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特許7417963アーク検出装置、アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】アーク検出装置、アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20240112BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20240112BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/52
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022545542
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2021027127
(87)【国際公開番号】W WO2022044626
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2020142668
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】木寺 和憲
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達雄
(72)【発明者】
【氏名】大堀 貴大
(72)【発明者】
【氏名】金森 圭太
(72)【発明者】
【氏名】大島 和哉
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134445(JP,A)
【文献】特表2011-524601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0114627(US,A1)
【文献】特許第6567230(JP,B2)
【文献】特開2009-278744(JP,A)
【文献】特開2018-028498(JP,A)
【文献】特表平06-508974(JP,A)
【文献】特開2016-063581(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150876(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0328944(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/52
G01R 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から電力が供給される複数の給電路のうちのいずれか1つの対象給電路に印加される電圧の測定結果と、前記対象給電路に流れる電流の測定結果と、を取得する取得部と、
前記取得部にて取得した前記電圧の測定結果のうちの瞬時電圧と、前記取得部にて取得した前記電流の測定結果のうちの瞬時電流と、の積の特定の周波数帯域の成分に基づいて、前記複数の給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する判定部と、を備える、
アーク検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記取得部にて取得した測定結果のうちの前記特定の周波数帯域の成分を抽出するように正規化した値に基づいて、前記複数の給電路において前記アーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する、
請求項に記載のアーク検出装置。
【請求項3】
前記判定部にて前記アーク故障の発生の可能性があると判定された場合に、前記複数の給電路に流れる電流を一時的に低下させる限流部と、
前記限流部による前記複数の給電路に流れる電流の一時的な低下が解除された後に、前記複数の給電路において前記アーク故障が発生しているか否かを判定する補助判定部と、を更に備える、
請求項1又は2に記載のアーク検出装置。
【請求項4】
直流電源から電力が供給される複数の給電路のうちのいずれか1つの対象給電路に印加される電圧の測定結果を取得する取得部と、
前記取得部にて取得した前記電圧の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、前記複数の給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部にて前記アーク故障の発生の可能性があると判定された場合に、前記複数の給電路に流れる電流を一時的に低下させる限流部と、
前記限流部による前記複数の給電路に流れる電流の一時的な低下が解除された後に、前記複数の給電路において前記アーク故障が発生しているか否かを判定する補助判定部と、を更に備える、
アーク検出装置。
【請求項5】
前記補助判定部は、前記取得部にて取得した前記電圧の測定結果のうちの直流成分に基づいて、前記複数の給電路において前記アーク故障が発生しているか否かを判定する、
請求項3又は4に記載のアーク検出装置。
【請求項6】
前記複数の給電路は、分岐点に対して並列に接続されてそれぞれ1以上の負荷が接続可能な複数の分岐路を含んでおり、
前記アーク検出装置は、前記複数の分岐路のうちのいずれか1つの分岐路に接続される、
請求項1~5のいずれか1項に記載のアーク検出装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のアーク検出装置と、
前記複数の給電路に電力を供給する前記直流電源と、を備える、
アーク検出システム。
【請求項8】
直流電源から電力が供給される複数の給電路のうちのいずれか1つの対象給電路に印加される電圧の測定結果を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得した前記電圧の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、前記複数の給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する判定ステップと、を含み、
前記判定ステップにて前記アーク故障の発生の可能性があると判定された場合に、前記複数の給電路に流れる電流を一時的に低下させ、
前記複数の給電路に流れる電流の一時的な低下が解除された後に、前記複数の給電路において前記アーク故障が発生しているか否かを判定する、
アーク検出方法。
【請求項9】
直流電源から電力が供給される複数の給電路のうちのいずれか1つの対象給電路に印加される電圧の測定結果と、前記対象給電路に流れる電流の測定結果と、を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得した前記電圧の測定結果のうちの瞬時電圧と、前記取得ステップにて取得した前記電流の測定結果のうちの瞬時電流と、の積の特定の周波数帯域の成分に基づいて、前記複数の給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する判定ステップと、を含む、
