(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】樹脂凸版印刷版およびその製造方法ならびに印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41N 1/12 20060101AFI20240112BHJP
B41C 1/00 20060101ALI20240112BHJP
B41F 5/24 20060101ALI20240112BHJP
B41F 5/04 20060101ALI20240112BHJP
B41F 31/06 20060101ALI20240112BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B41N1/12
B41C1/00
B41F5/24
B41F5/04 A
B41F31/06
G03F7/00 502
(21)【出願番号】P 2019021767
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】309011675
【氏名又は名称】三郷コンピュータホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 学
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-053424(JP,A)
【文献】特開平11-348229(JP,A)
【文献】特開2012-131219(JP,A)
【文献】特開昭63-023161(JP,A)
【文献】特開2007-008098(JP,A)
【文献】特開昭53-019412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0368260(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/12
B41C 1/00
B41F 5/24
B41F 5/04
B41F 31/06
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴シリンダ
に両面接着テープを介して巻付けられて版胴
を構成
する矩形形状の樹脂凸版印刷版であって、
前記版胴と圧胴との間に被印刷物
を案内
して印刷
を施
すための樹脂凸版印刷版であって、
中央領域の画線部の両側にマージナルゾーンが長手方向に形成された樹脂凸版印刷版
であって、
前記樹脂凸版印刷版の一端部のうち前記マージナルゾーン
の一端部
のみに、前記樹脂凸版印刷版の長手方向に切欠い
た凹部が構成され、かつ、
前記樹脂凸版印刷版の他端部のうち前記マージナルゾーンの他端
部のみに、前記長手方向に突出させ
た凸部が構成され、
前記樹脂凸版印刷版
が前記版胴シリンダに巻付け
られたとき、前記樹脂凸版印刷版の
前記一端部のうち前記画線部の一端部に
、前記樹脂凸版印刷版の前記他端部のうち前記画線部の他端部が突き合わされて継ぎ目部が幅方向に構成されるとともに、前記マージナルゾーンの
前記一端
部の凹部と
前記マージナルゾーンの前記他端部
の凸部とが突き合わされて接合部が構成され、
前記マージナルゾーンの接合部は、前記樹脂凸版印刷版の継ぎ目部の幅方向に直線状に整列せず、前記継ぎ目部から
前記長手方向および前記幅方向の成分を備えるように延設され
たことを特徴とする樹脂凸版印刷版。
【請求項2】
前記マージナルゾーン
の前記一端部
の外側コーナ部が矩形形状、台形形状、三角形形状または階段状に切欠かれた凹部が
前記長手方向に構成され、かつ、前記マージナルゾーンの
前記他端部
の外側コーナ部が矩形状、台形状、三角形状、または階段状に突出する補形形状の凸部が
前記長手方向に構成され、
前記マージナルゾーン
の前記一端部
の凹部が
前記マージナルゾーンの前記他端部
の凸部に突き合わされた接合部が形成された請求項1に記載の樹脂凸版印刷版。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂凸版印刷版において、複数枚の前記樹脂凸版印刷版が用意されて版胴シリンダに両面接着テープを介してシリーズに巻付けられ、
前記複数枚の樹脂凸版印刷版のうち、先行の樹脂凸版印刷版の
前記他端部に後行の樹脂凸版印刷版の
前記一端部が突き合わされて順次接合されていき、最後の樹脂凸版印刷版の
前記他端部に最先行の樹脂凸版印刷版の
前記一端部が突き合わされて接合されたことを特徴とする樹脂凸版印刷版。
【請求項4】
矩形形状の感光性樹脂版の版材に、活性光源から所要波長のエネルギー光を照射し、前記版材の感光性樹脂層にレリーフ像とバック析出層を形成する露光工程と、
露光された前記版材を洗浄装置に搬送し、この洗浄装置で前記版材の感光性樹脂層に洗浄液のスプレー噴射と洗浄ブラシをスライドさせるブラシ洗浄とを付与し、前記感光性樹脂層から未硬化の樹脂材料を除去する水洗浄工程と、
未硬化の樹脂材料が除去されて製版される樹脂凸版印刷版を所要形状に切断する切断工程とを備え、
中央領域の画線部の両側にマージナルゾーンが形成された樹脂凸版印刷版の製造方法において、
前記樹脂凸版印刷版
の一端部のうち前記マージナルゾーンの一端部
のみに、前記樹脂凸版印刷版の長手方向に切り欠いて凹部を形成し、かつ、
前記樹脂凸版印刷版の他端部のうち前記マージナルゾーンの
他端部
のみに、前記長手方向に突出させて凸部を構成し、
前記樹脂凸版印刷版は、版胴シリンダに巻き付ける装着時に、前記樹脂凸版印刷版の
前記一端部のうち前記画線部の一端部に
、前記樹脂凸版印刷版の前記他端部のうち前記画線部の他端部が突き合わされて継ぎ目部を幅方向に構成するとともに、前記マージナルゾーンの
前記一端
部の凹部と
前記マージナルゾーンの前記他端部
の凸部とが突き合わされて接合部を構成し、
前記マージナルゾーンの接合部は、前記樹脂凸版印刷版の継ぎ目部の幅方向に直線状に整列せず、前記継ぎ目部から
前記長手方向および前記幅方向の成分を備えるようにシフトし
ていることを特徴とする樹脂凸版印刷版の製造方法。
【請求項5】
前記マージナルゾーン
の前記一端部
の外側コーナ部が、矩形形状、台形形状、三角形形状または階段形状に切り欠かれた
前記長手方向の凹部を形成し、かつ、前記マージナルゾーンの
前記他端部
の外側コーナ部が、矩形形状、台形形状、三角形形状または階段形状に突出する
前記長手方向の補形形状の凸部を構成し、
前記マージナルゾーン
の前記一端部
の凹部が前記マージナルゾーンの
前記他端部
の凸部に突き合わされて接合部を構成する請求項4に記載の樹脂凸版印刷版の製造方法。
【請求項6】
画線部の両側にマージナルゾーンが長手方向に形成された樹脂凸版印刷版と、
前記樹脂凸版印刷版が版胴シリンダに巻付けられて構成される版胴と、
前記版胴に対向して設けられる圧胴と、
前記版胴の樹脂凸版印刷版にインキが供給されるインキング機構を備えた印刷ユニットとを有し、
前記印刷ユニットの版胴と圧胴との間に被印刷物を通して被印刷物に印刷を施す印刷装置において、
前記樹脂凸版印刷版
の一端部のうち前記マージナルゾーンの一端部
のみに、前記樹脂凸版印刷版の長手方向に切り欠
いた凹部が形成され、かつ、
前記樹脂凸版印刷版の他端部のうち前記マージナルゾーンの他端部
のみに、前記長手方向に突出
させた凸部が構成され、
前記樹脂凸版印刷版
が前記版胴シリンダに巻付け
られたとき、前記樹脂凸版印刷版の
前記一端部のうち前記画線部の一端部に
、前記樹脂凸版印刷版の前記他端部のうち前記画線部の他端部が突き合わされて継ぎ目部が幅方向に構成されるとともに、前記マージナルゾーンの
前記一端部
の凹部と
前記マージナルゾーンの前記他端部
の凸部とが突き合わされる接合部が構成され、
前記マージナルゾーンの接合部は、前記樹脂凸版印刷版の継ぎ目部の幅方向に直線状に整列せず、前記継ぎ目部から
前記長手方向および前記幅方向の成分を備えるように延設され
たことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
前記マージナルゾーンの
前記一端部
の外側コーナ部が矩形形状、台形形状、三角形形状または階段形状に切り欠かれた
前記長手方向の凹部が形成され、かつ、前記マージナルゾーンの
前記他端部
の外側コーナ部が矩形形状、台形形状、三角形形状または階段形状に
前記長手方向に突出する補形形状の凸部が構成され、
前記樹脂凸版印刷版は、前記版胴シリンダに巻きつけ
られたとき、前記
画線部の前記一端部
に前記画線部の前記他端
部が突き合わされて継ぎ目部が設けられ、
前記マージナルゾーン
の前記一端部
の凹部に前記マージナルゾーンの
前記他端部
の凸部が突き合わされて接合部が構成された請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記インキング機構は、インキを貯留したインキ皿と、貯蔵されたインキを送るインキ送りロールと、このインキ送りロールとのニップ圧でインキ供給量を制御するインキ転位ロールとを備え、
前記インキ転位ロールに供給されたインキは、前記版胴の樹脂凸版印刷版の版面に転移される請求項6に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記インキング機構は、インキを貯留したインキ皿と貯留されたインキが供給されたインキ転位ロールと、このインキ転位ロールに供給されるインキ量を制御するドクターブレードと備え、前記ドクターブレードは、前記インキ転位ロールからの樹脂凸版印刷版の版面に転移されるインキ供給量が制御される請求項6に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記印刷ユニットは、直線的に複数の印刷ユニットが配設されたインライン型印刷装置であり、
前記印刷ユニット間の色間距離に乾燥ユニットが設けられる請求項6に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記印刷ユニットは、中央の共通圧胴の周りに複数の印刷ユニットが配設されたドラム型の印刷装置であり、
前記印刷ユニット間の色間距離に乾燥ユニットが設けられる請求項6に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記印刷ユニットは、スタック状に積み上げられた複数の印刷ユニットが配設されたスタック型印刷装置であり、
