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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】砥石、砥石ユニット及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/08 20060101AFI20240112BHJP
   B24D 7/08 20060101ALI20240112BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20240112BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B24D5/08
B24D7/08
B24B53/00 B
H01L21/304 601B
H01L21/304 622F
H01L21/304 622M
H01L21/304 631
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019221062
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021088044
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】398046921
【氏名又は名称】株式会社ナノテム
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 篤
(72)【発明者】
【氏名】大橋 恭介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大地
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大和
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013221(JP,A)
【文献】特開2006-181683(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069847(WO,A1)
【文献】米国特許第05427566(US,A)
【文献】特開2020-049574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D3/00-99/00
B24B53/00
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する砥石であって、
前記砥石の側周面に前記砥石の周方向に沿って間隔を持って非連続に並べられ、前記砥石の前記側周面に交わる方向に延び、それぞれ筒状に形成され、前記被加工物を加工する複数の柱部と、
前記砥石の前記側周面に設けられ、前記複数の柱部の内部空間と外部空間に充填されることにより前記複数の柱部を保持し、前記被加工物を加工しない保持材と、を備え、
前記柱部は、
前記柱部の全域にわたって分布し、前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の砥粒と、
前記複数の砥粒を結合する結合材と、を備え、
前記複数の柱部の前記周方向の前記間隔は、前記砥石をその回転軸を中心に回転させつつ前記側周面を前記被加工物に接触させる加工時に、前記柱部の一部が前記被加工物に接触した状態と前記柱部が前記被加工物に接触せずに前記保持材のみが前記被加工物に接触する状態とで交互に状態遷移するように設定されている、
砥石。
【請求項2】
前記砥石は、有底筒状に形成され、
前記砥石は、前記複数の柱部である複数の第1柱部とは別の柱部であり、前記側周面に交わる端面に設けられ、前記端面に交わる方向に延びる筒状に形成され、前記砥石の周方向に沿って間隔を持って並べられる複数の第2柱部を備える、
請求項1に記載の砥石。
【請求項3】
前記複数の第1柱部の前記周方向の配置間隔は、前記複数の第2柱部の前記周方向の配置間隔の半分に設定されている、
請求項2に記載の砥石。
【請求項4】
前記複数の第1柱部は、前記周方向において1つおきに前記第2柱部と同じ位置に設けられている、
請求項3に記載の砥石。
【請求項5】
前記柱部は、互いに異なる角度で交わるように一体をなす複数の壁部を備える、
請求項1から4の何れか1項に記載の砥石。
【請求項6】
前記保持材は複数の目立て粒を含み、
前記目立て粒は、前記保持材から脱落した後に、前記結合材を削ることにより、前記砥粒を目立てする、
