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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】送り装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/18 20060101AFI20240112BHJP
   B21D 43/08 20060101ALI20240112BHJP
   B65H 20/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B21D43/18 C
B21D43/08
B65H20/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019181246
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021053683
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144795
【氏名又は名称】株式会社山田ドビー
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】沢田 高治
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-120474(JP,A)
【文献】特開2010-275038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/18
B21D 43/08
B65H 20/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フープ材の厚さ方向における一方の面と当接する複数のローラを有する送りローラ部材と、前記ローラを駆動する第一駆動手段と、を備え、
前記送りローラ部材は、互いに隙間を有して配され、前記ローラは、負圧手段と接続される負圧形成領域に配され、
前記フープ材の搬送時に、前記負圧形成領域を負圧状態とすることにより、前記フープ材を前記ローラ側に吸引可能とされ
パイロットリリース機能を有するプレス機に用いられることを特徴とする送り装置。
【請求項2】
前記ローラは、前記フープ材の送り方向に沿って複数配されるとともに、前記フープ材の送り方向に直交する方向に沿って複数配されることを特徴とする請求項1記載の送り装置。
【請求項3】
前記負圧形成領域を、負圧状態と、負圧状態となった前記負圧形成領域を大気圧状態と、に切り替え可能な切替手段を備え、
前記切替手段は、
シリンダチューブと、内部に正圧手段と接続され正圧状態とされる正圧領域を有する中空状のピストンと、前記ピストンを駆動する第二駆動手段と、を備え、
前記シリンダチューブ内での前記ピストンの移動により、前記正圧領域と前記負圧形成領域とを閉鎖、開放することで、前記負圧形成領域の状態を切り替えることを特徴とする請求項1又は2記載の送り装置。
【請求項4】
前記ピストンは、待機位置と進出位置との間を移動可能とされ、
前記待機位置において、前記正圧領域と前記負圧形成領域とを閉鎖して前記負圧形成領域を負圧状態とし、
前記進出位置において、前記正圧領域と前記負圧形成領域とを開放して負圧状態となった前記負圧形成領域を大気圧状態とすることを特徴とする請求項3記載の送り装置。
【請求項5】
前記正圧領域は、前記負圧形成領域内を大気圧に戻せる空気量が充填可能とされていることを特徴とする請求項3又は4記載の送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フープ材を送り可能な送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フープ材を送り可能な送り装置(加工装置)が記載されており、これによれば、所定のサイクルで加工動作を行う加工部と、この加工部の上流側に位置して加工部に送り込まれるフープ材を支持する案内テーブルと、加工部の下流側に位置して加工部を通過したフープ材を間欠的に送り出す間欠送り部とを有する加工装置において、前記案内テーブルのフープ材が摺動する面には、フープ材を負圧吸着する吸着穴が設けられている。
【0003】
