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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】養生ボード
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/24 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
E04G21/24 Z
E04G21/24 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019206166
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021080637
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521413936
【氏名又は名称】藤本貴昭株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 素久
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-011820(JP,A)
【文献】実開昭59-060246(JP,U)
【文献】特開2003-64880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24
E04G 21/30
B32B 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養生すべき面を覆って保護するための養生ボードであって、
強度を維持するためのボード材層と、
該ボード材層の養生すべき面側に設けられたクッション層と、
該ボード材層のクッション層とは反対側の面に湿度により養生ボードが反るのを防止するために設けられた防湿層とを備え、
更に、該防湿層上に少なくとも1層の剥離フィルム層を形成したことを特徴とする養生ボード。
【請求項2】
前記剥離フィルム層の面積は、前記防湿層の面積より小さくなっており、前記防湿層は周縁部の少なくとも一部に露出エリアを有していることを特徴とする請求項1に記載の養生ボード。
【請求項3】
複数の前記剥離フィルム層を備え、前記各剥離フィルム層の面積は、当該剥離フィルム層より下層の剥離フィルム層の面積より小さくなっており、該下層の剥離フィルム層は周縁部の少なくとも一部に露出エリアを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の養生ボード。
【請求項4】
前記養生ボードの平面形状が矩形であり、前記剥離フィルム層の幅は、縦又は横の何れかの方向において前記防湿層の幅より狭くなっており、前記防湿層の前記露出エリアは、前記防湿層の少なくとも一辺に沿って形成されている請求項2に記載の養生ボード。
【請求項5】
前記養生ボードの平面形状が矩形であり、前記剥離フィルム層の幅は、当該剥離フィルム層の下層の剥離フィルム層より幅が狭くなっており、該下層の剥離フィルム層の前記露出エリアは、該下層の剥離フィルム層の少なくとも一辺に沿って形成されている請求項3に記載の養生ボード。
【請求項6】
前記剥離フィルム層は、前記防湿層とは異なる色に着色されている請求項1から5の何れかに記載の養生ボード。
【請求項7】
前記防湿層及び前記剥離フィルム層のそれぞれは、互いに異なる色に着色されている請求項3又は5の何れかに記載の養生ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場等において、既に施工が完了している床などの面を、損傷や汚染から保護し養生するための養生ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場等においては、既に施工が完了し仕上げられた床面を、その後の壁や天井の工事等の作業によって損傷したり汚染したりしないように養生ボードを用いて保護することが広く行われている。また、引っ越し荷物の搬入、搬出の際にも、輸送トラックの床面や搬入先の家屋の床面が土足で損傷、汚染等しないように養生ボードが用いられることがある(特許文献1及び2)。
【0003】
図6は、上記のような目的で使用される従来の養生ボード1の斜視図であり、一般的には、使用目的に応じた大きさの矩形形状を成し、各種の層をラミネートした積層構造を有しているものが多い。同図の養生ボード1は、山折り線2a、2aと谷折り線2bとによってコンパクトに折りたためるようになっており、養生すべき部分の面積に応じて、広げて縦横に並べ、余分な部分を切断して使用される。