請求項1から5の何れか1項に記載の砥石。
【請求項7】
筒状の前記柱部は、それぞれ矩形波部を有し、前記砥石の回転軸に沿う方向に延びる矩形波板状をなし、前記砥石の前記周方向において互いに前記矩形波部が向き合うように重ね合わされる2つの波板部により形成される、
請求項1から6の何れか1項に記載の砥石。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の砥石と、有底筒状に形成される前記砥石の内部空間に固定され、前記砥石を保持する砥石ホルダーと、を備える砥石ユニットであって、
前記保持材は、流体を通過させる多孔質材料により形成され、
前記砥石ホルダーには、流体が通過する複数の第1及び第2流体通過孔が形成され、
前記複数の第1流体通過孔は、前記砥石の回転軸に沿って延び、前記砥石の周方向に間隔を持って並べられ、
前記複数の第2流体通過孔は、それぞれ前記砥石の径方向に沿って延び、前記砥石の周方向に間隔を持って並べられ、前記砥石の径方向内側の端部が前記第1流体通過孔に流体が出入り可能に接続され、
前記複数の第1流体通過孔は、それぞれ、前記砥石ホルダーの上面に位置し、流体が流入可能に外部に露出する流入端部を備え、
前記複数の第2流体通過孔は、それぞれ、前記砥石の径方向外側の端部に位置し、前記流入端部から流入して前記第1及び第2流体通過孔を経た流体を前記保持材に向けて流出させる流出端部を備える、
砥石ユニット。
【請求項9】
請求項1からの何れか1項に記載の砥石と、
前記砥石を保持する砥石ホルダーと、
前記砥石ホルダーに固定され、前記砥石の回転軸に沿って延びるシャフトと、
前記シャフトを軸回転させる駆動部と、を備える、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石、砥石ユニット及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のフライス盤は、刃物を回転させて被加工物を切削加工する。
例えば、特許文献2に記載の研削盤は、複数の砥粒とこの複数の砥粒を結合する結合剤とを備える砥石車にて被加工物を研削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-129610号公報
【文献】特開2016-165786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のフライス盤においては、刃物による切削加工が行われることにより、刃物の刃先が丸くなると、刃物の切れ味が低下し、刃物の加工能力が低下する。
また、上記特許文献2に記載の研削盤は、フライス盤に比べて切れ味が低下しづらく、加工能力は維持されるものの、被加工物から削り取れる加工量が少なく、加工量が多い加工には適さない。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、加工能力の低下を抑制しつつ、加工量を多くすることができる砥石、砥石ユニット及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る砥石は、被加工物を加工する砥石であって、前記砥石の側周面に前記砥石の周方向に沿って間隔を持って非連続に並べられ、前記砥石の前記側周面に交わる方向に延び、それぞれ筒状に形成され、前記被加工物を加工する複数の柱部と、前記砥石の前記側周面に設けられ、前記複数の柱部の内部空間と外部空間に充填されることにより前記複数の柱部を保持し、前記被加工物を加工しない保持材と、を備え、前記柱部は、前記柱部の全域にわたって分布し、前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の砥粒と、前記複数の砥粒を結合する結合材と、を備え、前記複数の柱部の前記周方向の前記間隔は、前記砥石をその回転軸を中心に回転させつつ前記側周面を前記被加工物に接触させる加工時に、前記柱部の一部が前記被加工物に接触した状態と前記柱部が前記被加工物に接触せずに前記保持材のみが前記被加工物に接触する状態とで交互に状態遷移するように設定されている。
【0007】
また、前記砥石は、有底筒状に形成され、前記砥石は、前記複数の柱部である複数の第1柱部とは別の柱部であり、前記側周面に交わる端面に設けられ、前記端面に交わる方向に延びる筒状に形成され、前記砥石の周方向に沿って間隔を持って並べられる複数の第2柱部を備える、ようにしてもよい。
【0008】
また、前記複数の第1柱部の前記周方向の配置間隔は、前記複数の第2柱部の前記周方向の配置間隔の半分に設定されている、ようにしてもよい。
