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特許7417958CDK9阻害薬の局所送達のための徐放製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】CDK9阻害薬の局所送達のための徐放製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4433 20060101AFI20240112BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 31/4025 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240112BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61K31/4433
A61K31/454
A61K31/4025
A61K47/34
A61K9/48
A61K9/14
A61P19/02
A61P17/02
A61P29/00
A61P19/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021509951
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019028721
(87)【国際公開番号】W WO2019209825
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】62/661,599
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(73)【特許権者】
【識別番号】520415580
【氏名又は名称】テシオ ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク アール.ホーデンスチャイルド
(72)【発明者】
【氏名】ジャスパー エイチ.エヌ.イク
(72)【発明者】
【氏名】ジャマル エス.ルイス
(72)【発明者】
【氏名】トム ヤーブロウ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】Biomaterials,2014年,Vol.35, No.24,pp.6585-6594
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクリン依存性キナーゼ9(CDK9)阻害薬及び酸末端化乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を含むマイクロパーティクルであって、前記CDK9阻害薬がPLGAによってカプセル化され、かつ前記マイクロパーティクルが約3から約50ミクロンの直径を有し、かつ前記CDK9阻害薬の徐放を担い、
ここで前記CDK9阻害剤は、フラボピリドール、SNS-032、ボルシクリブ(voruciclib)、又はそれらの医薬的に許容可能な塩から選択され、
ここで前記マイクロパーティクルは約0.5重量%~約5重量%のCDK9阻害剤を有し、かつ前記マイクロパーティクルは、投与後30日間に約80%から約95%のCDK9阻害剤を放出する、
マイクロパーティクル。
【請求項2】
前記CDK9阻害薬がフラボピリドールである請求項1に記載のマイクロパーティクル。
【請求項3】
前記PLGAが約50:50から約75:25の乳酸とグリコール酸との(L:G)比を有する請求項に記載のマイクロパーティクル。
【請求項4】
前記マイクロパーティクルが投与後約60日の期間にわたり前記CDK9阻害薬を放出する請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロパーティクル。
【請求項5】
前記マイクロパーティクルが投与後24時間にわたり前記CDK9阻害薬の約3%から約30%を放出する請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロパーティクル。
【請求項6】
前記マイクロパーティクルが投与後24時間にわたり前記CDK9阻害薬の約3%から約20%を放出する請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロパーティクル。
【請求項7】
前記マイクロパーティクルが投与後60日にわたり前記CDK9阻害薬を放出する、請求項5又は6に記載のマイクロパーティクル。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の複数のマイクロパーティクル及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
前記複数のマイクロパーティクルが約10から約20ミクロンの平均の直径を有する請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記複数のマイクロパーティクルの質量の90%(D90)が約30ミクロンより小さい直径を有する請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記複数のマイクロパーティクルが前記CDK9阻害薬の質量に基づいて約0.5%から約5%を有する請求項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
注射による送達のために処方される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の治療有効量の複数のマイクロパーティクルを含む、医薬組成物であって、前記マイクロパーティクルはCDK9阻害薬及び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を含み、ここで前記CDK9阻害薬を前記PLGAによりカプセル化し、かつ前記マイクロパーティクルが前記CDK9阻害薬の徐放を担う、医薬組成物。
【請求項14】
前記CDK9阻害薬がフラボピリドールである請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の医薬組成物を前記対象の炎症部位で投与することを含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記対象が関節炎、変形性関節症、外傷性の変形性関節症、及び外傷性疾患より選択される疾病又は状態を有する請求項13~15のいずれか一項の医薬組成物。
【請求項17】
前記炎症部位が、関節、軟骨、又は外傷の部位である請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が注射によって投与される請求項13~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
炎症部位を治療する医薬組成物であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の複数のマイクロパーティクルに製剤化されたCDK9阻害薬を含む組成物を前記部位に投与することを含み、ここで前記マイクロパーティクルは少なくとも24時間前記部位で前記CDK9阻害薬の徐放を担い、かつそれによって前記部位での炎症を減少する又は回復する、医薬組成物。
【請求項20】
前記CDK9阻害薬がフラボピリドールである、請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2018年4月23日に出願された米国特許出願第62/661,599の利益を請求し、その内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
[連邦政府が後援する研究又は開発下で行われた発明に対する権利に関する声明]
【0002】
本発明はアメリカ国立衛生研究所(NIH)の助成金番号R21AR063348及びARMY/MRMC助成金番号W81XWH-12-1-0311下で政府の支援を受けて作製された。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
最近の前進により、サイクリン依存性キナーゼ9(CDK9)及びサイクリンTを含む一般的な転写因子P-TEFbが全ての初期応答遺伝子の活性化の律速段階を制御することを決定的に示した。前記初期応答遺伝子(PRGs)は、環境中の急な変化への対応において転写レベルで即座に活性化される必要がある遺伝子である。PRGsは典型的な炎症性遺伝子(IL-1、TNF、IL-6、iNOS等)、及び他の細胞型特異的遺伝子を含む。細胞環境中の急性の変化の事象(例えば関節の怪我)において、PRGsの転写ではCDK9の活性を必要とする。それゆえ、CDK9は急性の事象、例えば怪我に対する細胞応答を制限するために設計された治療についての新規標的である。小分子のCDK9阻害薬は存在するが、しかしながらそれらは迅速に拡散し、一般的にin vivoで半減期が短く、そして全身投与は所望されない的外れの影響をもたらしうる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で提供されるものは、局所的に病変組織への阻害薬の徐放を提供し、一方で所望されない全身への影響を避けるCDK9阻害薬のマイクロパーティクル製剤である。本発明の製剤は乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)のマイクロパーティクル内にカプセル化されたCDK9阻害薬を含む。驚くべきことに、我々はマイクロパーティクルの成分の多くの組み合わせが十分な徐放を提供することに失敗し、許容されないより大きい平均サイズのマイクロパーティクルをもたらし、カプセル化された薬物の少なくとも約80%で放出することを失敗し、及び/又はCDK9阻害薬の不適切な量がカプセル化されることを発見した。
【0005】
本明細書のマイクロパーティクル製剤は約4~6週の期間にわたりCDK9阻害薬の徐放を提供し、ここで投与後最初の24時間以内に制限された量を放出した。
