(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電力システムおよび電力システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20240112BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240112BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20240112BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20240112BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240112BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240112BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20240112BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240112BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240112BHJP
H01M 8/18 20060101ALN20240112BHJP
【FI】
H02J3/46
C25B9/00 A
C25B15/02
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04313
H01M8/04858
H01M8/0656
H02J3/38 120
H02J3/38 130
H02J7/35 G
H02J7/35 K
H02J15/00 D
H02J15/00 G
H01M8/10 101
H01M8/12 101
H01M8/18
(21)【出願番号】P 2019032703
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-09-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2018080689
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智規
(72)【発明者】
【氏名】清水 敦志
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】丸山 高政
【審判官】稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-195346(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013751(WO,A1)
【文献】特開2013-93934(JP,A)
【文献】特開2011-232903(JP,A)
【文献】特開2007-299200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J
C25B
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
燃料電池と、
建物内に人がいることを検知する検知器と、
前記検知器で検知された情報に基づき、前記蓄電池および前記燃料電池のそれぞれから前記建物内に設けられた電力負荷への電力供給の優先度を決定す
る制御器と
、を備え
、
前記検知器で建物内に人がいることが検知されたとき、前記制御器は、前記蓄電池よりも前記燃料電池を優先して、前記電力負荷へ電力を供給させ、前記検知器で建物内に人がいることが検知されないとき、前記制御器は、前記燃料電池よりも前記蓄電池を優先して、前記電力負荷へ電力を供給させる、電力システム。
【請求項2】
建物内に人がいることを検知する検知器で検知された情報を受信するステップと、
前記検知器で建物内に人がいることが検知されたとき、蓄電池よりも燃料電池を優先して、前記建物内に設けられた電力負荷へ電力を供給させるステップと、
前記検知器で建物内に人がいることが検知されないとき、前記燃料電池よりも前記蓄電池を優先して、前記電力負荷へ電力を供給させるステップと、
を備える電力システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーで得られた電力を建物に設けられた蓄電池に供給する様々な技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、太陽光発電装置と蓄電池に人の検出手段を備えて、系統から供給される電力の電力料金情報を取得と、蓄電池に充電されている蓄電量の電力料金の平均値から経済的な蓄電池の充放電を行う制御と、人の検出情報に基づいた複数のモードから設定して行われる建物内の設備への電力供給と、が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、太陽光発電装置から施設への電力供給が行われない余剰電力を、日中に蓄電池と水素製造装置とにより電気と水素で貯蔵して、夜間に燃料電池と蓄電池からの電力を制御する制御手段により、発電量の予測値と電力需要量の予測値とに基づいて、日中の蓄電池と水素製造装置に供給する電力を決定すること、および、夜間の蓄電池と燃料電池から施設に供給する電力を決定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5547902号公報
【文献】特許第6189448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来例は、再生可能エネルギーで得られた電力を短期のエネルギー貯蔵に適した装置および長期のエネルギー貯蔵に適した装置に適切に貯蔵することについては検討されていない。また、従来例は、短期のエネルギー出力に適した装置および長期のエネルギー出力に適した装置から建物に設けられた電力負荷に適切に電力供給することについても検討されていない。
【0007】
