(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2019188922
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東田 理沙
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭一郎
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-161427(JP,A)
【文献】特開2019-042304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0092160(US,A1)
【文献】特開2012-245116(JP,A)
【文献】特開2012-161428(JP,A)
【文献】特開2014-094300(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135278(WO,A1)
【文献】特開2019-154993(JP,A)
【文献】特開2005-261450(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105411(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00- 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の対象部位を撮影する撮影部と、
演算部と、を備えており、
前記演算部は、
前記撮影部で撮影された前記対象部位の第1の画像と、前記第1の画像とは異なるタイミングで撮影された前記対象部位の第2の画像と、を取得する画像取得処理と、
前記第1の画像と前記第2の画像とを合成して1つの前記対象部位の画像を生成する合成処理と、を実行可能に構成されて
おり、
前記第1の画像は、前記対象部位の所定の範囲の一部を含む第1の領域が開瞼された状態のときに撮影された画像であり、
前記第2の画像は、前記第1の領域とは異なると共に、前記所定の範囲の前記一部以外の他の部分を含む第2の領域が開瞼された状態のときに撮影された画像である、眼科装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記第1の画像のうち、前記対象部位が検出されていない非検出領域を特定する非検出領域特定処理をさらに実行可能に構成されており、
前記合成処理では、前記第1の画像の前記対象部位が検出されている部分に、前記第2の画像のうち、前記第1の画像の前記非検出領域に対応する部分を合成する、請求項
1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記撮影部で撮影された画像に前記対象部位が検出されていない非検出領域が含まれるときに、前記非検出領域を報知する報知部をさらに備えている、請求項
2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記報知部は、
前記非検出領域が前記被検眼の上方であるとき、前記被検眼の上方を開瞼させるように指示し、
前記非検出領域が前記被検眼の下方であるとき、前記被検眼の下方を開瞼させるように指示し、
前記非検出領域が前記被検眼の上方及び下方であるとき、前記被検眼の上方及び下方を開瞼させるように指示するようにさらに構成されている、請求項
3に記載の眼科装置。
【請求項5】
被検眼の対象部位を撮影する撮影部と、
演算部と、を備えており、
前記演算部は、
前記撮影部で撮影された前記対象部位の第1の画像と、前記第1の画像とは異なるタイミングで撮影された前記対象部位の第2の画像と、を取得する画像取得処理と、
前記第1の画像と前記第2の画像とを合成して1つの前記対象部位の画像を生成する合成処理と、を実行可能に構成されており、
前記演算部は、前記第1の画像のうち、前記対象部位が検出されていない非検出領域を特定する非検出領域特定処理をさらに実行可能に構成されており、
前記合成処理では、前記第1の画像の前記対象部位が検出されている部分に、前記第2の画像のうち、前記第1の画像の前記非検出領域に対応する部分を合成し、
前記撮影部で撮影された画像に前記対象部位が検出されていない非検出領域が含まれるときに、前記非検出領域を報知する報知部をさらに備えており、
前記報知部は、
前記非検出領域が前記被検眼の上方であるとき、前記被検眼の上方を開瞼させるように指示し、
前記非検出領域が前記被検眼の下方であるとき、前記被検眼の下方を開瞼させるように指示し、
前記非検出領域が前記被検眼の上方及び下方であるとき、前記被検眼の上方及び下方を開瞼させるように指示するようにさらに構成されている、眼科装置。
【請求項6】
前記対象部位の画像を表示する表示部をさらに備えており、
前記表示部は、前記合成処理によって合成された前記対象部位の画像を表示する、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記合成処理では、前記第1の画像と前記第2の画像とで共通する部分を位置合わせして、前記第1の画像と前記第2の画像とを合成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
被検眼の対象部位を測定する眼科装置であって、
前記対象部位を撮影する撮影部と、
演算部と、
報知部と、を備えており、
前記演算部は、
前記撮影部で撮影された前記対象部位の画像を取得する画像取得処理と、
前記対象部位の画像のうち、前記対象部位が検出されていない非検出領域を特定する非検出領域特定処理と、を実行可能に構成されており、
前記報知部は、前記演算部で特定された前記非検出領域を報知
し、
前記報知部は、
前記非検出領域が前記被検眼の上方であるとき、前記被検眼の上方を開瞼させるように指示し、
前記非検出領域が前記被検眼の下方であるとき、前記被検眼の下方を開瞼させるように指示し、