【0006】
本発明のマイクロパーティクルはCDK9阻害薬及びPLGAポリマーを含み、約2ミクロンから約150ミクロンの平均サイズに及ぶ。
【0007】
さらに本明細書で提供されるものは、開示の複数のマイクロパーティクルを含む医薬組成物、及び医薬的に許容可能な担体である。
【0008】
また本明細書で提供されるものは、関節における疾病又は障害に苦しむ対象例えばヒト又は動物の対象を治療する方法であり、関節に注射することを含む方法は医薬組成物の治療有効量を含む。
【0009】
本発明の一つの側面はサイクリン依存性キナーゼ9(CDK9)阻害薬及び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を含むマイクロパーティクルであって、ここでそのCDK9阻害薬はPLGAによってカプセル化され、そしてこの中でそのマイクロパーティクルはCDK9阻害薬の徐放を提供する。
【0010】
本発明の別の側面は本発明の複数のマイクロパーティクル、及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物である。
【0011】
本発明の別の側面は、複数のマイクロパーティクルの治療有効量を投与することを含む、それを必要とする対象を治療する方法であって、そのマイクロパーティクルはCDK9阻害薬及び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を含み、ここでそのCDK9阻害薬はPLGAによってカプセル化され、そしてこの中でそのマイクロパーティクルはCDK9阻害薬の徐放を提供する。
【0012】
本発明の別の側面は、本発明の複数のマイクロパーティクル及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物を投与することを含む、それを必要とする患者を治療する方法である。
【0013】
本発明の別の側面は、複数のマイクロパーティクル内に製剤化したCDK9阻害薬を含む組成物を部位に投与することを含む炎症部位を治療する方法であって、ここでそのマイクロパーティクルは少なくとも24時間その部位でCDK9の徐放を提供し、そしてこれによってその部位の炎症はそれゆえ減少又は回復する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、300nMフラボピリドールの有無、10ng/mLのIL-1βによって5時間処理した単層培養における初期ヒト軟骨細胞の遺伝子発現の効果を示す。CDK9阻害薬は初期炎症応答遺伝子の転写を効果的に抑制する。
【0015】
図2A図2A、2B、2C及び2Dはフラボピリドールの全身投与によるCDK9阻害がマウスにおける前十字靭帯損傷の初期応答遺伝子の転写を効果的に抑制することを示す。図2Aはフラボピリドールの有無によるIL-1β mRNA発現の増加を示す。
図2B図2A、2B、2C及び2Dはフラボピリドールの全身投与によるCDK9阻害がマウスにおける前十字靭帯損傷の初期応答遺伝子の転写を効果的に抑制することを示す。図2Bはフラボピリドールの有無によるIL-6 mRNA発現の増加を示す。
図2C図2A、2B、2C及び2Dはフラボピリドールの全身投与によるCDK9阻害がマウスにおける前十字靭帯損傷の初期応答遺伝子の転写を効果的に抑制することを示す。図2Cはフラボピリドールの有無によるMMP-13 mRNA発現の増加を示す。
図2D図2A、2B、2C及び2Dはフラボピリドールの全身投与によるCDK9阻害がマウスにおける前十字靭帯損傷の初期応答遺伝子の転写を効果的に抑制することを示す。図2Dはフラボピリドールの有無によるADAMTS4 mRNA発現の増加を示す。
【0016】
図3A】フラボピリドールの反復した全身投与によるCDK9阻害はマウスにおいて前十字靭帯損傷の初期応答遺伝子の転写を効果的に抑制する。損傷後、少なくとも3時間の空白時間が存在し、その間に、フラボピリドールによるCDK阻害が初期応答遺伝子の転写を阻害することで効果的である。図3Aはフラボピリドールの0、1、又は2回の投与後のIL-1β遺伝子発現の増加を示す。
図3B】フラボピリドールの反復した全身投与によるCDK9阻害はマウスにおいて前十字靭帯損傷の初期応答遺伝子の転写を効果的に抑制する。損傷後、少なくとも3時間の空白時間が存在し、その間に、フラボピリドールによるCDK阻害が初期応答遺伝子の転写を阻害することで効果的である。図3Bはフラボピリドールの0、1、又は2回の投与後のIL-6遺伝子発現の増加を示す。
図3C】フラボピリドールの反復した全身投与によるCDK9阻害はマウスにおいて前十字靭帯損傷の初期応答遺伝子の転写を効果的に抑制する。損傷後、少なくとも3時間の空白時間が存在し、その間に、フラボピリドールによるCDK阻害が初期応答遺伝子の転写を阻害することで効果的である。図3Cはフラボピリドール投与前に0、1、2、又は3時間の遅延後のIL-1β遺伝子発現の増加を示す(一番左側のバーはフラボピリドールの治療のない発現を示す)。
図3D】フラボピリドールの反復した全身投与によるCDK9阻害はマウスにおいて前十字靭帯損傷の初期応答遺伝子の転写を効果的に抑制する。損傷後、少なくとも3時間の空白時間が存在し、その間に、フラボピリドールによるCDK阻害が初期応答遺伝子の転写を阻害することで効果的である。図3Dはフラボピリドールの投与前に0、1、2、又は3時間の遅延後のIL-6遺伝子発現の増加を示す(一番左側のバーはフラボピリドールの治療のない発現を示す)。
【0017】
図4A図4は実施例1において調製されたフラボピリドールを含むPLGAマイクロパーティクルの典型的なサイズ分布である。図4Aは、測定の表とともに、ロット53024のPLGAマイクロパーティクルのサイズ分布を図示する。
図4B図4は実施例1において調製されたフラボピリドールを含むPLGAマイクロパーティクルの典型的なサイズ分布である。図4Bは本発明のマイクロパーティクルの光学顕微鏡像である。
図4C図4は実施例1において調製されたフラボピリドールを含むPLGAマイクロパーティクルの典型的なサイズ分布である。図4Cは異なる製剤における本発明のマイクロパーティクルの光学顕微鏡像である。
図4D図4は実施例1において調製されたフラボピリドールを含むPLGAマイクロパーティクルの典型的なサイズ分布である。図4Dはさらに別の製剤における本発明のマイクロパーティクルの光学顕微鏡像である。
【0018】
図5】1%Tween(登録商標)20を含む1×PBSにおけるバッチのPLGAマイクロパーティクル由来のin vitroでのフラボピリドールの放出特性が、約90%の放出された薬剤によって、30日までマイクロパーティクルのほぼ線形のフラボピリドールの放出動態を示す。
【0019】
図6A】20%w/v比の塩化メチレンにおけるPurasorb(登録商標)PDLG5004A(Corbion)を用いて合成したPLGAマイクロパーティクル(MPs)においてフラボピリドールを1%w/v比でカプセル化し、2:1の比でポリビニルアルコール(10%)の添加後30秒間激しくボルテックスした。続いてその溶液を液滴で1%PVAに添加し、一晩撹拌し、翌日3回洗浄し、一晩凍結乾燥した。DMFにフラボピリドールPLGA MPsを溶解することによって、51.5%の平均積載効率を決定し、標準曲線よりフラボピリドール濃度を測定し、そして出発量と比較した(全ての測定点についてn=3)。図6A:AccuSizer Optical Particle Sizer Model 770を用いて、フラボピリドールMPsのサイズを決定し、6.87μmの平均の直径を有した(ブランクMPsは10.77μmの平均の直径を有した)。
図6B】20%w/v比の塩化メチレンにおけるPurasorb(登録商標)PDLG5004A(Corbion)を用いて合成したPLGAマイクロパーティクル(MPs)においてフラボピリドールを1%w/v比でカプセル化し、2:1の比でポリビニルアルコール(10%)の添加後30秒間激しくボルテックスした。続いてその溶液を液滴で1%PVAに添加し、一晩撹拌し、翌日3回洗浄し、一晩凍結乾燥した。DMFにフラボピリドールPLGA MPsを溶解することによって、51.5%の平均積載効率を決定し、標準曲線よりフラボピリドール濃度を測定し、そして出発量と比較した(全ての測定点についてn=3)。図6B:Nanodrop 2000 Spectrophotometerで274nmで取得された、DMSOに溶解したPLGAの溶液内のフラボピリドールの異なる濃度の線形標準曲線。
図6C】20%w/v比の塩化メチレンにおけるPurasorb(登録商標)PDLG5004A(Corbion)を用いて合成したPLGAマイクロパーティクル(MPs)においてフラボピリドールを1%w/v比でカプセル化し、2:1の比でポリビニルアルコール(10%)の添加後30秒間激しくボルテックスした。続いてその溶液を液滴で1%PVAに添加し、一晩撹拌し、翌日3回洗浄し、一晩凍結乾燥した。DMFにフラボピリドールPLGA MPsを溶解することによって、51.5%の平均積載効率を決定し、標準曲線よりフラボピリドール濃度を測定し、そして出発量と比較した(全ての測定点についてn=3)。図6C:ほぼ線形の放出を示す1%Tween(登録商標)PBS溶液における42日間にわたるMPsを積載したフラボピリドールの放出動態。
図6D】20%w/v比の塩化メチレンにおけるPurasorb(登録商標)PDLG5004A(Corbion)を用いて合成したPLGAマイクロパーティクル(MPs)においてフラボピリドールを1%w/v比でカプセル化し、2:1の比でポリビニルアルコール(10%)の添加後30秒間激しくボルテックスした。続いてその溶液を液滴で1%PVAに添加し、一晩撹拌し、翌日3回洗浄し、一晩凍結乾燥した。DMFにフラボピリドールPLGA MPsを溶解することによって、51.5%の平均積載効率を決定し、標準曲線よりフラボピリドール濃度を測定し、そして出発量と比較した(全ての測定点についてn=3)。図6D:Phillips XL30 Microscopeを用いるフラボピリドールMPsのSEM画像。