本開示の一態様(aspect)は、このような事情に鑑みてなされたものであり、再生可能エネルギーで得られた電力を短期のエネルギー貯蔵に適した装置および長期のエネルギー貯蔵に適した装置に適切に貯蔵し得る電力システムを提供する。また、本開示の一態様は、短期のエネルギー出力に適した装置および長期のエネルギー出力に適した装置から建物に設けられた電力負荷に適切な電力供給を行い得る電力システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示の一態様の電力システムは、蓄電池と、水電解装置と、前記水電解装置で生成された水素を貯える水素貯蔵器内の水素を用いて発電する燃料電池と、建物内に人がいることを検知する検知器と、前記検知器で検知された情報に基づき、再生可能エネルギーを用いた発電装置から前記蓄電池および前記水電解装置のそれぞれへの電力供給の優先度を決定する第1の制御と、前記検知器で検知された情報に基づき、前記蓄電池および前記燃料電池のそれぞれから前記建物内に設けられた電力負荷への電力供給の優先度を決定する第2の制御と、の少なくともいずれか一方を実行する制御器とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様の電力システムは、再生可能エネルギーで得られた電力を短期のエネルギー貯蔵に適した装置および長期のエネルギー貯蔵に適した装置に適切に貯蔵し得るという効果を奏する。また、本開示の一態様の電力システムは、短期のエネルギー出力に適した装置および長期のエネルギー出力に適した装置から建物に設けられた電力負荷に適切な電力供給を行い得るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、実施形態の電力システムの一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態の電力システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の第1変形例の電力システムの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の第2変形例の電力システムの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の第3変形例の電力システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
短期のエネルギー貯蔵およびエネルギー出力に適した装置として、例えば、蓄電池を挙げることができる。また、長期のエネルギー貯蔵およびエネルギー出力に適した装置として、例えば、水電解装置、水素貯蔵器および燃料電池を備える蓄水素エネルギー装置を挙げることができる。
【0012】
つまり、蓄電池は、蓄水素エネルギー装置に比べて、蓄電容量が小さいが、高エネルギー変換効率で大電力を充放電できるので、短期のエネルギー貯蔵およびエネルギー出力に適している。これに対して、蓄水素エネルギー装置は、蓄電池に比べて受電および発電可能な最大電力が小さいが、蓄電容量が大きいので、長期のエネルギー貯蔵およびエネルギー出力に適している。
【0013】
ここで、建物に、上記の蓄電池と蓄水素エネルギー装置とを併設するとき、建物内に人が存在する場合とそうでない場合において、蓄電池および蓄水素エネルギー装置のそれぞれへの再生可能エネルギーで得られた電力供給の優先度を決定することで電力システムの高効率な電力制御が可能であることを見出した。また、建物内に人が存在する場合とそうでない場合において、蓄電池および蓄水素エネルギー装置のそれぞれから建物に設けられた電力負荷への電力供給の優先度を決定することで電力システムの高効率な電力制御が可能であることを見出した。
【0014】
すなわち、本開示の第1態様の電力システムは、蓄電池と、水電解装置と、水電解装置で生成された水素を貯える水素貯蔵器内の水素を用いて発電する燃料電池と、建物内に人がいることを検知する検知器と、検知器で検知された情報に基づき、再生可能エネルギーを用いた発電装置から蓄電池および水電解装置のそれぞれへの電力供給の優先度を決定する第1の制御と、検知器で検知された情報に基づき、蓄電池および燃料電池のそれぞれから建物内に設けられた電力負荷への電力供給の優先度を決定する第2の制御と、の少なくともいずれか一方を実行する制御器と、を備える。
【0015】
かかる構成によると、本態様の電力システムは、再生可能エネルギーで得られた電力を短期のエネルギー貯蔵に適した蓄電池および長期のエネルギー貯蔵に適した水電解装置に適切に貯蔵し得る。これにより、電力システムの高効率な電力制御が行われる。
【0016】
また、本態様の電力システムは、短期のエネルギー出力に適した蓄電池および長期のエネルギー出力に適した燃料電池から建物に設けられた電力負荷に適切な電力供給を行い得る。これにより、電力システムの高効率な電力制御が行われる。
ここで、第1の制御と、第2の制御の少なくとも一方を実行するとは、第1の制御、第2の制御、または第1の制御および第2の制御を実行することを意味する。
【0017】
本開示の第2態様の電力システムは、第1態様の電力システムにおいて、検知器で建物に人がいることが検知されたとき、制御器は、第1の制御において、水電解装置よりも蓄電池を優先して、発電装置からの電力を受電させる。
【0018】
検知器で建物内に人がいることが検知されたときは、この検知の以降に、建物に設けられた電力負荷の消費電力が増えることが予測される。このとき、本態様の電力システムは、水電解装置よりも高エネルギー変換効率で大電力を受電可能な蓄電池を優先して、発電装置の余剰電力を受電させることで、蓄電池の蓄電量を可能な限り増やして、電力負荷の消費電力の増加に備えることができる。
【0019】
本開示の第3態様の電力システムは、第1態様または第2態様の電力システムにおいて、検知器で建物内に人がいることが検知されないとき、制御器は、第1の制御において、蓄電池よりも水電解装置を優先して、発電装置からの電力を受電させる。
【0020】
検知器で建物内に人がいることが検知されないときは、この検知の以降の暫くの間は、建物に設けられた電力負荷の消費電力が増えないことが予測される。つまり、発電装置の余剰電力が生じている期間が暫くは継続すると予測される。
【0021】
このとき、仮に、蓄水素エネルギー装置よりも蓄電容量が小さい蓄電池を優先して、発電装置からの電力を受電させると、早期に蓄電池が満充電状態になる可能性がある。すると、発電装置の余剰電力が生じている残りの期間において、蓄電池よりも受電可能な最大電力が小さい水電解装置のみで、この余剰電力を用いて蓄水素(受電)を行う必要がある。この場合、水電解装置で受電できなかった余剰電力は、系統に送電される可能性があるので、発電装置の余剰電力が生じている期間における、蓄電池および蓄水素エネルギー装置の蓄電量が低下する恐れがある。
