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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】医療用ステープラ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/068 20060101AFI20240112BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61B17/068
A61B17/94
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022570885
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048456
(87)【国際公開番号】W WO2022137433
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】高山 裕行
(72)【発明者】
【氏名】野中 哲
(72)【発明者】
【氏名】小田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 清一郎
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-506943(JP,A)
【文献】特開平06-047050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/068-17/072
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部に装着され、前記内視鏡の対物レンズが露出する開口を有する着脱部と、
回転軸により開閉可能に連結された第一把持部および第二把持部を有し、前記着脱部に取り付けられ、閉状態のとき前記第一把持部に設けられたステープル放出部と前記第二把持部に設けられたステープル受容部とが対向する把持部と、
を備え、
前記第二把持部は、前記ステープル受容部と前記回転軸との間に開閉方向に貫通する視野空間を有し、
前記把持部が閉状態のとき、前記ステープル放出部と前記ステープル受容部とは対向し、
前記把持部が開状態のとき、前記対物レンズの光軸は前記視野空間を通過する、
医療用ステープラ。
【請求項2】
前記把持部が前記閉状態のとき、前記対物レンズの光軸は、前記第一把持部および前記第二把持部の外側を通過する、
請求項1に記載の医療用ステープラ。
【請求項3】
前記把持部が前記開状態のとき、前記ステープル放出部と前記ステープル受容部とは、前記対物レンズの光軸を挟んで両側に配置される、
請求項1に記載の医療用ステープラ。
【請求項4】
前記着脱部の前記開口から前記内視鏡の鉗子口が露出し、
前記把持部が前記開状態のとき、前記鉗子口の中心軸は、前記視野空間を通過する、
請求項1に記載の医療用ステープラ。
【請求項5】
前記視野空間は、前記第二把持部に形成された貫通孔である、
請求項1に記載の医療用ステープラ。
【請求項6】
前記第一把持部は、前記着脱部に回転不能に固定されており、
前記第二把持部は、前記回転軸により前記第一把持部に回転可能に取り付けられている、
請求項1に記載の医療用ステープラ。
【請求項7】
前記把持部が前記開状態のとき、前記ステープル受容部は前記回転軸よりも基端側に配置される、
請求項6に記載の医療用ステープラ。
【請求項8】
前記第二把持部は、U字形状に形成されたU字部材と有しており、
前記視野空間は、前記U字部材の辺に囲まれた領域である、
請求項6に記載の医療用ステープラ。
【請求項9】
前記第二把持部は、L字形状に形成されたL字部材を有しており、
前記視野空間は、前記L字部材の辺に挟まれた領域である、
請求項6に記載の医療用ステープラ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の医療用ステープラと、
前記内視鏡と、
を備えた、
医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ステープラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消化管等を縫合する手術において、ステープラなどの医療用ステープラが使用されている。適切な医療用ステープラを使用することで、消化管等を縫合する手術を容易にし、手術時間を大幅に短縮することができる。
【0003】
