(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/12 20190101AFI20240112BHJP
G07D 11/10 20190101ALI20240112BHJP
【FI】
G07D11/12
G07D11/10
(21)【出願番号】P 2020149349
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】萩原 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】八幡 和明
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-61604(JP,A)
【文献】特開2019-220064(JP,A)
【文献】特開2001-101478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/12
G07D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定条件の媒体を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部と、前記一時貯留部と一対一で対応して設けられ、前記一時貯留部から媒体を受け入れて収納する収納部と、で構成される収納庫と、
媒体の収納および繰り出しが可能な一括カセットと、
識別部を経由した媒体を前記一括カセットおよび前記一時貯留部へ搬送可能であって、前記一括カセットからの媒体を前記一時貯留部へ搬送可能な搬送部と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記収納庫の使用において、
当該収納庫の前記一時貯留部を所定条件の媒体を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、当該収納庫の前記収納部を前記一時貯留部から媒体を受け入れて収納する収納部として使用する分割使用モードと、
前記一括カセットを所定条件の媒体を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、前記収納庫の前記一時貯留部および前記収納部を前記一括カセットから媒体を受け入れて収納する収納部として使用する一体化使用モードと、
に、切り替えが可能であることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
一の取引において、前記分割使用モードで使用している前記収納庫の前記一時貯留部の媒体を、該一時貯留部と一対一で対応して設けられる前記収納部に移動させた際、当該収納庫が前記分割使用モードでは以後の取引において媒体の前記一時貯留部への一時貯留が不可と判断される状態となったときには、
当該収納庫を前記一体化使用モードに切り替えて、
以後の取引においては、前記一括カセットへ媒体の一時貯留を行うことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
さらに、前記収納庫からの媒体の繰り出し搬送先を有し、
前記制御部は、
前記一体化使用モードの前記収納庫が、媒体の前記一時貯留部への一時貯留が不可と判断された状態から媒体の前記一時貯留部への一時貯留が可能と判断される状態となったときには、
当該収納庫を前記分割使用モードに切り替えて、
以後の取引においては、当該収納庫の前記一時貯留部へ媒体の一時貯留を行うことを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記一括カセットへ一時貯留を行った取引においては、収納指示を受けることで、前記一括カセットに一時貯留した媒体を、前記搬送部により前記一体化使用モードの前記収納庫へ搬送し収納することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
さらに、前記一体化使用モードの前記収納庫が複数ある状態で、
前記制御部は、
前記一括カセットに一時貯留した媒体を、前記搬送部により、前記識別部に搬送し、該識別部の識別結果に基づいて、前記一体化使用モードの複数の前記収納庫へ振り分けて搬送し収納することを特徴とする請求項4に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
さらに、前記収納庫を前記分割使用モードに固定する分割固定モードを選択可能とする選択手段を有し、
前記選択手段によって前記分割固定モードが選択されているとき、
前記制御部は、
前記収納庫を前記分割使用モードに固定して使用するとともに、
一の取引において、一の前記一時貯留部への媒体の一時貯留枚数が、当該一時貯留部と一対一で対応して設けられた前記収納部に既に収納されている媒体の数量に基づいて事前に計算される収納許容数量の範囲内となるように、当該一の取引の動作を制御する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記選択手段によって前記分割固定モードが選択されているとき、
前記制御部は、
一の取引において、一の前記一時貯留部への媒体の一時貯留枚数が、当該一時貯留部と一対一で対応して設けられた前記収納部に既に収納されている媒体の数量に基づいて事前に計算される収納許容数量を超えるとき、当該一時貯留部の媒体を前記一括カセットに収納する請求項6に記載の媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取引口から機内へ繰り出され識別部で正常と識別された紙幣を一時貯留すると共に一時貯留している紙幣を一枚ずつ分離して繰り出す一時貯留部(プールカセット)と、紙幣を金種別に収納すると共に収納している紙幣を一枚ずつ分離して繰り出す金種別環流部(各金種カセット)とを有し、入金処理時は、受け入れ可能な紙幣を一旦一時貯留部(プールカセット)へ搬送した後、操作者による入金確定の指示入力が操作部を介してなされると、一時貯留部(プールカセット)内の紙幣を繰り出して、金種別環流部(各金種カセット)へ分配して収納する紙幣処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この装置では、入金計数された紙幣を一括して一時貯留部にプールし、操作者による入金確定入力がなされた後に、金種別に設けられた各環流部へ分配処理を行っている。このため一時貯留部にプールされた紙幣量が多いと金種別環流部への分配処理に時間が掛かってしまうことから、使い勝手性の点で改善の余地があった。
【0004】
このため、紙幣を一時貯留する場所として、金種別に設けられる収納庫の上部位置に一時貯留エリア(金種別中間プール)を設けた構成の紙幣処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に開示される装置では、入金処理動作において、入金確定前に紙幣を金種別の一時貯留部へ振り分けているため、入金確定処理では金種別収納部の上方にある一時貯留エリアから、その直下にある収納エリアへ紙幣を受け渡して収納することで入金処理動作が完了となる。従って、一時貯留エリアから収納エリアへの紙幣は一枚ずつ繰り出す必要はなく一括して行うことが可能であり、特許文献1に開示される装置と比較すると大幅な処理時間の短縮が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5866171号公報
【文献】特開2019-061604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示される装置では、各金種別の収納庫を一時貯留エリアと収納エリアとに区分している構成であるため、金種別収納庫の高さ方向の寸法が同じ条件下では、特許文献1に開示される装置と比べ、入金確定後の紙幣の金種別の収納エリアの収納枚数が少なくなってしまう。例えば、特許文献1に開示される装置の紙幣の金種別の収納エリアの収納枚数がそれぞれ3000枚であるとすると、特許文献2に開示される装置の紙幣の金種別の収納エリアの収納枚数がそれぞれ2000枚に制限されてしまう。このため、収納庫がエンプティあるいはニアエンプティの状態になり易く、その都度、収納庫への出金用紙幣の補充が必要になるため、使い勝手性の点で改善の余地があった。なお、特許文献2では、さらに収納カセット部を有するが、これは、金種別の一時貯留部に一時貯留しきれないオーバーフロー紙幣を一時貯留したり、紙幣処理装置への紙幣の装填・補充または、紙幣処理装置からの紙幣回収に使用されるもので、出金用として使用可能な紙幣の収納容量の増加には貢献し得ない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、大型化を抑制しつつ使い勝手性を向上可能な媒体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る第1の態様は、所定条件の媒体を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部と、前記一時貯留部と一対一で対応して設けられ、前記一時貯留部から媒体を受け入れて収納する収納部と、で構成される収納庫と、媒体の収納および繰り出しが可能な一括カセットと、識別部を経由した媒体を前記一括カセットおよび前記一時貯留部へ搬送可能であって、前記一括カセットからの媒体を前記一時貯留部へ搬送可能な搬送部と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記収納庫の使用において、当該収納庫の前記一時貯留部を所定条件の媒体を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、当該収納庫の前記収納部を前記一時貯留部から媒体を受け入れて収納する収納部として使用する分割使用モードと、前記一括カセットを所定条件の媒体を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、前記収納庫の前記一時貯留部および前記収納部を前記一括カセットから媒体を受け入れて収納する収納部として使用する一体化使用モードと、に、切り替えが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型化を抑制しつつ使い勝手性を向上可能な媒体処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置を概略的に示す側断面図である。
【
図2】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置を概略的に示す側断面図であって、通常モードでの第1の入金処理の紙幣搬送ルートを太線で示すものである。
【
図3】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置を概略的に示す側断面図であって、通常モードでの第1の収納処理の紙幣搬送ルートを太線で示すものである。
【
図4】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置の収納庫を概略的に示す側断面図であって、通常モードでの第1の収納処理の動作説明図である。
【
図5】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置の収納庫を概略的に示す側断面図であって、通常モードでの第1の収納処理の動作説明図である。
【
図6】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置の収納庫を概略的に示す側断面図であって、通常モードでの第1の収納処理の動作説明図である。
【
図7】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置を概略的に示す側断面図であって、通常モードでの第1の返却処理の紙幣搬送ルートを太線で示すものである。
【
図8】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置を概略的に示す側断面図であって、通常モードでの第2の入金処理の紙幣搬送ルートを太線で示すものである。
【
図9】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置を概略的に示す側断面図であって、通常モードでの第2の収納処理の紙幣搬送ルートを太線で示すものである。
【
図10】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置を概略的に示す側断面図であって、通常モードでの第2の返却処理の紙幣搬送ルートを太線で示すものである。
【
図11】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置を概略的に示す側断面図であって、通常モードでのバラ紙幣出金処理の紙幣搬送ルートを太線で示すものである。
【
図12】本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置を概略的に示す側断面図であって、分割固定モードでの収納処理の紙幣搬送ルートを太線で示すものである。
【
図13】本発明に係る媒体処理装置の第2実施形態である硬貨処理装置の内部構成を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
本発明に係る媒体処理装置の第1実施形態である紙幣処理装置11を
図1~
図11を参照して以下に説明する。この紙幣処理装置11は、媒体として紙幣を処理するものであり、紙幣の入出金処理等を行うものである。以下では、バラ紙幣を単に紙幣と称し、紙幣を所定の結束単位枚数(100枚)で結束した紙幣を束紙幣と称す。以下の説明において、紙幣処理装置11の主たる操作時に操作者が立つ側を「前」、その反対側を「後」とする。
