(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】信号伝送システム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/38 20180101AFI20240112BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240112BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20240112BHJP
H04W 88/18 20090101ALI20240112BHJP
【FI】
H04W4/38
G08B25/00 520C
H04W84/18
H04W88/18 130
(21)【出願番号】P 2019107360
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】中内 清秀
(72)【発明者】
【氏名】荘司 洋三
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 良人
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一博
(72)【発明者】
【氏名】劉 巍
【審査官】小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-069516(JP,A)
【文献】特開2012-048489(JP,A)
【文献】特開2017-152774(JP,A)
【文献】特表2014-511136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 25/00
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各エリアに点在する発信機から発信された無線信号をサービス提供事業者により共有されるサーバ又はサービス利用者の受信機に伝送する信号伝送システムにおいて、
上記サービス提供事業者に対して要望するサービスに関する情報が記述された無線信号を発信する発信機と、
上記発信機から発信された無線信号を上記サーバ又は上記受信機に向けて中継し、少なくとも一つの移動自在の無線ルータを含む無線ルータ群を備え、
上記無線ルータ群に含まれる各無線ルータは、
少なくとも受信した上記無線信号を一時的に蓄積してこれを他の無線ルータに繰り返しフラッディングする蓄積伝搬通信により、上記サーバ又は上記受信機に向けて当該無線信号を伝送し、
上記無線信号を受信した上記無線ルータは、
上記蓄積伝搬通信を行う際において、上記無線信号に含まれる制御情報に基づいて上 記サーバ又は上記受信機に向けた中継方法を決定し、
受信した上記無線信号を一時的に蓄積するとともに、
これ以降に新たに受信する無線 信号について、上記発信機から当該無線信号を最初に受信した第1の無線ルータの受信 時刻から集約時間
内にあるか否かを判定し、それらが集約時間内にある場合には重複し ているものと判定して当該新たに受信する無線信号を蓄積することなく、上記制御情報 に含まれる上記受信時刻からの最大到達時間に亘り他の無線ルータに向けてその蓄積し た無線信号を繰り返しフラッディングすること
を特徴とする信号伝送システム。
【請求項2】
各エリアに点在する発信機から発信された無線信号をサービス提供事業者により共有されるサーバ又はサービス利用者の受信機に伝送する信号伝送システムにおいて、
上記サービス提供事業者に対して要望するサービスに関する情報が記述された無線信号を発信する発信機と、
上記発信機から発信された無線信号を上記サーバ又は上記受信機に向けて中継し、少なくとも一つの移動自在の無線ルータを含む無線ルータ群を備え、
上記無線ルータ群に含まれる各無線ルータは、
少なくとも受信した上記無線信号を一時的に蓄積してこれを他の無線ルータに繰り返しフラッディングする蓄積伝搬通信により、上記サーバ又は上記受信機に向けて当該無線信号を伝送し、
上記無線信号を受信した上記無線ルータは、
上記蓄積伝搬通信を行う際において、上記無線信号に含まれる制御情報に基づいて上 記サーバ又は上記受信機に向けた中継方法を決定し、
受信した上記無線信号を一時的に蓄積するとともに、
これ以降に新たに受信する無線 信号について、上記発信機から当該無線信号を最初に受信した第1の無線ルータの受信 地点から集約距離
内にあるか否かを判定し、それらが集約距離内にある場合には重複し ているものと判定して当該新たに受信する無線信号を蓄積することなく、上記制御情報 に含まれる上記受信地点からの最大到達距離の範囲内において他の無線ルータに向けて その蓄積した無線信号を繰り返しフラッディングすること
を特徴とする信号伝送システム。
【請求項3】
上記無線ルータは、上記蓄積した無線信号とその後新たに受信する無線信号との間で、上記サービス提供事業者に対して要望するサービスに関する情報の重複性、当該無線信号を発信した発信機の重複性、上記発信機から当該無線信号を最初に受信した第1の無線ルータの重複性、の何れか1以上を判定し、重複する旨を判定した場合には、当該新たに受信する無線信号を蓄積することなく、上記蓄積した無線信号を繰り返しフラッディングすること
を特徴とする請求項1又は2記載の信号伝送システム。
【請求項4】
上記サーバに伝送された無線信号に基づいてサービス提供事業者が生成したコンテンツデータ又は当該コンテンツデータの存在を示す収集希望ビーコンを上記蓄積伝搬通信により上記サービス利用者に伝送すること
を特徴とする請求項1~3のうち何れか1項記載の信号伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各エリアに点在する発信機から発信された無線信号をサービス提供事業者に伝送する信号伝送システムに関し、特に蓄積伝搬通信により情報の伝搬頻度を多くすることでエリア内での情報の共有・消費をより活性化できる信号伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化に伴い、高齢者の徘徊等が大きな社会問題になる中、屋内外における高齢者の見守りのニーズが高まっている。また地域における安心と安全の確保や防犯に対する意識の高まりから、登下校中の児童に対する見守りのニーズも高まっている。
【0003】
また、人口減少に伴う地方の過疎化が今後は一段と進むことが予想されており、商店が次々に地方から撤退する中、特に行動範囲が狭い高齢者が生活必需品の買い物が困難になるという、いわゆる買い物難民の問題も浮上している。
【0004】
更に交通事故や犯罪、自然災害等、各エリアで現実に起きている様々なイベントや事件に対して、適切な救助をいかに効率的かつ迅速に行うかという問題も近年において取り上げられている。
【0005】
また実際に観光業や各ビジネスを行う上でも各エリアにおいて起きている様々なイベントや顧客の要望を吸い上げ、これに対して十分に応えてくれるサービスやアシストを提供したい事業者もいる。
【0006】
このように見守り、買い物難民、交通安全、防犯、防災や減災、観光業や商業、見廻り(御用聞き)ビジネス等を例に挙げたとき、各事件やイベントに応じた救助要請や顧客による要望が各エリアにおいて発生し、これに対して適切なサービスやアシストを提供することができるような社会システムを構築する必要がある。実際には、このような事件やイベント、顧客による要望が反映された地域データが順次発生したとき、これを収集してサービス提供事業者間で共有でき、或いは収集した地域データを利用者への情報配信し、更には利用者間での情報共有可能な、いわゆる地域IoTサービス基盤を構築しておく必要がある。サービス提供事業者は、この地域IoTサービス基盤を介して取得した各エリアからの地域データに基づいて、最適なサービスやアシスト、或いは最適な情報配信を各エリアごとに提供することが可能となる。
【0007】
このような地域IoTサービス基盤を構築するためには、先ずは各エリアにおいて発生した地域データを収集し、サービス提供事業者に共有できるようにするための伝送システムを構築する必要がある。従来におけるこの伝送システムは、周知の省電力無線通信技術、小型・省電力デバイス技術、クラウド技術等を活用し、インターネット等の公衆通信網をそのインフラのベースにしたものが多かった(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1の開示技術は、児童や高齢者が持つ近距離無線通信機器から受信したビーコン信号を公衆通信網を介してクラウド等に収集するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、地域IoTサービス基盤では、公衆通信網に対して信号伝送する上で必要な無線ルータが各エリアに対して密に敷設することができない場合には、地域データの検出精度が低下してしまう問題が生じる。その検出精度の低下の問題について説明するために、以下の