【0022】
そこで、本態様の電力システムは、検知器で建物内に人がいることが検知されないときは、蓄電池よりも水電解装置を優先して、発電装置の発電電力を受電させることで、蓄電池が満充電になるまでの期間を延ばすことができる。その結果、発電装置の余剰電力が生じている期間のうち、蓄電池および水電解装置の両方で受電する期間が延びる。よって、発電装置の余剰電力が生じている期間において、系統に送電される電力量を低減することができる。これにより、本態様の電力システムは、検知器で建物内に人がいることが検知されないときは、蓄電池に優先的に発電装置の発電電力を受電させる場合に比べて、蓄電池および蓄水素エネルギー装置の蓄電量を増加することができる。
【0023】
本開示の第4態様の電力システムは、第1態様から第3態様のいずれか一つの電力システムにおいて、検知器で建物内に人がいることが検知されたとき、制御器は、第2の制御において、蓄電池よりも燃料電池を優先して、建物に設けられた電力負荷へ電力を供給させる。
【0024】
検知器で建物内に人がいることが検知されたときは、この検知の以降に、建物に設けられた電力負荷の消費電力が増えることが予測される。そこで、発電装置の余剰電力がゼロである場合は、蓄電池よりも応答性が遅い燃料電池を起動させ、燃料電池から電力負荷に優先的に電力を供給することで、蓄電池の電力を温存できる。これにより、本態様の電力システムは、蓄電池から優先的に電力負荷へ電力を供給する場合に比べて、蓄電池および燃料電池から電力負荷に供給する電力を増やすことができる。この点について、さらに詳しく説明する。
【0025】
上記のとおり、蓄電池は、蓄水素エネルギー装置に比べて、蓄電容量が小さいが、高エネルギー変換効率で大電力を出力できる。
【0026】
従って、仮に蓄電池で優先的に放電させると、蓄電池の蓄電量が早期にゼロになる可能性がある。すると、発電装置の余剰電力がゼロである場合の残りの期間において、蓄水素エネルギー装置の燃料電池のみで発電が行われる。ここで、蓄水素エネルギー装置は、蓄電池に比べて、蓄電容量が大きく、かつ燃料電池の最大電力が小さいので、上記の残りの期間において、蓄水素エネルギー装置の水素貯蔵器内の水素が十分に消費されないまま、水素が残存する可能性がある。
【0027】
そこで、本実施形態の電力システムは、燃料電池で優先的に発電させている。一例として、電力負荷の消費電力のうちベースになる電力を燃料電池から供給させ、電力負荷の消費電力のうち短期的な変動部分の電力を蓄電池から供給させることで、両者から供給する電力を増やすことができる。これにより、蓄電池の蓄電量がゼロになるまでの期間を延ばすことが可能になり、その結果、上記の残りの期間において、蓄水素エネルギー装置の水素貯蔵器内の水素消費量を増加させることができる。つまり、蓄電池および燃料電池から電力負荷に供給する電力を増やすことができる。
【0028】
本開示の第5態様の電力システムは、第1態様から第4態様のいずれか一つの電力システムにおいて、検知器で建物内に人がいることが検知されないとき、制御器は、第2の制御において、燃料電池よりも蓄電池を優先して、電力負荷へ電力を供給させる。
【0029】
検知器で建物内に人がいることが検知されないときは、この検知の以降の暫くの間は、建物に設けられた電力負荷の消費電力が増えないことが予測される。つまり、この場合、蓄電池から電力負荷に優先的に電力を供給しても、蓄電池の蓄電容量の範囲内で電力負荷の消費電力を賄うことができる。また、このとき、仮に、燃料電池から電力負荷に優先的に電力を供給する場合、燃料電池における断続的な低出力かつ低効率な運転が行われる可能性があるが、本態様の電力システムは、上記の第2の制御により、このような可能性を低減できる。
【0030】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の上記の各態様の具体例について説明する。以下で説明する具体例は、いずれも上記の各態様の一例を示すものである。よって、以下で示される形状、材料、数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、請求項に記載されていない限り、上記の各態様を限定するものではない。また、以下の構成要素のうち、本態様の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比などについては正確な表示ではない場合がある。
【0031】
(実施形態)
[装置構成]
図1Aおよび
図1Bは、実施形態の電力システムの一例を示す図である。
図1Bには、
図1の第1電力変換器5および第2電力変換器12の具体例が示されている。
【0032】
図1Aに示す例では、電力システム100は、建物1と、発電装置2と、蓄電池3と、蓄水素エネルギー装置4と、第1電力変換器5と、系統6、制御器20と、を備える。ここで、蓄水素エネルギー装置4は、第2電力変換器12と、燃料電池11と、水素貯蔵器10と、水電解装置9と、を備える。なお、本実施形態の電力システム100では、
図1Bに示すように、第1電力変換器5は、例えば、DC/DC変換器5AとDC/AC変換器5Bとを備える。第2電力変換器12は、例えば、DC/DC変換器12Cを備える。また、本実施形態の電力システム100では、建物1の分電盤7に電力計8が設けられている。
【0033】
発電装置2は、再生可能エネルギーを用いて発電する装置である。発電装置2により、必要に応じて、発電装置2で発電した電力が、建物1、蓄電池3および蓄水素エネルギー装置4に供給される。発電装置2は、このような発電機能を備えていれば、どのような種類であってもよい。発電装置2として、例えば、太陽電池を挙げることができる。なお、発電装置2が、太陽電池である場合、発電装置2を建物1の屋上に設置してもよい。
【0034】
蓄電池3は、充放電を繰り返して使用できる電池である。蓄電池3により、必要に応じて、蓄電池3に蓄電した電力が建物1に供給される。蓄電池3は、このような蓄電機能を備えていれば、いずれの種類であってもよい。
【0035】
水電解装置9は、水の電気分解により水素を生成する装置である。なお、図示を省略するが、水電解装置9で水素を生成するのに必要な機器が適宜、設けられる。例えば、水電解装置9に水を供給するための水ポンプ、水の電気分解により発生したプロトンを伝導するための電解質膜などが設けられていてもよい。また、電解質膜の主面のそれぞれに触媒層が設けられてもよい。そして、これらの触媒層の間に電圧を印加する電圧印加器が設けられていてもよい。
