(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】マネジメントデータの表示方法及び生成方法ならびにマネジメント方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20240112BHJP
【FI】
G06Q10/00
(21)【出願番号】P 2019100202
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018103397
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516270566
【氏名又は名称】松井 正之
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】松井 正之
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-049449(JP,A)
【文献】特開2018-045687(JP,A)
【文献】松井 正之,ほか,“企業ロボットの開発:自働経営管理とアルキメデス(分散)対ソクラテス(集中)方式”,日本経営工学会2016年春季大会予稿集,公益社団法人日本経営工学会,2016年05月28日,第128-130頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の評価軸と第2の評価軸とを用い、前記第1の評価軸には数値化された需要戦略をとり、前記第2の評価軸には数値化された生産戦略をとり、前記数値化された需要戦略及び生産戦略に対応する経済性を示すデータ及び信頼性を示すデータを含む各マネジメントデータを、第1又は第2の評価軸について、一方の評価軸上の値
の変動から他方の評価軸上の値を得ることにより、各マネジメントデータを図的
に且つ同時に埋め込まれたペアマップとして表示し、
上位レベルの前記ペアマップにおいて数値化されて評価軸に関する角度で表されたデータの変動と相関を有する下位レベルの関連マネジメントデータを表示し、
前記ペアマップにおける経済性と信頼性データとの関係を前記第1および第2の評価軸面上における角度θで表すとし
、関連需要戦略と生産戦略データとの関係を前記第1および第2の評価軸面上における角度φで表したときに、
前記ペアマップにおける前記関連マネジメントデータの相関関係が
eiθ=cosθ+isinθ
eiφ=cosφ+isinφ (iは、虚数単位。)
によって表せ、
上記θ及びφの関係は、波動方程式
に基づく
ことを特徴とするマネジメントデータの表示方法。
【請求項2】
前記ペアマップには前記ペアマップの変種としての
代替ペアマップが含まれ、
前記代替ペアマップでは、前記第1の評価軸として離散的に数値化された需要スピードdをとり、第2の評価軸として離散的に数値化された生産スピードmをとり、
前記第1の評価軸及び前記第2の評価軸を重畳させてトラフィック軸とし、前記トラフィック軸上において一方の原点を他方の無限遠に仮想的に配置して設定し、ρ=m/d(ただしd>m)又はρ=d/m(ただしd<m)の関係に基づいて、一方の評価軸上の値(需要スピードd又は生産スピードm)の変動から他方の評価軸上の値(生産スピードm又は需要スピードd)を得る
ことを特徴とする請求項1に記載のマネジメントデータの表示方法。
【請求項3】
データ表示部を備え、このデータ表示部は、請求項1又は2に記載のマネジメントデータの表示方法によって表示されるべき前記ペアマップ及び前記関連マネジメントデータを階層的に表示可能とすることを特徴とするマネジメントデータの表示装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のマネジメントデータを生成する方法であって、
(a)数値化された需要戦略及び生産戦略の初期値を設定するステップ
(b)前記数値化された需要戦略及び生産戦略の初期値と、予め収集された価格やコストの経営データとに基づいて、経済性を示すデータを含む各マネジメントデータを計算又は取得して生成するステップ
(c)前記マネジメントデータの変動と相関を有する関連マネジメントデータを生成するステップ
を有することを特徴とするマネジメントデータの生成方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の表示方法によって表示されるべき前記マネジメントデータ及び関連マネジメントデータを表示するマネジメントデータ表示プログラムであって、データ表示部を備えたコンピューターに、
第1の評価軸と第2の評価軸とを用い、前記第1の評価軸には数値化された需要戦略をとり、前記第2の評価軸には数値化された生産戦略をとり、前記数値化された需要戦略及び生産戦略に対応する経済性を示すデータ及び信頼性を示すデータを含む各マネジメントデータを、前記第1及び第2の評価軸に基づいて、図的
に且つ同時に埋め込まれたペアマップとして表示するステップと、
前記ペアマップにおける変動と相関を有する関連マネジメントデータを表示するステップと
を含む処理を実行させることを特徴とするマネジメントデータの表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マネジメントデータの表示方法及び生成方法ならびにマネジメント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人工体科学におけるマネジメントシステムでは、ボトムアップ(下位)による伝統的なJIT、TQC、TPMなどの改善アプローチが多くの場合において取られている。改善アプローチでは、改善目標や問題点を見つけ、これに対応するシステムや方法を改善することで、費用の減少に伴う利益の拡大を指向している。しかしながら、この改善アプローチで得られる手法は、部分的に(例えば費用等が)最善であっても、企業経営全体として(例えば利益等が)最善のものとは限らない。また、グローバル化で経営多様化と全体思考が求められている
【0003】
この問題に鑑みて提案された手法として、トップダウン(上位)のサプライチェーンマネジメント(SCM)がある。これは、制約条件の理論(TOC)と組み合わされて全体最適化を指向するが、改善アプローチの一種であり、戦略的・理論的に弱いという問題がある。他方、経営戦略論では、BSC(Balanced Score Card)理論の財務以外の3視点も含めた4視点系が知られているが、定性的、統計的な限界が見られる。これらのため、従来法はシステム化、スピード化がまだ欠けるという問題があった。