【0013】
[紙幣処理装置11の全体構成]
図1に示すように、紙幣処理装置11は、その装置本体10が、前面側の上部に入金部20、出金返却部21および出金リジェクト庫22を有している。出金返却部21は入金部20の上側に、出金リジェクト庫22は出金返却部21の上側に、それぞれ設けられている。
【0014】
入金部20は、開閉可能な図示略のシャッタを有しており、シャッタが開状態とされて外部から紙幣が投入され、その後、シャッタが閉じられて紙幣を装置内に繰り出す。入金部20には、前から見て紙幣が左右方向に長手方向を沿わせた姿勢で下から上に集積されて載置されることになる。入金部20には、下部に、入金部20内に集積された紙幣を下端のものから一枚ずつ分離し所定の間隔をあけて装置内へ繰り出す入金繰出部24が設けられている。紙幣は、紙幣処理装置11内で、基本的にその短手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で搬送される。
【0015】
入金繰出部24は、入金部20内に集積された紙幣のうちの最も下側の紙幣に当接して、これを装置内側に蹴り出す蹴出ローラ24aと、蹴出ローラ24aで蹴り出された紙幣を装置内に繰り出す繰出ローラ24bと、繰出ローラ24bで装置内に繰り出す紙幣を一枚ずつに分離する分離ローラ24cとを有している。入金繰出部24の直後位置には、入金繰出部24から繰り出された紙幣に、複数枚重なった状態の重送、搬送方向に対し斜めの姿勢となる斜行、あるいは隣り合う紙幣同士の搬送間隔が狭いニアフィード等の搬送異常があるか否かと、半券等の形状異常があるか否かとを光学的に検出する入口センサ25が設けられている。
【0016】
出金返却部21は、開閉可能な図示略のシャッタを有しており、シャッタが閉状態とされて装置内から出金用の紙幣が繰り出され、その後、シャッタが開かれることで紙幣が装置外に取り出し可能となる。出金返却部21には、入金処理時等にリジェクトされる紙幣も繰り出される。出金返却部21は、装置内から繰り出された紙幣が、前から見て左右方向に長手方向を沿わせた姿勢で下から上に集積されて載置されることになる。
【0017】
出金リジェクト庫22は、紙幣処理装置11の装置本体10から着脱可能となっている。出金リジェクト庫22は、装置内から繰り出された紙幣が、前から見て左右方向に長手方向を沿わせた姿勢で下から上に集積されて載置される。出金リジェクト庫22は、内部に紙幣を収納した状態のまま、装置本体10から取り外される。
【0018】
紙幣処理装置11の装置本体10の後部には、入金部20から繰り出された紙幣の真偽と、真紙幣の金種と、重送、斜行あるいはニアフィード等の搬送異常の有無等を識別し、真紙幣の金種毎の枚数を計数する識別部31が設けられている。
【0019】
装置本体10の入金部20、出金返却部21および出金リジェクト庫22の後方には、紙幣を整列させて所定の結束単位枚数ずつ集積させる複数、具体的には2カ所の整列部33,34が設けられている。また、装置本体10の整列部33,34の後方には、整列部33,34で集積された結束単位枚数の紙幣を上方に搬送する昇降搬送部35が設けられている。また、装置本体10の整列部33,34の上方には、整列部33,34で集積され昇降搬送部35で搬送されてきた結束単位枚数の紙幣に結束テープを巻き回して束紙幣とする結束部36が設けられている。装置本体10の結束部36の前側には結束部36で作成された束紙幣を装置外に取り出し可能に繰り出す束出金部37が設けられている。束出金部37も開閉可能な図示略のシャッタを有しており、シャッタが閉状態とされて装置内から束紙幣が繰り出され、その後、シャッタが開かれることで束紙幣が装置外に取り出される。
【0020】
紙幣処理装置11の下部には、複数具体的には4カ所の同様の構造の収納庫41が、上下左右の位置を合わせて前後に並べられている。これら収納庫41は、紙幣を収納可能であって収納している紙幣を繰り出し可能な還流庫である。これら収納庫41は、装置本体10から引き出し可能な引出ユニット38に着脱不可に取り付けられている。
【0021】
紙幣処理装置11において、最も奥側に配置された収納庫41(A)、奥から2番目に配置された収納庫41(B)および奥から3番目に配置された収納庫41(C)は、いずれも受け入れ可能な所定の単一金種の紙幣の真券を下から上に集積させた状態で入金確定前に一時貯留すると共に、入金確定後に繰り出し可能となるように収納するものである。また、奥から4番目に配置された収納庫41(D)は、受け入れ可能な所定の単一金種の紙幣の真券および全金種の汚損券を下から上に集積させた状態で入金確定前に一時貯留すると共に、入金確定後に繰り出し可能となるように収納するものである。
【0022】
収納庫41(A)は、受け入れ可能と識別した所定の単一の第1金種の紙幣(例えば五千円券)の真券を、収納庫41(B)は、受け入れ可能と識別した所定の単一の第2金種の紙幣(例えば千円券)の真券を、収納庫41(C)は、受け入れ可能と識別した所定の単一の第3金種の紙幣(例えば万円券)の真券を、それぞれ繰り出し可能に収納する。また、収納庫41(D)は、これら以外の受け入れ可能と識別した紙幣(例えば二千円券の真券および汚損券、万円券の汚損券、五千円券の汚損券、千円券の汚損券)を、繰り出し可能に収納する。
【0023】
すなわち、紙幣処理装置11は、単一金種用(万円券用、五千円券用および千円券用)の収納庫41を複数個、金種別に有している。なお、収納庫41は、複数個あれば良く、収納パターンは、それぞれが単一金種の紙幣を収納するパターンに限らない。複数の収納庫41のそれぞれについて、収納パターンを、単一金種の紙幣を収納する収納庫41と、所定の複数金種の紙幣を混合で収納する収納庫41と、全金種の紙幣を混合で収納する収納庫41との中から、適宜選択して設定することができる。
【0024】
同様の構造の収納庫41(A)~41(D)は、それぞれが、上下方向に延びて紙幣を収容する内部空間39を形成する角筒状の収容体40と、収容体40の上部に設けられて紙幣の内部空間39への取り込みおよび内部空間39からの繰り出しを行う取込繰出部42と、内部空間39内で上下に昇降可能かつ内部空間39に対し水平方向に進退可能であって内部空間39に進入した状態で取込繰出部42から内部空間39に取り込まれた紙幣を集積させるシャッタ46と、収容体40の上下方向中間部に設けられて内部空間39を上下に仕切る開閉可能なフラッパ43と、集積状態の紙幣Sを支持すると共に内部空間39内を上下に昇降するステージ44と、内部空間39内を上下に昇降してシャッタ46あるいはステージ44上に集積された紙幣Sを上から押圧するプッシャ45と、を有している。
【0025】
フラッパ43は、収容体40に回動可能に支持されており、内部空間39内に進入して内部空間39内を上下に仕切る閉状態と、内部空間39から退避して内部空間39内を上下に仕切らない開状態との間で切り替えられる。フラッパ43は、回動するものに限られず、水平方向(前後方向)にスライドして開閉するものでも良い。
【0026】
シャッタ46は、内部空間39内を所定の上下可動範囲で昇降可能であり、この上下可動範囲の最下位置で水平方向(前後方向)に移動して内部空間39に対し進退する。シャッタ46は、内部空間39内に進入して内部空間39内を上下に仕切る閉状態と、内部空間39から退避して内部空間39内を上下に仕切らない開状態との間で切り替えられる。シャッタ46の上下可動範囲の最下位置は、閉状態のフラッパ43よりも上側となっている。
【0027】
ステージ44は、閉状態のフラッパ43よりも下側まで下降可能であり、内部空間39の下端部まで下降可能である。また、ステージ44は、内部空間39の上端部まで上昇可能である。ステージ44は、その上面と、閉状態のフラッパ43の下面との間に紙幣Sを挟持状態で保持する。
【0028】
例えば、収納庫41(A)を例にとり説明すると、取込繰出部42は、収容体40内に設けられたシャッタ46上あるいはステージ44上に集積された紙幣Sのうちの最上位置の紙幣Sに当接して、これを収納庫41(A)の外に向け蹴り出す蹴出ローラ42aと、この蹴出ローラ42aで蹴り出された紙幣Sを収納庫41(A)の外に繰り出す繰出ローラ42bと、この繰出ローラ42bで収納庫41(A)の外に繰り出す紙幣Sを一枚ずつに分離する分離ローラ42cとを有している。
【0029】
シャッタ46上の紙幣Sを取込繰出部42によって繰り出す場合、シャッタ46は取込繰出部42による紙幣Sの繰り出しに応じて上昇するように制御される。ステージ44上の紙幣Sを取込繰出部42によって繰り出す場合、ステージ44は取込繰出部42による紙幣Sの繰り出しに応じて上昇するように制御される。
【0030】
取込繰出部42は、繰出ローラ42bが、この繰り出し時とは逆向きに回転することで、連れ回りする分離ローラ42cとで紙幣Sを挟持して収納庫41(A)の内部空間39に上端位置から取り込む。シャッタ46は、取込繰出部42で内部空間39内に取り込まれた紙幣Sを上下に集積させることになり、紙幣Sの取り込みに応じて下降するように制御される。ステージ44も、取込繰出部42で内部空間39内に取り込まれた紙幣Sを上下に集積させることになり、紙幣Sの取り込みに応じて下降するように制御される。
【0031】
収納庫41(A)は、内部空間39に進入した状態のシャッタ46よりも上側が紙幣Sを一時貯留する一時貯留部48となる。収納庫41(A)は、基本的には内部空間39内の閉状態のフラッパ43と、これよりも下側のステージ44との間が紙幣Sを収納する収納部49となる。言い換えれば、収納庫41(A)は、所定条件(所定金種)の紙幣Sを繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部48と、この一時貯留部48と一対一で対応して設けられてこの一時貯留部48の紙幣Sを一括で受け入れて収納する収納部49とを有している。なお、収納庫41(A)は、シャッタ46およびフラッパ43が共に内部空間39から退避する開状態にあれば、内部空間39内のステージ44よりも上側部分全体が収納部49となる。言い換えれば、収納庫41(A)は、フラッパ43およびシャッタ46が退避した状態の内部空間39内が紙幣Sを収納する収納部49となる場合がある。
【0032】
収納庫41(A)において、シャッタ46は、閉状態で内部空間39内の上下可動範囲の最下位置に下降し、その後、開状態になることで、シャッタ46上に集積した紙幣Sを下方に受け渡すことが可能となっている。プッシャ45は、内部空間39よりも上方の待機位置から、内部空間39内に下降可能であり、さらには、フラッパ43よりも下方の所定も基準位置まで、下降可能に構成されている。内部空間39のシャッタ46上すなわち一時貯留部48に紙幣Sを集積させた後、集積させた紙幣Sを下方に受け渡す際には、まず、プッシャ45が下降して、シャッタ46上の最上位置の紙幣Sに当接し、その後、シャッタ46とプッシャ45とが、集積状態の紙幣Sを上下から挟んだ状態で、シャッタ46の上下可動範囲の最下位置まで下降する。
【0033】
ステージ44は、下方向については、内部空間39内の下端部の最下位置まで下降可能であり、上方向については、共に開状態のフラッパ43およびシャッタ46を越えて、内部空間39内の上端部の最上位置まで上昇可能に構成されている。ステージ44は、収納部49への紙幣Sの収納時には、最下位置まで下降することで収納領域を拡げることになり、最上位置まで上昇することで、ステージ44上の紙幣Sを最後の一枚まで取込繰出部42に当接させて、内部空間39の外に繰り出させるようになっている。
【0034】
収納庫41(B)~41(D)も上記した収納庫41(A)と同様である。
【0035】
収納庫41(A)~41(C)は、紙幣Sを繰り出し可能に一時貯留する複数の金種別の一時貯留部48を有している。金種別の一時貯留部48は、それぞれが単一金種の紙幣Sを取り込み可能かつ繰り出し可能に一時貯留することになる。また、収納庫41(A)~41(C)は、それぞれの一時貯留部48の直下に一対一で対応して設けられ、シャッタ46が開状態とされた同一金種用の一時貯留部48から紙幣Sを一括で受け入れて繰り出し可能に収納する収納部49を金種別に複数有している。
【0036】
紙幣処理装置11の下部には、収納庫41(D)の前側に、引出ユニット38から取り外し可能であって回収処理時に収納庫41(A)~41(D)から繰り出された紙幣Sを取り込んで収納すると共に、補充処理時に補充用の紙幣Sが装置外で装填され、装填された紙幣Sを繰り出す一括一時貯留部としての一括カセット51が一つ設けられている。一括カセット51は、紙幣Sを収納可能であって収納している紙幣Sを繰り出し可能である。一括カセット51は、引出ユニット38に対し着脱可能とされており、引出ユニット38が装置本体10から引き出された状態で、引出ユニット38から取り外される。一括カセット51は収納庫41(A)~41(D)と上下左右の位置を合わせて前後に並んでいる。
【0037】
一括カセット51は、紙幣Sを取り込み可能かつ繰り出し可能に収納するものであり、その上部には、内部に紙幣Sを取り込むと共に内部の紙幣Sを最上位置のものから一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出す取込繰出部52が設けられている。一括カセット51には、その内部空間54内を上下に昇降するステージ53が設けられている。ここで、一括カセット51には、収納庫41(A)~41(D)のようなシャッタ、フラッパおよびプッシャは設けられていない。
【0038】
