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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】固液分離装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B04C 11/00 20060101AFI20240112BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20240112BHJP
   B04C 5/12 20060101ALI20240112BHJP
   B04C 5/185 20060101ALI20240112BHJP
   E03F 5/14 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B04C11/00
B04C5/04
B04C5/12 Z
B04C5/185
E03F5/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019213884
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021084060
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】大原 利隆
(72)【発明者】
【氏名】川上 直哉
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-227506(JP,A)
【文献】特開昭60-216814(JP,A)
【文献】特公昭36-006342(JP,B1)
【文献】特開2007-032267(JP,A)
【文献】特開昭54-029162(JP,A)
【文献】実開昭57-055515(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 1/00-11/00
E03F 1/00-11/00
B01D 21/00-21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に固体が混入した混入液を受け入れ、該液体に対する該固体の濃度が高まった濃縮液を排出口から排出する濃縮容器と、該排出口が槽内に配置され該濃縮容器で得られた濃縮液を貯留する濃縮液槽と、斜め上方に向かって延在した搬送経路の下端部分が該濃縮液槽の底部に接続し該搬送経路の上端部分が該排出口よりも上方に配置された搬送装置と、流入口が該濃縮容器に接続され、流出口が該濃縮液槽の外部であって該流入口よりも下方に配置された送液管とを備え、該濃縮液中の固体を該下端部分に集め、該搬送装置を所定の駆動速度で駆動することで該固体を該搬送経路に沿って斜め上方へ搬送し、該濃縮容器が受入れた該混入液中の液体を該送液管を通して該濃縮液槽の外部へ送る固液分離装置の駆動方法であって、
前記搬送装置を前記所定の駆動速度よりも遅い駆動速度で駆動または停止させた状態で、前記排出口よりも上に前記濃縮液槽の液面を上昇させ、かつ前記送液管内を前記濃縮容器が受入れた前記混入液中の液体で満たす充填工程と、
前記濃縮液槽に貯留された前記濃縮液中の液体を、該濃縮液中の液体の位置エネルギーを利用して、前記送液管を通して該濃縮液槽の外部に送り、前記上端部分の高さより低い位置まで該濃縮液槽の液面を低下させる送液工程と、
前記送液工程によって前記濃縮液槽の液面を低下させた後に前記搬送装置を前記所定の駆動速度で駆動し、前記下端部分に集めた固体を前記上端部分で水切りしながら搬送する搬送工程とを有することを特徴とする固液分離装置の駆動方法。
【請求項2】
前記充填工程は、内周面が円筒状をした円筒部を有する前記濃縮容器の該円筒部内に、該内周面の接線方向から前記混入液を受け入れ、前記排出口から前記濃縮液を排出する工程であることを特徴とする請求項1記載の固液分離装置の駆動方法。
【請求項3】
前記充填工程は、前記濃縮容器として、前記円筒部と前記排出口の間に、該濃縮容器の内部空間の断面積が該円筒部側よりも該排出口側の方が減少した絞り部を有するものを用いる工程であることを特徴とする請求項2記載の固液分離装置の駆動方法。
【請求項4】
液体に固体が混入した混入液を貯留する貯留槽と、流入口が該貯留槽内に配置され、流出口が該貯留槽の外部であって該流入口よりも下方に配置された送液管と、斜め上方に向かって延在した搬送経路の下端部分が該貯留槽の底部に接続し該搬送経路の上端部分が該流入口よりも上方に配置された搬送装置とを備え、該混入液中の固体を該下端部分に集め、該搬送装置を所定の駆動速度で駆動することで該固体を該搬送経路に沿って斜め上方へ搬送し、該貯留槽に貯留された該混入液中の液体を該送液管を通して該貯留槽の外部へ送る固液分離装置の駆動方法であって、
前記搬送装置を停止または前記所定の駆動速度よりも遅い駆動速度で駆動した状態で、前記貯留槽に前記混入液を受け入れて前記送液管の最上端より上に該貯留槽の液面を上昇させる受入工程と、
前記貯留槽に貯留された前記混入液中の液体を、該混入液中の液体の位置エネルギーを利用して、前記送液管を通して該貯留槽の外部に送り、前記上端部分の高さより低い位置まで該貯留槽の液面を低下させる送液工程と、
前記送液工程によって前記貯留槽の液面を低下させた後に前記搬送装置を前記所定の駆動速度で駆動し、前記下端部分に集めた固体を前記上端部分で水切りしながら搬送する搬送工程とを有することを特徴とする固液分離装置の駆動方法。
【請求項5】
前記受入工程は、前記流入口よりも上方または該流入口の周囲に設けられた覆い部材によって、該覆い部材よりも上方から沈降してくる前記固体が該流入口に入り込んでしまうことを抑制した状態で行われる工程であることを特徴とする請求項4記載の固液分離装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体が混入した混入液から液体を分離する固液分離装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設には、汚水から砂を除去するための沈砂池や汚水から汚泥を除去するための沈殿池が設けられている。沈砂池では、流れ込んできた汚水に含まれている砂を池底の集砂ピットに集めた後、集められた砂が混入した砂混入水を揚砂ポンプで吸い上げて地上に設けられた固液分離装置に移送している。この固液分離装置は、移送された砂混入水を受け入れ、砂混入水から砂と汚水を分離して汚水を沈砂池に戻している。また、沈殿池は、受け入れた汚水に含まれている汚泥を池底の汚泥ピットに集めた後、汚泥ピットに集められた汚泥が混入した汚泥混入水を汚泥ポンプによって沈殿池よりも上方に設けられた固液分離装置に移送している。この沈殿池の上方に設けられた固液分離装置においても、移送された汚泥混入水を受け入れ、汚泥混入水から汚水を分離して沈殿池に戻している。さらに、下水処理施設以外においても、液体に固体が混入した混入液から液体を分離する固液分離装置が用いられている。このような固液分離装置としては、例えば、工場排水から水と金属粉等とを分離するものや、ダム湖等の貯水池に流入した土砂等を水と分離するものなどがある。以下、汚水等に含まれている砂や汚泥やし渣、工業排水に含まれている金属粉、あるいは貯水池に水とともに流入する土砂等を総称して固体と称することがある。また、固体が混入した液体を総称して混入液と称することがある。
【0003】