アーク検出方法。
【請求項10】
1以上のプロセッサに、
請求項8又は9に記載のアーク検出方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定するアーク検出装置、アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アークを検出するためのアーク検出手段が開示されている。このアーク検出手段は、端子台への入力側配線と端子台からの出力側配線との間の電圧値を測定する電圧検出手段と、端子台からの出力側配線の電流値を測定する電流検出手段と、を備える。そして、このアーク検出手段では、電圧検出手段の電圧値の変動及び電流検出手段の電流値の変動を同時に検出することで、電気ノイズ等と、端子台におけるアークとを識別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-7765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、直流電源から分岐した複数の給電路でのアーク故障の発生を検出することができるアーク検出装置、アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るアーク検出装置は、取得部と、判定部と、を備える。前記取得部は、直流電源から電力が供給される複数の給電路のうちのいずれか1つの対象給電路に印加される電圧の測定結果を取得する。前記判定部は、前記取得部にて取得した前記電圧の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、前記複数の給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0006】
本発明の一態様に係るアーク検出装置は、取得部と、判定部と、を備える。前記取得部は、直流電源から電力が供給される複数の給電路のうちのいずれか1つの対象給電路に印加される電圧の測定結果と、前記対象給電路に流れる電流の測定結果と、を取得する。前記判定部は、前記取得部にて取得した前記電圧の測定結果のうちの瞬時電圧と、前記取得部にて取得した前記電流の測定結果のうちの瞬時電流と、の積の特定の周波数帯域の成分に基づいて、前記複数の給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0007】
本発明の一態様に係るアーク検出システムは、上記のアーク検出装置と、前記複数の給電路に電力を供給する前記直流電源と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係るアーク検出方法は、取得ステップと、判定ステップと、を含む。前記取得ステップでは、直流電源から電力が供給される複数の給電路のうちのいずれか1つの対象給電路に印加される電圧の測定結果を取得する。前記判定ステップでは、前記取得ステップにて取得した前記電圧の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、前記複数の給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0009】
本発明の一態様に係るアーク検出方法は、取得ステップと、判定ステップと、を含む。前記取得ステップでは、直流電源から電力が供給される複数の給電路のうちのいずれか1つの対象給電路に印加される電圧の測定結果と、前記対象給電路に流れる電流の測定結果と、を取得する。前記判定ステップでは、前記取得ステップにて取得した前記電圧の測定結果のうちの瞬時電圧と、前記取得ステップにて取得した前記電流の測定結果のうちの瞬時電流と、の積の特定の周波数帯域の成分に基づいて、前記複数の給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、上記のアーク検出方法を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、直流電源から分岐した複数の給電路でのアーク故障の発生を検出することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態1に係るアーク検出装置が適用されたアーク検出システムの構成を示す概要図である。
図2図2は、実施の形態1に係るアーク検出装置の動作例を示すフローチャートである。
図3図3は、2つの直流電源を有するDC配電網の一例を示す概要図である。
図4図4は、実施の形態2に係るアーク検出装置が適用されたアーク検出システムの構成を示す概要図である。
図5図5は、実施の形態2に係るアーク検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0014】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0015】
(実施の形態1)
[構成]
実施の形態1に係るアーク検出装置及びアーク検出システムについて、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係るアーク検出装置1が適用されたアーク検出システム100の構成を示す概要図である。
【0016】
アーク検出装置1は、直流電源2から電力が供給される複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定するための装置である。すなわち、給電路L1は、例えば外的要因又は経年劣化等によって損傷又は破断を引き起こす可能性があり、このような損傷等に起因してアーク(アーク放電)が発生し、結果としてアーク故障が発生する可能性がある。そこで、アーク検出装置1は、給電路L1で発生し得るアーク故障を検出するために用いられる。ここでいう「アーク故障の発生の可能性があるか否か」とは、アーク故障が発生しているか否かを含む他、アーク故障は発生していないが近い将来アーク故障が発生し得るか否かを含み得る。
【0017】
アーク検出装置1は、直流電源2と共にアーク検出システム100を構成する。言い換えれば、アーク検出システム100は、アーク検出装置1と、複数の給電路L1に電力を供給する直流電源2と、を備えている。
【0018】
具体的には、アーク検出装置1は、いわゆるDC(Direct Current)配電網300にて用いられる。実施の形態1では、DC配電網300は、図1に示すように、直流電源2と分岐点P1との間の主電路L11と、分岐点P1に対して並列に接続されてそれぞれ1以上の負荷3が接続可能な複数の分岐路L12と、を含むように構成されている。主電路L11及び複数の分岐路L12は、いずれも「給電路L1」である。つまり、複数の給電路L1は、分岐点P1に対して並列に接続されてそれぞれ1以上の負荷3が接続可能な複数の分岐路L12を含んでいる。
【0019】
