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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】容量性結合回路装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/10 20060101AFI20240112BHJP
   H04B 3/03 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H04B1/10 H
H04B3/03
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021506226
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2020004407
(87)【国際公開番号】W WO2020189068
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019049718
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】西本 太樹
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-509667(JP,A)
【文献】米国特許第06023202(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0068410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
H04B 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を変調した後、変調信号を結合キャパシタを介して伝送した後、前記変調信号を復調する容量性結合回路を備えた容量性結合回路装置であって、
前記容量性結合回路の信号入力側の第1の接地端子と、前記容量性結合回路の信号出力側の第2の接地端子との間に挿入された接地側帰還回路を備え、
前記接地側帰還回路は、第1のキャパシタと第1の抵抗との並列回路に対して、第2のキャパシタを直列に接続して構成される、
容量性結合回路装置。
【請求項2】
前記容量性結合回路装置はさらに、第3のキャパシタを備え、
前記接地側帰還回路は、第1のキャパシタと第1の抵抗との並列回路の両端に対してそれぞれ、前記第2のキャパシタ及び前記第3のキャパシタを直列に接続して構成される、
請求項1に記載の容量性結合回路装置。
【請求項3】
前記容量性結合回路の信号出力端子と、前記容量性結合回路装置の信号出力外部端子との間に挿入された第1のインダクタと、
前記容量性結合回路の信号出力側の第2の接地端子と、前記容量性結合回路装置の信号出力側の接地外部端子との間に挿入された第2のインダクタとをさらに備え、
前記結合キャパシタの容量値と、前記第1のキャパシタの容量値との比が、前記第2のインダクタのインダクタンス値と、前記第1のインダクタのインダクタンス値との比に等しい、
請求項1又は2に記載の容量性結合回路装置。
【請求項4】
前記容量性結合回路の信号出力端子と、前記第1のインダクタの一端との間に挿入された第2の抵抗をさらに備え、
前記結合キャパシタの容量値と前記第1の抵抗の抵抗値の逆数の比が、前記第2のインダクタのインダクタンス値と前記第2の抵抗の抵抗値の比に等しい、
請求項3に記載の容量性結合回路装置。
【請求項5】
前記第2の抵抗は、前記容量性結合回路の出力抵抗である、
請求項4に記載の容量性結合回路装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のインダクタの少なくとも1つは、信号配線の寄生インダクタンスである、
請求項3~5のうちのいずれか1つに記載の容量性結合回路装置。
【請求項7】
前記容量性結合回路の信号出力側の第2の接地端子と、前記第2のインダクタの一端及び前記接地側帰還回路の一端の接続点との間に挿入された第3のインダクタをさらに備える、
請求項3~6のうちのいずれか1つに記載の容量性結合回路装置。
【請求項8】
前記容量性結合回路は容量性結合方式のアイソレータ回路である、