図16に示す従来型の地域IoTサービス基盤7を例に挙げて説明をする。この従来型の地域IoTサービス基盤7では、見守りが必要な高齢者や児童が保持するビーコン発信機71と、各エリアに敷設された無線ルータ72a、72bと、この無線ルータ72a、72bに対して公衆通信網を介して接続されたサーバ73とを備えている。
【0010】
ビーコン発信機71を保持する高齢者や児童がちょうど無線ルータ72a、72bの近傍に位置しているのであれば、当該ビーコン発信機71から発信されたビーコン信号を無線ルータ72a、72bにより受信することができ、サービス提供事業者により共有することが可能なサーバ73に公衆通信網を介して当該ビーコン信号を伝送することが可能となる。
【0011】
しかしながら、ビーコン発信機71を保持する高齢者や児童が無線ルータ72a、72bから離れた箇所に位置しているのであれば、つまり
図16中の「検出できないエリア」近傍にビーコン発信機71が位置しているのであれば、当該ビーコン発信機71から発信されたビーコン信号を無線ルータ72a、72bにより受信することができず、これをサーバ73に伝送することができない。このように、無線ルータ72が各エリアに対して密に敷設することができない場合には、高齢者や児童等の見守り対象者の検出精度が低下してしまうという問題点が生じる。
【0012】
また従来型の地域IoTサービス基盤7では、公衆通信網を介して信号伝送を行う無線ルータ72内に高価な高域モバイル回線を実装する必要があり、低コストな信号伝送を実現する上で大きな障壁になるという問題点もあった。
【0013】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、地域IoTサービス基盤を構築する上で、各エリアに点在する発信機から発信された無線信号をサービス提供事業者に伝送する際に、公衆通信網の利用頻度を少なくすることで低コストで信号伝送を実現することが可能な信号伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係る信号伝送システムは、各エリアに点在する発信機から発信された無線信号をサービス提供事業者により共有されるサーバ又はサービス利用者の受信機に伝送する信号伝送システムにおいて、上記サービス提供事業者に対して要望するサービスに関する情報が記述された無線信号を発信する発信機と、上記発信機から発信された無線信号を上記サーバ又は上記受信機に向けて中継し、少なくとも一つの移動自在の無線ルータを含む無線ルータ群を備え、上記無線ルータ群に含まれる各無線ルータは、少なくとも受信した上記無線信号を一時的に蓄積してこれを他の無線ルータに繰り返しフラッディングする蓄積伝搬通信により、上記サーバ又は上記受信機に向けて当該無線信号を伝送し、上記無線信号を受信した上記無線ルータは、上記蓄積伝搬通信を行う際において、上記無線信号に含まれる制御情報に基づいて上記サーバ又は上記受信機に向けた中継方法を決定し、受信した上記無線信号を一時的に蓄積するとともに、これ以降に新たに受信する無線信号について、上記発信機から当該無線信号を最初に受信した第1の無線ルータの受信時刻から集約時間内にあるか否かを判定し、それらが集約時間内にある場合には重複しているものと判定して当該新たに受信する無線信号を蓄積することなく、上記制御情報に含まれる上記受信時刻からの最大到達時間に亘り他の無線ルータに向けてその蓄積した無線信号を繰り返しフラッディングすることを特徴とする。
【0015】
第2発明に係る信号伝送システムは、各エリアに点在する発信機から発信された無線信号をサービス提供事業者により共有されるサーバ又はサービス利用者の受信機に伝送する信号伝送システムにおいて、上記サービス提供事業者に対して要望するサービスに関する情報が記述された無線信号を発信する発信機と、上記発信機から発信された無線信号を上記サーバ又は上記受信機に向けて中継し、少なくとも一つの移動自在の無線ルータを含む無線ルータ群を備え、上記無線ルータ群に含まれる各無線ルータは、少なくとも受信した上記無線信号を一時的に蓄積してこれを他の無線ルータに繰り返しフラッディングする蓄積伝搬通信により、上記サーバ又は上記受信機に向けて当該無線信号を伝送し、上記無線信号を受信した上記無線ルータは、上記蓄積伝搬通信を行う際において、上記無線信号に含まれる制御情報に基づいて上記サーバ又は上記受信機に向けた中継方法を決定し、受信した上記無線信号を一時的に蓄積するとともに、これ以降に新たに受信する無線信号について、上記発信機から当該無線信号を最初に受信した第1の無線ルータの受信地点から集約距離内にあるか否かを判定し、それらが集約距離内にある場合には重複しているものと判定して当該新たに受信する無線信号を蓄積することなく、上記制御情報に含まれる上記受信地点からの最大到達距離の範囲内において他の無線ルータに向けてその蓄積した無線信号を繰り返しフラッディングすることを特徴とする。
【0016】
第3発明に係る信号伝送システムは、第1発明又は第2発明において、上記無線ルータは、上記蓄積した無線信号とその後新たに受信する無線信号との間で、上記サービス提供事業者に対して要望するサービスに関する情報の重複性、当該無線信号を発信した発信機の重複性、上記発信機から当該無線信号を最初に受信した第1の無線ルータの重複性、の何れか1以上を判定し、重複する旨を判定した場合には、当該新たに受信する無線信号を蓄積することなく、上記蓄積した無線信号を繰り返しフラッディングすることを特徴とする。
【0017】
第4発明に係る信号伝送システムは、第1発明~第3発明の何れかにおいて、上記サーバに伝送された無線信号に基づいてサービス提供事業者が生成したコンテンツデータ又は当該コンテンツデータの存在を示す収集希望ビーコンを上記蓄積伝搬通信により上記サービス利用者に伝送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明を適用した信号伝送システムによれば、固定設置される無線ルータが各エリアに対して密に敷設することができない場合においても、偶然近接したモバイル基盤(タクシー等)に実装された無線ルータにより受信される可能性を高めることができ、無線信号に含められた地域データの検出精度を高めることが可能となる。
【0021】
これに加えて、本発明を適用した信号伝送システムによれば、無線信号の伝送の大半をマルチホップ通信と、蓄積伝搬通信とを組み合わせることで実現することができ、その分において公衆通信網の利用頻度を下げることができる。このため、公衆通信網を介して信号伝送を行う上で無線ルータ内に高価な高域モバイル回線を実装する必要が少なくなり、より低コストな信号伝送を実現することが可能となる。
【0022】
特に本発明においては、無線信号を受信した無線ルータは自ら受信データをサーバに送信するのではなく、マルチホップ無線通信と蓄積伝搬通信とを組み合わせることで、無線ルータにこの無線信号を集約させる。無線ルータがサーバに対して公衆通信網を介して接続されているのであれば、この無線ルータ2cを介して無線信号をまとめて公衆通信網を介してサーバへ送信することができる。その結果、公衆通信網において必要な広域モバイル回線数を削減することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明を適用した信号伝送システムが適用される地域IoTサービス基盤6のコンセプトを示す図である。
【
図2】信号伝送システムにおける、地域データの検出から収集のコンセプトを示す図である。
【
図3】マルチホップ通信と、蓄積伝搬通信とを組み合わせながら、サーバへと伝送する例を示す図である。
【
図4】(a)は、マルチホップ通信について説明するための図であり、(b)は、蓄積伝搬通信について説明するための図である。
【
図5】蓄積伝搬通信の下で、発信機からサーバに至るまでビーコン信号を伝送する例を模式的に示す図である。
【
図6】無線ルータの機能構成について説明するための図である。
【
図7】
図6におけるステップS17とステップS21のみにクローズアップし、その処理動作を描いたフローチャートである。
【
図8】第1の無線ルータにより受信した際に付与されたタイムスタンプが集約時間内であるか否かを判定する例を示す図である。
【
図9】第1の無線ルータにより受信したビーコン信号の受信位置が、集約距離D
0の範囲内にあるか否かを判定する例を示す図である。
【
図10】ビーコン信号のフレームフォーマットの一例を示す図である。
【
図11】住宅内にある発信機から発信されたビーコン信号を車両等に搭載された無線ルータが収集し、最終的な目的地としてのサーバへ送信する例を示している。
【
図12】超広帯域に亘る地域データの収集、配信をする手順の例を示す図である。
【
図13】超広帯域に亘る地域データの配信をする他の手順の例を示す図である。
【
図14】本発明を適用した信号伝送システムにおける具体的なビーコン信号の伝送例について説明するための図である。
【