各給電路L1は、直流電源2の出力側の正極に接続される正側給電路と、直流電源2の出力側の負極に接続される負側給電路と、の一対の電路により構成されている。したがって、実施の形態1では、分岐点P1は、主電路L11の正側給電路と各分岐路L12の正側給電路との接続点、及び主電路L11の負側給電路と各分岐路L12の負側給電路との接続点の2点の組み合わせである。
【0020】
なお、DC配電網300は、1つの分岐点P1だけでなく、複数の分岐点P1を有していてもよい。この場合、DC配電網300は、分岐点P1ごとに複数の分岐路L12を有することになる。また、DC配電網300は、1つの直流電源2だけでなく、複数の直流電源2を有していてもよい。
【0021】
以下では、図1に示すように、DC配電網300に含まれる直流電源2が1つであり、DC配電網300に含まれる分岐点P1が1つであり、分岐点P1に接続される分岐路L12が3つである、と仮定して説明する。つまり、図1に示すDC配電網300は、1つの主電路L11と、3つの分岐路L12と、で計4つの給電路L1を有している。
【0022】
実施の形態1では、直流電源2は、AC/DCコンバータ21を備えた電力変換器である。直流電源2は、電力系統200から出力される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を主電路L11へ出力する。主電路L11へ出力された直流電力は、分岐点P1を介して各分岐路L12へ出力される。なお、直流電源2は、直流電力を出力する態様であればよく、太陽光電池等の分散型電源若しくは蓄電池等の電源、又はこれらの電源と電力変換器(例えば、DC/DCコンバータ回路を備えた電力変換器)との組み合わせであってもよい。
【0023】
各分岐路L12は、例えばダクトレールにより構成されており、1以上の負荷3が接続可能である。つまり、各分岐路L12においては、1以上の負荷3を自由な位置に配置することが可能である。もちろん、各分岐路L12は、1以上の負荷3が接続可能な場所があらかじめ定められている態様であってもよい。実施の形態1では、各分岐路L12は、施設の天井に配置されているが、施設の床、壁、又は什器等に設置されていてもよい。
【0024】
負荷3は、分岐路L12に接続されることにより、直流電源2から当該分岐路L12を介して供給される直流電力を受けて駆動する。実施の形態1では、負荷3は照明器具であるが、例えばスピーカ、カメラ、センサ、又はUSB PD(Power Delivery)等であってもよい。つまり、負荷3は、直流電力を受けて駆動する態様であれば、照明器具以外の機器であってもよい。また、実施の形態1では、各分岐路L12に接続されている負荷3は全て照明器具であって1種類であるが、各分岐路L12に接続される負荷3の種類は複数であってもよい。例えば、各分岐路L12には、照明器具と、スピーカと、カメラと、センサと、USB PDと、が接続されていてもよい。これらの機器は、1つの分岐路L12に全て接続されていてもよいし、複数の分岐路L12に分かれて接続されていてもよい。
【0025】
複数の分岐路L12には、直流電源2からそれぞれ同等の大きさの電圧が印加される。ここでいう「同等」は、完全に同じであることを含む他、殆ど一致することを含む。つまり、複数の分岐路L12のそれぞれに印加される電圧には、互いに数%程度の誤差があることが許容される。また、各分岐路L12には、各分岐路L12に接続される1以上の負荷3の状態(電源スイッチのオン/オフ等)に応じて、基本的には互いに異なる電流が流れる。もちろん、分岐路L12によっては、接続されている全ての負荷3の電源スイッチがオフしている場合等では、当該分岐路L12に電流が殆ど流れないか、電流が全く流れないこともあり得る。
【0026】
アーク検出装置1は、アーク故障の発生の可能性があるか否かを判定するための機能構成要素として、取得部11と、判定部12と、限流部13と、補助判定部14と、報知部15と、を備えている。アーク検出装置1は、例えばマイコン、又は、マイコンを備える装置である。マイコンは、プログラムが格納されたROM及びRAM、プログラムを実行するプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)、タイマ、A/D変換器、並びに、D/A変換器等を有する半導体集積回路等である。取得部11、判定部12、限流部13、補助判定部14及び報知部15は、いずれもプロセッサが上記プログラムを実行することにより実現される。
【0027】
取得部11は、直流電源2から電力が供給される複数の給電路L1のうちのいずれか1つの対象給電路L0に印加される電圧V1の測定結果を取得する。実施の形態1では、取得部11は、電圧計22により所定周期(サンプリング周期)でサンプリングすることで測定された電圧V1の測定結果を取得する。つまり、取得部11は、電圧計22から所定周期で電圧V1の測定結果を取得する。電圧計22は、直流電源2に設けられており、主電路L11の正側給電路と負側給電路との間の線間電圧(つまり、対象給電路L0に印加される電圧V1)を測定する。
【0028】
なお、電圧計22は、直流電源2に設けられていなくてもよく、直流電源2とは別の機器であってもよい。この場合、電圧計22は、主電路L11に限らず、複数の分岐路L12のいずれかに設けることも可能である。したがって、取得部11は、電圧計22の測定対象に応じて、主電路L11及び複数の分岐路L12のうちのいずれか1つの給電路L1に印加される電圧V1の測定結果を取得することになる。
【0029】
判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。以下、判定部12による第1判定例及び第2判定例について説明する。実施の形態1では、判定部12は、第1判定例及び第2判定例のいずれか1つの例に従って判定する。
【0030】
第1判定例では、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果を周波数分析する。周波数分析とは、例えば、電圧V1の測定結果の時間波形をフーリエ変換(ここでは、FFT(Fast Fourier Transform))することで、電圧V1の測定結果の周波数スペクトルを算出することである。そして、判定部12は、算出した周波数スペクトルを参照することにより、電圧V1の測定結果に特定の周波数帯域の成分が含まれる場合に、アーク故障の発生の可能性があると判定する。特定の周波数帯域は、例えば、アーク故障が発生した場合、又はアーク故障が発生する可能性がある場合に発生するノイズの周波数を含む帯域である。特定の周波数帯域は、一例として、数十kHz帯であって、比較的高周波の周波数帯域である。なお、上記のような場合に発生するノイズの周波数は、実験的に求めることが可能である。
【0031】