【0036】
水素貯蔵器10は、水電解装置9の水の電気分解により生成された水素を貯蔵する装置である。水素貯蔵器10は、このような水素を貯蔵することができれば、どのような構成であってもよい。水素貯蔵器10として、例えば、タンクを挙げることができる。
【0037】
燃料電池11は、水電解装置9で生成された水素を貯える水素貯蔵器10内の水素を用いて発電する装置である。燃料電池11により、必要に応じて、燃料電池11で発電した電力が建物1に供給される。燃料電池11は、このような発電機能を備えていれば、いずれの種類であってもよい。なお、燃料電池11としては、例えば、高分子電解質形燃料電池、固体酸化物形燃料電池、燐酸形燃料電池などを挙げることができる。
【0038】
また、水電解装置9と燃料電池11は、両方の水素製造と発電の機能を兼ね備えたリバーシブル燃料電池でも良い。機能的に劣る部分もあるが、小型化が可能で、例えば、このリバーシブル燃料電池と水素貯蔵器10との接続により、水素貯蔵器10による水素貯蔵と、リバーシブル燃料電池による水素製造と水素を用いた発電を行うことができる。
【0039】
検知器は、建物1内に人がいることを検知するセンサである。検知器は、建物1内に人がいることを検知するセンサであれば、どのようなセンサであってもよい。例えば、
図1Aおよび
図1Bに示すように、かかる検知器は、分電盤7から建物1に供給される電力を検知する電力計8であってもよい。電力計8の検知信号は、適宜の信号処理回路(図示せず)により信号処理が行われた後、制御器20に送信される。なお、建物1内に人がいることを検知する検知器の他の例は、変形例で説明する。
【0040】
検知器が、本例の如く、電力計8である場合、電力計8の検知信号が、予め設定している所定の設定値を上回るか否かに基づいて、制御器20は、建物1内に人がいるかどうかを判定することができる。つまり、電力計8の検知信号が設定値以下の場合は、建物1内に人がいないと判定され、電力計8の検知信号が設定値を上回る場合は、建物1内に人がいると判定される。
【0041】
なお、上記の設定値は、例えば、分電盤7における電力線毎に複数、設定されている方が望ましい。つまり、建物1全体で人がいるかどうかが判定されてもよいが、建物1内の個々の部屋、エリアのそれぞれで人がいるかどうかが判定される方が望ましい。
【0042】
また、上記では、電力計8の検知信号と設定値との間の大小関係の比較により建物1内に人がいるかどうかを判定しているが、これに限定されない。例えば、制御器20は、電力の変化により建物1内に人がいるかどうかを判定してもよい。一例として、瞬時に、500Wから1kWの消費電力の変化があると、人の操作によって沸騰ポットが操作されたことを認識できるので、制御器20は、建物1内に人がいると判定できる。なお、沸騰ポットおよびその消費電力は例示であって、本例に限定されない。他の電気機器の使用時についても、予め消費電力の変化を把握できるので、かかる消費電力の変化により、建物1内に人がいるかどうかが判定され得る。
【0043】
次に、図面を参照しながら、電力システム100の各機器の配線および配管の構成の一例について説明する。
【0044】
発電装置2および蓄電池3はそれぞれ、第1電力変換器5のDC/DC変換器5Aと配線2aおよび配線3aのそれぞれにより接続されている。また、第1電力変換器5のDC/DC変換器5AとDC/AC変換器5Bとが内部配線5cにより接続され、系統6の配電線6aは、このDC/AC変換器5Bと配線7aにより接続されている。そして、系統6は、上記の配電線6aにより分電盤7と接続されている。ここで、電力計8は、分電盤7における一つまたは複数の電力信号を受信可能なように接続線(図示せず)により接続されている。建物1内では、分電盤7から建物1内の配電網(図示せず)が設けられていてもよい。つまり、分電盤7からは建物1内の複数の部屋またはエリアにそれぞれ電力線が配線されていて、これらの部屋またはエリアのそれぞれにおける消費電力が、電力計8により取得できるように構成されていてもよい。
【0045】
また、第1電力変換器5のDC/DC変換器5Aと第2電力変換器12のDC/DC変換器12Cとが、配線4aにより接続されている。
【0046】
蓄水素エネルギー装置4においては、水電解装置9および燃料電池11がそれぞれ、第2電力変換器12のDC/DC変換器12Cと配線12aおよび配線12bのそれぞれにより接続されている。また、水電解装置9は、水素貯蔵器10と配管9aで接続され、水素貯蔵器10は、燃料電池11と配管10aで接続されている。これにより、水電解装置9で生成された水素を水素貯蔵器10に一時的に貯蔵することができる。また、このような水素を適時に、水素貯蔵器10から燃料電池11の発電原料として供給することができる。
【0047】
以上により、発電装置2で発電した電力(直流)は、適時に、第1電力変換器5のDC/DC変換器5Aを介して蓄電池3に供給されるとともに、第1電力変換器5のDC/DC変換器5Aおよび第2電力変換器12のDC/DC変換器12Cを介して水電解装置9に供給される。すると、このとき、蓄電池3により充電が行われる。また、水電解装置9により、水の電気分解で水素が生成される。
【0048】
また、発電装置2で発電した電力(直流)は、適時に、第1電力変換器5のDC/DC変換器5Aおよび第1電力変換器5のDC/AC変換器5Bをこの順に送電され、DC/AC変換器5BにおいてDCからACに変換される。そして、DC/AC変換器5Bからの電力(交流)は、系統6の配電線6aに供給される。これにより、発電装置2で発電した電力を、必要に応じて、建物1の分電盤7に供給することも系統6に逆潮流させることもできる。
【0049】
また、蓄電池3で放電した電力(直流)は、適時に、第1電力変換器5のDC/DC変換器5Aおよび第1電力変換器5のDC/AC変換器5Bをこの順に送電され、DC/AC変換器5BにおいてDCからACに変換される。そして、DC/AC変換器5Bからの電力(交流)は、系統6の配電線6aに供給される。これにより、蓄電池3で放電した電力を、建物1の分電盤7に供給することができる。
【0050】
また、燃料電池11で発電した電力(直流)は、第2電力変換器12のDC/DC変換器12C、第1電力変換器5のDC/DC変換器5Aおよび第1電力変換器5のDC/AC変換器5Bをこの順に送電され、DC/AC変換器5BにおいてDCからACに変換される。そして、DC/AC変換器5Bからの電力(交流)は、系統6の配電線6aに供給される。これにより、燃料電池11で発電した電力を、建物1の分電盤7に供給することができる。