図15】本発明を適用した信号伝送システムにおける具体的なビーコン信号の伝送例について説明するための他の図である。
【
図16】従来技術の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用した信号伝送システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0025】
図1は、本発明を適用した信号伝送システム1が適用される地域IoTサービス基盤6のコンセプトを示す図である。地域IoTサービス基盤6は、各地域(エリア)において発生する様々な地域データを検出してこれを収集してサーバ64において共有し、その共有した地域データに基づいてサービス提供事業者が各地域(エリア)に対して各種サービスやアシストを提供し、或いは当該地域(エリア)に対してその地域データに応じた最適な情報を配信する基盤である。特にこの信号伝送システム1は、各地域から地域データを検出するのみならず、その地域データを共有・転送し、これを各地域にフィードバックすることで積極的に活用を促し、消費させるための基盤を提供するものでもある。
【0026】
ここでいうサービス提供事業者とは、地域データに基づいて、物流、医療、通信、教育、インフラ構築、エンターテイメント、フィンテック、行政等のようなサービスを提供するあらゆる事業者を含む。このサービス提供事業者は、私企業、公企業のみならず、個人事業主、家族も含まれる。
【0027】
地域IoTサービス基盤6を構成する各エリアは、人々が生活をし、また仕事をする上で必要な電気、ガス、水道等を提供するライフライン基盤61、生活や仕事をする上で必要となる固定基盤62(ビルやマンション、駅、小売店舗、保育園、老人ホーム、発電所、郵便局、自動販売機、各種インフラ等)に加え、実際に人や物を運ぶモバイル基盤63がこれらの外周に配備される。このモバイル基盤63は、自動車、バス、トラック、タクシー、ドローン、航空機等であり、あくまで人や物を固定基盤62にリンクした目的地まで運ぶという目的の下で各エリアの内外を移動する。
【0028】
このような地域IoTサービス基盤6を構成する各エリアにおいては、様々な地域データが発生する。例えば高齢者や登下校中の児童に対して見守りが必要である旨の地域データが発生する。また過疎地の住民で生活必需品の購入が困難な場合に、その購入希望が含められた地域データが発生する。また交通事故や犯罪、自然災害等、各エリアで現実に起きている様々なイベントや事件に対して、救助を求める地域データが発生する。更には、に観光業や各ビジネスを行う上、各エリアにおいて起きている様々なイベントや顧客の要望が含められた地域データも発生する。
【0029】
つまり、地域IoTサービス基盤6を構成する各エリアにおいては、見守り、買い物難民、交通安全、防犯、防災や減災、観光業や商業、見廻り(御用聞き)ビジネス等を例に挙げたとき、各事件やイベントに応じた救助要請や顧客による要望が各エリアにおいて発生し、このような救助要請や要望等が反映された地域データが発生する。このような地域データが順次発生したとき、これを収集してサービス提供事業者間で共有することにより、最適なサービスやアシスト、或いは最適な情報配信を各エリアごとに提供することが可能となる。
【0030】
本発明に係る信号伝送システム1では、この地域IoTサービス基盤6における地域データの検出と、検出した地域データの収集、収集した地域データのサーバ64への蓄積を行う。この信号伝送システム1は、地域IoTサービス基盤6を構成するライフライン基盤61、固定基盤62、モバイル基盤63に特段改変を施すことなくそのまま活かす。固定基盤62を構成するビルやマンション、病院、自動販売機等は所期の目的の下で人々が生活や仕事を行う上で所期の目的の下で必要な役割を担う。同様にモバイル基盤63を構成する自動車やトラック、ドローン等は、所期の目的の下で人や物を運ぶ役割を担う。地域IoTサービス基盤6を構成するライフライン基盤61、固定基盤62、モバイル基盤63は、それぞれの目的の下で与えられた役割を担いつつ、信号伝送システム1の下で地域データの検出から収集までのプロセスをも担う、いわゆる「ながら」業務を行うことになる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、収集した地域データをサーバ64に伝送することを前提としているが、これに限定されるものではない。収集した地域データをサーバ64に伝送することなく、これを直接的に地域IoTサービス基盤6を構成するサービス利用者の受信機に伝送するようにしてもよい。
【0032】
また、サーバ64は、車両に搭載されていてもよいし、後述する無線ルータ内に実装されていてもよい。またサーバ64は、スマートフォンやタブレット端末、ウェアラブル端末等の各種端末装置の記憶部として構成されるものであってもよい。
【0033】
図2は、信号伝送システム1における、地域データの検出から収集のコンセプトを示している。モバイル基盤63を構成するタクシー81は、指定された場所まで人を運ぶという目的の下でエリア内を走行する。このとき、偶然に通りかかった固定基盤62におけるある家から、例えば「お米と牛乳を買いたい」、「△△医療・健康サービス求む」、「□□に行きたい」等といった要望や救助要請が含められた地域データが発生する場合がある。また偶然に通りかかった固定基盤62におけるある商店からは「お勧め商品〇〇特売中」等の案内広告が含められた地域データが発生したり、或いはある観光案内所から「ここだけ、地域観光情報あります」等といった案内広告が含められた地域データが発生する場合も出てくる。タクシー81は、これらの通りがかった家や商店等から地域データを拾い上げることで、これに含まれる救助要請、要望、案内広告を検出することができ、各エリアにおいて発生している人々のニーズを拾い上げることが可能となる。
【0034】
タクシー81は、その後も人を運ぶという自らの目的の下で走行を続けるが、これと並行して、その検出した地域データを収集することを並行して行う。即ち、人(物)を運ぶと共に地域データも一緒に運ぶ。
【0035】
なお、この地域データの収集は、一台のタクシー81のみに担わせる場合に限定されるものではない。例えば
図3に示すように、固定基盤62(ビル等)から発生した地域データを検出し、これをマルチホップ通信と、蓄積伝搬通信とを組み合わせながら、サーバ64へと伝送していく。このマルチホップ通信と蓄積伝搬通信は、最初に地域データを検出したタクシー81のみならず、他の固定基盤62、モバイル基盤63と協働して行うようにしてもよい。このとき、
図3に示すように、一度モバイル基盤63としてのタクシー81に伝送された地域データを固定基盤62としての自動販売機82に伝送し、更にもう一度、モバイル基盤63としての他のタクシー81に地域データを伝送するようにしてもよい。固定基盤62とモバイル基盤63間の地域データの伝送に加え、固定基盤62間の地域データの伝送(例えば、自動販売機間、ビルと自動販売機間の伝送)や、モバイル基盤63間の地域データの伝送(例えば、自動車間、自動車とトラック間の伝送)を組み合わせるようにしてもよい。
【0036】
本発明を適用した信号伝送システム1において、発生した地域データをビーコン信号に含め、このビーコン信号を収集してサーバ64において共有する。このようなビーコン信号の発信は、ビーコン信号を発生させることが可能な簡易な発信機で構成するようにしてもよい。また実際のビーコン信号の伝送は無線ルータを介して行う。この無線ルータを固定基盤62(ビルやマンション、駅、小売店舗、保育園、老人ホーム、発電所、郵便局、自動販売機、各種インフラ等)や、モバイル基盤63(自動車、バス、トラック、タクシー、ドローン、航空機等)に実装することにより、地域IoTサービス基盤6上では、
図3に示すように、あたかも固定基盤62やモバイル基盤63が地域データ(ビーコン信号)を送受信しているように振舞わせることが可能となる。
【0037】
なお、以下の実施形態においては、地域データをビーコン信号を伝送する場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではなく、ビーコン信号以外のあらゆる無線信号に地域データを重畳させて伝送するものであればいかなる形態も含まれる。
【0038】
以下、無線ルータを利用することにより実行するマルチホップ通信と、蓄積伝搬通信について説明をする。
【0039】
マルチホップ通信は、受信したビーコン信号を他の無線ルータを経由させながら中継する方法である。このマルチホップ通信は、フラッディングで受信した無線信号を、即座に同様の方法でフラッディングして中継する、いわゆるバケツリレー的な伝送方法である。
図4(a)に示すように、無線ルータ2aから発信されたビーコン信号を他の無線ルータ2bへ中継し、また無線ルータ2bは受信したビーコン信号を他の無線ルータ2cへ中継する。つまり、無線ルータ2aから直接的にサーバ64にビーコン信号を伝送するのではなく、他の無線ルータ2b、2c等を経由させながら中継して伝送する。