取込繰出部52は、ステージ53上に集積された紙幣Sのうちの最上位置の紙幣Sに当接して、これを一括カセット51の外に向けて蹴り出す蹴出ローラ52aと、蹴出ローラ52aで蹴り出された紙幣Sを一括カセット51の外に繰り出す繰出ローラ52bと、繰出ローラ52bで一括カセット51の外に繰り出す紙幣Sを一枚ずつに分離する分離ローラ52cとを有している。繰出ローラ52bは、この繰り出し時とは逆向きに回転することで、連れ回りする分離ローラ52cとで紙幣Sを挟持して一括カセット51内に取り込む。
【0039】
一括カセット51内の紙幣Sを取込繰出部52が一括カセット51外に繰り出す際に、ステージ53は、上昇して、載置させた紙幣Sのうちの最上位置の紙幣Sを取込繰出部52の蹴出ローラ52aに当接させる。この状態で、取込繰出部52が紙幣Sを一枚ずつ分離して繰り出す。その際に、ステージ53は、取込繰出部52から繰り出された紙幣Sの量に応じて上昇する。また、取込繰出部52が一括カセット51内に紙幣Sを取り込む際に、繰出ローラ52bは、上記とは逆に回転することで、ステージ53上に紙幣Sを取り込む。ステージ53は、取込繰出部52との間に紙幣Sを取り込み可能な位置まで上昇して待機しており、取込繰出部52から取り込まれた紙幣Sの量に応じて下降する。
【0040】
紙幣処理装置11の内部には、入金部20から入金繰出部24で繰り出された紙幣Sを含んで紙幣Sを搬送する搬送部61が各部を適宜繋ぐように設けられている。搬送部61は、紙幣Sを、基本的にその短手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で移動させる。
【0041】
搬送部61は、装置本体10の前部に設けられた入金部20の紙幣Sを装置本体10の後部に設けられた識別部31に向けて搬送し、さらに、装置本体10の前部に設けられた一括カセット51に向けて搬送する搬送路61Aを有している。搬送路61Aは、入金部20の入金繰出部24から後方に、後述する搬送路61Jと搬送路61Mとの間まで延出した後、下方に延出し、その後、後方に延出して識別部31を通り、下側にて前向きに折り返して前方に延出して紙幣処理装置11内の前端から下方に延出して一括カセット51の取込繰出部52に繋がる。
【0042】
また、搬送部61は、搬送路61Aにおける一括カセット51への接続位置と識別部31との間から下方に分岐して収納庫41(A)の取込繰出部42に繋がる搬送路61Cと、搬送路61Aにおける一括カセット51への接続位置と搬送路61Cの分岐位置との間から下方に分岐して収納庫41(B)の取込繰出部42に繋がる搬送路61Dと、搬送路61Aにおける一括カセット51への接続位置と搬送路61Dの分岐位置との間から下方に分岐して収納庫41(C)の取込繰出部42に繋がる搬送路61Eと、搬送路61Aにおける一括カセット51への接続位置と搬送路61Eの分岐位置との間から下方に分岐して収納庫41(D)の取込繰出部42に繋がる搬送路61Fとを有している。
【0043】
また、搬送部61は、搬送路61Aにおける搬送路61Fの分岐位置と一括カセット51との間から上方に分岐した後に後方に延出して、搬送路61Aの入金部20から識別部31に向かいつつ下方に延出する部分の下部に繋がる搬送路61Gと、搬送路61Aの搬送路61Fの分岐位置と搬送路61Gの分岐位置との間位置から上方に分岐して搬送路61Gの途中位置に繋がる搬送路61Hと、搬送路61Gにおける搬送路61Hの接続位置と搬送路61Aへの接続位置との間位置から上方に分岐して搬送路61Aにおける搬送路61Gの接続位置と入口センサ25との間に繋がる搬送路61Jとを有している。
【0044】
また、搬送部61は、搬送路61Aにおける搬送路61Gの接続位置と搬送路61Jの接続位置との間から後方に分岐した後、上方に延出し、その後、前方に延出して出金返却部21に繋がる搬送路61Kと、搬送路61Kの上部の途中位置から分岐して出金リジェクト庫22に繋がる搬送路61Lとを有している。
【0045】
また、搬送部61は、搬送路61Aにおける搬送路61Gの接続位置と識別部31との間から上方に分岐して搬送路61Kにおける搬送路61Aからの分岐位置と搬送路61Lの分岐位置との間に接続される搬送路61Mと、搬送路61Aにおける搬送路61Mの分岐位置と識別部31との間から分岐して搬送路61Mの中間位置に繋がる搬送路61Nとを有している。搬送路61Nには、紙幣Sの表裏を反転させる表裏反転部63が設けられている。
【0046】
また、搬送部61は、搬送路61Kにおける搬送路61Lの分岐位置と搬送路61Mの合流位置との間から後方に分岐して整列部33に繋がる搬送路61Pと、搬送路61Kにおける搬送路61Pの分岐位置と搬送路61Mの合流位置との間から後方に分岐して整列部34に繋がる搬送路61Qとを有している。
【0047】
識別部31は、搬送部61によって搬送される紙幣Sを識別することになり、収納庫41(A)~41(D)および一括カセット51は、識別部31によって識別された紙幣Sを繰り出し可能に収納する。
【0048】
ここで、搬送部61は、例えば、識別部31を経由した紙幣Sを搬送路61A,61C~61Fによって一括カセット51および収納庫41(A)~41(D)へ搬送可能であり、一括カセット51から繰り出した紙幣Sを搬送路61A,61G,61C~61Fによって、識別部31を経由して収納庫41(A)~41(D)へ搬送可能である。
【0049】
紙幣処理装置11は、紙幣処理装置11の全体を制御する制御部71と、操作者によって操作入力がなされると共に操作者に対して表示を行う操作表示部72(選択手段)と、を有している。制御部71は、識別部31の識別および計数結果等に基づいて収納庫41(A)~41(D)のそれぞれの収納部49に収納している紙幣Sの枚数および一時貯留部48に一時貯留している紙幣Sの枚数等を把握可能となっている。
【0050】
[紙幣処理装置11の動作]
次に、制御部71により制御されて行われる紙幣処理装置11の主な処理および動作について説明する。
【0051】
ここで、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)の使用において、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれの一時貯留部48を所定条件の紙幣Sを繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれの収納部49を一対一で対応する一時貯留部から紙幣Sを一括で受け入れて収納する収納部として使用する分割使用モードと、一括カセット51を所定条件の紙幣Sを繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれの一時貯留部48および収納部49を一括カセット51から紙幣Sを受け入れて収納する収納部として使用する一体化使用モードとに、切り替えが可能である。収納庫41(A)~41(D)は、一体化使用モードに切り替えられると、分割使用モードにおいて一時貯留部48および収納部49を構成していた内部空間39の全体が収納部49となる。
【0052】
具体的に、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれについて分割使用モードと一体化使用モードとを自動的に切り替えて行う通常モードと、収納庫41(A)~41(D)の全てを分割使用モードに固定して使用する分割固定モードとに、操作表示部72への操作入力により切り替えられる。言い換えれば、操作表示部72は、収納庫41(A)~41(D)を分割使用モードに固定する分割固定モードと、収納庫41(A)~41(D)を分割使用モードと一体化使用モードとに切り替え可能な通常モードとのうちの一方のモードを選択可能とする。なお、通常モードは、一括カセット51が紙幣Sのない空の状態であることを条件に選択可能となっている。
【0053】
{通常モード}
まず、通常モードが選択された状態での紙幣処理装置11の動作について説明する。
【0054】
通常モードが選択された状態で、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれについて、分割使用モードおよび一体化使用モードのうち分割使用モードを優先して選択する。ここでは、まず、収納庫41(A)~41(D)の全てが分割使用モードとされている状態から説明する。
【0055】
なお、分割使用モードにおいて、待機状態にあるとき、収納庫41(A)~41(D)は、プッシャ45を内部空間39から上方に退避させており、フラッパ43は閉状態とされている。また、この待機状態にあるとき、シャッタ46は、閉状態とされ、内部空間39内のフラッパ43よりも上方であって取込繰出部42から繰り出される紙幣Sを受け入れる所定の待機位置にある。さらに、この待機状態にあるとき、ステージ44は閉状態のフラッパ43よりも下側にあってフラッパ43との間の収納部49内に紙幣Sを挟持している。言い換えれば、フラッパ43は、収納部49に収納済みの紙幣Sのうちの最上位置の紙幣Sに当接してそのフラッパ43を越える上方への移動を規制している。加えて、この待機状態にあるとき閉状態のシャッタ46上すなわち一時貯留部48は空の状態となっている。
【0056】
一括カセット51は、待機状態にあるとき、空の状態であり、そのステージ53が、内部空間54内に取込繰出部52で取り込む紙幣Sを受け入れる上部の所定の待機位置に位置している。
【0057】
「第1の入金処理」
第1の入金処理は、収納庫41(A)~41(D)の全てが分割使用モードとされている状態で行われる入金処理である。
図2の太線は、装置外から入金部20に投入された紙幣Sを搬送しつつ識別および計数して収納庫41(A)~41(D)に一時貯留する第1の入金処理の紙幣搬送ルートを示している。
【0058】
制御部71は、操作表示部72に入金処理の選択操作がなされると、収納庫41(A)~41(D)の全てが分割使用モードとされているか否かを判定し、収納庫41(A)~41(D)の全てが分割使用モードとされている場合、紙幣処理装置11に第1の入金処理を開始させることになる。すると、紙幣処理装置11は、シャッタを開いて入金部20に紙幣Sを受け入れる状態になり、入金部20に紙幣Sを受け入れるとシャッタを閉じる。その後、入金繰出部24が、入金部20に投入された紙幣Sを最下のものから順に、蹴出ローラ24aで蹴り出し繰出ローラ24bおよび分離ローラ24cで一枚ずつに分離しつつ所定の間隔をあけて繰り出すことになり、繰り出した紙幣Sを、搬送路61Aが搬送することになる。入金繰出部24から繰り出された紙幣Sは、繰り出し直後に入口センサ25で、搬送異常の有無と形状異常の有無とが検出される。
【0059】
制御部71は、入口センサ25で搬送異常あるいは形状異常があることが検出された異常紙幣については、
図2に太実線から太一点鎖線で示すように、搬送路61Aの入金部20側の部分と搬送路61Mおよび搬送路61Kとで出金返却部21に搬送する。他方、入口センサ25で搬送異常および形状異常のいずれも検出されなかった紙幣Sについては、
図2に太実線で示すように、搬送路61Aで識別部31に搬送する。そして、この搬送中に識別部31が紙幣Sを識別および計数することになり、制御部71は、識別部31が受け入れ可能と識別した紙幣Sを、
図2に太実線で示すように、搬送路61C~61Fの適宜のもので振り分ける。
【0060】
これにより、収納庫41(A)~41(D)が、それぞれ取込繰出部42によって、一時貯留部48の閉状態で受入位置にあるシャッタ46上に紙幣Sを集積させることになる。すなわち、制御部71は、受け入れ可能と識別した紙幣Sのうち、第1金種の紙幣S(例えば五千円券)の真券を収納庫41(A)の一時貯留部48のシャッタ46上に、第2金種の紙幣S(例えば千円券)の真券を収納庫41(B)の一時貯留部48のシャッタ46上に、第3金種の紙幣S(例えば万円券)の真券を収納庫41(C)の一時貯留部48のシャッタ46上に、これら以外の紙幣S(例えば二千円券)の真券および全金種の受け入れ可能な汚損券を収納庫41(D)の一時貯留部48のシャッタ46上に、それぞれ集積させる。このようにして、制御部71は、識別部31で識別された紙幣Sを収納庫41(A)~41(D)の対応するものの一時貯留部48に一時貯留する。収納庫41(A)~41(D)は、それぞれのシャッタ46がそれぞれの一時貯留部48に取り込んだ紙幣Sの量に応じて下降する。
【0061】
他方、制御部71は、入金部20から入金繰出部24で繰り出された紙幣Sのうち、識別部31で受け入れ不可と識別した紙幣S、すなわち金種識別できない金種識別不良の紙幣Sと、重送、斜行あるいはニアフィード等の搬送異常の紙幣Sとをリジェクト紙幣として、
図2に太実線、太破線および太一点鎖線で示すように、搬送路61Aから搬送路61H、搬送路61G、搬送路61A、搬送路61Mおよび搬送路61Kで出金返却部21に搬送する。
【0062】
なお、このとき、入金部20から出て搬送路61A上を識別部31に向かう紙幣Sと、搬送路61H,61Gから搬送路61Aを通って搬送路61Mに向かう紙幣Sとが、搬送路61Aの一部を共通使用することになるため、この部分で交差する可能性がある。このため、識別部31で紙幣Sを受け入れ不可と判定すると、制御部71は、この紙幣Sとの交差のタイミングを見計らって、入金繰出部24を停止させて、入金部20からの紙幣Sの繰り出しを中断する。識別部31で受け入れ不可と判定されたリジェクト紙幣Sが、その後、搬送路61Aから搬送路61Mに入ると、制御部71は、入金繰出部24の駆動を再開させる。
【0063】