【0051】
制御器20は、電力計8で検知された情報に基づき、再生可能エネルギーを用いた発電装置2から蓄電池3および水電解装置9のそれぞれへの電力供給の優先度を決定する第1の制御と、電力計8で検知された情報に基づき、蓄電池3および燃料電池11のそれぞれから建物1に設けられた電力負荷への電力供給の優先度を決定する第2の制御と、の少なくともいずれか一方を実行する。なお、制御器20は、電力システム100の全体の動作を制御してもよい。
【0052】
制御器20は、制御機能を有するものであれば、どのような構成であってもよい。制御器20は、例えば、演算回路(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶回路(図示せず)と、を備える。演算回路として、例えば、MPU、CPUなどを挙げることができる。記憶回路として、例えば、メモリなどを挙げることができる。制御器20は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
【0053】
(動作)
以下、図面を参照しながら、本実施形態の電力システム100の動作の一例について説明する。
【0054】
以下の動作は、制御器20の演算回路が、制御器20の記憶回路から読みだした制御プログラムにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器20で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。
【0055】
発電装置2の発電中、発電装置2の発電電力により建物1に設けられた電力負荷の消費電力を賄うことができる場合は、第1電力変換器5から電力負荷の消費電力が分電盤7に供給されるとともに、発電装置2の発電電力のうちの余剰電力が、必要に応じて、蓄電池3、水電解装置9および系統6のうちの少なくともいずれか一つに供給される。このとき、本実施形態の電力システム100では、電力計8で検知された情報に基づき、再生可能エネルギーを用いた発電装置2から蓄電池3および水電解装置9のそれぞれへの電力供給の優先度を決定する第1の制御が行われる。なお、第1の制御の具体例は、第1実施例で説明する。
【0056】
また、発電装置2の発電中、発電装置2の発電電力により建物1に設けられた電力負荷の消費電力を賄うことができない場合は、電力負荷の消費電力のうちの不足分が、必要に応じて、蓄電池3、燃料電池11および系統6のうちの少なくともいずれか一つから分電盤7に供給される。また、発電装置2の発電停止中は、建物1に設けられた電力負荷の消費電力は、必要に応じて、蓄電池3、燃料電池11および系統6のうちの少なくともいずれか一つから分電盤7に供給される。これらの場合、本実施形態の電力システム100では、電力計8で検知された情報に基づき、蓄電池3および燃料電池11のそれぞれから建物1に設けられた電力負荷への電力供給の優先度を決定する第2の制御が行われる。なお、第2の制御の具体例は、第2実施例で説明する。
【0057】
以上のとおり、本実施形態の電力システム100は、再生可能エネルギーで得られた電力を短期のエネルギー貯蔵に適した蓄電池3および長期のエネルギー貯蔵に適した水電解装置9に適切に貯蔵し得る。これにより、電力システム100の高効率な電力制御が行われる。
【0058】
また、本実施形態の電力システム100は、短期のエネルギー出力に適した蓄電池3および長期のエネルギー出力に適した燃料電池11から建物に設けられた電力負荷に適切な電力供給を行い得る。これにより、電力システム100の高効率な電力制御が行われる。
【0059】
(第1実施例)
本実施例の電力システム100は、以下に説明する制御器20の制御内容以外は、実施形態の電力システム100と同様である。
【0060】
電力計8で建物1内に人がいることが検知されたとき、制御器20は、上記の第1の制御において、水電解装置9よりも蓄電池3を優先して、再生可能エネルギーを用いた発電装置2からの電力を受電させる。
【0061】
電力計8で建物1内に人がいることが検知されないとき、制御器20は、上記の第1の制御において、蓄電池3よりも水電解装置9を優先して、再生可能エネルギーを用いた発電装置2からの電力を受電させる。
【0062】
以下の表1には、制御器20による第1の制御の一例が示されている。なお、本実施例で使用する記号を以下に定義する。
【0063】
<記号の定義>
・Ws:発電装置2の余剰電力
・Wsix:蓄電池3に充電可能な最大電力
・Whix:水電解装置9に受電可能な最大電力
Wsixは、例えば、蓄電池3を充電する充電器(図示せず)の最大出力に対応してもよい。また、Whixは、例えば、第2電力変換器12の最大出力に対応してもよい。
【0064】
【0065】
上記の表1には、発電装置2で余剰電力Wsが生じている場合(Ws>0の場合)の電力制御が記載されている。
【0066】
表1の上段に示すように、電力計8で建物1内に人がいることが検知されると、まず、水電解装置9よりも蓄電池3を優先して、発電装置2の余剰電力Wsの範囲内で、最大電力Wsixまで蓄電池3で充電(蓄電)が行われる。つまり、余剰電力Wsが最大電力Wsixよりも小さい場合(Ws<Wsixの場合)、蓄電池3に余剰電力Wsの全量が供給され、水電解装置9に余剰電力Wsが供給されない。
【0067】
一方、余剰電力Wsが最大電力Wsixよりも大きい場合(Ws>Wsixの場合)、余剰電力Wsのうちの残りの電力(Ws-Wsix)の範囲内で、最大電力Whixまで水電解装置9に受電させる。すると、水電解装置9で生成された水素が水素貯蔵器10に貯えられることで、蓄水素エネルギー装置4において、蓄水素(蓄電)が行われる。
【0068】
なお、余剰電力Wsが最大電力Wsixおよび最大電力Whixの総和よりも大きい場合(Ws>(Wsix+Whix))の場合、電力(Ws-Wsix-Whix)が系統6に送電される(例えば、売電される)。
【0069】
以上の電力制御が行われる理由は以下の通りである。
【0070】
電力計8で建物1内に人がいることが検知されたときは、この検知の以降に、建物1に設けられた電力負荷の消費電力が増えることが予測される。このとき、水電解装置9よりも高エネルギー変換効率で大電力を受電可能な蓄電池3を優先して、発電装置2の余剰電力Wsを受電させることで、蓄電池3の蓄電量を可能な限り増やして、電力負荷の消費電力の増加に備えることができる。
【0071】