【0040】
蓄積伝搬通信は、
図4(b)に示すように、固定基盤(自動販売機等)62に実装された無線ルータ2aから発信されたビーコン信号を、モバイル基盤(タクシー81)63に実装された無線ルータ2bが受信する。無線ルータ2bは、この受信したビーコン信号を一時的に蓄積する。この無線ルータ2bは、タクシー81の移動に伴い、自身も移動することになるが、その間においてこの蓄積したビーコン信号をフラッディング(ブロードキャスト)し続ける。その結果、固定基盤(自動販売機等)63に実装された他の無線ルータ2cの通信可能距離までこの無線ルータ2bが移動したときに、このフラッディングしているビーコン信号をこの無線ルータ2cが受信することができる。
【0041】
この
図4(b)において無線ルータ2aと無線ルータ2cとの間で直接無線通信することができない場合を仮定したときに、このような蓄積伝搬通信により、ビーコン信号を受信した無線ルータ2bがこれを一時的に蓄積し、自身の移動と共に繰り返しフラッディングすることで、これを無線ルータ2cへと送ることが可能となる。タクシー81は、自身の目的の下で人を運んでいるが、この過程で、偶然に無線ルータ2aの近傍を通りかかったときに、当該無線ルータ2aから発信されたビーコン信号をタクシー81に実装された無線ルータ2bが受け取ることができる。その後タクシー81が移動した結果、偶然に無線ルータ2cの近傍を通過する際に、この無線ルータ2aからフラッディングされているビーコン信号を無線ルータ2cが受信することが可能となる。その結果、直接的に通信することができない無線ルータ2aと無線ルータ2cとの間において、この無線ルータ2bを介した蓄積伝搬通信を通じてビーコン信号を通信することが可能となる。
【0042】
図5は、この蓄積伝搬通信の下で、発信機3からサーバ64に至るまでビーコン信号を伝送する例を模式的に示している。ビーコン信号を発信する発信機3は、例えば見守りが必要な高齢者や児童、事故や事件を目撃し救助を求めようとする者、更には買い物を希望する住人等が所持しており、これらのサービスが必要となった段階において発信機3が操作されてビーコン信号が発信する。この発信したビーコン信号は、近傍(エリアA)に無線ルータ2aが存在していれば、当該無線ルータ2aにより受信されることになる。この無線ルータ2aにより受信されたビーコン信号は、偶然近接したモバイル基盤63(タクシー81等)に実装された無線ルータ2bにより受信されて一時的に蓄積され、タクシー81等の移動に伴って移動する間において無線ルータ2bからフラッディングされ続けられる。そして、エリアCに設置された無線ルータ2cに偶然近接した場合に、このフラッディングされたビーコン信号が当該無線ルータ2cに受信される。無線ルータ2cに受信されたビーコン信号は、同様の蓄積伝搬通信やマルチホップ通信を組み合わせながら、一部はインターネット等の公衆通信網を経ながらサーバ64へと伝送されることになる。
【0043】
なお、この発信機3がエリアA以外のエリアBに移動した場合には、上述した無線ルータ2aにより受信することはできないが、仮に無線ルータ2bが偶然にこのエリアB内を通過している場合には、このエリアBにおいて発せられた発信機3からのビーコン信号を受信することが可能となる。このエリアBにおいて無線ルータ2bにより受信されたビーコン信号は、同様にエリアCに設置された無線ルータ2cに偶然近接した場合には、これを当該無線ルータ2cへ送信することができる。
【0044】
また、この発信機3がエリアA以外のエリアCに移動した場合には、発信機3からのビーコン信号を無線ルータ2cにより受信することが可能となる。
【0045】
このようにして、本発明を適用した信号伝送システム1によれば、固定設置される無線ルータ2a、2cが各エリアA~Cに対して密に敷設することができない場合においても、偶然近接したモバイル基盤63(タクシー81等)に実装された無線ルータ2bにより受信される可能性を高めることができ、ビーコン信号に含められた地域データの検出精度を高めることが可能となる。
【0046】
これに加えて、本発明を適用した信号伝送システム1によれば、ビーコン信号の伝送の大半をマルチホップ通信と、蓄積伝搬通信とを組み合わせることで実現することができ、その分において公衆通信網の利用頻度を下げることができる。このため、公衆通信網を介して信号伝送を行う上で無線ルータ2内に高価な高域モバイル回線を実装する必要が少なくなり、より低コストな信号伝送を実現することが可能となる。
【0047】
特に本発明においては、無線ビーコンを受信した無線ルータ2は自ら受信データをサーバに送信するのではなく、マルチホップ無線通信と蓄積伝搬通信とを組み合わせることで、無線ルータ2cにこのビーコン信号を集約させる。無線ルータ2cがサーバ64に対して公衆通信網を介して接続されているのであれば、この無線ルータ2cを介してビーコン信号をまとめて公衆通信網を介してサーバ64へ送信することができる。その結果、公衆通信網において必要な広域モバイル回線数を削減することも可能となる。
但し、本発明においては、マルチホップ無線通信を行うことは必須ではなく、少なくとも蓄積伝搬通信を行うものであればよい。
【0048】
なお、発信機3と無線ルータ2間、及び無線ルータ2同士のマルチホップ無線通信と蓄積伝搬通信の通信方式としては、IoT向け無線通信規格Wi-SUNや近接無線通信規格 BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、Wi-Fi(登録商標)を想定するが,それ以外のいかなる無線通信方式を適用してもよい。Wi-SUNは,Wireless Smart Utility Network の略であり,免許不要920MHz帯を使う無線通信規格の一つである。このWi-SUNは、消費電力が小さく、比較的長距離な通信とマルチホップ無線通信による更なる通信距離の延伸が可能という特徴がある。なお、これら通信方式において、例えば、無線通信規格Wi-SUNで受信した信号を、近接無線通信規格BLEで中継するような周知の変換パターンも当然に適用すること可能となる。
【0049】
次に、上述した各処理を実行する無線ルータ2の機能構成について説明をする。
【0050】
無線ルータ2内のインタフェースは、
図6に示すように、入り口部分は、無線通信規格Wi-SUN に合わせたWi-SUNインタフェースと、無線通信規格BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)規格に合わせたBLEインタフェースに分かれており、その後段の処理はSCF基盤を通じて包括的に行う。
【0051】
Wi-SUNインタフェースでは、無線通信規格Wi-SUNに適合したビーコン信号を受信し(ステップS11)、Wi-SUNフィルタを通じて不要なビーコン信号を除去する(ステップS12)。このステップS12においては、ビーコン信号に付された時刻やホップ数、再送数、PAN ID等を介して明らかに受信対象とは異なるものを除去する。つまり、Wi-SUNフィルタは、時刻フィルタやホップ数フィルタ、再送フィルタ、PAN IDフィルタ等で構成されていてもよい。
【0052】
一方、BLEインタフェースにおいても同様に、無線通信規格BLEに適合したビーコン信号を受信し(ステップS13)、BLEフィルタを通じて不要なビーコン信号を除去する(ステップS14)。このステップS14においては、ビーコン信号に付されたPDU TYPE,Local Name,UUID等を介して明らかに受信対象とは異なるものを除去する。
【0053】
次にSCF基盤に移行する。このSCF基盤では、Wi-SUNインタフェースにおけるステップS12からステップS15に移行し、MACアドレスフィルタを施す。このMACアドレスフィルタは、MACアドレスを通じて明らかに受信対象とは異なるものを除去する。ステップS15の処理動作を終了させた後は、ステップS17へ移行する。
【0054】
同様にこのSCF基盤では、BLEインタフェースにおけるステップS14からステップS16に移行し、BLE-Wi-SUN変換を施す。つまり、受信したビーコン信号について、無線通信規格BLEから無線通信規格Wi-SUNに変換する処理を施す。ステップS16の処理動作を終了させた後は、ステップS17へ移行する。ちなみに、
図6の例では、Wi-SUN とBLEの2つの無線通信規格を例に挙げて説明しているが、他の無線通信期間も同様の手順に基づいて処理されることは勿論である。
【0055】
ステップS17においては、ルータ処理を行う。このルータ処理では、発信機3からビーコン信号を最初に受信した無線ルータ2n(以下、第1の無線ルータ2nという。)に関する情報が付与されているか否かを確認する。その結果、第1の無線ルータ2nに関する情報が付与されていればそのままステップS18へ移行する。一方、第1の無線ルータ2nに関する情報が付与されていなければ、このステップS17において、これを付与する。
【0056】