前記非検出領域が前記被検眼の上方及び下方であるとき、前記被検眼の上方及び下方を開瞼させるように指示するようにさらに構成されている、眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼内の特定の部位(例えば、前房隅角)を測定する眼科装置が開発されている。例えば、特許文献1には、被検眼の前房隅角の反射画像を撮影する眼科装置が開示されている。特許文献1の反射画像では、被検眼の前房隅角全体が撮影されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような眼科装置では、被検眼の特定の部位全体が撮影される。このように、被検眼内の特定の部位(例えば、前房隅角)の状態を評価するためには、当該部位を所定以上の範囲に亘って観察する必要がある。しかしながら、被検眼の開瞼状態等によっては、当該部位が所定の範囲より狭い範囲でしか撮影できない場合がある。このため、特許文献1のような眼科装置では、当該部位が撮影されている範囲が所定の範囲より狭い場合、所定の範囲より広い範囲が撮影されるまで、特定の部位の画像を撮影し直していた。このため、被検眼の状態によっては、何度も撮影しなければならなかったり、何度も撮影し直したとしても所定の範囲より広い範囲を撮影できなかったりする場合があった。
【0005】
本明細書は、被検眼の特定の部位の測定結果を好適に取得可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する第1の眼科装置は、被検眼の対象部位を撮影する撮影部と、演算部と、を備えている。演算部は、撮影部で撮影された対象部位の第1の画像と、第1の画像とは異なるタイミングで撮影された対象部位の第2の画像と、を取得する画像取得処理と、第1の画像と第2の画像とを合成して1つの対象部位の画像を生成する合成処理と、を実行可能に構成されている。
【0007】
上記の眼科装置では、被検眼の対象部位を撮影した第1の画像と第2の画像とを合成して1つの画像を生成することによって、例えば、第1の画像において対象部位が撮影されていない部分を第2画像の対応する部分で補うことができる。このため、被検眼の対象部位の所望の画像を取得するための撮影回数を減少させることができ、被検者の負担を低減することができる。
【0008】
また、本明細書に開示する第2の眼科装置は、被検眼の対象部位を測定する。第2の眼科装置は、対象部位を撮影する撮影部と、演算部と、報知部と、を備えている。演算部は、撮影部で撮影された対象部位の画像を取得する画像取得処理と、対象部位の画像のうち、対象部位が検出されていない非検出領域を特定する非検出領域特定処理と、を実行可能に構成されている。報知部は、演算部で特定された非検出領域を報知する。
【0009】
上記の眼科装置では、撮影された画像内の非検出領域を報知することによって、検査者は、非検出領域がどの位置であるのかを把握することができる。このため、例えば、検査者は、非検出領域が含まれるように対象部位の全体を撮影し直すことができるため、被検眼の対象部位の所望の画像を取得するための撮影回数を減少させることができ、被検者の負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に係る眼科装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図2】スキャニング-アライメント光学系の概略構成を示す図。
【
図3】実施例に係る眼科装置の制御系を示すブロック図。
【
図4】被検眼の強膜岬の画像を取得する処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】(a)は、被検眼が十分に開瞼している状態で撮影された前眼部画像と断層画像の模式図であり、(b)は、(a)に検出領域と強膜岬の位置を重ねて表示した状態を示す模式図である。
【
図8】(a)は、被検眼の上方と下方が十分に開瞼していない状態で撮影された前眼部画像と断層画像の模式図であり、(b)は、(a)に検出領域及び非検出領域と強膜岬の位置とを重ねて表示した状態を示す模式図である。
【
図9】被検眼の下方を開瞼させた状態で撮影された前眼部画像と断層画像の模式図。
【
図10】1回目の撮影画像の非検出領域に2回目の撮影画像の対応する領域を合成した画像の模式図。
【
図11】被検眼の上方を開瞼させた状態で撮影された前眼部画像と断層画像の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0012】
(特徴1)本明細書に開示する眼科装置は、対象部位の画像を表示する表示部をさらに備えていてもよい。表示部は、合成処理によって合成された対象部位の画像を表示してもよい。このような構成によると、合成された対象部位の画像を視覚的に把握することができる。
【0013】
(特徴2)本明細書に開示する眼科装置では、第1の画像は、第1の領域が開瞼された状態のときに撮影された画像であってもよい。第2の画像は、第1の領域とは異なる第2の領域が開瞼された状態のときに撮影された画像であってもよい。このような構成によると、第1の画像を撮影したときの被検眼の開瞼状態(第1の領域が開瞼された状態)と、第2の画像を撮影したときの被検眼の開瞼状態(第2の領域が開瞼された状態)とが異なるため、第1の画像と第2の画像で、対象部位内の撮影される領域が異なる。これらの画像を合成することによって、より広い範囲の対象領域を含む画像を取得することができる。
【0014】
(特徴3)本明細書に開示する眼科装置では、合成処理では、第1の画像と第2の画像とで共通する部分を位置合わせして、第1の画像と第2の画像とを合成してもよい。このような構成によると、第1の画像と第2の画像で共通する部分を位置合わせすることによって、第1及び第2の画像を合成する際にずれが生じることを抑制することができる。
【0015】
(特徴4)本明細書に開示する眼科装置では、演算部は、第1の画像のうち、対象部位が検出されていない非検出領域を特定する非検出領域特定処理をさらに実行可能に構成されていてもよい。合成処理では、第1の画像の対象部位が検出されている部分に、第2の画像のうち、第1の画像の非検出領域に対応する部分を合成してもよい。このような構成によると、第1の画像の対象領域が検出されている部分に、第2の画像の非検出領域に対応する部分を合成することによって、第1の画像内の対象部位が検出されていない部分を、第2の画像の対応部位で置き換えることができる。これにより、より広い範囲の対象領域を含む画像を取得することができる。
