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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電動流量調節弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019212599
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021085418
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 起美仁
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3165083(JP,U)
【文献】特開2012-102798(JP,A)
【文献】特開2015-48910(JP,A)
【文献】国際公開第2006/064865(WO,A1)
【文献】特開平1-182680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
F16K 31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式駆動機構の作動軸によってハウジング前部の弁室内にダイアフラムと一体に配置された弁体を弁座に対して進退させて前記弁座との開度を調節する流量調節弁において、
前記弁体は前記弁室後部の保持チャンバーに周方向に回転不能に同軸的に嵌挿された弁体保持軸部に連結保持されており、
前記弁体保持軸部はその後部に係合空間部を有し、かつ保持軸部側ばね受け部と駆動機構側ばね受け部との間に介装されたばね部材により常時弁室側に付勢されていて、
前記作動軸が、前記電動式駆動機構の駆動により直線方向に進退する進退部と、前記進退部に接続されて前記進退部とともに進退する可撓性を有するワイヤー部と、前記ワイヤー部の先端に設けられて前記弁体保持軸部と係合空間部を介して係合する先端係合部とを有し、
前記弁体の後退時又は停止時には、前記作動軸の先端係合部が前記ワイヤー部を介して後退又は停止されて前記弁体保持軸部の係合空間部の係止部に係着することにより前記ばね部材の付勢力に抗して前記弁体保持軸部を後退又は停止させて、前記弁体を前記弁座から離隔させ、
前記弁体の前進時には、前記作動軸の先端係合部が前記ワイヤー部を介して前進されて前記弁体保持軸部の係合空間部内に位置して前記ばね部材の付勢力とともに前記弁体保持軸部を前進させて、前記弁体を前記弁座に近接させるとともに、
前記ばね部材の付勢力によって前記弁体が前記弁座を閉鎖した時には、前記弁体保持軸部の係合空間部の空間には前記作動軸の先端係合部の弁室側に間隙部を有するように構成されている
ことを特徴とする電動流量調節弁。
【請求項2】
前記電動式駆動機構と前記ハウジングとが離隔されている請求項1に記載の電動流量調節弁。
【請求項3】
前記作動軸の前記進退部が前記電動式駆動機構の軸摺動部に回転不能に嵌挿されている請求項1又は2に記載の電動流量調節弁。
【請求項4】
前記作動軸のワイヤー部がフッ素樹脂製の保護部材内に摺動可能に嵌挿されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電動流量調節弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動流量調節弁に関し、特には直動型ステッピングモータによって作動される流量調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体の製造設備等で使用される流量調節弁として電動式の直動型ステッピングモータによって作動されるニードル弁が知られている(特許文献1参照)。電動式は駆動源として電気を用い電気制御による操作であることから、装置の維持管理の自由度が大きく、遠隔操作やプロセス(処理対象)によって流量変化などが簡単容易に行うことができるメリットがある。
【0003】
図12,13に示す電動式ニードル弁100は、ハウジング111後部に配置された直動型ステッピングモータ170の直動軸160によって、ハウジング111前部の弁室120内にダイアフラム145と一体に配置された弁体140のニードル部141を弁座125に対して近接離隔して弁座125との開度を調節する流量調節弁である。符号121は被制御流体の流入部、122はその流出部、146はダイアフラム145を固定するためのダイアフラム固定部材、147は通気孔である。
【0004】