【0004】
図7に養生ボード1の断面図を示す。同図に示すように、養生ボード1は、強度を維持するためのボード材層3を有し、ボード材層3の下面側には、床面などの養生すべき面に直接接するクッション層4が形成され、ボード材層3の上面側には、湿度により養生ボード1が反るのを防止するための防湿層5が設けられている。
【0005】
このような養生ボード1は、使用終了後には剥がされるが、強度的に問題がない場合には廃棄することなく繰り返し使用される。しかし、強度的には再使用に耐え得るものであっても、汚れた養生ボードを建築現場に持ち込むことは見た目にも好ましいものではなく、例えば搬入先の顧客に悪い印象を与えかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6526486号公報
【文献】特開2019-35293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、繰り返し使用により養生ボードの上面が損傷したり汚れた場合などでも、損傷や汚れを取り去った状態で再使用できる養生ボードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の養生ボードは、養生すべき面を覆って保護するための養生ボードであって、強度を維持するためのボード材層と、該ボード材層の養生すべき面側に設けられたクッション層と、該ボード材層のクッション層とは反対側の面に設けられた防湿層とを備え、更に、該防湿層上に少なくとも1層の剥離フィルム層を形成したことを特徴とする。
【0009】
これにより、使用に際して養生ボードの上面が損傷したり汚れた場合にも、剥離フィルム層を防湿層から剥がすことにより、新品に近い状態で再使用することができる。また、複数の剥離フィルム層を有する養生ボードの場合は、繰り返し使用によって養生ボードの上面が再度損傷したり汚れた場合にも、その都度剥離フィルム層を剥がすことにより、長期に亘って新品に近い状態で養生ボードを使用することができる。
【0010】
ここで、前記剥離フィルム層の面積は、前記防湿層の面積より小さくなっており、前記防湿層は周縁部の少なくとも一部に露出エリアを有していることが好ましい。これにより、剥離フィルム層を容易に剥がすことが可能となる。
【0011】
複数の剥離フィルム層を備えた養生ボードでは、前記剥離フィルム層の面積は、当該剥離フィルム層より下層の剥離フィルム層の面積より小さくし、該下層の剥離フィルム層は周縁部の少なくとも一部に露出エリアを有していることが好ましい。これにより、最上層の剥離フィルム層を剥がすのに際し、剥がす必要のない下層の剥離フィルム層まで一緒に剥がしてしまうことを避けることができる。
【0012】
また、前記養生ボードの平面形状が矩形の場合、前記剥離フィルム層の幅は、縦又は横の何れかの方向において前記防湿層の幅より狭くし、前記防湿層の前記露出エリアは前記防湿層の少なくとも一辺に沿って形成するのが好ましい。これにより、剥離フィルム層を容易に剥がすことが可能となる。
【0013】
加えて、複数の剥離フィルム層を備えた養生ボードにおいては、前記養生ボードの平面形状が矩形の場合、前記剥離フィルム層の幅は、当該剥離フィルム層の下層の剥離フィルム層より幅を狭くし、該下層のフィルム層の前記露出エリアを、該下層の剥離フィルム層の少なくとも一辺に沿って形成することが好ましい。これにより、最上層の剥離フィルム層を剥がすに際し、剥がす必要のない下層の剥離フィルム層まで一緒に剥がしてしまうことを避けることができる。
【0014】
前記剥離フィルム層は、前記防湿層とは異なる色に着色されていることが好ましい。これにより、剥離フィルム層の端部を容易に見つけることができる。
【0015】
更に、複数の剥離フィルム層を備えた養生ボードでは、前記防湿層及び前記剥離フィルム層のそれぞれは、互いに異なる色に着色されていることが好ましい。これにより、剥がすべき剥離フィルム層の端部を容易に見出すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の養生ボードでは、防湿層上に剥離フィルム層を形成してあるので、養生ボードの上面が損傷したり汚れた場合にも、剥離フィルム層を防湿層から剥がすことにより、新品に近い状態で再使用することができる。