前記印刷ユニット間の色間距離に乾燥ユニットが設けられる請求項6に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂凸版印刷版およびその製造方法ならびに樹脂凸版印刷版を用いた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂版の版材から版材の感光性樹脂層に活性光源(紫外線)を照射(露光)して光硬化させ、この露光により版材の感光性樹脂層にレリーフ像およびバック折出層を形成している。そして、露光後、感光性樹脂版の版材を水現像させる場合、界面活性剤を加えた洗浄液を使用して洗浄ブラシで版材の感光性樹脂層をブラッシング洗浄して水洗いし、版材の感光性樹脂層から未硬化の樹脂材料を取り除いて樹脂凸版印刷版を製造する製版技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の製版技術で製造された樹脂凸版印刷版は、凸版印刷機としてのロータリプレス印刷装置やフレキソ印刷装置に使用される。樹脂凸版印刷版は印刷装置の版胴シリンダに巻き付けられて装着され、印刷媒体として一般の紙(連続フォームや枚葉紙)や軟包装フィルム(プラスチックフィルム)、段ボール紙等のような被印刷物を版胴と圧胴との間に通して印刷される。被印刷物には樹脂凸版印刷版の版面画線部に形成された画像が転写され、印刷が施される。
【0004】
特許文献1に記載の製版技術では、極限的な解像度を実現するために、版厚1mm未満の感光性樹脂版の版材を用いることが望ましいとされている。しかし、フレキソ印刷の場合、軟包装フィルムのような柔軟性のある被印刷物あるいは段ボール紙のような多様な被印刷物に対応するためには、多少印刷物の解像度が低下しても版厚がより厚い版材を用いることが望ましい場合がある。
さらにより高度な美感を備えた各種の包装材料を提供するためには、多色刷りおよび多様な被包装品への対応を含めて、各種の樹脂凸版印刷版が効率的に製造されることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の製版技術で製造された樹脂凸版印刷版は、ロータリプレス印刷装置やフレキソ印刷装置の版胴シリンダに両面接着テープを介して巻き付けることで版胴が構成される。
【0007】
ロータリプレス印刷装置やフレキソ印刷装置の版胴は、版胴シリンダに単一の無端状樹脂凸版印刷版を巻き付けたものが存在する。フレキソ印刷装置の版胴には中空の版胴シリンダに巻き付けられた樹脂凸版印刷版が用いられ、版胴と圧胴との間に印刷媒体として被印刷物が通される。
【0008】
フレキソ印刷では、(版胴の)樹脂凸版印刷版の版面の印圧が被印刷物に加えられる。フレキソ印刷の印圧はキスプレスが最善と言われている。キスプレスの印圧を被印刷物にコンスタントに付与するためには、印刷装置の機械精度や版胴、圧胴の回転精度の高さが要求される。
【0009】
フレキソ印刷装置の版胴は、重量のある無垢の中実シリンダではなく、軽量な中空シリンダが使用される。版胴シリンダに巻き付けられる樹脂凸版印刷版は、その印刷版の継ぎ目に段差が存在すると(版胴と圧胴との間に通される)被印刷物が樹脂凸版印刷版の継ぎ目を通過する毎に、継ぎ目により版胴にバウンディング(踊り)が発生する。
版胴にバウンディングが発生すると、被印刷物に加えられる版胴の印圧がバラついて変化して掠れが生じ、印刷の安定性に欠け、一定の印刷品質を保つことが困難となる問題がある。
【0010】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、樹脂凸版印刷版を版胴シリンダに巻き付けたとき、樹脂凸版印刷版の継ぎ目部に段差が生じても、版胴にバウンディングの発生を未然に防止でき、被印刷物の印刷に良好な印刷品質を施すことができる樹脂凸版印刷版およびその製造方法並びに印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る樹脂凸版印刷版は、版胴シリンダに両面接着テープを介して巻付けられて版胴を構成する矩形形状の樹脂凸版印刷版であって、前記版胴と圧胴との間に被印刷物を案内して印刷を施すための樹脂凸版印刷版であって、中央領域の画線部の両側にマージナルゾーンが長手方向に形成された樹脂凸版印刷版であって、前記樹脂凸版印刷版の一端部のうち前記マージナルゾーンの一端部のみに、前記樹脂凸版印刷版の長手方向に切欠いた凹部が構成され、かつ、前記樹脂凸版印刷版の他端部のうち前記マージナルゾーンの他端部のみに、前記長手方向に突出させた凸部が構成され、前記樹脂凸版印刷版が前記版胴シリンダに巻付けられたとき、前記樹脂凸版印刷版の前記一端部のうち前記画線部の一端部に、前記樹脂凸版印刷版の前記他端部のうち前記画線部の他端部が突き合わされて継ぎ目部が幅方向に構成されるとともに、前記マージナルゾーンの前記一端部の凹部と前記マージナルゾーンの前記他端部の凸部とが突き合わされて接合部が構成され、前記マージナルゾーンの接合部は、前記樹脂凸版印刷版の継ぎ目部の幅方向に直線状に整列せず、前記継ぎ目部から前記長手方向および前記幅方向の成分を備えるように延設されたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る樹脂凸版印刷版は請求項1または2に記載の樹脂凸版印刷版において、複数枚の前記樹脂凸版印刷版が用意されて版胴シリンダに両面接着テープを介してシリーズに巻付けられ、前記複数枚の樹脂凸版印刷版のうち、先行の樹脂凸版印刷版の前記他端部に後行の樹脂凸版印刷版の前記一端部が突き合わされて順次接合されていき、最後の樹脂凸版印刷版の前記他端部に最先行の樹脂凸版印刷版の前記一端部が突き合わされて接合されたことを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる樹脂凸版印刷版の製造方法は、矩形形状の感光性樹脂版の版材に、活性光源から所要波長のエネルギー光を照射し、前記版材の感光性樹脂層にレリーフ像とバック析出層を形成する露光工程と、露光された前記版材を洗浄装置に搬送し、この洗浄装置で前記版材の感光性樹脂層に洗浄液のスプレー噴射と洗浄ブラシをスライドさせるブラシ洗浄とを付与し、前記感光性樹脂層から未硬化の樹脂材料を除去する水洗浄工程と、未硬化の樹脂材料が除去されて製版される樹脂凸版印刷版を所要形状に切断する切断工程とを備え、中央領域の画線部の両側にマージナルゾーンが形成された樹脂凸版印刷版の製造方法において、前記樹脂凸版印刷版の一端部のうち前記マージナルゾーンの一端部のみに、前記樹脂凸版印刷版の長手方向に切り欠いて凹部を形成し、かつ、前記樹脂凸版印刷版の他端部のうち前記マージナルゾーンの他端部のみに、前記長手方向に突出させて凸部を構成し、前記樹脂凸版印刷版は、版胴シリンダに巻き付ける装着時に、前記樹脂凸版印刷版の前記一端部のうち前記画線部の一端部に、前記樹脂凸版印刷版の前記他端部のうち前記画線部の他端部が突き合わされて継ぎ目部を幅方向に構成するとともに、前記マージナルゾーンの前記一端部の凹部と前記マージナルゾーンの前記他端部の凸部とが突き合わされて接合部を構成し、前記マージナルゾーンの接合部は、前記樹脂凸版印刷版の継ぎ目部の幅方向に直線状に整列せず、前記継ぎ目部から前記長手方向および前記幅方向の成分を備えるようにシフトしていることを特徴とする製造方法である。
【0014】
本発明にかかる印刷装置は、画線部の両側にマージナルゾーンが長手方向に形成された樹脂凸版印刷版と、前記樹脂凸版印刷版が版胴シリンダに巻付けられて構成される版胴と、前記版胴に対向して設けられる圧胴と、前記版胴の樹脂凸版印刷版にインキが供給されるインキング機構を備えた印刷ユニットとを有し、前記印刷ユニットの版胴と圧胴との間に被印刷物を通して被印刷物に印刷を施す印刷装置において、前記樹脂凸版印刷版の一端部のうち前記マージナルゾーンの一端部のみに、前記樹脂凸版印刷版の長手方向に切り欠いた凹部が形成され、かつ、前記樹脂凸版印刷版の他端部のうち前記マージナルゾーンの他端部のみに、前記長手方向に突出させた凸部が構成され、前記樹脂凸版印刷版を前記版胴シリンダに巻付けられたとき、前記樹脂凸版印刷版の前記一端部のうち前記画線部の一端部に、前記樹脂凸版印刷版の前記他端部のうち前記画線部の他端部が突き合わされて継ぎ目部が幅方向に構成されるとともに、前記マージナルゾーンの前記一端部の凹部と前記マージナルゾーンの前記他端部の凸部とが突き合わされる接合部が構成され、前記マージナルゾーンの接合部は、前記樹脂凸版印刷版の継ぎ目部の幅方向に直線状に整列せず、前記継ぎ目部から前記長手方向および前記幅方向の成分を備えるように延設されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、版胴シリンダに巻付けられる樹脂凸版印刷版のマージナルゾーンの一端部側凹部とその他端部側凸部とが突き合わされるマージナルゾーンの接合部に、樹脂凸版印刷版の継ぎ目部に幅方向に整列される直線状の段差を備えず、接合部に非段差部のガイド面を構成でき、印刷時に樹脂凸版印刷版を巻き付けた版胴を円滑かつスムーズに回転させて、版胴のバウンディングやがたつきを防止し、被印刷物の印刷に良好な印刷品質を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】樹脂凸版印刷版の製造に用いられる感光性樹脂版の版材を示す斜視図。
【
図2】(A)~(G)は、感光性樹脂版の版材から製作される樹脂凸版印刷版の製版工程を示す概略図。
【
図3】本発明にかかる樹脂凸版印刷版の実際の形態を示す平面図。
【
図4】樹脂凸版印刷版を版胴シリンダに巻き付けた版胴を側面から見た構成図で、(A)は単一(一枚)の樹脂凸版印刷版が巻き付けられた版胴の概略構成図、(B)は複数枚(例えば二枚)の樹脂凸版印刷版が巻き付けられた版胴の概略構成図。
【
図5】版胴シリンダに巻き付けられる樹脂凸版印刷版の継ぎ目部を部分的に示すもので、(A)は樹脂凸版印刷版の各端部が突き合わされる直前の状態を示す図、(B)は樹脂凸版印刷版の各端部の突き合わせ状態を示す接合図。
【
図6】樹脂凸版印刷版の第一変形例を示す各端部の突き合わせ状態の接合図。
【
図7】樹脂凸版印刷版の第二変形例を示す各端部の突き合わせ状態の接合図。
【
