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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】膨張弁および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/335 20210101AFI20240112BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20240112BHJP
   F16K 47/02 20060101ALN20240112BHJP
【FI】
F25B41/335 C
F16K31/68 S
F16K47/02 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020027640
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021131202
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】松田 亮
(72)【発明者】
【氏名】久保田 耕平
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-39579(JP,A)
【文献】特開2002-89731(JP,A)
【文献】特開2018-35993(JP,A)
【文献】特開2015-190497(JP,A)
【文献】国際公開第2006/090826(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/68
F16K 47/02
F25B 41/30 - 41/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を導入する流入路と当該冷媒を排出する流出路とに連通しかつ弁座が設けられた弁室を有する弁本体と、
前記弁座に着座した閉弁状態と前記弁座から離間した開弁状態との間で前記弁座に対して進退動することにより前記冷媒の流量を変更する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、
前記弁体に接触して前記付勢部材による付勢力に抗し前記弁体を開弁方向へ移動させる作動棒と、
前記作動棒を駆動する駆動部と、
前記弁体の進退動に伴い前記弁体とともに移動して前記弁体の振動を抑制する防振ばねと
を備えた膨張弁であって、
前記防振ばねは、
当該防振ばねを前記弁体に対して固定する固定基部と、
弾性を有し、前記固定基部に基端部が支持されるとともに先端部が前記弁室の内壁面に摺動可能に当接する複数本の脚部と
を備え、
前記弁室の内壁面は、案内溝を備え、
前記案内溝は、前記複数本の脚部のうち少なくとも1本と係合する案内溝であって、前記弁体の進退動に伴う前記防振ばねの移動方向に沿うように延びて前記防振ばねの前記弁体の進退動に伴う移動を許容する一方、前記防振ばねの回転を阻止する
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
前記弁室は、当該弁室へ前記流入路から前記冷媒が流入する流入口を有し、
前記防振ばねの隣り合う脚部と脚部との間隙が前記流入口に対向するように前記防振ばねを配置した
請求項1に記載の膨張弁。
【請求項3】
前記案内溝に係合する脚部は、当該脚部の表面から外方へ突出し且つ前記案内溝に沿って移動可能に前記案内溝に嵌入する係合突起を有する
請求項1または2に記載の膨張弁。
【請求項4】
前記係合突起は、半球状の形状を有し、
前記案内溝は、半円状の横断面形状を有する
請求項3に記載の膨張弁。
【請求項5】
前記係合突起は、半球状の形状を有し、
前記案内溝は、方形の横断面形状を有する
請求項3に記載の膨張弁。
【請求項6】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された前記冷媒を冷却して液化する凝縮器と、
前記凝縮器で液化された前記冷媒を減圧膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁で減圧膨張された前記冷媒を蒸発気化する蒸発器と