請求項1~7のうちのいずれか1つに記載の容量性結合回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容量性結合回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の電源システムをはじめ、高電圧を用いる車載機器、産業機器、医療機器等では、安全のため低電圧と高電圧の回路を電気的に分離(絶縁)した設計が必要となる。しかし、そのような機器においても、低電圧と高電圧の回路間での信号送受は不可欠である。例えば、高電圧のスイッチング電源回路は低電圧回路に実装されたICの制御信号を受けて動作する。また、高電圧の電池においては、電池セルの電圧や温度の情報を低電圧回路に実装されたICで受信し、当該受信した情報を電源システムの動作にフィードバックする。
【0003】
こうした機器において、絶縁された低電圧と高電圧の回路間での信号送受には、アイソレータが用いられる。一般的なアイソレータの方式は、信号入力側と信号出力側の結合方法により、光結合、誘導性結合、容量性結合の三種類に分類される。このうち容量性結合方式のアイソレータは、信号入力側と信号出力側がキャパシタで結合されている。キャパシタは直流成分を絶縁して高周波成分は伝達するので、高周波成分を用いた信号変調により信号入力側から信号出力側への信号伝達を実現する。
【0004】
しかし、信号入力側からキャパシタを介して伝達された変調信号を信号出力側で復調し、新たにデジタル信号を生成し直すため、これがノイズ電圧源となり伝導ノイズや放射ノイズの原因となり得る。この対策としては、信号入力側の接地と信号出力側の接地をキャパシタで接続することにより、一定のノイズ抑制効果が得られる。
【0005】
特許文献1には、容量性結合方式のアイソレータ回路において、信号入力側の接地と信号出力側の接地をキャパシタで接続する従来例に係る回路構成が開示されている。特許文献1の中では、このキャパシタが変調信号の帰路として働くことにより、信号品質(SI:Signal Integrity)が向上する旨が記載されている。これと同時に、信号出力側の接地電位が安定することにより、ある程度のノイズ抑制効果も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5870046号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の対策によるノイズ抑制効果は限定的であるため、さらにノイズを抑制するためにキャパシタや抵抗、インダクタを用いたノイズフィルタが必要となる。これにより、部品実装面積やコストが増大するだけでなく、信号線上に部品が追加されるため信号に遅延や歪みが生じ、正常な信号送受信を妨げる可能性がある。
【0008】
本開示の目的は、アイソレータ等の容量性結合回路を用いた容量性結合回路装置において、信号線上にノイズ対策部品を追加することなく、アイソレータに起因する伝導ノイズ又は放射ノイズを低減することができる容量性結合回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る容量性結合回路装置は、
入力信号を変調した後、変調信号を結合キャパシタを介して伝送した後、前記変調信号を復調する容量性結合回路を備えた容量性結合回路装置であって、
前記容量性結合回路の信号入力側の接地端子と、信号出力側の接地端子との間に挿入された接地側帰還回路を備え、
前記接地側帰還回路は、第1のキャパシタと第1の抵抗との並列回路に対して、第2のキャパシタを直列に接続して構成される。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係る容量性結合回路装置によれば、信号入力側の接地と信号出力側の接地をキャパシタで接続する従来例の構成に比べて、伝導ノイズや放射ノイズを低減することができる。これにより、信号線上に挿設するノイズ対策部品を削減し、部品実装面積やコストの削減及び信号品質の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る容量性結合回路装置の構成例を示す回路図である。
図2図1における容量性結合回路S1の構成例を示す回路図である。
図3】実施形態1で用いるオンオフ変調方式の場合における信号波形を示す模式的波形図である。
図4図1の容量性結合回路装置の動作を表す回路図である。
図5図4の回路図に対するコモンモード等価回路を示す回路図である。
図6】C1≪C2の場合における図5の等価回路を示す回路図である。
図7A】回路シミュレーションで用いた回路であって、ノイズ対策をしないときの図4及び図5の回路図である。
図7B】回路シミュレーションで用いた回路であって、従来例のように、信号入力側の接地と信号出力側の接地とをキャパシタC1で接続したときの図4及び図5の回路図である。
図7C】回路シミュレーションで用いた回路であって、実施形態1に係る図4及び図5の回路図である。