第2判定例では、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果に対して正規化する演算を実行した上で、正規化した電圧V1の測定結果を周波数分析して判定する。つまり、判定部12は、取得部11にて取得した測定結果(ここでは、電圧V1の測定結果)のうちの特定の周波数帯域の成分を抽出するように正規化した値に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。電圧V1の測定結果を正規化することにより、判定部12は、アーク故障の発生の可能性がある場合に生じ得る電圧V1の変化分に焦点を当てて周波数分析することができる。その結果、判定に要する演算の分解能の向上を図ったり、ダイナミックレンジを特定の周波数帯域の成分に限定してゲインの向上を図ったりすることができ、判定部12による判定精度の向上が期待できる。
【0032】
以下、判定部12による電圧V1の測定結果を正規化する演算例を列挙する。実施の形態1では、判定部12は、以下に示す演算例のいずれか1つの例に従って、電圧V1の測定結果を正規化する。なお、判定部12は、電圧V1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分を抽出するように、以下に示す演算例とは別の手法により電圧V1の測定結果を正規化してもよい。
【0033】
第1演算例では、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧を移動平均電圧で除すことにより、電圧V1の測定結果を正規化する。移動平均電圧は、例えば直近のn(“n”は自然数)個の瞬時電圧の重み付けのない平均値(つまり、単純移動平均値)である。第1演算例では、以下に示す第2演算例及び第3演算例と比較して演算負荷が大きくなる一方、電圧V1の測定結果の比率の変化だけを捉えることができるため、判定部12による判定精度の向上が期待できる。
【0034】
第2演算例では、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧から移動平均電圧を減じることにより、電圧V1の測定結果を正規化する。移動平均電圧は、第1演算例と同様の演算により算出する。第2演算例では、電圧V1の測定結果から直流成分を除去した値で周波数分析を行うことができるため、特定の周波数帯域の成分についてダイナミックレンジを広くとることができ、結果として判定部12による判定精度の向上が期待できる。
【0035】
第3演算例では、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧から1サンプリング前の瞬時電圧を減じることにより、電圧V1の測定結果を正規化する。第3演算例では、第2演算例と同様に、電圧V1の測定結果から直流成分を除去した値で周波数分析を行うことができるため、特定の周波数帯域の成分についてダイナミックレンジを広くとることができ、結果として判定部12による判定精度の向上が期待できる。また、第3演算例は、第1演算例及び第2演算例と比較して演算負荷が小さい、という利点がある。
【0036】
上述のように、複数の給電路L1のうちのいずれか1つの給電路L1にてアーク故障が発生した場合、又はアーク故障が発生する可能性がある場合に、電圧V1の測定結果に特定の周波数帯域の成分が生じるため、アーク故障の発生の可能性があることを判定することが可能である。しかしながら、給電路L1に印加される電圧V1が変化する要因としては、アーク故障の発生以外にも外乱ノイズの混入等があり、アーク故障が実際に発生したか否かを判定する必要がある。そこで、実施の形態1では、アーク検出装置1は、限流部13及び補助判定部14を用いることで、アーク故障が実際に発生しているか否かを判定する。つまり、実施の形態1では、判定部12による1回目の判定と、補助判定部14による2回目の判定と、を行う。
【0037】
限流部13は、判定部12にてアーク故障の発生の可能性があると判定された場合に、複数の給電路L1に流れる電流を一時的に低下させる。実施の形態1では、限流部13は、判定部12にてアーク故障の発生の可能性があると判定された場合に、複数の給電路L1に流れる電流を一時的に停止する。これにより、アーク故障によりアーク放電が発生していた場合には、アーク放電が消滅する。
【0038】
例えば、限流部13は、主電路L11に接続されたスイッチを制御することで、主電路L11に流れる電流、つまり複数の給電路L1に流れる電流を一時的に停止する。スイッチは、例えば、メカスイッチ又は半導体スイッチである。メカスイッチは、例えば、リレー又はブレーカ等のスイッチであり、半導体スイッチは、トランジスタ又はダイオード等のスイッチである。
【0039】
なお、主電路L11に接続されたスイッチとは、主電路L11に直接的に接続されたスイッチであってもよいし、主電路L11に間接的に接続されたスイッチであってもよい。例えば、当該スイッチは、AC/DCコンバータ21におけるAC/DC変換機能を実現するためのスイッチである。当該スイッチは、主電路L11に直接的に接続されていなくても、間接的には主電路L11に接続されることになるため、主電路L11に接続されたスイッチとなる。例えば、限流部13は、当該スイッチを制御して当該スイッチのスイッチング動作を一時的に停止することで、主電路L11に流れる電流を一時的に停止する。そして、限流部13は、主電路L11に流れる電流を停止してから所定時間後(例えば、約1秒後)、主電路L11に流れる電流の一時的な停止を解除する。すなわち、限流部13は、当該スイッチを制御して、AC/DC変換機能をオンする(言い換えると、主電路L11(つまり、複数の給電路L1)に再度電流を流そうとする)。なお、所定時間は特に限定されず、適宜決定されてもよい。
【0040】
なお、スイッチは、直流電源2のオン及びオフを切り替えるように構成されていてもよい。この場合、限流部13は、当該スイッチを制御して直流電源2を一時的にオフすることで、主電路L11に流れる電流を一時的に停止する。そして、限流部13は、主電路L11に流れる電流を停止してから所定時間後、当該スイッチを制御して直流電源2をオンすることで、主電路L11に流れる電流の一時的な停止を解除する。
【0041】
また、スイッチは主電路L11上に設けられていてもよく、当該スイッチは主電路L11の開閉を切り替えるように構成されていてもよい。例えば、限流部13は、当該スイッチを制御して主電路L11を開放することで、主電路L11に流れる電流を一時的に停止してもよい。そして、限流部13は、主電路L11に流れる電流を停止してから所定時間後、当該スイッチを制御して主電路L11を閉じることで、主電路L11に流れる電流の一時的な停止を解除する。
【0042】
補助判定部14は、限流部13による複数の給電路L1に流れる電流の一時的な低下が解除された後に、複数の給電路L1においてアーク故障が発生しているか否かを判定する。具体的には、補助判定部14は、主電路L11に流れる電流の一時的な停止の解除後において、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果に基づいて、アーク故障が発生しているか否かを判定する。例えば、補助判定部14は、電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧が所定値未満の場合に、アーク故障が発生したと判定する。所定値は、例えば、アーク故障が発生していない正常状態における瞬時電圧である。つまり、補助判定部14は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの直流成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0043】
