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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】クッション構造
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/24 20060101AFI20240112BHJP
   A47C 7/00 20060101ALI20240112BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A47C7/24
A47C7/00 B
A47C27/14 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020010958
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021115271
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391029406
【氏名又は名称】カリモク家具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】有賀 崇嗣
【審査官】五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-277044(JP,A)
【文献】特開2009-106346(JP,A)
【文献】特開2018-075885(JP,A)
【文献】米国特許第04869554(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-7/74
B60N 2/00-2/90
A47C 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子又はソファーの座部又は/及び背部に用いるクッション構造であって、 座フレーム又は/及び背フレームに開口部を形成し、伸縮性を有しない糸で構成された布地を撓むようにして前記開口部を覆うように前記フレームに取付け、前記座部の布地の上側又は/及び前記背部の布地の前側にクッション材を配設し、
前記布地側の前記フレームに対する取付位置は、その全周に亘って、前記フレーム側の取付位置よりも外側に位置することを特徴とするクッション構造。
【請求項2】
座フレームの後部又は/及び背フレームの上部に付勢部材を設け、該付勢部材により前記布地の周縁部の一部をフレーム側方向に付勢したことを特徴とする請求項記載のクッション構造。
【請求項3】
前記布地は、椅子又はソファーの座部の前後方向又は背部の上下方向に対して、傾斜する方向に伸縮できるように構成されていることを特徴とする請求項1又は記載のクッション構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子又はソファーの座部又は/及び背部に用いるクッション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子の座フレームに、伸縮性を有するSバネや布バネを配置し、その上にクッション材を配置して座部を構成し、着座者が座部に座った際に、クッション材が臀部等の形状になじむように変形することで座り心地を良くした椅子が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来技術の椅子においては、着座者が座部に座った際に、伸縮性を有するSバネや布バネが伸び、その収縮(復元)しようとする力が生じ、着座者の臀部や大腿部において反発力が付与され、体圧を良好に分散できないという問題がある。
【0004】
また、Sバネや布バネを用いた場合、その上に載置するクッション材を厚くしないと底付き感が生じるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の椅子のクッション構造と比較して、より体圧分散が良好に行える椅子又はソファーの座部又は/及び背部に用いるクッション構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、椅子又はソファーの座部又は/及び背部に用いるクッション構造であって、 座フレーム又は/及び背フレームに開口部を形成し、伸縮性を有しない糸で構成された布地を撓むようにして前記開口部を覆うように前記フレームに取付け、前記座部の布地の上側又は/及び前記背部の布地の前側にクッション材を配設し、
前記布地側の前記フレームに対する取付位置は、その全周に亘って、前記フレーム側の取付位置よりも外側に位置することを特徴とするものである。