これにより、高速にて間欠送りされたとき、停止時の慣性力によりフープ材が波打ちなどを生じにくくなり、高速サイクルにて加工動作を行なったときに、フープ材に対する加工位置の位置ずれが生じにくくなることとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-99330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の送り装置では、間欠送り部は、上下一対のNCロールフィーダーで構成され、1ストロークで仕事を完了する場合には、送り誤差は問題とならず適用可能であるが、何回かのストロークを経て製品が完成する順送加工に適用する場合には、送り誤差を考慮する必要がある。
【0006】
詳説すると、順送加工に適用する場合、フープ材の表面を上下のローラで挟んで送る機構のため、フープ材は線接触となり集中荷重を受ける構造となっており、ローラとフープ材の摩擦力を得るため、上ローラに荷重を加える必要があるとともに、パイロットリリースのために上ロールを上下動する必要があり、下降時に衝撃荷重を与えるので、フープ材の表面にロールマークが付く等のダメージを与えることになる。
【0007】
さらに、上下のローラで挟んだ部分のみで、金型とプレス内のフープ材全体を移動させるため、加速減速時にフープ材のバタツキが発生する。また、フープ材を送り装置に通すときに、上下のローラの狭い隙間にフープ材の先端を押し込む構造のため、材料通しの作業性が悪くなっていた。
【0008】
本発明は、上記にかんがみて、フープ材の表面にダメージを与えず、フープ材のバタツキの発生を抑えて良好な送り精度を得たうえで、材料通しの作業性を良くした送り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明では、フープ材の厚さ方向における一方の面と当接する複数のローラを有する送りローラ部材と、前記ローラを駆動する第一駆動手段と、を備え、
前記送りローラ部材は、互いに隙間を有して配され、前記ローラは、負圧手段と接続される負圧形成領域に配され、
前記フープ材の搬送時に、前記負圧形成領域を負圧状態とすることにより、前記フープ材を前記ローラ側に吸引可能とされ
パイロットリリース機能を有するプレス機に用いられる
【0010】
これによれば、ローラを負圧形成領域に配することで、フープ材を吸引可能となるので、バタツキの発生を抑えることができる。また、フープ材は、厚さ方向における一方の面で、複数のローラと当接するため、ローラとフープ材の接触面積を広くして吸引力を弱くすることができるので、集中荷重を避けたうえで、摩擦力を得ることができる。さらに、材料通しにおいて、フープ材をローラに当接させるだけでよく、ローラの間を通す必要がなくなる。
【0011】
よって、フープ材の表面にダメージを与えず、フープ材のバタツキの発生を抑えて良好な送り精度を得たうえで、材料通しの作業性を良くことができる。
【0012】
また、前記ローラは、前記フープ材の送り方向に沿って複数配されるとともに、前記フープ材の送り方向に直交する方向に沿って複数配される。
【0013】
これによれば、集中荷重を避けたうえで、摩擦力を得ることに寄与する。
【0014】
また、前記負圧形成領域を、負圧状態と、負圧状態となった前記負圧形成領域を大気圧状態と、に切り替え可能な切替手段を備え、
前記切替手段は、
シリンダチューブと、内部に正圧手段と接続され正圧状態とされる正圧領域を有する中空状のピストンと、前記ピストンを駆動する第二駆動手段と、を備え、
前記シリンダチューブ内での前記ピストンの移動により、前記正圧領域と前記負圧形成領域とを閉鎖、開放することで、前記負圧形成領域の状態を切り替える。
【0015】
これによれば、正圧領域と前記負圧形成領域とを閉鎖、開放することで、瞬時に負圧状態から大気圧状態に戻す切り替え時間が短縮できるため、送り装置のプレス機に対する追従能力が良くなる。
【0016】
また、前記ピストンは、待機位置と進出位置との間を移動可能とされ、
前記待機位置において、前記正圧領域と前記負圧形成領域とを閉鎖して前記負圧形成領域を負圧状態とし、
前記進出位置において、前記正圧領域と前記負圧形成領域とを開放して負圧状態となった前記負圧形成領域を大気圧状態とする。
【0017】
これによれば、簡易なリンク機構等を用いて、ピストンを待機位置と進出位置との間を移動させることで、負圧形成領域の状態を切り替えることが可能となる。
【0018】
また、前記正圧領域は、前記負圧形成領域内を大気圧に戻せる空気量が充填可能とされている。