【0020】
図7A】徐放PLGA-フラボピリドールの関節内注射は前十字靭帯損傷PTOAラットモデルにおいて少なくとも3週間OAから膝関節を保護した。図7Aは、治療した及びコントロールの膝と比較するために、未治療の損傷した膝における局在化したMMP発現を示す。
図7B】徐放PLGA-フラボピリドールの関節内注射は前十字靭帯損傷PTOAラットモデルにおいて少なくとも3週間OAから膝関節を保護した。図7B:フラボピリドール-PLGAマイクロパーティクルを前十字靭帯損傷を有するラット(三角)の関節内注射によって投与し、そして薬物を有さない空のPLGAマイクロパーティクルはコントロール(四角)である。関節のMMPSense活性をMMPSense750試薬を用いて反復して測定し、そして損傷した脚における活性を同じ動物の損傷していない反対側の脚の活性により標準化した。1.0の比は損傷の影響がないことを示す。これらの結果はフラボピリドールを放出するマイクロパーティクルが少なくとも3週間、軟骨を分解するMMP酵素の活性に対して保護されることを示す。
【0021】
図8A図8は細胞に基づく試験を用いて、PLGAマイクロパーティクルから放出されたフラボピリドールがその効力を保持することを示す。図8A:図の3~5レーンに示すように、フラボピリドールはルシフェラーゼレポーター遺伝子による測定として、IL-1刺激(レーン2)によって見られるIL-1β応答の99%以上を保護し、そしてこれはPLGAカプセル化前(レーン5)と後(レーン3,4)との間のフラボピリドールで一貫していた。その刺激はIL-1β処理であり、多くの初期応答遺伝子の転写活性をもたらす。ルシフェラーゼ活性の読み取りはNFκB-応答性のプロモーターによって駆動され、それは容易に定量化されうる初期応答遺伝子として寄与する。コントロールのベースライン値は低く、<5000である。このIL-1β誘導した増加はフラボピリドールが存在する場合に観察されず、そして重要なことに、二つの異なるPLGA製剤(53010及び53012)から放出されるフラボピリドールは、カプセル化前のフラボピリドール(Flavo)と同様の活性がある。図8A図8BのY軸の対数目盛に注意:下図は線形のY軸であり、フラボピリドールがIL-1β反応の99.6%と99.8%との間で保護されており、そしてPLGAカプセル化したフラボピリドールがその効力を保持していることを示す。
図8B図8は細胞に基づく試験を用いて、PLGAマイクロパーティクルから放出されたフラボピリドールがその効力を保持することを示す。図8A:図の3~5レーンに示すように、フラボピリドールはルシフェラーゼレポーター遺伝子による測定として、IL-1刺激(レーン2)によって見られるIL-1β応答の99%以上を保護し、そしてこれはPLGAカプセル化前(レーン5)と後(レーン3,4)との間のフラボピリドールで一貫していた。その刺激はIL-1β処理であり、多くの初期応答遺伝子の転写活性をもたらす。ルシフェラーゼ活性の読み取りはNFκB-応答性のプロモーターによって駆動され、それは容易に定量化されうる初期応答遺伝子として寄与する。コントロールのベースライン値は低く、<5000である。このIL-1β誘導した増加はフラボピリドールが存在する場合に観察されず、そして重要なことに、二つの異なるPLGA製剤(53010及び53012)から放出されるフラボピリドールは、カプセル化前のフラボピリドール(Flavo)と同様の活性がある。図8A図8BのY軸の対数目盛に注意:下図は線形のY軸であり、フラボピリドールがIL-1β反応の99.6%と99.8%との間で保護されており、そしてPLGAカプセル化したフラボピリドールがその効力を保持していることを示す。
【0022】
図9図9はマイクロパーティクルが大きい凝集物を形成したために規格に適合しないPLGA-フラボピリドール製剤を示す。この場合において、分布図により示されるように、PLGAカプセル化したフラボピリドールを有するマイクロパーティクルは100~200ミクロンの凝集物を形成した。これらの粒子は凝集塊を示す(実施例6表3(E及びH製剤)参照)。
【0023】
図10図10は不完全なフラボピリドールを放出するため、規格に適合しないPLGA-フラボピリドール製剤を示す。この図はそれらが<80%の不完全なフラボピリドールの放出を示すために規格に適合しないPLGA-フラボピリドールの二つの異なる製剤を示す。これらの製剤は、滅菌のための場合によっては用いられうる処理方法である、ガンマ線照射処理後の製剤J及びL(実施例6表3参照)に対応するが、本明細書ではフラボピリドールの放出特性に好ましくない影響を与える。
【0024】
図11図11は、非線形のフラボピリドールの放出(最初に勢いよく放出され、続く追加の放出はほとんどない)により規格に適合しないPLGA-フラボピリドール製剤を示す。図はPLGA-フラボピリドールの二つの製剤が;(a)最初の勢いよいフラボピリドールの放出;(b)最初の勢いのよい放出の後のとても遅い放出(実施例表3製剤M及びN参照)を有するので、規格に適合しないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.概要
ある態様において、本発明はCDK9阻害薬の局所送達について新規の徐放製剤を記載し、ここでその阻害薬は生体吸収性ポリマーにカプセル化され、そしてポリマーが分解される時間にわたり放出される。その阻害薬は、全体的な全身投与量を最小限に抑えながら、長期間にわたり治療レベルで局所的に利用可能である。
II.定義
【0026】
「PLGA」は乳酸・グリコール酸共重合体である。
【0027】
「CDK」はサイクリン依存性キナーゼを意味する。CDK9はサイクリン依存性キナーゼ9である。
【0028】
「IL」はインターロイキンである。
【0029】
「TNF」は腫瘍壊死因子である。
【0030】
「MMP」はマトリックスメタロプロテアーゼである。
【0031】
「ACL」は前十字靭帯である。
【0032】
「PTOA」は外傷後の変形性関節症である。
【0033】
CDK9阻害薬の「誘導体」はCDK9阻害薬のエステル、アミド又はプロドラッグであり、ここでそのエステル、アミド、又はプロドラッグ置換基は対象へ投与後切断又は加水分解される。
【0034】
「マイクロパーティクル」という用語は約0.5μmと約100μmとの間の直径を有するPLGA粒子を意味する。
【0035】
「徐放」という用語は、投与後の延長された期間にわたるCDK阻害薬の放出を意味し、一般的に約1時間と約30~60日間との間である。
【0036】
「インヘレント粘度」(本明細書では「IV」として略される)という用語は本発明に用いられるポリマーの特性を意味する。インヘレント粘度、ηiはηi=(ln ηr)/c式より計算され、式中「c」は溶液中のポリマー濃度であり、そしてηrは相対粘度である。次に前記相対粘度は、ηr=η/η0によって与えられ、ここでηは測定される粘度であり、η0は溶媒の粘度である。前記IVは濃度を0に外挿されうり、その結果は「極限粘度」(「[η]」)と称され、それはポリマーの分子量と相関する。それゆえ、IVはポリマーの分子量の指標である。IVはグラム当たりのデシリットル、dL/gの単位で示される。粘度は一般に粘度計、例えば回転式粘度計、音叉振動式粘度計、ガラス毛細管粘度計、落球粘度計等を用いて測定される。本発明で使用されるポリマーに対するIVは、クロロホルム又はヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解したポリマーによってガラス毛細管粘度計を用いて決定されうる。
【0037】
本明細書で用いられる「対象」という用語は、哺乳類を意味し、それはヒト又はヒトではない哺乳類、例えば伴侶動物、例えばイヌ、ネコ、ラット等、又は家畜例えばウマ、ロバ、ラバ、ヤギ、ヒツジ、ブタ若しくはウシ等でありうる。
【0038】
「治療有効量」という用語は、所望されない炎症を抑制すること及び症状及び/又は合併症を排除又は少なくとも部分的に停止するための十分な本発明のマイクロパーティクルの量を意味する。具体的に、治療有効量は初期応答遺伝子、例えばIL-1β及びIL-6の発現を、他の予期された遺伝子活性の50%、40%、30%、20%、10%、5%、又は1%以下に抑制する十分量である。本使用における効果的な量は例えば、阻害薬の組成物、投与方法、治療中の疾病のステージ及び重篤性、体重及び患者の一般的な健康状態、並びに医師の処方の判断に依存するだろう。実際のところは、本発明の方法における治療効果のための必要とされるCDK9阻害薬の量は、マイクロパーティクルの薬剤放出の局所的な性質により、全身投与に必要とされる量よりも少ないだろう。本発明のマイクロパーティクルは慢性的に又は急性的に投与されうり、炎症、軟骨退化、及び外傷後の変形性関節症を減少、阻害又は防止する。
【0039】
「炎症部位」は炎症を示す対象の体内の特定の組織又は領域を意味する。炎症は多くの因子によりもたらされうり、身体外傷(例えば、火傷、凍傷、異物、使用又は乱用による変性等)、感染、癌、(喫煙に晒されるような)化学物質への曝露、被爆、虚血、自己免疫疾患、ぜんそく等を含む。同様に、「外傷部位」は外傷を認めた対象の体の部分を意味する。外傷部位は、軟組織又は硬組織(例えば、骨、軟骨、及び関節)でありうる。
III.組成物及び方法
【0040】
本明細書の方法及び組成物は局所送達のためのCDK9阻害薬の徐放製剤を提供する。徐放製剤に活性な薬物をカプセル化する一つの重要な利点は、その薬物が長期間にわたって治療有効濃度で局所的に利用可能なままであることである。放出の期間は、パラメータ、例えばポリマーのインヘレント粘度、L:G比、ポリマーの末端基及び粒子サイズによって調節される。本明細書で示されるように、これらのパラメータは、急性の損傷事象後数日から数週間に及びうる典型的な炎症応答の期間に対応して設計されうる。素早く代謝され、不活化されると考えられるので(例えば、フラボピリドールはin vivoで約5~6時間の半減期を有する)、これは薬物の慣習の全身投与に対する改善である。本発明の製剤化の第二の重要な利点は薬物の局所送達である。例えば、カプセル化したフラボピリドールを有するマイクロパーティクルが関節内に注射された場合に、それらは関節包内に留まる。これは時間経過で関節腔内に薬剤の治療に有効な局所濃度を提供し、一方で全身の薬物負担を大幅に軽減する。