図8A図7Aの回路シミュレーションの結果であって、コモンモード電流の周波数特性を示すグラフである。
図8B図7Bの回路シミュレーションの結果であって、コモンモード電流の周波数特性を示すグラフである。
図8C図7Bの回路シミュレーションにおいて、キャパシタC1の容量値を10nFまで大きくした場合のシミュレーションの結果であって、コモンモード電流の周波数特性を示すグラフである。
図8D図7Cの回路シミュレーションの結果であって、コモンモード電流の周波数特性を示すグラフである。
図9】実施形態2に係る容量性結合回路装置の構成例を示す回路図である。
図10】C1≪C2の場合における図9の等価回路を示す回路図である。
図11】変形例に係る容量性結合回路装置の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示にかかる実施形態について図面を参照して説明する。なお、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る容量性結合回路装置の構成例を示す回路図である。
【0014】
図1において、容量性結合回路装置は、外部端子T1~T4、容量性結合回路S1、抵抗R1、キャパシタC1~C3、インダクタL1~L2を備える。ここで、容量性結合回路S1は、少なくとも1つの結合キャパシタC4を内部回路に含み(図2参照)、接続端子N1~N4を有する。容量性結合回路装置は、例えば、外部端子T1とT2の間に入力された入力信号Siを、外部端子T3とT4の間に出力信号として出力する通信回路として動作する。ここで、外部端子T1~T4は以下のために設けられる。
(1)T1:信号入力外部端子;
(2)T2:信号入力側の接地外部端子;
(3)T3:信号出力外部端子;
(4)T4:信号出力側の接地外部端子。
【0015】
図1において、抵抗R1は容量性結合回路S1の出力抵抗であり、インダクタL1及びキャパシタC3により信号出力側のL型ローパスフィルタ(LPF)11を構成する。これは、ローパスフィルタの一例であり、後述するように変形するように構成してもよい。また、容量性結合回路S1の接続端子N4とN2との間には、接地側帰還回路12が接続される。接地側帰還回路12は、抵抗R2とキャパシタC1との並列回路に対して、キャパシタC2を直列に接続することで構成される。なお、L2は例えば信号配線の寄生インダクタである。
【0016】
図2は、図1における容量性結合回路S1の構成例を示す回路図である。容量性結合回路S1は、変調器M1、復調器M2、結合キャパシタC4、接続端子N1~N4を備える。ここで、接続端子N1~N4は以下のために設けられる。
(1)N1:信号入力端子;
(2)N2:信号入力側の接地端子;
(3)N3:信号出力端子;
(4)N4:信号出力側の接地端子。
【0017】
変調器M1は、接続端子N1に入力される二値デジタル信号である入力信号Siを例えばオンオフ変調方式によりスイッチングで変調し、変調信号Smを結合キャパシタC4を介して復調器M2に出力する。復調器M2は、受信される変調信号Smを前記オンオフ変調方式により二値デジタル信号である出力信号Soに復調して接続端子N3から出力する。なお、変調器M1の変調方式は、出力信号Siをより高い周波数成分を有する信号に変調できれば、前記のオンオフ変調方式に限らず、ASK変調などの他の変調方式であってもよい。
【0018】
以上のように構成された容量性結合回路S1は、例えば、容量性結合方式のアイソレータ回路を構成する。
【0019】
図3は実施形態1で用いるオンオフ変調方式の場合における信号波形を示す模式的波形図である。
【0020】
図2の接続端子N1とN2の間に図3(a)の入力信号Siが入力されるとき、変調器M1により結合キャパシタC4には図3(b)の変調信号Smが出力される。変調信号Smは復調器M2により復調され、接続端子N3とN4の間に図3(c)の出力信号Soが出力される。変調信号Smは高周波成分を含むため、結合キャパシタC4を介して伝達することができる。
【0021】
図4は、容量性結合回路S1が図2で表される場合における、図1の容量性結合回路装置の動作を表す回路図である。一般に、容量性結合方式のアイソレータ回路において、信号入力側と信号出力側を結合するキャパシタはpFオーダである。すなわち、当該キャパシタのインピーダンスは例えば1に比較して非常に大きく設定され、図1における接続端子N1とN3の間のインピーダンスは、図4に示すように、結合キャパシタC4に代表して表示される。また、容量性結合方式のアイソレータ回路において、復調器M2が生成するデジタル信号がノイズ電圧源となるので、このノイズ電圧源をV1で表している。