を備えた冷凍サイクル装置であって、
前記膨張弁が、前記請求項1からのいずれか一項に記載の膨張弁であることを特徴と
する冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張弁および冷凍サイクル装置に係り、特に弁振動を抑制し異音が発生することを防ぐ防振ばねを備えた膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
カーエアコンのような冷凍サイクル装置では、エバポレータ(蒸発器)の能力を十分に引き出すために膨張弁が備えられる。この膨張弁は、エバポレータの出口側配管の冷媒温度に感応してエバポレータに供給される冷媒の流れを絞り、最適流量に制御する。
【0003】
一方、かかる膨張弁では、弁内を流れる冷媒によって異音が発生することがあり、このような異音を低減させる様々な提案が従来からなされている。
【0004】
例えば、下記特許文献1に係る発明では、弁体と一緒に上下動する防振ばねにより弁体の振動を抑制し異音の発生を防ぐ。防振ばねは、弁体支持部材に固定されるリング状の基部と、当該基部の周縁から斜め下方に放射状に延びる複数本の脚部を備えている。各脚部は、弾性を有する平板ばねで、先端部に備えた半球状の突起を弁室の内壁面に摺動可能に圧接することにより弁体の振動を抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-39579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の発明では、防振ばねの脚部と、冷媒を弁室の導入する流入口との位置関係によって、膨張弁を通過する冷媒流量にばらつきが生じる可能性がある。
【0007】
具体的には、例えば防振ばねの脚部の1本が流入口のちょうど正面に(流入口に対向するように)配置された状態と、隣り合う脚部と脚部の間隙が配置された状態とを比較した場合、流入口の正面に隙間が配置された状態では当該隙間を通って冷媒がスムーズに弁室内に流入するのに対して、流入口の正面に脚部が配置された状態では当該脚部に冷媒が衝突して冷媒の流入が妨げられることから流入口の開口面積が実質的に小さくなり、流入する冷媒流量が低減する可能性がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、防振ばねの脚部の配置位置に起因した冷媒流量のばらつきを防ぐ点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る膨張弁は、冷媒を導入する流入路と冷媒を排出する流出路とに連通しかつ弁座が設けられた弁室を有する弁本体と、弁座に着座した閉弁状態と弁座から離間した開弁状態との間で弁座に対して進退動することにより冷媒の流量を変更する弁体と、弁体を弁座に向けて付勢する付勢部材と、弁体に接触して付勢部材による付勢力に抗し弁体を開弁方向へ移動させる作動棒と、作動棒を駆動する駆動部と、弁体の進退動に伴い弁体とともに移動して弁体の振動を抑制する防振ばねとを備えたもので、防振ばねは、当該防振ばねを弁体に対して固定する固定基部と、弾性を有して固定基部に基端部が支持されるとともに先端部が弁室の内壁面に摺動可能に当接する複数本の脚部とを備えている。
【0010】
そして当該膨張弁では、弁室の内壁面に案内溝を備える。この案内溝は、上記複数本の脚部のうち少なくとも1本(この脚部を「位置決め脚部」と言う)と係合する案内溝であって、弁体の進退動に伴う防振ばねの移動方向に沿うように延びて弁体の進退動に伴う防振ばねの移動を許容する一方、防振ばねの回転を阻止する
【0011】
なお、上記案内溝について「防振ばねの移動方向に沿うように」とは、典型的には、防振ばねの移動方向に平行なことを意味するが、平行ではない場合も含まれる。なぜなら、後述する各実施形態のように弁体は(したがって弁体と一緒に移動する防振ばねも)典型的には弁の開閉時に上下方向(垂直方向)に移動するが、上下方向に移動すると同時に横方向(水平方向)へも移動する場合があるからである。
【0012】