【0004】
ここで、人工体とは、地球上の人類が築いてきている社会の種々の事象を人工体という複合体・多様体として捉えたものであり、一般に3M&I系で表現される。この3Mとは、ヒト(huMan),モノ(Material/machine), カネ(Money)であり、Iは情報(Information)である。
【0005】
上記人工体とそのダイナミズムに関わるマネジメントシステムでは、また設計(デザイン)アプローチによってシステム的、ゲーム的に(すなわちせめぎ合いで)利益(スループット)等の経済性の最大化とリードタイム(LT)等の信頼性の向上とを図ることが望まれているが、まだ、この体系的、全体指向の俯瞰図とそのマネジメント法が見られない。
【0006】
この人工体に関する近年の研究では、本発明者らによって、サンドイッチ原理、バランシング原理(フラクタル原理)等とそのダイナミズムが示されている。これらの自然体に近い人工体科学の原理をベースとする企業等による見える化とマネジメント方法の開発が望まれている。
【0007】
この人工体に関する3M&I系としては、例えば工場、事業体、サプライチェーンなどが主たる対象として取り上げられている(例えば、非特許文献1~3参照)。この人工体科学のベースとして、リトルの公式(λW=L), 松井の式(W=ZL) など種々の待ち行列法が用いられている。また、本発明者の近著(非特許文献4)等では、人工体の基礎として、次の3つの原理が挙げられている。
サンドイッチ原理 マクロ対ミクロの止揚解
バランシング原理 Z1 L1 =Z2 L2 (=W), for n=2
フラクタル原理 時計モデル,松井の方程式
このサンドイッチ原理とは、マクロ(上位レベル)対ミクロ(下位レベル)の止揚である、マクロとミクロとの間に、人工体の腰(S=W場)に相当するペアマップ(オイラー公式)の存在(止揚)を仮説とする原理である。ペアマップは、入力(需要)と出力(供給)のペア、並びにその収益とLTのペアの二重性からなり、ペア行列表に現れる楕円交叉形を特徴とするマップであり、製販協力ゲームの研究から生まれている。このペアマップは人工体の縮図であり、バランシング原理やフラクタル原理からなるダイナミズムを内蔵している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】松井正之、藤川裕晃:「ペア戦略チャートが明らかにする製版コラボレーションの利益最大化理論、DIAMOND ハーバード・ビジネスレビュー、第30巻第1号、pp. 2-13 (2005)
【文献】Matsui, M., Manufacturing and Service Enterprise with Risks: A Stochastic Management Approach, International OR&MS series, Springer, 2008
【文献】松井正之:生産企業のマネジメント-利益最大化と工場理学、共立出版、2005
【文献】Matsui, M., Fundamentals and Principles of Artifacts Science: 3M&I-Body System, Springer Briefs in Business, 2016
【文献】Matsui, M., Formulating and Realization of Artifacts Science: 3M&I-Body System, Springer Briefs in Business, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、人工体動学に関するニュートン力学は科学的管理法の父であるF.W. Taylorの時間研究、電話技師A. K. Erlangの待ち行列研究であると考えるが、現在までに、このテイラーらの科学以降の人工体動学の発展は多種多様で、あまり巨視的に見える化されていない。
【0010】
本発明は、自然対人工体が深遠で繋がっているというサンドイッチ(S=W)場におけるペアマップ仮説のさらなる検証を試み、自然対人工体の基底としての見える化から巨視的な見える化を実現し、利益(スループット)等の経済性の最大化とリードタイム等の信頼性、並びに両方の和と積の向上とを図ることができるマネジメントデータの表示方法及び生成方法ならびにマネジメント方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(マネジメントデータの表示方法)
上記課題を解決するために、本発明は、第1の評価軸と第2の評価軸とを用い、前記第1の評価軸には数値化された需要戦略をとり、前記第2の評価軸には数値化された生産戦略をとり、前記数値化された需要戦略及び生産戦略に対応する経済性を示すデータ及び信頼性を示すデータを含む各マネジメントデータを、前記第1及び第2の評価軸に基づいて、図的且つ動態的に同時に埋め込まれたペアマップ若しくはペアマップ類として表示し、
前記ペアマップにおける変動と相関を有する関連マネジメントデータを表示する
ことを特徴とするマネジメントデータの表示方法である。
上記ペアマップ類には前記ペアマップの変種としての代替的ペアマップが含まれ、代替ペアマップでは、第1の評価軸として離散的に数値化された需要スピードdをとり、第2の評価軸として離散的に数値化された生産スピードmをとり、第1の評価軸及び第2の評価軸を重畳させて(すなわち、トラフィック軸ρ=m/d(ただしd>m)又はρ=d/m(ただしd<m)の関係を考えて)、一方の原点を他方の無限遠に仮想的に配置して設定し、一方の評価軸上の値(需要スピードd又は生産スピードm)の変動から他方の評価軸上の値(生産スピードm又は需要スピードd)を得るようにしてもよい。
【0012】
前記ペアマップにおける経済性と信頼性データとの関係を角度θ(評価軸1-2面上での)で表すとし、前記関連需要戦略と生産戦略データとの関係を角度φ(評価軸1-2面上での)で表したときに、
前記ペアマップにおける前記関連マネジメントデータの相関関係が
eiθ=cosθ+isinθ
eiφ=cosφ+isinφ (iは、虚数単位。)