図8】樹脂凸版印刷版の第三変形例を示す各端部の突き合わせ状態の接合図。
【
図9】ゴム系の樹脂凸版印刷版(版材厚み:1.14mm)のレリーフ深度-フロア層-バック析出層の厚み寸法関係を示す測定データ図。
【
図10】ゴム系樹脂凸版印刷版(版材厚み:1.70mm)のレリーフ深度-フロア層-バック析出層の厚み寸法関係を示す測定データ図。
【
図11】ゴム系樹脂凸版印刷版(版材厚み:2.84mm)のレリーフ深度-フロア層-バック析出層の厚み寸法関係を示す測定データ図。
【
図12】本発明にかかる樹脂凸版印刷版をインライン型フレキソ印刷装置に適用した例を示す概略構成図。
【
図13】
図12に示されたフレキソ印刷装置に備えられる印刷ユニットを示す簡略構成図。
【
図14】本発明にかかる樹脂凸版印刷版をドラム型フレキソ印刷装置に適用した例を示す概略構成図。
【
図15】
図14に示されたフレキソ印刷装置に備えられる印刷ユニットを示す簡略構成図。
【
図16】
図14に示されたフレキソ印刷装置に備えられる印刷ユニットの他の例を示す簡略構成図。
【
図17】本発明にかかる樹脂凸版印刷版をスタック型フレキソ印刷装置に適用した例を示す概略構成図。
【
図18】
図17に示されたフレキソ印刷装置に備えられる印刷ユニットを示す簡略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、樹脂凸版印刷版の製造に用いられる感光性樹脂版の版材10を示す。この版材10にはアナログ版とデジタル版がある。アナログ版やデジタル版には、例えば特許第5225327号公報に記載の樹脂凸版印刷版に用いられる感光性樹脂版の版材がある。アナログ版には、製版フィルムとしてネガフィルムが使用され、デジタル版には製版フィルムを不要としたCTP(Computer to Plate)方式の版材が用いられる。CTP版材は感光性樹脂層表面に画像マスクとなる感熱層(アブレーションマスク)が一体化された版材を指す。
【0019】
感光性樹脂版の版材10には具体例として東洋紡株式会社製の製品名コスモライトQS114U、QS170F、QS284F、コスモライトQH,コスモライトQZ等のCTPフレキソ版材や、富士フィルムグローバルグラフィックシステムズ(FFGS)株式会社製の製品名水現像フレキソ版材、FLENEX FWシリーズ(FW-L,FW-A,FW-U)等のフレキソ版材がある。フレキソ版材は、プラスチックフィルム等の軟包装フィルム、一般の紙(連続フォームや枚葉紙)、紙器、紙袋の印刷や段ボール紙の印刷、電子部品等の工業部品の印刷に幅広く用いられる。
【0020】
感光性樹脂版の版材10は、フレキソ版材でショアA硬度が例えば30度~82度、好ましくは68度~82度であり、フレキソ版材は一般にゴム系であるため、レタープレス版用の感光性樹脂版版材より軟らかい。さらに例えば、フレキソ版材の天地方向(長手方向)が762mm~1540mm、幅方向が635mm~1067mmである。また、感光性樹脂版版材の天地方向(長手方向)が数m(例えば3m)~9mであり、両版材の版厚には0.70mm~2.84mmのアナログ版あるいはデジタル版が用いられる。
【0021】
感光性樹脂版の版材10では、
図1に示すように基板としてのポリエチレンフィルムのベースフィルム(フィルム支持体)11に接着剤層12を介して感光性樹脂層13が一体に積層される。この感光性樹脂層13上に所要波長のレーザ光、例えば赤外線レーザ光に反応するアブレーションマスク14が一体に装着される。アブレーションマスク14には赤外線レーザ光と反応するブラックマスク層が形成され、ブラックマスク層はレーザ光と反応して製版パターンが構成されるようになっている。アブレーションマスク14上にはカバーフィルム15が被着される。なお、感光性樹脂層13は赤外線レーザ光の照射には感度を有さず、その照射により反応することは無い。
【0022】
感光性樹脂版の版材10はフレキソ版材の場合、ゴム系の感光性樹脂層13に例えば重合性化合物と光重合開始剤とを含有して、活性光源の所要波長、たとえが300nm~400nm波長のエネルギー光(UV光)に反応して光硬化する光硬化性樹脂が用いられる。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン系またはアセトフェノン系の光重合開始剤を使用することができる。この光硬化性樹脂には、溶剤および添加剤の少なくとも一方を添加して使用するものでもよい。
【0023】
感光性樹脂版の版材10がコスモライトQS114Uのゴム系のフレキソ版材である場合、感光性樹脂層13は、例えば合成ゴム、液状ゴム、ポリウレタンメタクリレート系化合物、アクリルレート系化合物および光重合開始剤等で構成される。また、感光性樹脂版の版材10がFLENEX FWシリーズ(FW-L、FW-A、FW-U)のフレキソ版材である場合は、感光性樹脂版層13は例えばポリマー、メタアクリル酸エステル系モノマー、添加剤および光重合開始剤等で構成される。
【0024】
また、感光性樹脂版層13には不飽和ポリエステル樹脂やポリブラジアンあるいはアクリルやウレタン等の不飽和基を導入した不飽和樹脂層の光増感剤や熱安定性を添加した光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0025】
好ましいゴム系の感光性樹脂版の版材10の一例として、フレキソ版材では版厚が1140μmの場合、ベースフィルム11のフィルム厚は125(又は188)μm、ハレーション防止用の接着剤層12は20μm、感光性樹脂版層13の層厚は995(又は932)μmに構成される。フィルム支持体としてのフィルムベース16(ベースフィルム11+接着剤層12)は145(208)μmのベース厚(支持体フィルム厚)を有する。
【0026】
ベースフィルム11にはポリエステルフィルムの他に、ポリエチレン-テレフタレート(PETフィルム)、ポリ塩化ビニール等のプラスチック樹脂フィルム、スチレン―ブタジエンゴム等の合成ゴムフィルム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂フィルム、エポキシ樹脂フィルム、フェノール樹脂フィルムを用いてもよい。接着剤層12には、ゴム系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系の接着剤でコーティング処理あるいはカップリング剤によるアンカー処理等の各種のコーティング材が用いられる。
次に、感光性樹脂版の版材10を用いて、樹脂凸版印刷版を製造する場合を説明する。
感光性樹脂版の版材10に、CPT(Computer to Plate)方式のゴム系フレキソ版材を用いて感光性樹脂凸版印刷版18を製造する例で説明する。
【0027】
感光性樹脂版の版材10のうち、ゴム系フレキソ版材には、例えばコスモライトQS、QH、QZ、等で版厚が700μm~数千(7000)μm、好ましくは1000μm~4000μm、より好ましくは1140μm~2840μmを有する多種類の版材がある。この中で感光性樹脂版の版材10は版厚1140μmのCTP方式のフレキソ版材を用いて感光性樹脂凸版印刷版18を製造する製版技術の例を示す。フレキソ版材は、レタープレス等の紙印刷用に汎用される感光性樹脂版の(レタープレス)版材に較べ、版材の版厚が等しい場合、ショアA硬度が小さく、軟らかい材料が使用される。
【0028】
感光性樹脂凸版印刷版18の製作の際には、
図2(A)に示す感光性樹脂版の版材10にフレキソ版材のCTP版材と透明フィルム19が用意される。初めに感光性樹脂版のCTP版材10からカバーフィルム15が取り除かれる。
【0029】
続いて、版材10のアブレーションマスク14側に
図2(B)に赤外線レーザ光Lをパターン照射して、アブレーションマスク14に製版パターンを形成させる。CTP版材10は製版フィルムであるネガフィルムを必要としない。
CTP版材10のアブレーションマスク14に製版パターンが形成された後、図示しない露光装置のランプハウスに送られる。
【0030】
[露光工程]
露光装置を構成するランプハウスに搬送されたCTP版材10は、ランプハウス内を所定の速度で走行させつつ、
図2(C)に示すように、ランプハウス内で活性光源20により所要波長のエネルギー光が照射される。活性光源としては、例えば紫外線源を用いて315nm~400nmの紫外線(UV光)が照射され、主露光であるレリーフ露光が行われる。レリーフ露光用の活性光源20には、紫外線源の他に300nm~400nmの波長域の高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯やキセノンランプ等がある。光源には点光源ではなく、面光源に近いものが好ましい。ランプハウス内では、CTP版材10を走行させる代わりに活性光源を走行させるようにしてもよい。
【0031】
レリーフ露光において、CTP版材10はアブレーションマスク14の製版パターンを通じて感光性樹脂層13に所定の光量、例えば13,000mj/cm2程度の光量の紫外線が入射される。感光性樹脂層13は強力な紫外線エネルギーの照射により、照射部の感光性樹脂層13が光反応して光硬化される。この光硬化によりCTP版材10は感光性樹脂層13の画線部(照射部)に硬化部を構成する文字・画像のレリーフ像22が形成される。レリーフ像22はベースフィルム11に向かって、末広がりのテーパ状に安定的に形成される。レリーフ像22は感光性樹脂層13の層厚全体に必ずしも形成する必要がなく、アブレーションマスク14側に数百μm、例えば110μm~700μm程度のレリーフ高さであってもよい。この場合には、エネルギー光は、5,000mj/cm2の光量の紫外線を入射させることでレリーフ像を形成することができる。
【0032】
レリーフ像の最大の高さは、感光性樹脂層13の厚さによって決定される。感光性樹脂層13は画像(線)部に潜像のレリーフ像22を奥まで硬化させるために。普通は活性光源20に強力なエネルギー光、例えば紫外線源では5,000mj/cm2程度以上のエネルギー光量、好ましくは13,000mj/cm2程度の紫外線が照射されて焼付き露光される。13,000mj/cm2程度のエネルギー光量で紫外線が所要時間、例えば30分間照射されると、感光性樹脂層13は照射部が光反応して所要のレリーフ深度(高さ)のレリーフ像(潜像)22が安定的に形成される。また、感光性樹脂層13の表層部付近のみにレリーフ像22を形成させる場合には、レリーフ露光のエネルギー光は5,000mj/cm2程度の光量でもよく、必ずしも13,000mj/cm2の光量を必要としない。