また、複数の剥離フィルム層を備えた本発明の養生ボードでは、繰り返し使用によって養生ボードの上面が再度損傷したり汚れた場合にも、その都度剥離フィルム層を剥がすことにより、長期に亘って新品に近い状態で養生ボードを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る養生ボードの斜視図である。
図2図1の矢印21の方向から見た養生ボードの断面図(側面図)である。
図3】本発明の他の実施形態に係る養生ボードの斜視図である。
図4図3の矢印22の方向から見た養生ボードの断面図(側面図)である。
図5】本発明の更に他の実施形態に係る養生ボードの斜視図である。
図6】従来の養生ボードを表す斜視図である。
図7図6の従来の養生ボードの断面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
<実施形態1>
図1は、本実施形態の養生ボード10の斜視図であり、一般的には、使用目的に応じた大きさの矩形形状を成している。本実施形態の養生ボード10の大きさ及び形状として、例えば、長さ180cm、幅90cmの矩形形状のものを示すことができる。同図に示すように、本実施形態の養生ボード10には、2本の山折り線2a、2aと1本の谷折り線2bとが付けられており、収納時には4分の1の面積にコンパクトに折りたためるようになっている。使用に際しては、養生すべき部分の面積に応じて、広げて縦横に並べ、継ぎ目をテープなどで留め、余分な部分を切断して使用される。
【0019】
図2は本実施形態の養生ボード10の端部を側面から矢印21に沿って見た部分図であるが、実際には長さ方向に連続的に製造されたものを切断することにより養生ボード10が製造されるので、図2は実質的には断面図である。同図に示すように、本実施形態の養生ボード10は、強度を維持するためのボード材層3を有しており、このボード材層3には、紙管原紙が好適に用いられる。ボード材層3の下面側には、床面などの養生すべき面に直接接するクッション層4が形成されている。クッション層4は、軟らかく保護性に優れた発泡ポリエチレンシートを貼着することにより形成される。ボード材層3の上面側には、湿度により養生ボード10が反るのを防止するための防湿層5が設けられている。防湿層5としては、ボード材層3及び後述する剥離フィルム層7との接着性を考慮して、ポリエチレンフィルムが好適に使用される。
本実施形態の養生ボード10では、防湿層5の上面に、更に剥離フィルム層7が形成されている。剥離フィルム層7としては、上述のように防湿層5との接着性を考慮して、ポリエチレンフィルムが好適に使用される。ポリエチレンフィルムからなる防湿層5の場合は、その厚さを約30μmとすることが好ましく、防湿層5と剥離フィルム層7との接着には、アクリル系(アクリルウレタン樹脂系/アクリルゴム系/アクリル樹脂系/シリコーンアクリル樹脂系)の接着剤が好適に用いられる。また、防湿層5と剥離フィルム層7とを熱によりラミネート接着する場合には、剥離フィルム層7としてプロピレンフィルムも使用することができる。ただし、この場合には、後述する2層目の剥離フィルム層8(図3)としてプロピレンフィルムを使用するとことはできないことに留意する必要がある。
【0020】
剥離フィルム層7は養生ボード10を再使用する際に防湿層5から剥がされるが、その際の防湿層5に対する剥離フィルム層7の粘着力は、0.3~0.75N/25mm(測定条件:試験体SUS430BA、剥離角度180度、剥離速度300mm/分)の範囲にあることが好ましく、0.3~0.5N/25mmの範囲にあるが更に好ましい。この粘着力がこれらの範囲より大きい場合は、剥離フィルム層7が破れたり剥し難くなる。また、粘着力がこれらの範囲より小さい場合は、使用中に剥離フィルム層7が剥がれてしまうこともあり得る。また、剥離フィルム層7の厚さは、防湿層5の厚さの2倍以上であることが好ましい。この厚さが2倍より小さい場合には、剥離フィルム層7を剥がす際に破れることがある。
【0021】
本実施形態の養生ボード10では、図1に示すように、平面形状が矩形の養生ボード10の幅方向において、剥離フィルム層7の幅は防湿層5の幅より狭くなっており、従って、剥離フィルム層7の面積は、その下層の防湿層5の面積より小さくなっている。従って、防湿層5には、養生ボード10の長手方向の二辺に沿って露出する露出エリア5a及び5bが存在している(図2も参照)。このような露出エリア5a及び5bにより、再使用のために剥離フィルム層7を剥がす際に、容易に剥離フィルム層7の端部を見出すことができる。
また、本実施形態の養生ボード10では、剥離フィルム層7は防湿層5とは異なる例えば青色に着色されており、これにより、更に容易に剥離フィルム層7の端部を見出すことができる。