具体的な例を述べれば、前記特許文献1に記載した発明では、弁体と防振ばねが上下方向に移動すると同時に横方向へも移動する(つまり斜め下方や斜め上方へ移動する)ことがあり、このような構造の膨張弁に対しても本発明は適用することが可能である。例えば、開弁時に弁体が左斜め下方に移動し、閉弁時に弁体が右斜め上方へ移動する膨張弁を考えた場合、弁体と一緒に移動する防振ばねの移動方向は左斜め下方および右斜め上方となる。この場合、上下方向に延びる案内溝を弁室内壁面の左側または右側に形成し、この案内溝に位置決め脚部が係合するように構成すれば本発明を実現できるが、このような態様では、案内溝(上下方向に延在)は防振ばねの移動方向(左斜め下方および右斜め上方)と完全には平行になっていない。したがって本発明の案内溝は、弁体の移動(弁の開閉動作)に伴う防振ばねの移動を妨げることなく且つ防振ばねの回転を阻止できるように形成されていれば良く、上記「防振ばねの移動方向に沿うように」とは、当該意味内容を表したものである。
【0013】
また、防振ばねの固定基部について上述した「防振ばねを弁体に対して固定する」とは、弁体に直接固定された構造に限定されるものではなく、間接的に固定されている構造をも含む概念である。例えば、弁体と固定基部との間に他の部材や部分が介在された構造、つまり、固定基部が弁体に直接固定されずに、弁体支持部や弁体支持部材等の他の部材や部分に固定されている構造も本発明は包含する。
【0014】
本発明の膨張弁は、弁体の振動を抑制する防振ばねに加え、防振ばねの回転を防ぐ案内溝を弁室の内壁面に備えている。この案内溝は、上述のように弁体の進退動に伴う防振ばねの移動方向に沿うように延びることにより弁体の進退動(閉弁方向および開弁方向への弁体の動作)に伴う防振ばねの移動を許容する一方、防振ばねの脚部(位置決め脚部)と係合することにより防振ばねの回転を阻止する。
【0015】
したがって本発明の膨張弁では、冷媒の流入口(流入路から弁室へ冷媒が流れ込む開口)に対する防振ばねの脚部の位置(回転方向の位置/以下同様)を一定に保つことができ、製造時の製品個体差によって、あるいは膨張弁の使用中に防振ばねが回転して流入口と脚部の位置関係が変わることにより、冷媒流量にばらつきが生じることを防ぐことが出来る。また、冷媒流量に関して設計通りの膨張弁を製造することができ、当該製品に要求される仕様に忠実な膨張弁を提供することが可能となる。
【0016】
案内溝と脚部とのより具体的な係合構造の一例を述べれば、案内溝に係合する位置決め脚部に、当該脚部の表面から外方へ突出する係合突起を備え、この係合突起が案内溝に沿って移動可能に案内溝に嵌入するようにすれば良い。案内溝は、係合突起が嵌まり込む半円状または方形の横断面形状を有することがある。
【0017】
また、好ましい態様として本発明では、防振ばねの隣り合う脚部と脚部との間隙が流入口に対向するように防振ばねを弁室内に配置する。流入口から脚部と脚部との間隙を通って弁室内へ冷媒をスムーズに流入させるためである。
【0018】
また本発明に係る冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された冷媒を冷却して液化する凝縮器と、凝縮器で液化された冷媒を減圧膨張させる膨張弁と、膨張弁で減圧膨張された冷媒を蒸発気化する蒸発器とを備えた冷凍サイクル装置であり、膨張弁として上述した本発明ないし態様に係るいずれかの膨張弁を使用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、防振ばねの脚部の配置位置に起因した冷媒流量のばらつきを防ぐことが出来る。
【0020】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る膨張弁の内部構造(閉弁状態)を弁本体およびダイアフラム装置を切り欠いて示す縦断面図(後述の図3のA1-A1矢視断面)である。
図2図2は、前記第1実施形態に係る膨張弁に備えられる防振ばねを案内溝とともに拡大して示す斜視図である。
図3図3は、前記第1実施形態に係る膨張弁の弁室内(ばね受け部材およびコイルばねを取り除いて下面側から見た状態)を示す拡大底面図である。
図4図4は、前記第1実施形態に係る膨張弁の弁本体を切り欠いて弁室内を示す拡大側面図(図3のA2-A2矢視断面)である。
図5図5は、前記第1実施形態に係る膨張弁の案内溝部分を拡大して示す水平断面図(図4のA3-A3矢視断面)である。