以上の第1の入金処理の動作を行うことによって、入金部20の紙幣Sがなくなり、入金部20から繰り出された全ての紙幣Sが、収納庫41(A)~41(D)の一時貯留部48および出金返却部21のいずれかに搬送されると、制御部71は、出金返却部21のシャッタを開いて出金返却部21から紙幣Sを取り出し可能にすると共に、識別部31で受け入れ可能と判定して収納庫41(A)~41(D)の一時貯留部48に一時貯留した紙幣Sの金種別の枚数および総額等を操作表示部72に表示させる。そして、制御部71は、操作表示部72への入金確定操作および入金キャンセル操作の入力を待機する状態となって第1の入金処理を終了する。
【0064】
「第1の収納処理」
制御部71は、上記第1の入金処理の後、操作表示部72への入金確定操作が入力された入金確定時には、入金を確定すると共に、第1の入金処理にて収納庫41(A)~41(D)の一時貯留部48に一時貯留した紙幣Sを、収納庫41(A)~41(D)の収納部49に一括して収納する第1の収納処理を行う。
図3の太線は、この第1の収納処理の紙幣搬送ルートを示している。
【0065】
ここでは、第1の収納処理において同様の受渡動作を行う収納庫41(A)~41(D)のうち、収納庫41(A)の受渡動作を例にとり説明する。
【0066】
制御部71は、収納庫41(A)について、受渡動作として、
図4(a)に示すように、プッシャ45を下降させて、閉状態のシャッタ46上の集積紙幣Sの最上位置の紙幣Sに当接させ、このようにしてシャッタ46とプッシャ45とで集積紙幣Sを上下から挟んだ状態で、シャッタ46とプッシャ45とを、シャッタ46が閉状態のフラッパ43の直上の最下位置に位置するまで下降させる。
【0067】
次に、制御部71は、
図4(b)に示すように、シャッタ46を開いて内部空間39から退避させる。これにより、シャッタ46上の集積紙幣Sが閉状態のフラッパ43上に受け渡される。より正確には、シャッタ46上の集積紙幣Sは、シャッタ46が開くことで、僅かながら落下してフラッパ43上に載置される。これと併せて、シャッタ46上の最上位置の紙幣Sを抑えていたプッシャ45も下降する。
【0068】
このようにしてシャッタ46上の集積紙幣Sが閉状態のフラッパ43上に受け渡されると、続いて、制御部71は、
図4(c)に示すように、フラッパ43を開く。これにより、ステージ44上に既に収納されている紙幣Sの上に、フラッパ43上にあった紙幣Sが受け渡されて、これらが一体的にステージ44上に集積される。
【0069】
このとき、大抵、最上位置の紙幣Sの高さ位置は、フラッパ43が閉じる位置よりも高くなるため、開いた状態のフラッパ43をそのまま閉じることはできない。そのため、制御部71は、まず、プッシャ45を下降させ、少し遅れて、ステージ44も下降させる。すると、プッシャ45とステージ44とが、上下から紙幣Sを挟んで一体化された状態で下降する。そして、
図5(a)に示すように、プッシャ45を、フラッパ43が閉じられてもフラッパ43と紙幣Sとを干渉させない基準位置まで下降させて受渡動作を終了する。プッシャ45が基準位置まで下降したことの検知は図示略のセンサが行う。
【0070】
受渡動作において、このようにプッシャ45が基準位置まで下降できれば、開状態のフラッパ43を閉位置に戻すことが可能となるため、制御部71は、
図5(b)に示すように、第1戻り動作としてフラッパ43を閉位置に戻す。
【0071】
次に、制御部71は、第1戻り動作の続きとして、プッシャ45とステージ44とを上昇させる。このとき、プッシャ45は、フラッパ43を越えて上昇することになり、制御部71は、
図5(c)に示すように、プッシャ45を内部空間39よりも上方の待機位置まで戻す。また、制御部71は、ステージ44を、ステージ44上の収納紙幣Sの最上位置の紙幣Sが、閉状態にあるフラッパ43に係止されて、その上昇が規制されるまで、上昇させて第1戻り動作を終了する。なお、プッシャ45とフラッパ43とは、プッシャ45が上昇駆動される過程で閉位置にあるフラッパ43と交差することになるので、この交差時に、互いに干渉し合わないような形状となっている。
【0072】
以上の受渡動作および第1戻り動作を収納庫41(A)~41(D)の全てについて行うことができると、収納庫41(A)~41(D)を全て、シャッタ46を閉状態とする等、分割使用モードでの待機状態に戻して第1の収納処理を終了する。
【0073】
一時貯留部48と収納部49とを有する状態の収納庫41(A)~41(D)は、第1の入金処理および第1の収納処理によって、当初の分割使用モードで運用された状態で、一時貯留動作を受け入れて、その後、収納動作も受け入れた場合、これら一連の処理後であっても、分割使用モードが維持された状態となり、次の取引の一時貯留動作からの受け入れが可能となる。つまり、第1の入金処理および第1の収納処理を行った後も、収納庫41(A)~41(D)の全部が分割使用モードに維持されていれば、次の入金処理も第1の入金処理となる。
【0074】
他方、収納庫41(A)~41(D)のうちの少なくともいずれか一つ、例えば、収納庫41(A)において、受渡動作によってプッシャ45とステージ44とを集積紙幣Sを挟んで下降させたときに、
図6(a)に示すように、ステージ44が最下位置に位置してもプッシャ45が上記した基準位置まで下降できない場合がある。この場合、フラッパ43を閉じるとフラッパ43と集積紙幣Sとが干渉してしまう。このため、制御部71は、ステージ44が最下位置に位置し且つプッシャ45が基準位置まで下降できなかったことを図示略のセンサで検知すると、収納庫41(A)が一時貯留部48と収納部49とを分割して使用する分割使用モードでは以後の取引において紙幣Sの一時貯留部48への一時貯留が不可であると判断し、収納庫41(A)を一体化使用モードに切り替えて、第2戻り動作を行わせる。
【0075】
すなわち、制御部71は、一の入金取引において、分割使用モードで使用している収納庫41の一時貯留部48の紙幣Sを、一時貯留部48と一対一で対応して設けられる収納部49に移動させた際、この収納庫41が分割使用モードでは以後の取引において紙幣Sの一時貯留部48への一時貯留が不可と判断される状態となったときには、この収納庫41を一体化使用モードに切り替える。その際に、紙幣Sの一時貯留が不可と判断される状態となったか否かは、一時貯留部48の紙幣Sを収納部49に収納した後の一時貯留部48と収納部49との対の状態に基づいて判断することになり、一時貯留部48の紙幣Sを収納部49に収納した後に、対となる一時貯留部48が、独立して、所定の動作(フラッパ43の閉動作)を行うことが不可能となった状態が紙幣Sの一時貯留が不可と判断される状態となる。
【0076】
第2戻り動作では、シャッタ46は開状態のままとし、フラッパ43も開状態のままとして、次の取引に備えて、プッシャ45とステージ44とを上昇させる。そして、制御部71は、
図6(b)に示すように、プッシャ45を内部空間39よりも上方の待機位置まで戻す。また、制御部71は、ステージ44を、ステージ44上の収納紙幣Sの最上位置の紙幣Sが、上部の取込繰出部42に当接する高さまで上昇させる。この状態が一体化使用モードでの待機状態となる。これにより、一体化使用モードになった収納庫41(A)については、次の取引が出金である場合には、取込繰出部42によって直ちに紙幣Sの繰り出しが可能となる。制御部71は、他の収納庫41(B)~41(D)についても、受渡動作後に一体化使用モードになった場合は、同様の第2戻り動作を行わせる。このように一体化使用モードになった収納庫41は、収納庫41の全体が一時貯留部のない収納部49として使用される。
【0077】
以上のように、制御部71は、受渡動作後、収納庫41(A)~41(D)のうち分割使用モードのままの収納庫41の全てについて第1戻り動作を行わせ、受渡動作後、収納庫41(A)~41(D)のうち一体化使用モードに切り替えられた収納庫41の全てについて第2戻り動作を行わせる。その後、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のうち分割使用モードのままの収納庫41の全てを分割使用モードでの待機状態に戻し、収納庫41(A)~41(D)のうち一体化使用モードの収納庫41の全てを一体化使用モードでの待機状態にすると、第1の収納処理を終了する。勿論、収納庫41(A)~41(D)の全てが一体化使用モードとなり、これら全てを一体化使用モードでの待機状態にして、第1の収納処理を終了する場合もある。
【0078】
なお、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれについて、上記のようにステージ44が最下位置に位置し且つプッシャ45が基準位置まで下降できなかったことを図示略のセンサで検知すると、一体化使用モードに切り替えるようにした。しかしながら、これに限らない。例えば、制御部71は、識別部31の識別結果等から収納庫41(A)~41(D)のそれぞれの紙幣Sの収納部49での収納枚数および一時貯留部48への一時貯留枚数も把握している。このため、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれについて、一時貯留部48および収納部49の紙幣Sの枚数を加算した値、すなわち収納処理によって収納部49に収納される紙幣Sの枚数が所定のニアフル枚数以上となってニアフルの状態になるか、もしくは所定のフル枚数以上となってフル状態になる場合に、分割使用モードでは以後の取引において紙幣Sの一時貯留部48への一時貯留が不可と判断される状態となったものとして、一体化使用モードに切り替えるようにしても良い。
【0079】
あるいは、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれについて、収納部49の紙幣Sの集積高さを検知するセンサを設け、集積高さがニアフル状態もしくはフル状態になったと判断できる高さとなったことがセンサで検知された場合に、分割使用モードでは以後の取引において紙幣Sの一時貯留部48への一時貯留が不可と判断される状態となったものとして、一体化使用モードに切り替えるようにしても良い。
【0080】
「第1の返却処理」
第1の入金処理後、操作表示部72へ入金キャンセル操作が入力された入金キャンセル時に、制御部71は、入金を確定せず、第1の入金処理にて収納庫41(A)~41(D)の一時貯留部48に一時貯留した紙幣Sを全て、出金返却部21に繰り出す第1の返却処理を行う。
図7の太線は、この第1の返却処理の紙幣搬送ルートを示している。
【0081】
第1の返却処理において、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のうち一時貯留部48に一時貯留している紙幣Sがあるもの全てについて第1返却動作を行わせる。例えば、収納庫41(A)の一時貯留部48に一時貯留している紙幣Sがある場合、収納庫41(A)に対し、第1返却動作として、シャッタ46を上昇させて、このシャッタ46上の紙幣Sの最上位置のものを取込繰出部42に当接させ、シャッタ46上の紙幣Sの最上位置のものから蹴出ローラ42aで蹴り出させ繰出ローラ42bおよび分離ローラ42cで一枚ずつに分離しつつ所定の間隔をあけて繰り出させることになり、繰り出された紙幣Sを、
図7に太実線で示すように、搬送路61C,61A,61Kで出金返却部21に搬送する。また、収納庫41(B)の一時貯留部48に一時貯留している紙幣Sがある場合、第1返却動作として、この一時貯留部48の紙幣Sを同様にして繰り出させ、搬送路61D,61A,61Kで出金返却部21に搬送する。収納庫41(C)の一時貯留部48に一時貯留している紙幣Sがある場合、第1返却動作として、この一時貯留部48の紙幣Sを同様にして繰り出させ、搬送路61E,61A,61Kで出金返却部21に搬送する。収納庫41(D)の一時貯留部48に一時貯留している紙幣Sがある場合、第1返却動作として、この一時貯留部48の紙幣Sを同様にして繰り出させ、搬送路61F,61A,61Kで出金返却部21に搬送する。第1の返却処理の最後に、制御部71は、いずれも分割使用モードである収納庫41(A)~41(D)を分割使用モードでの待機状態にそれぞれ戻すと共に、出金返却部21のシャッタを開いて出金返却部21から紙幣Sを取り出し可能にする。
【0082】
「第2の入金処理」
第2の入金処理は、全収納庫41(A)~41(D)のうちの少なくともいずれか一つが一体化使用モードとなっている状態で行われる入金処理である。第2の入金処理は、全収納庫41(A)~41(D)のうち、この第2の入金処理の前に一体化使用モードに切り替えられている収納庫41に関しては、切り替え以後の取引において、一括カセット51へ紙幣Sの一時貯留を行う処理である。ここでは、収納庫41(A),41(B)が一体化使用モードであり、収納庫41(C),41(D)が分割使用モードである場合を例にとり説明する。
【0083】
図8の太線は、装置外から入金部20に投入された紙幣Sを搬送しつつ識別および計数して、分割使用モードであれば収納庫41(A),41(B)に一時貯留するべき紙幣Sを、収納庫41(A),41(B)が一体化使用モードであることから、一括カセット51に一時貯留し、分割使用モードの収納庫41(C),41(D)については、第1の入金処理と同様に処理する第2の入金処理の紙幣搬送ルートを示している。
【0084】
操作表示部72に入金処理の選択操作がなされると、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のうちの少なくともいずれか一つの収納庫41が一体化使用モードとされているか否かを判定し、収納庫41(A)~41(D)のうちの少なくともいずれか一つの収納庫41が一体化使用モードとされている場合、紙幣処理装置11に第2の入金処理を開始させることになる。
【0085】
すると、第1の入金処理と同様、制御部71は、入金部20に投入された紙幣Sのうち、入口センサ25で搬送異常あるいは形状異常があることが検出された異常紙幣については、