次にステップS18へ移行し、SUNcフィルタ処理を施す。このSUNcフィルタ処理では、MACアドレスフィルタを通じて改めて明らかに不要なMACアドレスのものを除去したり、受信したビーコン信号の発信元からの距離が明らかに遠すぎ、或いは近すぎることにより受信対象外となりえるものを除去する。また、このSUNcフィルタ処理では、受信したビーコン信号の発信時からの時間が明らかに長すぎ、或いは短すぎることにより受信対象外となりえるものを除去する。このSUNcフィルタ処理では、これら以外に、PAN IDやLocal Name、サービスネットワークID等に基づいて明らかに受信対象外のものを除去するようにしてもよい。
【0057】
次にステップS19へ移行し、ビーコン信号を正式に受信したことをアプリケーション側に通知する。アプリケーション側は、この受信通知を受け取ることにより、受信したビーコン信号は廃棄すべきではないことを理解することが可能となる。
【0058】
ステップS19においては、SCFフラグが付されているか否かを判別する。SCFフラグは、ビーコン信号のフレームデータに割り当てられた1ビットのフラグであり、受信したビーコン信号を内部蓄積するか否か、つまり上述した蓄積伝搬通信を行うか否かを特定するためのフラグである。
【0059】
ちなみに、このフラグは1ビットで構成される場合に限定されるものではなく、例えば2ビット以上に拡張し、SCFフラグの処理方法のバリエーションを持たせるようにしてもよい。
【0060】
SCFフラグが無効になっている場合には、ビーコン信号を内部蓄積することなくそのままフラッディング(ブロードキャスト)を行う。つまり、マルチホップ無線通信のみで通信を行い、蓄積伝搬通信は行わない。かかる場合には、ステップS20に移行し、受信したビーコンをフラッディングして終了となる。一方、SCFフラグが有効になっている場合には、ステップS21に移行し、受信したビーコン信号を内部蓄積を行うか否かを判断する。つまり、SCFフラグが有効になっている場合には、マルチホップ無線通信のみならず、蓄積伝搬通信を行う可能性もあり得ることを意味する。
【0061】
ステップS21において、この受信したビーコン信号について内部蓄積条件を満たす旨を判断した場合には、ステップS22においてこれを無線ルータ2内において内部蓄積する処理動作を行う。
【0062】
図7は、このステップS17とステップS21のみにクローズアップし、その処理動作を描いたフローチャートである。このフローチャートは、SCFフラグが有効になっている場合の例である。
【0063】
ステップS17においては、第1の無線ルータ2nに関する情報の有無を確認する。具体的には、第1の無線ルータ2nに関する情報として、最大ホップ数に加え、それぞれ後述する最大到達時間、最大到達距離、第1の無線ルータ2nのMACアドレス、第1の無線ルータ2nによる受信時刻のタイムスタンプと受信座標等(以下、制御情報という。)がビーコン信号内に付与されているか否かを確認する。その結果、第1の無線ルータ2nに関する情報があればステップS21へ、より詳細にはステップS18、19を経てから移行する。一方、第1の無線ルータ2nに関する情報が無い場合には、ステップS17´へ移行し、制御情報をビーコン信号内に付与し、ステップS21へ移行する。
【0064】
ステップS21においては、内部蓄積条件の確認(重複判定)を行う。この重複判定は、新たに受信したビーコン信号が、これより以前に受信したビーコン信号に対して、より新鮮な情報が含まれているか否かを判定するものである。新たに受信したビーコン信号が以前に受信したビーコン信号と同一であるか、或いは同一でなくても類似の情報しか含まれていなければ、当該新たに受信したビーコン信号を新たに内部蓄積しなくても以前受信して内部蓄積してあるビーコン信号を利用すれば十分である。換言すれば、新たに受信したビーコン信号に含まれる地域データは、既に取得済みであるため、新たに内部蓄積する必要は無い旨を判定することができる。
【0065】
一方、新たに受信したビーコン信号が以前に受信したビーコン信号と異なるものであれば、当該新たに受信したビーコン信号を新たに内部蓄積しなければならないことを理解することができる。換言すれば、新たに受信したビーコン信号に含まれる地域データは、未だ取得していない新たなものであるから、新たに内部蓄積する必要があるものと判定することができる。
【0066】
かかる趣旨の下で、本発明では、様々な観点からこの重複性の判定を行うべく、以下の5項目について重複判定を行う。
【0067】
先ず、第1の判定項目として、送信元デバイスIDの同一性を判定する。ここでいう送信元デバイスIDとは、ビーコン信号を最初に発信した発信機3に関するIDである。新たに受信したビーコン信号と、以前に受信したビーコン信号との間で、送信元デバイスIDが同一であれば、互いに重複しているものと推定し、当該新たに受信したビーコン信号は内部蓄積しない。
【0068】
第2の判定項目として、発信機3から発信されたビーコン信号を最初に受信した第1の無線ルータ2nのMACアドレスの同一性を判定する。第1の無線ルータ2nのMACアドレスが、新たに受信したビーコン信号と、以前に受信したビーコン信号との間で共通しているのであれば、互いに重複しているものと推定し、当該新たに受信したビーコン信号は内部蓄積しない。
【0069】
第3の判定項目として、第1の無線ルータ2nにより受信した際に付与されたタイムスタンプが集約時間内であるか否かを判定する。
【0070】
この集約時間T
0とは、
図8に示すように、第1の無線ルータ2nが発信機3からのビーコン信号の受信時刻からカウントする。第1の無線ルータ2nは、時刻t
0において発信機3からビーコン信号を受信したものする。発信機3は、同じ内容の地域データを含めたビーコン信号を連続して送信する場合もあることから、Seq100、101、102、・・・と連続してビーコン信号を発信する。第1の無線ルータ2nは、このようなビーコン信号はSeq100、101、102、・・から時系列的に受信することになるが、この最初に受信したビーコン信号Seq100の受信時刻から集約時間T
0をカウントする。また第1の無線ルータ2nは、最初に受信したビーコン信号Seq100を内部蓄積する。第1の無線ルータ2nは、これ以降に受信するビーコン信号Seq101、102、・・・について、集約時間T
0内にあるか否かを判定し、これらが集約時間T
0内にある場合には、重複しているものと判定する。この
図8の例では、ビーコン信号Seq101、102、・・・、104までは、集約時間T
0内にあるため、直近で内部蓄積したビーコン信号Seq100と重複しているものとみなし、これを受信しても内部蓄積することはしない。一方、集約時間T
0を超えた後に初めて受信するビーコン信号Seq105の受信時刻は、直近で内部蓄積したビーコン信号Seq100の受信時刻に対して相当時間が経過している。このため、このビーコン信号Seq105は、直近で内部蓄積したビーコン信号Seq100と重複していない、新鮮な地域データが含まれているものとみなし、これを内部蓄積する。そして、この内部蓄積したビーコン信号Seq105の受信時刻から新たな集約時間T
0が開始され、これ以降に受信するビーコン信号Seq106、107、・・・についても同様に集約時間T
0内にあるか否かを判定していくことを繰り返し行う。
【0071】
実際にこの集約時間T0内にあるか否かの判定は、各ビーコン信号が第1の無線ルータ2nの受信時刻において付与されるタイムスタンプに基づいて行っていくことになる。ビーコン信号を受信する都度、付与されたタイムスタンプに基づいて集約時間T0内にあるか否かをシステマティックに判定することにより、以前受信したビーコン信号に対する重複性を判定することができる。新たに受信したビーコン信号の受信時刻が、以前受信したビーコン信号に対して集約時間T0を超えていない場合には、新鮮な地域データが含まれていないものと判断し、新たに受信したビーコン信号を内部蓄積することはしない。これにより、同様の地域データが記述されたビーコン信号を都度内部蓄積することを防止することができ、大量のビーコン信号を内部蓄積することにより処理動作が重くなることを防止することができる。
【0072】
第4の判定項目として、第1の無線ルータ2nにより受信したビーコン信号の受信座標が、集約距離D0の範囲内にあるか否かを判定する。
【0073】
この集約距離D
0とは、
図9に示すように、第1の無線ルータ2nが発信機3から最初にビーコン信号を受信した受信地点からの距離としてカウントされるものである。第1の無線ルータ2nは、受信時刻t
0において発信機3からビーコン信号を受信したものする。最初に受信したビーコン信号Seq100の受信時刻t
0における受信地点の緯度と経度等で表現される第1受信座標を取得する。第1の無線ルータ2nは、最初に受信したビーコン信号Seq100を内部蓄積する。第1の無線ルータ2nは、これ以降に受信するビーコン信号Seq101、102、・・・についても同様に受信地点の緯度と経度等で表現される受信座標を取得する。第1の無線ルータ2nは、このビーコン信号Seq101、102、・・・について取得した受信座標と、ビーコン信号Seq100の第1受信座標との距離を求める。この求めた距離が第1受信座標を基点とした集約距離D