【0033】
感光性樹脂層13にレリーフ像22が形成された後、CTP版材10はランプハウスから取り出されて反転され、CTP版材10の裏側から透明なフィルム19を通して活性光源が照射され、バック露光される。フィルム19はアブレーションマスク14に位置合わせされて真空密着され、バキューム固定されている。このバキューム固定によりCTP版材10とフィルム19との間に位置ずれや密着ムラが発生するのが防止される。
【0034】
このように感光性樹脂版のCTP版材10にレリーフ露光を行った後、取り出されて反転され、CTP版材10のベースフィルム11側に固着されたフィルム19を通してレリーフ露光の光量以下のエネルギー光量でバック露光が行われる。バック露光では活性光源からレリーフ露光の0.03倍~1倍(等しい)のエネルギー光量の活性光、例えば紫外線がフィルム19側から感光性樹脂層13にフィルムベース16を通して入射される。バック露光では例えば370mj/cm2~10,000mj/cm2の紫外線光量が入射され、感光性樹脂層13のフィルムベース16側に層状に凝固して(光硬化して)所要高さ(凝固域)のフロアが形成され、バック折出層(バック固化層)23が全面に構成される。バック折出層23の高さはバック露光時間とバック露光のエネルギー光量の強さにより調整することができる。
【0035】
露光工程では、レリーフ像22の後にバック析出層23が形成されるので、光源としては、点光源ではなく線光源や面光源が好ましい。レリーフ露光量が少ないと、レリーフ像22そのものが欠落したり、ショルダが立ちすぎて耐刷性を損なう原因となる。レリーフ露光量が多過ぎると、網点のシャドー部や文字が太り易くなり、非画線部の深度が浅くなって印刷時にインキが詰まり易くなり、印刷品質を損なう原因となる。
【0036】
また、レリーフ像22のレリーフ深度(レリーフ高さ)は、感光性樹脂層13に作用するレリーフ露光とバック露光との露光量の調整により決定されるが、レリーフ深度の浅いレリーフ像22、例えばレリーフ深度100~110μm程度以下では、印刷時に被印刷部材に地汚れが発生する恐れがあり、好ましくない。反対にレリーフ深度(レリーフ高さ)が深いと印刷時にレリーフ像22が折れたり、破損したり変形する恐れがあり、好ましくない。したがって、レリーフ像22のレリーフ深度(レリーフ高さ)は、110μm以上、好ましくは700μm以下程度の範囲が好ましい。
【0037】
CTP版材10は感光性樹脂層13のフィルムベース16側にバック折出層23を一体に形成することによりフロアが構成されて補強され、CTP版材10の機械的、物理的および化学的強度を向上させることができる。バック折出層23は、層厚が厚ければ厚いほどCTP版材10の強度を向上させることができる。レリーフ像22の高さ(レリーフ深度)は感光性樹脂層13の層厚からバック析出層23の高さを引くことで決定される。結果的にはフレキソイン印刷ではレリーフ高さ(レリーフ深度)はキスプレスの印刷が好ましい(軟包装フィルム印刷用の)フレキソ版材で、110μm以上、好ましくは300μm~500μm程度のレリーフ像22の高さが構成されることが好ましい。
また、
図2(C)および(D)では感光性樹脂版のCTP版材10にレリーフ露光とバック露光を同時に行うようにしてもよく、バック露光はレリーフ露光に先立って行うようにしてもよい。
【0038】
バック露光を行ってバック析出層23を形成し、レリーフ深度を110μm~500μm程度に浅くすることでレリーフ露光の光量を少なくし、例えば5,000mj/cm2程度のUV光でレリーフ像22を形成することができる。レリーフ露光の光量が少ない程印刷時にベタの白抜きをきれいにすっきりさせることができる。またレリーフ深度を浅くすることで水現像時に未硬化部の樹脂洗い出し量が少なくて済み、洗い出し時間も少なくてよいので、水洗浄効率を向上させることができる。さらに印刷時に版胴のバウンディング(踊り)の少ない(後述する)印刷装置に樹脂凸版印刷版18の組合せにより、小さな網点や細かい画像部をきれいに印刷することができる。
【0039】
[水現像工程]
レリーフ露光およびバック露光を行う露光工程で、光硬化作用を受けたCTP版材10は、透明フィルム19等を剥がして取り除いた後に、
図2(E)に示されるように洗浄装置に送られ、洗浄ゾーン内で水現像工程(水洗浄工程)が実施される。水現像工程では、CTP版材10は洗浄ゾーン内を水平方向に搬送されて水洗いされる。
【0040】
CTP版材10は、洗浄ゾーンで洗浄液のスプレー噴射(洗浄)と、平型洗浄ブラシ25(以下洗浄ブラシという)がスライドして旋回運動するブラシ洗浄とが行われる。この水洗浄により、CTP版材10は版材の感光性樹脂層13から未硬化の樹脂材料が光硬化部(レリーフ像22およびバック析出層23)から分離して取り除かれる。
【0041】
図2(E)には1個の洗浄ブラシ25を用いた例を示している。実際には複数組、例えば二組の平型洗浄ブラシ25が複数個ずつ設けられる。洗浄ブラシユニットに複数個ずつの洗浄ブラシ25が用いられて版材10の感光性樹脂層13表面を組ごとに旋回運動してブラシ洗浄されている。しかし、各組の洗浄ブラシ25は、例えば組ごとに所要の回転角度差(回転位相差)を一定に保って旋回運動されるので、各組の洗浄ブラシ25のブラシ圧力が版材10の樹脂表面に作用する方向を異にし分散させることができる。
【0042】
各組の洗浄ブラシ25はCTP版材10の樹脂表面を擦りつつスライドしてブラシ洗浄させるときCTP版材10に作用するブラシ圧力が同じ方向に向くことは無い。洗浄ブラシ25がCTP版材10に作用するブラシ圧力が各組ごとに分散するので、CTP版材10は水洗浄中に脱落したり、シフトして損傷を受けるのを有効に防止できる。
【0043】
また、各組の洗浄ブラシ25によりブラシ洗浄されるCTP版材10の感光性樹脂層13は図示しないノズルから温水の洗浄液をスプレー噴射させつつ、ブラッシングされる。洗浄液は例えば40℃~60℃に加熱された温水、好ましくは50℃程度の温水を用いて水洗い洗浄される。
【0044】
図2(E)に示すように、水現像工程でCTP版材10の感光性樹脂層13は、洗浄液のスプレー噴射と洗浄ブラシ25のブラシ洗浄とにより、未硬化の樹脂材料がその硬化部から分離して除去される。CTP版材10は、硬化した樹脂材料のバック析出層23とレリーフ像22とがフレームベース16上に一体に固定されて残される。
【0045】
レリーフ像22はフロアを形成するバック析出層23上に固着して一体形成される。このようにしてフレームベース16と一体のバック析出層23にレリーフ像22が構成されて感光性樹脂凸版印刷版18が製造される。
【0046】
なお、露光時に未反応の未硬化樹脂の分離除去を促進させるため、水洗浄工程ではpH調整剤及び界面活性剤を加えた洗浄液が水性現像液として使用される。感光性樹脂版層13は光反応により凝固されて光硬化する光硬化樹脂材料であり、硬化部の光硬化樹脂は水性現像液に対する溶解性あるいは潤滑性がなく、水性現像液に対する化学的耐性が与えられてレリーフ像として残される。感光性樹脂凸版印刷版18は、フレームベース16上に機械的、物理的および化学的強度に優れたレリーフ像22がバック析出層23でサポートされて形成される。洗浄液に加えられる界面活性剤として、具体的にはアルカリ水溶液の界面活性剤、例えば食器洗い用洗剤、衣類洗濯用洗剤が用いられる。
【0047】
また、洗浄液で洗浄された感光性樹脂版の版材10は、フレキソ用版材の構造に応じて、温水で水洗浄して感光性樹脂凸版印刷版18が製作される。さらに洗浄液にアルカリ水溶液の活性剤で水洗浄した場合には、感光性樹脂版の版材10は、水道水などの水にリンス液を用いて表面洗浄される。
リンス液洗浄により、版材10の表面に付着したゴミや未硬化の残存樹脂材料等の異物が取り除かれて感光性樹脂凸版印刷版18が製造される。
【0048】
感光性樹脂凸版印刷版18は、続いて
図2(F)に示すように、ヒータ等の乾燥機26に送られて乾燥処理される。乾燥処理後に後述する印刷装置に装着してもよいが、さらに印刷の耐刷性を高めるために、後露光工程で後露光処理を行うようにしてもよい。
【0049】
図2(F)に示す後露光工程では活性光源からUVのエネルギー光を用いて感光性樹脂凸版印刷版18を後露光させることで、網点のハイライト部や細線の強度を増大させることができる。加えてレリーフ像22とバック析出層23の接合強度および(ベースフィルム11に一体に結合される)フロアとしてのバック析出層23の強度を向上させることができる。
【0050】
図2(E)の水現像工程や
図2(F)の乾燥工程および後露光工程を経て製造された感光性樹脂凸版印刷版18は、
図2(G)に示す切断工程に送られる。この切断工程では、矩形形状の樹脂凸版印刷版18は、カッターなどの切断装置27で切断され、後述する版胴シリンダに巻き付けるのに適した形状の樹脂凸版印刷版30に製作される。このように
図1に示される感光性樹脂凸版印刷版の版材10は、
図2(A)~(G)に概略的に示す製版工程を経て印刷装置の版胴シリンダに巻き付けられる樹脂凸版印刷版30が製造される。
【0051】
感光性樹脂凸版印刷版18は、
図2(G)の切断工程にて切断装置27により所要形状にカットされ、
図3に示される樹脂凸版印刷版30が製作される。この樹脂凸版印刷版30は、その先端部(一端部)37を後端部(他端部)38とが突き合わされるように、版胴シリンダ35に巻きつけると、
図4(A)および(B)に示すように構成される。
図4(A)は、版胴シリンダ35に単一(一枚)の樹脂凸版印刷版30を巻き付けた巻付け状態の例を示す側面図であり、
図4(B)は版胴シリンダ35に複数枚(例えば二枚)の樹脂凸版印刷版30を巻き付けた巻き付け状態を示す側面図である。なお、
図4(A)および(B)において、樹脂凸版印刷版30は版胴シリンダ35に全面が両面接着テープ36を介して巻き付けられ、固着される。
【0052】
[樹脂凸版印刷版]
図3は、本発明にかかる樹脂凸版印刷版の一実施形態を示す平面図である。
図1に示された感光性樹脂版の版材10から矩形形状の感光性樹脂凸版印刷版18が製作され、この感光性樹脂凸版印刷版18は