この固液分離装置として、濃縮容器と濃縮液槽と搬送装置とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1の濃縮容器は、濃縮液槽よりも上方に配置され、沈砂池に配置された揚砂ポンプと揚砂管によって接続されている。濃縮容器は、揚砂ポンプによって沈砂池から移送された砂混入水を受け入れ、汚水に対する砂の濃度が砂混入水よりも高まった濃縮液を、濃縮容器に設けられた排出口から排出する。濃縮液槽は、濃縮容器が排出した濃縮液を受け入れて貯留する。搬送装置は、濃縮液槽の下端部分に接続され、その接続された部分から斜め上方に向かって延在している。濃縮液槽の下端部分に沈降した砂は、この搬送装置によって斜め上方に向かって水切りされつつ搬送されて濃縮液槽の外部に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-21483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された固液分離装置の搬送装置は、濃縮液槽の下端部分から濃縮液槽よりも相当程度上方まで延在した搬送経路を有している。搬送装置は、搬送経路のうち、濃縮液槽の水面よりも上方に配置された部分において水切りしながら砂を搬送する。搬送装置において、水切りしながら搬送する距離を長くすることで、濃縮液槽に貯留された濃縮液中の汚水が砂とともに濃縮液槽の外部に送られてしまうことを抑制している。しかし、水切りしながら搬送する距離を長くすることで搬送装置の搬送経路が長くなってしまい、結果として固液分離装置が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、固液分離装置の小型化を実現可能な固液分離装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の固液分離装置の駆動方法は、液体に固体が混入した混入液を受け入れ、該液体に対する該固体の濃度が高まった濃縮液を排出口から排出する濃縮容器と、該排出口が槽内に配置され該濃縮容器で得られた濃縮液を貯留する濃縮液槽と、斜め上方に向かって延在した搬送経路の下端部分が該濃縮液槽の底部に接続し該搬送経路の上端部分が該排出口よりも上方に配置された搬送装置と、流入口が該濃縮容器に接続され、流出口が該濃縮液槽の外部であって該流入口よりも下方に配置された送液管とを備え、該濃縮液中の固体を該下端部分に集め、該搬送装置を所定の駆動速度で駆動することで該固体を該搬送経路に沿って斜め上方へ搬送し、該濃縮容器が受入れた該混入液中の液体を該送液管を通して該濃縮液槽の外部へ送る固液分離装置の駆動方法であって、
前記搬送装置を前記所定の駆動速度よりも遅い駆動速度で駆動または停止させた状態で、前記排出口よりも上に前記濃縮液槽の液面を上昇させ、かつ前記送液管内を前記濃縮容器が受入れた前記混入液中の液体で満たす充填工程と、
前記濃縮液槽に貯留された前記濃縮液中の液体を、該濃縮液中の液体の位置エネルギーを利用して、前記送液管を通して該濃縮液槽の外部に送り、前記上端部分の高さより低い位置まで該濃縮液槽の液面を低下させる送液工程と、
前記送液工程によって前記濃縮液槽の液面を低下させた後に前記搬送装置を前記所定の駆動速度で駆動し、前記下端部分に集めた固体を前記上端部分で水切りしながら搬送する搬送工程とを有することを特徴とする。
また、液体に固体が混入した混入液を受け入れ、該液体に対する該固体の濃度が高まった濃縮液を排出口から排出する濃縮容器と、該排出口が槽内に配置され該濃縮容器で得られた濃縮液を貯留する濃縮液槽と、斜め上方に向かって延在した搬送経路の下端部分が該濃縮液槽の底部に接続し該搬送経路の上端部分が該排出口よりも上方に配置された搬送装置と、流入口が該濃縮容器に接続され、流出口が該濃縮液槽の外部であって該流入口よりも下方に配置された送液管とを備え、該濃縮液中の固体を該下端部分に集め、該搬送装置を所定の駆動速度で駆動することで該固体を該搬送経路に沿って斜め上方へ搬送し、該濃縮容器が受入れた該混入液中の液体を該送液管を通して該濃縮液槽の外部へ送る固液分離装置の駆動方法であって、
前記搬送装置を停止または前記所定の駆動速度よりも遅い駆動速度で駆動した状態で、前記排出口よりも上に前記濃縮液槽の液面を上昇させ、かつ前記送液管内を前記濃縮容器が受入れた前記混入液中の液体で満たす充填工程と、
前記濃縮液槽に貯留された前記濃縮液中の液体を、該濃縮液中の液体の位置エネルギーを利用して、前記送液管を通して該濃縮液槽の外部に送り、該濃縮液槽の液面を低下させる送液工程と、
前記送液工程によって前記濃縮液槽の液面を低下させた後に前記搬送装置を前記所定の駆動速度で駆動し、前記下端部分に集めた固体を搬送する搬送工程とを有することを特徴としてもよい
【0008】
この固液分離装置の駆動方法によれば、前記濃縮液槽の液面を低下させた後に、前記搬送装置を駆動するので、前記搬送装置における前記搬送経路を短くすることができる。その結果、前記固液分離装置を小型化できる。また、前記液送工程において、前記濃縮液中の液体の位置エネルギーを利用して該液体を前記濃縮液槽の外部に送っているので、ポンプなどの装置を前記固液分離装置に設けなくても該濃縮液槽の液面を低下させることができる。
【0009】
この固液分離装置の駆動方法において、前記充填工程は、内周面が円筒状をした円筒部を有する前記濃縮容器の該円筒部内に、該内周面の接線方向から前記混入液を受け入れ、前記排出口から前記濃縮液を排出する工程であってもよい。
【0010】
こうすることで、前記円筒部内に旋回流を発生させることができる。前記混入液に含まれている固体は、旋回流によって生じる遠心力により前記内周面に押し付けられつつ下方に移動する。一方、前記円筒部の径方向の中心部分には、前記混入液中の液体が集まるので、固体と液体の分離性能が高まる。ここで、前記充填工程は、前記円筒部の径方向の中心に配置された前記流入口から前記混入液中の液体を送り出す送出工程を含んでいてもよい。
【0011】
また、この固液分離装置の駆動方法において、前記充填工程は、前記濃縮容器として、前記円筒部と前記排出口の間に、該濃縮容器の内部空間の断面積が該円筒部側よりも該排出口側の方が減少した絞り部を有するものを用いる工程であってもよい。
【0012】
前記絞り部を有するものを用いることにより、前記排出口から排出される濃縮液の量を減らして、前記流入口から送り出される液体の量を増やすことができる。ここで、前記充填工程は、前記絞り部の径方向の中心に配置された前記流入口から前記混入液中の液体を送り出す送出工程を含んでいてもよい。
【0013】
また、上記目的を解決する本発明の固液分離装置の駆動方法は、液体に固体が混入した混入液を貯留する貯留槽と、流入口が該貯留槽内に配置され、流出口が該貯留槽の外部であって該流入口よりも下方に配置された送液管と、斜め上方に向かって延在した搬送経路の下端部分が該貯留槽の底部に接続し該搬送経路の上端部分が該流入口よりも上方に配置された搬送装置とを備え、該混入液中の固体を該下端部分に集め、該搬送装置を所定の駆動速度で駆動することで該固体を該搬送経路に沿って斜め上方へ搬送し、該貯留槽に貯留された該混入液中の液体を該送液管を通して該貯留槽の外部へ送る固液分離装置の駆動方法であって、
前記搬送装置を停止または前記所定の駆動速度よりも遅い駆動速度で駆動した状態で、前記貯留槽に前記混入液を受け入れて前記送液管の最上端より上に該貯留槽の液面を上昇させる受入工程と、
前記貯留槽に貯留された前記混入液中の液体を、該混入液中の液体の位置エネルギーを利用して、前記送液管を通して該貯留槽の外部に送り、前記上端部分の高さより低い位置まで該貯留槽の液面を低下させる送液工程と、
前記送液工程によって前記貯留槽の液面を低下させた後に前記搬送装置を前記所定の駆動速度で駆動し、前記下端部分に集めた固体を前記上端部分で水切りしながら搬送する搬送工程とを有することを特徴とする。
また、液体に固体が混入した混入液を貯留する貯留槽と、流入口が該貯留槽内に配置され、流出口が該貯留槽の外部であって該流入口よりも下方に配置された送液管と、斜め上方に向かって延在した搬送経路の下端部分が該貯留槽の底部に接続し該搬送経路の上端部分が該流入口よりも上方に配置された搬送装置とを備え、該混入液中の固体を該下端部分に集め、該搬送装置を所定の駆動速度で駆動することで該固体を該搬送経路に沿って斜め上方へ搬送し、該貯留槽に貯留された該混入液中の液体を該送液管を通して該貯留槽の外部へ送る固液分離装置の駆動方法であって、
前記搬送装置を停止または前記所定の駆動速度よりも遅い駆動速度で駆動した状態で、前記貯留槽に前記混入液を受け入れて前記送液管の最上端より上に該貯留槽の液面を上昇させる受入工程と、
前記貯留槽に貯留された前記混入液中の液体を、該混入液中の液体の位置エネルギーを利用して、前記送液管を通して該貯留槽の外部に送り、該貯留槽の液面を低下させる送液工程と、
前記送液工程によって前記貯留槽の液面を低下させた後に前記搬送装置を前記所定の駆動速度で駆動し、前記下端部分に集めた固体を搬送する搬送工程とを有することを特徴としてもよい
【0014】
この固液分離装置の駆動方法によっても、前記濃縮液槽の液面を低下させた後に、前記搬送装置を駆動するので、前記搬送装置における前記搬送経路を短くすることができる。その結果、前記固液分離装置を小型化できる。また、前記液送工程において、前記濃縮液中の液体の位置エネルギーを利用して該液体を送っているので、ポンプなどの装置を前記固液分離装置に設けなくても前記濃縮液槽の液面を低下させることができる。
【0015】
また、この固液分離装置の駆動方法において、前記受入工程は、前記流入口よりも上方または該流入口の周囲に設けられた覆い部材によって、該覆い部材よりも上方から沈降してくる前記固体が該流入口に入り込んでしまうことを抑制した状態で行われる工程であってもよい。
【0016】