弁室120後部には保持チャンバー130が設けられていて、ここに弁体140と連結された軸体部150が、スプライン嵌合構造によって周方向に回転不能に同軸的に進退自在に嵌装されている。この軸体部150はその後部で前記直動型ステッピングモータ170の直動軸160と連結されているとともに、軸体部150はばね部材152によって常時後方(弁室120と反対方向)に付勢されている。したがって、ステッピングモータ170の直動軸160の前進時には、モータの駆動力によってばね部材152の付勢力に抗して軸体部150が前進し、軸体部150に連結された弁体140を弁座125方向に近接させる。ステッピングモータ170の直動軸160の後退時には、ばね部材152の付勢力によって軸体部150が後退し弁体140は後退して弁座125から離隔する。
【0005】
各図において、符号115はハウジングの外壁部112に形成された放熱溝部、135はダイアフラムを透過した腐食性ガスにより金属製のモータや軸部材が腐食しないように必要によりパージされる気体流入ポートであり、136は同じくその気体流出ポートである。151はばね部材152のための軸体部側ばね受け部、153はダイアフラム固定部材側のばね受け部である。また、ステッピングモータ170に関して、171はロータ、172は直動軸160を進退させるシャフト、173はステッピングモータ170の配線部である。
【0006】
上記従来の流量調節弁100では、ステッピングモータ170の駆動によって軸体部150を前進させ弁体140を弁座125方向に近接して弁の開度を調節するのであるが、ばね部材152が介装されているので、全閉の場合にはモータ内のロータネジ部に上方向の荷重がかかり摩擦力が増大する。閉鎖時に強く閉まりすぎて弁座を過剰に圧迫すると、これにより、流量調節弁の耐久性やパーティクルの発生等の問題を生ずるおそれがある。
【0007】
また、閉の状態で軸体部150や弁体140が熱膨張した場合にも上方向の荷重がかかり摩擦力が増大する。そして、次の動作で弁を開方向に動かす駆動信号(電流)をモータ170に供給しても動かない場合がある。いわゆる、ステッピングモータが荷重に負けて動かない「脱調」である。
【0008】
さらに、従来の電動流量調節弁では弁閉する力はモータの力であり、弁座の全閉シール力を維持するためにはモータの励磁を維持する必要がある。しかし、これには消費電流の問題だけではなく、モータが発熱し条件が悪い場合にはダイアフラムまで伝熱して、被制御流体の温度まで上昇させてしまうという問題を惹起するおそれがある。半導体製造に使用される流体にあっては、その化学反応は流体の流量と時間、温度によって変化するため、モータの発熱はプロセスに悪影響を与える懸念が大きい。
【0009】
上のような状況から、従来の電動流量調節弁では、弁座の全閉を避けて、原点センサーとステッピングモータへの駆動パルスのカウントにより軸体部の位置を把握して、弁座の全閉の手前で「寸止め」をして使用しているのが現状である。しかしながら、このような寸止めでは、微小流量の制御や流量ゼロからの立ち上げができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実登3165083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、電動流量調節弁の弁体の閉鎖時におけるモータへの摩擦力の増大を防止して、脱調を防ぎ、消費電流の問題だけではなく、モータの発熱に伴うプロセスへの悪影響を回避し、さらに弁座の全閉の手前で「寸止め」する必要がなく、微小流量の制御や流量ゼロからの立ち上げなどのランプ制御が可能となる新規な電動流量調節弁の構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、請求項1の発明は、電動式駆動機構の作動軸によってハウジング前部の弁室内にダイアフラムと一体に配置された弁体を弁座に対して進退させて前記弁座との開度を調節する流量調節弁において、前記弁体は前記弁室後部の保持チャンバーに周方向に回転不能に同軸的に嵌挿された弁体保持軸部に連結保持されており、前記弁体保持軸部はその後部に係合空間部を有し、かつ保持軸部側ばね受け部と駆動機構側ばね受け部との間に介装されたばね部材により常時弁室側に付勢されていて、前記作動軸が、前記電動式駆動機構の駆動により直線方向に進退する進退部と、前記進退部に接続されて前記進退部とともに進退する可撓性を有するワイヤー部と、前記ワイヤー部の先端に設けられて前記弁体保持軸部と係合空間部を介して係合する先端係合部とを有し、前記弁体の後退時又は停止時には、前記作動軸の先端係合部が前記ワイヤー部を介して後退又は停止されて前記弁体保持軸部の係合空間部の係止部に係着することにより前記ばね部材の付勢力に抗して前記弁体保持軸部を後退又は停止させて、前記弁体を前記弁座から離隔させ、前記弁体の前進時には、前記作動軸の先端係合部が前記ワイヤー部を介して前進されて前記弁体保持軸部の係合空間部内に位置して前記ばね部材の付勢力とともに前記弁体保持軸部を前進させて、前記弁体を前記弁座に近接させるとともに、前記ばね部材の付勢力によって前記弁体が前記弁座を閉鎖した時には、前記弁体保持軸部の係合空間部の空間には前記作動軸の先端係合部の弁室側に間隙部を有するように構成されていることを特徴とする電動流量調節弁に係る。