【0009】
また、前記複数の第1柱部は、前記周方向において1つおきに前記第2柱部と同じ位置に設けられている、ようにしてもよい。
【0010】
また、前記柱部は、互いに異なる角度で交わるように一体をなす複数の壁部を備える、ようにしてもよい。
【0012】
また、前記保持材は複数の目立て粒を含み、前記目立て粒は、前記保持材から脱落した後に、前記結合材を削ることにより、前記砥粒を目立てする、ようにしてもよい。
【0013】
また、筒状の前記柱部は、それぞれ矩形波部を有し、前記砥石の回転軸に沿う方向に延びる矩形波板状をなし、前記砥石の前記周方向において互いに前記矩形波部が向き合うように重ね合わされる2つの波板部により形成される、ようにしてもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る砥石ユニットは、前記砥石と、有底筒状に形成される前記砥石の内部空間に固定され、前記砥石を保持する砥石ホルダーと、を備える砥石ユニットであって、前記保持材は、流体を通過させる多孔質材料により形成され、前記砥石ホルダーには、流体が通過する複数の第1及び第2流体通過孔が形成され、前記複数の第1流体通過孔は、前記砥石の回転軸に沿って延び、前記砥石の周方向に間隔を持って並べられ、前記複数の第2流体通過孔は、それぞれ前記砥石の径方向に沿って延び、前記砥石の周方向に間隔を持って並べられ、前記砥石の径方向内側の端部が前記第1流体通過孔に流体が出入り可能に接続され、前記複数の第1流体通過孔は、それぞれ、前記砥石ホルダーの上面に位置し、流体が流入可能に外部に露出する流入端部を備え、前記複数の第2流体通過孔は、それぞれ、前記砥石の径方向外側の端部に位置し、前記流入端部から流入して前記第1及び第2流体通過孔を経た流体を前記保持材に向けて流出させる流出端部を備える。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る工作機械は、前記砥石と、前記砥石を保持する砥石ホルダーと、前記砥石ホルダーに固定され、前記砥石の回転軸に沿って延びるシャフトと、前記シャフトを軸回転させる駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、砥石、砥石ユニット及び工作機械において、加工能力の低下を抑制しつつ、加工量を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る砥石の斜視図である。
図3図1の範囲Aを示す拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係る砥石の図2の範囲Bの正面図である。
図5図1のD-D線の断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る砥石により被加工物が加工される際の柱部の動作を示す概略図である。
図7】本発明の変形例に係る砥石の側周面の一部の展開図である。
図8】本発明の変形例に係る砥石の側周面の一部の展開図である。
図9】本発明の変形例に係る砥石の側周面の一部の展開図である。
図10】本発明の変形例に係る砥石の柱部を砥石の径方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る砥石、砥石ユニット及び工作機械の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械5は、砥石ユニット1と、シャフト25と、駆動部27と、クーラント液供給部28と、を備える。砥石ユニット1は、被加工物Wを加工する砥石10と、砥石10を保持する砥石ホルダー20と、を備える。
【0019】
砥石ホルダー20は、金属により形成され、略円板状をなす。砥石ホルダー20の中心には円柱状のシャフト25が挿通される。砥石ホルダー20は、シャフト25と一体でシャフト25に沿う回転軸Oを中心に回転する。
【0020】
駆動部27は、シャフト25を介して砥石ユニット1をX方向、Y方向及びZ方向に移動させるとともに、シャフト25を介して砥石ユニット1を回転軸Oを中心に軸回転させる。これにより、砥石10は、図示しないチャックに固定された被加工物Wを加工、すなわち切削、研磨又は研削する。被加工物Wは、セラミックス、シリコンウエハ、半導体基板、LED(Light Emitting Diode)基板、放熱基板、シリコンカーバイド、アルミナ、サファイア又は金属等である。
【0021】