【0016】
(特徴5)本明細書に開示する眼科装置は、撮影部で撮影された画像に対象部位が検出されていない非検出領域が含まれるときに、非検出領域を報知する報知部をさらに備えていてもよい。このような構成によると、撮影部で被検眼の対象部位が撮影された場合において、その撮影された画像に非検出領域が含まれるときに、非検出領域が報知されるため、検査者は、再撮影する必要がある非検出領域がどの位置であるのかを把握することができる。このため、例えば、検査者は、非検出領域を含むように再撮影することができ、合成する画像としてより適切な画像を取得することができる。
【0017】
(特徴6)本明細書に開示する眼科装置では、報知部は、非検出領域が被検眼の上方であるとき、被検眼の上方を開瞼させるように指示し、非検出領域が被検眼の下方であるとき、被検眼の下方を開瞼させるように指示し、非検出領域が被検眼の上方及び下方であるとき、被検眼の上方及び下方を開瞼させるように指示するようにさらに構成されていてもよい。このような構成によると、非検出領域の位置に合わせて、より適切な画像を取得できるように検査者に指示することができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例に係る眼科装置1について説明する。眼科装置1は、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いて被検眼Eの前眼部の断層画像を撮影する。
図1に示すように、眼科装置1は、光源10と、被検眼Eから反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、K-clock信号を生成するK-clock発生装置50を備えている。
【0019】
光源10は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。光源10から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被検眼Eの深さ方向の各部位から反射される光のうち参照光と干渉を生じる反射光の反射位置が被検眼Eの深さ方向に変化する。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼Eの内部の各部位(例えば、角膜や水晶体等)の位置を特定することが可能となる。
【0020】
光源10から出力された光は、光ファイバを通ってファイバカプラ12に入力される。ファイバカプラ12に入力された光は、ファイバカプラ12において分波され、光ファイバを通ってファイバカプラ16及びK-clock発生装置50に出力される。なお、K-clock発生装置50については後述する。
【0021】
干渉光学系14は、光源10の光を被検眼Eの内部に照射すると共にその反射光を生成する測定光学系と、光源10の光から参照光を生成する参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を検出するバランス検出器40によって構成されている。
【0022】
測定光学系は、ファイバカプラ16と、サーキュレータ18と、スキャニング-アライメント光学系20によって構成されている。光源10から出力され、ファイバカプラ12を介してファイバカプラ16に入力された光は、ファイバカプラ16において測定光と参照光に分波されて出力される。ファイバカプラ16から出力された測定光は、光ファイバを通ってサーキュレータ18に入力される。サーキュレータ18に入力された測定光は、スキャニング-アライメント光学系20に出力される。スキャニング-アライメント光学系20は、サーキュレータ18から出力された測定光を被検眼Eに照射すると共に、被検眼Eからの反射光をサーキュレータ18に出力する。サーキュレータ18に入力された反射光は、ファイバカプラ38の一方の入力部に入力される。なお、スキャニング-アライメント光学系20については、後に詳述する。
【0023】
参照光学系は、ファイバカプラ16と、サーキュレータ22と、参照部24によって構成されている。ファイバカプラ16から出力された参照光は、光ファイバを通ってサーキュレータ22に入力される。サーキュレータ22に入力された参照光は、参照部24に出力される。参照部24は、コリメータレンズ26、28及び参照ミラー30によって構成されている。参照部24に出力された参照光は、コリメータレンズ26、28を介して参照ミラー30で反射され、再びコリメータレンズ26、28を介して参照部24から出力される。参照部24から出力された参照光は、サーキュレータ22に出力される。コリメータレンズ28及び参照ミラー30は、第2駆動装置54(
図3参照)によってコリメータレンズ26に対して進退動するように構成されている。第2駆動装置54がコリメータレンズ28及び参照ミラー30を移動させることによって、参照光学系の光路長が変化する。これによって、参照光学系の光路長を、測定光学系の光路長と略一致するように調整することができる。サーキュレータ22に入力された参照光は、偏波コントローラ36を介してファイバカプラ38の他方の入力部に入力される。偏波コントローラ36は、ファイバカプラ38に入力される参照光の偏光を制御する素子である。偏波コントローラ36は、パドル型やインライン型等の公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0024】
ファイバカプラ38は、入力された被検眼Eからの反射光と参照光を合波して干渉光を生成する。ファイバカプラ38は、生成した干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、バランス検出器40に入力する。バランス検出器40は、ファイバカプラ38から入力する位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(干渉信号)に変換する。バランス検出器40は、干渉信号を演算装置60に出力する。
【0025】
ここで、
図2を参照して、スキャニング-アライメント光学系20の構成について説明する。スキャニング-アライメント光学系20は、スキャニング光学系と、前眼部撮影系と、固視標光学系と、アライメント光学系を備えている。