【0013】
請求項2の発明は、前記電動式駆動機構と前記ハウジングとが離隔されている請求項1に記載の電動流量調節弁に係る。
【0014】
請求項3の発明は、前記作動軸の前記進退部が前記電動式駆動機構の軸摺動部に回転不能に嵌挿されている請求項1又は2に記載の電動流量調節弁に係る。
【0015】
請求項4の発明は、前記作動軸のワイヤー部がフッ素樹脂製の保護部材内に摺動可能に嵌挿されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電動流量調節弁に係る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る電動流量調節弁によると、電動式駆動機構の作動軸によってハウジング前部の弁室内にダイアフラムと一体に配置された弁体を弁座に対して進退させて前記弁座との開度を調節する流量調節弁において、前記弁体は前記弁室後部の保持チャンバーに周方向に回転不能に同軸的に嵌挿された弁体保持軸部に連結保持されており、前記弁体保持軸部はその後部に係合空間部を有し、かつ保持軸部側ばね受け部と駆動機構側ばね受け部との間に介装されたばね部材により常時弁室側に付勢されていて、前記作動軸が、前記電動式駆動機構の駆動により直線方向に進退する進退部と、前記進退部に接続されて前記進退部とともに進退する可撓性を有するワイヤー部と、前記ワイヤー部の先端に設けられて前記弁体保持軸部と係合空間部を介して係合する先端係合部とを有し、前記弁体の後退時又は停止時には、前記作動軸の先端係合部が前記ワイヤー部を介して後退又は停止されて前記弁体保持軸部の係合空間部の係止部に係着することにより前記ばね部材の付勢力に抗して前記弁体保持軸部を後退又は停止させて、前記弁体を前記弁座から離隔させ、前記弁体の前進時には、前記作動軸の先端係合部が前記ワイヤー部を介して前進されて前記弁体保持軸部の係合空間部内に位置して前記ばね部材の付勢力とともに前記弁体保持軸部を前進させて、前記弁体を前記弁座に近接させるとともに、前記ばね部材の付勢力によって前記弁体が前記弁座を閉鎖した時には、前記弁体保持軸部の係合空間部の空間には前記作動軸の先端係合部の弁室側に間隙部を有するように構成されているため、弁体を弁座に対して全閉する力ないし弁座の全閉シール力を維持するためにモータの励磁を維持する必要がなく、弁座を過剰に圧迫することがなく、またこれに伴う問題、すなわち、消費電流の問題のみならずモータの発熱による被制御流体の温度上昇に関連する種々の問題を一挙に解消することができる。さらに、従来のように弁座の全閉の手前で「寸止め」する必要がなくなり、微小流量の制御や流量ゼロからの立ち上げなどのランプ制御が可能となる。
【0017】
請求項2の発明に係る電動流量調節弁によると、請求項1の発明において、前記電動式駆動機構と前記ハウジングとが離隔されているため、ハウジングに放熱手段を設ける必要がなくなって構造の簡素化やハウジングの小型化を図ることができ、置換特性を向上させることができるとともに、防爆エリアや高温エリアから遠ざけて配置可能となって電動式駆動機構に対する被制御流体からの腐蝕や熱等の影響を回避することができる。
【0018】
請求項3の発明に係る電動流量調節弁によると、請求項1又は2の発明において、前記作動軸の前記進退部が前記電動式駆動機構の軸摺動部に回転不能に嵌挿されているため、進退部を適切に直線方向へ進退させることができる。
【0019】
請求項4の発明に係る電動流量調節弁によると、請求項1ないし3の発明において、前記作動軸のワイヤー部がフッ素樹脂製の保護部材内に摺動可能に嵌挿されているため、ワイヤー部の損傷や劣化等を防止するとともに、ワイヤー部が摺動しやすく進退動の妨げとならない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る電動流量調節弁の設置状態の概略図である。
図2図1の電動流量調節弁の開弁時の縦断面図である。
図3図1の電動流量調節弁の閉弁時の縦断面図である。