次に、表1の下段に示すように、電力計8で建物1内に人がいることが検知されない場合、まず、蓄電池3よりも水電解装置9を優先して、発電装置2の余剰電力Wsの範囲内で、最大電力Whixまで水電解装置9に受電させる。つまり、余剰電力Wsが最大電力Whixよりも小さい場合(Ws<Whixの場合)、水電解装置9に余剰電力Wsの全量が供給され、蓄電池3に余剰電力Wsが供給されない。すると、水電解装置9で生成された水素が水素貯蔵器10に貯えられることで、蓄水素エネルギー装置4において、蓄水素(蓄電)が行われる。
【0072】
一方、余剰電力Wsが最大電力Whixよりも大きい場合(Ws>Whixの場合)、余剰電力Wsのうちの残りの電力(Ws-Whix)の範囲内で、最大電力Wsixまで蓄電池3で充電(蓄電)が行われる。
【0073】
なお、余剰電力Wsが最大電力Wsixおよび最大電力Whixの総和よりも大きい場合(Ws>(Wsix+Whix))の場合、電力(Ws-Wsix-Whix)が系統6に送電される(例えば、売電される)。
【0074】
以上の電力制御が行われる理由は以下の通りである。
【0075】
検知器で建物1内に人がいることが検知されないときは、この検知の以降の暫くの間は、建物1に設けられた電力負荷の消費電力が増えないことが予測される。つまり、発電装置2の余剰電力Wsが生じている期間が暫くは継続すると予測される。
【0076】
このとき、仮に、蓄水素エネルギー装置4(水電解装置9および水素貯蔵器10)よりも蓄電容量が小さい蓄電池3を優先して、発電装置2の発電電力を受電させると、早期に蓄電池3が満充電状態になる可能性がある。すると、発電装置2の余剰電力Wsが生じている残りの期間において、蓄電池3よりも受電可能な最大電力が小さい水電解装置9のみで、この余剰電力Wsを用いて蓄水素(受電)を行う必要がある。この場合、水電解装置9で受電できなかった余剰電力Wsは、系統6に送電される可能性があるので、発電装置2の余剰電力Wsが生じている期間における、蓄電池3および蓄水素エネルギー装置4の蓄電量が低下する恐れがある。
【0077】
なお、蓄水素エネルギー装置4の蓄電量とは、電力を用いて水電解装置9により水の電気分解で生成することで水素貯蔵器10に貯えられる蓄水素量を、燃料電池11の発電量として換算した値に相当する。蓄水素エネルギー装置4の蓄電容量とは、水素貯蔵器10の蓄水素容量を燃料電池11の発電量として換算した値に相当する。また、蓄電池3および蓄水素エネルギー装置4の蓄電量とは、発電装置2の余剰電力Wsを用いた蓄電池3の充電量と、上記の蓄水素エネルギー装置4の蓄電量との総和に相当する。
【0078】
そこで、本実施形態の電力システム100は、電力計8で建物1内に人がいることが検知されないときは、蓄電池3よりも水電解装置9を優先して、発電装置2の発電電力を受電させることで、蓄電池3が満充電になるまでの期間を延ばすことができる。その結果、発電装置2の余剰電力Wsが生じている期間のうち、蓄電池3および水電解装置9の両方で受電する期間が延びる。よって、発電装置2の余剰電力Wsが生じている期間において、系統6に送電される電力量を低減することができる。これにより、本実施形態の電力システム100は、電力計8で建物1内に人がいることが検知されないときは、蓄電池3に優先的に発電装置2の発電電力を受電させる場合に比べて、蓄電池3および蓄水素エネルギー装置4の蓄電量を増加することができる。
【0079】
なお、建物1内に人が不在の場合、建物1に設けられた電力負荷の消費電力が小さく、余剰電力Wsが生じている期間の継続性を見込むことができる。よって、水電解装置9に優先的に余剰電力Wsを受電させるように制御しても、蓄水素エネルギー装置4の起動および停止の回数は少ないと考えられ、電力システム100の効率低下を抑制できる。
【0080】
本実施例の電力システム100は、上記の特徴以外は、実施形態の電力システム100と同様であってもよい。
【0081】
(第2実施例)
本実施例の電力システム100は、以下に説明する制御器20の制御内容以外は、実施形態の電力システム100と同様である。
【0082】
電力計8で建物1内に人がいることが検知されたとき、制御器20は、上記の第2の制御において、蓄電池3よりも燃料電池11を優先して、建物1に設けられた電力負荷へ電力を供給させる。
【0083】
電力計8で建物1内に人がいることが検知されないとき、制御器20は、上記の第2の制御において、燃料電池11よりも蓄電池3を優先して、建物1に設けられた電力負荷へ電力を供給させる。
【0084】
以下の表2には、制御器20による第2の制御の一例が示されている。なお、本実施例で使用する記号を以下に定義する。
【0085】
<記号の定義>
・W0:建物1に設けられた電力負荷の消費電力
・Wsox:蓄電池3が放電可能な最大電力
・Whox:燃料電池11が発電可能な最大電力
【0086】
【0087】
上記の表2には、発電装置2で余剰電力Wsが生じていない場合(Ws=0の場合)のの電力制御が記載されている。
【0088】
表2の上段に示すように、電力計8で建物1内に人がいることが検知されると、まず、蓄電池3よりも燃料電池11を優先して、建物1に設けられた電力負荷の消費電力W0の範囲内で、最大電力Whoxまで燃料電池11で発電が行われる。つまり、消費電力W0が最大電力Whoxよりも小さい場合(W0<Whox場合)、燃料電池11で消費電力W0の全量が発電され、蓄電池3で放電させない。
【0089】
一方、消費電力W0が最大電力Whoxよりも大きい場合(W0>Whoxの場合)、消費電力W0のうちの残りの電力(W0-Whox)の範囲内で、最大電力Wsoxまで蓄電池3で放電させる。
【0090】
なお、消費電力W0が最大電力Wsoxおよび最大電力Whoxの総和よりも大きい場合(W0>(Wsox+Whox))の場合、電力(W0-Wsox-Whox)を系統6から受電する。
【0091】
以上の電力制御が行われる理由は以下の通りである。
【0092】
電力計8で建物1内に人がいることが検知されたときは、この検知の以降に、建物1に設けられた電力負荷の消費電力W0が増えることが予測される。そこで、発電装置2の余剰電力Wsがゼロである場合(Ws=0の場合)は、蓄電池3よりも応答性が遅い燃料電池11を起動させ、燃料電池11から電力負荷に優先的に電力を供給することで、蓄電池3の電力を温存できる。これにより、本実施形態の電力システム100は、蓄電池3から優先的に電力負荷へ電力を供給する場合に比べて、蓄電池3および燃料電池11から電力負荷に供給する電力を増やすことができる。この点について、さらに詳しく説明する。