によって表せることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、データ表示部を備え、上記の表示方法によって表示されるべき前記ペアマップ及び前記関連マネジメントデータを階層的に表示可能とすることを特徴とするマネジメントデータの表示装置である。
【0014】
(マネジメントデータの生成方法)
さらに、本発明は、下記のステップを有することを特徴とするマネジメントデータの生成方法である。
(a)数値化された需要戦略及び生産戦略の初期値を設定するステップ
(b)前記数値化された需要戦略及び生産戦略の初期値と、予め収集された価格やコスト等の経営データとに基づいて、経済性を示すデータを含む各マネジメントデータを計算又は取得して生成するステップ
(c)前記マネジメントデータの変動と相関を有する関連マネジメントデータを生成するステップ
【0015】
(マネジメント方法)
また、本発明は、上記表示方法によって表示されるペアマップ及びマネジメントデータを用いたマネジメント方法であって、現状の需要戦略及び生産戦略から、目標とする需要戦略及び生産戦略への移行過程を選択する場合において、
前記ペアマップと前記関連マネジメントデータとの相関を維持、改善するよう管理しながら、ダイナミックに前記移行過程を先見追従又は選択することを特徴とする。
【0016】
上記表示方法では、表示されるペアマップ及びマネジメントデータを用いたマネジメント方法であって、前記需要戦略又は生産戦略をダイナミックに変更することによって前記経済性を示すデータ又は前記信頼性を示すデータの一方又は両方が変更される際に、前記ペアマップと前記関連マネジメントデータとの相関を維持、改善するよう管理しながら、前記変更を行うことが好ましい。
【0017】
(マネジメントデータ表示プログラム)
また、本発明は、上述した表示方法によって表示されるべき前記マネジメントデータ及び関連マネジメントデータを表示するマネジメントデータ表示プログラムであって、データ表示部を備えたコンピューターに、
第1の評価軸と第2の評価軸とを用い、前記第1の評価軸には数値化された需要戦略をとり、前記第2の評価軸には数値化された生産戦略をとり、前記数値化された需要戦略及び生産戦略に対応する経済性を示すデータ及び信頼性を示すデータを含む各マネジメントデータを、前記第1及び第2の評価軸に基づいて、図的且つ動態的に同時に埋め込まれたペアマップとして表示するステップと、
前記ペアマップにおける変動と相関を有する関連マネジメントデータを表示するステップと
を含む処理を実行、PDCAサイクルを回させることを特徴とするマネジメントデータの表示プログラムである。
【0018】
ここで、いわゆる「PDCAサイクル」とは、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つをいい、このPDCAサイクルを回させることにより、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4段階を繰り返し、業務を継続的に改善する。ここでは、上記ステップによって表示される関連マネジメントデータを逐次更新して、ペアマップと前記関連マネジメントデータとの相関を維持、改善するようにマネジメント・サイクルを繰り返すことを意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自然対人工体が深遠で繋がっているというサンドイッチ(S=W)場におけるペアマップ仮説について、人工体マクロ(上位レベル)対ミクロ(下位レベル)の止揚解(波動方程式)の存在と、物理体経済体の符号合わせ(結合対比例定数等)による整合性で示すことで、ペアマップの原形を自然対人工体の基底とした見える化を実現し、利益(スループット)等の経済性の最大化と、リードタイム等の信頼性の向上とを図ることができる。
【0020】
概略的には、第1の評価軸と第2の評価軸とを用い、第1の評価軸には、離散的に数値化された需要スピードdをとり、第2の評価軸には、離散的に数値化された生産スピードmをとる。各需要スピードd及び各生産スピードmに対応する、経済性を示すデータと信頼性を示すデータとを含む各マネジメントデータを、第1及び第2の評価軸に基づいて、例えば表形式で表示することができる。経済性を示すデータとは、例えば利得等の収益Z、費用、利益である。信頼性を示すデータとは、例えば在庫L、リードタイムLbarである。この表を基に、経済性と信頼性のバランスを考慮した需給戦略(L; d, m)及びゴール戦略(Z×Lbar; Z, Lbar)の位置決めが可能になり、マネジメントの行動のためのフレームワークを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマネジメントデータの表示方法を概念的に記載した説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るマネジメント方法を説明するための説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるマネジメントデータの表示例を説明するための説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態におけるマネジメントデータの表示例における原理を説明するための説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るマネジメントデータの表示装置を概略的に説明するための説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るマネジメントデータの生成方法を概略的に説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係るマネジメントデータの表示例(楕円形)を説明するための説明図である。
【
図8】SW体構造の埋め込みを可視化する表示方法(時計モデル)のイメージ図である。
【
図9】(a)は基本ペアマップの概要を示す説明図であり、(b)はマネジメントデータの表示例(楕円交叉形)である。
【
図10】ペアマップの3次元ビュー(骨子)の説明図である。
【
図11】オイラー公式によるペアマップ図解である。
【
図12】波動方程式導出に関する時計モデル(長針対短針)を示す説明図である。
【
図13】SW体式全体における起・承・転・結解の可視化例を示す説明図である。