図4図2のA-A断面図である。
図5図2のB-B断面図である。
図6図2に示す開弁時の要部の拡大断面図である。
図7】弁体の移動中の状態を表す要部の拡大断面図である。
図8図3に示す閉弁時の要部の拡大断面図である。
図9】本発明の電動流量調節弁を使用したマニホールドバルブの設置状態の概略図である。
図10】電動流量調節弁を利用した回路の概略図ある。
図11】電動流量調節弁を利用した回路の流量制御のグラフである。
図12】従来の電動流量調節弁の開弁時の縦断面図である。
図13図12の電動流量調節弁の閉弁時の縦断面図である。
図14】従来の電動流量調節弁の「寸止め」の制御例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~3に示す本発明の一実施形態に係る電動流量調節弁10は、主に半導体製造工場や半導体製造装置等の流体管路に配設されるニードル弁であって、電動式駆動機構60の作動軸70によってハウジング11前部の弁室20内にダイアフラム45と一体に配置された弁体40を弁座25に対して進退させて弁座25との開度を調節するものである。
【0022】
電動流量調節弁10では、ハウジング11、弁体40、ダイアフラム45等の各部が耐食性及び耐薬品性の高い材料で構成される。例えば、PTFE、PFA、PVDF等のフッ素樹脂である。フッ素樹脂は、切削等により所望する形状に容易に加工することができる。また、この電動流量調節弁10では、純水、アンモニア水、フッ酸、過酸化水素水、塩酸、オゾン水、水素水、酸素水、界面活性剤等の薬液、水素、酸素等のガス等の被制御流体が流通される。
【0023】
ハウジング11は、一側に被制御流体の流入部21を有し、弁座25を介して他側に被制御流体の流出部22が形成された弁室20と、弁室20の後部側に保持チャンバー30とを有する。
【0024】
弁体40は、ニードル部41と、ダイアフラム45とを有し、弁体保持軸部50に連結保持される。ニードル部41は、弁体40の進退により弁座25を開閉する。ダイアフラム45は、薄肉の可動膜からなり、弁室20内を流通する被制御流体の保持チャンバー30側への浸入を防止する。符号46はダイアフラム45を固定するためのダイアフラム固定部材である。
【0025】
弁体保持軸部50は、弁室20後部の保持チャンバー30に周方向に回転不能に同軸的に進退自在に嵌挿され、後部に係合空間部55を有し、かつ保持軸部側(可動側)ばね受け部51と駆動機構側(固定側)ばね受け部53との間に介装されたばね部材52により常時弁室20側に付勢されている。弁体保持軸部50の形状は、例えば、図4に示すような公知のスプライン嵌合構造等が挙げられる。図において、符号56は弁体保持軸部50に螺合または接着で接合された係合空間部55の係止部、57は係合空間部55の通気孔である。
【0026】
電動式駆動機構60は、適宜の演算装置(図示せず)の制御により進退量を調節して作動軸70を介して弁体40を進退させる部材である。電動式駆動機構60としては、弁体40の進退量を精度良く再現できるものであれば特に限定されず、例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、超音波モータ等が好適に用いられる。実施形態の電動式駆動機構60は、直動型ステッピングモータである。電動式駆動機構60に関して、61はロータ、62は作動軸70を進退させるシャフト、63は配線部、64は軸摺動部である。
【0027】
作動軸70は、進退部71と、ワイヤー部72と、先端係合部73とを有する。進退部71は、電動式駆動機構60の駆動により直線方向に進退する直動軸である。この進退部71は、例えば図5に示すようなスプライン構造等により電動式駆動機構60の軸摺動部64に回転不能に嵌挿されているため、適切に直線方向へ進退させることができる。ワイヤー部72は、進退部71に接続されて進退部71とともに進退する可撓性を有する部材である。このワイヤー部72は、必要に応じてフッ素樹脂製の保護部材75内に摺動可能に嵌挿される。保護部材75は、ワイヤー部72を被覆して損傷や劣化等を防止するとともに、フッ素樹脂製であるためワイヤー部72が摺動しやすく進退動の妨げとならない。先端係合部73は、ワイヤー部72の先端に設けられて弁体保持軸部50と係合空間部55を介して係合する部位である。先端係合部73は、例えばスプライン構造等により弁体保持軸部50と係合空間部55に回転不能に嵌挿される(図示省略)。
【0028】