【0019】
これによれば、正圧領域と負圧形成領域とを開放したときに、負圧形成領域内が大気圧以上となることがなくなるので、フープ材が持ち上げられることによる送り精度を妨げる要因をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態の送り装置の(a)は平面図、(b)は、図1(a)のIb線矢視図、(c)は図1(a)のIc線矢視図である。
図2】同実施形態の(a)は図1(a)のIIa-IIa線矢視断面図、(b)は材料ガイドの説明図である。
図3】同実施形態の図1(a)のIII-III線矢視断面図である。
図4】材料と送りストロークの関係を示す図である。
図5】正圧領域と負圧形成領域とを閉鎖、開放するときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の送り装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、各図面の矢印の、Fを前、Bを後ろ、Rを右、Lを左、Uを上、Dを下、とする。
【0022】
送り装置10は、概略的には、図1~3に示すように、フープ材Wの厚さ方向における一方の面(下面)と当接する複数のローラ40aとを備え、ローラ40aは、互いに隙間Sを有して配され、負圧手段と接続される負圧形成領域11に配され、負圧形成領域11を、負圧状態と、負圧状態となった負圧形成領域11を大気圧状態と、に切り替え可能な切替手段80を備える。
【0023】
これにより、フープ材Wは、吸引されつつ、フープ材Wの厚さ方向における下面のみで当接するローラ40aで送り方向(前後方向)に沿って送り可能とされる。
【0024】
送り装置10は、底板部材21と、上側部材25と、で構成されるハウジング20を有している。
【0025】
底板部材21は、金属製で、図1~3に示すように、矩形平板状に形成され、上面から下面に向かう段付き貫通孔として形成された通路孔22が配設されている。
【0026】
通路孔22は、小内径部22aと、小内径部22aより大径に形成された大内径部22bと、を有している。
【0027】
通路孔22は、後述する切替手段80を構成する、コネクティングブラケット120、コネクティングプレート122を移動可能とするものである。
【0028】
また、底板部材21には、上面から下面まで貫通する貫通孔として形成された取付孔23が、フープ材Wの送り方向に直交する方向に沿って二つ配設されている。取付孔23は、後述する正圧空気供給軸130を取り付け可能とするものである。
【0029】
上側部材25は、金属製で、図1~3に示すように、平面視における形状は、底板部材21と略同一で、上下方向の厚さが底板部材21より厚く形成されている。上側部材25は、下面から上面に向かう段付き貫通孔として形成された負圧領域形成孔26が配設されている。
【0030】
負圧領域形成孔26は、小内径部26aと、小内径部26aより大径に形成された大内径部26bと、を有している。
【0031】
小内径部26aは、底板部材21の通路孔22の大内径部22bと略同一の内径とされている。
【0032】
底板部材21の上面に上側部材25が乗せられて固定されてハウジング20が形成される。
【0033】
ハウジング20の上面には、一対のローラ取付部材30が取り付けられている。ローラ取付部材30は、金属製で、図1、3に示すように、四角柱状に形成されている。ローラ取付部材30には、取り付けられた状態における外面から内面に向かう段付き貫通孔として形成された軸孔31が配設されている。軸孔31内には、ベアリング32が配されている。
【0034】
送りローラ部材40が、一対のローラ取付部材30の間に架け渡されるように配されている。送りローラ部材40は、円柱状のローラ40aと、ローラ40a近傍に配される大径軸部40bと、送りローラ部材40の軸線方向における両端側に配される小径軸部40cと、を有している。
【0035】
本実施形態では、軸線方向にローラ40aが四つ配される第一送りローラ部材40-1と、軸線方向にローラ40aが3つ配される第二送りローラ部材40-2と、で構成される。第一送りローラ部材40-1と、第二送りローラ部材40-2とは、互い違いに配されるとともに、隙間Sを有して配されている。
【0036】
換言すれば、ローラ40aは、フープ材Wの送り方向に沿って複数配されるとともに、フープ材Wの送り方向に直交する方向に沿って複数配される。