図1及び図2に示すように、砥石10は、砥石ホルダー20が内部に位置する有底筒状をなす。詳しくは、砥石10は、保持材37及び複数の柱部32を有する端面加工部30と、保持材47及び複数の柱部42を有する側面加工部40と、を備える。
【0022】
端面加工部30は、XY平面に沿う円環板状に形成される。端面加工部30は、加工時に被加工物Wが接するXY平面に沿う端面31を有する。
詳しくは、端面加工部30は、端面31に直交するZ方向に沿って延びる複数の柱部32を備える。各柱部32は、筒状、例えば、正六角形筒状に形成される。各柱部32は、被加工物Wを加工、例えば、研磨又は研削するために設けられる。複数の柱部32は砥石10の端面31に並べられている。複数の柱部32は、互いに同一のサイズで形成され、周方向Cに沿って並べられる。複数の柱部32は、周方向Cに沿って等角度、例えば45°間隔で配置されている。各柱部32は、6つの壁部33により構成される。隣り合う2つの壁部33は、所定角度、例えば60°の角度で交わるように一体をなす。
【0023】
図2に示すように、側面加工部40は、Z方向に延びる筒状をなし、加工時に被加工物Wが接する側周面41を有する。側周面41は、端面31の周縁部から端面31に直交するように延びる。
【0024】
詳しくは、側面加工部40は、側周面41に直交する径方向Rに沿って延びる複数の柱部42と、複数の柱部42を連結する連結部44と、を備える。各柱部42は、筒状、例えば、正六角形筒状に形成される。各柱部42は、被加工物Wを加工、例えば、切削するために設けられる。複数の柱部42は、砥石10の側周面41に並べられる。複数の柱部42はZ方向に沿って並べられ、Z方向に沿って並ぶ1列の複数の柱部42は砥石10の周方向Cに並べられる。複数の柱部42は、周方向Cに沿って等角度、例えば22.5°間隔で配置されている。側面加工部40の複数の柱部42の周方向Cの配置間隔は、端面加工部30の複数の柱部32の周方向Cの配置間隔よりも小さく設定される。例えば、柱部42の周方向Cの配置間隔は、柱部32の周方向Cの配置間隔の半分に設定される。
【0025】
図2に示すように、複数の連結部44は、それぞれZ方向に隣り合う2つの柱部42を連結する。連結部44は、Z方向に隣り合う2つの柱部42の各々の頂点P1,P2を連結する。2つの頂点P1,P2はZ方向に対向して位置する。各柱部42は、6つの壁部43により構成される。隣り合う2つの壁部43は、所定角度、例えば60°の角度で交わるように一体をなす。
【0026】
図4に示すように、側面加工部40は、Z方向に沿って並べられる柱部42である複数、例えば3つの柱部42a,42b,42cと、複数の柱部42a,42b,42cを連結する連結部44である複数、例えば2つの連結部44a,44bと、を備える。連結部44aは、2つの柱部42a,42bの間に位置し、2つの柱部42a,42bを連結する。連結部44bは、2つの柱部42b,42cの間に位置し、2つの柱部42b,42cを連結する。
柱部42a,42b,42c及び連結部44a,44bは、第1及び第2の波板部45,46により構成される。第1及び第2の波板部45,46は、それぞれZ方向に沿って折り曲げられたZ方向に沿う台形の矩形波状をなす。第1の波板部45は複数の矩形波部45aを有し、第2の波板部46は複数の矩形波部46aを有する。矩形波部45a,46aは、底辺が省略された台形形状をなす。第1及び第2の波板部45,46は、それぞれの矩形波部45a,46aが周方向Cに互いに向き合うように重ね合わされる。矩形波部45a,46aが互いに向き合うように設けられることにより、各柱部42a,42b,42cが形成される。第1及び第2の波板部45,46は、連結部44において図示しない接着剤により接着されている。
【0027】
図2に示すように、保持材37は、端面加工部30の全域にわたって形成され、複数の柱部32を保持する。保持材37は、各柱部32の内部空間に充填されるとともに、各柱部32の外部空間である複数の柱部32の間に充填される。保持材37により柱部32の強度が高められる。保持材47は、側面加工部40の全域にわたって形成され、複数の柱部42を保持する。保持材47は、各柱部42の内部空間に充填されるとともに、各柱部42の外部空間である複数の柱部42の間に充填される。
【0028】