【
図14】SW体構造の双対系における3連鎖からなる企業体の双対系鎖の図解例である。
【
図15】SW体構造の双対系鎖におけるSW体解の格子構造を示す説明図である。
【
図16】SW体構造の双対系鎖におけるSW体解の格子構造(超平面上の正六方体格子)を示す説明図である。
【
図17】ペアマップ回転系対オイラー公式の原理(止揚解)を示す説明図である。
【
図18】全体指向の人工体(企業体等)のマネジメントマップを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るマネジメントデータの表示方法及び生成方法ならびにマネジメント方法を、添付の図面に基づいて説明する。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0023】
(マネジメントデータの表示方法)
本実施形態では、第1の評価軸と第2の評価軸とを用い、第1の評価軸には数値化された需要戦略をとり、第2の評価軸には数値化された生産戦略をとり、数値化された需要戦略及び生産戦略に対応する経済性を示すデータ及び信頼性を示すデータを含む各マネジメントデータを、第1及び第2の評価軸に基づいて、図的且つ動態的に同時に埋め込まれたペアマップとして表示し、ペアマップにおける変動と相関を有する関連マネジメントデータを表示する。
【0024】
(1)マネジメントデータの概要
ここで、先ず、本発明の前提である「数値化された需要戦略及び生産戦略に対応する経済性を示すデータ及び信頼性を示すデータを含む各マネジメントデータ」について、
図1及び
図3に基づいて説明する。
【0025】
この実施形態では、先ず、市場の競争状態を想定する。この場合、需要戦略としての価格は、市場価格に左右されるので、数値化された需要戦略としては需要スピードdを取り、数値化された生産戦略として生産スピードmを取っている。他の需要戦略としては、市場の独占状態を想定するときには、需要スピードdの替わりに、価格pが優先的な戦略として考えられる。需要スピードdは、顧客や注文の平均到着間隔時間によって決定される公知の変数である。生産スピードmは、顧客や注文の平均処理時間によって決定される公知の変数である。数値化された需要戦略としては、需要スピードに関係するものであればよく、例えば、需要選択基準などの価格戦略を取ることもできる。数値化された生産戦略としては、生産スピードに関係するものであればよく、例えば、能力切換え基準などのバッファ戦略を取ることもできる。
【0026】
本実施形態では、需要スピードdと生産スピードmとは、データなどによって予め決められた、離散的な数値が用いられる。マネジメントデータは、この実施形態では、経済性を示すデータと信頼性を示すデータとを含んでいる。経済性を示すデータとしては、例えば、利得、費用、利益、価格である。ここで、利益(限界利益)=利得(収益利得)-費用(運用費用)である。信頼性を示すデータとしては、例えばバッファサイズ及びリードタイムである。バッファサイズとは、ここでは、バッファの容量やその適正サイズ(又は在庫)を意味する。リードタイムは、需要率1においては在庫に相当する。価格とは、製品の販売価格を称する。これらのマネジメントデータは、需要スピードdと供給スピードmとに対応して算出されるものである。算出方法の一例については後述する。
【0027】
図1に示す概念的な表示例を例にとってさらに説明する。この例では、第1の評価軸(y方向軸)では需要スピードdをとり、第2の評価軸(x方向軸)では生産スピードmをとっている。これらの値は、この例では離散的である。各需要スピードdと各生産スピードmとに対応した、利得やリードタイム等のマネジメントデータが表示される。したがって、この例では、表形式で表示されることになる。このように表形式であると、需要スピードdと生産スピードmとに対応した各マネジメントデータを一つのセル内に表示することができ、利用しやすいという利点がある。
【0028】
ただし、需要スピードdや生産スピードmが離散的であること、表形式でマネジメントデータを示すことはもちろん必須でなく、グラフによって示すことも可能である。
図1の表示例をさらに具体化した例を
図3に示す。この例では、M/M/1型の生産企業群での、単位時間あたりの利得ER、費用EC、利益EN、及びリードタイムLT、情報量(これは拘束を示すものである)MI、設定価格PSが示されている。この図では、需給制約(d>m)及び価格制約(需要と関係するもの、具体的にはd≧1)により実現不可能な生産スピード及び需要スピードの欄を白色で示し、実現可能なものを網掛けで示している。需給制約及び価格制約により実現不可能な生産スピードや需要スピードがあることは周知なのでこれ以上の詳細については説明を省略する。
【0029】
(2)ペアマップ
そして、本実施形態に係る上位のマネジメントデータは、
図8に示すように、上述した「数値化された需要戦略及び生産戦略に対応する経済性を示すデータ及び信頼性を示すデータを含む各マネジメントデータ」をUpper Levelのペアマップで表示した場合に、このペアマップにおける経済性と信頼性データとの関係を角度θ(評価軸1-2面上)で表すとし、これら経済性及び信頼性データの変動と相関を有する関連需要戦略と生産戦略データをLower Leverにおける関連マネジメントデータとして表すことができる。
【0030】
そして、このLower Levelにおける関連需要戦略と生産戦略データとの関係を角度φ(評価軸1-2面上)で表したときに、
ペアマップにおける関連マネジメントデータの相関関係が
eiθ=cosθ+isinθ
eiφ=cosφ+isinφ (iは、虚数単位。)
によって表すことができる。
本実施形態において「関連マネジメントデータ」とは、
図8で示すところの、Upper Levelにおける経済性と信頼性データをペアマップとしたときの、Lower Levelの関連需要戦略及び生産戦略データであり、単位角度θで回転する短針に対して、単位角度φで回転する長針のような関係を有し、それぞれが上記式の相関関係を満たしている。
【0031】
このペアマップは、コンピューターのディスプレイなどのデータ表示部を用い、上述したマネジメントデータの表示方法で表示されるべきペアマップ及び関連マネジメントデータを階層的に表示可能となる。
【0032】
ここで、本実施形態におけるペアマップの基本形は、