いずれかの給電路L1にアーク故障が発生している場合には、当該給電路L1はアーク故障により断線又は半断線しているため、主電路L11に流れる電流の一時的な停止が解除されても当該給電路L1に電流は流れないか、又は殆ど流れない。このため、いずれかの給電路L1にアーク故障が発生している場合、瞬時電圧は正常状態における電圧とは異なり、異常な電圧(例えば所定値未満)となる。したがって、補助判定部14は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧(つまり、直流成分)に基づいて、アーク故障が発生しているか否かを判定することが可能である。
【0044】
報知部15は、例えばランプを点灯したり、ブザーを鳴らしたりすることでアーク故障の発生の可能性があることを周囲に報知する。また、報知部15は、アーク故障の発生の可能性があることを示す情報をアーク検出システム100の所有者又は管理者等が有する情報端末に送信することで、アーク故障の発生の可能性があることを報知してもよい。情報端末は、一例として、スマートフォン又はタブレット等の携帯端末の他、パーソナルコンピュータ等を含み得る。
【0045】
[動作]
以下、実施の形態1に係るアーク検出装置1の動作の一例について図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1に係るアーク検出装置1の動作例を示すフローチャートである。以下では、判定部12は、第1判定例に従って判定する、と仮定する。
【0046】
まず、取得部11は、電圧計22から所定周期で電圧V1の測定結果を取得する(S11)。処理S11は、アーク検出方法の取得ステップST11に相当する。そして、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する(S12)。ここでは、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果を周波数分析することで判定する。処理S12は、アーク検出方法の判定ステップST12に相当する。
【0047】
判定部12にてアーク故障の発生の可能性があると判定された場合(S13:Yes)、限流部13は、複数の給電路L1に流れる電流を一時的に停止させる(S14)。一方、判定部12にてアーク故障の発生の可能性がないと判定された場合(S13:No)、アーク検出装置1の処理が終了する。そして、限流部13は、複数の給電路L1に流れる電流を停止してから所定時間後に、複数の給電路L1に流れる電流の一時的な停止を解除する(S15)。その後、補助判定部14は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障が発生しているか否かを判定する(S16)。
【0048】
補助判定部14にてアーク故障が発生していると判定された場合(S17:Yes)、報知部15は、アーク故障の発生を報知する(S18)。一方、補助判定部14にてアーク故障が発生していないと判定された場合(S17:No)、アーク検出装置1の処理が終了する。以下、上記の一連の処理S11~S18が繰り返される。
【0049】
[利点]
以下、実施の形態1に係るアーク検出装置1の利点について説明する。実施の形態1に係るアーク検出装置1は、複数の給電路L1のうちのいずれか1つの対象給電路L0に印加される電圧V1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アーク故障の発生の可能性があるか否かを判定している。このため、実施の形態1に係るアーク検出装置1では、対象給電路L0でアーク故障の発生の可能性があるか否かのみならず、他の給電路L1でアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定することが可能である。したがって、実施の形態1に係るアーク検出装置1は、直流電源2から分岐した複数の給電路L1でのアーク故障の発生を検出することができる、という利点がある。
【0050】
ここで、比較例のアーク検出装置との比較を交えて、実施の形態1に係るアーク検出装置1の利点について説明する。比較例のアーク検出装置は、対象給電路L0に流れる電流の測定結果に基づいて、アーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する点で、実施の形態1に係るアーク検出装置1と相違する。
【0051】
比較例のアーク検出装置では、例えば対象給電路L0に接続されている全ての負荷3の電源がオフしている等して、対象給電路L0に電流が流れていない場合、対象給電路L0でのアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定することができない、という問題がある。また、比較例のアーク検出装置では、対象給電路L0以外の給電路L1でのアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定することができず、判定しようと思えば、給電路L1ごとに比較例のアーク検出装置を設けなければならない、という問題がある。
【0052】
これに対して、実施の形態1に係るアーク検出装置1では、対象給電路L0に印加される電圧V1の測定結果に基づいて判定するため、対象給電路L0に電流が流れていない場合でも、対象給電路L0でのアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定することが可能である。また、実施の形態1に係るアーク検出装置1では、対象給電路L0以外の給電路L1でのアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定することが可能である。すなわち、対象給電路L0以外のいずれかの給電路L1にてアーク故障が発生した場合、又はアーク故障の発生の可能性がある場合、当該給電路L1に印加される電圧にノイズが生じるだけでなく、他の給電路L1に印加される電圧にも同様にノイズが生じ得るからである。このため、実施の形態1に係るアーク検出装置1では、複数の給電路L1のうちのいずれか1つの給電路L1(対象給電路L0)のみにアーク検出装置1を設ければよく、給電路L1ごとにアーク検出装置1を設ける必要がない。さらに、実施の形態1に係るアーク検出装置1では、複数の給電路L1のうちのいずれか1つの給電路L1(対象給電路L0)にアーク検出装置1を設ければよく、かつ、その場所も限定されないことから、設置の自由度が高い、という利点もある。
【0053】