図8に太実線から太一点鎖線で示すように、搬送路61Aの入金部20側の部分と搬送路61M,61Kとで出金返却部21に搬送する。他方、入口センサ25で搬送異常および形状異常のいずれも検出されなかった紙幣Sについては、
図8に太実線で示すように、搬送路61Aで識別部31に搬送する。そして、この搬送中に識別部31が紙幣Sを識別および計数することになり、制御部71は、識別部31が受け入れ可能と識別した紙幣Sを、
図8に太実線で示すように、搬送路61A,61E,61Fで振り分ける。
【0086】
これにより、分割使用モードである収納庫41(C),41(D)が、一時貯留部48の閉状態で受入位置にあるシャッタ46上に紙幣Sを集積させることになり、一括カセット51が、一体化使用モードである収納庫41(A),41(B)に収納すべき紙幣Sを受入位置にあるステージ53上に集積させることになる。すなわち、制御部71は、受け入れ可能と識別した紙幣Sのうち、第1金種の紙幣S(例えば五千円券)および第2金種の紙幣S(例えば千円券)を一括カセット51のステージ53上に、残りの金種の紙幣Sについては、第1の入金処理と同様に、収納庫41(C),41(D)のそれぞれの一時貯留部48のシャッタ46上に、それぞれ一時貯留する。このようにして、識別部31で識別された紙幣Sを一括カセット51および分割使用モードの収納庫41(C),41(D)の一時貯留部48に一時貯留する一方、一体化使用モードである収納庫41(A),41(B)には一時貯留しない。第2の入金処理においても、制御部71は、入金部20から入金繰出部24で繰り出された紙幣Sのうち、識別部31で受け入れ不可と識別した紙幣Sについては、リジェクト紙幣として、第1の収納処理と同様にして出金返却部21に搬送する。
【0087】
このようにして、収納庫41(A)~41(D)のうち、一体化使用モードとされている収納庫41には紙幣Sを一時貯留せず、分割使用モードとされている収納庫41のみに紙幣Sを一時貯留する。また、収納庫41(A)~41(D)のうち一体化使用モードとされている収納庫41に一時貯留するべき紙幣Sを一括カセット51に一時貯留する。よって、収納庫41(A)~41(D)のうち一体化使用モードとされている収納庫41が複数ある場合、一括カセット51は複数金種を混合状態で一時貯留する。収納庫41(A)~41(D)のうち一体化使用モードとされているものが収納庫41(A),41(B)である場合、一括カセット51は、収納庫41(A)への第1金種の紙幣S(例えば五千円券)と第2金種の紙幣S(例えば千円券)とを混合状態で一時貯留する。
【0088】
以上の第2の入金処理の動作を行うことによって、入金部20の紙幣Sがなくなり、入金部20から繰り出された全ての紙幣Sが、一括カセット51、収納庫41(A)~41(D)のうち分割使用モードとされている収納庫41の一時貯留部48および出金返却部21のいずれかに搬送されると、制御部71は、出金返却部21のシャッタを開いて出金返却部21から紙幣Sを取り出し可能にすると共に、識別部31で受け入れ可能と判定して一括カセット51および収納庫41(A)~41(D)のうち分割使用モードとされている収納庫41の一時貯留部48に一時貯留した紙幣Sの金種別の枚数および総額等を操作表示部72に表示させる。そして、制御部71は、操作表示部72への入金確定操作および入金キャンセル操作の入力を待機する状態となって第2の入金処理を終了する。
【0089】
「第2の収納処理」
制御部71は、第2の入金処理の後、操作表示部72への入金確定操作が入力された入金確定時に、入金を確定すると共に、第2の収納処理を行う。第2の収納処理において、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のうち分割使用モードの収納庫41については、第1の収納処理と同様、受渡動作を行わせ、受渡動作後、分割使用モードが維持される収納庫41については第1戻り動作を行わせて一時貯留部48から収納部49に紙幣Sを収納する一方、受渡動作後、一体化使用モードに切り替えられる収納庫41については第2戻り動作を行わせて内部空間39の全体を収納部49として紙幣Sを収納する。
【0090】
第2の収納処理において、制御部71は、他方で、収納庫41(A)~41(D)のうち、この第2の収納処理の前に既に一体化使用モードとなっていた収納庫41については、一括カセット51から紙幣Sを受け渡す振分動作を行わせる。振分動作では、一括カセット51のステージ53を上昇させて、取込繰出部52で、このステージ53上の紙幣Sを最上位置のものから蹴出ローラ52aで蹴り出させ繰出ローラ52bおよび分離ローラ52cで一枚ずつに分離しつつ所定の間隔をあけて繰り出させることになり、繰り出された紙幣Sを、
図9に太実線で示すように、搬送路61A,61Gで識別部31に搬送する。そして、識別部31の識別結果に基づいて、この第2の収納処理前に一体化使用モードとなっていた収納庫41に、搬送路61A,61C~61Fの適宜のもので収納する。すなわち、制御部71は、一括カセット51へ一時貯留を行った取引においては、入金確定操作での収納指示を受けることで、一括カセット51に一時貯留した紙幣Sを、搬送部61により一体化使用モードの収納庫41へ搬送し収納する。しかも、制御部71は、一体化使用モードの収納庫41が複数ある状態では、一括カセット51に一時貯留した紙幣Sを、搬送部61により、識別部31に搬送し、識別部31の識別結果に基づいて、一体化使用モードの複数の収納庫41へ振り分けて搬送し収納する。
【0091】
例えば、収納庫41(A)~41(D)のうち、この第2の収納処理の直前の第2の入金処理前に既に一体化使用モードとなっていたものが上記のように収納庫41(A),41(B)の2つであった場合、この第2の入金処理では、収納先が収納庫41(A)となる第1金種の紙幣S(例えば五千円券)と収納先が収納庫41(B)となる第2金種の紙幣S(例えば千円券)とが一括カセット51に一時貯留されている。このため、制御部71は、この第2の収納処理では、
図9に太実線で示すように、一括カセット51に一時貯留されていた紙幣Sを識別部31で識別させ、その結果から、第1金種の紙幣Sは搬送路61A,61Cで収納庫41(A)に、第2金種の紙幣Sは搬送路61A,61Dで収納庫41(B)に、それぞれ搬送する。ここで、第2の収納処理では、その直前の第2の入金処理前に一体化使用モードとなっていた収納庫41については、待機状態から取込繰出部42とステージ44上の最上位置の紙幣Sとの間に紙幣Sを受け入れ可能な隙間を形成するようにステージ44を下降させて、ステージ44上の最上位置の紙幣Sの上に、取込繰出部42で取り込んだ紙幣Sを載置させることになり、取込繰出部42で取り込む紙幣量に応じて、ステージ44を下降させる。
【0092】
第2の入金処理で一時貯留した全紙幣Sが、第2の収納処理によって、収納庫41(A)~41(D)に収納されると、制御部71は、一括カセット51および収納庫41(A)~41(D)を待機状態に戻して、第2の収納処理を終了する。このとき、収納庫41(A)~41(D)のうち分割使用モードのものは分割使用モードでの待機状態に、一体化使用モードのものは一体化使用モードの待機状態に、それぞれ戻す。
【0093】
「第2の返却処理」
第2の入金処理後、操作表示部72へ入金キャンセル操作が入力された入金キャンセル時に、制御部71は、入金を確定せず、この第2の入金処理で一時貯留した全紙幣Sを出金返却部21に繰り出す第2の返却処理を行う。例えば、
図10の太線は、上記のように、収納庫41(A)~41(D)のうち、収納庫41(A),41(B)の2つが紙幣Sを一時貯留せずに一括カセット51に一時貯留し、収納庫41(C),41(C)の2つが一時貯留部48に紙幣Sを一時貯留していた場合の第2の返却処理の紙幣搬送ルートを示している。
【0094】
第2の返却処理において、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のうち一時貯留部48に一時貯留している紙幣Sがあるもの全てについて上記と同様の第1返却動作を行わせる。また、制御部71は、一括カセット51のステージ53を上昇させて、取込繰出部52で、このステージ53上の紙幣Sを最上位置のものから蹴出ローラ52aで蹴り出させ繰出ローラ52bおよび分離ローラ52cで一枚ずつに分離しつつ所定の間隔をあけて繰り出させることになり、繰り出された紙幣Sを、
図10に太実線で示すように、搬送路61A,61Kで出金返却部21に搬送する。第2の返却処理の最後に、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のうち分割使用モードのものは分割使用モードでの待機状態に、一体化使用モードのものは一体化使用モードの待機状態に、それぞれ戻すと共に、出金返却部21のシャッタを開いて出金返却部21から紙幣Sを取り出し可能にする。
【0095】
「第1のバラ紙幣出金処理」
図11の太線は、操作表示部72へ入力されたバラ紙幣出金操作に基づいて、収納庫41(A)~41(C)の指定された金種のものの収納部49から紙幣Sを出金するバラ紙幣出金処理の紙幣搬送ルートを示している。収納庫41(A)~41(C)が全て分割使用モードである場合、第1のバラ紙幣出金処理を行う。
【0096】
第1のバラ紙幣出金処理において、制御部71は、入力された金種別の出金枚数に基づき、収納庫41(A)の収納部49に収納している第1金種の紙幣Sを繰り出す場合、収納庫41(A)に第1繰出動作を行わせる。第1繰出動作では、収納庫41(A)が、シャッタ46を内部空間39から退避させて開状態とし、その後、フラッパ43を開状態として、ステージ44を上昇させる。そして、ステージ44に載置された紙幣Sを最上位置のものから蹴出ローラ42aで蹴り出し繰出ローラ42bおよび分離ローラ42cで一枚ずつに分離しつつ所定の間隔をあけて繰り出すことになる。そして、このように繰り出した紙幣Sを、制御部71は、
図11に太実線で示すように、搬送路61C,61Aで識別部31に搬送し、識別部31の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でない正常紙幣Sを、搬送路61A,61Kでそのまま出金返却部21に、表裏反転が必要な正常紙幣Sを、搬送路61Aから搬送路61Nを介して表裏反転部63で表裏反転させた後、搬送路61M,61Kで出金返却部21に、それぞれ搬送する。これにより、バラ紙幣出金操作に基づく第1金種の正常紙幣Sを出金返却部21に表裏を取り揃えながら繰り出す。なお、識別部31が搬送異常と識別したり、金種識別不良と識別した、正常紙幣S以外のリジェクト紙幣Sについては、
図11に太実線から太破線で示すように、搬送路61A,61K,61Lによって出金リジェクト庫22に搬送し、出金リジェクト庫22に収納する。
【0097】
また、第1のバラ紙幣出金処理において、収納庫41(B)の収納部49に収納している第2金種の紙幣Sを繰り出す場合、制御部71は、収納庫41(B)に同様の第1繰出動作を行わせる。第1繰出動作では、収納庫41(B)が、ステージ44に載置された紙幣Sを最上位置のものから順に取込繰出部42で繰り出させて、搬送路61D,61Aで識別部31に搬送することになり、識別部31の識別結果に基づいて、上記と同様に表裏を取り揃えながら、出金返却部21に搬送する。
【0098】
また、バラ紙幣出金処理において、収納庫41(C)の収納部49に収納している第3金種の紙幣Sを繰り出す場合、制御部71は、収納庫41(C)に同様の第1繰出動作を行わせる。第1繰出動作では、収納庫41(C)が、ステージ44に載置された紙幣Sを最上位置のものから順に取込繰出部42で繰り出させて、搬送路61E,61Aで識別部31に搬送することになり、識別部31の識別結果に基づいて、上記と同様に表裏を取り揃えながら、出金返却部21に搬送する。
【0099】
第1のバラ紙幣出金処理では、以上の第1繰出動作によって、入力された金種別の出金枚数の紙幣Sを、金種別に、表裏を取り揃えながら出金返却部21に繰り出す。第1のバラ紙幣出金処理の最後に、制御部71は、収納庫41(A)~41(C)のうち出金を行ったものは分割使用モードでの待機状態に戻すと共に、出金返却部21のシャッタを開いて出金返却部21から紙幣Sを取り出し可能にする。
【0100】
「第2のバラ紙幣出金処理」
収納庫41(A)~41(C)の少なくともいずれか一つが一体化使用モードである場合、第2のバラ紙幣出金処理を行う。
図11の太線は、操作表示部72へ入力されたバラ紙幣出金操作に基づいて、収納庫41(A)~41(C)の指定された金種のものの収納部49から紙幣Sを出金する第2のバラ紙幣出金処理の紙幣搬送ルートをも示している。
【0101】
第2のバラ紙幣出金処理において、制御部71は、入力された金種別の出金枚数に基づき、収納庫41(A)~41(C)の指定された金種のものが分割使用モードである場合、この収納庫41については、上記した第1繰出動作によって、入力された金種別の出金枚数の紙幣Sを、表裏を取り揃えながら出金返却部21に繰り出す。
【0102】
また、制御部71は、収納庫41(A)~41(C)の指定された金種のものが一体化使用モードである場合、一体化使用モードの収納庫41は、待機状態でステージ44に載置された紙幣Sの最上位置のものが取込繰出部42に当接しているため、直ぐに取込繰出部42を駆動する第2繰出動作によって、最上位置のものから順に繰り出させて搬送路61C~61Eの適宜のものと搬送路61Aとで識別部31に搬送することになり、識別部31の識別結果に基づいて、上記と同様に表裏を取り揃えながら、出金返却部21に搬送する。
【0103】
なお、制御部71は、第2のバラ紙幣出金処理においても、識別部31が搬送異常と識別したり、金種識別不良と識別した、正常紙幣S以外のリジェクト紙幣Sについては、搬送路61A,61K,61Lによって出金リジェクト庫22に搬送し、出金リジェクト庫22に収納する。