図9(a)として与えられ、需要スピード(d)と生産スピード(m)の2次元表に、経済軸(収益対コスト)と信頼軸(リードタイム)の楕円形が交叉しており、交叉点がバランス点(利益最大化)である。
【数1】
下位レベルは通常の待ち行列系(ニュートン動力学)である。上位レベルは、
図10の表に示すように、楕円交叉形の4極(中心点)を、バランス・スコアカード(BSC)の4視点・アプローチと符号合わせしている。ここでは、ペアマップが企業のような事業体等の滑動サイクルやライフサイクル様態を3M&I系がとる4極系で表現できることを暗に仮定していることが注意される。
【0033】
一般に、上下位レベルの挙動はそれぞれ異なっているので、統一的な扱いには、ペアマップ(
図9(a))の3次元表示(
図10)が有用であり、図類は幾何学的表示のプロセス視点から、波動方程式による定式化が可能である。
【0034】
他方、この3次元体は、形式的には2次元でのオイラー公式によるペアマップ図解(
図11)が可能である。
図17は、ペアマップ(S=W解)の右回りの回転形を与えているが、オイラー公式により付随した波形表示より、物理体と同様に波動方程式として次式に与えることができる。
【数2】
上記
図8に基づいて、長針(θ)と短針(φ)による統一的な波動方程式が考えられる。この長針と短針との関係は、
図12のそれぞれa)及びb)で与えられる。いま、W=ZLにおいて、
【数3】
から次式が得られる。
三角関数の加法定理から、
【数4】
となり、次の関係が求まる。
【数5】
ここで、特に右辺のu, すなわち、
【数6】
に注目する。θ=x,φ= ωt(ω>0,t>0)とおくと、このとき式(3.4)は次式のように書ける。
【数7】
一般に、式(3.5)のuに対して、t,xの一次偏微分、二次偏微分は可能であり、この結果から次の波動方程式が導出される。すなわち、式(3.5)のuは式(3.6)を満たす。
【数8】
境界条件は、u(t,0) = u(t,π)である。
【0035】
なお、本実施形態に係るマネジメント法では、上記ペアマップ(
図9(a))上で、ER(EN)=LT解を目標(理想)として追求する組織の総合的(3M&I系)で、トップ、上位、下位レベルの一体化した活動(
図14)であり、その関連を示すマネジメントマップ(
図18)をコンパスとして運用管理する。このマネジメントマップを活用したマネジメント法は、簡単にはコンパス(θ, φ)による戦略運用管理法であり、マネジメントマップは、その意味でコックピットに相当し、その中心がペアマップ(θ, φ)(コンパス)となる。
【0036】
(3)サンドイッチ体の双対系鎖
本研究では、人工体の深奥における双対の関係、サンドイッチ体(SW-body)の双対系鎖について可視化するために、人工体の方程式と提案されている松井の方程式において、その図解によりこの関係を深堀している。既にSW体の従来研究から、方程式中核(時空の変換)のペアマップには双対系が埋め込まれており、今回、さらにこのSW解が格子構造からなる可能性を需給格子構造に見出している。これは、SW体式全体における起・承・転・結解の可視化例でもある。
【0037】
併せて、松井の方程式のいわゆる起・承(機能)・転・結(役割)系の"承"行列をベースとした行列鎖について、物理体における素粒子タイプの図解例(
図13)を示している。従来の企業体における構造マトリックス、経済体におけるGDPの経済表などもテーブル式の産業連関表タイプであり、承の図解例と考えられ、それぞれの承をベースとした松井の方程式による表現が可能であると考えられる。またそこでも、深奥でSW体双対系鎖と格子解構造、その中核にある止揚解の存在(オイラーの公式)が予見される。
【0038】
また、3M&I体系の人工体は、ペア行列系の基底構造をもっている。すなわち、3M&I体のクラスに対して、我々のサンドイッチ(S=W)命題は、以下の考察によって定義される。
[定義2A] サンドイッチ体を保つ入出力系は、Mシステムによって定義され、Mシステム上のペア体は、Mペア体と記される。
[命題2B] 次の命題は、十分に確からしいと思われる:
(i)ある入出力系が3M&I体のもとで仮定されると、少なくともその上には一つのペア体がある。(ii) 任意のサンドイッチ体は、Mペア体となるか、Mペア体と他に分割されうる。そして、(iii) サンドイッチ体は、松井の方程式(Matsui's ME)のタイプ[4][5]として定式化される。
例えば、独立成分分析法は[6]、IDTCBG(起承転結糸)ロジックとして松井の方程式の一つのタイプである。これは、源信号(起) y, 混合信号(承) x, 白色化信号(転) z, 分離信号(結) u からなっている。ここで、y, x, z, uはベクトルとする。
【0039】
これらのベクトルの関係は、以下で与えられている。
【数9】
ここで,行列H, V, Kは,それぞれ混合行列,白色化行列(楕円を円に),ユニタリ行列(回転)と呼ばれている。これらの行列は入出力系のペア行列体として展開される.タイプ<I>(IDTC-BG)については直接展開アプローチ,タイプ<II>(IDTC-GG)については位相解析アプローチで扱われている。この場合の松井の方程式は、それぞれ以下のように表されている。
【数10】
【数11】
ただし、行列Bはバランス(一貫性)行列、ベクトルgはゴール・ベクトルである。
【0040】
(4)SW 人工体の双対系
企業タイプにおけるサンドイッチ人工体(SW 体)では、松井の式(W=ZL)を基底とするペアマップ(腰)に双対系(Nash 解)が見出された。このNash解は双対解でもあり、ここでは妥協(非協力)解<最小>というより、協力解<最大>としての意味がある。基底のもつ二重性(dualism)をベースとすると,この上下の双対系との3連鎖からなる企業体の双対系鎖が見られ、
図14が図解例である。
【0041】
図14においてd は需要スピード,m は生産スピード,Pは処理率,r は生産率,θはラジアンである。
【数12】
【0042】
図14より,企業タイプのSW 図解は,次式:
SW体解:{ x(P) = 1, Z=L, d=m}, 企業タイプ
の周辺に存在すると考えられる。この上下のバランシングをとるのが,上記(腰)のデュアリズムとなる。
【0043】
また、企業タイプのサンドイッチ人工体の双対系鎖においては、SW体解での格子構造が考えられ,その3次元では
図15で表される.