前記固体が流入口から入り込んでしまうこが抑制されるので、固液分離性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、固液分離装置の小型化を実現可能な固液分離装置の駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に相当する固液分離装置を示す概略構成図である。
図2】(a)は、濃縮容器の平面図であり、(b)は、同図(a)におけるA-A断面図である。
図3】(a)は、濃縮容器と濃縮液槽を示す平面図であり、(b)は、濃縮容器と濃縮液槽を示す正面図であり、(c)は、同図(b)におけるB-B断面図である。
図4図1に示した固液分離装置の動作を示すフローチャートである。
図5】(a)は、図1に示した固液分離装置の変形例を示す、図3(b)と同様の正面図であり、(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。
図6】(a)は、図5に示した変形例とは異なる変形例の固液分離装置における図3(b)と同様の正面図であり、(b)は、同図(a)におけるD-D断面図である。
図7】第2実施形態の固液分離装置における図3(b)と同様の正面図である。
図8図7に示す固液分離装置の動作を示すフローチャートである。
図9図7に示した固液分離装置の変形例を示す、図7と同様の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の説明では、沈砂池から砂が混入した汚水が移送される固液分離装置に本発明の駆動方法を適用した例を用いる。なお、沈砂池は、下水処理施設の上流側に配置され、下水または雨水などの汚水から砂を取り除くためのものである。沈砂池において砂が取り除かれた汚水は、下流にある沈殿池などに送られる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に相当する固液分離装置を示す概略構成図である。この図1には沈砂池も示されている。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の沈砂池9は、ポンプ井91と、トラフ92と、集砂ノズル93と、集砂ピット94とを備えた池である。この沈砂池9には、図の右側から汚水が流れ込んでくる。流れ込んだ汚水は図の左側に向かってゆっくりと流れていく。沈砂池9では、汚水が流れていく間に、汚水に含まれている砂が池底に向かって沈降していく。ポンプ井91は、沈砂池9の最も下流側に配置されている。ポンプ井91は、砂が取り除かれた汚水が貯留されるものである。ポンプ井91の内部には、揚水ポンプ911が設けられている。この揚水ポンプ911は、ポンプ井91に貯留された汚水を沈砂池9の外部に排出するものである。揚水ポンプ911には揚水管912が接続されている。揚水ポンプ911によって吸引された汚水は、この揚水管912を通して不図示の沈殿池に送られる。なお、図1には汚水の池水面WL1も示されている。この池水面WL1の位置は、沈砂池9へ流れ込む汚水の量によって、トラフ92の底からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
【0022】
トラフ92は、ポンプ井91よりも上流の池底であって池幅方向の中央に形成されている。このトラフ92は、沈砂池9における汚水の流れ方向に沿って延在している。トラフ92の池幅方向両側の池底には、トラフ92に向かうに従って下方に位置するように傾斜した池底傾斜面95が形成されている。沈砂池9に流れ込んだ汚水に含まれる砂は、池底に向かって沈降し、池底傾斜面95を滑り落ちて或いは直接トラフ92内に堆積する。
【0023】
集砂ノズル93は、トラフ92の上流端に配置されている。集砂ノズル93には、沈殿池から汲み上げられた汚水が供給される。集砂ノズル93に供給された汚水は集砂ノズル93の先端から沈砂池9の下流側に向かって吐出される。トラフ92の下流端は集砂ピット94に接続されている。トラフ92内に堆積した砂は、集砂ノズル93から吐出される水の流れによって集砂ピット94に集められる。集砂ピット94は、ポンプ井91とトラフ92の間に形成されている。集砂ピット94に集められた砂は、汚水とともに固液分離装置1移送されて、固体(砂)と液体(汚水)とに分離される。
【0024】
集砂ピット94の内部であって、集砂ピット94の底近傍には、揚砂ポンプ941が配置されている。この揚砂ポンプ941は、ポンプの一例に相当する。この揚砂ポンプ941には、揚砂管942が接続されている。揚砂ポンプ941は、集砂ピット94の内部に集められた砂を汚水とともに吸引し、砂が混入した汚水を揚砂管942を通して固液分離装置1に移送する。揚砂ポンプ941によって固液分離装置1に移送される砂と汚水の割合は、集砂ピット94の内部に集められた砂の量等によって変動するが、砂5%程度に対して汚水95%程度である。この揚砂ポンプ941によって移送された、汚水に砂が混入した砂混入水が混入液の一例に相当する。また、砂混入水中の砂が固体の一例に相当し、砂混入水に中の汚水が液体の一例に相当する。
【0025】
固液分離装置1は、濃縮容器3と、濃縮液槽4と、搬送装置5と、送液管6とを備えている。濃縮容器3と濃縮液槽4と搬送装置5は、地上であって沈砂池9の近傍に配置されている。濃縮容器3は、濃縮液槽4の槽内に配置されている。濃縮容器3は、移送された砂混入水中の汚水の一部を砂と分離して送液管6に送り出す。以下、この砂混入水から分離された汚水を分離水と称する。また、濃縮容器3は、汚水の一部が取り除かれることで汚水に対する砂の濃度が高まった濃縮液を濃縮液槽4に排出する。この濃縮液に含まれる汚水も液体の一例に相当する。濃縮容器3から送り出された分離水は、送液管6を通して沈砂池9に戻される。この送液管6は、濃縮容器3内に挿入された一端部分61(図2参照)と、濃縮容器3よりも上方で水平に延びた水平部分と、水平部分から折れ曲がって下方に延びた垂直部分とを有している。そして、その垂直部分の下端に形成された流出口62は濃縮容器3よりも下方であって濃縮液槽4の外部である沈砂池9の上部に配置されている。これらの濃縮容器3と濃縮液槽4については後に詳述する。
【0026】
搬送装置5は、濃縮液槽4の下端から斜め上方に向かって延在している。この搬送装置5は、スクリューコンベア51と投下部52とスクリューコンベア51の外側を覆う筒状部53とを有する。スクリューコンベア51は、筒状部53内に配置されている。スクリューコンベア51の軸方向は、搬送装置5の延在方向に一致している。このスクリューコンベア51によって、斜め上方に向かって延在した搬送経路が形成されている。この搬送経路の下端部分は、濃縮液槽4の底部に接続されている。また、搬送経路の上端部分は、濃縮容器3の排出口331(図2(b)参照)よりも上方に配置されている。濃縮液槽4内に排出された濃縮液に含まれている砂は、濃縮液槽4内を沈降して濃縮液槽4の下端に集まる。濃縮液槽4の下端に集まった砂は、スクリューコンベア51が回転することで斜め上方に搬送され、搬送装置5の搬送経路の上端部分では、水切りされながら搬送される。投下部52は、スクリューコンベア51の上端近傍から下方に延びた管状のものであり、下端部に投下口52aが形成されている。投下部52の上端は、筒状部53の上端近傍の下部に形成された開口に接続されている。スクリューコンベア51による搬送によって水切りされた砂は、投下部52を通って投下口52aから下方に向けて投下される。すなわち、搬送装置5は、濃縮液槽4が受け入れた濃縮液に含まれている砂を濃縮液槽4の外部に搬送するものである。なお、スクリューコンベア51の代わりに、ベルトコンベアやフライトコンベアなどの他の搬送機構を用いてもよい。なお、投下部52を閉塞および開放自在な開閉蓋を投下部52に設け、搬送装置5を駆動していない時には投下部52を閉塞してもよい。閉塞蓋は、投下部52の上端、すなわち投下部52と筒状部53の間に形成することが好ましいが、投下口52a近傍に設けてもよい。開閉蓋を設けることで、例え槽水面WL2が投下部52の上端よりも上昇したとしても、濃縮液が投下部52から漏れ出てしまうことを防止できる。
【0027】
図2(a)は、濃縮容器の平面図であり、図2(b)は、同図(a)におけるA-A断面図である。図2(a)および図2(b)には、送液管の一端部分も示されている。
【0028】
