用されうる。
【符号の説明】
【0184】
100 固体電解質粒子
201 正極
202 電解質層
203 負極
204 正極活物質粒子
205 負極活物質粒子
300 加圧成形用ダイス
301 枠型
302 パンチ下部
303 パンチ上部
1000 電池
図1
図2
図3
図4