以下、実施の形態1に係るアーク検出装置1の設置例について、図1に示すDC配電網300の場合と、図3に示すDC配電網301の場合と、でそれぞれ説明する。図3は、2つの直流電源2を有するDC配電網301の一例を示す概要図である。図3に示すDC配電網301では、分岐点P1に対して2つの直流電源2が並列に接続されている。つまり、図3に示すDC配電網301は、2つの主電路L11と、3つの分岐路L12と、で計5つの給電路L1を有している。なお、図3では、アーク検出装置1及び電力系統200の図示を省略している。
【0054】
図1に示すDC配電網300であれば、1つの主電路L11及び3つの分岐路L12のいずれにもアーク検出装置1を設置することが可能である。例えば、3つの分岐路L12のうちのいずれか1つの分岐路L12にアーク検出装置1を設置した、と仮定する。この場合、主電路L11又は他の分岐路L12のいずれかにてアーク故障が発生したとしても、アーク検出装置1はアーク故障が発生したことを判定することが可能である。
【0055】
図5に示すDC配電網301であれば、2つの主電路L11及び3つの分岐路L12のいずれにもアーク検出装置1を設置することが可能である。例えば、2つの主電路L11のうちの一方の主電路L11にアーク検出装置1を設置した、と仮定する。この場合、他方の主電路L11又は3つの分岐路L12のいずれかにてアーク故障が発生したとしても、アーク検出装置1はアーク故障が発生したことを判定することが可能である。
【0056】
(実施の形態2)
[構成]
以下、実施の形態2に係るアーク検出装置1について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態2に係るアーク検出装置1が適用されたアーク検出システム100の構成を示す概要図である。実施の形態2に係るアーク検出装置1は、対象給電路L0に供給される電力の測定結果に基づいてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する点で、実施の形態1に係るアーク検出装置1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点について主として説明し、実施の形態1との共通点については説明を適宜省略する。
【0057】
実施の形態2では、取得部11は、対象給電路L0に流れる電流I1の測定結果を更に取得する。実施の形態2では、取得部11は、電流計23により所定周期(サンプリング周期)でサンプリングすることで測定された電流I1の測定結果を取得する。つまり、取得部11は、電流計23から所定周期で電流I1の測定結果を取得する。この所定周期は、電圧計22から電圧V1の測定結果を取得する際の所定周期と同じである。電流計23は、直流電源2に設けられており、主電路L11の正側給電路に流れる電流(つまり、対象給電路L0に流れる電流I1)を測定する。
【0058】
実施の形態2では、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧と、取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの瞬時電流と、の積の特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。具体的には、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧と、取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの瞬時電流と、の積を演算することにより、対象給電路L0に供給される瞬時電力を求める。そして、判定部12は、演算により求めた瞬時電力を周波数分析し、瞬時電力に特定の周波数帯域の成分が含まれる場合にアーク故障の発生の可能性があると判定する。
【0059】
なお、判定部12は、取得部11にて取得した瞬時電圧の測定結果及び瞬時電流の測定結果に対して正規化する演算を実行した上で、正規化した瞬時電圧及び瞬時電圧の積を演算してもよい。つまり、判定部12は、取得部11にて取得した測定結果(ここでは、電圧V1の測定結果及び電流I1の測定結果)のうちの特定の周波数帯域の成分を抽出するように正規化した値に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定してもよい。電流I1の測定結果を正規化する演算例は、実施の形態1にて示す第1演算例~第3演算例の各々において、「電圧」を「電流」に置き換えればよい。
【0060】
[動作]
以下、実施の形態2に係るアーク検出装置1の動作の一例について図5を用いて説明する。図5は、実施の形態2に係るアーク検出装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0061】
まず、取得部11は、電圧計22から所定周期で電圧V1の測定結果を取得する(S21)。また、取得部11は、電流計23から所定周期で電流I1の測定結果を取得する(S22)。処理S21,S22は、アーク検出方法の取得ステップST21に相当する。
【0062】
次に、判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧と、取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの瞬時電流と、の積を演算することにより、対象給電路L0に供給される瞬時電力を求める(S23)。そして、判定部12は、演算により求めた瞬時電力を周波数分析することで、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する(S24)。処理S23,S24は、アーク検出方法の判定ステップST22に相当する。
【0063】
判定部12にてアーク故障の発生の可能性があると判定された場合(S25:Yes)、限流部13は、複数の給電路L1に流れる電流を一時的に停止させる(S26)。一方、判定部12にてアーク故障の発生の可能性がないと判定された場合(S25:No)、アーク検出装置1の処理が終了する。そして、限流部13は、複数の給電路L1に流れる電流を停止してから所定時間後に、複数の給電路L1に流れる電流の一時的な停止を解除する(S27)。その後、補助判定部14は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障が発生しているか否かを判定する(S28)。
【0064】
補助判定部14にてアーク故障が発生していると判定された場合(S29:Yes)、報知部15は、アーク故障の発生を報知する(S30)。一方、補助判定部14にてアーク故障が発生していないと判定された場合(S29:No)、アーク検出装置1の処理が終了する。以下、上記の一連の処理S21~S30が繰り返される。
【0065】
[利点]