図2(G)の切断工程で所要形状に切断されて樹脂凸版印刷版30が製版される。樹脂凸版印刷版30は、平面図で
図3に示すように、ほぼ矩形形状に構成される。樹脂凸版印刷版30は、
図3に示すように中央領域の版面に画線部33が帯状に形成され、
樹脂凸版印刷版30の両外側方、ひいては画線部33の両側にマージナルゾーン34が設けられる。樹脂凸版印刷版30は、
図4に示す版胴シリンダ
(ローラ)35に両面接着テープ36を介して巻き付けると、例えば画線部33の一端部(先端部)37側と画線部33の他端部(後端部)38側が突き合わされて接合され、継ぎ目部39が構成される。
【0053】
マージナルゾーン34は、樹脂凸版印刷版30の長手方向(縦方向)に沿って対をなしており、マージナルゾーン34の一端部(先端部)側に外側辺が台形形状に切り欠かれた凹部(切り欠き)40が形成される。この凹部40はマージナルゾーン34の外側で長手方向に先細形状に切り欠かれて構成される。
【0054】
マージナルゾーン34の他端部(後端部)側は、台形形状に突出する凸部41に形成される。この凸部41は、マージナルゾーン34の他端部側が長手方向に先細の台形形状に突出している。樹脂凸版印刷版30を版胴シリンダ35に巻き付けたとき、マージナルゾーン34の凸部41はその凹部40に突き合わされて接合部44が形成される。接合部44はマージナルゾーン34の凸部41がその凹部40に突き合わされて嵌め合され、互いに補形形状をなすように凹凸接合部を構成している。ここに補形形状とは、一方の凹部40が他方の凸部41に嵌まり合うように相互に補完し合う形状関係をいう。
【0055】
しかして樹脂凸版印刷版30を版胴シリンダ35に巻き付けて装着した時、樹脂凸版印刷版30はその継ぎ目部39からマージナルゾーン34の接合部44が版胴シリンダ35の回転方向に延び、案内している。樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39はマージナルゾーン34の接合部44と幅方向に整列されておらず、回転方向にシフトした位置に構成される。
【0056】
ところで樹脂凸版印刷版30の他端部(後端部)38は、画線部33の後端部側を幅方向に台形形状に切り欠いて幅方向凹部45が構成される。この凹部45は、画線部33の後端部側を幅方向に沿って両外側に延び、両先端がマージナルゾーン34に入って終端している。樹脂凸版印刷版30はその他端部(後端部)38側を台形形状に切り欠いた幅方向凹部45により、マージナルゾーン34はその他端部(後端部)側に長手方向に一体に突出する凸部41が結果的に設けられる。この凸部41はマージナルゾーン34の他端部(後端部)側に台形形状に突出し、マージナルゾーン34の一端部の凹部40に突き合わされるように、
図5(A)および(B)に示されるように嵌め合され、接合される。
【0057】
このように、樹脂凸版印刷版30に形成されるマージナルゾーン34の凹部40とその凸部41とは、突き合わされて接合され、凹凸嵌合される。マージナルゾーン34の凹部40と凸部41とは補形形状に構成される。マージナルゾーン34の凹部40は樹脂凸版印刷版30の一端部(先端部)の両側コーナ部を切り欠くことにより構成され、マージナルゾーン34の凸部41は樹脂凸版印刷版30の他端部(後端部)側から長手方向に延びて構成される。凹部40と凸部41は突き合わされて凹凸接合部(凹凸嵌合部)が形成される。樹脂凸版印刷版30は凹凸接合部を構成する凸部41の幅方向内側に対応部42が形成される。対応部42は長手方向に延びて、マージナルゾーン34の一端部(先端部)に一体に接続される一方、樹脂凸版印刷版30の一端部(先端部)側両側側方に設けられる。マージナルゾーン34は、その凸部41と対応部42とから接合部44が構成され、マージナルゾーン34の接合部44はその表面にガイド面が形成される。、マージナルゾーン34の接合部44は、樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39から版胴シリンダ35の回転方向に延設される。マージナルゾーン34の接合部44のガイド面は、その後端部から延びる凸部41とマージナルゾーン34の先端部に一体に接続される対応部42との表面がマージナルゾーン34の表面と共通に面に形成されている。マージナルゾーン34の接合部44には幅方向に延びる直線状の継ぎ目が存在しないので、幅方向の段差部は形成されない。マージナルゾーン34の接合部44は、樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39に生ずる段差部が形成されても、マージナルゾーン34は接合部44に連続する非段差部のガイド面を構成している。
【0058】
ところで、感光性樹脂版の版材10から製版された樹脂凸版印刷版30は、
図3に示すように構成される。この樹脂凸版印刷版30は、
図4に示す版胴シリンダ35に両面接着テープ36を介して巻き付けることで固着され、後述する印刷装置の版胴48(48A)が構成される。両面接着テープ36は版胴シリンダ35に樹脂凸版印刷版30を巻き付けるために用いられる。両面接着テープ36のテープ厚は、数μm~100μm程度、好ましくは10数μmに構成される。
図4(A)は単一の樹脂凸版印刷版30を版胴シリンダに巻き付けて構成される版胴48の例を示し、
図4(B)は複数枚、例えば二枚の樹脂凸版印刷版30を版胴シリンダに巻き付けて構成される版胴48Aの例を示す。版胴シリンダに巻き付けられる樹脂凸版印刷版30は、版厚が700μm~数千μm、例えば7000μm、好ましくは1000μm~4000μm、より好ましくは1140μm~2840μmの版材10から製版される印刷版が使用される。
樹脂凸版印刷版30の縦・横寸法は、版胴シリンダ35の有効径や版胴シリンダ35の有効軸方向長さに応じて適宜調節設定される。
【0059】
今、単一の樹脂凸版印刷版30を版胴シリンダ35に巻き付ける場合、版胴48は
図4(A)に示すように、樹脂凸版印刷版30の先端部37と後端部38とが突き合わせるように版胴シリンダ35に両面接着テープ36を介して巻き付けて、
図5(A)および(B)に示すように構成される。
図5(A)は、版胴シリンダ35への樹脂凸版印刷版30の巻き付けが完了する直前の継ぎ目部39付近を示す状態図である。
図5(B)は樹脂凸版印刷版30の巻き付けが完了した継ぎ目部39付近の接合状態を示す状態図である。
【0060】
また、
図4(B)に示すように、二枚の樹脂凸版印刷版30を版胴シリンダ35に巻き付ける場合には、先行する樹脂凸版印刷版30の後端部38に後行の樹脂凸版印刷版30の先端部)37が突き合わされて接合され、継ぎ目部39が構成される。続いて、後行の樹脂凸版印刷版30が巻き付けられ、その後端部38が先行の樹脂凸版印刷版30の先端部37に突き合わされる。このようにして二枚の樹脂凸版印刷版30、30は版胴シリンダ35に両面接着テープ36を介して巻き付けられて、版胴48Aが構成される。このとき各樹脂凸版印刷版30は、マージナルゾーン34の接合部44が樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39から回転方向に延びてシフトしており、マージナルゾーン34の凹部40と凸部41とが互いに突き合わされて巻き付けられる。
【0061】
ここにおいて
図3に示すように、樹脂凸版印刷版30の縦寸法(長手方向長さ)をVLとし、横寸法(幅方向長さ)をWLとすると、樹脂凸版印刷版30の見かけ縦・横寸法は、樹脂凸版印刷版30の縦・横寸法(VL×WL)と異ならない。しかし樹脂凸版印刷版30の縦方向の有効寸法Lは(マージナルゾーン34の凹部40や幅方向凹部45を考慮すると)幅方向凹部45の切欠き幅分ΔLだけ感光性樹脂凸版印刷版18の縦方向寸法VLより短い。幅方向凹部45の切欠き幅ΔLは、マージナルゾーン34の凹部40や凸部41の長手方向長さΔLと等しく構成される。
【0062】
しかして、版胴シリンダ35に巻き付けられる樹脂凸版印刷版30の枚数をnとし、版胴シリンダ35の直径をD,版胴シリンダ35の有効軸方向長さをΔL,両面接着テープ36のテープ厚さをtとすると、樹脂凸版印刷版30を版胴シリンダ35との間に次の関係式が成立する。樹脂凸版印刷版30の有効縦方向寸法Lと幅方向寸法WLは、
L=(D+2t)π/n
WL≦AL
で表される。
【0063】
図6は版胴シリンダ35に巻き付けられる樹脂凸版印刷版30Aの第一変形例を示す継ぎ目部39付近の接合状態を表す状態図である。
この樹脂凸版印刷版30Aは、第一実施形態に示された、樹脂凸版印刷版30と同様、中央領域に版面の画線部33が構成され、画線部33の両側にマージナルゾーン34が設けられる。樹脂凸版印刷版30Aが版胴シリンダ35に両面接着テープ36を介して巻き付けられると、画線部33の一端部(先端部)37側と画線部33の
他端部(後端部)側38とが突き合わされて継ぎ目部39が構成される。
【0064】
マージナルゾーン34は、一端部(先端部)側の外側が三角形状に切り欠かれた凹部40Aが形成され、マージナルゾーンの他端部(後端部)側は外側に三角形状に一体に突出する凸部41Aが構成される。マージナルゾーン34の凹部40Aと凸部41Aとは互いに突き合わされて接合される接合部44が設けられる。マージナルゾーン34の接合部44Aは、その凹部40Aと凸部41Aは互いに補形形状に形成され、マージナルゾーン34の凹部40Aはその凸部41Aと突き合わされ、嵌め合わされて互いに補完関係に構成される。
【0065】
マージナルゾーン34の接合部44Aは樹脂凸版印刷版30Aの継ぎ目部39の幅方向に直線状に整合していない。マージナルゾーン34の接合部44Aは継ぎ目部39から版胴の回転方向に延びてシフトしている。このため、マージナルゾーン34の接合部44Aはマージナルゾーン34の幅方向に延びる段差が存在せず、マージナルゾーン34に連続する非段差部のガイド面を構成している。
【0066】
図7は版胴シリンダ35に巻き付けられる樹脂凸版印刷版30Bの第二変形例を示す継ぎ目部39付近の接合状態を表す状態図である。
この樹脂凸版印刷版30Bは、第一実施形態に示された、樹脂凸版印刷版30と同様、中央領域に版面の画線部33が構成され、画線部33の両側にマージナルゾーン34が設けられる。樹脂凸版印刷版30Bは版胴シリンダ35に両面接着テープ36を介して巻き付けられると、画線部33の一端部(先端部)37側と画線部33の多端部(後端部)側38とが突き合わされて継ぎ目部39が構成される。