0の範囲内にある場合には、重複しているものと判定する。この
図9の例では、ビーコン信号Seq101、102、・・・、106までは、集約距離D
0内にあるため、直近で内部蓄積したビーコン信号Seq100と重複しているものとみなし、これを受信しても内部蓄積することはしない。一方、集約距離D
0を超えた後に初めて受信するビーコン信号Seq107の受信座標は、直近で内部蓄積したビーコン信号Seq100の第1受信座標よりも相当距離が離れている。このため、このビーコン信号Seq106は、直近で内部蓄積したビーコン信号Seq100と重複していない、新鮮な地域データが含まれているものとみなし、これを内部蓄積する。そして、この内部蓄積したビーコン信号Seq106の受信座標を新たな第1受信座標と、これを基点とした集約距離D
0を設定し、これ以降に受信するビーコン信号Seq107、108、・・・についても同様に集約距離D
0内にあるか否かを判定していくことを繰り返し行う。
【0074】
第5の判定項目としては、新たに受信したビーコン信号と、以前に受信したビーコン信号との間で、アプリケーションデータの重複性を判定する。このアプリケーションデータの重複性は、ビーコン信号におけるアプリケーションデータの内容を確認することにより行う。
【0075】
図10は、ビーコン信号のフレームフォーマットの一例を示している。ビーコン信号は、MACヘッダとMACペイロードとフッタに大別することができる。MACヘッダには、フレームコントロール、シーケンス番号、宛先PANID、宛先アドレス、送信元アドレス、ヘッダIE等の管理情報が記述される。またMACペイロードは実データが記述される領域であり、ペイロードIEと、ペイロードに分割することができる。ペイロードIEには、Wi-SUNに関する制御情報が書き込まれており、ペイロードには実際のアプリケーションデータが書き込まれる。第5の判定項目においては、このアプリケーションデータの重複性を、ペイロードの内容を読み取ることにより確認する。
【0076】
ちなみに、本発明は、ペイロード部にアプリケーションデータが記述されていることが必須ではなく、このペイロード部にアプリケーションデータが記述されていない場合も含まれる。このペイロード部にアプリケーションデータが記述されていない場合には、単にビーコンを受信したかのみに基づいて判断を行うようにしてもよい。例えば、「飛び出し注意喚起」のように児童がもつ発信機からのビーコン信号を、近隣を走行する車載無線ルータが受信し、ドライバーに注意喚起を促すようなサービスにおいては、その旨のビーコンを受信したか否かが重要であり、それ以外の情報は不要である。また、サービスや提供者を識別するための制御情報がペイロード部に格納されるものであってもよい。かかる場合には、ペイロード部にアプリケーションデータの記述が無く、制御情報のみであったとしても、その制御情報を介して各種プロセスを進行させることが可能となる。
【0077】
表1は、ペイロードIEに記述されるデータの種類を示している。この表1に示すように、ペイロードIEには、第1の判定項目において重複性を判定するための、送信元デバイスID、第2の判定項目において重複性を判定するための第1の無線ルータ2nのMACアドレス、第3の判定項目において重複性を判定するための第1の無線ルータ2nのタイムスタンプ、第4の判定項目において重複性を判定するための第1の無線ルータ2nの受信座標等が記述されている。各判定項目において重複性を判定する上では、このペイロードIEの記述内容を確認することにより実現することができる。
【0078】
ちなみにSCFフラグは、表1における2Octetのフラグの中に含まれる。つまりこの2Octetのフラグのうち、少なくとも1ビットをこのSCFフラグに割り当てることとなる。
【0079】
【0080】
以上が、ステップS21における内部蓄積条件の確認方法であり、新たに受信したビーコン信号が、以前に受信したビーコン信号と重複するものであれば、これを内部蓄積しないこととし、ステップS21´へ移行する。ステップS21´に移行した場合には、この内部蓄積しないこととしたビーコン信号をそのまま削除する。新たに受信したビーコン信号が、以前に受信したビーコン信号と重複しない、新鮮なものであれば、ステップS22においてこれを内部蓄積する。
【0081】
なお、このステップS21において、第1の判定項目~第5の判定項目の全てを判定することは必須ではなく、これらのうち1つ以上の判定項目を省略するようにしてもよい。但し、全ての判定項目について重複性の判定を行うことで送信元デバイスID、第1の無線ルータ2nのMACアドレス、時間的な分解能、距離的な分解能、更にはアプリケーションデータの内容面を含めた多角的な重複性の検証を行うことが可能となる。
【0082】
中でも、時間的な分解能の観点から重複性の検証を行う第3の判定項目と、距離的な分解能の観点から重複性の検証を行う第4の判定項目を共に行うことにより、集約時間T0を超えているものの、実は集約距離D0の範囲内にあるビーコン信号を、重複性が高いものと判定することができる。同様に、集約距離D0の範囲外にあるものの実は集約時間T0の範囲内にあるビーコン信号を、重複性が高いものと判定することができる。このため、本来重複するビーコン信号を時間と距離の観点から漏らさず抽出することができる。
【0083】
次に、ステップS22において内部蓄積したビーコン信号をフラッディンする方法について説明をする。
【0084】
フラッディングの条件は時間と距離の観点から特定されるものであってもよい。例えば第1の無線ルータ2nは、
図8に示すように受信時刻t
0から起算した最大到達時間T
maxまで、内部蓄積したビーコン信号Seq100を予め設定した発信周期間隔で連続してフラッディングし続ける。最大到達時間T
maxを超えた後は、この内部蓄積するビーコン信号Seq100のフラッディングを停止し、次に内部蓄積したビーコン信号Seq105の受信時刻t
1から起算した最大到達時間T
maxまで、予め設定した発信周期間隔で連続してフラッディングし続ける。
【0085】
内部蓄積したビーコン信号を最大到達時間Tmaxに至るまで連続してフラッディングする理由としては、その内部蓄積したビーコン信号の受信時刻からあまりに長い時間経過している場合、そもそもビーコン信号自体が古いものになってしまい、これをフラッディングしても受け取る側の無線ルータ2に対して役に立つ地域データを提供することができなくなるためである。ちなみに最大到達時間を超過したビーコン信号については、第1の無線ルータ2n内において内部蓄積しているデータベースから削除する。
【0086】
第1の無線ルータ2nは、
図9に示すように、第1受信座標を基点とした最大到達距離の範囲内に位置する限り、内部蓄積したビーコン信号Seq100を予め設定した発信周期間隔で連続してフラッディングし続ける。最大到達時間を超えた後は、この内部蓄積するビーコン信号Seq100のフラッディングを停止し、次に内部蓄積したビーコン信号Seq107の第1受信座標を基点とした最大到達距離の範囲内に位置する限り、予め設定した発信周期間隔で連続してフラッディングし続ける。
【0087】
内部蓄積したビーコン信号を最大到達距離を超えるまでフラッディングする理由としては、その内部蓄積したビーコン信号の第1受信座標からあまりに遠く離れている場合、そもそもビーコン信号自体が古いものになってしまい、これをフラッディングしても受け取る側の無線ルータ2に対して役に立つ地域データを提供することができなくなるためである。ちなみに最大到達時間Tmaxを超過したビーコン信号については、第1の無線ルータ2n内において内部蓄積しているデータベースから削除することなくフラッディングそのものを停止させるのみとする。その理由として、無線ルータ2の移動に伴い、最大到達時間内において、最大到達距離の範囲内に戻ってくる可能性があり、かかる場合には、再度フラッディングを行うことが可能となるためである。
【0088】
ちなみに、このビーコン信号のフラッディングの条件についても、最大到達時間の範囲内及び最大到達距離の範囲内にある場合に限定されるものではなく、最大到達時間の範囲内又は最大到達距離の範囲内の何れか一方を満たす場合にフラッディングするものであってもよい。
【0089】
このようにしてフラッディングされたビーコン信号は、他の無線ルータ2により受信され、上述した手順の下でマルチホップ無線通信又は蓄積伝搬通信を通じて更なる他の無線ルータ2へと中継されていくことになる。
【0090】
また、本発明によれば、このようにして制御情報として記述される最大到達距離や最大到達時間等に基づいてその中継方法自体を決定するものである。即ち、本発明は、制御情報に基づいてサーバに向けた中継方法を決定するものであれば、その制御情報の種類はいかなるものであってもよい。