【0026】
図2に示すように、スキャニング光学系は、コリメータレンズ102と、ガルバノスキャナ104と、ホットミラー106と、対物レンズ108を備えている。サーキュレータ18(
図1参照)から出力された測定光は、コリメータレンズ102を介してガルバノスキャナ104に出射される。ガルバノスキャナ104は、第1駆動装置52(
図3参照)によって傾動するように構成されており、第1駆動装置52がガルバノスキャナ104を傾動することで、被検眼Eへの測定光の照射位置が走査される。ガルバノスキャナ104から出射された測定光は、ホットミラー106に照射され、90度の角度で反射される。ホットミラー106に照射された測定光は、対物レンズ108を介して、被検眼Eに照射される。被検眼Eからの反射光は、上記とは逆に、対物レンズ108、ホットミラー106、ガルバノスキャナ104及びコリメータレンズ102を介してサーキュレータ18に入力される。
【0027】
前眼部撮影系は、2つの照明光源110と、対物レンズ108と、ホットミラー106と、コールドミラー112と、結像レンズ114と、CCDカメラ116と、光学制御部118を備えている。2つの照明光源110は、被検眼Eの正面に可視光領域の照明光を照射する。被検眼Eからの反射光は、対物レンズ108、ホットミラー106、コールドミラー112及び結像レンズ114を通過し、CCDカメラ116に入力される。これにより、被検眼Eの正面画像が撮影される。撮影された画像データは、光学制御部118によって画像処理され、タッチパネル56に表示される。
【0028】
固視標光学系は、固視標光源120と、コールドミラー122、124と、リレーレンズ126と、ハーフミラー128と、コールドミラー112と、ホットミラー106と、対物レンズ108を備えている。固視標光源120からの光は、コールドミラー122、124、リレーレンズ126及びハーフミラー128を通過し、コールドミラー112で反射される。コールドミラー112で反射された光は、ホットミラー106及び対物レンズ108を通過して被検眼Eに照射される。被検者に固視標光源120からの光を固視させることで、眼球(すなわち、被検眼E)を極力動かさないようにさせることができる。
【0029】
アライメント光学系は、XY方向位置検出系とZ方向位置検出系によって構成されている。XY方向位置検出系は、被検眼E(詳細には、角膜頂点)のXY方向の位置(すなわち、眼科装置1に対する上下左右の位置ずれ)を検出するために用いられる。Z方向位置検出系は、被検眼Eの角膜頂点の前後方向(Z方向)の位置を検出するために用いられる。
【0030】
XY方向位置検出系は、XY位置検出光源130と、コールドミラー124と、リレーレンズ126と、ハーフミラー128と、コールドミラー112と、ホットミラー106と、対物レンズ108と、結像レンズ132と、位置センサ134を備えている。XY位置検出光源130は、位置検出用のアライメント光を照射する。XY位置検出光源130から照射されたアライメント光は、コールドミラー124で反射され、リレーレンズ126及びハーフミラー128を通過し、コールドミラー112で反射される。コールドミラー112で反射された光は、ホットミラー106及び対物レンズ108を通過して被検眼Eの前眼部(角膜)に照射される。
【0031】
被検眼Eの角膜表面は球面状であるため、アライメント光は、被検眼Eの角膜頂点の内側で輝点像を形成するように角膜表面で反射される。この角膜表面からの反射光が対物レンズ108に入射され、ホットミラー106を介してコールドミラー112で反射される。コールドミラー112で反射された反射光は、ハーフミラー128で反射され、結像レンズ132を介して位置センサ134に入力される。位置センサ134が輝点の位置を検出することによって、角膜頂点の位置(すなわち、X方向及びY方向の位置)が検出される。
【0032】
位置センサ134の検出信号は、光学制御部118を介して演算装置60に入力される。この場合、位置センサ134と前眼部撮影系との間でのアライメントが取られていると共に、角膜頂点の所定(正規)の画像取得位置(断層画像取得時に追従させるべき位置)が設定されている。角膜頂点の正規の画像取得位置としては、例えば、CCDカメラ116の撮影画像の中心位置と一致する点である。演算装置60は、位置センサ134の検出に基づいて、正規の画像取得位置に対する検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量を算出する。
【0033】
Z方向位置検出系は、Z位置検出光源140と、結像レンズ142と、ラインセンサ144を備えている。Z位置検出光源140は、被検眼Eに対して斜め方向から検出用の光(スリット光又はスポット光)を照射する。被検眼Eの角膜からの斜め方向の反射光は、結像レンズ142を介してラインセンサ144に入射される。このとき、眼科装置1に対する被検眼Eの前後方向(Z方向)の位置によって、ラインセンサ144に入射される反射光の入射位置が異なる。このため、反射光の入射位置を検出することで、被検眼Eの眼科装置1に対するZ方向の位置が検出される。ラインセンサ144の検出信号は、演算装置60に入力される。
【0034】
K-clock発生装置50(
図1参照)は、等間隔周波数(光の周波数に対して均等な周波数間隔)にて干渉信号のサンプリングを行うために、光源10の光からサンプルクロック(K-clock)信号を光学的に生成する。そして、生成されたK-clock信号は、演算装置60に向けて出力される。これにより、演算装置60がK-clock信号に基づいて干渉信号をサンプリングすることで、干渉信号の歪みが抑えられ、分解能が悪化することが防止される。なお、本実施例では、演算装置60には、K-clock信号が規定するタイミングでサンプリングされた干渉信号が入力されるが、このような構成に限定されない。例えば、演算装置60は、あらかじめ判明している掃引時間に対する周波数を示す関数や同時に取得した掃引プロファイルに対して、一定時間間隔でサンプリングされたデータをスケーリングする処理を施してもよい。
【0035】
次に、本実施例の眼科装置1の制御系の構成を説明する。