【0037】
ベアリング32内に小径軸部40cが嵌め込まれることで、ローラ取付部材30に対して送りローラ部材40が回動可能とされている。
【0038】
送りローラ部材40は、図1、2に示すように、第一駆動手段としてのサーボモータ50により駆動する。サーボモータ50の駆動軸51には、カップリング52を介して延長シャフト53が接続されている。延長シャフト53には、駆動プーリ54が、フープ材Wの送り方向に直交する方向(左右方向)における端部に取り付けられている。送りローラ部材40の小径軸部40cには、従動プーリ55が取り付けられている。本実施形態では、第一送りローラ部材40-1においては左側に、第二送りローラ部材40-2においては右側に従動プーリ55が取り付けられる。
【0039】
フープ材Wの送り方向における両端には、端プーリ56が図示しない軸部材等を介して配設されている。
【0040】
駆動プーリ54と従動プーリ55の間、従動プーリ55の間、従動プーリ55と端プーリ56の間には、テンションローラ57が配されている。
【0041】
駆動プーリ54、従動プーリ55、端プーリ56にタイミングベルト58が架け渡され、サーボモータ50の駆動力が、一対の第一送りローラ部材40-1、第二送りローラ部材40-2に伝達される。
【0042】
ローラ取付部材30の上部には、材料ガイド60が取り付けられている。材料ガイド60は、金属製で、図1~3に示すように、フープ材Wと接して、フープ材Wの送り方向に直交する方向への移動を規制する垂直ガイド部61と、垂直ガイド部61の上端部から水平方向に延びる水平部62と、を有して略L字状に形成されている。
【0043】
本実施形態では、垂直ガイド部61は、図2(b)に示すように、下端部が送りローラ部材40に対応した凹凸形状とされている。
【0044】
ハウジング20のフープ材Wの送り方向の両端部の面には、図1に示すように、シールプレート70が取り付けられている。シールプレート70の上端面は、ローラ40aの頂部の高さと同じ高さとなるように設定されている。シールプレート70の送りローラ部材40と対向する側となる面は、送りローラ部材40の形状と対応する凹凸形状とされてシール可能に形成され、後述する負圧形成領域11の負圧状態を保持可能とされている。
【0045】
切替手段80は、サーボモータ90と、シリンダチューブ100と、ピストン110と、を有している。
【0046】
サーボモータ90は、図1、2に示すように、駆動軸91がフープ材Wの送り方向に沿うように配され、駆動軸91は、カップリング92を介して、駆動シャフト93と連結されている。駆動シャフト93は、底板部材21の下面に取り付けられ、図示しないベアリングが配設された軸受け94により保持されている。
【0047】
ハウジング20内に、シリンダチューブ100が配されている。シリンダチューブ100は、金属製で、図1~3、5に示すように、円筒状に形成されている。シリンダチューブ100の上下方向における中央より上側には、内面から外面まで貫通する通気孔101が等間隔に複数配設されている。
【0048】
シリンダチューブ100は、上端部が上側部材25の小内径部26aに、下端部が底板部材21の大内径部22bに嵌め込まれている。
【0049】
底板部材21と、上側部材25と、シリンダチューブ100と、で囲まれる領域が負圧空気室12とされる。
【0050】
シリンダチューブ100内には、金属製で、外形形状が円柱状のピストン110が配されている。ピストン110は、二つの部材を組み合わせて内部に空間を有した中空状に形成されている。ピストン110の内部が、正圧領域111となる。
【0051】
ピストン110の上壁には、内面から外面まで貫通する正圧開放孔112が二つ形成されている。ピストン110の下壁には、底板部材21の取付孔23と連通するとともに、後述する正圧空気供給軸130を挿通可能な挿通孔113が形成されている。
【0052】
ピストン110の下壁の下面には、コネクティングブラケット120が取り付けられている。
【0053】
駆動シャフト93には、コネクティングアーム121が取り付けられている。コネクティングプレート122は、コネクティングブラケット120と、コネクティングアーム121と、に対して回動可能に取り付けられている。
【0054】