図2(b)に示すように、濃縮容器3は、流体導入部31と、絞り部32と、排出部33と、流体流入管34と、一対の取付部36とを備えている。この実施形態の濃縮容器3は、いわゆる流体サイクロン装置である。流体導入部31は、濃縮容器3の上側部分に設けられている。絞り部32は、その上端が流体導入部31の下端に接続している。また、絞り部32の下端には、排出部33の上端が接続されている。濃縮容器3の内周面3aは、流体導入部31の内周面31aと絞り部32の内周面32aと排出部33の内周面33aによって構成されている。この濃縮容器3の内周面3aによって内部空間X1が画定されている。すなわち、これらの流体導入部31、絞り部32、および排出部33によって、内部空間X1を有する中空状のタンクが構成されている。
【0029】
流体導入部31は、内周面31aが円筒状をした円筒部311と、円筒部311の上端を閉塞する蓋312とを備えている。円筒部311は、板厚3.2mmの鋼板を内径500mmの円筒状に加工したものである。また、蓋312は、板厚6.0mmの鋼板を外径が586mmで内径が114mmの環状に加工したものである。なお、円筒部311および蓋312の形状、材質、および厚みは、内部空間X1の大きさ等に応じて適宜選択すればよい。また、円筒部311は、下方に向かうに従って内部空間X1の断面積が増加する、円錐状やドーム状をしたものであってもよい。さらに、円筒部311は、後述する受入口341が形成されている上側部分が下方に向かうに従って内部空間X1の断面積が増加する、円錐状やドーム状をしたもので、下側部分が円筒状をしたものであってもよい。円筒部311の外周面には、一対の取付部36が固定されている。この取付部36は、濃縮容器3を、図1に示した濃縮液槽4に固定するためのものである。
【0030】
また、円筒部311の上側部分には、流体流入管34が連結されている。図1に示した揚砂ポンプ941と流体流入管34とは揚砂管942を介して接続されている。揚砂管942と流体流入管34とは、接続端に設けられたフランジどうしがボルトで締結されることで着脱可能に結合されている。流体流入管34は内径100mmの管である。図2(b)に示すように、この流体流入管34と円筒部311との連結部には、受入口341が形成されている。図2(a)に直線の矢印で示すように、揚砂ポンプ941が吸い上げた砂混入水は、円筒部311の内周面31aの接線方向から受入口341を通って内部空間X1に導入される。従って、濃縮容器3が受け入れた砂混入水は、送液管6の一端部分61の外周面と円筒部311の内周面31aの間に導入される。これにより、内部空間X1には砂混入水の旋回流が形成される。
【0031】
絞り部32は、受入口341と排出部33の間に配置されている。この絞り部32では、内部空間X1の断面積が排出部33に向かうに従って減少する。換言すれば、絞り部32は、円筒部311から離れるにつれて漸次縮径する逆円錐状の内周面32aを有している。なお、絞り部32は、内部空間X1の断面積が排出口331に向かって段階的に減少したものであってもよい。すなわち、絞り部32は、内部空間X1の断面積が受入口341側よりも排出口331側の方が小さくなるように形成されたものである。この絞り部32は、板厚3.2mmの鋼板を円錐状に加工したものであり、上端は内径500mm、下端は内径100mmに形成されている。なお、絞り部32の材質や厚みは、内部空間X1の大きさや絞り量等に応じて適宜選択すればよい。また、この実施形態では、絞り部32の下端の断面積を受入口341の断面積と一致させているが、絞り部32の下端の断面積は、受入口341の断面積より大きくてもよく、受入口341の断面積より小さくてもよい。ただし、絞り部32の下端の断面積を小さくしすぎると、濃縮容器3における圧力損失が増大するので、絞り部32の下端の断面積は、受入口341の断面積以上であることが好ましい。
【0032】
排出部33は、絞り部32の、流体導入部31が設けられた側とは反対側に接続している。すなわち、排出部33は、絞り部32の下端に接続している。排出部33は、下端にフランジが形成された、絞り部32の下端と同径の内径をした円筒状をしている。この排出部33の下端の開口が排出口331になる。なお、排出部33は省略してもよい。省略した場合、絞り部32の下端の開口部が排出口になる。
【0033】
送液管6の一端部分61は、流体導入部31の蓋312を上下方向に貫通している。この一端部分61は、円筒部311の径方向の中心軸に沿って、蓋312の下端よりも下方から蓋312の上端よりも上方まで延在し、溶接によって蓋312に水密状態で結合している。従って、一端部分61の下側部分は、内部空間X1内に突出している。ただし、一端部分61の下側部分は、内部空間X1に突出していなくてもよく、例えば蓋312の下面と一端部分61の下端は同じ平面上にあってもよい。一端部分61は、内径100mmの管状をしている。この一端部分61下端が、送液管6の一端になり、その一端の開口が流入口611になる。従って、一端部分61および流入口611(送液管6の一端)は、濃縮容器3に接続されている。また、この実施形態の流入口611は、内部空間X1内に配置されている。砂混入水から分離された分離水は、この流入口611から送液管6を通して沈砂池9に戻される。流入口611は、受入口341よりも下方に配置されている。送液管6の一端部分61以外の部分と一端部分61とは、ボルトで締結されることで着脱可能に結合している。なお、一端部分61の延在方向の長さは任意であり、例えば一端部分61の下側部分(内部空間X1内にある部分)を流体導入部31よりも長く形成してもよい。このように形成した場合、流入口611は、内部空間X1のうち絞り部32の内周面32aによって画定されている領域に形成される。また、流入口611の断面積は、絞り部32の下端の断面積と一致している例を示したが、流入口611の断面積は、排出口331の断面積以上であることが好ましい。こうすることで、流入口611から排出される分離水の量を増加させ、さらに濃縮容器3における圧力損失を低減することができる。
【0034】
次に、この濃縮容器3の作用について主に図2を用いて説明する。上述したように、揚砂ポンプ941(図1参照)を駆動することで砂混入水が受入口341から内部空間X1に流入し、内部空間X1には砂混入水の旋回流が形成される。砂混入水に含まれている砂は、汚水よりも比重が大きいため遠心力により濃縮容器3の内周面3aに押し付けられつつ、その内周面3aに沿って旋回しながら徐々に下方に落下していく。一方、円筒部311の径方向の中心部分には、砂混入水から砂が取り除かれた分離水が集まる。その分離水は、流入口611から送り出される。ただし、本実施形態の濃縮容器3は、受入口341と排出口331の大きさが同一であるので、受入口341から受け入れる砂混入水の単位時間あたりの量にもよるが、流入口611から分離水を送り出すためには、後に詳細に説明する濃縮液槽4が設けられている必要がある。図1に示すように、送り出された分離水は、送液管6を通って送液管6の他端に形成された流出口62から沈砂池9に向かって放出される。この送液管6の他端に形成された流出口62は、送液管6の一端に形成された流入口611よりも下方に配置されているので、送液管6内が液体で満たされるとサイフォンの原理により流入口611から沈砂池9に流れ出ようとする力が内部空間X1にある砂混入水(分離水)に生じる。これにより、揚砂ポンプ941の動力が小さくても砂混入水を濃縮容器3まで移送することができるといった効果が生じる。なお、送液管6の他端側を沈砂池9の池水面WL1よりも下方まで延在させて、流出口62が水中に没するようにしてもよい。また、濃縮容器3と沈砂池9との間に中間槽を設置し、その中間槽に流出口62から流出する分離水を貯留してもよい。中間槽を設けることで、分離水の状態を中間槽に溜まった分離水により確認することができる。また、分離水とともに多少の砂が流入口611から送り出されてしまった場合でも、その砂を中間槽に沈降させて中間槽の上澄み液を沈砂池9に戻すことで、砂が沈砂池9に戻されてしまうことをより抑制できる。
【0035】
図3(a)は、濃縮容器と濃縮液槽を示す平面図であり、図3(b)は、濃縮容器と濃縮液槽を示す正面図であり、図3(c)は、同図(b)におけるB-B断面図である。
【0036】
図3(a)および図3(b)に示すように、濃縮液槽4は、濃縮容器3の外周側面3bよりも外側に配置されて排出口331よりも上方に延在した側壁41を備えている。図3(c)に示すように、この実施形態では、側壁41は、送液管6の管上端6cよりも上方まで延在している。濃縮容器3は、側壁41の内周面に一端が固定されて内側に向かって延びた一対のアーム42に、取付部36がボルトで連結されることで着脱自在に濃縮液槽4の槽内に固定されている。図3(b)および図3(c)に示すように、送液管6および揚砂管942は、濃縮液槽4の側壁41を貫通している。送液管6および揚砂管942の貫通部分は、側壁41に溶接されており、その貫通部分は水密状態になっている。