A.化合物
【0041】
本明細書で提供されるものは、CDK9の存在する小分子阻害薬を用いるCdk-9キナーゼ活性を標的にする治療薬の製剤である。本明細書で提供される製剤は、フラボピリドール、ボルシクリブ(Voruciclib)並びにフラボピリドール及びボルシクリブ(Voruciclib)と構造的に関連するCDK9阻害薬のクラスに適当であり、かくして阻害薬は、対象の患部、例えば損傷組織又は細胞型へ適当な全体的な放出能及び放出動態によって送達される。
【0042】
ある態様において、前記CDK9阻害薬はフラボピリドール、又はエステル、プロドラッグ、又はそれらの医薬的に許容可能な塩である。ある態様において、前記CDK9阻害薬はフラボピリドール、又はその誘導体又は塩である。ある態様において、前記CDK9阻害薬はフラボピリドール、SNS-032、又はボルシクリブ(Voruciclib)である。
【0043】
ある態様において、前記CDK9阻害薬はフラボピリドール、又はエステル、プロドラッグ、又はそれらの医薬的に許容可能な塩である。ある態様において、前記CDK9阻害薬はフラボピリドール、又はその誘導体又は塩である。ある態様において、前記CDK9阻害薬はフラボピリドール(IUPAC名:2-(2-クロロフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-[(3S,4R)-3-ヒドロキシ-1-メチル-4-ピペリジニル]-4-クロメノン;(CAS#146426-40-6)であり、以下の構造を有する:
【化1】
【0044】
フラボピリドールのようなCDK9阻害薬は広く及び効果的に初期応答遺伝子の転写活性を抑制し、それは炎症性遺伝子(例えばIL-1、TNF、IL-6、iNOS等)及びマトリックス分解酵素(MMPs、ADAMTS等)を含む。しかしながら、フラボピリドールは迅速に代謝され、そして分解され、そしてin vivoで6時間未満の短い半減期を有する。低分子(~400Da)として、投与部位から急速に拡散し、そしてそれゆえ一般的に全身投与として与えられる。本明細書で提供されるものは、CDK9阻害薬及びPLGAポリマーの製剤であり、ここでそのCDK9阻害薬は適当なサイズの粒子にカプセル化され、そして適当な放出能及び放出動態を有し、かくしてCDK9阻害薬は一定期間にわたり治療有効量を提供され、対象の損傷組織に対して障害を治療し、炎症を減少し、症状を回復し及び/又はさらなる損傷を防ぐ。
【0045】
ある態様において、前記CDK9阻害薬はSNS-032、又はプロドラッグ、又はそれらの医薬的に許容可能な塩である。ある態様において、前記CDK9阻害薬はSNS-032、又はその塩である。ある態様において、前記CDK9阻害薬はSNS-032であり、以下の構造を有する:
【化2】
【0046】
ある態様において、前記CDK9阻害薬はボルシクリブ(Voruciclib)、又はエステル、プロドラッグ、又はそれらの医薬的に許容可能な塩である。ある態様において、そのCDK9阻害薬はボルシクリブ(Voruciclib)又はその誘導体又はその塩である。ある態様において、そのCDK9阻害薬はボルシクリブ(Voruciclib)であり、以下の構造を有する:
【化3】
【0047】
別のCDK9阻害薬はディナシクリブである。ディナシクリブは効果的にカプセル化されず、又は本発明のマイクロパーティクルにおいて適切に放出されない:
【化4】
【0048】
本明細書に提供されるものはCDK9阻害薬がSNS-32、ボルシクリブ(Voruciclib)、又はフラボピリドール、及びPLGAポリマーであるCDK9阻害薬の製剤であり、かくしてCDK9阻害薬が適当なサイズのマイクロパーティクルにカプセル化され、そして適当な放出能及び放出動態を有し、かくしてCDK9阻害薬は一定期間にわたり治療有効量を提供され、対象の損傷組織に対して損傷を治療し、炎症を減少し、症状を回復し及び/又はさらなる損傷を防止する。
【0049】
また、本明細書に記載され提供されるものは、CDK9阻害薬の医薬的に許容可能な塩、水和物、溶媒、互変異性の形態、多形、プロドラッグである。「医薬的に許容可能な」又は「生理学的に許容可能な」は動物又はヒトの医薬使用について適当である医薬組成物を調製することにおいて有用である化合物、塩、組成物、剤形及び他の材料を意味する。
【0050】
本明細書で記載される化合物は、医薬的に許容可能な塩として、又は遊離した塩基として適当な場合に調製及び/又は製剤化されうる。「医薬的に許容可能な塩」は遊離した塩基の所望される薬理学的な活性を保持する化合物の遊離した塩基の形状の無毒の塩である。これらの塩は無機又は有機の酸又は塩基に由来しうる。例えば、塩基性窒素を含む化合物は無機酸又は有機酸を有する化合物と接触することによって医薬的に許容可能な塩として調製されうる。医薬的に許容可能な塩の制限されない例として、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ホスフェート、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸エステル、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオ―ル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバジン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジカルボン酸塩(butyne-1,4-dioates)、ヘキシン-1,6-ジカルボン酸塩(hexyne-1,6-dioates)、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、安息香酸メチル、ジニトロベンゾアート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシ安息香酸塩(methoxy benzoates)、フタル酸塩、スルホン酸塩、メタンスルホン酸、プロピルスルホナート、ベシル酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、酢酸フェニル、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、及びマンデル酸塩を含む。他の適当な医薬的に許容可能な塩はRemingtonによって発見された:The Science and Practice of Pharmacy,21th Edition,Lippincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA,2006。
【0051】
また、本明細書に開示した化合物の医薬的に許容可能な塩の例は、適当な塩基、例えばアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム及びNX4+(ここでXはC1-C4アルキルである)に由来する塩を含む。また、含まれるものは塩基付加塩、例えばナトリウム又はカリウム塩である。
B.組成物
【0052】
本明細書で提供されるものは、阻害薬が生体吸収性ポリマーにカプセル化されたCDK9阻害薬の新規の徐放製剤である。その阻害薬はポリマーの分解としての時間にわたり連続して放出される。そのポリマーは投与部位で保持されるマイクロパーティクルの形状である(例えば、関節への関節内注射)。ある態様において、そのマイクロパーティクルは、直径4ミクロンから50ミクロンに及び、直径約15ミクロンの標的サイズを有する。ある態様において、マイクロパーティクルの平均直径は、直径4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100ミクロンである。ある態様において、マイクロパーティクルの平均直径は100ミクロン以下、70ミクロン以下、50ミクロン以下、45ミクロン以下、40ミクロン以下、35ミクロン以下、30ミクロン以下、25ミクロン以下、20ミクロン以下、15ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下である。ある態様において、そのマイクロパーティクルの平均直径は、約20ミクロンから約50ミクロンの間、約20ミクロンから約30ミクロンの間又は約10ミクロンから約20ミクロンの間である。ある態様において、マイクロパーティクルの平均直径は約12ミクロンから約18ミクロンの間である。ある態様において、そのマイクロパーティクルの平均直径は約15ミクロン、約20ミクロン、約25ミクロン、約30ミクロン、約35ミクロン、約40ミクロン、約45ミクロン又は約50ミクロンである。ある態様において、その生体吸収性のポリマーはPLGAである。そのマイクロパーティクルは投与部位で保持される(例えば、損傷関節への関節内注射)。マイクロパーティクル-カプセル化した剤形の利点は、マイクロパーティクルが注射した箇所に局所的にとどまることであり、それゆえ、その阻害薬は延長された期間にわたって治療有効濃度で局所的に利用可能であり、正確に設計されうる。例えば、そのタイミングは、損傷応答の異化期の炎症フェーズの期間において、数日から数カ月間薬物を放出するために設計されうる。
【0053】
本発明の態様は、サイクリン依存性キナーゼ9(CDK9)阻害薬及び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を含むマイクロパーティクルであり、ここでCDK9阻害薬はPLGAによってカプセル化され、そしてこの中でそのマイクロパーティクルはCDK9阻害薬の徐放を提供する。
【0054】