電動式駆動機構は、電動式であることから、通常は作動時に発熱して弁体側へ熱が伝わるため、ハウジングに溝部を形成する等の放熱手段を設ける必要がある。しかしながら、この電動式駆動機構60は、ワイヤー部72を有する作動軸70を介して弁体保持軸部50を進退可能に構成されることにより、図1~3に示すように、ハウジング11と離隔して設置することが可能となり、ハウジング11に放熱手段を設ける必要がなくなって構造の簡素化を図ることができる。
【0029】
このように、ハウジング11と電動式駆動機構60とが離隔されていることにより、電動式駆動機構60の大きさに左右されることなくハウジング11が形成可能となるため、ハウジング11の小型化を図ることができ、置換特性を向上させることができる。さらに、腐蝕性の高い被制御流体や高温流体等が使用される場合に、電動式駆動機構60を防爆エリアや高温エリアから遠ざけて配置可能となり、電動式駆動機構60に対する被制御流体からの腐蝕や熱等の影響を回避することができる。
【0030】
また特に、ハウジング11と電動式駆動機構60とが離隔される場合、作動軸70のワイヤー部72が保護部材75内に嵌挿されることにより、ハウジング11と電動式駆動機構60との間での露出を防止することができる。その際、この保護部材75は、フッ素樹脂製であることから、ハウジング11と電動式駆動機構60との位置関係に対応した形状(例えば図1に図示のような側面視略L字状等)に形成される。そのため、作動軸70のワイヤー部72は、可撓性を有することにより保護部材75の形状に沿って進退する。これにより、ワイヤー部72は、進退時に不必要な変形が生じることがなく、電動式駆動機構60の作動を適切に伝達することができる。
【0031】
ここで、本発明の電動流量調節弁10の作動について説明する。電動流量調節弁10は、図2,6に示す弁体40の後退時又は停止時、つまり弁座25の開放(開弁)時には、電動式駆動機構60の作動軸70の先端係合部73がワイヤー部72を介して後退又は停止されて弁体保持軸部50の係合空間部55の係止部56に係着することにより、ばね部材52の付勢力に抗して弁体保持軸部50を後退又は停止させて、弁体40を弁座25から離隔させている。開放状態で作動軸70が停止されると、弁体保持軸部50はその後退位置でばね部材52の付勢力に抗して停止状態を保持する。
【0032】
これに対して、弁座25の開放状態から弁体40を前進させて弁座25を閉鎖する場合は、図7に示すように、電動式駆動機構60の作動軸70が前進される。図3,8に示す弁体40の前進時(弁座25の閉鎖(閉弁)時)には、図示のように、作動軸70の先端係合部73がワイヤー部72を介して前進されて弁体保持軸部50の係合空間部55内に位置して、ばね部材52の付勢力を妨げることなくばね部材52の付勢力とともに作動軸70と弁体保持軸部50とを前進させて弁体40を弁座25に近接させ、ばね部材52の付勢力によって弁体40が弁座25を閉鎖する。この前進時においては、作動軸70の先端係合部73と弁体保持軸部50の係合空間部55の係止部56との係着状態が維持される。そのため、弁体保持軸部50は、作動軸70の移動量を超えて移動することがなく、作動軸70の作動に応じて移動量が制御される。
【0033】
このようにして弁体保持軸部50を前進させることにより、図3,8に示すように、弁体40が弁座25に当接されて、弁座25を閉鎖(閉弁)する。そして、ばね部材52の付勢力によって弁体40が弁座25を閉鎖した時には、弁体保持軸部50の係合空間部55には作動軸70の先端係合部73の弁室20側に間隙部Sを有するように構成される。つまり、作動軸70の先端係合部73は係合空間部55の空間54の弁室20側に間隙部Sを有するので、ばね部材52の付勢力によって弁体40が弁座25を閉鎖した後は、自由(フリー)状態となっており、必要により、作動軸70の先端係合部73はこの係合空間部55の間隙部Sをさらに前進移動できるように構成されている。なお、先端係合部73は係合空間部55に回動不能に嵌挿されているため、係合空間部55内を適切に移動可能である。
【0034】
図からも理解されるように、ばね部材52の付勢力によって弁体40が移動され、弁体40が弁座25に当接して弁座25が閉鎖(閉弁)後に、作動軸70の先端係合部73が作動手段である電動式駆動機構60により係合空間部55の間隙部Sを有し該間隙部Sを自由(フリー)移動できるということは、弁体40の閉鎖時における弁座25との衝突や過大な摩擦等が回避ないし緩和されることを意味する。そのため、これらの衝突や摩擦等に伴う問題の発生を一挙に解決することができる。
【0035】