【0008】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、座フレームの後部又は/及び背フレームの上部に付勢部材を設け、該付勢部材により前記布地の周縁部の一部をフレーム側方向に付勢したことを特徴とするものである。
【0009】
請求項記載の発明は、請求項1又は記載の発明において、前記布地は、椅子又はソファーの座部の前後方向又は背部の上下方向に対して、傾斜する方向に伸縮できるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、座フレーム又は/及び背フレームに開口部を形成し伸縮性を有しない糸で構成された布地を撓むようにして開口部を覆い、前記布地の上側又は/及び前側にクッション材を配設したことにより、着座者が着席した際に、布地から着座者への反発力を低減し、体圧分散性を向上できる。
【0011】
また、クッション材を薄くしても底付き感をなくすことができることで、クッション材を薄く形成でき、クッション材による反発力を低減し、体圧分散性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るソファーの斜視図。
図2】本発明の実施例に用いるフレームの正面図。
図3図2の上面図。
図4図2の右側面図。
図5図2の斜視図。
図6】本発明の実施例における座布地と座フレームとの関係を示す部分拡大底面図。
図7図6において、座布地の形状を誇張した模式図。
図8】本発明の実施例における第1背布地と第2背布地と背フレームとの関係を示し、第1背布地と第2背布地は、一つの背の開口部のみに設けた部分拡大正面図。なお、第2背布地は、第1背布地の後側に位置し、破線で示すべきであるが、形状がわかりにくいため、実線で示した。
図9図1のソファーに着座した状態の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【0014】
本発明のクッション構造は、座椅子、自動車などの車両用の椅子等の椅子や、一人掛のソファー、複数人掛けのソファーにおける座部又は/及び背部に用いることができるもので、以下では、本発明のクッション構造を、3人掛けのソファーに適用した実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1は実施例1に係るソファー1の斜視図である。以下において、ソファー1の背側である後側をA、その反対の着座側である前側をBとして、その前側Bから見た、右側をC、左側をDとして説明する。
【0016】
ソファー1は、図2図5に示す木製のフレーム10を有する。フレーム10は、座フレーム2を有し、座フレーム2の4隅には、座フレーム2から下側に突出する脚3が固設されている。
【0017】
座フレーム2は、図3に示すように、左右一対の座側枠2a,2aと、座側枠2a,2aの前端間に架設した座前枠2bと、座側枠2a,2aの後端間に架設した座後枠2cと、座前枠2bと座後枠2cの間に架設し、かつ、座側枠2a,2a間に左右方向(C-D方向)に2本設けた仕切り2dで構成されている。座側枠2aと座前枠2bと座後枠2cと仕切り2dは、一体に形成されている。
【0018】
座フレーム2には、座側枠2a,2aと、座前枠2bと、座後枠2cと、仕切り2d,2dにより囲まれた座の開口部4が、左右方向(C-D方向)に3個形成されている。なお、隣り合う座の開口部4と4の間の仕切り2dを設けず、1つの座の開口部4としてもよい。また、本実施例では、座の開口部4を左右方向(C-D方向)に3個形成したが、座の開口部4の数は、1個でも2個以上の複数でもよく、任意に設定することができる。
【0019】
座フレーム2の後側Aには、図2図5に示すように、背フレーム5が上下方向に起立して固設されている。
【0020】
背フレーム5は、図2に示すように、左右一対の背側枠5a,5aと、背側枠5a,5aの上端間に架設した背上枠5bと、背側枠5a,5aの下端間に架設した背下枠5cと、背上枠5bと、背下枠5cの間に架設し、かつ、背側枠5a,5a間に左右方向(C-D方向)において2本設けた仕切り5dと、背側枠5a,5a、又は、背上枠5bと背下枠5cの間に架設した補強部材5eで構成されている。
【0021】
背フレーム5には、背側枠5a,5aと、背上枠5bと、背下枠5cと、仕切り5d,5dにより囲まれた背の開口部6が、左右方向(C-D方向)に3個形成されている。なお、隣り合う背の開口部6と6の間の仕切り5dを設けず、背の開口部6を1個としてもよい。本実施例では、背の開口部6を左右方向(C-D方向)に3つ形成したが、背の開口部6の数は、1個でも2個以上の複数でもよく、任意に設定することができる。