【0037】
濃縮液槽4は、下側部分に2つの槽傾斜面41aが形成された平面視で略正方形の角筒をした槽である。濃縮液槽4の下端は、搬送装置5の傾斜角度と同じ角度で斜め上方に向かって切り欠かれている。槽傾斜面41aは、濃縮液槽4の下端から一定の高さに形成されている。この槽傾斜面41aの下端は、搬送装置5に接続されている。濃縮容器3の排出口331から排出された濃縮液に含まれている砂は、槽傾斜面41aを滑り落ちて濃縮液槽4の下端に接続された搬送装置5に堆積する。上述したように、搬送装置5に堆積した砂はスクリューコンベア51によって斜め上方に向かって搬送され、上端部分にある投下部52(図1参照)から投下される。図3(c)に示すように、排出口331よりも上方であって、濃縮液槽4の上端より少し下の部分には、オーバーフロー口43が形成されている。このオーバーフロー口43は、排出口331から濃縮液が多く排出されすぎてしまった場合に、濃縮液槽4から濃縮液の上澄み液を流出させるものである。オーバーフロー口43から流出した上澄み液は、オーバーフロー管7を通して沈砂池9(図1参照)に戻される。このオーバーフロー口43を設けることで、濃縮液槽4の側壁41上端から濃縮液が溢れ出てしまうことを防止している。
【0038】
図4は、図1に示した固液分離装置の動作を示すフローチャートである。
【0039】
沈砂池9および固液分離装置1の動作は、不図示の制御装置によって集中制御されている。なお、沈砂池9と固液分離装置1それぞれに制御装置を設け、互いに情報または指令を送受信可能な構成にしてもよい。図1に示した沈砂池9の底面に堆積した砂がある程度の量になった所定の時期に、沈砂池9は、集砂ノズル93から汚水を吐出させて砂を集砂ピット94に集める集砂動作を行う。その集砂動作の後、固液分離装置1は、固液分離動作を開始する。ここで所定の時期は、例えば月に一回など定期的でもよく、沈砂池9に流入した汚水の合計流量または沈砂池9から排出された汚水の合計流量が一定量になったときでもよい。なお、集砂ピット94に砂を集めている途中で固液分離動作を開始してもよい。
【0040】
固液分離動作では、まず搬送装置5を停止させた状態で、揚砂ポンプ941の駆動が開始される。この駆動開始により、図3に示した濃縮容器3における砂混入水の受け入れが開始される(ステップS1)。なお、搬送装置5は、完全に停止していなくてもよく、例えば、濃縮液に含まれる液体成分が搬送装置5の駆動によって投下部52に到達しない程度の速度で微速駆動していても構わない。すなわち、後述する所定の駆動速度よりも遅い駆動速度で搬送装置5を駆動していてもよい。揚砂ポンプ941の駆動開始前に濃縮容器3の内部空間X1(図2(b)参照)および濃縮液槽4の槽内が空の状態であった場合、内部空間X1に供給された砂混入水の殆どは、排出口331から排出される。排出口331から排出された濃縮液が、濃縮液槽4の槽内に貯留されていくことで、濃縮液槽4に貯留された濃縮液によって形成される水面である槽水面WL2は徐々に上昇していく。この槽水面WL2は液面の一例に相当する。また、濃縮液槽4の槽内に貯留された濃縮液に含まれる砂は、自重により濃縮液槽4の底部に向かって沈降し、搬送装置5の搬送経路における下端部分に集まっていく。槽水面WL2が排出口331に達すると、排出口331が濃縮液で閉塞されるため、排出口331から排出される濃縮液の量が減少する。すなわち、絞り部32における内部空間X1の断面積の減少による抵抗と排出口331に加わる濃縮液の水圧が相まって、排出口331から濃縮液が排出されにくくなり、流入口611(図2(b)参照)から分離水が送り出され始める。槽水面WL2が上昇するにつれ、排出口331に加わる濃縮液の水圧が高まるため、排出口331から排出される濃縮液の量は減少し、流入口611から送り出される分離水の量は増加して送液管6内が分離水(液体)で満たされる。上述したように、送液管6内が分離水で満たされるとサイフォンの原理により沈砂池9に流れ出ようとする作用が分離水に生じる。つまり、砂混入水中の液体および濃縮液中の液体の位置エネルギーによって、分離水が送液管6を通して濃縮液槽4の外部に送り出され始める。このため、流入口611から送り出される分離水の量はさらに増加し、排出口331から排出される濃縮液の量はさらに減少する。内部空間X1に供給される砂混入水の量が、例えば、1.0m/minの場合には、槽水面WL2が受入口341(図2(b)参照)よりも少し下になった時点で排出口331からはほぼ砂しか排出されなくなり、槽水面WL2は上昇しなくなる。図3(b)および図3(c)には、この時の槽水面WL2が示されている。また、内部空間X1に供給される砂混入水の量を、例えば、1.5m/minにした場合、流入口611から送り出される分離水の量も増加するが、ある程度の割合の汚水を含む濃縮液が排出口331から排出され、槽水面WL2は上昇しつづける。槽水面WL2がオーバーフロー口43に達した後は、砂混入水の上澄み液がオーバーフロー口43から0.3m/min程度流出する。また、揚砂ポンプ941が駆動する前に、沈殿池に貯留されている汚水や水道水を濃縮液槽4に流入させ、濃縮液槽4を液体で満たしておいてもよい。濃縮液槽4を液体で満たすと、内部空間X1にも濃縮液槽4と同じ高さの液体が充填される。このため、槽水面WL2が流入口611の高さ以上になるように液体を貯留しておけば、揚砂ポンプ941の駆動とほぼ同時に流入口611から分離水を送ることができる。揚砂ポンプ941の2回目以降の駆動時には、濃縮液槽4に貯留されている液体を抜き取らない限り、揚砂ポンプ941の駆動とほぼ同時に流入口611から分離水を送ることができる。
【0041】
揚砂ポンプ941の駆動は、駆動開始から第1所定時間するまで継続される(ステップS2)。以上説明したステップS1およびステップS2が充填工程の一例に相当する。この第1所定時間は、排出口331よりも上に槽水面WL2を上昇させ、かつ送液管6内を分離水で満たすことができる十分な時間である。なお、槽水面WL2が排出口331よりも上昇したことを検出する水位センサを濃縮液槽4に設けてもよく、送液管6内が分離水で満たされたことを検出する水検出センサを送液管6内に設けてもよい。そして、第1所定時間したか否か判断することに代えて、それらのセンサによる検出が発生したか否かを判断してもよい。
【0042】
第1所定時間経過したら揚砂ポンプ941の駆動を停止する(ステップS3)。揚砂ポンプ941の駆動が停止した後にも、上述のサイフォンの原理による効果により、濃縮液および砂混入水には、送液管6を通って沈砂池9に流れ出ようとする作用が働いている。これにより、濃縮液および砂混入水の上澄み液が送液管6を通って沈砂池9に流れ出ていき、槽水面WL2は低下する。すなわち、濃縮液槽4に貯留された濃縮液中の汚水を、その汚水の位置エネルギーを利用して、送液管6を通して濃縮液槽4の外部に送ることで、槽水面WL2を低下させている。一方、槽水面WL2が低下している間にも、濃縮液および砂混入水に含まれる砂は、自重により徐々に沈降して搬送装置5の搬送経路における下端部分に集まっていく。槽水面WL2が排出口331まで低下すると、排出口331から濃縮容器3を通って空気が送液管6内に入り込み、サイフォンの原理による効果が終了する。揚砂ポンプ941の駆動が停止してから第2所定時間経過するまでは、揚砂ポンプ941を停止した直後の状態が維持される(ステップS4)。以上説明したステップS3およびステップS4が液送工程の一例に相当する。この第2所定時間は、槽水面WL2が排出口331付近まで低下する時間である。なお、この第2所定時間は、搬送装置5の搬送経路の上端部分の高さよりも低い位置まで槽水面WL2が低下する時間であれば、槽水面WL2が排出口331付近まで低下する時間よりも短い時間であってもよい。また、第2所定時間が経過したか否か判断することに代えて、槽水面WL2が搬送装置5の搬送経路の上端部分の高さよりも低い位置まで低下したことを検出する水位センサを濃縮液槽4に設け、その検出が発生したか否かを判断してもよい。さらに、ステップS3およびステップS4において、揚砂ポンプ941の駆動を完全に停止しないで、槽水面WL2が低下する量であれば、濃縮容器3に少量の砂混入水を供給していてもよい。
【0043】