【0091】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。無線通信規格Wi-SUNに基づいて、超広帯域に亘る地域データの収集、配信をすることができる。
【0092】
図11は、住宅内にある発信機3から発信されたビーコン信号、又はその発信機3から発信したビーコン信号を受信した、住宅内にある無線ルータ2から発信されたビーコン信号を、車両等に搭載された無線ルータ2が収集し、最終的な目的地としてのサーバ64へ送信する例を示している。広帯域に亘り収集、配信する地域データのコンテンツの例としては、デジタル地域回覧板や、地域内において周知したい動画や写真データ等を想定している。
【0093】
住宅内にある発信機3又は無線ルータ2は、このようなコンテンツからなる地域データが登録されると、当該地域データの識別し、住宅内に設置された無線ルータ2の設置座標(緯度、経度情報も含む)を含んだ収集希望ビーコンを生成し、一定時間に亘りこれをフラッディングする。ちなみに、収集希望ビーコンには、少なくともサーバに伝送された地域データに基づいてサービス提供事業者が生成したコンテンツデータの存在を示すフラグが立てられたものであればよい。住宅の近くを走行するタクシー等の車両に搭載された無線ルータ2がこの収集希望ビーコンを受信した場合、ドライバーに対して、この住宅内に設置された無線ルータ2の設置座標(緯度、経度情報も含む)への誘導を開始する。同時に、この受信した収集希望ビーコンについて、上述した手順の下でマルチホップ無線通信又は蓄積伝搬通信を通じて更なる他の無線ルータ2へと中継し、地域データを収集可能な車両の数を増加させる。そして、この地域データを収集可能な車両のうちいずれかが計画的に、或いは偶然に住宅内に設置された発信機3又は無線ルータ2に近接したとき、上述したコンテンツからなる地域データを無線通信を通じて収集する。この地域データを収集した車両に搭載された無線ルータ2は、他の無線ルータ2を経由して目的地としてのサーバ64へと送信されることになる。
【0094】
図12は、上述した超広帯域に亘る地域データの収集、配信をする手順の例を示している。例えば、住宅から地域データが発生し、その地域データが含められたビーコン信号の収集を希望する場合、住宅内にある発信機3又は無線ルータ2が、当該ビーコン信号の収集を希望する旨の収集希望ビーコンを発信する(ステップS31)。この収集希望ビーコンには、実際に収集対象のビーコン信号にどのような地域データやアプリケーションデータが含められているかに関する情報が記述されている。この収集希望ビーコンを受信した、車載された他の無線ルータ2は、実際にこの収集対象のビーコン信号を収集すべきか否かを判断する。この判断は、送信すべきビーコン信号に含められている地域データに関する情報を収集希望ビーコンから読み出すことにより行うようにしてもよい。また、収集希望ビーコンは、蓄積伝搬通信により上記サービス利用者に伝送するようにしてもよい。他の無線ルータ2は、ビーコン信号を新たに収集すべきと判断した場合には、収集準備が整っている旨を示す収集情報指定ビーコンを発信する(ステップS32)。
【0095】
具体的には、収集希望ビーコンには,コンテンツの収集希望や配信希望の区別、収集・配信通信方式の種別、接続SSID、コンテンツ名(ファイル名)、コンテンツ最終更新時刻、誘導先座標から構成されるSCF制御情報が搭載される。
【0096】
他の無線ルータ2は、収集希望ビーコンの受信をトリガーとして、収集情報指定ビーコンを住宅内にある発信機3又は無線ルータ2にユニキャストで応答する。収集情報指定ビーコンには、上記収集希望ビーコンに対する応答であることを示すために、コンテンツ名(ファイル名)、コンテンツ最終更新時刻を搭載する。ただし,すでに同一のコンテンツ名、かつ同一のコンテンツ最終更新時刻のコンテンツを内部に保持している場合は、収集済みコンテンツとみなし、応答しない。
【0097】
住宅内にある発信機3又は無線ルータ2は,受信した収集情報指定ビーコンに記載されている他の無線ルータ2のMACアドレスを、MACヘッダの送信元アドレス領域または制御情報の送信元デバイスID領域から取得し、以降のコンテンツデータのユニキャスト送信の宛先には、このMACアドレスを指定する。
【0098】
送信に先立ち、収集希望ビーコンで指定されている収集・配信通信方式がWi-Fiの場合は、収集希望ビーコンで指定された接続SSIDに対してWi-Fi子機として接続し,データ送信のためのWi-Fiコネクションを確立する。一方、収集・配信通信方式がWi-SUNの場合は、コネクション確立手順は不要である。
【0099】
なお、収集・配信通信方式の種別は、発信機3又は無線ルータ2が、コンテンツ毎に事前に決定しても、収集希望コンテンツのサイズに応じて動的に決定してもよい。また、ここではWi-FiとWi-SUNの選択としているが、他の無線通信方式を含めて任意の組合せとすることも可能である。
【0100】
住宅内にある発信機3又は無線ルータ2は、この収集情報指定ビーコンを受信した場合、上述したコンテンツからなる地域データを送信する。この送信すべきコンテンツが大量に亘る場合には、無線通信規格Wi-SUNのフレームフォーマットに準拠する形でN個に分割した情報配信フレーム#1~#Nを構成し、これを順に他の無線ルータ2へと送信する(ステップS33)。この段階で、他の無線ルータ2を搭載している車両内の情報表示画面上には、「情報収集開始のお知らせ」等といった表示が行われるようにしてもよい。他の無線ルータ2は、この情報配信フレーム#1~#Nを受信する都度、受信成功を示すAckを返信する(ステップS34)。全ての情報配信フレーム#1~#Nの送信が完了すると、住宅内にある発信機3又は無線ルータ2から、情報配信フレーム#1~#Nの終了を示す情報配信終了マーク(ステップS35)が送信され、これを受信した他の無線ルータ2を搭載している自動車内の情報表示画面上には、「情報収集完了のお知らせ」等といった表示が行われるようにしてもよい。またこの情報配信終了マークを受信した他の無線ルータ2からは、これに関するAckを送信し(ステップS36)、終了となる。ちなみに、これらのステップS32~S36の通信は、ユニキャスト通信で行うようにしてもよい。
【0101】
なお、収集希望ビーコンに発信元としての住宅内にある発信機3又は無線ルータ2の位置情報を含めておくことにより、その位置情報に基づいて他の無線ルータ2を搭載している自動車を近傍まで誘導するようにしてもよい。かかる場合には、カーナビゲーションシステムも適宜活用しながら行うようにしてもよい。
【0102】
なおアプリケーションデータが記述されたビーコン信号を最初に発信するのは発信機3に限定されるもではなく、その代替として無線ルータ2が発信するものであってもよい。かかる場合も同様に、無線ルータ群は、ビーコン信号を最初に発信した無線ルータ2から、当該ビーコン信号を収集してサーバ64へ中継していくことになる。なお、収集希望をする情報量そのものが小さい場合には、ステップS31における収集希望ビーコンに情報も付加して送信することでプロセスを完了させるようにしてもよい。
【0103】
また、住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2が、配信、すなわち他の無線ルータ2が保持するコンテンツデータを受信することを希望する場合においても、本発明を適用することができる。ここでいうコンテンツデータは、伝送した地域データに基づいてサービス提供事業者が生成したコンテンツデータである。
【0104】
係る場合には、地域IoTサービス基盤6において収集されて、サーバ64に蓄積された地域データを、上述した蓄積伝搬通信やマルチホップ無線通信を組み合わせ、無線ルータ2を介して住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2へ伝送する。かかる場合も同様に、地域IoTサービス基盤6を構成するライフライン基盤61、固定基盤62、モバイル基盤63は、それぞれの目的の下で与えられた役割を担いつつ、信号伝送システム1の下で地域データの検出から収集までのプロセスをも担う、いわゆる「ながら」業務を行うことになる。
【0105】
ちなみに、このサーバ64に蓄積された地域データを配信する場合に限定されるものではなく、地域データに基づいて新たに作り出したデータ、又は地域データとは関係なく、独自に取得し、或いは生成したデータを、同様の手順により配信するようにしてもよい。
【0106】
また、サーバ64に蓄積されていないデータも同様の手順により配信するようにしてもよい。つまり、このようなケースでは、サービス提供事業者から各エリアに点在するサービス利用者の住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2にデータを伝送する際に、先ずサービス提供事業者から、サービス利用者が利用する情報が記述された無線信号を発信する。次に、発信された無線信号を上述した受信機等に向けて中継していく上で、少なくとも受信した無線信号を一時的に蓄積してこれを他の無線ルータに繰り返しフラッディングする蓄積伝搬通信により伝送を行う。