図6図6は、前記第1実施形態に係る膨張弁において流入路の入口側から流入口を見た状態を示す図である。
図7図7は、前記第1実施形態に係る膨張弁の案内溝部分の変形例を前記図5と同様に示す水平断面図である。
図8図8は、本発明の第2の実施形態に係る膨張弁の弁室内(ばね受け部材およびコイルばねを取り除いて下面側から見た状態)を前記図3と同様に示す拡大底面図である。
図9図9は、前記第2実施形態に係る膨張弁の弁本体を切り欠いて弁室内を前記図4と同様に示す拡大側面図(図8のB-B矢視断面)である。
図10図10は、前記第2実施形態に係る膨張弁において流入路の入口側から流入口を見た状態を示す図である。
図11図11は、本発明の第3の実施形態に係る冷凍サイクル装置を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
図1から図7を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。なお、各図には上下左右または前後左右の各方向を表す二次元直交座標、あるいは上下前後左右の各方向を表す三次元直交座標を適宜示し、以下の説明はこれらの方向に基いて行う。
【0023】
図1から図7に示すように本発明の第1の実施形態に係る膨張弁11は、弁室13を内部に備えた弁本体12と、弁室13に冷媒を導入する流入路21と、弁室13から冷媒を排出する流出路22と、弁本体12の上部を左右に貫通するように冷媒を流通させる戻り流路23と、弁室13内で上下動することにより弁室13内に流入する冷媒の量を変更する弁体15と、弁体15を下方から支持する弁体支持部材16と、弁体15が当接することにより閉弁を可能とする弁座14と、弁体支持部材16と弁室13の内壁面13aとの間に介在されるように設置して弁体15の振動を抑制する防振ばね31と、弁本体12の下面部に装着して弁室13を密閉するばね受け部材18と、弁体15を上方へ付勢するためにばね受け部材18と弁体支持部材16との間に配置したコイルばね(付勢部材)17と、コイルばね17の付勢力に抗して弁体15を下方へ移動させる作動棒19と、作動棒19を上下動させるため弁本体12の上面部に備えたダイアフラム装置(駆動部)24とを有する。なお、戻り流路23とダイアフラム装置24の動作については、本実施形態の膨張弁11を使用する後述の第3実施形態において詳しく述べる。
【0024】
防振ばね31は、上下方向に垂直に延びる軸Xを中心としたリング状の固定基部33と、固定基部33の周縁から斜め下方且つ外方へ放射状に延びる(固定基部33の周縁に沿って円弧状に等間隔で配列させた)8本の脚部34,34aとを有する。固定基部33は弁体支持部材16とコイルばね17との間に挟まれることにより弁体支持部材16に固定され、これにより防振ばね31が弁体支持部材16を介して弁体15に固定される。したがって防振ばね31は、弁の開閉動作に伴って弁体15と一緒に上下動する。
【0025】
防振ばね31の各脚部34,34aは、基端部が固定基部33に支持され(固定基部33から連続した部材となり)先端が自由端となった片持ち梁状の板ばねであり、防振ばね31の中心軸Xに向けて撓み変形(弾性変形)が可能である。また各脚部34,34aの先端部には、外方へ突出する半球状の突起35,35aを備える。そして、各突起35,35aの先端部を結ぶことにより形成される円周の径は円筒状の弁室13の内径より大きい。このため、防振ばね31を弁本体12の下面から弁室13内に装填すると、先端部が防振ばね31の中心軸Xに近づくように各脚部34,34aが撓み、各脚部先端の突起35,35aが弁室13の内壁面13aに圧接する。これにより、弁体15および弁体支持部材16の振動が抑制される。
【0026】
また、8本の脚部34,34aのうちの1本の脚部である位置決め脚部34aは、弁室内壁面13aに形成した案内溝41と係合して防振ばね31の中心軸X周りの回転(自転/図2の矢印X1参照)を阻止する。具体的には、当該位置決め脚部34aにも他の脚部34と同じ突起(係合突起)35aを備えてあり、流入口21aと略反対側の弁室内壁面13aには、当該係合突起35aが嵌まり込む溝(案内溝)41を形成してある。この案内溝41は、図2及び図5より明らかなように、係合突起35aの形状に合わせて半円状の横断面(水平断面)形状を有するとともに、係合突起35aが案内溝41に沿って上下に移動できるように上下方向に延在する。