図1に示すように、保持材37,47は柱部32,42と略同一の高さに設定されている。保持材37,47は、柱部32,42よりも弾性率が小さい材質により形成される。すなわち、保持材37,47は、柱部32,42に比べて、外力により変形しやすく、被加工物Wとの摩擦による摩耗量が多い材質により形成される。砥石10での被加工物Wの加工時に、保持材37,47は、柱部32,42よりも削れやすく、弾性変形しやすい。このため、図3に示すように、砥石10の側周面41が被加工物Wの加工により摩耗した場合であっても、保持材47は、柱部42よりも距離Fだけ被加工物Wに対して退避した状態に維持される。
保持材37も、保持材47と同様である。従って、保持材37,47は、柱部32,42よりも被加工物Wに向けて突出することが抑制され、柱部32,42よる被加工物Wの加工を阻害しない。
保持材37,47は、気体又は液体である流体を通過させるポーラス材料、すなわち多孔質材料により形成される。保持材37,47は、例えば、多孔質の樹脂又はセラミックからなる。
【0029】
図3に示すように、柱部42は、複数の砥粒15と、複数の砥粒15を結合する結合材16と、を備える。複数の砥粒15は、結合材16内に分布している。砥粒15は、例えば、ダイヤモンドである。なお、砥粒15は、ダイヤモンドに限らず、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒であってもよいし、CBN砥粒とダイヤモンドを混合させてもよい。さらには、複数の砥粒15は、炭化ケイ素(SiC)、又は溶融アルミナ(Al)、若しくはこれらを混合したものであってもよい。
【0030】
結合材16は、内部に複数の砥粒15を保持する。結合材16は、ニッケル、アルミニウム等の金属、樹脂又はセラミックにより形成される。柱部32は、柱部42と同様に、複数の砥粒及び結合材を備える。
図3に示すように、保持材47は、複数の目立て粒47aを含む。目立て粒47aは、結合材16よりも硬く、かつ、砥粒15よりも柔らかい材質により形成される。目立て粒47aは、例えば、炭化ケイ素(SiC)又は二酸化ケイ素(SiO)からなる粒である。目立て粒47aは、保持材47から脱落した後、柱部42の結合材16を削る。これにより、柱部42の砥粒15が目立てされる。保持材37も、保持材47と同様に、複数の目立て粒を含む。
【0031】
図1に示すように、クーラント液供給部28はクーラント液Cltを砥石10に供給する。
砥石ホルダー20には流体通過孔21,22,23,24が形成される。流体通過孔21,22,23,24を1組とした場合、複数組の流体通過孔21,22,23,24は周方向Cに沿って間隔を持って配置されている。
流体通過孔21は、シャフト25の回転軸Oに沿うZ方向に延びる。流体通過孔21の上端である流入端部21iは砥石ホルダー20の上面に位置する。
流体通過孔22,23,24は、シャフト25の回転軸Oに沿うZ方向に並べられ、それぞれ砥石10の径方向Rに沿って延びる。流体通過孔22,23,24の径方向R内側の一端は流体通過孔21に接続され、流体通過孔22,23,24の径方向R外側の他端である流出端部22o,23o,24oは砥石ホルダー20の側周面に位置する。流出端部22o,23o,24oはポーラス材により形成される保持材47に対向する。クーラント液Cltは、流入端部21iを介して流体通過孔21,22,23,24内に進入し、砥石10の回転時に作用する遠心力により、流体通過孔22,23,24の流出端部22o,23o,24oに向かい、保持材47を介して砥石10の径方向Rの外側に吐出される。
【0032】
次に、工作機械5の作用について説明する。
図1に示すように、工作機械5は、駆動部27を介して、シャフト25とともに回転軸Oを中心に砥石ユニット1を回転させつつ、砥石10の側周面41を被加工物Wに接触させる。これにより、被加工物Wが加工される。図5に示すように、砥石10は、砥粒15を有する柱部42と砥粒15を有しない保持材47が周方向Cに沿って交互に配置される。よって、砥石10が周方向Cに回転すると、被加工物Wには、被加工物Wを加工する柱部42と被加工物Wを加工しない保持材47が交互に接触する。これにより、図6に示すように、柱部42が周方向Cに沿って被加工物Wに向かって回転し、柱部42の先端が被加工物Wに加工量Kにて被加工物Wに切り込まれるとともに、柱部42の先端が被加工物Wに摩擦する。これにより、被加工物Wが加工される。
従来の砥石では砥粒が周方向に沿って均一に分布しており、砥粒は被加工物を研磨するのみである。よって、従来の砥石では、本実施形態に比べて、被加工物Wに切り込む加工量は少ない。一方、本実施形態の砥石10の柱部42は、フライス工具の刃先と同様に機能し、被加工物Wに切り込まれやすい。これにより、本実施形態の砥石10は、従来の砥石よりも加工量Kを増やすことができる。また、加工時には、砥石10の柱部42の先端が摩耗する前に砥粒15が柱部42から脱落し、新たな砥粒15が柱部42の先端に露出する。よって、砥石10の加工能力がフライス工具に比べて低下することが抑制される。