以下、実施の形態2に係るアーク検出装置1の利点について説明する。実施の形態2に係るアーク検出装置1は、実施の形態1と同様に、対象給電路L0でアーク故障の発生の可能性があるか否かのみならず、他の給電路L1でアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定することが可能である。したがって、実施の形態2に係るアーク検出装置1は、直流電源2から分岐した複数の給電路L1でのアーク故障の発生を検出することができる、という利点がある。また、実施の形態2に係るアーク検出装置1は、実施の形態1と同様に、複数の給電路L1のうちのいずれか1つの給電路L1(対象給電路L0)にアーク検出装置1を設ければよく、かつ、その場所も限定されないことから、設置の自由度が高い、という利点もある。
【0066】
ところで、対象給電路L0に印加される電圧V1は、対象給電路L0の有する抵抗に電流I1が流れることによる電圧降下によって減衰しやすい。このため、判定部12による判定精度を向上するためには、電圧V1の測定結果のみならず、対象給電路L0に流れる電流I1の測定結果も参照して判定することが好ましい。すなわち、対象給電路L0にてアーク故障が発生した場合、又はアーク故障の発生の可能性がある場合、対象給電路L0に流れる電流I1にノイズが生じるからである。また、対象給電路L0以外のいずれかの給電路L1にてアーク故障が発生した場合、又はアーク故障の発生の可能性がある場合でも、微弱ではあるが対象給電路L0に流れる電流I1にノイズが生じ得るからである。
【0067】
ここで、判定部12が、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果及び電流I1の測定結果の各々について周波数分析を行うことが考えられるが、この場合、演算負荷が大きくなりがちである。そこで、実施の形態2では、判定部12は、まず取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧と、電流I1の測定結果のうちの瞬時電流と、の積を演算することにより、対象給電路L0に供給される瞬時電力を求めている。そして、判定部12は、演算により求めた瞬時電力について周波数分析を行っている。したがって、実施の形態2に係るアーク検出装置1は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果及び電流I1の測定結果の各々について周波数分析を行う場合と比較して、演算負荷を低減することができる、という利点もある。
【0068】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態1,2について説明したが、本発明は、上記実施の形態1,2に限定されるものではない。以下、実施の形態1,2の変形例について列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【0069】
実施の形態1,2では、電圧計22はアーク検出装置1とは別の機器であるが、アーク検出装置1に内蔵されていてもよい。同様に、実施の形態2では、電流計23はアーク検出装置1とは別の機器であるが、アーク検出装置1に内蔵されていてもよい。
【0070】
実施の形態1,2では、アーク検出装置1は直流電源2に設けられているが、これに限定されない。例えば、アーク検出装置1は、直流電源2とは別の機器として給電路L1に接続されていてもよい。この場合、アーク検出装置1は、直流電源2との間で有線通信又は無線通信により通信可能に構成されていれば、直流電源2に対して判定部12の判定結果に応じた指示を与えることが可能である。
【0071】
また、アーク検出装置1は、複数の分岐路L12のうちのいずれか1つの分岐路L12に接続されていてもよい。この場合、負荷3側に取り付けることで、負荷3に流れる電流を調整しやすくなる、という利点がある。例えば、アーク検出装置1を分岐路L12に接続することで、補助判定部14による判定が行いやすくなる。
【0072】
実施の形態1,2において、限流部13は、各給電路L1に流れる電流を一時的に停止する代わりに、各給電路L1に流れる電流を一時的に限流してもよい。例えば、限流部13は、アーク放電が維持できない程度まで各給電路L1に流れる電流を一時的に限流してもよい。
【0073】
実施の形態2では、対象給電路L0に流れる電流I1が零であるか、又は殆ど零である場合、瞬時電力を算出することが難しい。そこで、このような場合、判定部12は、実施の形態1と同様に、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定してもよい。
【0074】
実施の形態1,2において、アーク検出装置1は、限流部13及び補助判定部14は備えていなくてもよい。つまり、アーク検出装置1は、判定部12による1回の判定のみで、アーク故障の発生の可能性があるか否かを判定してもよい。
【0075】
実施の形態1,2において、アーク検出装置1は、報知部15を備えていなくてもよい。
【0076】
例えば、本発明は、アーク検出装置1等として実現できるだけでなく、アーク検出装置1を構成する各構成要素が行うステップ(処理)を含むアーク検出方法として実現できる。
【0077】
具体的には、アーク検出方法は、取得ステップST11と、判定ステップST12と、を含む。取得ステップST11では、直流電源2から電力が供給される複数の給電路L1のうちのいずれか1つの対象給電路L0に印加される電圧V1の測定結果を取得する。判定ステップST12では、取得ステップST11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0078】
また、アーク検出方法は、取得ステップST21と、判定ステップST22と、を含む。取得ステップST21では、直流電源2から電力が供給される複数の給電路L1のうちのいずれか1つの対象給電路L0に印加される電圧V1の測定結果と、対象給電路L0に流れる電流I1の測定結果と、を取得する。判定ステップST22では、取得ステップST21にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧と、取得ステップST21にて取得した電流I1の測定結果のうちの瞬時電流と、の積の特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0079】
例えば、それらのステップは、1以上のプロセッサを有するコンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本発明は、それらの方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本発明は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。具体的には、プログラムは、1以上のプロセッサに、上記のアーク検出方法を実行させる。
【0080】
上記各実施の形態に係るアーク検出装置1は、マイコンによってソフトウェア的に実現されたが、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータにおいてソフトウェア的に実現されてもよい。さらに、アーク検出装置1は、A/D変換器、論理回路、ゲートアレイ、D/A変換器等で構成される専用の電子回路によってハードウェア的に実現されてもよい。