図3に示すように、眼科装置1は演算装置60によって制御される。演算装置60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。演算装置60には、光源10と、第1駆動装置52と、第2駆動装置54と、照明光源110と、固視標光源120と、XY位置検出光源130と、Z位置検出光源140と、光学制御部118と、ラインセンサ144と、バランス検出器40と、K-clock発生装置50と、タッチパネル56が接続されている。
【0036】
演算装置60は、光源10のオン/オフを制御すると共に、第1駆動装置52及び第2駆動装置54を制御することでガルバノスキャナ104及び参照部24を駆動する。また、演算装置60には、バランス検出器40で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力すると共に、K-clock発生装置50で生成されたK-clock信号が入力する。演算装置60は、バランス検出器40からの干渉信号をK-clock信号に基づいてサンプリングする。そして、演算装置60は、サンプリングされた干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼Eの各部位(例えば、角膜、前房、水晶体等)の位置を特定する。演算装置60に入力されたデータや算出結果は、メモリ(図示省略)に記憶される。
【0037】
また、演算装置60は、照明光源110、固視標光源120、XY位置検出光源130のオン/オフを制御する。演算装置60は、CCDカメラ116で撮影され光学制御部118で処理された被検眼Eの正面画像を入力すると共に、光学制御部118を介して位置センサ134で検出された角膜頂点(輝点)の位置を入力する。演算装置60は、入力された被検眼Eの正面画像及び角膜頂点(輝点)の位置に基づいて、角膜頂点(輝点)のXY方向のずれ量を算出する。演算装置60は、ラインセンサ144の検出信号を入力し、被検眼Eの眼科装置1に対するZ方向のずれ量を算出する。演算装置60は、XY方向位置検出系により検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量と、Z方向位置検出系により検出された被検眼EのZ方向の位置ずれ量に基づいて、それらの位置ずれ量を全て0にするように、本体駆動部(図示省略)を制御し、眼科装置1本体を保持台(図示省略)に対して移動させる。
【0038】
さらに、演算装置60は、タッチパネル56を制御している。タッチパネル56は、被検眼Eの計測結果や解析結果に関する各種の情報を検査者に提供する表示装置であると共に、検査者からの指示や情報を受け付けるユーザインターフェースである。例えば、タッチパネル56は、演算装置60で生成された被検眼Eの前眼部画像、断層画像、解析結果、検査者への非検出領域72(後に詳述)の指示等を表示することができる。また、タッチパネル56は、眼科装置1の各種設定を入力することができる。なお、本実施例の眼科装置1はタッチパネル56を備えているが、このような構成に限定されない。上記の情報の表示及び入力が可能な構成であればよく、モニタと入力装置(例えば、マウスやキーボード等)を備えていてもよい。
【0039】
図4~
図11を参照して、被検眼Eの強膜岬SSの画像を取得する処理について説明する。例えば、断層画像を用いて隅角底の状態を評価する場合、隅角底を含むように断層画像を撮影する必要がある。しかしながら、被検眼Eが十分に開瞼していないと、被検眼Eの上側の隅角底や下側の隅角底が瞼に遮られて撮影できないことがある。本実施例の眼科装置1では、被検眼Eの隅角底が周方向全体に含まれる画像を取得する。以下では、前房隅角部に位置する強膜岬SSが画像内に含まれているときに、画像内に隅角底が含まれていると判定する。したがって、被検眼Eの強膜岬SSが周方向全体に含まれる画像を取得する処理について説明する。
【0040】
図4に示すように、まず、演算装置60は、被検眼Eの前眼部の断像画像を取得する(S12)。被検眼Eの前眼部の断層画像を取得する処理は、以下の手順で実行する。まず、検査者がタッチパネル56から検査開始の指示を入力すると、演算装置60は被検眼Eと眼科装置1のアライメントを行う。アライメントは、アライメント光学系で検出されるXY方向及びZ方向のずれ量に基づいて実行される。具体的には、演算装置60は、XY方向位置検出系により検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量と、Z方向位置検出系により検出された被検眼EのZ方向の位置ずれ量がそれぞれ0になるように、眼科装置1本体を保持台(図示省略)に対して移動させる。
【0041】
アライメントが完了すると、演算装置60は、被検眼Eの前眼部の断層画像を撮影する。本実施例において、ステップS12における被検眼Eの前眼部の測定は、ラジアルスキャン方式により実行される。これにより、前眼部の断層画像が全領域に亘って取得される。つまり、
図5に示すように、Bスキャン方向を被検眼Eの角膜頂点から放射方向に設定し、Cスキャン方向を円周方向として断層画像の取込みが行われる。本実施例では、ラジアルスキャン方式で放射状に128方向(具体的には、周方向に等間隔に128方向)の断層画像を撮影する。演算装置60は、取得(撮影)された断層画像のデータを、メモリに取込む。なお、前眼部の断層画像の撮影方法は、ラジアルスキャン方式に限定されない。前眼部の断層画像が全領域に亘って取得できればよく、例えば、ラスタースキャン方式によって撮影されてもよい。すなわち、
図6に示すように、Bスキャン方向を被検眼Eに対して水平方向に設定し、Cスキャン方向を垂直方向として断層画像の取込みが行われてもよい。
【0042】
ステップS12において被検眼Eの前眼部の断層画像を取得すると、演算装置60は、各断層画像の強膜岬SSを検出する(S14)。各断層画像の強膜岬SSは、公知の方法を用いて検出することができるため、その方法は特に限定されない。例えば、各断層画像の強膜岬SSは、検査者がタッチパネル56に表示される2次元断層画像内に入力することによって検出されてもよいし、演算装置60が公知の画像処理プログラム(例えば、角膜の後面と虹彩の前面を検出し、両者の境界点を求めるプログラム等)を実行することによって検出してもよい。