【0107】
この住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2に向けて、蓄積伝搬通信に基づいてデータを伝送する例について説明する。
【0108】
図13に示すように、車両等に搭載された他の無線ルータ2から住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2に向けて、配信情報通知ビーコンを送信する(ステップS41)。この配信情報通知ビーコンは、車両に搭載された他の無線ルータ2がどのようなデータを有しており、その配信が可能である旨のメッセージが記述されている。住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2は、この配信情報通知ビーコンを受信した場合、自らが配信して欲しいデータが含まれているか否かを判別する。配信して欲しい情報が含まれていれば、ステップS42へ移行し、情報配信を希望するビーコンを住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2から他の無線ルータ2へ住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2送信する。情報配信を希望するビーコンは、収集情報指定ビーコンにおいて含まれるデータが同様に記述されていてもよい。
【0109】
なお、本実施形態においては、ステップS42とステップS41の処理動作の順序を入れ替えてもよい。かかる場合には、先ず住宅内にある無線ルータ2または受信機が情報配信を希望するビーコンを発信し続け(ステップS42)、当該ビーコンを他の無線ルータ2が受信できた時に初めて配信情報通知ビーコン(S41)を返信するようにしてもよい。
【0110】
他の無線ルータ2は、この情報配信を希望するビーコンを受信した場合、上述したデータを住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2に送信する。この送信すべきコンテンツが大量に亘る場合には、無線通信規格Wi-SUNのフレームフォーマットに準拠する形でN個に分割した情報配信フレーム#1~#Nを構成し、これを順に住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2へと送信する(ステップS43)。この段階で、住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2の情報表示画面上には、「情報収集開始のお知らせ」等といった表示が行われるようにしてもよい。住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2は、この情報配信フレーム#1~#Nを受信する都度、受信成功を示すAckを返信する(ステップS44)。全ての情報配信フレーム#1~#Nの送信が完了すると、他の無線ルータ2から、情報配信フレーム#1~#Nの終了を示す情報配信終了マーク(ステップS45)が送信され、これを受信した住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2の情報表示画面上には、「情報を取得しました。表示しますか?」等の表示が行われるようにしてもよい。またこの情報配信終了マークを受信した住宅内にある発信機3や受信機、無線ルータ2からは、これに関するAckを送信し(ステップS46)、終了となる。ちなみに、これらのステップS42~S46の通信は、ユニキャスト通信で行うようにしてもよい。
【実施例1】
【0111】
以下、本発明を適用した信号伝送システム1における具体的なビーコン信号の伝送例について説明をする。
【0112】
図14に示すように、信号伝送システム1の無線ルータ群が存在する中において、発信機3を保持する児童が図中矢印方向に移動していく例を考える。その結果発信機3も図中矢印方向に移動していくことになるが、その間ビーコン信号を発信し続ける。この発信したビーコン信号は、無線ルータ2-1に受信座標(X1,Y1)にて時刻15:55:00に受信され、また無線ルータ2-2に受信座標(X2,Y1)にて時刻15:58:00に受信され、無線ルータ2-3に受信座標(X3,Y1)にて時刻16:00:00に受信され、その後更に無線ルータ2-2を搭載した自動車が移動してきて、受信座標(X4,Y1)にて時刻16:04:00に受信されるものとする。
【0113】
この発信機3から発信されるビーコン信号は、
図14に示すように、送信元アドレスとして「Bcn1」と記述され、SCFフラグは有効とされている。
【0114】
このときサーバ64が欲しい地域データは、各送信元デバイスID、受信した無線ルータ2のMACアドレス、受信時刻のタイムスタンプ、受信座標において受信したビーコン信号に含められているものである。
【0115】
これらのビーコン信号を無線ルータ2-3が実際に受信した場合において実際にステップS17、S21において行われる処理動作を
図15に示す。
【0116】
各無線ルータ2-3において受信されるビーコン信号の例としてNo.1~8を挙げる。送信元アドレスは、各ビーコン信号No.1~8の送信元のデバイスを示しており、各無線ルータ2、発信機3となる。また送信元デバイスIDは、ビーコン信号を最初に発信した発信機3を示している。MACアドレスは、発信機3から発信されたビーコン信号を最初に受信した第1の無線ルータ2nに相当するもののMACアドレスを示している。受信タイムスタンプは、第1の無線ルータ2nが発信機3からのビーコン信号の受信時刻を示すものである。第1受信座標は、最初に受信したビーコン信号の受信時刻における受信地点の緯度と経度等で表現される受信座標である。
【0117】
例えば、No.1のビーコン信号は、発信機3から発信されたビーコン信号であり、第1の無線ルータ2nは、無線ルータ2-1であることが示されている。この無線ルータ2-1の第1受信座標は、(X1,Y1)であり、受信タイムスタンプが15:55:00であることが示されている。送信元アドレスが無線ルータ2-2であることから、この無線ルータ2-1から無線ルータ2-2を経て無線ルータ2-3に15:59:30に送信されてきたことが分かる。
【0118】
また、No.2のビーコン信号は、16:00:00に発信機3から直接ビーコン信号を受信したものであるが、発信機3自体がビーコン信号を発信する機能のみしか持たない場合には、 第1の無線ルータ2nのMACアドレス、第1の無線ルータ2nによる受信時刻のタイムスタンプと受信座標等(制御情報)が付与されていない場合がある。かかる場合には、ステップS17´に移行し、これら制御情報を付与する。この制御情報の付与は、No.5、8のビーコン信号についても同様に行う。
【0119】
またNo.3のビーコン信号は、発信機3から発信されたビーコン信号であり、第1の無線ルータ2nは、無線ルータ2-2であることが示されている。この無線ルータ2-2の第1受信座標は、(X2,Y1)であり、受信タイムスタンプが15:58:00であることが示されている。送信元アドレスが無線ルータ2-2であることから、この無線ルータ2-2がこのビーコン信号を受信した後、これを無線ルータ2-3に16:00:20に送信していることが分かる。
【0120】
このようにして無線ルータ2-3に対して順次入力されてくるビーコン信号について、ステップS21において重複判定を行う。
【0121】
例えば、No.4のビーコン信号は、これよりも以前において受信したNo.1のビーコン信号に対して受信時刻、第1受信座標が、共に集約時間T
0内、集約距離D
0内である旨を判断し、また送信元デバイスID、MACアドレスも重複することから、これを内部蓄積することは行わず、ステップS21'において削除する。No.6、7についても同様である。その結果、ステップS22において、内部蓄積されるのは、
図15に示すように、No.1~3のビーコン信号となり、それ以降は重複しているものと判断されて削除される。その結果、
図14に示すようなサーバ64が欲しい地域データのみを残すことができる。
【0122】
上述した例では、アプリケーションデータの重複性までは判断を行っていないが、仮にアプリケーションデータの重複性までも判断する場合には、ビーコンフレームにおけるペイロードに記述されているアプリケーションデータを読み出して判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 信号伝送システム
2 無線ルータ
3 発信機
6、7 地域IoTサービス基盤
61 ライフライン基盤
62 固定基盤
63 モバイル基盤
64 サーバ
71 ビーコン発信機
72 無線ルータ
73 サーバ
81 タクシー
82 自動販売機