ある態様において、その生体吸収性ポリマーはPLGA共重合体である。開示のCDK9阻害薬の徐放に有用であるPLGA共重合体は、CDK9阻害薬が実質的に約30日の経過にわたって放出される速度で分解するそれらを含む。ある態様において、PLGA共重合体は乳酸とグリコール酸との単量体の比(L:G比)を約10:90から約90:10を含むそれらを含む。ある態様においては、PLGA共重合体は乳酸とグリコール酸の単量体の比(L:G比)を約50:50から約75:25を含むそれらを含み、約50:50から約75:25までを有する共重合体を含む。ある態様において、PLGA共重合体は約70:30、約65:35、約60:40、約60:50、又は約55:45のL:G比を含むそれらを含む。本明細書のある態様において、開示のPLGA共重合体は酸末端である。本発明の態様において、そのPLGAは酸末端化された50:50のポリ(DLラクタイドCOグリコライド)である。本発明の態様において、そのPLGAは酸末端化されたLactel(登録商標)ポリマー(Durect Corp.)である。本発明の態様において、そのPLGAはLactel(登録商標)B6013-1、B6013-2、又はB6012-4ポリマーである。本発明の態様において、そのPLGAはPurasorb(登録商標)ポリマー(Corbion)である。本発明の態様において、そのPLGAはPurasorb(登録商標)5004Aの50:50のポリ(DLラクタイドCOグリコライド)である。
【0055】
ある態様において、そのPLGA-カプセル化されたCDK9阻害薬のマイクロパーティクルは、直径約1から約50ミクロン、例えば直径約1から約50、約1から約40、約2から約50、約2から約40、約3から約50、約3から約40ミクロンである。ミクロンサイズの粒子の均一な産生が本発明の方法における使用に所望され、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約60、約70、約80、約90又は約100ミクロン未満の直径を有する医薬品製剤における使用について粒子の質量の少なくとも90%、95%、96%、98%又は少なくとも99%を有する。
【0056】
本発明のある態様において、前記マイクロパーティクルは治療期間にわたりおおよそ一定の割合でCDK9阻害薬を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは、カプセル化したCDK9阻害薬の約3%から約10%の最初の放出後、一定の割合で放出する。ある態様において、その最初の放出は約24時間以内に起こる。ある態様において、その最初の放出は約12時間以内に起こる。ある態様において、その最初の放出は約8時間以内に起こる。ある態様において、その最初の放出は約1時間以内に起こる。ある態様において、そのマイクロパーティクルは24時間にわたり、CDK9阻害薬の約3%から約30%、約3%から約20%、約3%から約10%、約5%から約30%、約5%から約20%、又は約5%から約10%を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは、2日間にわたりCDK9阻害薬の約5%から約40%、約5%から30%、約5%から約20%、約10%から約40%、約10%から約30%、約10%から約20%、又は約10%から約15%を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは5日間にわたってCDK9阻害薬の約10%から約50%、約10%から約40%、約10%から約30%、約15%から約40%、約15%から約30%、又は約15%から約25%を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは8日間にわたってCDK9阻害薬の約20%から約70%、約20%から約60%、約20%から約50%、約20%から約40%、約25%から約35%を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは12日間にわたりCDK9阻害薬の約30%から約70%、約30%から約60%、約30%から約50%、約40%から約70%、約40%から約60%、又は約40%から約50%を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは15日間にわたりCDK9の約40%から約80%、約40%から約70%、約50%から約70%、又は約55%から約65%を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは19日間にわたりCDK9阻害薬の約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、又は約65%から約75%を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは22日間にわたりCDK9阻害薬を約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、又は約75から約85%を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは26日間にわたりCDK阻害薬を約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、又は約80%から約90%を放出する。ある態様において、そのマイクロパーティクルは30日間にわたり約60%から約95%、約70%から約95%、約80%から約95%、又は約85%から約95%を放出する。
【0057】
本発明の態様において、治療期間の終了までに、少なくとも約80%のカプセル化したCDK9阻害薬が放出される。ある態様において、放出されるカプセル化したCDK9阻害薬の量は少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%である。本発明の態様において、治療期間は少なくとも約24時間、少なくとも約2日間、少なくとも約5日間、少なくとも7日間、少なくとも約10日間、少なくとも約14日間、少なくとも約20日間、少なくとも約21日間、少なくとも約28日間、少なくとも約30日間、少なくとも約31日間、少なくとも約40日間、少なくとも約42日間、少なくとも約45日間、少なくとも約48日間、少なくとも約50日間又は少なくとも約60日間である。本発明の態様において、治療期間は約60日未満、約55日未満、約50日未満、約45日未満、約40日未満、約30日未満、約28日未満、約25日未満、約21日未満、約20日未満、約14日未満、約10日未満、約7日未満、約5日未満、又は約2日未満である。
【0058】
ある態様において、そのマイクロパーティクルは約24時間にわたりCDK9阻害薬の約3%から約10%を放出し;約2日間にわたりCDK9阻害薬の約10%から約20%を;約5日間にわたりCDK9阻害薬の約15%から約25%を;約8日間にわたりCDK9阻害薬の約25%から約35%を;約12日間にわたりCDK9阻害薬の約40%から約50%を;約15日間にわたりCDK9阻害薬の約55%から約65%を、約19日間にわたりCDK9阻害薬の約65%から約75%を;約22日間にわたりCDK9阻害薬の約75%から約85%を;約26日間にわたりCDK9阻害薬の約80%から約90%を;及び/又は約30日間にわたりCDK9阻害薬の約85%から約95%を放出する。
【0059】
本発明の態様は、そのCDK9阻害薬がフラボピリドール、SNS-032、ボルシクリブ(Voruciclib)、又はそれらの医薬的に許容可能な塩であるマイクロパーティクルである。本発明の態様はそのCDK9阻害薬がフラボピリドールであるマイクロパーティクルである。本発明の態様はPLGAが約50:50から約75:25の乳酸とグリコール酸との比(L:G)を有するマイクロパーティクルである。本発明の態様は、PLGAが約0.4から約0.9のインヘレント粘度(IV)を有するマイクロパーティクルである。本発明の態様はPLGAが約0.4、約0.55、約0.75、又は約0.7から0.9のインヘレント粘度(IV)を有するマイクロパーティクルである。本発明の態様はPLGAがLactel(登録商標)B6013-2、Purasorb(登録商標)5004A、又はLactel(登録商標)B6012-4であるマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが約3から約50ミクロンの直径を有するマイクロパーティクルである。
【0060】
本発明の態様はマイクロパーティクルが約24時間、約2日間、約5日間、約10日間、約14日間、約21日間、約30日間、約45日間、及び約60日間からなる群より選択される期間にわたりCDK9阻害薬を放出するマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが投与後2日間にわたりCDK9阻害薬の約5%から約40%、約5%から約30%、約5%から約20%、約10%から約40%、約10%から約30%、約10%から約20%、約10%から約15%を放出するマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが投与後5日間にわたりCDK9阻害薬の約10%から約50%、約10%から約40%、約10%から約30%、約15%から約40%、約15%から約30%、又は約15%から約25%を放出するマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが投与後8日間にわたりCDK9阻害薬の約20%から約70%、約20%から約60%、約20%から約50%、約20%から約40%、約25%から約35%を放出するマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが投与後12日間にわたりCDK9阻害薬の約30%から約70%、約30%から約60%、約30%から約50%、約40%から約70%、約40%から約60%、又は約40%から約50%を放出するマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが投与後15日間にわたりCDK9阻害薬の約40%から約80%、約40%から約70%、約50%から約70%、又は約55%から約65%を放出するマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが投与後19日間にわたりCDK9阻害薬の約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、又は約65%から約75%を放出するマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが投与後22日間にわたりCDK9阻害薬の約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、又は約75%から約85%を放出するマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが投与後26日間にわたりCDK9阻害薬の約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、又は約80%から約90%を放出するマイクロパーティクルである。本発明の態様はマイクロパーティクルが投与後30日間にわたりCDK9阻害薬の約60%から約95%、約70%から約95%、約80%から約95%、又は約85%から約95%を放出するマイクロパーティクルである。