【0104】
第2のバラ紙幣出金処理では、入力された金種別の出金枚数の紙幣Sを、金種別に、表裏を取り揃えながら出金返却部21に繰り出す。第2のバラ紙幣出金処理の最後に、制御部71は、出金返却部21のシャッタを開いて出金返却部21から紙幣Sを取り出し可能にすると共に、収納庫41(A)~41(C)のうち一体化使用モードであった収納庫41が、出金により、分割使用モードに戻せると判断できる状態となったか否かを判定し、分割使用モードに戻せると判断できる状態となったら、該当する収納庫41を分割使用モードに戻して、分割使用モードでの待機状態とする。
【0105】
すなわち、制御部71は、収納庫41(A)~41(C)のうち一体化使用モードで出金を行った収納庫41について、プッシャ45を下降させて、ステージ44上の集積紙幣Sの最上位置の紙幣Sにプッシャ45を当接させ、このようにしてステージ44とプッシャ45とで集積紙幣Sを上下から挟んだ状態で、ステージ44とプッシャ45とを、下降させる。そして、制御部71は、ステージ44が最下位置に位置し且つプッシャ45が基準位置まで下降できなかったことを図示略のセンサで検知すると、一体化使用モードを維持して一体化使用モードでの待機状態に戻す一方、ステージ44が最下位置に位置する以前にプッシャ45が基準位置まで下降できたことを図示略のセンサで検知すると、開状態のフラッパ43を閉位置に戻すことが可能となるため、分割使用モードに戻し、分割使用モードでの待機状態にする。分割使用モードでの待機状態にする場合、制御部71は、上記した第1戻り動作を行わせることになり、フラッパ43を閉位置に戻すと共に、プッシャ45を内部空間39よりも上方の待機位置まで戻し、シャッタ46を閉状態とする。
【0106】
ここで、制御部71は、識別部31の識別結果等に基づいて収納庫41(A)~41(C)のそれぞれの紙幣Sの収納枚数を把握しているため、収納庫41(A)~41(C)のうち一体化使用モードであった収納庫41の出金により減少した紙幣Sの枚数、すなわちそれまでの収納枚数から出金処理により繰り出した枚数を減算した値が、所定の基準枚数以下となったら、該当する収納庫41を分割使用モードに戻して、分割使用モードでの待機状態とするようにしても良い。あるいは、収納部49の紙幣Sの集積高さが所定高さ以下になったことを図示略のセンサで検知したら、該当する収納庫41を分割使用モードに戻して、分割使用モードでの待機状態とするようにしても良い。
【0107】
なお、制御部71は、バラ紙幣出金処理に限らず、収納庫41(A)~41(D)の少なくとも一つから紙幣Sを繰り出して搬送先に搬送する処理を行った際に、繰り出しを行った収納庫41が紙幣Sの収納枚数が減り一体化使用モードから分割使用モードに戻せると判断できる状態になったら、該当する収納庫41を分割使用モードに戻して、分割使用モードでの待機状態とする。収納庫41(A)~41(D)の少なくとも一つから紙幣Sを繰り出して搬送先に搬送する処理としては、例えば、収納庫41(A)~41(C)の少なくともいずれか一つの収納庫41から搬送先として整列部33,34に紙幣Sを搬送し、結束部36で結束して束出金部37から出金させる束出金処理や、収納庫41(A)~41(D)の少なくともいずれか一つの収納庫41から搬送先として一括カセット51に紙幣Sを搬送して装置外に紙幣Sを回収する回収処理等がある。
【0108】
すなわち、制御部71は、一体化使用モードの収納庫41が、紙幣Sの一時貯留部48への一時貯留が不可と判断された状態から紙幣Sの一時貯留部48への一時貯留が可能と判断される状態となったときには、この収納庫41を分割使用モードに切り替えて、以後の取引においては、この収納庫41の一時貯留部48へ紙幣Sの一時貯留を行う。
【0109】
{分割固定モード}
次に、分割固定モードが選択された状態での紙幣処理装置11の動作について通常モードとの相違部分を中心に説明する。
【0110】
分割固定モードでは、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれについて、上記した分割使用モードでの使用となる。
【0111】
分割固定モードでは、一括カセット51には、収納庫41(A)~41(D)では収納しきれないオーパーフロー紙幣を収納可能となる。
【0112】
分割固定モードの入金処理は、通常モードの第1の入金処理と同様となっている。そして、入金処理の後、操作表示部72への入金確定操作が入力された入金確定時に行われる収納処理が、通常モードの第1の収納処理と一部異なっている。
【0113】
分割固定モードの収納処理では、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれについて、一時貯留部48に一時貯留した紙幣Sを収納部49に収納する前に、一時貯留部48の紙幣Sの一時貯留枚数が、収納部49に既に収納されている紙幣Sの枚数から事前に計算される収納許容数量の範囲内であるか否かを判定する。この収納許容数量は、収納部49の最大に収納可能な紙幣枚数である収納容量から、収納部49に既に収納されている紙幣Sの枚数を減算した値である。
【0114】
そして、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のうち、一時貯留部48の紙幣Sの一時貯留枚数が収納許容数量以下である収納庫41については、通常モードの第1の収納処理の受渡動作と第1の戻り動作とを行わせる。他方、制御部71は、収納庫41(A)~41(D)のうち、一時貯留部48の紙幣Sの一時貯留枚数が収納許容数量より大きい収納庫41については、一時貯留部48の紙幣Sを搬送路61Aと搬送路61C~61Fの適宜のものと、搬送路61Gとによって、一括カセット51に収納する。
【0115】
例えば、収納庫41(C),41(D)が、一時貯留部48の紙幣Sの一時貯留枚数が収納許容数量以下であり、収納庫41(A),41(B)が、一時貯留部48の紙幣Sの一時貯留枚数が収納許容数量より大きい場合、
図12に太線で示すように、収納庫41(C),41(D)については、一時貯留部48の紙幣Sを収納部49に受け渡すように動作させ、収納庫41(A),41(B)については、一時貯留部48の紙幣Sを取込繰出部42で繰り出させて、搬送路61C,61Dと搬送路61Aと搬送路61Gとによって、一括カセット51に収納する。
【0116】
すなわち、制御部71は、操作表示部72によって分割固定モードが選択されているとき、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれについて、分割使用モードに固定して使用すると共に、一の取引において、一の一時貯留部48への紙幣Sの一時貯留枚数が、この一時貯留部48と一対一で対応して設けられた収納部49に既に収納されている紙幣Sの数量に基づいて事前に計算される収納許容数量の範囲内となるように、この一の取引の動作を制御する。そして、制御部71は、操作表示部72によって分割固定モードが選択されているとき、収納庫41(A)~41(D)のそれぞれについて、分割使用モードに固定して使用すると共に、一の取引において、一の一時貯留部48への紙幣Sの一時貯留枚数が、この一時貯留部48と一対一で対応して設けられた収納部49に既に収納されている紙幣Sの数量に基づいて事前に計算される収納許容数量を超えるとき、この一時貯留部48の紙幣Sを一括カセット51に収納する。
【0117】
分割固定モードの返却処理は、通常モードの第1の返却処理と同様である。また、分割固定モードのバラ紙幣出金処理は、通常モードの第1のバラ紙幣出金処理と同様である。
【0118】
以上に述べた紙幣処理装置11によれば、制御部71が、収納庫41の使用において、収納庫41の一時貯留部48を所定条件の紙幣Sを繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、収納庫41の収納部49を一時貯留部48から紙幣Sを受け入れて収納する収納部49として使用する分割使用モードと、一括カセット51を所定条件の紙幣Sを繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、収納庫41の一時貯留部48および収納部49を一括カセット51から紙幣Sを受け入れて収納する収納部として使用する一体化使用モードとに、切り替えが可能である。よって、同一の収納庫41を、一時貯留部48と収納部49とを分けて使用する分割使用モードと、全体を収納部として使用する一体化使用モードとの二種類のモードで使用することができるため、大型化を抑制しつつ、使い勝手性を向上可能となる。しかも、収納庫41の全体を収納部として使用する一体化使用モードとすれば、出金可能な紙幣Sの収納容量を増大させることが、大型化することなくできる。
【0119】
また、制御部71は、一の取引において、分割使用モードで使用している収納庫41の一時貯留部48の紙幣Sを、一時貯留部48と一対一で対応して設けられる収納部49に移動させた際、この収納庫41が分割使用モードでは以後の取引において紙幣Sの一時貯留部48への一時貯留が不可と判断される状態となったときには、この収納庫41を一体化使用モードに切り替えて、以後の取引においては、一括カセット51へ紙幣Sの一時貯留を行う。よって、一時貯留部48への一時貯留が不可と判断される状態となったときには、収納庫41を一体化使用モードに自動的に切り替えることができる。従って、使い勝手性をさらに向上可能となる。
【0120】
さらに、制御部71は、一体化使用モードの収納庫41が、紙幣Sの一時貯留部48への一時貯留が不可と判断された状態から紙幣Sの一時貯留部48への一時貯留が可能と判断される状態となったときには、この収納庫41を分割使用モードに切り替えて、以後の取引においては、この収納庫41の一時貯留部48へ紙幣Sの一時貯留を行う。よって、一時貯留部48への一時貯留が可能と判断される状態となったときには、収納庫41を分割使用モードに自動的に切り替えることができる。従って、使い勝手性をさらに向上可能となる。
【0121】
制御部71は、一括カセット51へ一時貯留を行った取引においては、収納指示を受けることで、一括カセット51に一時貯留した紙幣Sを、搬送部61により一体化使用モードの収納庫41へ搬送し収納する。よって、以後の取引においても、一括カセット51へ紙幣Sの一時貯留を行うことができる。
【0122】
さらに、一体化使用モードの収納庫41が複数ある状態で、制御部71は、一括カセット51に一時貯留した紙幣Sを、搬送部61により、識別部31に搬送し、識別部31の識別結果に基づいて、一体化使用モードの複数の収納庫41へ振り分けて搬送し収納する。よって、一体化使用モードの複数の収納庫41へ紙幣Sを分類して収納することができる。
【0123】
操作表示部72によって分割固定モードが選択されているとき、制御部71は、収納庫41を分割使用モードに固定して使用すると共に、一の取引において、一の一時貯留部48への紙幣Sの一時貯留枚数が、この一時貯留部48と一対一で対応して設けられた収納部49に既に収納されている紙幣Sの数量に基づいて事前に計算される収納許容数量の範囲内となるように、この一の取引の動作を制御する。よって、収納部49が容量を超えて紙幣Sを収納することを規制できる。
【0124】
操作表示部72によって分割固定モードが選択されているとき、制御部71は、収納庫41を分割使用モードに固定して使用すると共に、一の取引において、一の一時貯留部48への紙幣Sの一時貯留枚数が、この一時貯留部48と一対一で対応して設けられた収納部49に既に収納されている紙幣Sの数量に基づいて事前に計算される収納許容数量を超えるとき、紙幣Sを一括カセット51に収納する。よって、以後の取引においても、この収納庫41を分割使用モードに固定して継続して使用することができる。
【0125】
<変形例1>
紙幣処理装置11は、金種別の収納庫41(A)~41(C)を含む4つの収納庫41(A)~41(D)を有し、共用される一括カセット51が1つ設けられていて、4つの収納庫41(A)~41(D)は、それぞれのプッシャ45、シャッタ46、フラッパ43、ステージ44を個別に駆動できるように構成されているため、その駆動機構も個別に用意する必要があって、構造的に複雑且つ高価なものとなっている。
【0126】
これに対して、変形例1として、4つの収納庫41(A)~41(D)を、二分して、駆動系の共用化を図るようにしても良い。この場合、駆動系が共用化されることで、同一の動作が必要となり、共用化した2つの収納庫41の一方において、分割使用モードでの運用が不可となると、他方の収納庫41が分割使用モードでの運用が可能であっても、同時に、一体化使用モードでの運用を強いる可能性があるが、例えば、これらの2つの収納庫41において取り扱う金種の組み合わせを工夫することで、このような運用になる可能性を小さく抑えることも可能であり、このような変形例1においても、収納庫41の分割使用モードでの運用と一体化使用モードでの運用が可能になることの効果においては何ら変わることがなく、有効である。
【0127】
<第2実施形態>
本発明に係る媒体処理装置の第2実施形態である硬貨処理装置111を
図13を参照して以下に説明する。この硬貨処理装置111は、媒体として硬貨を処理するものであり、硬貨の入出金処理等を行うものである。
【0128】
[硬貨処理装置111の全体構成]
図13に示すように、硬貨処理装置111は、受け皿状の取引口120を有している。取引口120の上方には、開閉可能なシャッタ121が設けられており、シャッタ121が開状態とされて外部から取引口120に硬貨が投入される。その後、シャッタ121が閉じられると、取引口120は、回動して、受け入れた全ての硬貨を下方の入金繰出部124に受け渡す。入金繰出部124は、受け取った硬貨を装置内に一枚ずつ間隔をあけて繰り出す。硬貨処理装置111は、装置内で硬貨を搬送する搬送部130を有している。