第2所定時間経過したら搬送装置5の駆動を開始する(ステップS5)。搬送装置5が所定の駆動速度で駆動することで、搬送経路の下端部分に集められた砂は搬送経路の上端側に搬送されていく。この駆動開始時点で、槽水面WL2は、搬送経路の上端部分よりも低い位置に低下しているので、スクリューコンベア51によって搬送されている砂は、搬送経路の上端部分において水切りされながら搬送される。そして、投下部52の上端に達した砂は、投下口52aから下方に向けて投下される。搬送装置5の駆動は、駆動開始から第3所定時間するまで継続される(ステップS6)。以上説明したステップS5およびステップS6が搬送工程の一例に相当する。この第3所定時間は、搬送経路の下端部分に集められた砂の多くを搬送して投下部52から投下できる時間である。なお、第3所定時間が経過したか否か判断することに代えて、搬送経路の下端部分の砂の有無を検出する砂有無センサを濃縮液槽4の底部に設け、その検出が発生したか否かを判断してもよい。第3所定時間経過したら、搬送装置5の駆動を停止し(ステップS7)、固液分離動作を終了する。
【0044】
この固液分離装置の駆動方法によれば、濃縮液槽4の槽水面WL2を低下させた後に、搬送装置5を駆動するので、搬送経路が短くても、水切りしつつ砂を搬送することができる。すなわち、少なくとも上述のステップS3およびステップS4において槽水面WL2が低下した分だけ、通常よりも搬送経路の高さを低くすることができる。搬送経路は斜め上方に向かって延在しているので、搬送装置5の高さを低くすることで搬送装置5の横幅が短くなる。その結果、固液分離装置1を小型化できる。また、上述のステップS3およびステップS4において、濃縮液中の汚水の位置エネルギーを利用して濃縮液槽4の外部に送っているので、ポンプなどの装置を固液分離装置1に設けなくても濃縮液槽4の液面を低下させることができる。
【0045】
また、上述のステップS2において、濃縮液槽4に貯留された液体によって排出口331が塞がれるので、濃縮液槽4の槽内に貯留された液体の水圧が排出口331に生じる。この水圧により、排出口331から濃縮液が排出されにくくなるので、送液管6を通して送り出される分離水の量を増加させることができる。すなわち、排出口331から排出される濃縮液に対して、流入口611から送り出される分離水の比率が高まるので、濃縮容器3における分離効率が高まる。また、濃縮液槽4に排出される濃縮液が少ないので、濃縮液槽4を小型化できる。さらに、絞り部32における絞り量(断面積の減少量)を少なくしても、排出口331から排出される濃縮液の量を抑制することができる。絞り部32における絞り量を少なくすることで、濃縮容器3における圧力損失を低減できるので、揚砂ポンプ941の動力を小さくすることができる。またさらに、排出口331から排出される濃縮液が飛び散ることがなく、濃縮液に含まれている砂が短時間で濃縮液槽4の底に沈降しやすい。加えて、サイフォンの原理により流入口611から沈砂池9に流れ出ようとする作用が分離水に生じるので、揚砂ポンプ941の動力をさらに小さくすることができる。また、濃縮液槽4に搬送装置5が接続され、濃縮液槽4と濃縮容器3とが高さ方向において重複した位置に配置されているので、固液分離装置1全体の高さを低くできる。そして、濃縮容器3を地上に近い位置に配置できるので、揚砂ポンプ941に必要な揚程が低くなり、よりさらに小さな動力で混入水を濃縮容器3に移送することができる。
【0046】
また、この実施形態では、濃縮液槽4の側壁41は、内部空間X1の上端よりも上方に延びているので、濃縮液槽4の槽内に、内部空間X1の上端より上方まで液体を貯留することができる。内部空間X1の上端まで液体を貯留することで、排出口331に加わる水圧が高まり、内部空間X1にある砂混入水中の汚水が、重力によって排出口331から流出しようとする力を打ち消すことができる。これにより、排出口331から排出される汚水の量がより抑制され、濃縮液における砂の濃度をさらに高めることができる。また、排出口331から濃縮液槽4に排出される濃縮液の量が減るので、濃縮液槽4の大きさを小さくすることができる。さらに、前記絞り部32の減少量を少なくして圧力損失をより減少させることもできる。また、濃縮液槽4の側壁41の高さを送液管6の管上端6cよりも上方にしているので、絞り部32の絞り量を極端に減らしたとしても、槽水面WL2が管上端6cに達すれば、送液管6内が分離水で満たされるのでサイフォンの原理による効果を得ることができる。
【0047】
続いて、本実施形態の固液分離装置の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素の名称には、これまで用いた符号と同じ符号を付すことがあり、重複する説明は省略することがある。
【0048】
図5(a)は、図1に示した固液分離装置の変形例を示す、図3(b)と同様の正面図であり、図5(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。
【0049】
図5(a)に示すように、この変形例の固液分離装置1は、揚砂管942に微細気泡水供給管8が接続されている点および濃縮液槽4の高さが低い点が、図1乃至4に示した固液分離装置1と異なる。この変形例では、不図示のナノバブル水発生装置によって発生させたナノバブル水が、微細気泡水供給管8を通して揚砂管942に供給される。ただし、ナノバブル水の代わりにマイクロイバブル水を揚砂管942に供給してもよく、ナノバブル水とマイクロバブル水とを混合したマイクロナノバブル水を揚砂管942に供給しても良い。この微細気泡水供給管8は、微細気泡供給手段の一例に相当する。ナノバブル水は、粒径がナノメートルオーダーの空気の気泡を含む水を意味する。また、マイクロバブル水は、マイクロメートルオーダーの空気の気泡を含む水を意味する。なお、ナノバブル水として、ナノメートルオーダーの酸素の気泡を含む水を用いてもよい。同様にマイクロバブル水として、マイクロメートルオーダーの酸素の気泡を含む水を用いても良い。また、微細気泡水供給管8を濃縮容器3に直接接続してもよい。すなわち、微細気泡水供給管8は、揚砂ポンプ941(図1参照)と排出口331の間に接続されていればよい。ナノバブル水およびマイクロバブル水は、洗浄効果を有しているので、砂混入水に加えることで砂混入水に含まれる砂および汚水を洗浄することができる。揚砂ポンプ941(図1参照)と排出口331の間で、ナノバブル水またはマイクロバブル水を砂混入水に加えることで、濃縮容器3の内部空間X1(図2参照)で砂混入水を高い洗浄効果で洗浄することができる。すなわち、内部空間X1に発生した旋回流によって内部空間X1内においてナノバブルおよびマイクロバブルが砂混入水と混ざり合うので、高い洗浄効果を発揮させることができる。
【0050】
濃縮液槽4の側壁41は、濃縮容器3の上端よりも上方で、送液管6の管上端6cよりも下方になる高さまで延在している。先の実施形態のように、濃縮液槽4の側壁41を高くすれば、濃縮液槽4の槽水面WL2を送液管6の管上端6cよりも高くすることも可能になる。そして、上述したように、排出口331に加わる水圧は槽水面WL2の高さに応じて高まるので槽水面WL2が高くなることは濃縮液における砂の濃度をさらに高めることや圧力損失を減少させる意味では好ましい。しかし、濃縮液槽4の側壁41を高くしすぎると、固液分離装置1全体の高さも高くなり、濃縮液槽4の製造費用も高価になってしまうので、この意味では濃縮液槽4の側壁41の高さは低い方が好ましい。側壁41は、排出口331よりも上方に延びていれば、濃縮液槽4の槽内に貯留された液体で排出口331を閉塞できるが、この変形例では、固液分離装置1全体の高さと排出口331に加わる水圧のバランスを重視した高さにしている。なお、オーバーフロー口43は、側壁41の高さに応じて適宜配置位置を設定すればよいが、この変形例では、受入口341(図2(b)参照)と同等の高さにしている。
【0051】
次に、図1に示した固液分離装置の、図5に示した変形例とは異なる変形例について説明する。
【0052】
図6(a)は、図5に示した変形例とは異なる変形例の固液分離装置における図3(b)と同様の正面図であり、図6(b)は、同図(a)におけるD-D断面図である。
【0053】