図7(a)に示すように、撮影時に被検眼Eが十分に開瞼していると、全ての断層画像において強膜岬SSが2箇所ずつ撮影される。この場合には、全ての断層画像において強膜岬SSが2箇所ずつ検出される。一方、
図8(a)に示すように、撮影時に被検眼Eが十分に開瞼していないと、被検眼Eの上方及び下方の強膜岬SS(又は、被検眼Eの上方及び下方の強膜岬SSのいずれか一方)が撮影されないことがある。この場合には、複数の断層画像のうち、被検眼Eが開瞼していない上方部分及び下方部分(又は、上方部分及び下方部分のいずれか一方)を含む画像では、強膜岬SSが検出されない。
【0043】
次に、演算装置60は、タッチパネル56に、強膜岬SSが検出された領域70と、強膜岬SSが検出されなかった領域72を被検眼Eの前眼部画像に重ねて表示させる(S16)。具体的には、演算装置60は、強膜岬SSが検出された周方向の領域70(以下、単に「検出領域70」ともいう)と、強膜岬SSが検出されなかった周方向の領域72(以下、単に「非検出領域72」ともいう)を前眼部画像に重ねて表示する。
【0044】
図7(b)に示すように、ステップS14において全ての断層画像で強膜岬SSが検出された場合には、検出領域70が全周に亘って表示され、非検出領域72は表示されない。このとき、検出領域70は、隣接する断層画像において検出された強膜岬SSを線分で繋いで表示されてもよいし、検出された強膜岬SSの位置に基づいて算出した基準真円として表示されてもよい。なお、上記の基準真円の算出方法は、例えば、特許6367534号に開示される公知の算出方法と同一であるため、詳細な説明は省略する。以下、この基準真円の算出方法を「SS全周フィッティング」と称することがある。
【0045】
一方、
図8(b)に示すように、ステップS14において複数の断層画像のうち強膜岬SSが検出されないものを含む場合には、強膜岬SSが検出された位置に対応する周方向の一部のみが検出領域70として表示され、強膜岬SSが検出されなかった位置に対応する周方向の残りの部分が非検出領域72として表示される。検出領域70と非検出領域72は、例えば、SS全周フィッティングを用いて特定することができる。すなわち、演算装置60は、検出された複数の強膜岬SSの位置を用いてSS全周フィッティングにより基準真円を算出し、基準真円のうち、強膜岬SSが検出された位置に対応する範囲を検出領域70として表示させ、強膜岬SSが検出されなかった位置に対応する範囲を非検出領域72として表示させる。例えば、
図8(b)に示すように、被検眼Eの上方と下方の両方が十分に開瞼していない場合には、検出領域70は、上方と下方を除く左側の領域及び右側の領域となり、非検出領域72は、上方の領域と下方の領域となる。また、本実施例では、検出領域70は実線で表示され、非検出領域72は破線で表示される。このように検出領域70と非検出領域72が異なる態様で表示されることによって、検査者は、検出領域70と非検出領域72を区別し易くなる。
【0046】
また、タッチパネル56には、前眼部画像(詳細には、強膜岬SSの検出領域70と非検出領域72を重ねた前眼部画像)と共に、角膜頂点を含み、かつ、Y軸及びZ軸(
図1及び
図2参照)と平行な断面の断層画像が表示される。演算装置60は、タッチパネル56に表示される断層画像に、強膜岬SSの位置を示す線分74を重ねて表示させる。具体的には、
図7(b)に示すように、被検眼Eの上方及び下方が検出領域70である場合には、断層画像において、前眼部画像に表示される検出領域70と対応する位置に線分74を表示する。したがって、断層画像では、強膜岬SSは、線分74上に位置することになる。一方、
図8(b)に示すように、被検眼Eの上方及び下方が非検出領域72である場合(又は、被検眼Eの上方及び下方のいずれか一方が非検出領域72である場合)には、前眼部画像の非検出領域72が表示される位置(すなわち、基準真円上の位置)と対応する位置に線分74を表示する。したがって、断層画像において被検眼Eが撮影されていない部分に、線分74が表示されることになる。
【0047】
次に、演算装置60は、ステップS16で表示される前眼部画像に非検出領域72が含まれているか否かを判定する(S18)。前眼部画像に非検出領域72が含まれていない場合(ステップS18でNO)、強膜岬SSの断層画像が全周にわたり取得できていると判定できる(
図7(b)参照)。このため、被検眼Eの強膜岬SSの画像を取得する処理を終了する。
【0048】
一方、前眼部画像に非検出領域72が含まれている場合(ステップS18でYES)、強膜岬SSの断層画像が周方向に取得できていない部分があると判定できる。この場合、
図8(b)に示すように、演算装置60は、タッチパネル56に、非検出領域72を指示するマーク76を表示させる(S20)。例えば、
図8(b)では、被検眼Eの上方と下方に非検出領域72が存在する。このため、上方の非検出領域72と下方の非検出領域72を指し示すマーク76をそれぞれ表示する。これにより、検査者に被検眼Eのどの領域が撮影できていないのかを報知することができ、検査者に非検出領域72を再撮影するように促すことができる。このため、検査者は被検眼Eのうち撮影できていない領域を正確に把握することができ、被検眼Eを再撮影する回数を減少できる。検査者は、報知されたマーク76に従い、非検出領域72が撮影されるように被検眼Eの前眼部の断層画像を再撮影する。例えば、被検眼Eの上方を指し示すマーク76が表示されている場合、検査者は被検眼Eの上方を開瞼させて被検眼Eを撮影する。被検眼Eの上方を指し示すマーク76と下方を指し示すマーク76が表示されている場合、検査者は被検眼Eの上方及び下方を開瞼させて被検眼Eを撮影するか、被検眼Eの上方又は下方のいずれか一方を開瞼させて被検眼Eを撮影する。
【0049】
なお、本実施例では、非検出領域72を指し示すマーク76を表示させているが、このような構成に限定されない。非検出領域72を検査者に報知できればよく、例えば、検出領域70と非検出領域72を異なる色で表示(例えば、検出領域70を緑、非検出領域72を赤で表示)したり、非検出領域72のみを点滅させたりする等のように、非検出領域72を検出領域70より注視され易い態様で表示してもよい。また、非検出領域72を指し示すマーク76を表示する代わりに(又は、マーク76の表示と共に)、「上側と下側を再撮影してください」等の音声によって、非検出領域72を報知してもよい。