特許文献1に記載の全厚切除システムは、内視鏡と、内視鏡の周囲に配置されたステープリング機構とを有する。全厚切除システムは、内視鏡により処置対象を観察しつつ、ステープリング機構により処置対象を縫合処置できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2004-503325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の全厚切除システムは、挿入径が内視鏡に比べて大きく、消化管等の体内に挿入させにくい場合があった。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、消化管等の体内に挿入させやすい医療用ステープラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る医療用ステープラは、内視鏡の先端部に装着され、前記内視鏡の対物レンズが露出する開口を有する着脱部と、回転軸により開閉可能に連結された第一把持部および第二把持部を有し、前記着脱部に取り付けられ、閉状態のとき前記第一把持部に設けられたステープル放出部と前記第二把持部に設けられたステープル受容部とが対向する把持部と、を備え、前記第二把持部は、前記ステープル受容部と前記回転軸との間に開閉方向に貫通する視野空間を有し、前記把持部が閉状態のとき、前記ステープル放出部と前記ステープル受容部とは対向し、前記把持部が開状態のとき、前記対物レンズの光軸は前記視野空間を通過する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医療用ステープラは、消化管等の体内に挿入させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る医療用ステープラを備えた医療システムを示す図である。
図2】同医療用ステープラの斜視図である。
図3】同医療用ステープラのキャップの正面図である。
図4】把持部が閉状態である同医療用ステープラの斜視図である。
図5】把持部が閉状態である同医療用ステープラの正面図である。
図6】把持部が開状態である同医療用ステープラの斜視図である。
図7】把持部が開状態である同医療用ステープラの正面図である。
図8】把持部が閉状態である同医療用ステープラの側面図である。
図9】把持部が開状態である同医療用ステープラの側面図である。
図10】ステープル放出部を含む把持部の断面図である。
図11】放出操作ワイヤが牽引された把持部の断面図である。
図12】同医療用ステープラの動作を説明する図である。
図13】同医療用ステープラの動作を説明する図である。
図14】同医療用ステープラの動作を説明する図である。
図15】同医療用ステープラの動作を説明する図である。
図16】本発明の第二実施形態に係る医療用ステープラを備えた医療システムを示す図である。
図17】第二把持部材の変形例の斜視図である。
図18】第二把持部材の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について、図1から図15を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る医療用ステープラ100を含む医療システム300の全体構成を示す図である。
【0011】
[医療システム300]
医療システム300は、消化管等を縫合する手術等に使用される。医療システム300は、医療用ステープラ100と、内視鏡200と、開閉操作部250と、放出操作部270と、ワイヤシース280と、を備える。開閉操作部250は、開閉操作ワイヤ5により医療用ステープラ100を作動させる操作部である。放出操作部270は、放出操作ワイヤ6により医療用ステープラ100を作動させる操作部である。
【0012】
[内視鏡200]
内視鏡200は、公知の軟性内視鏡であり、先端から体内に挿入される長尺の挿入部210と、挿入部210の基端部に設けられた操作部220と、ユニバーサルコード240と、を備える。
【0013】
挿入部210には、内視鏡用処置具が挿通する処置具チャネル230が形成されている。挿入部210の先端212には、処置具チャネル230の先端開口である鉗子口214が設けられている。処置具チャネル230は、挿入部210の先端212から操作部220まで延びている。
【0014】
挿入部210の先端部211は、CCD等を有する撮像ユニット(不図示)を備える。撮像ユニットの対物レンズ215は、挿入部210の先端212において露出している。
【0015】
操作部220の基端側には、挿入部210を操作するノブ223や撮像ユニット等を操作するスイッチ224が設けられている。術者は、ノブ223を操作することで挿入部210を所望の方向に湾曲させることができる。
【0016】
操作部220の先端側には、処置具チャネル230に連通する鉗子挿入口222が設けられている。術者は、鉗子挿入口222から内視鏡用処置具を処置具チャネル230に挿入することができる。
【0017】
ユニバーサルコード240は、操作部220と外部周辺機器とを接続する。ユニバーサルコード240は、例えば、撮像ユニットが撮像した画像を外部機器に出力する。撮像ユニットが撮像した画像は、画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に表示される。
【0018】
[開閉操作部250]