図6(a)および図6(b)に示す固液分離装置1は、濃縮容器3に絞り部32および排出部33が設けられていない点、濃縮液槽4の高さが低い点、およびオーバーフロー口43の位置が図1乃至4に示した固液分離装置1と異なる。濃縮容器3は、流体導入部31で構成されている。したがって、内部空間X1は、流体導入部31の内周面31aのみによって画定されている。濃縮容器3の下端は、円筒部311の下端であり、その下端の開口が排出口331になる。この排出口331は、直径500mmの開口であり、受入口341(図2(b)参照)に対して相当程度大きい。このため、この変形例では、濃縮容器3における圧力損失がほとんど生じない。濃縮液槽4は、図3に示した濃縮液槽4と比較して、絞り部32および排出部33の合計高さ分だけ低く形成されている。また、濃縮容器3に形成された受入口341は、その合計高さ分、濃縮液槽4の下端に近い位置に配置されている。濃縮液槽4の高さが低くなった分、搬送装置5の長さ(高さ)も低くすることもできる。すなわち、濃縮容器3の高さを低くすることで、固液分離装置1全体の高さを低くし、固液分離装置1を小型化することができる。また、受入口341が地上に近い位置に配置されるので、揚砂ポンプ941に必要な揚程が低くなり、よりさらに小さな動力で混入水を濃縮容器3に移送することができる。オーバーフロー口43は、受入口341と同一の高さに配置されている。ただし、オーバーフロー口43は、受入口341よりも高い位置に配置してもよく、送液管6の管上端6cよりも高い位置に配置してもよい。高い位置に配置することで、送液管6の管上端6cよりも高い位置まで濃縮液槽4に素早く液体を貯留することができ、砂混入水が内部空間X1に供給され始めてからサイフォンの原理による効果が生じるまでの時間を短くすることができる。
【0054】
この変形例の固液分離装置1の動作は、図1乃至4に示した固液分離装置1と同様であるが、図4に示したステップS1およびステップS2における砂混入水および濃縮液の挙動が多少異なるので、主にこれらの挙動について説明する。濃縮容器3の内部空間X1および濃縮液槽4の槽内が空の状態で、図1に示す揚砂ポンプ941を駆動すると、内部空間X1に砂混入水が供給され始める。この変形例では、2.0m/minの砂混入水が内部空間X1に供給される。円筒部311の内周面31aの接線方向から受入口341(図2(b)参照)を通って砂混入水が内部空間X1に導入されるので、内部空間X1には砂混入水の旋回流が形成される。砂混入水に含まれている砂は、汚水よりも比重が大きいため遠心力により円筒部311の内周面31aに押し付けられつつ、その内周面31aに沿って旋回しながら徐々に下方に落下していく。一方、円筒部311の径方向の中心近傍には、砂混入水から砂が取り除かれた分離水が残る。濃縮液槽4に貯留されている液体が少ないうちは、内部空間X1に供給された砂混入水の全てが、濃縮液として排出口331から排出される。排出口331から排出された濃縮液が、濃縮液槽4の槽内に貯留されていくことで、槽水面WL2は徐々に上昇していく。槽水面WL2が排出口331に達すると、排出口331が濃縮液で閉塞され、槽水面WL2が上昇するにつれ、排出口331に加わる濃縮液の水圧が高まる。この変形例では、図2(b)に示した絞り部32がなく、受入口341に対して排出口331が十分大きいので、排出口331が濃縮液で閉塞された後も槽水面WL2が所定の高さになるまで、内部空間X1に供給された砂混入水の全てが排出口331から排出される。その後、槽水面WL2がオーバーフロー口43に達すると、濃縮液の上澄み液がオーバーフロー口43から流出するが、自然流下によってオーバーフロー口43から流出する上澄み液よりも揚砂ポンプ941によって供給される砂混入水の方が多いため槽水面WL2は上昇を続ける。槽水面WL2が送液管6の管下端6dに達すると、分離水が送液管6を通って送り出され始める。槽水面WL2が管上端6cに達すると、送液管6内が液体で満たされ、サイフォンの原理により流入口611から沈砂池9に流れ出ようとする作用が砂混入水に生じるので、流入口611から送り出される分離水の量はさらに増加し、槽水面WL2の上昇は停止し、その後下降して一定位置で安定する。図6(a)および図6(b)には、この時の槽水面WL2が示されている。槽水面WL2が安定している時にオーバーフロー口43からは、1.2m/min程度の上澄み液が流出する。
【0055】
この変形例の固液分離装置1においても、図1に示した固液分離装置1と同様の効果が得られる。さらに、濃縮液槽4に貯留された液体によって生じた排出口331の水圧により、絞り部32がなくても排出口331から排出される濃縮液の量を抑制することができる。絞り部32がないので濃縮容器3における圧力損失がほぼゼロになり、揚砂ポンプ941の動力をより小さくすることができる。また、送液管6内に液体がない状態でも揚砂ポンプ941を駆動するだけで、槽水面WL2が管上端6cの高さに達して送液管6内を液体で満たすことができるので、容易にサイフォンの原理による作用を生じさせることができる。
【0056】
以上説明した実施形態および変形例からは、液体に固体が混入した混入液を受け入れ、該液体に対する該固体の濃度が高まった濃縮液を排出口から排出する濃縮容器と、該排出口が槽内に配置され該濃縮容器で得られた濃縮液を貯留する濃縮液槽と、斜め上方に向かって延在した搬送経路の下端部分が該濃縮液槽の底部に接続し該搬送経路の上端部分が該排出口よりも上方に配置された搬送装置と、流入口が該濃縮容器に接続され、流出口が該濃縮液槽の外部であって該流入口よりも下方に配置された送液管とを備え、該濃縮液中の固体を該下端部分に集め、該搬送装置を駆動することで該固体を該搬送経路に沿って斜め上方へ搬送し、該濃縮容器が受入れた該混入液中の液体を該送液管を通して該濃縮液槽の外部へ送る固液分離装置であって、
前記濃縮容器が、前記搬送装置を停止させた状態で前記混入液を受け入れることによって、前記排出口よりも上に該濃縮液槽の液面が上昇し、かつ前記送液管内が前記混入液中の液体で満たされるまで該混入液を受け入れるものであり、
前記送液管が、前記濃縮液槽に貯留された前記濃縮液中の液体を、該濃縮液中の液体の位置エネルギーを利用して、該濃縮液槽の外部に送るものであり、
前記搬送装置は、前記送液管が前記混入液中の液体を前記濃縮液槽の外部に送ることで該濃縮液槽の液面が低下した後に駆動を開始し、前記下端部分に集めた固体を搬送するものであることを特徴とする固液分離装置、といった発明思想を導き出すことができる。
【0057】
次に、第2実施形態の固液分離装置について説明する。
【0058】
図7は、第2実施形態の固液分離装置における図3(b)と同様の正面図である。
【0059】
図7に示す固液分離装置1は、先の実施形態に示した固液分離装置1とは、主に濃縮容器3が設けられていない点が異なる。この固液分離装置1は、貯留槽40と、搬送装置5と、送液管6とを備えている。貯留槽40は、先の実施形態における濃縮液槽4と同様の構成をしている。ただし、この貯留槽40は、先の実施形態に示した濃縮容器3を介さずに砂混入水を受け入れて貯留する点と、濃縮容器3を介さずに流入口611から上澄み液(先の実施形態における分離水に相当)を送る点が、先の実施形態における濃縮液槽4と異なる。揚砂管942の一端には、揚砂ポンプ941が接続され、揚砂管942の他端には供給口9421が形成されている。揚砂ポンプ941が吸引した砂混入水は、その供給口9421から貯留槽40の槽内に直接注ぎ込まれる。この第2実施形態の揚砂管942は、貯留槽40上端の開口から貯留槽40の槽内に挿入されている。ただし、砂管942は、貯留槽40の側壁401を貫通して貯留槽40の槽内に挿入されていてもよい。なお、揚砂ポンプ941は、実際には図1に示す集砂ピット94内に配置されているが、図面を簡略化するため、図7においては固液分離装置1の側方に表している。
【0060】
送液管6は、貯留槽40の槽内に配置された一端部分61と、水平に延びた水平部分と、水平部分から折れ曲がって下方に延びた垂直部分とを有している。送液管6の一端(一端部分61の先端)には、流入口611が形成されている。この流入口611は貯留槽40内の下側部分に配置されている。一端部分61の、流入口611よりも少し上方には、平面視で流入口611の周囲に広がった笠状の覆い部材612が取り付けられている。この覆い部材612は、貯留槽40の槽内に注ぎ込まれた砂混入水に含まれる砂が、貯留槽40の槽内に貯留された砂混入水中を沈降してくる間に流入口611に吸い込まれてしまうことを防止するものである。なお、覆い部材612は、その周縁部分が流入口611よりも下方に配置されていてもよい。さらに、覆い部材612は、円盤状のものであってもよい。円盤状のものを用いる場合、覆い部材612は、流入口611と同じ高さ位置にあってもよい。すなわち、覆い部材612は、流入口611よりも上方または流入口611の周囲に設けられていればよい。換言すれば、覆い部材612は、供給口9421と流入口611との間に配置されていればよい。なお、覆い部材612として水平方向に広がった円盤状のものを用いると、覆い部材612の上に砂が堆積してしまうので、笠状のものを用いることが好ましい。送液管6の垂直部分の下端には、流出口62が形成されている。この流出口62は流入口611よりも下方であって貯留槽40の外部である沈砂池9(図1参照)の上部に配置されている。
【0061】