【0027】
したがって、位置決め脚部34aの係合突起35aが案内溝41に嵌入するように防振ばね31を弁室13内に設置すると、案内溝41に嵌まり込んだ係合突起35aによって防振ばね31の中心軸X周りの回転、別の表現をすれば、円弧状に配列させた脚部34,34aの当該配列方向への回転(図2の矢印X2参照)が阻止され、流入口21aに対する脚部34の回転方向の位置を一定に保つことが出来る。このため、防振ばね31の脚部34の配置位置に起因した冷媒流量のばらつきを防ぐことが可能となる。なお、係合突起35aは、案内溝41に沿って上下方向へは移動可能であるから(図2の矢印Y参照)、弁の開閉動作(弁体15の上下動)やこれに伴う防振ばね31の上下方向への移動が妨げられることはない。
【0028】
また流入口21a側では、図3および図6(流入路21の入口側から流入口21aおよび弁室13内を覗いた状態を示す)から明らかなように、隣接する脚部34と脚部34との間隙Sがちょうど流入口21aに対向するように配置されるから、当該間隙Sを通って冷媒をスムーズに弁室13内に流入させることが出来る。
【0029】
なお、上記案内溝41は、図5に示した例では、その横断面形状が係合突起35aの半球形状に合わせたものとなっているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、球状の係合突起35aの曲率半径よりも大きな曲率半径を有する弧状の横断面形状を有する案内溝としても良い。更には、図7に示すように係合突起35aを収容可能な方形の横断面形状を有していても良く、方形溝の幅はその側面が係合突起35aに接触しないが回転方向の位置変化を拘束できる程度に広く設定しても良い。更には、横断面形状として台形、V字形を有した案内溝とすることも可能である。
【0030】
膨張弁11の開閉を行う作動棒19は、弁本体12の内部において上下方向に延び、上端をダイアフラム装置24に接続するとともに下端を弁体15に接触させてある。
【0031】
また、流入路21と流出路22とは、弁室13を介して互いに連通するが、コイルばね17の上方への付勢力によって弁体15が弁座14に当接し着座した閉弁状態(図1および図4に示す状態)では流入路21と流出路22とは連通せずに遮断状態となる。
【0032】
一方、作動棒19に押されて弁体15が下方へ移動して弁座14から離れると、流入路21と流出路22とが連通し、流入路21を通って流入口21aから弁室13の内部に流入した冷媒は、のど部20および流出路22を通って膨張弁11の外へ排出される。なお、排出された冷媒は、エバポレータ54(後述の図11参照)に導入される。また、弁体15の上下方向の位置が変更され、弁体15と弁座14との距離が変更されることにより冷媒の流量が調整される。
【0033】
〔第2実施形態〕
図8図10を参照して本発明の第2の実施形態に係る膨張弁について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、相違点を中心に説明を行う(後述の第3実施形態についても同様)。
【0034】
本発明の第2の実施形態に係る膨張弁は、図8図10に示すように前記第1実施形態と同様に、脚部34および位置決め脚部34aを有する防振ばね32と案内溝41とを備えるが、防振ばね32の脚部34,34aの本数が位置決め脚部34aを含めて6本としたものである。
【0035】
また、位置決め脚部34aの係合突起35aを案内溝41に嵌入させて防振ばね32を弁室13内に設置した場合に、前記第1実施形態と同様に、脚部34と脚部34との間隙Sが流入口21aに対向するように配置される(図10参照)。
【0036】
このような防振ばね32によっても、上下方向に摺動可能に弁室内壁面13aに圧接する脚部34(突起35)によって弁体15や弁体支持部材16の振動を抑制するとともに、防振ばね32の回転を阻止することにより冷媒流量のばらつきを防ぐことが出来る。
【0037】
なお、案内溝41は、本実施形態でも前記第1実施形態(図7)と同様に方形の横断面形状を有するようにしても良い。