【0022】
図5は、図4の回路図に対するコモンモード等価回路を示す回路図である。コモンモード等価回路であるから、信号入力側の外部端子T1とT2をまとめてT12とし、信号出力側の外部端子T3とT4をまとめてT34で表した。このとき、信号入力側の接地を当該容量性結合回路装置全体の基準接地として接地記号を付した。なお、キャパシタC2は、接地側帰還回路12が、抵抗R2とキャパシタC1の並列回路のみでは、信号入力側と、信号出力側との間の電気的絶縁が損なわれるので、当該並列回路に対して、キャパシタC2を直列に接続している。
【0023】
図6は、キャパシタC2の容量値を、キャパシタC1の容量値よりも十分大きく(すなわち、C1≪C2の場合)設計した場合における図5の等価回路である。以下において、各抵抗R1,R2、各インダクタL1,L2、各キャパシタC1~C4の数値としてその符号を用いる。
【0024】
図6において、Vcmは信号出力側の外部端子T34におけるコモンモード電位である。ノイズ電圧源V1からコモンモード電位Vcmに電圧が伝達すると、外部端子T34から容量性結合回路装置の外部にコモンモードノイズが伝搬してしまう。ノイズ電圧源V1からコモンモード電位Vcmへの電圧伝達係数は、次式で表される。
【0025】
【数1】
(1)
【0026】
上記の式(1)から電圧伝達係数が0となる条件を求めると、次式を得る。
【0027】
L2=R1R2C4 (2)
C4L1=C1L2 (3)
【0028】
すなわち、図1の容量性結合回路装置を用いることにより、容量性結合回路装置の外部に伝搬するコモンモードノイズを低減することができる。特に、L2=R1R2C4、かつC4L1=C1L2となるよう設計した場合には、コモンモードノイズを著しく低減することができる。
【0029】
次いで、本発明者らは、回路シミュレーションにより、コモンモードノイズの低減効果を定量的に示す。ここで、シミュレーションに用いた回路図を図7A図7Cに示す。ここで、図7Aは、ノイズ対策を施さない場合の回路図である。図7Bは、従来のように信号入力側の接地と信号出力側の接地をキャパシタで接続した場合の回路図である。図7Cは、本開示の回路図である。なお、外部端子T3とT4の間は抵抗R3で終端し、信号出力側の接地は回路装置全体の基準接地との間に浮遊容量C5を有するとする。
【0030】
ノイズ電圧源V1は、0Vのロー電圧と、5Vのハイ電圧を有し、周波数750kHz、0%~100%の立上り及び立下り時間が2.5nsの矩形波を発生する。図7A図7Cに共通の回路素子の値は、以下の表1に示す通りである。なお、図7Bのシミュレーションでは、キャパシタC1の容量値を200pFと10nFの2通りでシミュレーションした。また、図7Cのシミュレーションでは、キャパシタC1の容量値を200pFとし、キャパシタC2の容量値を10nFとしてシミュレーションした。
【0031】
[表1]
――――――――――
R1=50Ω
R3=10kΩ
L1=100nH
L2=1nH
C3=1nF
C4=2pF
C5=5pF
――――――――――
【0032】
図8A~図8Dは前記シミュレーションで得られたコモンモード電流の周波数特性を示すグラフである。ここで、外部端子T3及びT4から伝搬するコモンモード電流(=キャパシタC5を流れる電流)が放射ノイズの原因になるため、この電流波形をFFTした電流スペクトラムをプロットした。
【0033】
ここで、図8Aは、図7Aのシミュレーション結果を示す。図8Aから明らかなように、コモンモード電流が最も大きい。
【0034】
図8Bは、図7Bのシミュレーション結果を示す、キャパシタC1の容量値を200pFとした場合である図8Bから明らかなように、ノイズ対策を施さない場合と比べてコモンモード電流が抑制されていることが確認できる。
【0035】
図8Cは、図7BでキャパシタC1の容量値を10nFまで大きくした場合のシミュレーション結果を示す。図8Cから明らかなように、図8Bに比較して、ノイズ抑制効果はあまり向上しない。
【0036】
図8Dは、図7Cのシミュレーション結果を示す。図8Dから明らかなように、従来例のように信号入力側接地と信号出力側接地をキャパシタで接続した場合に比べて、さらにコモンモード電流が抑制されている。例えば、100MHzのコモンモード電流は、図8Cでは290nAであるのに対し、図8Dでは8.5nAである。放射ノイズに寄与するエネルギーとしては、(8.5/290)=0.086%にまで低減されたことを意味する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る容量性結合回路装置によれば、上記のノイズ抑制効果により、信号入力側接地と信号出力側接地をキャパシタで接続する従来例の構成に比べて、伝導ノイズや放射ノイズを低減することができる。これにより、信号線上に挿設するノイズ対策部品を削減し、部品実装面積やコストの削減及び信号品質の向上を実現することができる。