【0067】
マージナルゾーン34は、一端部(先端部)側の外側が矩形形状に切り欠かれた凹部40Bが構成され、マージナルゾーン34の他端部(後端部)側は外側に矩形形状に一体に突出する凸部41Bが構成される。マージナルゾーン34の凹部40Bと凸部41Bとは互いに突き合わされて接合される接合部44Bが設けられる。マージナルゾーン34の接合部44Bは、その凹部40Bと凸部41Bは互いに補形形状に形成される。マージナルゾーン34の凹部40Bはその凸部41Bと突き合わされ、嵌め合わされて互いに補完関係に構成される。
【0068】
マージナルゾーン34の接合部44Bは樹脂凸版印刷版30Bの継ぎ目部39の幅方向に直線状に整合していない。マージナルゾーン34の接合部44Bは継ぎ目部39から版胴の回転方向に延びてシフトしている。このため、マージナルゾーン34の接合部44Bはマージナルゾーン34の接合部44Bに幅方向に延びる段差が存在せず、マージナルゾーン34に周方向に連続する非段差部のガイド面を構成している。
【0069】
図8は版胴シリンダ35に巻き付けられる樹脂凸版印刷版30Cの第三変形例を示す継ぎ目部39付近の接合状態を表す状態図である。
この樹脂凸版印刷版30Cは、第一実施形態に示された、樹脂凸版印刷版30と同様、中央領域に版面の画線部33が構成され、画線部33の両側にマージナルゾーン34が設けられる。樹脂凸版印刷版30Cが版胴シリンダ35に両面接着テープ36を介して巻き付けられると、画線部33の一端部(先端部)37側と画線部33の
他端部(後端部)側38とが突き合わされて継ぎ目部39が構成される。
【0070】
マージナルゾーン34は、一端部(先端部)側の外側が階段状に切り欠かれた凹部40Cが形成され、マージナルゾーンの他端部(後端部)側は逆階段状に一体に突出する凸部41Cが構成される。マージナルゾーン34の凹部40Cと凸部41Cとは互いに突き合わされて接合される接合部44が設けられる。マージナルゾーン34の接合部44Cは、その凹部40Cと凸部41Cは互いに補形形状に形成され、マージナルゾーン34の凹部40Cはその凸部41Cと突き合わされ、嵌め合わされて互いに補完関係に構成される。
【0071】
マージナルゾーン34の接合部44Cは樹脂凸版印刷版30Cの継ぎ目部39の幅方向に直線状に整合していない。マージナルゾーン34の接合部44Cは継ぎ目部39から版胴の回転方向に延びてシフトしている。このため、マージナルゾーン34の接合部44Cはマージナルゾーン34に連続する非段差部のガイド面を構成している。
【0072】
感光性樹脂版の版材10として、東洋紡株式会社製の商品名コスモライトQS114U、QS170F、およびQS284Fの3種類の版材10(10A,10B,10C)を用いてフレキソ印刷用の樹脂凸版印刷版30を製造した場合の例を説明する。製造された樹脂凸版印刷版30のレリーフ深度とフロア層とバック析出層との厚み寸法関係の例の測定データを
図9~
図11にそれぞれ示す。ここにフロア層は樹脂凸版印刷版30のベースフィルム11からバック析出層23までの積層部を言い、フロア層の層厚は樹脂凸版印刷版30の物理的、機械的、化学的強度を保つ上で重要である。
【0073】
(1)
図9は、コスモライトQS114Uのゴム系の感光性樹脂版の版材10Aから製造される樹脂凸版印刷版30Aのレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係を示す測定データ図である。この版材10Aは版厚1.14mmのフレキソ印刷用のCTP版材であり、版材サイズが900mm×1200mmでショアA硬度が81度の物を用いた。このCTP版材の厚み寸法は、ベースフィルム11が125μmのベース厚、接着剤層12が20μmの層厚、感光性樹脂版層13が995μmの層厚、アブレーションマスク14が2μmの厚さ、カバーフィルム15が100μmのカバー厚を備えたフレキソ版材10Aである。
【0074】
フレキソ版材10Aは、露光工程で活性光源から例えば光量13,000mj/cm2のレリーフ露光(主露光)を照射し、バック露光では光量374mj/cm2~9781mj/cm2と種々変えて照射した。レリーフ露光およびバック露光には紫外線源からのUV光を使用した。露光工程で、レリーフ露光とバック露光が照射された感光性樹脂版の版材10Aは続いて洗浄工程で洗浄液のスプレー噴射と洗浄ブラシユニットの旋回運動による洗浄ブラシ25のブラシ洗浄との水洗浄が行われる。この水洗浄により、版材10Aは感光性樹脂層13の未硬化の樹脂材料が硬化部(レリーフ像22、バック析出層23)から除去され、取り除かれる。未硬化の樹脂材料が除去されたフレキソ版材10Aから得られる樹脂凸版印刷版30は所要のリンス洗浄で表面洗浄され、ごみなどの異物が取り除かれ、続いて乾燥処理により、樹脂凸版印刷版30が乾燥され、ネバネバ等が取り除かれて樹脂凸版印刷版30が製造される。
【0075】
図9は感光性樹脂版の版材10Aから露光工程でバック露光の光量を種々変えることにより製造される樹脂凸版印刷版30のレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係の例を示す一覧リストである。この一覧リストから、No.5~No.12の測定結果では、樹脂凸版印刷版30のレリーフ深度が62μm以下と浅い。レリーフ深度が62μm以下の樹脂凸版印刷版30をフレキソ印刷装置の版胴シリンダに装着して印刷すると、樹脂凸版印刷版30のレリーフ像22の高さ(レリーフ深度)が低いため、印刷により被印刷物に地汚れが発生する恐れがあり好ましくない。したがってレリーフ像22のレリーフ深度は、樹脂凸版印刷版30の版面の粗さや版胴および圧胴の精度を考慮すると、110μm以上、好ましくは300μm~400μm以上必要となる。この樹脂凸版印刷版30はプラスチックフィルム等の軟包装フィルムや封筒、カートン、タグ、ラベルに適した樹脂凸版印刷版30を提供することができる。
【0076】
(2)
図10はコスモライトQS170Fのゴム系の感光性樹脂版の版材10Bから製造される樹脂凸版印刷版30のレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係を示す測定データ図である。この版材10Bはフレキソ印刷用のCTP版材であり、版材サイズが900mm×1200mmでショアA硬度が77度の物を用いた。CTP版材の厚み寸法は、ベースフィルム11が125μmのベース厚、接着剤層12が20μmの層厚、感光性樹脂版層13が1555μmの層厚、アブレーションマスク14が2μmの厚さ、カバーフィルム15が100μmのカバー厚を備えたフレキソ版材10Bである。
【0077】
感光性樹脂版の版材10Bは、露光工程で活性光源の紫外線源から例えば光量13,000mj/cm2のレリーフ露光(主露光)を照射し、バック露光では光量374mj/cm2~9781mj/cm2と種々変えて照射した。露光工程でレリーフ露光とバック露光を行って露光された感光性樹脂版の版材10Bは、続いて洗浄工程に送られ、この洗浄工程で洗浄液のスプレー噴射と洗浄ブラシユニットの洗浄ブラシの旋回運動によるブラシ洗浄とにより、水洗浄が行われる。この水洗浄により、版材10Bの感光性樹脂層13は、未硬化の樹脂材料が硬化部(レリーフ像22およびバック析出層23)から除去され、取り除かれる。未硬化の樹脂材料が除去された感光性樹脂版の版材10Bから、フレキソ版材10Aと同様にして樹脂凸版印刷版30が製造される。
【0078】
図10は、版厚1.70mmの感光性樹脂版の版材10Bから製造された樹脂凸版印刷版30のレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係の例を示す測定データ図である。この一覧リストから樹脂凸版印刷版30はフレキソ印刷の版胴シリンダに装着してフレキソ印刷してもレリーフ像のレリーフ深度は109μm~714μmの高さを有するので、露光寛容度が大きく、品質が優れた樹脂凸版印刷版30を提供することができる。フロア層は、約1mm~1.6mm程度の層厚を有し、バック析出層23は841μm~1446μmの層厚を備えるので、レリーフ像22を十分にサポートすることができ、物理的、機械的、化学的強度を備えたフレキシブルな樹脂凸版印刷版30を提供することができる。樹脂凸版印刷版30はプラスチックフィルムなどの包装フィルム、封筒、カートン、ラベルの印刷に適した印刷版を提供することができる。
【0079】
(3)
図11はコスモライトQS284Fのゴム系の感光性樹脂版の版材10Cから製造される樹脂凸版印刷版10Cのレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係を示す測定データ図である。この版材10Cはフレキソ印刷用のCTP版材であり、版材サイズが900mm×1200mmでショアA硬度が77度の物を用いた。CTP版材の厚み寸法は、ベースフィルム11が125mmのベース厚、接着剤層12が20μmの層厚、感光性樹脂版層13が2695μmの層厚、アブレーションマスク14が2μmの厚さ、カバーフィルム15が100μmのカバー厚を備えたフレキソ版材10Cである。
【0080】
フレキソ版材10Cは、露光工程で活性光源の紫外線源から例えば光量13,000mj/cm2のレリーフ露光(主露光)を照射し、バック露光ではUV光の光量374mj/cm2~9781mj/cm2と種々変えて照射した。露光工程でレリーフ露光とバック露光を行って露光された感光性樹脂版の版材10Cは、続いて洗浄工程に送られ、この洗浄工程で洗浄液のスプレー噴射と洗浄ブラシ25の旋回運動によるブラシ洗浄とにより、水洗浄が行われる。この水洗浄により、フレキソ版材10Cの感光性樹脂層13は、未硬化の樹脂材料が硬化部(レリーフ像22およびバック析出層23)から除去され、取り除かれる。未硬化の樹脂材料が除去されたフレキソ版材10Cから、以下、フレキソ版材10A、10Bと同様にして樹脂凸版印刷版30が製造される。
【0081】