【0061】
本発明の別の態様は、本発明の複数のマイクロパーティクル及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物である。本発明の態様は、複数のマイクロパーティクルが約5から約20の、又は約10から約20ミクロンの、又は約20から約50ミクロンの平均の直径を有する組成物である。本発明の態様は、複数のマイクロパーティクルの10%量(D10)が約9又は約10ミクロン未満を有する組成物である。本発明の態様は、複数のマイクロパーティクルの50%量(D50)が約18未満、約19未満、約20ミクロン未満の直径を有する組成物である。本発明の態様は複数のマイクロパーティクルの90%量(D90)が約26、約27、約28、約29、又は約30ミクロン未満の直径を有する組成物である。本発明の態様は、複数のマイクロパーティクルがCDK9阻害薬の質量比で約0.5%から約5%、約0.5%から約4%、約0.5%から約3%、又は約0.5%から約2%を有する組成物である。
【0062】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体において分散された又は懸濁された本発明のマイクロパーティクルを含む。本明細書で用いられるように、「医薬的に許容可能な担体」は、当業者に既知である任意の及び全ての溶媒、分散剤、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌薬、抗真菌薬)、等張剤、吸着遅延剤(adsorption delaying agents)、塩、保存料、安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、染色剤、それらの類似物質及び組み合わせ(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、Remington‘s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329参照)。任意の慣習の担体が、本発明のマイクロパーティクルと適合しない場合である限りを除いて、医薬組成物のその使用は熟考された。本発明の組成物は第一に注射又は他の非経口の方法によって投与がなされるであろうことが予期され、また、しかしながら、例えば、ゲル及びエアロゾルの組成物は、外科手術の間の処理に用いられうる。適当な担体は水、注射用水、食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、等を含む。本発明の組成物はさらに推進剤、抗凝集剤、及び上記に挙げられた添加剤でありうる。
【0063】
本発明の態様は、マイクロパーティクルが医薬的に許容可能な担体に投与される方法である。本発明の態様は、フラボピリドール、SNS-032、ボルシクリブ(Voruciclib)、及びそれらの誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩より選択される方法である。本発明の態様は、そのCDK9阻害薬がフラボピリドール、SNS-032、ボルシクリブ(Voruciclib)、及びそれらの誘導体である方法である。本発明の態様は、そのCDK9阻害薬がフラボピリドールである方法である。本発明の態様は、治療される対象がヒトである方法である。本発明の態様は、治療される対象がウマである方法である。本発明の態様は、CDK9阻害薬の治療有効量が1から42日間にわたり放出される方法である。
【0064】
本発明の態様において、その組成物は水及びポリビニルアルコール(PVA)を含む担体を含む。本発明の態様において、その担体はエタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコール、又は液体のポリエチレングリコール、等)、又はそれらの適当な混合物を含む。本発明の態様において、その担体はゲル化剤を含む。投与前に即座に水和した又は懸濁した本発明の組成物において、その担体は本発明のマイクロパーティクル、例えばマンニトール、スクロース等を懸濁すること及び離散することに適当な乾燥した粒子状固体でありうる。
C.方法
【0065】
本発明の別の態様はそれを必要とする対象を治療する方法であり、複数のマイクロパーティクルの治療有効量を投与することを含み、そのマイクロパーティクルはCDK9阻害薬及び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を含み、ここでそのCDK9阻害薬はPLGAによってカプセル化され、そしてこの中でそのマイクロパーティクルはCDK9阻害薬の徐放を提供する。
【0066】
本明細書の方法は製剤化した徐放のCDK9阻害薬を提供し、局所送達について、かくして薬剤は延長された期間にわたり治療有効量で局所的に利用可能なままである。マイクロパーティクルに製剤化する試薬を添加することによって製剤化したCDK9阻害薬は、炎症反応の期間にわたり、CDK9阻害薬の放出を提供し、それは急性の損傷事象後数日から数週間に及びうる。また、本明細書で提供されるものは、薬物の局所送達について製剤化したCDK9阻害薬を投与する方法である。例えば、カプセル化したCDK9阻害薬を有するマイクロパーティクルは、関節内に注射して徐々に組織内に薬剤の治療有効濃度を提供する場合に、関節包のような関連組織内で保持され、一方で大きく全身の薬物負荷を減少する。
【0067】
本開示の方法により治療されうる対象は、ヒト又はヒトではない哺乳類、例えば、伴侶動物、例えばイヌ、ネコ、ラット等、又は家畜、例えばウマ、ロバ、ラバ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、又はウシ等である。
【0068】
全身的な薬物の負荷は、治療量は部分的に投与されるので、本発明の方法において著しく減少し、そしてそれゆえより低用量が用いられうる。例えば、単回の膝関節の関節内注射によって本発明の組成物を投与する場合に、フラボピリドールのようなCDK9阻害薬の局所有効量はヒトにおける全身投与よりも約80~100倍少ない薬剤によって、そして損傷したウマの関節の場合でさえもより大きな減少が成し遂げられうる。徐放される方法は外傷後の全身及び局所の過炎症と関連のある合併症を著しく減少するために有用である。
【0069】
避けられるこれらの合併症は、急性肺損傷、脂肪再栓症、多臓器不全、回復の遅れ、重篤な傷害後の免疫抑制等を含む。本発明は、炎症性の腫脹を減少するために、脳/脊髄損傷における組織の損傷を制限するために、交通事故において受けるような重篤な多損傷の場合における全身の炎症を防止するために、心筋梗塞後の筋損傷を制限するために、及び急性炎症反応が所望されていない他の状態に用いられうる。本発明は特に二次免疫応答が所望されない効果を生じる状況に適合する。特定の例は:(a)免疫応答が軟骨のマトリックス分解酵素を活性化し、さらに関節を変形性関節症にかかりやすくする、半月板断裂又は前十字靭帯断裂のような関節損傷、(b)免疫応答がけいれん誘発でありうる毒(神経ガス、有機リン酸系等)からの神経学的な損傷、(c)局所的な免疫応答又は異物反応が所望されない医療移植を含む。
【0070】
CDK9阻害薬は炎症反応経路において効果を発揮する。例えば、その薬理学的なCDK9阻害薬のフラボピリドールは、IL-1βによって5時間処理したヒトの細胞培養において、初期炎症応答遺伝子の幅広い範囲の活性化を効果的に抑制する(図1参照)。IL-1βによって誘導された(84の総NFκB標的の中から)67の異なる遺伝子の間で、フラボピリドールの共処理によって59を発現した(IL-1β、IL-6、及びTNFのような最も特徴づけられる炎症性サイトカインを含む)。その抑制の平均的な規模は、最大の誘導の>86%である。これらのデータはCDK9阻害が初期炎症性遺伝子の幅広い範囲の誘導を抑制することにおいて高い効率であることを実証する。重要なことに、ハウスキーピング遺伝子及び誘導できない遺伝子は短期間のCDK9阻害によって影響をうけず、副作用において潜在的な減少を示している。
【0071】