開閉操作部250は、開閉操作ワイヤ5を操作することにより医療用ステープラ100を開閉させる操作部である。開閉操作部250は、図1に示すように、開閉操作部本体252と、開閉操作スライダ253と、を有する。開閉操作ワイヤ5の基端は、開閉操作スライダ253に連結されている。術者は、開閉操作部本体252に対して開閉操作スライダ253を長手軸方向において進退させることにより、開閉操作ワイヤ5を進退させることができる。
【0019】
[放出操作部270]
放出操作部270は、放出操作ワイヤ6を操作することにより医療用ステープラ100からステープルSを放出させる操作部である。放出操作部270は、図1に示すように、放出操作部本体272と、放出操作スライダ273と、を有する。放出操作ワイヤ6の基端は、放出操作スライダ273に連結されている。術者は、放出操作部本体272に対して放出操作スライダ273を長手軸方向において進退させることにより、放出操作ワイヤ6を進退させることができる。
【0020】
[ワイヤシース280]
ワイヤシース280は、開閉操作ワイヤ5および放出操作ワイヤ6が挿通するシースである。図1に示すように、ワイヤシース280の先端側は、バンド281により、内視鏡200の挿入部210に連結される。
【0021】
[医療用ステープラ100]
図2は、医療用ステープラ100の斜視図である。
医療用ステープラ100は、キャップ1と、把持部2と、ステープル放出部3と、ステープル受容部4と、開閉操作ワイヤ5と、放出操作ワイヤ(動力伝達部材)6と、を備える。医療用ステープラ100は、挿入部210の先端部211に着脱可能である。
【0022】
図3は、キャップ1の正面図である。図3において把持部2は透過表示されている。
キャップ(着脱部)1は、内視鏡200の先端部211に装着可能な部材である。キャップ1は、略円柱形状に形成されており、軸方向Aに貫通する第一貫通孔11と、軸方向Aに貫通する第二貫通孔12と、を有する。
【0023】
第一貫通孔11は、挿入部210の先端部211が挿入される孔である。第一貫通孔11の形状は、挿入部210の先端部211の外形に沿うように形成されている。そのため、第一貫通孔11に内視鏡200の先端部211を挿入することで、キャップ1を内視鏡200の先端部211に装着させることができる。
【0024】
第一貫通孔11の軸方向Aの中心軸O1は、図3に示すように、キャップ1の軸方向Aの中心軸Oに対して偏心している。中心軸Oに対して中心軸O1が偏心する向きを「上方B1」とする。
【0025】
第二貫通孔12は、開閉操作ワイヤ5および放出操作ワイヤ6が挿通するワイヤシース280が挿入される孔である。第二貫通孔12の内径は、ワイヤシース280の外径と略一致する。ワイヤシース280の先端部は、第二貫通孔12に挿通されて固定されている。ワイヤシース280を挿通する開閉操作ワイヤ5および放出操作ワイヤ6は、第二貫通孔12を通過して先端側まで延びている。
【0026】
第二貫通孔12の軸方向Aの中心軸O2は、図3に示すように、キャップ1の軸方向Aの中心軸Oに対して偏心している。中心軸O2が中心軸Oに対して偏心している向きは、中心軸O1が中心軸Oに対して偏心している向き(上方B1)と反対である。中心軸Oに対して中心軸O2が偏心している向きを「下方B2」とする。本実施形態において、上方B1および下方B2は上下方向Bに沿う向きである。
【0027】
図4図5は、把持部2が閉状態である医療用ステープラ100の斜視図と正面図である。
キャップ1が内視鏡200の先端部211に装着されると、図4および図5に示すように、キャップ1の第一貫通孔11における先端側の開口13から対物レンズ215および鉗子口214が露出する。術者は、内視鏡200の先端部211に医療用ステープラ100を装着した状態であっても、対物レンズ215により処置対象を観察できる。
【0028】
図6図7は、把持部2が開状態である医療用ステープラ100の斜視図と正面図である。さらに、図8は、把持部2が閉状態である医療用ステープラ100の側面図である。図9は、把持部2が開状態である医療用ステープラ100の側面図である。
把持部2は、第一把持部材21と、第二把持部材22と、開閉回転軸23と、可動ピン27と、を有する。第一把持部材21と第二把持部材22とは、開閉回転軸23により開閉可能に連結している。開閉回転軸23は、キャップ1より先端側に設けられている。開閉回転軸23の軸方向Cは、キャップ1の軸方向Aおよび上下方向Bと垂直である。把持部2は、図7に示すように、上下方向Bの中心軸О3に対して対称に形成されている。
【0029】
第一把持部材21は、キャップ1の先端側に回転不能に固定されている。第一把持部材21は、キャップ1の中心軸Oより下方B2においてキャップ1に固定されている。第一把持部材21は、図3に示すように、正面視において第二貫通孔12と重なる位置に配置される。一方、第一把持部材21は、図7に示すように、正面視において内視鏡200の対物レンズ215および鉗子口214と重ならない位置に配置される。
【0030】
第一把持部材21は、図6に示すように、第一先端部21aと第一本体部21bとを有し、平面視において略T字形状に形成されている。第一先端部21aは、第一本体部21bよりも先端側に配置されている。