【0022】
座の開口部4は、図6に示すように、伸縮性を有しない糸で織られ、又は、編まれた布地で構成された座布地7で覆われている。本実施例では、座布地7に用いられる布地として、経編で構成され、ソファー1の前後方向、及び、左右方向には伸縮せず、力が作用した際に、前後方向に対して傾斜する方向のみに伸びることができるように糸が編まれたものを使用したが、何れの方向にも伸びることができない布地を用いてもよい。座布地7は、伸縮性を有しない糸で構成されていることにより、ソファー1に着座者が座った際にも、座布地7に収縮力(復元力)が生じず、着座者への反発力を低く抑えることができる。
【0023】
座布地7は、その周縁部が全周に亘って、座の開口部4の外周部に位置する座フレーム2に取付けられている。座布地7側の座フレーム2に対する取付位置(二点鎖線)7aは、図6に示すように、その全周に亘って、座フレーム2側の取付位置(破線)2eより外側に位置するように、座布地7は大きく形成されている。
【0024】
図7は、座布地7側の座フレーム2に対する取付位置(二点鎖線)7aの形状を、座フレーム2側の取付位置(破線)2eに対して誇張して図示したものであり、図7に示すように、座布地7の座フレーム2に対する取付位置(二点鎖線)7aにおける後側Aは、前側Bより、座フレーム側の取付位置(破線)2eに対してより外側に位置するとともに、その左右方向において、側部から中央部に向かう程、より外側に位置するようになっている。また、座布地7の座フレーム2に対する取付位置(二点鎖線)7aにおける両側は、それぞれ、前側B部から後側A部に向かう程、座フレーム側の取付位置(破線)2eに対してより外側に位置するようになっている。
【0025】
なお、図6図7において、図の煩雑さを避けるために、座布地7の外形形状、及び、取付(固設)状態は図示していない。また、座フレーム2に対する付勢部材9の取付位置を示すため、座フレーム2に座布地7を取り付けた状態における付勢部材9の状態を図示している。
【0026】
上記のように、座布地7において、座フレーム2側の取付位置(破線)2eより、座布地7側の座フレーム2に対する取付位置(二点鎖線)7aが、外側に位置するように座布地7を大きくして座フレーム2に取付けることにより、座布地7は、前後方向及び左右方向に張力が付与されず、撓んだ状態で取付けられ、ソファー1に着座者が座った際に、図9に示すように、臀部等の体の形状に近い形状になるようになっている。
【0027】
また、座の開口部4の後側Aの両側部で、かつ、座布地7の下側には、コイルバネ等の付勢部材9が計2個設けられている。付勢部材9の一端部は、座フレーム2に固設され、付勢部材9の他端部は、座布地7の後側Aの両側部に取付けられている。また、付勢部材9は、その付勢方向(伸縮方向)が、図6図7に示すように、ソファー1の前後方向に対し、斜め方向となるように配置されている。
【0028】
この付勢部材9の付勢力により、座布地7の周縁部の一部である後部の両側部を、座フレーム2側方向に付勢し、ソファー1に着座者が座っていない状態において、座布地7の撓みを減らし、略平面状となるようになっている。また、付勢部材9の付勢方向(伸縮方向)は、ソファー1の前後方向に対し、斜め方向となるように配置されているとともに、着座者の着座位置と干渉しにくい位置に配置されているため、付勢部材9の付勢力が着座者へ与える影響を低く抑えることができる。
【0029】
座布地7の上面には、図9に示すように、任意のクッション材からなる座のクッション材11が載置されている。座布地7とクッション材11で座部に用いるクッション構造12を構成する。
【0030】
背の開口部6の前側には、図8図9に示すように、伸縮性を有しない糸で構成された布地からなる第1背布地13で覆われている。本実施例では、第1背布地13に用いられる布地として、経編で構成され、ソファー1の上下方向、及び、左右方向には伸縮せず、力が作用した際に、上下方向に対して傾斜する方向のみに伸びることができるように糸が編まれ

たものを使用したが、何れの方向にも伸びることができない布地を用いてもよい。
【0031】
第1背布地13は、伸縮性を有しない糸で構成されていることにより、ソファー1に着座者が座り、背にもたれた際にも、第1背布地13に収縮力(復元力)が生じず、着座者への反発力を低く抑えることができる。
【0032】
第1背布地13側の背フレーム5に対する取付位置は、その全周に亘って、背フレーム5側の取付位置より外側に位置するように、第1背布地13は形成されている。