駆動シャフト93の回動により、コネクティングアーム121が回動し、コネクティングプレート122、コネクティングブラケット120を介して、上下方向への動きに変換されて、ピストン110は上下動する。
【0055】
底板部材21の取付孔23に、正圧空気供給軸130が嵌め込まれて固定されている。正圧空気供給軸130は、挿通孔113を挿通させて配されている。正圧空気供給軸130の下端面から上下方向における中央より上側の部分外周面まで正圧通気通路131が形成されている。正圧通気通路131は、正圧手段としての図示しないエアコンプレッサに接続されて、ピストン110の上下動により開放、閉鎖されて正圧領域111内を、大気圧状態と、正圧空気が充填された正圧状態と、にすることを可能としている。
【0056】
正圧空気供給軸130は、正圧開放孔112より小径に形成され、正圧空気供給軸130の上端部には、弁部材132が正圧空気供給軸130の軸線方向に沿って移動可能に配設されている。弁部材132は、弁部材132の下面とピストン110の下壁の上面と接するコイルばね133により上側に付勢されている。
【0057】
シリンダチューブ100の内側と、ピストン110と、上側部材25と、ローラ取付部材30と、材料ガイド60と、シールプレート70と、ローラ40aに載せられるフープ材Wと、で囲まれる領域が、負圧形成領域11とされる。
【0058】
負圧空気室12は、負圧手段としての図示しない吸引装置と接続される負圧空気供給通路13と、連通するように構成され、図示しない吸引装置が作動することにより負圧状態とされている。
【0059】
本実施形態では、送り装置10は、ハウジング20、ローラ取付部材30、送りローラ部材40、材料ガイド60、シールプレート70、切替手段80等で構成される送りユニットを、二つ備える構成とされている。
【0060】
図4は、500SPM、120msec/revにおける材料と送りストロークの関係を示している。
【0061】
プレス機において、上死点位置から下死点位置に至る下降工程の中間点手前の位置から材料リリース(図4において、PILOT RELEASEと表記)が開始する。図4に示す、20msecの間に、サーボモータ90が駆動を開始しピストン110を上昇させ、図4の図中、「大気圧切替」のときに、図5の一番左の状態となり、弁部材132が正圧開放孔112を開放して、ピストン110の正圧領域111にある正圧空気が負圧形成領域11に進入して、瞬時に負圧形成領域11内を大気圧に戻す。
【0062】
換言すれば、ピストン110は、進出位置において、正圧領域111と負圧形成領域11とを開放して負圧状態となった負圧形成領域11を大気圧状態とする。
【0063】
プレス機において、下死点位置から上死点位置に至る上昇工程の下死点を通過した位置から材料リリースの終了(図4において、PILOT CLAMPと表記)が開始する。図4に示す、20msecの間に、サーボモータ90が駆動を開始しピストン110を下降させ、図4の図中「吸引始め」のときに、図5の真ん中、右の状態となり、弁部材132が正圧開放孔112を閉鎖して、ピストン110の正圧領域111にある正圧空気が負圧形成領域11に進入することを停止させ、負圧空気室12とシリンダチューブ100の通気孔101が連通して、に負圧形成領域11内を負圧状態とする。
【0064】
換言すれば、ピストン110は、待機位置において、正圧領域111と負圧形成領域11とを閉鎖して負圧形成領域11を負圧状態とする。
【0065】
このとき、正圧通気通路131が、ピストン110の壁で閉鎖されていた状態から、正圧領域111に進入して、正圧手段から空気が送られて正圧領域111が正圧状態となる。
【0066】
そして、サーボモータ50の駆動力により、第一送りローラ部材40-1のローラ40aと第二送りローラ部材40-2のローラ40aと、が回転する。
【0067】
第一送りローラ部材40-1のローラ40aと第二送りローラ部材40-2のローラ40aとは、隙間Sを有して配されているので、ローラ40aに乗せられたフープ材Wは、下側に吸引される。
【0068】
これにより、ローラ40aとの摩擦力が付与され、バタつきを抑制する。また、フープ材Wは、厚さ方向における一方の面(下面)で、複数のローラ40aと当接するため、ローラ40aとフープ材Wの接触面積を広くして吸引力を弱くすることができるので、集中荷重を避けたうえで、摩擦力を得ることができる。
【0069】