【0050】
次に、演算装置60は、被検眼Eの断層画像を取得するための検査開始の指示が入力されたか否かを判定する(S22)。すなわち、演算装置60は、検査者によって被検眼Eの断層画像を再撮影する指示が入力されたか否かを判定する。検査開始の指示が入力されていない場合(ステップS22でNO)、演算装置60は、検査開始の指示が入力されるまで待機する。一方、検査開始の指示が入力された場合(ステップS22でYES)、演算装置60は、被検眼Eの前眼部の断像画像を取得し(S24)、取得した各断層画像の強膜岬SSを検出する(S26)。なお、ステップS24及びステップS26の処理は、上記のステップS12及びステップS14の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
次に、演算装置60は、ステップS12で取得した画像(以下、1回目の撮影画像ともいう)と、ステップS24で取得した画像(以下、2回目の撮影画像ともいう)のマッチングを行う(S28)。1回目の撮影画像と2回目の撮影画像では、被検眼Eの撮影範囲が異なっている。例えば、1回目の撮影画像には、被検眼Eの上方と下方を除く中央部分が撮影されている一方、
図9に示すように、2回目の撮影画像には、被検眼Eの上方を除く下方と中央部分が撮影されている。演算装置60は、1回目の撮影画像の撮影範囲と2回目の撮影画像の撮影範囲の共通部分を用いて、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像の位置合わせを行う。これにより、後述する合成処理の際に、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像との間にずれが生じることを抑制することができる。
【0052】
なお、マッチングの方法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、以下の方法を用いてマッチングすることができる。まず、演算装置60は、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像のそれぞれについて、走査角毎に2次元断層画像を生成する。なお、生成する2次元断層画像のそれぞれには、角膜頂点が含まれるようにする。次いで、演算装置60は、1回目の撮影画像から得られた複数の2次元断層画像と、2回目の撮影画像から得られた複数の2次元断層画像とをパターンマッチングし、その差が最小となる角度差を求める。具体的には、1回目の撮影画像と2回目の1回目の撮影画像の角膜頂点を位置合わせした状態で、1回目の撮影画像の基準線(角膜頂点を通過する直線)と2回目の撮影画像の基準線(角膜頂点を通過する直線)とがなす角度を変えながら、1回目の撮影画像から得られた複数の2次元断層画像のそれぞれについて、2回目の撮影画像から得られた複数の2次元断層画像の対応するものとの輝度差を算出し、これら算出した輝度差の総和を取得する。輝度差を算出する際は、対応する2つの2次元断層画像の角膜前面の輝度情報を比較することによって算出する。そして、輝度差の総和が最小となる角度差(1回目の撮影画像の基準線と2回目の撮影画像の基準線とがなす角度)を決定し、これらの角度差を1回目の撮影画像と2回目の撮影画像の角度ずれ(2つの撮影画像の走査角のずれ)と決定する。そして、決定した角度ずれ(走査角のずれ)を考慮して1回目の撮影画像と2回目の撮影画像を位置合わせする。
【0053】
また、SS全周フィッティングを用いてマッチングしてもよい。具体的には、演算装置60は、まず、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像のそれぞれについて、SS全周フィッティングにより基準真円を算出する。次いで、演算装置60は、1回目の撮影画像について、検出された強膜岬SSの位置と基準真円との間の差を算出し、その差の総和が最小となる角度を、1回目の撮影画像のずれ角とする。また、演算装置60は、2回目の撮影画像について、検出された強膜岬SSの位置と基準真円との間の差を算出し、その差の総和が最小となる角度を、2回目の撮影画像のずれ角とする。そして、基準真円の中心が一致するように1回目の撮影画像と2回目の撮影画像のXY方向の位置合わせを行い、かつ、1回目の撮影画像に対して1回目の撮影画像のずれ角分だけ位置をずらし、2回目の撮影画像に対して2回目の撮影画像のずれ角分だけ位置をずらし、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像の角度方向の位置合わせをする。
【0054】
また、前眼部画像を用いてマッチングしてもよい。具体的には、演算装置60は、まず、1回目の撮影画像に対応する前眼部画像と2回目の撮影画像に対応する前眼部画像のそれぞれについて、被検眼Eの虹彩を特定する。次いで、演算装置60は、特定された虹彩の模様が一致するようにマッチングして、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像を位置合わせする。例えば、1回目の撮影画像から特定した被検眼Eの虹彩の特徴紋理を抽出し、2回目の撮影画像から特定した被検眼Eの虹彩の特徴紋理を抽出する。そして、1回目の撮影画像から抽出した特徴紋理と、2回目の撮影画像から抽出した特徴紋理とが一致するように、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像との微動角度及び移動量を特定し、2つの撮影画像の位置合わせを行う。
【0055】
また、被検眼Eの測定データ(例えば、被検眼Eを特徴付ける測定パラメータ)を用いてマッチングしてもよい。測定データとしては、例えば、隅角開大度(angle opening distance:AOD)を用いることができるが、用いる測定データの種類は特に限定されない。例えば、演算装置60は、まず、1回目の撮影画像から取得されるAODデータと2回目の撮影画像から取得されるAODデータのそれぞれを取得する。撮影範囲が共通する部分では、2つのAODデータは一致する。このため、演算装置60は、2つのAODデータが一致する部分が重なるように、2つのAODデータの一方(又は両方)をオフセットする。これにより、1回目の撮影画像と2回目の撮影画像を位置合わせする。