【0033】
図1に示すように、工作機械5は、駆動部27を介して、シャフト25とともに回転軸Oを中心に砥石ユニット1を回転させつつ、砥石10の端面31を被加工物Wに接触させる。これにより、被加工物Wが研磨又は研削される。
【0034】
図1に示すように、工作機械5は、砥石10による被加工物Wの加工中に、クーラント液供給部28を介してクーラント液Cltを砥石10の上面に吐出する。そして、クーラント液Cltは、流入端部21iを介して流体通過孔21に進入する。クーラント液Cltは、流体通過孔21内において、砥石10が回転することに伴い径方向R外側に向けて遠心力が作用する。この遠心力を受けてクーラント液Cltは、流体通過孔21から流体通過孔22,23,24に進入する。クーラント液Cltは、遠心力により流体通過孔22,23,24の流出端部22o,23o,24oから砥石ホルダー20と砥石10の隙間に吐出される。クーラント液Cltは、砥石ホルダー20と砥石10の隙間の全域に広がり、保持材47を介して砥石10の径方向Rの外側に吐出される。そして、クーラント液Cltは、液体を通過可能な多孔質材料からなる保持材47を通過し、砥石10と被加工物Wの間に進入する。よって、砥石10と被加工物Wで発生する摩擦熱がクーラント液Cltにより冷やされる。
【0035】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)被加工物Wを加工する砥石10は、砥石10の側周面41に砥石10の周方向Cに沿って間隔を持って並べられ、砥石10の側周面41に交わる方向に延びる複数の柱部42を備える。柱部42は、被加工物Wを加工する際に被加工物Wに接触する複数の砥粒15と、複数の砥粒15を結合する結合材16と、を備える。
この構成によれば、砥石10は、砥粒15を有する柱部42と砥粒15を有しない保持材47が周方向Cに沿って交互に配置される。これにより、図6に示すように、柱部42が周方向Cに沿って被加工物Wに向かって回転し、柱部42の先端が被加工物Wに加工量Kにて被加工物Wに切り込まれる。よって、砥石10の加工量Kを従来の砥石よりも増やすことができる。
また、砥石10による被加工物Wの加工時に、砥粒15が被加工物Wとの摩擦により丸くなって研削能力が低下する前に、砥粒15が柱部42から脱落して新たな砥粒15が被加工物Wに接触可能に柱部42から露出する。このため、砥石10は、従来のフライス工具に比べて加工能力の低下が抑制される。
【0036】
(2)柱部42は、互いに異なる角度で交わるように一体をなす2つの壁部43を備える。
この構成によれば、2つの壁部43が互いに異なる角度で交わるように一体をなすため、2つの壁部が平板状に一体をなす場合に比べて、柱部42の剛性を高めることができる。これにより、砥石10の加工能力を向上させることができる。
【0037】
(3)柱部42は、砥石10の側周面41に交わる方向に延びる筒状に形成される。
この構成によれば、柱部42の剛性を高めることができ、砥石10の加工能力を向上させることができる。
【0038】
(4)複数の第1柱部の一例である複数の柱部42は、砥石10の側周面41に設けられ、側周面41に交わる方向に延びる。砥石10は、砥石10の側周面41に直交する端面31に設けられ、端面31に交わる方向に延びる複数の第2柱部の一例である複数の柱部32を備える。
この構成によれば、1つの砥石10において、砥石10の側周面41と端面31を利用して異なる2つの種類の加工が可能となる。
【0039】
(5)砥石10は、砥石10の側周面41の全域に設けられ、柱部42よりも弾性率が小さく、かつ流体を通過させる多孔質材料により形成され、複数の柱部42を保持する保持材47を備える。
この構成によれば、保持材47は、多孔質材料により形成されるため、非多孔質材料に比べて、加工時に摩耗量が多くなる。よって、保持材47が柱部42よりも被加工物W側に突出することが抑制され、保持材47が柱部42による被加工物Wの加工を阻害することが抑制される。
また、保持材47は流体が通過可能である。このため、保持材47を通過した流体が砥石10と被加工物Wの間に供給可能である。これにより、砥石10と被加工物Wで発生する摩擦熱を冷却したり、切り粉を外部に排出したりすることができる。