【0093】
上記のとおり、蓄電池3は、蓄水素エネルギー装置4に比べて、蓄電容量が小さいが、高エネルギー変換効率で大電力を出力できる。
【0094】
従って、仮に蓄電池3で優先的に放電させると、蓄電池3の蓄電量が早期にゼロになる可能性がある。すると、発電装置2の余剰電力Wsがゼロである場合(Ws=0の場合)の残りの期間において、蓄水素エネルギー装置4の燃料電池11のみで発電が行われる。ここで、蓄水素エネルギー装置4は、蓄電池3に比べて、蓄電容量が大きく、かつ燃料電池11の最大電力が小さいので、上記の残りの期間において、蓄水素エネルギー装置4の水素貯蔵器10内の水素が十分に消費されないまま、水素が残存する可能性がある。
【0095】
そこで、本実施形態の電力システム100は、燃料電池11で優先的に発電させている。一例として、電力負荷の消費電力W0のうちベースになる電力を燃料電池11から供給させ、電力負荷の消費電力W0のうち短期的な変動部分の電力を蓄電池3から供給させることで、両者から供給する電力を増やすことができる。これにより、蓄電池3の蓄電量がゼロになるまでの期間を延ばすことが可能になり、その結果、上記の残りの期間において、蓄水素エネルギー装置4の水素貯蔵器10内の水素消費量を増加させることができる。つまり、蓄電池3および燃料電池11から電力負荷に供給する電力を増やすことができる。
【0096】
なお、建物1内に人が存在する場合、建物1に設けられた電力負荷への電力供給を継続的に見込むことができる。よって、燃料電池11で優先的に発電するように制御しても、蓄水素エネルギー装置4の起動および停止の回数は少ないと考えられ、電力システム100の効率低下を抑制できる。
【0097】
次に、表1の下段に示すように、電力計8で建物1内に人がいることが検知されない場合、まず、燃料電池11よりも蓄電池3を優先して、建物1に設けられた電力負荷の消費電力W0の範囲内で、最大電力Wsoxまで蓄電池3で放電させる。つまり、消費電力W0が最大電力Wsoxよりも小さい場合(W0<Wsox場合)、蓄電池3の放電で消費電力W0の全量が賄われ、燃料電池11で発電させない。
【0098】
一方、消費電力W0が最大電力Wsoxよりも大きい場合(W0>Wsoxの場合)、消費電力W0のうちの残りの電力(W0-Wsox)の範囲内で、最大電力Whoxまで燃料電池11で発電させる。
【0099】
なお、消費電力W0が最大電力Wsoxおよび最大電力Whoxの総和よりも大きい場合(W0>(Wsox+Whox))の場合、電力(W0-Wsox-Whox)を系統6から受電する。
【0100】
以上の電力制御が行われる理由は以下の通りである。
【0101】
電力計8で建物1内に人がいることが検知されないときは、この検知の以降の暫くの間は、建物1に設けられた電力負荷の消費電力W0が増えないことが予測される。つまり、この場合、蓄電池3から電力負荷に優先的に電力を供給しても、蓄電池3の蓄電容量の範囲内で電力負荷の消費電力W0を賄うことができる。また、このとき、仮に、燃料電池11から電力負荷に優先的に電力を供給する場合、燃料電池11における断続的な低出力かつ低効率な運転が行われる可能性があるが、本実施形態の電力システム100は、上記の第2の制御により、このような可能性を低減できる。
【0102】
本実施例の電力システム100は、上記の特徴以外は、実施形態または実施形態の第1実施例の電力システム100と同様であってもよい。
【0103】
(第1変形例)
図2は、実施形態の第1変形例の電力システムの一例を示す図である。
【0104】
図2の電力システム100は、建物1内に人がいることを検知する検知器として、電力計8に代えて、人感センサ13を用いること以外は、
図1Aの電力システム100と同様である。
【0105】
人感センサ13は、人を感知するセンサである。人感センサ13として、例えば、赤外線センサを用いることができるが、これに限定されない。人感センサ13は、例えば、建物1の出入口に取り付けられていてもよいし、建物1内の適宜の部屋に設けられていてもよい。なお、
図2では、建物1内の部屋は、一つしか示されていないが、建物1内の部屋が複数である場合は、部屋のそれぞれに、人感センサ13が設けられていてもよい。この場合、建物1内に存在する人の検知精度を向上できるが、コストが嵩むので、費用対効果を考慮する方がよい。
【0106】
人感センサ13により人が感知されると、人感センサ13において、所定の信号が発生する。人感センサ13の検知信号は、適宜の信号処理回路(図示せず)により信号処理が行われた後、制御器20に送信される。これにより、制御器20が、建物1内に人がいるかどうかを判定することができる。
【0107】
本変形例の電力システム100は、上記の特徴以外は、実施形態、実施形態の第1実施例および実施形態の第2実施例のいずれかの電力システム100と同様であってもよい。つまり、本変形例の電力システム100は、実施形態、実施形態の第1実施例および実施形態の第2実施例のいずれかの電力システム100と同様に、第1の制御および第2の制御の少なくともいずれか一方を実行することにより、電力システム100の高効率な電力制御が行われる。
【0108】
(第2変形例)
図3は、実施形態の第2変形例の電力システムの一例を示す図である。
【0109】
図3の電力システム100は、建物1内に人がいることを検知する検知器として、電力計8に代えて、CO
2ガスセンサ15を用いること以外は、
図1Aの電力システム100と同様である。
【0110】
CO
2ガスセンサ15は、建物1内の適所に設けられ、人の呼吸により発生するCO
2を検知するセンサである。CO
2ガスセンサ15は、例えば、建物1の部屋のCO
2濃度を適切に換気設備で調整するために設けられることが多い。なお、
図3では、建物1内の部屋は、一つしか示されていないが、建物1内の部屋が複数である場合は、部屋のそれぞれに、CO2ガスセンサ15が設けられていてもよい。この場合、建物1内に存在する人の検知精度を向上できるが、コストが嵩むので、費用対効果を考慮する方がよい。
【0111】
建物1内に人が存在する場合、人の呼吸によりCO2濃度が上昇する。そして、CO2ガスセンサ15で測定するCO2濃度が所定の設定値を上回ると、CO2ガスセンサ15において、所定の信号が発生する。CO2ガスセンサ15の検知信号は、適宜の信号処理回路(図示せず)により信号処理が行われた後、適時に制御器20に送信される。これにより、制御器20が、建物1内に人がいるかどうかを判定することができる。