【0056】
次に、演算装置60は、1回目の撮影画像の非検出領域72を2回目の撮影画像の対応する領域に置き換え、2つの撮影画像を合成する(S30)。すなわち、演算装置60は、2回目の撮影画像から、1回目の撮影画像の非検出領域72に対応する領域を切り取り、1回目の撮影画像の検出領域70に合成する。例えば、
図8(b)に示すように、1回目の撮影画像の非検出領域72が被検眼Eの上方と下方の2箇所であり、2回目の撮影の際には、被検眼Eの下方を開瞼させ、上方は開瞼させていなかったとする。すなわち、2回目の撮影画像には、被検眼Eの下方の強膜岬SSが撮影されている一方、被検眼Eの上方の強膜岬SSは撮影されていないとする。この場合、演算装置60は、2回目の撮影画像から、1回目の撮影画像の上方の非検出領域72に対応する領域と、1回目の撮影画像の下方の非検出領域72に対応する領域の両方を切り取り、1回目の撮影画像の検出領域70に合成する。すると、被検眼Eの左右の強膜岬SSと共に、被検眼Eの下方の強膜岬SSが撮影された状態の画像(すなわち、被検眼Eの上方の強膜岬SSのみが撮影されていない状態の画像)が生成される。
【0057】
なお、演算装置60は、2回目の撮影画像で検出されている部分のみを切り取り、1回目の撮影画像に合成してもよい。詳細には、演算装置60は、まず、2回目の撮影画像の検出領域70と非検出領域72を特定する。次いで、演算装置60は、2回目の撮影画像の検出領域70のうち、1回目の撮影画像の非検出領域72と対応する領域のみを切り取り、1回目の撮影画像に合成する。すなわち、上記の例では、演算装置60は、2回目の撮影画像から、1回目の撮影画像の下方の非検出領域72に対応する領域のみを切り取る。そして、演算装置60は、1回目の撮影画像の検出領域70と上方の非検出領域72に、2回目の撮影画像の切り取った領域(すなわち、1回目の撮影画像の下方の非検出領域72に対応する領域)を合成する。
【0058】
次に、演算装置60は、タッチパネル56に、ステップS30で生成された合成画像を表示させると共に、合成画像の検出領域70及び非検出領域72を合成画像に重ねて表示させる(S32)。そして、演算装置60は、ステップS30で生成された合成画像に非検出領域72が含まれているか否かを判定する(S34)。合成画像に非検出領域72が含まれている場合(ステップS34でYES)、ステップS20に戻り、ステップS20~ステップS32の処理を繰り返す。一方、合成画像に非検出領域72が含まれていない場合(ステップS34でNO)、被検眼Eの強膜岬SSの画像を取得する処理を終了する。
【0059】
例えば、
図8(b)に示すように、1回目の撮影画像の非検出領域72が被検眼Eの上方と下方の2箇所であり、
図9に示すように、2回目の撮影の際には、被検眼Eの下方を開瞼させ、上方は開瞼させていなかった場合、ステップS30で生成された合成画像には、被検眼Eの上方の非検出領域72が含まれる。この場合には、ステップS20に戻り、
図10に示すように、演算装置60は、タッチパネル56に、被検眼Eの上方の非検出領域72を指示するマーク76を表示させる。これにより、検査者は、被検眼Eの上方の強膜岬SSが撮影できていないことを知ることができる。そして、検査者は指示に従って被検眼Eの上方を開瞼した状態で、被検眼Eを再撮影する。すると、
図11に示すように、被検眼Eの上方の強膜岬SSが撮影される。その後、演算装置60は、ステップS22~ステップS32の処理を実行し、3回目の撮影画像から被検眼Eの上方の非検出領域72に対応する領域を切り取り、先のステップS30の処理で生成された合成画像に3回目の撮影画像から切り取った領域を合成する。すると、
図7(a)に示すような強膜岬SSが全周に亘り撮影された画像が生成される。このように、1回の撮影において強膜岬SSが全周に亘り撮影された画像が取得できなくても、複数の画像を合成することによって、所望の範囲が撮影された画像を生成することができる。
【0060】
本実施例の眼科装置1を用いると、複数回撮影した撮影画像を合成することにより、強膜岬SSが全周に亘り撮影された画像を生成することができる。このため、所望の画像が撮影できるまで何度も被検眼Eを撮影する必要がなくなり、所望の画像を取得するための撮影回数を減少させることができる。また、非検出領域72を検査者に報知するため、検査者は、再撮影すべき領域を適切に把握することができる。このため、所望の画像を取得するための撮影回数を減少させることができる。このように撮影回数を減少させることができるため、被検者の負担を低減することができる。
【0061】
なお、本実施例では、強膜岬SSが周方向全体に亘り撮影された画像を取得(生成)したが、このような構成に限定されない。撮影対象部位は、強膜岬SSに限定されるものではなく、被検眼E内のどの部位や領域であってもよい。例えば、対象部位は、強膜岬SSを含む前房隅角部であってもよいし、角膜を含む前眼部領域であってもよい。また、対象部位は、前眼部以外の被検眼の組織を含む領域であってもよい。また、合成画像は、強膜岬SS等の対象部位の全体が含まれるように生成されなくてもよく、所望の範囲を含んでいれば、対象部位全体が含まれていなくてもよい。例えば、合成画像は、対象部位の周方向全体(すなわち、360度)を含むように生成されていなくてもよく、周方向の所望の範囲(例えば、270度以上)が含まれるように生成されてもよい。
【0062】
実施例で説明した眼科装置1に関する留意点を述べる。実施例の干渉光学系14及びK-clock発生装置50は、「撮影部」の一例であり、タッチパネル56は、「表示部」及び「報知部」の一例であり、演算装置60は、「演算部」の一例である。
【0063】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
10:光源
14:干渉光学系
20:スキャニング-アライメント光学系
24:参照部
40:バランス検出器
50:K-clock発生装置
52:第1駆動装置
54:第2駆動装置
56:タッチパネル
60:演算装置
70:検出領域
72:非検出領域
76:マーク
E:被検眼