【0081】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【0082】
(まとめ)
以上述べたように、アーク検出装置1は、取得部11と、判定部12と、を備える。取得部11は、直流電源2から電力が供給される複数の給電路L1のうちのいずれか1つの対象給電路L0に印加される電圧V1の測定結果を取得する。判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0083】
このようなアーク検出装置1によれば、対象給電路L0でアーク故障の発生の可能性があるか否かのみならず、他の給電路L1でアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定することが可能である。したがって、このようなアーク検出装置1によれば、直流電源2から分岐した複数の給電路L1でのアーク故障の発生を検出することができる、という利点がある。
【0084】
また、例えば、アーク検出装置1は、取得部11と、判定部12と、を備える。取得部11は、直流電源2から電力が供給される複数の給電路L1のうちのいずれか1つの対象給電路L0に印加される電圧V1の測定結果と、対象給電路L0に流れる電流I1の測定結果と、を取得する。判定部12は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧と、取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの瞬時電流と、の積の特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0085】
このようなアーク検出装置1によれば、対象給電路L0でアーク故障の発生の可能性があるか否かのみならず、他の給電路L1でアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定することが可能である。したがって、このようなアーク検出装置1によれば、直流電源2から分岐した複数の給電路L1でのアーク故障の発生を検出することができる、という利点がある。
【0086】
また、例えば、アーク検出装置1では、判定部12は、取得部11にて取得した測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分を抽出するように正規化した値に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0087】
このようなアーク検出装置1によれば、アーク故障の発生の可能性がある場合に生じ得る測定結果の変化分に焦点を当てて判定できるので、判定部12による判定精度の向上が期待できる。
【0088】
また、例えば、アーク検出装置1は、限流部13と、補助判定部14と、を更に備える。限流部13は、判定部12にてアーク故障の発生の可能性があると判定された場合に、複数の給電路L1に流れる電流を一時的に低下させる。補助判定部14は、限流部13による複数の給電路L1に流れる電流の一時的な低下が解除された後に、複数の給電路L1においてアーク故障が発生しているか否かを判定する。
【0089】
このようなアーク検出装置1によれば、複数の給電路L1においてアーク故障が発生しているか否かを誤って判定してしまうのを防ぎやすい。
【0090】
また、例えば、アーク検出装置1では、補助判定部14は、取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの直流成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障が発生しているか否かを判定する。
【0091】
このようなアーク検出装置1によれば、電圧V1の測定結果について周波数分析を行う場合と比較して、演算負荷が小さくて済む。
【0092】
また、例えば、アーク検出装置1では、複数の給電路L1は、分岐点P1に対して並列に接続されてそれぞれ1以上の負荷3が接続可能な複数の分岐路L12を含んでいる。アーク検出装置1は、複数の分岐路L12のうちのいずれか1つの分岐路L12に接続される。
【0093】
このようなアーク検出装置1によれば、負荷3側に取り付けることで、負荷3に流れる電流を調整しやすくなる、という利点がある。例えば、このようなアーク検出装置1によれば、補助判定部14による判定が行いやすくなる。
【0094】
また、例えば、アーク検出システム100は、上記のアーク検出装置1と、複数の給電路L1に電力を供給する直流電源2と、を備える。
【0095】
このようなアーク検出システム100によれば、直流電源2から分岐した複数の給電路L1でのアーク故障の発生を検出することができる、という利点がある。
【0096】
また、例えば、アーク検出方法は、取得ステップST11と、判定ステップST12と、を含む。取得ステップST11では、直流電源2から電力が供給される複数の給電路L1のうちのいずれか1つの対象給電路L0に印加される電圧V1の測定結果を取得する。判定ステップST12では、取得ステップST11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0097】
このようなアーク検出方法によれば、直流電源2から分岐した複数の給電路L1でのアーク故障の発生を検出することができる、という利点がある。
【0098】
また、例えば、アーク検出方法は、取得ステップST21と、判定ステップST22と、を含む。取得ステップST21では、直流電源2から電力が供給される複数の給電路L1のうちのいずれか1つの対象給電路L0に印加される電圧V1の測定結果と、対象給電路L0に流れる電流I1の測定結果と、を取得する。判定ステップST22では、取得ステップST21にて取得した電圧V1の測定結果のうちの瞬時電圧と、取得ステップST21にて取得した電流I1の測定結果のうちの瞬時電流と、の積の特定の周波数帯域の成分に基づいて、複数の給電路L1においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定する。
【0099】
このようなアーク検出方法によれば、直流電源2から分岐した複数の給電路L1でのアーク故障の発生を検出することができる、という利点がある。
【0100】
また、例えば、プログラムは、1以上のプロセッサに、上記のアーク検出方法を実行させる。
【0101】
このようなプログラムによれば、直流電源2から分岐した複数の給電路L1でのアーク故障の発生を検出することができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0102】
100 アーク検出システム
1 アーク検出装置
11 取得部
12 判定部
13 限流部
14 補助判定部
2 直流電源
3 負荷
I1 電流
L1 給電路
L0 対象給電路
L12 分岐路
P1 分岐点
ST11,ST21 取得ステップ
ST12,ST22 判定ステップ
V1 電圧
図1
図2
図3
図4
図5