現在の抗炎症薬は、上流の炎症性シグナル経路の標的の様々な成分、又は下流のエフェクター遺伝子のいずれかを標的にする(IL-1拮抗薬、TNF拮抗薬、抗酸化剤等)。対応の遺伝子の転写が起こらないように特定の経路の阻害、又は個々の下流のエフェクター遺伝子の働きの阻害に焦点を当ててきた。これらの現存の研究はいずれもCDK9によって制御される転写伸長の律速工程を解消するものではない。現存の薬物は多様な生理学的な炎症誘発性の問題の取り扱いにおいての効果は低く、そして広範囲の多種多様な下流の炎症応答遺伝子の活性化を防止できないかもしれない。それゆえ、全ての炎症応答遺伝子の活性化における律速段階を制御するCDK9を標的にすることは、より効果的及び効率的である。CDK9による転写伸長の阻害は初期応答炎症性遺伝子によって制限され、そしてCDK9阻害は、試験される急性の炎症局面内でハウスキーピング遺伝子及び誘導されない遺伝子の転写に影響を与えず、それゆえ、短期間において細胞又は組織に有害でない。CDK9阻害の一つの利点は、非常に多くの炎症性の刺激から炎症性遺伝子の転写伸長を減少することである。CDK9はフラボピリドール及び本明細書に他に開示されたもの、例えばSNS-032、ボルシクリブ(Voruciclib)、及びフラボピリドールのような小分子薬によって特異的に及び可逆的に阻害されうる。本明細書の製剤及び方法と組み合わせて、CDK9阻害薬は炎症部位に局所的に送達され、それによってその炎症反応及び症状を、減少、回復、防止又は減少させる。
【0072】
ある態様において、本明細書の方法は、本明細書で記載されるマイクロパーティクルの形態において、少なくとも一つのCDK9阻害薬及びPLGAポリマーを投与することを含み、ここでCDK9阻害薬は、フラボピリドール、SNS-032、及びボルシクリブ(Voruciclib)、又はそれらのエステル、プロドラッグ、又は医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される。
【0073】
ある態様において、その製剤化したCDK9阻害薬は、対象の体内の標的組織、細胞型又は領域に投与され、それらに限定されないが、損傷部位、炎症又は潜在的に炎症の領域、関節、軟骨、外科手術を経験した組織、スポーツ損傷によって損傷した組織又は領域、外植片、例えば骨軟骨外植片、それらに限定されないが、軟骨の同種移植、軟骨領域の分解及び/又は軟骨細胞の死を含む。
【0074】
ある態様において、その製剤化したCDK9阻害薬は外傷又は炎症反応の10日以内に投与される。ある態様において、その製剤化したCDK9阻害薬は、損傷又は炎症反応後10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1日以内に投与される。ある態様において、その製剤化したCDK9阻害薬は外傷又は炎症反応後、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5時間又は0.5時間未満で投与される。ある態様において、その製剤化したCDK9阻害薬は損傷又は炎症反応後1回、2回、3回、又はそれ以上投与される。
【0075】
ある態様において、その製剤化したCDK9阻害薬は、滑膜炎又は関節炎のような前から存在する状態又は病気を有する対象に投与される。ある態様において、その製剤化したCDK9阻害薬はそのような長期的に前から存在する状態に対して投与され、例えば、毎週、2週間ごと、3週間ごと、毎月(例えば4週間ごと)、5、6、7、8、9又は10週ごとに投与される。ある態様において、その製剤化したCDK9阻害薬は、症状、炎症又は状態若しくは他の兆候又疾病が減少、回復、減弱される、又は他のものが治療によって影響されるまで、そのような長期的に前から存在する状態に対して投与される。ある態様において、その製剤化したCDK9阻害薬は、対象の寿命についてそのような長期的に前から存在する状態に対して、又は病気若しくは状態の診断又は再発の時間から投与される。
【0076】
本発明の別の態様はそれを必要とする対象を治療する方法であって、本発明の複数のマイクロパーティクルを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0077】
本発明の態様は、その対象が関節炎、変形性関節症、外傷後の変形関節症、及び損傷より選択される病気又は状態を有する方法である。本発明の態様はその病気又は状態を関節にもたらす方法である。本発明の態様は関節が膝関節である方法である。本発明の態様は、医薬組成物が注射によって投与される方法である。
【0078】
本発明の別の態様は、複数のマイクロパーティクル内にCDK9阻害薬を含む組成物を部位へ投与することを含む炎症部位を治療する方法であって、ここでそのマイクロパーティクルは、少なくとも24時間その部位でCDK9阻害薬の徐放を提供し、そしてそれによってその部位の炎症が減少又は回復される。
【0079】
本発明の態様は炎症部位が関節、軟骨、又は損傷部位である方法である。その発明の態様は、そのマイクロパーティクルがPLGAを含む方法であって、そしてここでそのCDK9がフラボピリドール、SNS-032、ボルシクリブ(Voruciclib)、及びそれらの誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩から選択される。その発明の態様はそのマイクロパーティクルが約20から約50ミクロンの間の平均直径を有する方法である。
【0080】
IV.実施例
実施例1.乳酸・グリコール酸共重合体及びフラボピリドールを含む粒子の合成
フラボピリドール-乳酸グリコール酸共重合体粒子の調製方法は同一の乳化溶媒蒸発法を用いて実施された。簡潔に、PLGAを塩化メチレン(5%w/v)において溶解し、フラボピリドールを添加し、そしてその溶液を滅菌水中のバルク量のポリビニルアルコールに加えて、さらにホモジナイズし(2分間、35,000rpm)エマルジョンを形成した。それゆえ形成された粒子を24時間撹拌し、残存した塩化メチレンを蒸発させた。MPsを洗浄し、凍結乾燥し、そして-20℃で保存した。サイズ分布をMicrotrac Nanotrac Dynamic Light Scattering Particle Analyzerによって測定し、そして走査型電子顕微鏡によって確認した。
【0081】
我々は、フラボピリドールの徐放を示す異なる型のCDK9阻害薬放出マイクロパーティクルを産生した。実施例を表1及び図4A-D及び図5に示す。これらの製剤の差異は、(この場合はフラボピリドールにおいて)CDK9阻害薬をカプセル化するPLGAの特徴より起因し、それは次にフラボピリドールの放出の動態に影響する。これらのポリマーを物理学的な特性、例えばインヘレント粘度又は平均分子量、フラボピリドールのようなCDK9阻害薬とのそれらの適合性、それらのL/G比、及びそれらの予期された放出動態に基づいて選択した。本例において、そのポリマーはLactel(登録商標)B6013-2、Purasorb(登録商標)5004A(Corbion)、及びLactel(登録商標)B6012-4だった。
【0082】
これらのポリマーの特徴を表1に示す。そのマイクロパーティクルは約15ミクロン(4~50ミクロンに及ぶ)の中央値のサイズであり、質量比で約0.5%~1.5%のフラボピリドールを有する(図4)。
表1:与えられた特性(L/G比、インヘレント粘度、末端基)を有するPLGAカプセル化したフラボピリドールの製剤。製剤1:Lactel(登録商標)B6013-2、LG比50:50、IV:0.55~0.75 dL/g、酸末端;製剤2:Purasorb(登録商標)5004A、LG比50:50、IV0.4dL/g、酸末端;製剤3:Lactel(登録商標)B6012-4、LG比75:25、IV0.7~0.9dL/g、酸末端。
【表1】
実施例2.In vitroのPLGA/フラボピリドール粒子の評価
【0083】
粒子からのフラボピリドール放出を、247nmの吸光度によってPBS-Tween(登録商標)において42日間にわたって定量した。図5では、in vitroで30日までマイクロパーティクルより放出された約90%のフラボピリドールによって、一つのポリマーからの30日までの近似的な線形の放出動態を示す。
実施例3.PLGA/フラボピリドール粒子はラットの変形性関節症モデルにおいて活性である。
【0084】
ラット(IACUC承認)における損傷後の変形性関節症(PTOA)を誘導するために、4匹のラット(Sprague Dawley)を麻酔し、そして同一の機械の過負荷を膝関節に適用することで、ACLを破壊した。フラボピリドール-PLGAを受けた2匹のラット及びブランクのPLGAを受けた2匹のラットによって、5mgの粒子を50μLの生理食塩水で懸濁し、23ゲージの針を用いて関節内腔に投与した。変形性関節症の発生及び関節の分解を評価するために、我々はIVIS-200上のMMPSense750-FASTの関節内注射を用いて、(3週間までの)長期的なMMP活性のin vivoイメージングを実施した。
【0085】
ラットのPTOAモデルにおいて、我々は損傷3日後のin vivoのMMP活性において強い増加を観察した。しかしながら、フラボピリドール-PLGAマイクロパーティクルの関節内注射は試験された全ての時点で著しくin vivoのMMP活性を減少した。
【0086】
さらに、関節損傷の背景におけるin vivoのデータでは、フラボピリドール注射は、我々が損傷後の変形性関節症を研究することにおいて発展させた非浸潤性の膝の損傷モデルによって評価し、損傷後4~8時間の損傷部位で効果的に及び選択的に炎症性サイトカインIL-1β及びIL-6のmRNA発現を抑制したことを示した(図2A~2D、図3A~3D参照)(B.A.Christiansen et al.,Osteoarthritis Cartilage(2012)20(7):773~82)。加えて、そのハウスキーピング遺伝子の18SrRNA及びマトリックス遺伝子のコラーゲン2型及びアグリカンは損傷又はフラボピリドール処理のいずれによっても影響はなかった。これらのデータは、CDK9阻害が、フラボピリドールが腹腔内注射を通じて末端及び全身に投与されるが、in vivoで損傷部位で主要な炎症性サイトカインIL-1β及びIL-6の産生を抑制することにおいて効果的であることを示す。図3A及び図3Bにおけるデータはフラボピリドールの反復投与が単回投与よりもより効果的であることを示す。
【0087】
追加のin vivoのデータはPTOAが上記に参照されたマウスの研究に類似した前十字靭帯損傷によって開始されたラットモデルにおいて作り出された。本実施例において、PLGAカプセル化したCDK9阻害薬のフラボピリドールを、損傷した膝関節へ関節内注射によって送達した。製剤に対する明らかな毒性又は他の負の反応は無かった。その製剤は、前十字靭帯損傷におけるMMP活性を減少することにおいて潜在的な効果を有した。異化酵素的な関節分解の損傷誘導活性はMMPSense750試薬を用いてin vivoで監視した。