このとき,SW体解は,次式を満足する必要がある.
【数13】
【0044】
この数13の式を満足するSW体解は,いわゆる次式で与えられる需給同期化条件であると考えられる.もし,需要率λ をλ=d=1(遅れD=0)の場合,次の2 つが成り立ってくる。
【数14】
【0045】
よって,上式(数14)を満足するためには,
図4において点:H(d, L―, Z) ―>O(0, 0, 0),すなわち,頂点H を原点O に近づけるとよくて,
図16 のように,超平面上に
正六方体の格子(物理体のブラックホールに対応)が見られる.このとき,
図14中の生産率r は,r = 1 となっている.この超平面の方程式等の表現は,初等的に容易に与えられる。なお、この正六方体の格子は、上記数8から与えられる円錐体に相当する。
【0046】
(マネジメント方法)
次いで、このように表示されたマネジメントデータを用いたマネジメント方法について、
図3を用いて説明する。本実施形態では、前述したペアマップと前記関連マネジメントデータとの相関を維持、改善するよう管理しながら、移行過程をダイナミックに先見追従又は選択することによって、マネジメントを行う。
【0047】
図的に示すと(図上法)、当該企業の現状の需要スピードd0及び生産スピードm0を出発点とする。ここから、理想的な(例えば利益が最大の)地点(これを需要スピードd*、生産スピードm*としている。)を目指すとする。そのための戦略のアクションルートとして、例えば、
図2に示すルートa、b、cがあるとする。この場合、そのルートの途中において、事業目的に沿わない要素があるかどうかを判断してルートを選択する。例えば、リードタイムが長くなることを許容できない企業であれば、リードタイムが許容値以上に長くならないルートを辿って目的地へ進むことができる。
【0048】
ここで、リードタイム(その他の要素も同様)が許容値以上に長くならないルートかどうかは、表において表示された各項目を見れば速やかに判断できる。すなわち、この方法は、「現状の需要戦略及び生産戦略から、目標とする需要戦略及び生産戦略への移行過程を選択する場合において、利得等の経済性を示すデータとリードタイム等の信頼性を示すデータとを含むマネジメントデータが、許容限界値(予め設定されていても、判断の直前に設定するものでもよい)を越えないよう管理しながら、移行過程を選択する方法」として把握することができる。
【0049】
また、この方法は、「需要戦略又は生産戦略を変更することによって経済性を示すデータ又は信頼性を示すデータの一方が変更される際に、他方が許容限界値を越えないよう管理しながら、前記変更を行うマネジメント方法」としても把握できる。これにより、需給戦略を改善していくことができる。なお、前記に例示した経済性を示すデータ及び信頼性を示すデータは、需要戦略又は生産戦略と非独立であり、どちらかを変更することによって変動する性質を有している。
【0050】
ここで、マネジメント方法として大事なことは、
図4(
図3のデータに対応)に示されるように、例えば、ボトルネックが生産制約(生産先手)とすると、一般的に、利益を最大する需要スピードd*が存在することである。逆に、ボトルネックが需要制約(需要先手)とすれば、利益を最大にする生産スピードm*が一般的に存在する。一般的にいえば、利得ERの最大化を追求する販売部門と、費用ECの最小化を追求する生産部門とが、ゲーム的に協力して(すなわちせめぎ合いを行って)、望ましい需要スピードd*、生産スピードm*の地点を見つけ、そこに至る最適ルート(最適かどうかは企業によって異なる)の判断を、前記した表などの表示に基づいて行うことができる。
【0051】
マネジメント方法をさらに具体的に説明する。
図7に見られるように、利得ER、費用EC、利益ENをそれぞれ最適化する需給戦略(d*, m*)が存在する。この戦略は、それぞれ、(1.0, m(≦0.9))、(1.2, 0.8)、(1.0, 0.7)である。このとき、好ましいマネジメント戦略は、前2者を対極値(中心点)とする楕円形の範囲が考えられる。この点を、
図7を用いてさらに詳しく説明する。
図7は、
図2に対応している。
図7においては、利得ERの極11と、費用ECの極12とが存在する。
【0052】
これらの極を中心として、楕円10を想定できる。目標としての利益ENは、この楕円の範囲、特に、通常は、利得ER及び費用ECの間にあると考えられる。この例では、目標としての最適利得ENは、符号13で示すとおり、利得ERと同じ位置にあるが、この場合でも、前記の条件を満足していることになる。ただし、これらの戦略は、リードタイム等の信頼性とトレードオフの関係にあることが一般的である。
【0053】
例えば、
図4から、d<d*ではリードタイムは上昇傾向にあり、d>d*では減少傾向にある。これらから、少々の利益を犠牲にできるならば、需要スピードdはd*以上が好ましい戦略となるであろう。これは、例えば、価格pの上昇によって可能である。このトレードオフの他の解消策として、時間あたりの価値を表す時間価値効率ROW(=EN/LT)を導入することが考えられる。これは、このROWの最大値が存在する場合には特に有効であり、そのためには、DEA(包絡分析法:Data Envelopment Analysis)の活用が可能である。このような方法は、上記説明から容易に設計できるコンピューターソフトウエアにより実現可能である。