【0112】
通常、空気中のCO2濃度は約400ppm以下であるので、上記の設定値として、例えば、約500ppm~1000ppm程度のCO2濃度を用いてもよい。なお、この設定値は例示であって、本例に限定されない。
【0113】
ここで、第1変形例の人感センサ13の一例である赤外線センサでは、例えば、部屋内の家具または複雑な作りなどにより赤外線上に人が存在しない場合、建物1内に人がいることを検知困難であるが、CO2ガスセンサ15は、このような場合であっても、CO2ガスセンサ15と人が空間的に遮られない限り、建物1内に人がいることを適切に検知することができる。
【0114】
本変形例の電力システム100は、上記の特徴以外は、実施形態、実施形態の第1実施例および実施形態の第2実施例のいずれかの電力システム100と同様であってもよい。つまり、本変形例の電力システム100は、実施形態、実施形態の第1実施例および実施形態の第2実施例のいずれかの電力システム100と同様に、第1の制御および第2の制御の少なくともいずれか一方を実行することにより、電力システム100の高効率な電力制御が行われる。
【0115】
(第3変形例)
図4は、実施形態の第3変形例の電力システムの一例を示す図である。
【0116】
図4の電力システム100は、建物1内に人がいることを検知する検知器として、電力計8に代えて、振動センサ17を用いること以外は、
図1Aの電力システム100と同様である。
【0117】
振動センサ17は、建物1の床に設けられ、人の歩行などにより建物1内に発生する振動を検知するセンサである。振動センサ17は、建物1の床の振動をピックアップして検知するセンサであれば、どのような構成であってもよい。振動センサ17は、接触式の振動センサでもよいし、非接触式の振動センサでもよい。接触式の振動センサとして、例えば、圧電素子、電磁型センサなどを挙げることができるが、これらに限定されない。非接触式の振動センサとして、例えば、静電容量型センサ、渦電流型センサ、レーザドップラ型センサなどを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、
図4では、建物1内の部屋は、一つしか示されていないが、建物1内の部屋が複数である場合は、部屋のそれぞれに、振動センサ17が設けられていてもよい。この場合、建物1内に存在する人の検知精度を向上できる。例えば、振動センサ17が一つの場合、建物1全体に亘って人の歩行による振動を単一の振動センサ17により検知する必要がある。このため、振動センサ17から離れた位置に人が存在する場合、振動センサ17には、低レベルの微振動しか伝わらないので、制御器20は、人が建物1内に存在しないと誤判定する可能性がある。但し、複数の振動センサ17の設置は、コストが嵩むので、費用対効果を考慮する方がよい。
【0118】
建物1内で人が歩行すると、建物1の床に振動が発生する。そして、振動センサ17で測定する振動が所定の設定値を上回ると、振動センサ17において、所定の信号が発生する。振動センサ17の検知信号は、適宜の信号処理回路(図示せず)により信号処理が行われた後、制御器20に送信される。これにより、制御器20が、建物1内に人がいるかどうかを判定することができる。
【0119】
通常、建物1内に人が不在であっても、建物1の床には微振動が発生する。よって、このような微振動を振動センサ17が誤検知しないように、上記の設定値が閾値として設定されている。
【0120】
ここで、第1変形例の人感センサ13の一例である赤外線センサでは、例えば、部屋内の家具または複雑な作りなどにより赤外線上に人が存在しない場合、建物1内に人がいることを検知困難であるが、振動センサ17は、このような場合であっても、振動センサ17に人の歩行による振動が伝播される限り、建物1内に人がいることを適切に検知することができる。
【0121】
また、人の歩行による振動は、加速度、変位量および周波数などの様々な特性を備える。よって、振動センサ17で検知される振動の特性の解析に基づいて、建物1内における人の活動内容、大人か子供かなどの人の属性を知ることができる。
【0122】
本変形例の電力システム100は、上記の特徴以外は、実施形態、実施形態の第1実施例および実施形態の第2実施例のいずれかの電力システム100と同様であってもよい。つまり、本変形例の電力システム100は、実施形態、実施形態の第1実施例および実施形態の第2実施例のいずれかの電力システム100と同様に、第1の制御および第2の制御の少なくともいずれか一方を実行することにより、電力システム100の高効率な電力制御が行われる。
【0123】
なお、実施形態、実施形態の第1実施例-第2実施例および実施形態の第1変形例-第3変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせても構わない。
【0124】
また、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良および他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
【0125】
例えば、上記では、建物1内に人がいることを検知する検知器として、電力計8、人感センサ13、CO2ガスセンサ15および振動センサ17を例示したが、これらに限定されない。例えば、エネルギーマネジメントシステム(EMS)、ホームハブなどと接続して、人とのインタフェースを備えた機器から建物1内の人の存否の信号を制御器20が受信してもよい。ここで、人とのインタフェースを備えた機器とは、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パソコンなどの情報端末を挙げることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 :建物
2 :発電装置
2a :配線
3 :蓄電池
3a :配線
4 :蓄水素エネルギー装置
4a :配線
5 :第1電力変換器
5A :DC/DC変換器
5B :DC/AC変換器
5c :内部配線
6 :系統
6a :配電線
7 :分電盤
7a :配線
8 :電力計
9 :水電解装置
9a :配管
10 :水素貯蔵器
10a :配管
11 :燃料電池
12 :第2電力変換器
12C :DC/DC変換器
12a :配線
12b :配線
13 :人感センサ
15 :CO2ガスセンサ
17 :振動センサ
20 :制御器
100 :電力システム