【0129】
搬送部130は、入金繰出部124から繰り出された硬貨を搬送する搬送路130aを有している。搬送路130aには、搬送中の硬貨を識別しつつ計数する識別部131と、識別部131で受け入れ不可と識別された硬貨を搬送路130aから落下させて排除する入金リジェクト部132と、識別部131で受け入れ可能と識別された硬貨を選別する選別部133と、を有している。
【0130】
搬送部130は、入金リジェクト部132で搬送路130aから排除された硬貨を搬送する搬送路130bと、搬送路130bで搬送されてきた硬貨を受け入れて取引口120に搬送する搬送路130cとを有している。
【0131】
選別部133は、識別部131で受け入れ可能と識別された硬貨のうちそれぞれが対応するものを搬送路130aから落下させる開閉可能な複数、具体的には6つの落下部134と、識別部131で受け入れ可能と識別された硬貨のうちの対応するものを搬送路130aから落下させる開閉可能な一つの落下部135と、を有している。
【0132】
硬貨処理装置111は、それぞれ一対一で対応する落下部134から落下する硬貨を収納する複数、具体的には6つの収納庫141と、落下部135から落下する硬貨を収納する一つの一括カセット151とを有している。複数の収納庫141はそれぞれが単一金種の硬貨を収納するように金種別に設けられている。すなわち、収納庫141は、1円硬貨用、5円硬貨用、10円硬貨用、50円硬貨用、100円硬貨用および500円硬貨用の6つ設けられている。一括カセット151は金種混合で硬貨を収納する。
【0133】
6つの収納庫141は同様の構成であるため、一つの収納庫141を例にとり説明する。収納庫141は、一対一で対応する落下部134で選別され落下させられた硬貨を上端部から内部に受け入れる。収納庫141は、硬貨を受け入れる内部空間139を有する箱状の収容体140と、内部空間139に対し進退可能であって内部空間139内に進入することで内部空間139内を上側の一時貯留部148と下側の収納部149とに分割する一方で、内部空間139外に退避することで内部空間139内を全体的に一つの収納部149とするシャッタ146とを有している。シャッタ146は、
図13の紙面表裏方向にスライドして内部空間139に対し進退する。
【0134】
収納庫141は、一時貯留部148の下部に設けられて一時貯留部148に一時貯留した硬貨を内部空間139外の搬送路130dに繰り出す繰出部143と、収納部149の下部に設けられて収納部149に収納した硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ内部空間139外の搬送路130cに繰り出す繰出部144とを有している。搬送路130dも、搬送路130cと同様、搬送部130を構成するものであり、繰出部143で一時貯留部148から繰り出された硬貨を搬送路130cに向けて搬送して搬送路130cに受け渡す。
【0135】
一括カセット151は、選別部133の落下部135で選別され落下させられた硬貨を上端部から内部に受け入れる。一括カセット151は、硬貨を受け入れる内部空間159を有する箱状の収容体160と、収容体160の下部に設けられて内部空間159に収納した硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ内部空間159外の搬送路130cに繰り出す繰出部161とを有している。
【0136】
識別部131は、搬送部130によって搬送される硬貨を識別することになり、複数の収納庫141および一括カセット151は、識別部131によって識別された硬貨を繰り出し可能に収納する。
【0137】
ここで、搬送部130は、例えば、識別部131を経由した硬貨を搬送路130aによって一括カセット151および複数の収納庫141へ搬送可能であり、一括カセット151から繰出部161により繰り出した硬貨を搬送路130c、取引口120、入金繰出部124、搬送路130aおよび選別部133によって、識別部131を経由して収納庫141へ搬送可能である。
【0138】
硬貨処理装置111は、硬貨処理装置111の全体を制御する制御部171と、操作者によって操作入力がなされると共に操作者に対して表示を行う操作表示部172(選択手段)と、を有している。制御部171は、識別部131の識別および計数結果等に基づいて複数の収納庫141のそれぞれの収納部149に収納している硬貨の枚数および一時貯留部148に一時貯留している硬貨の枚数を把握可能となっている。
【0139】
以上の硬貨処理装置111においても、一つの一括カセット151に加えて、個々の金種別の収納庫141が設けられており、個々の金種別の収納庫141は、それぞれが、一時貯留部148と収納部149との対で構成される。硬貨処理装置111の紙幣処理装置11との構造的な相違は、主に処理対象である紙幣と硬貨との違いによるもので、紙幣処理装置11では、一括カセット51および収納庫41のいずれも上入れ・上出しの構成であるが、硬貨処理装置111においては、一括カセット151および収納庫141のいずれも上入れ・下出しの構成となっている。そして、収納庫141においては、一時貯留部148に硬貨が一時貯留され、シャッタ146が紙面の表裏方向に移動することで、一時貯留部148の硬貨が直下の収納部149に収納される。
【0140】
[硬貨処理装置111の動作]
次に、制御部171により制御されて行われる硬貨処理装置111の主な処理および動作について説明する。
【0141】
ここで、制御部171は、複数の収納庫141の使用において、複数の収納庫141のそれぞれの一時貯留部148を所定条件の硬貨を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、複数の収納庫141のそれぞれの収納部149を一対一で対応する一時貯留部から硬貨を受け入れて収納する収納部として使用する分割使用モードと、一括カセット151を所定条件の硬貨を繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用し、複数の収納庫141のそれぞれの一時貯留部148および収納部149を一括カセット151から硬貨を受け入れて収納する収納部として使用する一体化使用モードとに、切り替えが可能である。複数の収納庫141は、一体化使用モードに切り替えられると、分割使用モードにおいて一時貯留部148および収納部149を構成していた内部空間139の全体が収納部149となる。
【0142】
具体的に、制御部171は、6つの収納庫141のそれぞれについて、分割使用モードと一体化使用モードとを自動的に切り替えて行う通常モードと、全部の収納庫141を分割使用モードに固定して使用する分割固定モードとに、操作表示部172への操作入力により切り替えられる。言い換えれば、操作表示部172は、複数の収納庫141を分割使用モードに固定する分割固定モードを選択可能とする。なお、通常モードは、一括カセット151が硬貨のない空の状態であることを条件に選択可能となっている。
【0143】
{通常モード}
まず、通常モードが選択された状態での硬貨処理装置111の動作について説明する。
【0144】
通常モードでは、制御部171は、全収納庫141のそれぞれについて、分割使用モードおよび一体化使用モードのうち分割使用モードを優先して選択する。ここでは、まず、全収納庫141が分割使用モードとされている状態から説明する。
【0145】
分割使用モードにおいて、待機状態にあるとき、収納庫141は、シャッタ146が内部空間139内に進入する閉状態とされている。この待機状態にあるとき、閉状態のシャッタ146上すなわち一時貯留部148は空の状態となっており、シャッタ146下の収納部149には基本的に硬貨が収納されている。一括カセット151は、待機状態にあるとき、空の状態である。
【0146】
「第1の入金処理」
第1の入金処理は、全収納庫141が分割使用モードとされている状態で行われる入金処理である。
【0147】
操作表示部172に入金処理の選択操作がなされると、制御部171は、全収納庫141が分割使用モードとされているか否かを判定し、全収納庫141が分割使用モードとされている場合、硬貨処理装置111に第1の入金処理を開始させることになる。すると、硬貨処理装置111は、シャッタ121を開いて待機状態の取引口120に硬貨を受け入れることになり、取引口120に硬貨を受け入れるとシャッタ121を閉じて取引口120を回動させ取引口120の全ての硬貨を入金繰出部124に受け渡す。その後、取引口120が待機状態に戻ると共に、入金繰出部124が、取引口120から受け取った硬貨を一枚ずつ所定の間隔をあけて繰り出すことになる。繰り出された硬貨は、搬送路130aが搬送することになり、この搬送中に識別部131が硬貨を識別および計数する。
【0148】
制御部171は、入金繰出部124で繰り出された硬貨のうち、識別部131で受け入れ可能と識別した硬貨を、落下部134の適宜のもので振り分ける。これにより、複数の収納庫141が、それぞれ一時貯留部148の閉状態のシャッタ146上に対応する単一金種の硬貨を一時貯留することになる。他方、制御部171は、入金繰出部124で繰り出された硬貨のうち、識別部131で受け入れ不可と識別した硬貨、すなわち金種識別できない金種識別不良の硬貨をリジェクト硬貨として、入金リジェクト部132により搬送路130aから落下させ、搬送路130bおよび搬送路130cで待機状態の取引口120に搬送する。
【0149】
以上の第1の入金処理の動作を行うことによって、入金繰出部124の硬貨がなくなり、入金繰出部124から繰り出された全ての硬貨が、複数の収納庫141の一時貯留部148および取引口120のいずれかに搬送されると、制御部171は、取引口120のシャッタ121を開いて取引口120から硬貨を取り出し可能にすると共に、識別部131で受け入れ可能と判定して複数の収納庫141の一時貯留部148に一時貯留した硬貨の金種別の枚数および総額等を操作表示部172に表示させる。そして、制御部171は、操作表示部172への入金確定操作および入金キャンセル操作の入力を待機する状態となって第1の入金処理を終了する。
【0150】
「第1の収納処理」
制御部171は、上記第1の入金処理の後、操作表示部172への入金確定操作が入力された入金確定時に、入金を確定すると共に、第1の入金処理にて複数の収納庫141の一時貯留部148に一時貯留した硬貨を、複数の収納庫141の収納部149に収納する第1の収納処理を行う。すなわち、制御部171は、複数の収納庫141のそれぞれにについて、受渡動作として、シャッタ146を開いて内部空間139から退避させる。これにより、シャッタ146上すなわち一時貯留部148の硬貨が収納部149に受け渡され収納部149に収納される。
【0151】
受渡動作において、全収納庫141の収納部149の硬貨の収納量がシャッタ146の閉動作に干渉しない所定の基準範囲以内であれば、制御部171は、戻り動作としてシャッタ146を閉状態に戻し、全収納庫141を分割使用モードでの待機状態に戻して第1の収納処理を終了する。ここで、全収納庫141のそれぞれの収納部149の硬貨の収納量は図示略のセンサで収納硬貨の高さを検知したり、識別部131等の計数結果に基づいて割り出したりする。
【0152】
他方、全収納庫141のうちの少なくともいずれか一つの収納庫141において、受渡動作後、収納部149の硬貨の収納量が所定の基準範囲を超える場合、制御部171は、該当する収納庫141が一時貯留部148と収納部149とを分割して使用する分割使用モードでは以後の取引において硬貨の一時貯留部148への一時貯留が不可と判断し、該当する収納庫141を一体化使用モードに切り替え、シャッタ146を開状態に維持する。この状態が収納庫141の一体化使用モードの待機状態となる。このように一体化使用モードになった収納庫141は、収納庫141の全体が一時貯留部のない収納部149として使用される。
【0153】
すなわち、制御部171は、一の入金取引において、分割使用モードで使用している収納庫141の一時貯留部148の硬貨を、一時貯留部148と一対一で対応して設けられる収納部149に移動させた際、この収納庫141が分割使用モードでは以後の取引において硬貨の一時貯留部148への一時貯留が不可と判断される状態となったときには、この収納庫141を一体化使用モードに切り替える。その際に、硬貨の一時貯留が不可と判断される状態となったか否かは、一時貯留部148の硬貨を収納部149に収納した後の一時貯留部148と収納部149との対の状態に基づいて判断することになり、硬貨を収納部149に収納した後に、対となる一時貯留部148が、独立して、所定の動作を行うことが不可能となった状態が硬貨の一時貯留が不可と判断される状態となる。
【0154】
以上のように、受渡動作後、全収納庫141のうち分割使用モードのままの収納庫141の全てについて戻り動作を行い、受渡動作後、全収納庫141のうち一体化使用モードに切り替えられた収納庫141の全てについては戻り動作を行わない。これにより、全収納庫141のうち分割使用モードのままの収納庫141の全てを分割使用モードでの待機状態に戻し、全収納庫141のうち一体化使用モードの収納庫141の全てを一体化使用モードでの待機状態にすると、第1の収納処理を終了する。勿論、全収納庫141が一体化使用モードとなり、これら全てを一体化使用モードでの待機状態にして、第1の収納処理を終了する場合もある。
【0155】
「第1の返却処理」