図11は、版厚2.84mmのフレキソ版材は版材10Cから製造された樹脂凸版印刷版30のレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係の例を示す一覧リストである。この一覧リストから樹脂凸版印刷版30はフレキソ印刷装置の版胴シリンダに装着してフレキソ印刷してもレリーフ像22のレリーフ深度は668μm~929μmの高さを有し、1mm以下のレリーフ深度を有するので、耐刷性が良好で、露光寛容度が大きく、品質の優れた印刷版を提供することができる。フロア層の層厚も2mm程度を有し、バック析出層23も1766μm~2027μmの層厚を備えるので、レリーフ像22をバック析出層23で十分にサポートすることができ、物理的、機械的化学的強度を備えた樹脂凸版印刷版30を提供することができる。
【0082】
ところで、感光性樹脂版の版材10(10A,10B,10C)は、ゴム系のフレキソ版材が特許第5225327号公報記載の感光性樹脂版の版材(レタープレス版材)に較べ、露光工程で(主露光の)レリーフ露光やバック露光に活性光の大きなエネルギー光量が必要となることを知見した。例えば、版厚1.14mmのフレキソ版材では、レリーフ露光で13000mj/cm2、バック露光で374mj/cm2~4,559mj/cm2の活性光(UV光)のエネルギー光量が必要となる。ゴム系のフレキソ版材では、所要高さのレリーフ像22およびバック析出層23を得るために、レタープレス版材の10倍~30倍程度のレリーフ露光と10倍~70倍程度のバック露光のエネルギー光量が必要となることを知見した。
【0083】
また、ゴム系のフレキソ版材の感光性樹脂層13は、合成ゴムおよび液状ゴムのゴム成分を備えるため、ゴム弾性を有する。このため、フレキソ版材では、水現像工程で未硬化の樹脂材料を硬化部(レリーフ像22やバック析出層23)から除去するのに、洗浄ブラシ25でレタープレス版材の場合より強く押圧して旋回運動させ、ブラシ洗浄させる必要がある。フレキソ版材の感光性樹脂版層13に洗浄ブラシ25を強く押圧し、旋回運動させてブラシ洗浄すると、フレキソ版材は(磁性体)搬送ベルトで横滑りする恐れがある。しかしフレキソ版材は、両面接着テープやマグネットプレートの磁力により(磁性体
搬送ベルトに固定されているので、フレキソ版材の横滑りは有効的にかつ確実に防止することができる。
【0084】
さらに
図9~
図11には、版厚が1.14mm、1.70mmおよび2.84mmの3種類の感光性樹脂版の版材10A,10B,10Cから製造される樹脂凸版印刷版30の例を示した。感光性樹脂版の版材10は、版厚が3.00mm以上であっても、版厚10mm程度までの版材から同様にして樹脂凸版印刷版30が製造できるものと思われる。
【0085】
次に樹脂凸版印刷版凸版印刷版をフレキソ印刷装置50に適用した実施の形態について、
図12~
図18を参照して説明する。
フレキソ印刷装置50(Flexographic Press)は、インライン型、ドラム型およびスタック型の三種類の印刷装置50A,50B,50Cに大別される。フレキソ印刷装置50は、どのタイプの印刷装置50A,50B,50Cも4つの基本的構造、すなわち、繰出し部と印刷部と乾燥部と巻取り部とを共通して備える。特にフレキソ印刷装置50の大きな特徴は、印刷部の印刷ユニット51(51A,51B,51C)にある。
【0086】
インライン型フレキソ印刷装置50A(50)は、繰出しローラ52と巻取りローラ53との間に複数、例えば4個乃至8個の印刷ユニット51が直線的に間隔をおいて配置されており、各印刷ユニット51の下流側に乾燥ユニット54がそれぞれ設けられる。印刷部は各印刷ユニット51の配設毎に版胴55と独立した圧胴56とがそれぞれ対向しており、繰出しローラ52から繰り出される連続ウェブあるいは連続フォームの印刷媒体である被印刷物57は版胴55と圧胴56の間を通されて印刷される。印刷ユニット51で印刷された被印刷物57は、印刷ユニット51下流側で乾燥ユニット54を通る際にヒータ等で50°C~120°Cに加熱されて乾燥される。フレキソ印刷装置50Aは、順次、次段の印刷ユニット51および乾燥ユニット54に案内されていき、最終的に巻取りローラ53で巻き取られる。
【0087】
また、印刷部の各印刷ユニット51は、
図13に示すように、版胴55の樹脂凸版印刷版30にインキが供給されるインキング機構58と、版胴55および圧胴56とにより構成される。インキング機構58は、フレキソインキ59を貯留したインキ皿60と、貯留されたインキを送るインキ送りロールのファウンテンロール61と、インキ転位ロールのアニロックスロール62とを有し、ツーロール方式のインキング機構58である。各印刷ユニット51のインキ皿60には種々の色のフレキソインキ59が貯留されており、インキング機構58のファウンテンロール61を経てアニロックスロール62に供給されるインキは、版胴55の版面に均一に転位される。ツーロール方式のインキング機構58におけるインキ皮膜のコントロールは、アニロックスロール62の彫刻線数、彫刻の深さおよびセル形状で調整される一方、ファウンテンロール61とアニロックスロール62の間のニップ圧によりインキ供給量が調節制御される。
【0088】
ところで、インライン型フレキソ印刷装置50Aは、各印刷ユニット51間の距離(色間距離)を充分に確保することができるため、乾燥ユニット54の組み込みが容易で、被印刷物57の乾燥効率を良好に保つことができる。また、各印刷ユニット51は、版胴55と圧胴56とがそれぞれ対をなしており、版胴55は中空の版胴シリンダ35に両面接着テープ36を介して樹脂凸版印刷版30が巻き付けられ、装着される。中空の版胴シリンダ35に巻き付けられた樹脂凸版印刷版30は、
図3に示される形状を有する印刷版である。
【0089】
また、単一の樹脂凸版印刷版30を版胴シリンダ35に巻き付けたとき、
図3および
図13に示すように、樹脂凸版印刷版30の一端部(先端部)側とその他端部(後端部)側とが突き合わされる継ぎ目部39はマージナルゾーン34の接合部44の先端側に位置している。マージナルゾーン34の接合部44は、継ぎ目部44の幅方向に整列されておらず、回転方向にシフトして位置される。マージナルゾーン34の先端側凹部40と後端側凸部41とが突き合わされる幅方向継ぎ目部46は接合部44の回転方向後端側に位置する幅方向継ぎ目である。マージナルゾーン34の接合部44は樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39より回転方向後方側に延びており、マージナルゾーン34およびその接合部44は
接合部44の幅方向に延びる段差部が存在せず、版胴51の回転方向に段差部の無い非段差部のガイド面を構成している。
【0090】
マージナルゾーン34の接合部44は、その先端がマージナルゾーン34の後端側の凸部44で連続するなめらかなガイド面を構成しており、マージナルゾーン34の後端側はその先端側の凹部40の内側(すなわち画線部33側)が連続するなめらかなガイド面を構成している。このため、マージナルゾーン34の接合部44は、幅方向に延びる段差が存在せず、マージナルゾーン34の凹部40と凸部41とが突き合わされる凹凸接合によりマージナルゾーン34は周方向に段差の無い非段差部のガイド面を構成している。
【0091】
したがって、単一の樹脂凸版印刷版30が中空の版胴シリンダ35に巻き付けられたとき、樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39に段差が形成されていても、マージナルゾーン34およびその接合部44は継ぎ目部39の段差を吸収し、周方向に非段差部のガイド面が構成される。
【0092】
印刷媒体(印刷基材)である被印刷物57は、版胴55と圧胴56との間に通されて走行が案内され、樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39に段差が存在しても版胴55は圧胴56と協働し、バウンディング(踊り)やがたつきが発生することなく、円滑かつスムーズに回転される。
【0093】
版胴55と圧胴56との間に通される被印刷物57は、版胴55と圧胴56の回転に伴い、
図13、
図14に示すように、インキング機構58のアニロックスロール62から転位されたフレキソインキ59が被印刷物57に転写され、印刷される。その際、版胴55の(樹脂凸版印刷版30の)版面は、キスプレスにより印圧の押込み量が10μm~100μm程度の条件で印刷される。
印刷媒体である被印刷物57は版胴55と圧胴56との間に挟持されて走行が案内される。版胴55は回転する毎に被印刷物57が樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部および接合部44を通る。
【0094】
しかし、
図3に示される樹脂凸版印刷版30を版胴シリンダ35に巻き付けたフレキソ印刷装置50の版胴55では、印刷時に版胴55が回転し、版胴55と圧胴56の間に被印刷物57が100~300m/minの印刷速度で案内されて、被印刷物57に印刷が施されても版胴55は樹脂凸版印刷版30のマージナルゾーン34とその接合部44に案内されてスムーズに回転される。
マージナルゾーン34の接合部44は樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部44から回転方向(長手方向)に延びるガイド面を備えており、マージナルゾーン34の接合部44には、樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39と幅方向に直線状に整合したり、継ぎ目部39に整合して幅方向に直線状に延びる段差は存在しない。マージナルゾーン34の接合部44は版胴55の周方向に段差の無い非段差部のガイド面を構成している。このため、樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39に段差が存在しても、版胴55の回転は周方向に段差の無いマージナルゾーン34およびその接合部44の非段差部のガイド面で円滑かつスムーズに案内される。版胴55は、圧胴56との間に通される被印刷物57はキスプレスの押圧力(印圧)で印刷され、良好な印刷品質を施すことができる。
【0095】
また、中空の版胴シリンダ35に複数、例えば二枚の樹脂凸版印刷版30を巻き付けて構成される版胴48Aは、
図4(B)に示されている。この版胴48Aをフレキソ印刷装置50に設ける場合にも、