【0054】
そのようにすれば、例えば、取るべき戦略(例として需要スピードや生産スピード)の候補を使用者に表示して、使用者がマネジメントのためにどのようなアクションを取ればよいかなどの支援を効率的に行うことができる。これにより、効果的なマネジメントシステムのためのフレームワークが形成できる。また、本実施形態の技術をAPS(Advanced Planning and Scheduling)、ERP(Enterprise Resource Planning)、SCM(Supply Chain Management)等のパッケージソフトと結合させることにより、APS等の管理や戦略機能を補強することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るマネジメント法では、上記図的法より、より一層の発展的形態が可能である。すなわち、ペアマップ(
図9(a))上で、ER(EN)=LT解を目標(理想)として追求する組織の総合的(3M&I系)で、トップ、上位、下位レベルの一体化した活動(
図14)であり、その関連を示すマネジメントマップ(
図18)をコンパスとして運用管理することをロジックの活用大系を特徴とする。このマネジメントマップを活用した大系的マネジメント法は、簡単にはコンパス(θ, φ)による動態的な戦略運用管理法であり、マネジメントマップは、その意味でコックピットに相当し、その中心がペアマップ(θ, φ)(コンパス)となる。例えば、コンビニエンス・ストアの企業例では、上位レベルの短針(θ)がZ(収益)の24時間(360度)プロセスを示し、長針(φ)がR(在庫)の24時間(360度)プロセスを示しており、このペアマップ上のコンパス(θ,φ)による経済的、信頼的運用可動(波動方程式)で、資産(経済性×信頼性)最大化追求の企業化ロボットが原理的に可能である。
【0056】
次に、前記のようにして表示されるマネジメントデータの表示装置(
図5)について説明する。このデータ表示装置は、通常のコンピューターの構成と同様となっている。すなわち、CPU1、ハードディスクなどの記憶装置2、キーボードなどの入力部3及び表示部4を備えた構成となっている。表示部4としては、例えば、CRTなどのディスプレイ装置、プリンタである。本実施形態の表示部4は、前記において説明した表示方法によって表示されるべきマネジメントデータを表示する構成となっている。表示方法は、前記の記載に基づいて当業者には容易に実現可能なので詳細な説明は省略する。
【0057】
次に、本実施形態における、前記したマネジメントデータの生成方法について
図6を参照しながら説明する。これらはPOS、POPデータにより可能である。
(ステップS1)先ず、数値化された需要戦略としての需要スピードdと、数値化された生産戦略としての生産スピードmの初期値を設定する。この初期値は、この例では、所定の範囲で離散的に決定される数値である。
(ステップS2)ステップS1と前後して(通常は前に)、後述する利得や費用等の計算に用いるための経営データ(例えば価格、コスト、バッファ)を、対象となる企業(その中の一事業所でもよい)や企業群について調査し、収集する。
(ステップS3及びS4)次いで、数値化された需要スピード及び生産スピードの初期値と、予めステップS2において収集された経営データとに基づいて、利得と費用とを含むマネジメントデータを計算して生成する。
(ステップS5~S7)次いで、前記ステップにより算出された利得及び費用から利益を算出する。この利益及び、前記各ステップにおいて得られたデータから、好ましくは同時に、リードタイム等の、必要なマネジメントデータを算出する。全てのd、mについて計算が終っていなければ、残るd、mについて、ステップS1からの手順を繰り返す。ただし、このとき、ステップS2は既に完了している場合が多いので、それについては繰り返す必要がない。全てのd、mについて計算が終っていれば、このルーチンを終了し、前記した表示方法に従って、マネジメントデータを、ディスプレイ装置や紙などの表示媒体に表示する。
【0058】
さらに、本実施形態では、上述した各マネジメントデータをペアマップとして表示するステップと、このペアマップにおける変動と相関を有する関連マネジメントデータを表示するステップとを含む処理を実行し、PDCAサイクルを回させる。このPDCAサイクルを回させることにより、先見から始まるPlan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4段階を繰り返し、業績を継続的に改善・発展することができる。すなわち、上記ステップによって表示される関連マネジメントデータを逐次更新して、ペアマップと前記関連マネジメントデータとの相関を維持、改善するようにマネジメント・サイクルを繰り返すことで、事業活動における業績管理(利益向上、コスト削減など)などの管理業務を円滑に発展させることができる。
【0059】