第1の入金処理後、操作表示部172へ入金キャンセル操作が入力された入金キャンセル時に、制御部171は、入金を確定せず、第1の入金処理にて複数の収納庫141の一時貯留部148に一時貯留した硬貨を全て、繰出部143で搬送路130dに繰り出させ、搬送路130cで待機状態の取引口120に搬送した後、シャッタ121を開いて取引口120から硬貨を取り出し可能にする第1の返却処理を行う。
【0156】
「第2の入金処理」
第2の入金処理は、全収納庫141のうちの少なくともいずれか一つが一体化使用モードとなっている状態で行われる入金処理である。第2の入金処理では、全収納庫141のうち、この第2の入金処理の前に一体化使用モードに切り替えられている収納庫141に関して、切り替え以後の取引において、一括カセット151へ硬貨の一時貯留を行う処理である。ここでは、第1の収納庫141が一体化使用モードであり、第2の収納庫141が分割使用モードである場合を例にとり説明する。
【0157】
操作表示部172に入金処理の選択操作がなされると、制御部171は、全収納庫141のうちの少なくともいずれか一つの収納庫141が一体化使用モードとされているか否かを判定し、全収納庫141のうちの少なくともいずれか一つの収納庫141が一体化使用モードとされている場合、硬貨処理装置111に第2の入金処理を開始させることになる。すると、制御部171は、第1の入金処理と同様、取引口120に受け入れた全ての硬貨を入金繰出部124に受け渡し、入金繰出部124によって硬貨を一枚ずつ所定の間隔をあけて繰り出させることになる。繰り出された硬貨は、搬送路130aが搬送することになり、この搬送中に識別部131で識別および計数される。
【0158】
制御部171は、識別部131で受け入れ可能と識別した硬貨を、落下部134,135の適宜のもので振り分ける。すなわち、分割使用モードの第2の収納庫141に収納すべき硬貨を、第2の収納庫141の一時貯留部148の閉状態のシャッタ146上に一時貯留することになり、一体化使用モードの第1の収納庫141に収納すべき硬貨を、一括カセット151に一時貯留する。他方、制御部171は、入金繰出部124で繰り出された硬貨のうち、識別部131で受け入れ不可と識別した硬貨をリジェクト硬貨として、入金リジェクト部132により搬送路130aから落下させ、搬送路130bおよび搬送路130cで待機状態の取引口120に搬送する。
【0159】
以上の第2の入金処理の動作を行うことによって、入金繰出部124の硬貨がなくなり、入金繰出部124から繰り出された全ての硬貨が、第2の収納庫141の一時貯留部148、一括カセット151および取引口120のいずれかに搬送されると、制御部171は、取引口120のシャッタ121を開いて取引口120から硬貨を取り出し可能にすると共に、識別部131で受け入れ可能と判定して第2の収納庫141の一時貯留部148および一括カセット151に一時貯留した硬貨の金種別の枚数および総額等を操作表示部172に表示させる。そして、制御部171は、操作表示部172への入金確定操作および入金キャンセル操作の入力を待機する状態となって第2の入金処理を終了する。ここで、全収納庫141のうち一体化使用モードとされている第1の収納庫141が複数ある場合、一括カセット151は複数金種を混合状態で一時貯留する。
【0160】
「第2の収納処理」
制御部171は、上記第2の入金処理の後、操作表示部172への入金確定操作が入力された入金確定時に、入金を確定すると共に、第2の入金処理にて第2の収納庫141の一時貯留部148に一時貯留した硬貨を、第2の収納庫141の収納部149に収納すると共に、第2の入金処理にて一括カセット151に一時貯留した硬貨を、第1の収納庫141の収納部149に収納する第2の収納処理を行う。
【0161】
すなわち、制御部171は、第2の収納庫141について、受渡動作として、シャッタ146を開いて内部空間139から退避させる。これにより、シャッタ146上すなわち一時貯留部148の硬貨が収納部149に受け渡される。受渡動作後、第1の収納処理と同様の判断を行うことになり、分割使用モードが維持される収納庫141については戻り動作を行わせる一方、受渡動作後、一体化使用モードに切り替えられる収納庫141については戻り動作を行わせず内部空間139の全体を収納部149として硬貨を収納する。
【0162】
第2の収納処理において、制御部171は、他方で、全収納庫141のうち、この第2の収納処理の前に既に一体化使用モードとなっていた第1の収納庫141については、一括カセット151から硬貨を受け渡す振分動作を行わせる。振分動作では、一括カセット151に一時貯留していた硬貨を全て繰出部161で搬送路130cに繰り出させ、搬送路130c、取引口120、入金繰出部124および搬送路130aで搬送させる。そして、制御部171は、識別部131の識別結果に基づいて、落下部134の対応するもので一体化使用モードの第1の収納庫141の対応するものに硬貨を落下させる。このとき、一体化使用モードの第1の収納庫141が複数ある状態では、制御部171は、一括カセット151に一時貯留した硬貨を、識別部131の識別結果に基づいて、一体化使用モードの複数の第1の収納庫141へ振り分けて搬送し収納部149に収納する。
【0163】
第2の入金処理で一時貯留した全硬貨が、第2の収納処理によって、収納庫141に収納されると、制御部171は、一括カセット151および全収納庫141を待機状態に戻して、第2の収納処理を終了する。このとき、全収納庫141のうち、分割使用モードのものは分割使用モードでの待機状態に、一体化使用モードのものは一体化使用モードの待機状態に、それぞれ戻す。
【0164】
「第2の返却処理」
第2の入金処理後、操作表示部172へ入金キャンセル操作が入力された入金キャンセル時に、制御部171は、入金を確定せず、この第2の入金処理で一時貯留した全硬貨を取引口120に繰り出す第2の返却処理を行う。
【0165】
第2の返却処理において、制御部171は、全収納庫141のうち一時貯留部148に一時貯留している硬貨があるもの全てについて第1の返却処理と同様の動作を行わせて一時貯留部148に一時貯留している全硬貨を搬送路130d,130cで取引口120に搬送する。また、制御部171は、一括カセット151に一時貯留していた全硬貨を繰出部161で搬送路130cに繰り出させ、搬送路130cで取引口120に搬送する。最後に、制御部171は、複数の収納庫141のうち分割使用モードのものは分割使用モードでの待機状態に、一体化使用モードのものは一体化使用モードの待機状態に、それぞれ戻すと共に、取引口120のシャッタ121を開いて取引口120から硬貨を取り出し可能にする。
【0166】
「硬貨出金処理」
制御部171は、操作表示部172へ入力された硬貨出金操作に基づいて、収納庫141の指定された金種のものの収納部149から硬貨を出金する硬貨出金処理を行う。すなわち、制御部171は、入力された金種別の出金枚数に基づき、収納庫141の指定された金種のものの収納部149から繰出部144によって、硬貨を計数しつつ繰り出させる。そして、制御部171は、繰り出された硬貨を搬送路130cによって待機状態の取引口120に搬送させる。硬貨出金処理の最後に、制御部171は、取引口120のシャッタ121を開いて取引口120から硬貨を取り出し可能にすると共に、収納庫141のうち一体化使用モードであった第1の収納庫141が、出金により、分割使用モードに戻せると判断できる状態となったか否かを判定し、分割使用モードに戻せると判断できる状態となったら、該当する収納庫141を分割使用モードに戻して、分割使用モードでの待機状態とする。
【0167】
すなわち、制御部171は、出金により、一体化使用モードであった第1の収納庫141の収納部149の硬貨の収納量が所定の基準範囲以内となったら、該当する収納庫141を分割使用モードに戻して、分割使用モードでの待機状態とする。他方、制御部171は、出金によっても、一体化使用モードであった第1の収納庫141の収納部149の硬貨の収納量が所定の基準範囲以内とならなければ、該当する収納庫141を一体化使用モードに維持する。
【0168】
なお、制御部171は、硬貨出金処理に限らず、複数の収納庫141の少なくとも一つから硬貨を繰り出して搬送先に搬送する処理を行った際に、繰り出しを行った収納庫141が硬貨の収納枚数が減り一体化使用モードから分割使用モードに戻せると判断できる状態になったら、該当する収納庫141を分割使用モードに戻して、分割使用モードでの待機状態とする。複数の収納庫141の少なくとも一つから硬貨を繰り出して搬送先に搬送する処理としては、例えば、全収納庫141のうちの少なくともいずれか一つの収納庫141から搬送先として一括カセット151に硬貨を搬送して装置外に回収する回収処理等がある。
【0169】
すなわち、制御部171は、一体化使用モードの収納庫141が、硬貨の一時貯留部148への一時貯留が不可と判断された状態から硬貨の一時貯留部148への一時貯留が可能と判断される状態となったときには、この収納庫141を分割使用モードに切り替えて、以後の取引においては、この収納庫141の一時貯留部148へ硬貨の一時貯留を行う。
【0170】
硬貨処理装置111も、収納部149の収納量が増加し、シャッタ146を閉じることができない状態となると、分割使用モードでの運用が不可となり、以後の取引においては、一体化使用モードでの運用となって常時シャッタ146は開状態となり、一体化使用モードの収納庫141に関わる硬貨は一括カセット151での一時貯留がなされる。
【0171】
そして、一括カセット151に一時貯留された硬貨は、繰出部161で搬送路130cに繰り出され、搬送路130cによって、取引口120を経由して入金繰出部124に案内され、識別部131、選別部133を経由して、一体化使用モードにある該当金種の収納庫141に収納される。他方、一時貯留部148の硬貨を返却する際には、シャッタ146の移動に代えて、複数の収納庫141の側面に配置された繰出部143から一時貯留部148の硬貨を搬送路130dに繰り出し、搬送路130dおよび搬送路130cを経由して、取引口120まで返却する。
【0172】
硬貨処理装置111も、収納庫141の硬貨収納量が減少し、シャッタ146を閉じることが可能となった段階で、それまでの一体化使用モードの運用から、分割使用モードへの運用へとモード変更が可能となる。
【0173】
{分割固定モード}
次に、分割固定モードが選択された状態での硬貨処理装置111の動作について通常モードとの相違部分を中心に説明する。
【0174】
分割固定モードでは、制御部171は、全収納庫141について、上記した分割使用モードでの使用となる。
【0175】
分割固定モードでは、一括カセット151には、複数の収納庫141では収納しきれないオーパーフロー硬貨を収納可能となる。
【0176】
分割固定モードの入金処理は、通常モードの第1の入金処理と同様となっている。そして、入金処理の後、操作表示部172への入金確定操作が入力された入金確定時に行われる収納処理が、通常モードの第1の収納処理と一部異なっている。
【0177】
分割固定モードの収納処理では、制御部171は、全収納庫141のそれぞれについて、一時貯留部148に一時貯留した硬貨を収納部149に収納する前に、一時貯留部148の硬貨の一時貯留枚数が、収納部149に既に収納されている硬貨の枚数から事前に計算される収納許容枚数の範囲内であるか否かを判定する。この収納許容枚数は、収納部149の最大に収納可能な硬貨の枚数である収納容量から、収納部149に既に収納されている硬貨の枚数を減算した値である。
【0178】
そして、制御部171は、全収納庫141のうち、一時貯留部148の硬貨の一時貯留枚数が収納許容枚数以下である収納庫141については、通常モードの第1の収納処理の受渡動作と戻り動作とを行わせる。他方、制御部171は、全収納庫141のうち、一時貯留部148の硬貨の一時貯留枚数が収納許容枚数より大きい収納庫141については、一時貯留部148の硬貨を繰出部143で繰り出させ、搬送路130d、搬送路130c、取引口120、入金繰出部124、搬送路130aおよび落下部135によって、一括カセット151に収納する。
【0179】
すなわち、制御部171は、操作表示部172によって分割固定モードが選択されているとき、全収納庫141のそれぞれについて、分割使用モードに固定して使用すると共に、一の取引において、一の一時貯留部148への硬貨の一時貯留枚数が、この一時貯留部148と一対一で対応して設けられた収納部149に既に収納されている硬貨の数量に基づいて事前に計算される収納許容数量の範囲内となるように、この一の取引の動作を制御する。そして、制御部171は、操作表示部172によって分割固定モードが選択されているとき、全収納庫141のそれぞれについて、分割使用モードに固定して使用すると共に、一の取引において、一の一時貯留部148への硬貨の一時貯留枚数が、この一時貯留部148と一対一で対応して設けられた収納部149に既に収納されている硬貨の数量に基づいて事前に計算される収納許容数量を超えるとき、この一時貯留部148の硬貨を一括カセット151に収納する。
【0180】
分割固定モードの返却処理は、通常モードの第1の返却処理と同様である。また、分割固定モードの硬貨出金処理は、処理後に一体化使用モードから分割使用モードへの変更が可能であるか否かの判断を行わない点以外は、通常モードの硬貨出金処理と同様である。
【0181】
以上に述べた硬貨処理装置111によれば、上記した紙幣処理装置11と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0182】
11 紙幣処理装置(媒体処理装置)
31,131 識別部
41,141 収納庫
48,148 一時貯留部
49,149 収納部
51,151 一括カセット
61,130 搬送部
71,171 制御部
72,172 操作表示部(選択手段)
111 硬貨処理装置(媒体処理装置)
S 紙幣(媒体)