【0038】
なお、インダクタL1とL2には、チョークコイルやフェライトビーズを用いることができる。また、インダクタL1とL2のどちらか一方、あるいは両方は信号配線の寄生インダクタンスであってもよい。
【0039】
例えば容量性結合方式のアイソレータ回路においては、例えば50Ω程度の出力インピーダンスを有するものもある。そのような場合には、抵抗R1は容量性結合回路S1の内部に含まれると考え、個別の抵抗素子を用いる必要はない。あるいは、容量性結合回路S1の出力インピーダンスと、抵抗R1を併用してもよい。この場合には、式(1)に係る抵抗R1には、容量性結合回路S1の出力インピーダンスと抵抗R1の合計値を用いる。
【0040】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係る容量性結合回路装置の構成例を示す回路図である。図9において、実施形態2に係る容量性結合回路装置は、図1の容量性結合回路装置に比較して、接続端子N4に接続されたインダクタL3を備える。
【0041】
図9において、容量性結合回路S1の接続端子N4はインダクタL3及びL2を介して外部端子T4に接続される。また、インダクタL3及びL2の接続点は接地側帰還回路12を介して接続端子N2及び外部端子T2に接続される。
【0042】
以上のように構成された図9の容量性結合回路装置は、図1の容量性結合回路装置と同様に、例えば、外部端子T1とT2の間に入力された信号を、外部端子T3とT4の間に出力する通信回路として動作する。
【0043】
図10は、実施形態1と同様に、キャパシタC2の容量値をキャパシタC1の容量値よりも十分大きく設計した場合(C2≫C1)における、図9のコモンモード等価回路を示す回路図である。ここで、ノイズ電圧源V1と、インダクタL3の端子間電圧VL3の和を改めて等価ノイズ電圧源V2(=V1+VL3)と定義すると、等価ノイズ電圧源V2からコモンモード電位Vcmへの電圧伝達係数Vcm/V2は、式(1)の右辺に等しい。すなわち、実施形態1と同様に、信号入力側の接地と信号出力側の接地をキャパシタで接続する従来例の構成に比べて、伝導ノイズや放射ノイズを低減することができる。これにより、信号線上に挿設するノイズ対策部品を削減し、部品実装面積やコストの削減及び信号品質の向上を実現することができる。
【0044】
実施形態2において、図1の容量性結合回路装置に比較して、接続端子N4に接続されたインダクタL3を備えている。しかし、本開示はこれに限らず、接続端子N4には、素子値を問わず、さらにインダクタ又はフェライトビーズを追加してもよい。同様に、インダクタだけでなく、抵抗やキャパシタ、あるいはそれらの組み合わせのインピーダンスであってもよい。
(変形例)
【0045】
図11は変形例に係る容量性結合回路装置の構成例を示す回路図である。図11において、変形例に係る容量性結合回路装置は、図1の容量性結合回路装置に比較して、接地側帰還回路12に代えて、接地側帰還回路12Aを備えたことを特徴とする。
【0046】
図11において、接地側帰還回路12Aは、抵抗R2とキャパシタC1との並列回路の両端に対してそれぞれ、キャパシタC2及びC2Aを直列に接続することで構成される。当該接地側帰還回路12Aは、各接続端子N4,N2間において、少なくとも3個のキャパシタC2,C1,C2Aの直列回路が挿入されかつキャパシタC1に対して並列に抵抗R2が接続されているので、信号入力側と、信号出力側との間の電気的絶縁が損なわれることを回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示に係る容量性結合回路装置は、車載機器、産業機器、医療機器等で用いられる信号回路装置を、低ノイズ、小型、低コストで実現し、かつ信号品質を向上することに有用である。
【符号の説明】
【0048】
11 ローパスフィルタ(LPF)
12,12A 接地側帰還回路
C1~C4,C2A キャパシタ
L1~L2 インダクタ
M1 変調器
M2 復調器
N1~N4 接続端子
R1~R2 抵抗
S1 容量性結合回路装置
Si 入力信号
Sm 変調信号
So 出力信号
T1~T34 外部端子
V1 ノイズ電圧源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11