前記した各ステップは、前記の動作を行うコンピュータープログラムによって行うことができる。そのプログラミングは、前記の記載から容易である。ただし、ステップS2は、そのためのプログラム(そのようなデータを収集するものとして、例えば、企業において近年使用されているスループット会計関連プログラムがある。)とリンクさせれば全体としてプログラムによって実行可能であるが、自動的にデータを入手することが困難な場合には、人間が主となって作業を行うことになると考えられる。
【0060】
ステップS2におけるデータ取得の例を、
図2の場合について説明する。利得ERは、単位時間あたりの収益として、価格を需要スピードで除して求めており、販売価格は単なるデータなので容易に収集できる。
図2の例では、価格は9とした。また、費用ECは、単位時間あたりの稼働費用、遊休費用、在庫費用の和としている。すなわち、待ち行列理論により、EC=α1×(平均在庫量;m/(d-m))+α2×(稼働率;m/d)+α3(遊休率;1-m/d)であり、α1、α2、α3は費用係数である。
【0061】
図2の例では、α1=α2=1、α3=10であり、これらは、関連データを基に、原価計算等から容易に算出あるいは推測できるものである。これらのプログラムを表す信号(電気的信号や磁気的信号や光学的信号を含む。)は、FD、CD、MO、ハードディスクなどの記録媒体に記録されたり、又は、ネットワーク(電波や光などの伝送媒体や、アナログやデジタルなどの伝送方式は限定されない。ここでネットワークとは、インターネットやLANのみならず、電話網や放送網など、全ての情報伝送サービスを含む意味である。)により提供されるものである。
【0062】
(代替ペアマップ)
本実施形態におけるペアマップ類には、
図19に示すような、ペアマップの変種としての代替的ペアマップM1が含まれ、この代替ペアマップM1では、第1の評価軸(
図9(a)における縦軸)として離散的に数値化された需要スピードdを設定し、第2の評価軸(
図9(a)における横軸)として離散的に数値化された生産スピードmをとり、これら第1の評価軸及び第2の評価軸を、
図19に示した軸Ax上に重畳させる。このとき、軸Axの一方の原点(ここでは第1の評価軸である需要スピードdの原点)Odを、他方の原点(ここでは第2の評価軸である生産スピードmの原点)Omを、仮想的な無限遠に配置する。すなわち、
図9(a)に示した第1の評価軸の正負を反転させて双方向に対向させ、原点Omの位置が無限大となると仮定し、軸Axを右(第2の評価軸の正方向)に進むにつれてdの値が0に近づくように減少され、生産スピードmが無限大になる位置で需要スピードdの原点Odに至るように設定する。すなわち、第1および第2の評価軸よりトラフィック軸上においてρ=m/d(ただしd>m)又はρ=d/m(ただしd<m)の関係を考える。
このような代替的ペアマップM1では、軸Axの需要スピードdの原点Od側でLTが最小値となりERが最大値となる一方、軸Axの生産スピードmの原点Om側でLTが最大値となりERが最小値となる。そして、この代替的ペアマップによれば、
図19中の矢印で示すように、一方の評価軸上の値(需要スピードd又は生産スピードm)の変動(図示した例では「Δd」)から他方の評価軸上の値(生産スピードm′又は需要スピードd′)やER′、LT′を得ることができる。この一方の評価軸上の値(需要スピードd又は生産スピードm)の変動の幅は、任意に設定してもよく、周期的に再設定を繰り返すようにしてもよい。この変動Δdの幅の再設定を繰り返すことによって、ターゲットとなるER又はLTの値を同図に示す円内に収束させ、リードタイムLTを短くして、利益ERが最大化という究極の値を時間ゼロ、コストゼロ近傍まで追求することも期待できる。
(作用・効果)
以上説明した本実施形態によれば、自然対人工体が深遠で繋がっているというサンドイッチ(S=W)場におけるペアマップ仮説について、人工体マクロ(上位レベル)対ミクロ(下位レベル)の止揚解(波動方程式)の存在と、物理体経済体の符号合わせ(結合対比例定数等)による整合性で示すことで、ペアマップの原形を自然対人工体の基底とした見える化を実現し、利益(スループット)等の経済性の最大化と、リードタイム等の信頼性の向上を図ることができる。また、この自然対人工体の基底の活用により、企業ロボットか、自動化マネジメントの具現化で省力化、省人化等にも役立てることができる。
【0063】
なお、上記実施形態及び実施例の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。例えば、上述した実施形態では、信頼性を示すデータにおけるリードタイム問題(滞在時間)として在庫(個体)を例としたが、その他の流動在庫タイプとして例えば医療における人体の血液や、経済界における貨幣や通貨、及び電力・水力等にも本発明の技術的思想を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
d…需要スピード
m…生産スピード
ER…利得
EC…費用
EN…利益
LT…リードタイム1…
CPU
2…記憶装置
3…入力部
4…表示部