上記構成の送り装置10では、フープ材Wの厚さ方向における一方の面と当接する複数のローラ40aを有する送りローラ部材40と、ローラ40aを駆動する第一駆動手段としてのサーボモータ50と、を備え、
送りローラ部材40は、互いに隙間Sを有して配され、ローラ40aは、負圧手段と接続される負圧形成領域11に配される。
【0070】
これによれば、ローラ40aを負圧形成領域11に配することで、フープ材Wを吸引可能となるので、バタツキの発生を抑えることができる。また、フープ材Wは、厚さ方向における一方の面で、複数のローラ40aと当接するため、ローラ40aとフープ材Wの接触面積を広くして吸引力を弱くすることができるので、集中荷重を避けたうえで、摩擦力を得ることができる。さらに、材料通しにおいて、フープ材Wをローラ40aに当接させるだけでよく、ローラ40aの間を通す必要がなくなる。
【0071】
よって、フープ材Wの表面にダメージを与えず、フープ材Wのバタツキの発生を抑えて良好な送り精度を得たうえで、材料通しの作業性を良くことができる。
【0072】
また、ローラ40aは、フープ材Wの送り方向に沿って複数配されるとともに、フープ材Wの送り方向に直交する方向に沿って複数配される。
【0073】
これによれば、集中荷重を避けたうえで、摩擦力を得ることに寄与する。
【0074】
また、負圧形成領域11を、負圧状態と、負圧状態となった負圧形成領域11を大気圧状態と、に切り替え可能な切替手段80を備え、
切替手段80は、
シリンダチューブ100と、内部に正圧手段と接続され正圧状態とされる正圧領域111を有する中空状のピストン110と、ピストン110を駆動する第二駆動手段としてのサーボモータ90と、を備え、
シリンダチューブ100内でのピストン110の移動により、正圧領域111と負圧形成領域11とを閉鎖、開放することで、負圧形成領域11の状態を切り替える。
【0075】
これによれば、正圧領域111と負圧形成領域11とを閉鎖、開放することで、瞬時に負圧状態から大気圧状態に戻す切り替え時間が短縮できるため、送り装置のプレス機に対する追従能力が良くなる。
【0076】
また、ピストン110は、待機位置と進出位置との間を移動可能とされ、
待機位置において、正圧領域111と負圧形成領域11とを閉鎖して負圧形成領域11を負圧状態とし、
進出位置において、正圧領域111と負圧形成領域11とを開放して負圧状態となった負圧形成領域11を大気圧状態とする。
【0077】
これによれば、簡易なリンク機構等を用いて、ピストン110を待機位置と進出位置との間を移動させることで、負圧形成領域11の状態を切り替えることが可能となる。
【0078】
また、正圧領域111は、負圧形成領域11内を大気圧に戻せる空気量が充填可能とされている。
【0079】
これによれば、正圧領域111と負圧形成領域11とを開放したときに、負圧形成領域11内が大気圧以上となることがなくなるので、フープ材Wが持ち上げられることによる送り精度を妨げる要因をなくすことができる。
【0080】
なお、本発明は上記構成に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない限り各種の設計変更等が可能である。
【0081】
例えば、フープ材Wをローラ40aの上に乗せて下側から吸引する構成としているが、集中荷重を避けたうえで、摩擦力を得ることができるのであれば、フープ材Wを上側、側方側等で吸引することも可能である。
【0082】
また、ローラ40aは、送りローラ部材40の軸線方向に、一つとすることもできるし、五つ以上の数とすることもできる。送りローラ部材40の数も適宜変更することもできる。
【0083】
また、切替手段80も、正圧領域111と負圧形成領域11とを閉鎖、開放できるのであれば、他の機構を適用することができる。
【0084】
また、送り装置10は、二つの送りユニットで構成したが、一つ、三つ以上の送りユニットで構成することも可能である。
【0085】
また、プレス機において、500SPM、120msec/revでの条件で例示したが、仕様に応じて他の条件を設定することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 送り装置
11 負圧形成領域
40 送りローラ部材
40a ローラ
50 サーボモータ
80 切替手段
90 サーボモータ
100 シリンダチューブ
110 ピストン
111 正圧領域
S 隙間
W フープ材
図1
図2
図3
図4
図5