【0031】
第一先端部21aは、略直方体状に形成されている。第一先端部21aは、平面視において開閉回転軸23の軸方向Cに延びる矩形状に形成されている。第一先端部21aには、ステープル放出部3が設けられている。第一先端部21aの上方B1の面(上面21e)には、ステープル放出部3の開口31aが設けられている。
【0032】
第一本体部21bは、軸方向Aに延びる細長部材である。第一本体部21bの先端は、第一先端部21aに固定されている。第一本体部21bの基端は、キャップ1に固定さている。第一本体部21bは、当接ピン21cと、第一係合溝21dと、を有する。
【0033】
当接ピン21cは、第一本体部21bの基端に設けられており、閉状態の第二把持部材22に当接して、第二把持部材22の可動範囲を規制する。
【0034】
図8に示すように第一係合溝21dは、第一本体部21bにおいて、開閉回転軸23の軸方向Cに貫通する溝である。第一係合溝21dは、軸方向Aに延びている。
【0035】
第二把持部材22は、開閉回転軸23により第一把持部材21に回転可能に取り付けられている。第二把持部材22は、略U字形状に形成されたU字部材22aと、U字部材22aを回転可能に支持する第二本体部22bと、を有している。
【0036】
U字部材22aは、略U字形状に形成されており、両端部が第二本体部22bに連結され、中央部が先端側に配置されている。中央部は、第二先端部22cを有している。第二先端部22cは、略直方体状に形成されている。第二先端部22cには、ステープル受容部4が設けられている。
【0037】
第二本体部22bは、開閉回転軸23により第一把持部材21の第一本体部21bに回転可能に取り付けられている。第二本体部22bには、第一本体部21bが挿入されるガイド溝22dが形成されている。第二本体部22bのガイド溝22dの両側部には、第二係合溝22eが形成されている。
【0038】
第二係合溝22eは、第二本体部22bに形成された溝である。第二係合溝22eは、軸方向Cに貫通する溝である。第二係合溝22eは、側面視において、開閉回転軸23を挟んでステープル受容部4と反対側に形成されている。第二係合溝22eは、第二把持部材22の中心軸О3に対して対称である。
【0039】
第二把持部材22は、図6に示すように、先端側のステープル受容部4と基端側の開閉回転軸23との間に開閉方向Rに貫通する視野空間25を有する。本実施形態において、視野空間25は、略U字形状に形成されたU字部材22aの辺に囲まれた空間である。
【0040】
可動ピン27は、第一係合溝21dおよび第二係合溝22eに係合しており、第一係合溝21dに沿って、軸方向Aに進退する。可動ピン27には、開閉操作ワイヤ5の先端が取り付けられている。開閉操作ワイヤ5が先端側に前進することで、図9に示すように、可動ピン27が第二把持部材22を開閉回転軸23を中心に回転させ、把持部2は開状態となる。開閉操作ワイヤ5が基端側に後進することで、図8に示すように、可動ピン27が第二把持部材22を開閉回転軸23を中心に回転させ、把持部2は閉状態となる。
【0041】
把持部2が閉状態であるとき、図5に示すよう、ステープル放出部3とステープル受容部4とは対向する。把持部2が閉状態であるとき、ステープル放出部3とステープル受容部4との間にはわずかな隙間が形成される。把持部2が閉状態であるとき、図4図5および図8に示すように、対物レンズ215の光軸A1は、第一把持部材21および第二把持部材22の外側を通過する。また、把持部2が閉状態であるとき、鉗子口214の中心軸A2は、正面視において第一把持部材21には重ならないが、第二把持部材22に重なる位置にある。
【0042】
把持部2が開状態であるとき、図9に示すように、ステープル受容部4は開閉回転軸23よりも基端側に配置される。把持部2が開状態であるとき、図6図7および図9に示すように、ステープル放出部3とステープル受容部4とは、対物レンズ215の光軸A1を挟んで両側に配置される。把持部2が開状態であるとき、対物レンズ215の光軸A1は視野空間25を通過する。また、把持部2が開状態であるとき、鉗子口214の中心軸A2は、視野空間25を通過する。
【0043】
図10は、ステープル放出部3を含む把持部2の断面図である。
ステープル放出部3は、第一把持部材21の第一先端部21aに設けられ、ステープルSを格納して放出できる。ステープル放出部3は、ステープル格納部31と、直進部材32と、回転部材33と、を有する。
【0044】
ステープル格納部31は、第一把持部材21の第一先端部21aに設けられたステープルSを格納する空間である。第一把持部材21には、図6に示すように二個のステープル格納部31が、軸方向Cに並んで形成されており、U字型のステープルSを二個格納できる。
【0045】
ステープル格納部31は、第一先端部21aの上面21eに設けられた開口31aにおいて、上下方向Bに開口している。ステープルSは、開口31aからステープル格納部31に格納される。ステープルSは、ステープルSの針先S1が上方B1を向いた状態で、ステープル格納部31に格納される。