また、この電動流量調節弁10では、閉弁後の開弁に際しては、作動軸70の先端係合部73は、係合空間部55の空間54の弁室20側に間隙部Sに自由(フリー)状態となって位置しており、換言すれば、従来のように弁体40を弁座25に対して全閉する力ないし弁座25の全閉シール力を維持するためのモータの励磁を維持する必要がない。したがって、これに伴う問題、すなわち、消費電流の問題のみならずモータの発熱による被制御流体の温度上昇に関連する種々の問題を一挙に解消することができる。もちろん、従来のように弁座25の全閉の手前で「寸止め」する必要がない。さらに、開弁方向の移動、つまり作動軸70の後退移動は、負荷の無い自由(フリー)状態からスタートできるので、微小な流量の開弁制御や流量ゼロからの立ち上げなどのランプ制御が可能となる。
【0036】
本発明の電動流量調節弁は、図9に示すようなマニホールドバルブ10Aにも使用することができる。マニホールドバルブ10Aでは、ハウジング11Aが一体に形成されて、各流路(流入部)21,21,21,21に対応して弁体がそれぞれ設けられる。そして、各弁体ごとに対応した作動軸70を介して電動式駆動機構60Aが設けられている。このマニホールドバルブ10Aにおいても、可撓性を有するワイヤー部を備えた作動軸70により、ハウジング11Aと電動式駆動機構60Aとを離隔させることができる。
【0037】
図10は電動流量調節弁10を利用した回路の概略図であり、図11にその流量制御のグラフを示す。なお、この例では、電動流量調節弁10の下流側に開閉弁90が配置されており、図11に示すように、開閉弁90を開放したまま電動流量調節弁10の開閉により流体の停止を含む流量制御が可能となる。ここでは、開閉弁90は、緊急時の遮断や当該回路の停止時等に閉弁される。ちなみに、図14は先述した従来の電動流量調節弁の「寸止め」の制御例を示したグラフであるが、従来の調節弁では寸止めした後に開閉弁によってその閉弁ないし開弁がなされる。
【0038】
本発明の電動流量調節弁によれば、上に述べたように、弁体の閉鎖時における弁座との衝突等が回避ないし緩和されこれに伴う問題の発生を抑制することができる。のみならず、電動式流量調節弁の弁体の閉鎖時におけるモータへの摩擦力の増大を防止して、脱調を防ぎ、消費電流の問題だけではなく、モータの発熱に伴うプロセスへの悪影響を回避し、さらに弁座の全閉の手前で「寸止め」する必要がなく、微小流量の制御や流量ゼロからの立ち上げなどのランプ制御が可能となるなど、電動流量調節弁の有用性を限りなく拡大するものである。
【0039】
また、弁体を進退させる電動式駆動機構の作動軸が可撓性を有するワイヤー部を備えることにより、電動式駆動機構とハウジングとを離隔させることが可能となり、ハウジングに放熱手段を設ける必要がなくなって構造の簡素化やハウジングの小型化を図ることができ、置換特性を向上させることができるとともに、防爆エリアや高温エリアから遠ざけて配置可能となって電動式駆動機構に対する被制御流体からの腐蝕や熱等の影響を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上の通り、本発明の電動流量調節弁は、作動軸の先端系郷部が弁体保持軸部と係合空間部を介して係合して、ばね部材の付勢力によって閉弁した時には、弁体保持軸部の係合空間部の空間には先端係合部の弁室側に間隙部を有するように構成されていることにより、電動流量調節弁の弁体の閉鎖時におけるモータへの摩擦力の増大を防止して、脱調を防ぎ、消費電流の問題だけではなく、モータの発熱に伴うプロセスへの悪影響を回避し、さらに弁座の全閉の手前で「寸止め」する必要がなく、微小流量の制御や流量ゼロからの立ち上げなどのランプ制御が可能となる。そのため、従来の電動流量調節弁の代替品として有望である。
【符号の説明】
【0041】
10 電動流量調節弁(ニードル弁)
10A マニホールドバルブ
11 ハウジング
11A マニホールドバルブのハウジング
20 弁室
21 流入部
22 流出部
25 弁座
30 保持チャンバー
40 弁体
41 ニードル部
45 ダイアフラム
46 ダイアフラム固定部材
50 弁体保持軸部
51 保持軸部側ばね受け部
52 ばね部材
53 駆動機構側ばね受け部
54 空間
55 係合空間部
56 係止部
57 係合空間部の通気孔
60 電動式駆動機構(ステッピングモータ)
60A マニホールドバルブの電動式駆動機構
61 電動式駆動機構のロータ
62 電動式駆動機構のシャフト
63 電動式駆動機構の配線部
64 電動式駆動機構の軸摺動部
70 作動軸
71 進退部
72 ワイヤー部
73 先端係合部
75 保護部材
90 開閉弁
S 間隙部
図1
図2
図3
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