第2実施形態の固液分離装置1の動作は、先の実施形態の固液分離装置1の動作と類似しているが、砂混入水の挙動などが異なる。以下、図7および図8を用いて主に先の実施形態と異なる点について説明する。
【0062】
図8は、図7に示す固液分離装置の動作を示すフローチャートである。
【0063】
固液分離動作では、まず搬送装置5を停止させた状態で、揚砂ポンプ941の駆動が開始されることで、貯留槽40における砂混入水の受け入れが開始される(ステップS11)。なお、搬送装置5は、完全に停止していなくてもよく、例えば、砂混入水に含まれる液体成分が搬送装置5の駆動によって投下部52に到達しない程度の速度で微速駆動していても構わない。すなわち、所定の駆動速度よりも遅い駆動速度で搬送装置5を駆動していてもよい。その後、貯留槽40に貯留された砂混入水によって形成される水面WL3は徐々に上昇していく。この水面WL3は液面の一例に相当する。貯留槽40に貯留された砂混入水に含まれる砂は、自重により貯留槽40の底部に向かって沈降し、搬送装置5の搬送経路における下端部分に集まっていく。水面WL3が、送液管6の水平部分の下端よりも上昇すると、送液管6を通って砂混入水の上澄み液(汚水)が流出口62から流出し始める。この上澄み液も、液体の一例に相当する。また、水面WL3が上昇し、水面WL3が送液管6の最上端である管上端6cの高さに達すると、送液管6内が砂混入水の上澄み液で満たされてサイフォンの原理による効果が生じ、上澄み液の流出量が増加する。つまり、砂混入水中の液体の位置エネルギーによって、砂混入水の上澄み液が送液管6を通して貯留槽40の外部に送り出される。この効果により、流入口611近傍には砂混入水を吸い込む力が生じるが、流入口611近傍に沈降してくる砂は、覆い部材612の上を滑り落ちて覆い部材612の縁から落下していくので流入口611から遠ざけられる。これにより、流入口611近傍に沈降してくる砂が、流入口611に入り込んでしまうことが抑制される。さらに水面WL3が上昇し、オーバーフロー口43に達すると、送液管6とともにオーバーフロー口43からも砂混入水の上澄み液が流出してそれ以上の水面WL3の上昇が防止される。揚砂ポンプ941の駆動は、駆動開始から第4所定時間するまで継続される(ステップS12)。以上説明したステップS11およびステップS12が受入工程の一例に相当する。この第4所定時間は、送液管6の最上端よりも上に水面WL3を上昇させることができる十分な時間である。なお、水面WL3が送液管6の最上端よりも上昇したことを検出する水位センサを貯留槽40に設けてもよく、送液管6内が上澄み液で満たされたことを検出する水検出センサを送液管内に設けてもよい。そして、第4所定時間したか否か判断することに代えて、それらのセンサによる検出が発生したか否かを判断してもよい。
【0064】
第4所定時間経過したら揚砂ポンプ941の駆動を停止する(ステップS13)。揚砂ポンプ941の駆動が停止した後にも、上述のサイフォンの原理による効果により、砂混入水には、送液管6を通って沈砂池9に流れ出ようとする作用が働いている。これにより、砂混入水の上澄み液が送液管6を通って沈砂池9に流れ出ていき、水面WL3は低下する。すなわち、貯留槽40に貯留された砂混入水中の上澄み液を、その上澄み液の位置エネルギーを利用して、送液管6を通して貯留槽40の外部に送ることで、水面WL3を低下させている。水面WL3が流入口611まで低下すると、流入口611から空気が送液管6内に入り込み、サイフォンの原理による効果が終了する。揚砂ポンプ941の駆動が停止してから第5所定時間経過するまでは、揚砂ポンプ941を停止した直後の状態が維持される(ステップS14)。以上説明したステップS13およびステップS14が液送工程の一例に相当する。この第5所定時間は、水面WL3が流入口611付近まで低下する時間である。なお、この第5所定時間は、搬送装置5の搬送経路の上端部分の高さよりも低い位置まで水面WL3が低下する時間であれば、水面WL3が流入口611付近まで低下する時間よりも短い時間であってもよい。また、第5所定時間が経過したか否か判断することに代えて、水面WL3が搬送装置5の搬送経路の上端部分の高さよりも低い位置まで低下したことを検出する水位センサを貯留槽40に設け、その検出が発生したか否かを判断してもよい。さらに、ステップS13およびステップS14において、揚砂ポンプ941の駆動を完全に停止しないで、水面WL3が低下する量であれば、貯留槽40に少量の砂混入水を供給していてもよい。以下、ステップS15乃至ステップS17は、先の実施形態のステップS5乃至ステップS7と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
この固液分離装置の駆動方法によっても、サイフォンの原理によって貯留槽40の水面WL3を低下させた後に、搬送装置5を駆動するので、搬送経路の高さを低くして固液分離装置1を小型化できる。
【0066】
図9は、図7に示した固液分離装置の変形例を示す、図7と同様の正面図である。
【0067】
図9に示すように、この変形例の固液分離装置1は、図7に示した固液分離装置1とは、送液管6および覆い部材612の構成が異なる。送液管6は、水平に延びた水平部分と、水平部分から折れ曲がって下方に延びた垂直部分とから構成されている。この変形例では、送液管6の水平部分における、垂直部分に接続した側とは反対側の端部の開口が流入口611になる。覆い部材612は、貯留槽40の側壁401内側面に取り付けられ、送液管6と平行に貯留槽40の内側に向かって突出している。図9のE矢視図に示すように、この覆い部材612は、流入口611の上方を覆う、断面がへの字状の板材で構成されている。この覆い部材612によって、流入口611近傍に沈降してくる砂が流入口611に入り込んでしまうことを防止している。この変形例においても、上述のステップS12の途中からステップS14以降で水面WL3が流入口611まで低下する間、砂混入水中の液体の位置エネルギー(自重)によって、砂混入水の上澄み液は、送液管6を通して貯留槽40の外部に送り出される。
【0068】
以上説明した第2実施形態およびその変形例からは、液体に固体が混入した混入液を貯留する貯留槽と、流入口が該貯留槽内に配置され、流出口が該貯留槽の外部であって該流入口よりも下方に配置された送液管と、斜め上方に向かって延在した搬送経路の下端部分が該貯留槽の底部に接続し該搬送経路の上端部分が該流入口よりも上方に配置された搬送装置とを備え、該混入液中の固体を該下端部分に集め、該搬送装置を駆動することで該固体を該搬送経路に沿って斜め上方へ搬送し、該貯留槽に貯留された該混入液中の液体を該送液管を通して該貯留槽の外部へ送る固液分離装置であって、
前記貯留槽が、前記搬送装置を実質的に停止させた状態で前記混入液を受け入れることによって、前記送液管の最上端よりも上方まで該混入液を受け入れるものであり、
前記送液管が、前記貯留槽に該送液管の最上端よりも上方まで受け入れた前記混入液を、該混入液中の液体の位置エネルギーを利用して、該貯留槽の外部に送るものであり、
前記搬送装置は、前記送液管が前記混入液中の液体を前記貯留槽の外部に送ることで該貯留槽の液面が低下した後に駆動を開始し、前記下端部分に集めた固体を搬送するものであることを特徴とする固液分離装置、といった発明思想を導き出すことができる。
【0069】
この固液分離装置において、前記流入口よりも上方に、前記混入液を前記貯留槽に供給する供給口を備え、
前記貯留槽は、前記供給口と前記流入口との間に覆い部材が配置されたものであってもよい。
【0070】
なお、前記覆い部材は、前記流入口よりも上方または該流入口の周囲に設けられ、該供給口から供給された前記混入液中の固体が沈降していく途中で該流入口に入り込んでしまうことを抑制するものであってもよい。
【0071】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、固液分離装置1を沈砂池9に設置した例で説明したが、固液分離装置1は、沈殿池に設けてもよく、ダム湖等の貯水池に設けてもよい。また、工場等で生じた工場排水から水と金属粉等を分離する固液分離装置1として使用してもよい。
【0072】
以上説明した実施形態や変形例によれば、固液分離装置の小型化を実現可能な固液分離装置の駆動方法を提供することができる。
【0073】
なお、以上説明した各実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 固液分離装置
2 揚砂ポンプ
3 濃縮容器
4 濃縮液槽
5 搬送装置
6 送液管
40 貯留槽
62 流出口
331 排出口
611 流入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9