また、保持材47は、柱部42よりも弾性率が小さく、被加工物Wに押されたときに柱部42よりも変形しやすい。よって、保持材47が柱部42よりも被加工物W側に突出することが抑制され、保持材47が柱部42による被加工物Wの加工を阻害することが抑制される。
【0040】
(6)保持材47は複数の目立て粒47aを含む。目立て粒47aは、保持材47から脱落した後に、結合材16を削ることにより、砥粒15を目立てする。
この構成によれば、砥粒15が目立てされることにより、砥石10の加工能力の低下が抑制される。
【0041】
(7)筒状の柱部42aは、それぞれ矩形波部45a,46aを有し、Z方向に延びる矩形波板状をなし、砥石10の周方向Cにおいて互いに矩形波部45a,46aが向き合うように重ね合わされる2つの波板部45,46により形成される。
この構成によれば、2つの波板部45,46を重ね合わせることにより、筒部42aを構成することができる。
【0042】
(8)砥石ユニット1は、有底筒状に形成される砥石10と、砥石10の内部空間に固定され、砥石10を保持する砥石ホルダー20と、を備える。砥石ホルダー20には、流体の一例であるクーラント液Cltが通過する流体通過孔21,22,23,24が形成される。流体通過孔21,22,23,24は、クーラント液Cltが流入可能に外部に露出する流入端部21iと、少なくとも一部が保持材47に対向して位置し、流入端部21iを介して流体通過孔内21,22,23,24に流入したクーラント液Cltを保持材47に向けて流出させる流出端部22o,23o,24oと、を備える。
この構成によれば、クーラント液Cltは、流体通過孔21,22,23,24を経て、保持材47に向けて吐出される。そして、クーラント液Cltは、保持材47を通過して砥石10と被加工物Wの間に供給される。これにより、砥石10と被加工物Wで発生する摩擦熱を冷却したり、切り粉を排出したりすることができる。
【0043】
(9)工作機械5は、砥石10と、砥石10を保持する砥石ホルダー20と、砥石ホルダー20に固定され、砥石10の回転軸Oに沿って延びるシャフト25と、シャフト25を軸回転させる駆動部27と、を備える。
この構成によれば、工作機械5において、砥石10の加工量Kを従来の砥石よりも増やすことができ、砥石10の加工能力の低下が抑制される。
【0044】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
上記実施形態においては、砥石ホルダー20の流体通過孔21,22,23,24は省略されてもよい。また、クーラント液供給部28は省略されてもよい。
【0045】
上記実施形態においては、柱部32,42は正六角形筒状に形成されていたが、六角形筒状であれば、正六角形筒状でなくてもよい。また、柱部32,42は、多角形筒状であれば、六角形筒状でなくてもよく、例えば、五角以下又は七角以上の多角形筒状であってもよい。さらに、柱部32,42は、筒状であれば、多角形筒状でなくてもよく、円筒状であってもよい。以下、図7図9を参照しつつ柱部の変形例について説明する。
【0046】
例えば、図7に示すように、複数の柱部142はV字状又はL字状をなしていてもよい。複数の柱部142は周方向Cに沿って1列に並べられる。複数の柱部142はそれぞれ同じ向きに設けられる。柱部142は、互いに異なる角度で交わる2つの壁部143,144を備える。2つの壁部143,144がなす角度は、鋭角及び鈍角の何れであってもよい。また、2つの壁部143,144は一体で形成されていてもよいし、別体で形成されてもよい。
さらに、図7の例では、柱部142はZ方向に1つだけ設けられていたが、Z方向に2つ以上並んで設けられていてもよい。
柱部142が互いに異なる角度で交わる2つの壁部143,144を有することにより、柱部142の剛性を高めることができる。また、図7の側面加工部40はZ方向に貫通する隙間を有するため、Z方向に流体が通過しやすくなる。
【0047】
また、例えば、図8に示すように、L字状の柱部343,344,345が組み合わされてもよい。柱部343の内面343aには柱部344の内面344aが接着され、柱部343の内面343bには柱部345の内面345aが接着される。柱部343と柱部344,柱部345は互いに反対方向を向く。このように、L字状の複数の柱部が組み合わされることにより、Z方向に対して傾斜した1列の柱部が形成され、複数列の柱部が周方向に沿って並べられる。
上述のように、L字状の柱部が組み合わされることにより、柱部が重なる部分が増え、柱部の剛性を高めることができる。また、図8の側面加工部40はZ方向に対して傾斜した方向に貫通する隙間を有するため、流体が通過しやすくなる。