【0088】
MMPSense750は局所的なMMP活性の存在下で蛍光になり、そして前十字靭帯損傷は未処理の膝及び空のPLGAマイクロパーティクルによる膝において頑強な蛍光の増加をもたらす。この損傷誘導したMMP活性は損傷の数日以内に検出可能になり、そして少なくとも3週間、損傷した関節内で上昇したままである。しかしながら、PLGAカプセル化したフラボピリドールによる膝において、そのMMPSense750シグナルは損傷後に増加しなかった。これはPLGAマイクロパーティクルを放出するフラボピリドールの単回の関節内注射が、注射した関節においてMMP活性を効果的に妨げたこと、そして少なくとも3週間継続する単回注射の利点を示す(図7A参照)。これは、我々が本モデルにおいて、in vivoのMMP活性が初期応答遺伝子の転写活性に依存し、フラボピリドールの反復した全身投与によって阻害されうることを以前に示したように、CDK9活性の長時間続く阻害と一貫している。
実施例4.変化した放出特性によるPLGA-フラボピリドール粒子の合成の比較
【0089】
(A)2ロットのPLGA-フラボピリドールのマイクロパーティクルを高粘度のエステル末端化したポリマー(Purasorb(登録商標)5010、LG比50:50、IV=1.0)を作製した。酸末端化したPLGAマイクロパーティクルと比較して(例えば、表1参照)、エステル末端化した形態は、マイクロパーティクルにより少ないCDK9阻害薬を組み込む。表2に示すように、積載割合は容認し難いほど低く(0.14%~0.17%)、そしてそれゆえ商業化には通用しない。
表2:エステル末端化したPLGAからの積載及び粒子サイズ
【表2】
【0090】
図8~10は変化した積載及び放出の特性によるPLGA/フラボピリドールの比較の粒子を示す。図8はフラボピリドールのより低い積載及び放出の水準を有するマイクロパーティクルの集団を示す。これらのマイクロパーティクルをエステル末端化したPLGAによって作製し、そして約0.75dL/g以下のインヘレント粘度を一般的に有する酸末端化したPLGAによって製剤化したマイクロパーティクルと比較して、より高いインヘレント粘度(1.0dL/g)を有した。
【0091】
図9は、CDK9阻害薬の放出がCDK9阻害薬の約60~75%に制限されるマイクロパーティクル製剤を示し、ここでそのマイクロパーティクルは80%放出に到達しない。これらのマイクロパーティクルをエステル末端化したPLGAによって製剤化され、1.0dL/gのインヘレント粘度及びさらなる凝集を示した。
【0092】
図10は0.7~0.9dL/gの間のインヘレント粘度を有する酸末端化したPLGAの2つのマイクロパーティクル製剤を示す。これらのマイクロパーティクルがフラボピリドールの積載を示したが、約20%のCDK9阻害薬を初期に勢いよく放出したが、示された期間にさらなる阻害薬の放出はなかった。様々なPLGA製剤におけるフラボピリドールの積載及び放出効率を比較した概要を表3に示す。
表3:製剤特徴
【表3】
実施例5.ウマの対象への製剤化したフラボピリドールの投与
【0093】
薬剤調製:フラボピリドールの用量(0.122mg)を10.26mgのPLGAマイクロパーティクルに埋め込んだ。そのマイクロパーティクルを2mLの注射用の無菌生理食塩水に再懸濁した。
【0094】
(A)手術症例:顆部骨折を有する52頭、及び第1指骨(P1)骨折を有する8頭の総数60頭のウマを研究に用いた。そのウマを治療した36頭とコントロールの24頭(生理食塩水のみ)との2群に分けた。手術症例を手術の間、治療群とコントロール群にランダム化した。その執刀医は調製されたシリンジを提供され、そして病気のウマを関節内に生じる骨折のラグスクリューの圧縮後すぐに治療した。全てのウマを同一の抗生物質及びNSAIDsによって術後に治療し、そして毎日ハンドウォークにより快適さのレベルを評価した。包帯の交換で、関節内の滲出液、浮腫、切開排膿、及び屈曲時の痛みについてその脚を評価した。その手術部位を月に一度X線写真を撮り、骨折の治癒を評価した。
【0095】
快適スコアは顆部骨折における治療群及びコントロール群で類似していたが、P1の骨折において有意に改善した。両群とも、術後24時間で開始する治療群において滲出スコアは著しく改善した。ウマの本群内においてスクリュー挿入について切開を刺した周辺に浮腫が主に位置していたが、浮腫スコアにおいて有意差は見られなかった。
【0096】
術後90日以後の時点で治療したウマでは動作の範囲、滲出スコア、及び快適さにおいて著しい改善を実証した。X線写真上、治療と未治療のコントロールとの間の治癒の割合において有意差は見られず、炎症反応の阻害が治癒に負の影響を与えないことを示した。
【0097】
(B)トレーニングケース(競走馬):中手指節関節及び中足指節関節及び手根関節に関係する行動を制限する跛行の問題を有するウマを上記のマイクロパーティクルによって治療した。
【0098】
ケースでは注射前にX線写真、CTスキャン、及び超音波検査法によって評価され、既に存在する病気の存在を見つけ出した。ケースでは前から存在する骨軟骨の断片(n=18)、骨増殖症(n=65)、関節の部分的な崩壊(n=3),広範な軟骨下嚢胞性病変(n=1)、そして軟骨下のリモデリング(n=15)を有すると分類した。ウマ跛行グレード、滲出及び屈曲への反応について毎日試験した。総数206注射を投与した。有害事象は見られなかった。
【0099】
滑膜炎を有する症例において、滑液滲出が最初の24時間以内に平均25%減少し、48時間で75%減少し、そして60~72時間まで通常であった。快適スコアは注射の36時間以内に改善した。平均で、前から存在する関節炎の兆候を有するウマは注射から3~4週間に対する臨床スコアにおいて改善を実証した。
【0100】
数頭のウマにおける本試験の開始から30日間ごとに反復して注射した。滑液の臨床試験は全ての症例において改善された粘度及び総タンパク質スコアの減少を明らかにした。X線写真の又はトモグラフィーの異常の上代性の増大は繰り返された治療によるこれらの症例において見られなかった。
実施例6.SNS-32、ボルシクリブ(Voruciclib)、及びディナシクリブの製剤化
【0101】
(A)調製:PLGA又はポリカプロラクトン(PCL)におけるCDK-9阻害薬のSNS-032(非フラボノイド)、ボルシクリブ(Voruciclib)(フラボノイド)、及びディナシクリブ(非フラボノイド)のカプセル化を以下のように実施した。CDK9阻害薬を有する乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)又はポリカプロラクトン(PCL)粒子の調製は同一の乳化溶媒蒸発法を用いて実施された。簡潔に、500mgのPGLA又はPCLを2.5mLの(PLGAについて)塩化メチレン又は(PLCについて)2%v/vのジメチルスルホキシドを含むクロロホルム内に溶解した。CDK9阻害薬(2%g/gポリマー、ディナシクリブ、SNS-032、及びボルシクリブ(Voruciclib))をポリマー溶液に添加し、そして続いて5mLの10%の水性のポリビニルアルコールに添加した。その溶液をフルスピード(PLGAについて30秒又はPCLについて45秒)でボルテックスし、マイクロパーティクルを形成した。そのマイクロパーティクル懸濁液を150mLの1%ポリビニルアルコールに移し、そして24時間撹拌した。その粒子をペレット化し、水で洗浄し、凍結乾燥し、そしてさらなる使用のために-20℃で貯蔵した。サイズ分布をAccuSizer model770 optical particle sizer(Particle Sizing Systems)を用いて測定した。結果を以下の表4に示す。
【表4】
表4はPLGA又はPCLのいずれかを有する各CDK9阻害薬を用いるマイクロパーティクルに積載されたCDK9阻害薬の割合(すなわち2gの割合)を示す。例えば、SNS-032は30.7%の積載効率を有し、かくして開始時2gの開始時のSNS-032のうち、約0.61gをPLGAマイクロパーティクルにカプセル化した。低薬物量のカプセル化は、マイクロパーティクルについてより少ない阻害薬をもたらす。積載効率がある閾値を下回るまで減少するならば、CDK9阻害薬の治療容量を送達するために必要とされるマイクロパーティクルの量は、(費用、効率、注射量、及び潜在的に、投与されるマイクロパーティクルへの治療される対象への副作用において)禁止されるようになりうる。PLCがCDK9阻害薬の十分量を包含することに失敗したこと、及びPLGAが非フラボノイドの阻害薬ディナシクリブの十分量を包含することに失敗した結果を示す。
【0102】
(B)放出:上記に調製したマイクロパーティクルの放出特性を実施例2に記載されている手順を用いて決定した。その結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0103】
ディナシクリブを含むマイクロパーティクルが治療における十分量で化合物を放出することに失敗したこと、及びPLCを用いるマイクロパーティクルが治療における十分な割合で試験された任意のCDK9阻害薬を放出することを失敗することをその結果は実証した。
【0104】
以下の表6はCDK9阻害薬並びにPLGA及びPCLにおける製剤化剤の積載及び放出を比較した。
【表6】
【0105】
上述の発明は理解の明確化の目的のために図及び実施例としていくらか詳細に説明されてきたが、当業者がある変化及び改変が請求の範囲において実行されうると理解するだろう。加えて、本明細書で提供される各参考文献は、各参考文献が個別に参照によって取り込まれた場合と同程度に、その全体を参照によって取り込まれる。本出願と本明細書で提供される参照との間に矛盾が存在する場合、本出願がより有意に立つものとする。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11