【0022】
<実施形態2>
図3は、本発明の他の実施形態にかかる養生ボード20の斜視図である。また、図4図3の養生ボード10の端部を側面から矢印22に沿って見た部分図であり、前述の図2と同様に、図4は実質的には断面図である。本実施形態の養生ボード20は、図1及び図2の養生ボード10と同様の大きさ及び形状を有しており、養生ボード10の剥離フィルム層7の上面に、更にもう一枚の剥離フィルム層8を設けた点が異なっている。剥離フィルム層8を設けたこと以外の構成要素は図1及び図2と同じであり、対応する構成要素には同じ符号が付してある。剥離フィルム層8の粘着力及び厚さは、前述の剥離フィルム層7と同様であり、剥離フィルム層8は剥離フィルム層7及び防湿層5とは異なる色(例えば赤色)に着色されている。
【0023】
本実施形態の養生ボード20では、図3に示すように、養生ボード20の幅方向において、剥離フィルム層8の幅はその下層の剥離フィルム層7の幅より狭くなっており、従って、剥離フィルム層8の面積は、その下層の剥離フィルム層7の面積より小さくなっている。従って、剥離フィルム層7には、養生ボード20の長手方向の二辺に沿って露出する露出エリア7a及び7bが存在している(図4も参照)。このような露出エリア7a及び7bにより、再使用のために剥離フィルム層8を剥がす際に、容易に剥離フィルム層8の端部を見出すことができる。また、本実施形態の養生ボード20では、剥離フィルム層7、剥離フィルム層8及び防湿層5は互いに異なる色に着色されているので、これにより、更に容易に剥離フィルム層7及び8の端部を見出すことができる。剥離フィルム層8を剥がした後においては、図1及び図2の養生ボード10と同様に使用することができ、更に剥離フィルム層7を剥がして再使用することができる。
本実施形態では、2層の剥離フィルム層7、8を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、更に多くの剥離フィルム層を設けてもよい。その場合、各剥離フィルム層の幅は、養生ボード20の縦又は横の何れかの方向においてその下層のフィルム層より幅を狭くして、その下層の剥離フィルム層の少なくとも一辺に沿って露出エリアが形成されるようにすることが好ましい。また、防湿層5及び各剥離フィルム層は、互いに異なる色に着色しておくことが好ましい。
【0024】
<実施形態3>
図5は、本発明の更なる他の実施形態にかかる養生ボード30の斜視図である。本実施形態の養生ボード30は、図1及び図2の養生ボード10と同様の大きさ及び形状を有しており、養生ボード10における剥離フィルム層7とは異なる平面形状の剥離フィルム層9を設けた点が異なっている。剥離フィルム層9以外の構成要素は図1及び図2と同じであり、対応する構成要素には同じ符号が付してある。剥離フィルム層9の粘着力及び厚さも、剥離フィルム層7と同様である。
【0025】
本実施形態の養生ボード30では、剥離フィルム層9の平面形状は防湿層5とほぼ同じであるが、二ヶ所の角の部分が欠けており、従って、剥離フィルム層9の面積は、その下層の防湿層5より小さくなっている点で異なっている。このような剥離フィルム層9の形状により、三角形の露出エリア5c及び5dが存在している(図5の拡大部分も参照)。このような露出エリア5c及び5dにより、再使用のために剥離フィルム層9を剥がす際に、容易に剥離フィルム層9の端部を見出すことができる。
なお、本実施形態の養生ボード30に加えて、剥離フィルム層9上に更なる剥離フィルムを1又は2以上設ける場合には、その更なる剥離フィルムのそれぞれの面積は、その下側の剥離フィルム層より小さくして、各剥離フィルム層にも露出エリアを存在させることが好ましい。また、防湿層5及び各剥離フィルム層は、互いに異なる色に着色しておくことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、例えば建築現場などにおける床面の養生や、引っ越し等に際してのトラックの荷台、家屋の床面などの保護に使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10,20,30 養生ボード
2a 山折り線
2b 谷折り線
3 ボード材層
4 クッション層
5 防湿層
5a,5b,5c,5d 露出エリア
7a,7b 露出エリア
7,8,9 剥離フィルム層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7