【0048】
また、例えば、図9に示すように、複数の柱部242は砥石10の径方向Rから見てY字状をなしていてもよい。複数の柱部242は周方向Cに沿って並べられる。複数の柱部242は、第1列L1、第2列L2及び第3列L3に沿って並べられる。第1列L1、第2列L2及び第3列L3は、それぞれ周方向Cに沿う列である。第1列L1、第2列L2及び第3列L3は、Z方向の上側から第1列L1、第2列L2及び第3列L3の順番でZ方向に並べられる。
各柱部242は、それぞれ、略V字状の2つの壁部243,244を備える。壁部243,244は、それぞれ、鈍角をなすように交わる2つの板部251,252を備える。壁部243の板部251と壁部244の板部251が重ねられて接着される。これにより、壁部243,244が略Y字状を構成する。
柱部242がY字状に形成されることにより、柱部の剛性を高めることができる。複数の柱部242の間に隙間を形成することにより、この隙間を介して切り粉やクーラント液Cltを外部に排出することができる。
また、図9の例に限らず、3つの略V字状の壁部が重ね合わされることにより、柱部がY字状に形成されてもよい。この場合、図9の一点鎖線で示す略V字状の壁部248が壁部243の板部252と壁部244の板部252の互いに対向する内面に沿うように設けられる。すなわち、壁部248の2つの外面のうち一方が壁部244の2つの外面のうち一方に接着され、壁部248の2つの外面のうち他方が壁部243の2つの外面のうち一方に接着され、壁部244の2つの外面のうち他方が壁部243の2つの外面のうち他方に接着される。これにより、柱部が重なる部分が増え、柱部の剛性を高めることができる。また、3つの壁部243,244,248により構成される柱部242の強度的なバランスが高まる。
さらに、図10に示すように、3つの略V字状の壁部243,244,248を接着する接着剤249に被加工物Wを加工するための複数の砥粒215が混ぜられていてもよい。接着剤249は例えばエポキシ樹脂である。接着剤249に複数の砥粒215が含まれることにより、砥石10の加工能力を向上させることができる。
また、複数の砥粒215を含む接着剤249にて3つの壁部243,244,248が接着される場合には、柱部242の壁部243,244,248に含まれる砥粒15(図3参照)は省略されてもよい。さらに、砥粒215を含む接着剤249は、図10の変形例に限らず、上記各実施形態又は上記各変形例における壁部又は柱部を接着するのに利用されてもよい。
また、柱部242はY字状に限らず、V字状、L字状、X字状、N字状、U字状、Z字状、C字状又はI字状等に形成されてもよい。
なお、側面加工部40の柱部と同様に、端面加工部30の柱部32の形状も適宜変更可能である。
【0049】
上記実施形態においては、砥石10は、端面加工部30と、側面加工部40と、を備えていたが、端面加工部30は省略されてもよい。
【0050】
上記実施形態においては、柱部42は、砥石10の側周面41に直交する方向に延びていたが、砥石10の側周面41に交わる方向であれば、側周面41に直交する方向に限定されない。柱部32も端面31に交わる方向であれば、側周面41に直交してなくてもよい。
【0051】
上記実施形態においては、連結部44は、Z方向に隣り合う2つの柱部42を連結していたが、これに限らず、例えば、周方向Cに隣り合う2つの柱部42を連結してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…砥石ユニット、5…工作機械、10…砥石、15…砥粒、16…結合材、20…砥石ホルダー、21,22,23,24…流体通過孔、21i…流入端部、22o,23o,24o…流出端部、25…シャフト、27…駆動部、28…クーラント液供給部、30…端面加工部、31…端面、32,42,42a,42b,42c,142,242,343,344,345…柱部、33,43,143,144,243,244,248…壁部、37,47,147…保持材、40…側面加工部、41…側周面、44,44a,44b…連結部、45…第1の波板部、45a,46a…矩形波部、46…第2の波板部、251,252…板部、343a,343b,344a,345a…内面、C…周方向、F…距離、K…加工量、O…回転軸、P1,P2…頂点、R…径方向、W…被加工物、Clt…クーラント液
図1
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図10