図4(A)に示される版胴48(55)と同じように、版胴48Aは樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39に段差が存在しても、
マージナルゾーン34の接合部44には樹脂凸版印刷版30の継ぎ目部39に整合して幅方向に直線状に延びる段差が存在しない。版胴48Aはマージナルゾーン34およびその接合部44の非段差部のガイド面で版胴48Aの回転が円滑にがたつくことなく案内される。したがって、版胴48Aは
図13で示される圧胴56との間を通される被印刷物57にキスプレスの接触圧でスムーズに印刷し、良好な印刷品質を被印刷物に施すことができる。
【0096】
図14は、ドラム型フレキソ印刷装置50Bを示す概略構成図である。このドラム型フレキソ印刷装置50Bを説明するにあたり、
図12に示されたインライン型フレキソ印刷装置50Aと同じ構成には同一符号を付し、重複説明を省略乃至簡略化する。ドラム型フレキソ印刷装置50Bは、中央の単胴あるいは共同圧胴である大きな圧胴65の周りに複数、例えば4個乃至8個の印刷ユニット51Aを間隔をおいて配設したものである。各印刷ユニット51Aの下流側に乾燥ユニット54Aが配設される。被印刷物57は圧胴65に沿って走行され、印刷ユニット51Aのフレキソインキ59で印刷され、乾燥ユニット54Aのヒータ加熱で乾燥される。印刷ユニット51Aのインキング機構58は
図15に示すようにツーロール式で、
図13に示す印刷ユニット51と同様にして被印刷物57は円滑かつスムーズに印刷される。
【0097】
しかして繰出しローラ52のロールから繰り出された印刷媒体の被印刷物57はガイドローラ66に案内されて単胴型ドラムの圧胴65に送られる。被印刷物57は、続いて圧胴65の周りに沿って走行され、各印刷ユニット51Aで順次印刷される一方、印刷ユニット51Aの後流側の乾燥ユニット54Aで加熱され、乾燥される。圧胴65に沿って走行される被印刷物57は、各印刷ユニット51Aの印刷で伸縮やたるみが起きにくい。このため、被印刷物57は連続フォームの紙や薄くて伸縮しやすい軟包装フィルムであっても精度良く印刷することができる。圧胴65は共同圧胴の大きなドラムであるため、被印刷物57の見当精度も良好に印刷することができる。
ドラム型フレキソ印刷装置50Bの各印刷ユニット51Aで印刷され、乾燥ユニット54Aで乾燥された被印刷物57は、ガイドローラ66を経て巻取りローラ52に送られて巻き取られる。
【0098】
また、印刷ユニット51Aは、
図14および
図15に示すフレキソ印刷装置50の例ではツーロール式のインキング機構58を用いた例を示したが、ツーロール式のインキング機構58に代えて、
図16に示すドクターブレード式のインキング機構58Aを使用してもよい。このドクターブレード式のインキング機構58Aは
図14に示された単胴型ドラムの圧胴65の周りにツーロール式のインキング機構58に代えて設けられる。
【0099】
ドクターブレード式のインキング機構58Aは、
図16に示すように、ナイロンなどの樹脂製あるいはスチール製で作成されたドクターブレード68をアニロックスロール62に外接させており、ドクターブレード68でアニロックスロール62により巻き上げられるフレキソインキ59のインキ量を調節制御している。ドクターブレード68でインキ量を調節制御することで、版胴55の印刷速度やインキ粘度に差があってもインキ供給量の差が少なく安定したインキ量を樹脂凸版印刷版30に供給することができる。このようにドクターブレード式インキング機構58Aでは安定したインキ量を版胴55の版面に供給することができるので、印刷ユニット51Bを用いたフレキソ印刷装置50ではロングラン印刷やプロセス印刷の印刷品質を安定させることができる。このドクターブレード式インキング機構58Aは
図12および
図13に示されるインライン型フレキソ印刷装置50Aに用いてもよい。
【0100】
また、ドラム型フレキソ印刷装置50Bは単胴型あるいは共同圧胴型の大径の圧胴65が用いられているが、この圧胴65に対向する各印刷ユニット51Aの版胴55は
図12および
図13に示される版胴55と同じ中空形状構造のものが使用される。版胴55に備えられる樹脂凸版印刷版30は、
図3に示される形状の印刷版が用いられる。このため、
図14~
図16に示される樹脂凸版印刷版30は中空の版胴シリンダ35に両面接着テープ36を介して巻き付けられ、固定される。ドラム型フレキソ印刷装置50Bは、各印刷ユニット51A,51Bの版胴55に備えられる。樹脂凸版印刷版30は継ぎ目部39に段差が存在しても両側のマージナルゾーン34およびその接合部44は、
図15および
図16に示すように、版胴55の周方向に段差の無い非段差部ガイド面を構成している。したがって大径の圧胴65に対向する版胴55は、非段差部のガイド面に案内されてバウンディング(踊り)やがたつきが発生することなく、スムーズかつ円滑に回転される。
図17はスタック型フレキソ印刷装置を示す概略構成図である。
このスタック型フレキソ印刷装置50C(50)を説明するにあたり、
図12に示されたインライン型フレキソ印刷装置50Aと同じ構成には同一符号を付して重複説明を省略乃至簡略化する。
【0101】
スタック型フレキソ印刷装置50Cは、複数個、例えば4個乃至8個の印刷ユニット511Cがスタック状に積み上げられるように配置されたものである。各印刷ユニット51C毎に独立した版胴55と圧胴56とが対向して設けられる。各印刷ユニット51Cの後流側に乾燥ユニット54が設置される。各印刷ユニット51Cの距離(色間距離)は長くとることができるので、各印刷ユニット51Cの後流側に乾燥ユニット54の組み込みを容易に行うことができ、設置床面積を少なくすることができる利点がある。
【0102】
スタック型フレキソ印刷装置50Cはフレキソ印刷装置50の標準型印刷装置であり、各印刷ユニット51Cは印刷ユニット毎に独立した版胴55と圧胴56とを備える。印刷ユニット51Cは
図18に示すように構成され、
図13に示される印刷ユニット51と同様、ファウンテンロール61とアニロックスロール62のツーロール方式のインキング装置58と、版胴55および圧胴56とにより構成される。印刷ユニット51Cはインキ皿60のフレキソインキ59がファウンテンロール61で取り出されてアニロックスロール62に供給される。各印刷ユニット51Cのインキ皿60に貯留された種々のインキ59がファウンテンロール61を経てアニロックスロール62から版胴55の版面に均一に供給される。版胴55の樹脂凸版印刷版30に転送されたインキは版胴55と圧胴56の間に通される被印刷物57にキスプレスの印圧で転写され、印刷される。
【0103】
スタック型フレキソ印刷装置50Cの各印刷ユニット51Cの各色のインキ61でそれぞれ印刷された被印刷物57は、各印刷ユニット51Cの後流側の乾燥ユニット54で乾燥されていき、ガイドローラ66を経て巻取りローラ13で巻き取られる。
【0104】
このスタック型フレキソ印刷装置50Cにおいても各印刷ユニット51Cを構成する版胴55は、
図18に示すように構成され、単一あるいは複数の樹脂凸版印刷版30が版胴シリンダ35に巻き付けられる。このため
図13に示された版胴55と同様、樹脂凸版印刷版30は継ぎ目部39に段差が存在しても版胴55の回転は両側のマージナルゾーン34とその接合部44の(段差のない)非段差部のガイド面で案内される。版胴55は、圧胴56との間に通される被印刷物57とキスプレスで接触して印刷される。版胴55は、樹脂凸版印刷版30が両側のマージナルゾーン34およびその接合部44に案内されて、バウンディング(踊り)やがたつきが発生することなく、円滑かつスムーズに回転される。したがって、被印刷物57は、バウンディングによる掠れや濃淡が生じることなく印刷されるので、印刷品質が良好な印刷を印刷媒体である被印刷物に施すことができる。
【0105】
なお、フレキソ印刷装置50(50A,50B,50C)では、種々の色のフレキソインキ59を使用して各印刷ユニット51(51A,51B,51C)により印刷される。フレキソ印刷装置50は、溶剤の種類に応じて水性、アルコール性、溶剤性の三種類に大別され、好適なものが使用される。最近では火災に対する安全性、衛生的な作業環境、印刷媒体(被印刷体)の被印刷物57まで環境や安全性に優れた水性インキが使用される傾向にある。
【0106】
また、本発明にかかる実施の形態では、樹脂凸版印刷版は、感光性樹脂版のフレキソ版材から製版されるフレキソ用樹脂凸版印刷版の例を説明したが、感光性樹脂版はレタープレス版材から製版されるレタープレス用樹脂凸版印刷版を用いることもできる。
【0107】
さらに樹脂凸版印刷版は矩形状に製版される単一式のフレキソ用樹脂凸版印刷版だけでなく、多数枚の樹脂凸版印刷版を接続して長尺上に構成される無端状の樹脂凸版印刷版としてもよく、また長尺(5m~7m)の樹脂凸版印刷版を接続して構成されるレタープレス用の樹脂凸版印刷版としてもよい。
加えて本発明にかかる実施の形態では、樹脂凸版印刷版はフレキソ印刷装置の版胴に使用した例を説明したが、樹脂凸版印刷版はレタープレス印刷装置の版胴に用いることもできる。
【符号の説明】
【0108】
10、10A~10C…感光性樹脂版の版材
11…ベースフィルム
12…接着剤層
13…感光性樹脂層
14…アブレーションマスク
15…カバーフィルム
16…フレームムベース
18…感光性樹脂凸版印刷版
19…(透明)フィルム
20…活性光源
22…レリーフ像
23…バック析出層
25…洗浄ブラシ
26…乾燥機
30、30A~30C…樹脂凸版印刷版
33…画線部
34…マージナルゾーン
35…版胴シリンダ
36…両面接着テープ
37…一端部(先端部)
38…他端部(後端部)
39…継ぎ目部
40…マージナルゾーンの凹部
41…マージナルゾーンの凸部
44…接合部
45…幅方向凹部
46…マージナルゾーンの幅方向継ぎ目部
48、48(A)…版胴
50、50A~50C…フレキソ印刷装置
51,51A…印刷ユニット
52…繰出しローラ
53…巻取りローラ
54、54A…乾燥ユニット
55…版胴
56…圧胴
57…被印刷物(印刷媒体)
58、58A…インキング機構
59…フレキソインキ
60…インキ皿
61…ファウンテンロール(インキ送りロール)
62…アニロックスロール(インキ転位ロール)
68…ドクターブレード