【0046】
ステープル格納部31は、平面視において、軸方向Aに短辺、軸方向Cに長辺が延びる長方形状に形成されている。ステープル格納部31に収容されたステープルSは、両端の針先S1が軸方向Cに配列されている。
【0047】
直進部材32は、ステープル格納部31に収容された部材であり、ステープル格納部31の内部空間を上下方向Bに移動可能である。直進部材32は、上方B1にステープルSを支持する凹部32aを有する。ステープル格納部31に格納されたステープルSは、凹部32aに嵌めこまれる。
【0048】
回転部材33としての第一プーリ34および第二プーリ36は、第一把持部材21の内部に回転可能に取り付けられており、回転することで直進部材32を上下方向Bに移動させる。第一プーリ34には放出操作ワイヤ6の先端が連結されている。放出操作ワイヤ6を牽引することにより、第一プーリ34を回転させることができる。
【0049】
第二プーリ36は、第一把持部材21の内部に回転可能に取り付けられており、第一プーリ34は、第二プーリ36よりも先端側に配置されている。第一プーリ34の回転軸35および第二プーリ36の回転軸37は、軸方向Cに延びており、把持部2の開閉回転軸23と略平行である。第一プーリ34は、先端側に直進部材32を下方B2から支持する凸部(当接部)38を有する。
【0050】
放出操作ワイヤ6の先端は、第一プーリ34において回転軸35よりも上方B1に連結されている。放出操作ワイヤ6は、第一プーリ34から第二プーリ36を経由して第二貫通孔12を通過して、放出操作部270まで延びている。第二プーリ36を設けた理由は、放出操作ワイヤ6を無理なく第二貫通孔12に導くための位置調整と、放出操作ワイヤ6を第二貫通孔12に導く際の摩擦抵抗を低減するためである。したがって、回転部材33として第一プーリ34だけを用い、第二プーリ36の代わりにR形状を有する摺動性の良い部品(摩擦低減部材)を設けても同様の効果が得られる。
【0051】
図11は、放出操作ワイヤ6が牽引された把持部2の断面図である。
放出操作ワイヤ6が牽引されることで、第一プーリ34の上方B1は基端側に回転し、第一プーリ34の下方B2は先端側に回転する。その結果、第一プーリ34の凸部38は、直進部材32を上方B1に押し上げ、格納されたステープルSは開口31aから上方B1に放出される。
【0052】
ステープル受容部4は、第二把持部材22の第二先端部22cの下面22fに設けられている。ステープル受容部4には、ステープル放出部3から放出されるステープルSを受容可能な複数のポケット41が設けられている。本実施形態においては、U字型のステープル2個がステープル放出部3から放出されるため、ステープル受容部4には4個のポケットが設けられている。把持部2が閉状態であるとき、図10に示すよう、ステープルSが放出される開口31aとステープル放出部3のポケット41とは対向する。
【0053】
[医療用ステープラ100の動作]
次に、医療用ステープラ100の動作について説明する。図12から図15は、医療用ステープラ100の動作を説明する図である。
【0054】
術者は、医療用ステープラ100が装着された内視鏡200の先端部211を処置対象Tに接近させる。術者は、開閉操作部250を操作して開閉操作ワイヤ5を前進させることで、把持部2を開状態にする。対物レンズ215の光軸A1は視野空間25を通過するため、術者は内視鏡200の撮像ユニットを介して処置対象Tを観察できる。また、鉗子口214の中心軸A2は視野空間25を通過するため、図12に示すように、術者は鉗子口214から把持鉗子Gを突出させて処置対象Tを処置できる。
【0055】
術者は、図13に示すように、処置対象Tを把持鉗子Gにより把持した状態で、把持鉗子Gを後退させる。術者は、把持鉗子Gの先端がステープル放出部3よりも基端側に配置されるように、把持鉗子Gを後退させる。
【0056】
術者は、図14に示すように、開閉操作部250を操作して開閉操作ワイヤ5を後退させることで、把持部2は閉状態になる。処置対象Tは、第一把持部材21のステープル放出部3と第二把持部材22のステープル受容部4とによって挟み込まれる。
【0057】
把持部2が閉状態であるとき、把持鉗子Gによって把持された処置対象Tの一部を、第二把持部材22のU字部材22aと第二本体部22bによって形成された空間(視野空間25)に収めることができるので、ステープル放出部3とステープル受容部4とよって挟み込んだ処置対象Tを逃しにくいという効果がある。
【0058】
把持部2が閉状態であるとき、図8に示すように、対物レンズ215の光軸A1は、第一把持部材21および第二把持部材22の外側を通過する。そのため、術者は、把持部2が閉状態であるときも、内視鏡200の撮像ユニットを介して処置対象Tを観察できる。
【0059】
術者は、処置対象Tをステープル放出部3とステープル受容部4とよって挟み込んだ状態で、放出操作部270を操作して放出操作ワイヤ6を牽引することで、格納されたステープルSをステープル受容部4に向けて放出する。ステープルSの針先S1は処置対象Tを貫通し、ステープル受容部4のポケット41に接触することにより屈曲する。その結果、処置対象Tは縫合される。