【0033】
また、背の開口部6の下部で、かつ、第1背布地13の後側Aには、図8図9に示すように、伸縮性を有しない糸で構成された布地からなる第2背布地14が、背の開口部6の左右方向全体に亘って設けられている。これにより、ソファー1に着座者が座り、背にもたれた際にも、第2背布地14に収縮力(復元力)が生じず、着座者への反発力を低く抑えることができる。
【0034】
第2背布地14側の背フレーム5に対する取付位置は、その全周に亘って、背フレーム5側の取付位置より外側に位置するように、第2背布地14は形成され、第2背布地14は、背フレーム5に張力が付与されず、撓んだ状態で取付けられている。
【0035】
また、ソファー1に着座者が座った際の第2背布地14の撓み量は、第1背布地13の撓み量より低く設定されている。
【0036】
このように、第1背布地13と第2背布地14を背フレーム5に取付けることにより、第2背布地14が設けられていない部分の第1背布地13は、張力が付与されず撓んだ状態で取付けられ、ソファー1に着座者が座り、背にもたれた際に、図9に示すように、着座者の肩甲骨等が当たる部分は体の形状に近い形状に撓む。また、第2背布地14が設けられた腰部は、撓み量が抑えられ、着座者の背骨がS字曲線を保持でき、着座者の背中や腰へのストレスを軽減できる。
【0037】
また、背の開口部6の上部の両側部で、かつ、第1背布地13の後側Aには、コイルバネ等の付勢部材15が計2個設けられている。付勢部材15の一端部は、背フレーム5に固設され、付勢部材15の他端部は、第1背布地13の上部の両側部に取付けられている。また、付勢部材15の付勢方向(伸縮方向)は、ソファー1の上下方向に対し、斜め方向となるように配置されている。
【0038】
この付勢部材の付勢力15により、第1背布地13の周縁部の一部である上部の両側部を、背フレーム5側方向に付勢し、ソファー1に着座者が座っていない状態において、第1背布地13の撓みを減らし、略平面状となるようになっている。また、付勢部材15は、その付勢方向(伸縮方向)が、ソファー1の上下方向に対し、斜め方向となるように配置されているとともに着座者の着座位置と干渉しにくい位置に配置されているため、付勢部材15の付勢力が着座者へ与える影響を低く抑えることができる。
【0039】
第1背布地13の前側には、図9に示すように、任意のクッション材からなる背のクッション材17が載置されている。第1背布地13とクッション材17で背部に用いるクッション構造18を構成する。
【0040】
上記の構成により、本発明のソファー1は、座布地7、第1背布地13、第2背布地14が、伸縮性を有しない糸で構成されているとともに、撓んだ状態で張り設されていることにより、ソファー1に着座者が座った際にも、座布地7、第1背布地13、第2背布地14に収縮力(復元力)が生じず、着座者への反発力を低く抑えることができ、上記従来の椅子のクッション構造よりも体圧分散性を向上できる。
【0041】
また、座布地7、第1背布地13、第2背布地14が、着座者の体の線に対応した形状に撓むことで、座のクッション材11と背のクッション材17の厚みを薄くしても、底付き感をなくすことができるため、座のクッション材11と背のクッション材17の厚みを、図1に示すように、薄く形成することができる。また、座のクッション材11と背のクッション材17の厚みを薄くすることで、着座者への反発力を低減でき、体圧分散性を向上できる。
【0042】
また、ソファー1に着座者が座っていない際には、付勢部材9,15の付勢力により、座布地7、第1背布地13のへこみを軽減し、ソファー1の美観を向上できる。
【0043】
付勢部材9,15の付勢方向(伸縮方向)は、座の前後方向、又は、背の上下方向に対し、斜め方向となるように配置されているとともに、着座者の着座位置と干渉しにくい位置に配置されているため、ソファー1に着座者が座った際に、付勢部材であるバネが伸長し、その収縮力により生じる反発力を低く抑えることができる。
【0044】
上記実施例1のソファー1においては、座部に用いるクッション構造12と背部に用いるクッション構造18を用いたが、何れか一方のみで構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 ソファー
2 座フレーム
4,6 開口部
5 背フレーム
7,13 布地
9,15 付勢部材
11,17 クッション材
12 座部に用いるクッション構造
18 背部に用いるクッション構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9