【0060】
術者は、図15に示すように、開閉操作部250を操作して、再び把持部2を開状態にする。術者は、把持鉗子Gを処置対象Tから離して縫合処置を完了する。
【0061】
本実施形態の医療用ステープラ100によれば、把持部2が閉状態である医療用ステープラ100の挿入径が内視鏡200の先端部211とほぼ同じであるため、消化管等の体内に挿入させやすい。また、医療用ステープラ100の把持部2が開状態であっても、術者は内視鏡200の撮像ユニットを介して処置対象Tを観察でき、鉗子口214から把持鉗子Gを突出させて処置対象Tを処置できる。
【0062】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0063】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について、図16を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第二実施形態に係る医療用ステープラ100Bは、第一実施形態に係る医療用ステープラ100と比較して、装着対象が異なる。
【0064】
図16は、医療用ステープラ100Bをオーバーチューブ400の先端部411に装着して使用する医療システム300Bを示す図である。医療システム300Bは、消化管等を縫合する手術等に使用される。医療システム300Bは、医療用ステープラ100Bと、内視鏡200と、開閉操作部250と、放出操作部270と、ワイヤシース280と、オーバーチューブ400と、を備える。
【0065】
オーバーチューブ400の先端部411に装着される医療用ステープラ100Bは、第一実施形態の医療用ステープラ100同様、キャップ(着脱部)1と、把持部2と、ステープル放出部3と、ステープル受容部4と、開閉操作ワイヤ5と、放出操作ワイヤ(動力伝達部材)6と、を備える。
【0066】
オーバーチューブ400の内部空間は、キャップ(着脱部)1の第一貫通孔11と連通する。術者は、オーバーチューブ400の内部空間に内視鏡200を挿通させ、第一貫通孔11から内視鏡200の先端212を露出させることができる。
【0067】
医療用ステープラ100Bのキャップ(着脱部)1は、オーバーチューブ400の先端部411と一体に成形されていてもよい。
【0068】
本実施形態の医療用ステープラ100Bによれば、把持部2が閉状態である医療用ステープラ100の挿入径がオーバーチューブ400の先端部411とほぼ同じであるため、消化管等の体内に挿入させやすい。また、医療用ステープラ100の把持部2が開状態であっても、術者は内視鏡200の撮像ユニットを介して処置対象Tを観察でき、鉗子口214から把持鉗子Gを突出させて処置対象Tを処置できる。
【0069】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0070】
(変形例1)
例えば、上記実施形態において、第二把持部材22には略U字形状に形成されたU字部材22aに囲まれた視野空間25が形成されていたが、第二把持部材22の態様はこれに限定されない。図17および図18は、第二把持部材22の変形例である第二把持部材22Cを示す斜視図である。第二把持部材22Cは、略L字形状に形成されたL字部材22Caと、L字部材22Caを回転可能に支持する第二本体部22Cbと、を有している。L字部材22Caの先端にはステープル受容部4が設けられている。L字部材22Caの基端は、第二本体部22Cbに取り付けられている。この場合、視野空間25は、略L字形状に形成されたL字部材22Caの辺に挟まれた空間である。図18に示すように、第二把持部材22Cが開状態であっても、術者は内視鏡200の撮像ユニットを介して処置対象Tを観察でき、鉗子口214から把持鉗子Gを突出させて処置対象Tを処置できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、ステープラなどの医療用ステープラに適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
300,300B 医療システム
100,100B 医療用ステープラ
200 内視鏡
210 挿入部
211 先端部
214 鉗子口
215 対物レンズ
400 オーバーチューブ
411 先端部
1 キャップ(着脱部)
11 第一貫通孔
12 第二貫通孔
13 開口
2 把持部
21 第一把持部材
22 第二把持部材
22a U字部材
22Ca L字部材
23 開閉回転軸
25 視野空間
3 ステープル放出部
31 ステープル格納部
33 回転部材
34 第一プーリ
35 回転軸
36 第二プーリ
37 回転軸
4 ステープル受容部
41 ポケット
5 開閉操作ワイヤ
6 放出操作ワイヤ(動力伝達部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18