【0038】
〔第3実施形態〕
本発明の第3の実施形態として前記第1実施形態の膨張弁11を用いた冷凍サイクル装置について説明する。
【0039】
図11に示すようにこの冷凍サイクル装置51は、冷媒を圧縮するコンプレッサ(圧縮機)52と、コンプレッサ52で圧縮された冷媒を冷却して液化するコンデンサ(凝縮器)53と、コンデンサ53で液化された冷媒を減圧膨張させる膨張弁11と、膨張弁11で減圧膨張された冷媒を蒸発気化するエバポレータ(蒸発器)54を備えたもので、膨張弁として前述した第1実施形態に係る膨張弁11を使用する。
【0040】
かかる冷凍サイクル装置51では、コンプレッサ52で加圧された冷媒は、コンデンサ53で液化されて膨張弁11に送られる。また、膨張弁11で断熱膨張された冷媒はエバポレータ54に送り出され、エバポレータ54で、エバポレータ54の周囲を流れる空気と熱交換される。エバポレータ54から戻る冷媒は、膨張弁11の戻り流路23を通ってコンプレッサ52へ戻される。
【0041】
膨張弁11には、コンデンサ53から高圧の冷媒が供給される。より具体的には、コンデンサ53から送られた高圧冷媒は、流入路21を通って流入口21aから弁室13に流れ込む。コイルばね17によって弁体15が弁座14に押し付けられて着座した閉弁状態では、流入路21と流出路22とは連通せず、弁室13内の冷媒は膨張弁11から排出されない。
【0042】
一方、コイルばね17の付勢力に抗して作動棒19が下方へ移動することにより弁体15を下方へ移動させ、弁座14から弁体15が後退すると、流入路21と流出路22とが連通状態(開弁状態)となり、弁室13内の冷媒が流出路22を通って排出されエバポレータ54へ送り出される。かかる作動棒19の動作は、弁本体12の上面部に備えたダイアフラム装置24により行われる。
【0043】
ダイアフラム装置24は、中央部に開口を有し弁本体12の上面に固定した皿状部材25と、皿状部材25の上面を覆う上蓋部材26と、皿状部材25と上蓋部材26との間に配置したダイアフラム27とを有する。上蓋部材26とダイアフラム27とによって囲まれる第1空間29には、作動ガスを充填してある。また、ダイアフラム27の下面には作動棒受け部材28を固定し、この作動棒受け部材28を介して作動棒19の上端がダイアフラム27に接続されている。そして、第1空間29内の作動ガスが液化されると、作動棒19はダイアフラム27によって上方へ引き上げられ、液化された作動ガスが気化されると、作動棒19はダイアフラム27によって下方へ押し下げられる。このようにして、膨張弁11の開弁状態と閉弁状態との間の切り換えが行われる。
【0044】
ダイアフラム27と皿状部材25との間の第2空間30は、上述した皿状部材25の中央の開口を通じて戻り流路23と連通している。このため、戻り流路23を流れる冷媒の温度と圧力に応じて、第1空間29内の作動ガスの相(気相か液相か)が変化し、この変化に応じて作動棒19が駆動される。このようにして膨張弁11では、エバポレータ54から膨張弁11に戻る冷媒の温度と圧力に対応して、膨張弁11からエバポレータ54に向けて供給される冷媒の量が自動的に調整される。
【0045】
また、本実施形態の冷凍サイクル装置51では、前記第1実施形態の膨張弁11を使用しているから、防振ばね31の脚部34の回転方向の位置が変動することがなく、流入口21aの実質的な開口面積が一定に保たれるから、膨張弁を通過する冷媒流量にばらつきが生じることを防ぐことが出来る。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。例えば、上記の実施の形態においては、1本の案内溝が1つの脚部の突起と係合する例を説明したが、1本の幅広の案内溝を形成し、この案内溝に隣り合う2つの脚部の突起(即ち、2つの突起)が係合する形態であっても良い。
【0047】
また、前記実施形態では1組の位置決め脚部と案内溝とで防振ばねの回転を防止したが、これらは必ずしも1組に限定されるわけではなく2組以上あっても良い。また、前記実施形態では防振ばねに8本または6本の脚部を備えたが、脚部の本数は他の本数であっても構わない。ただし、防振ばねを弁室の内壁面に安定して圧接させ、十分な制振効果を得るため、脚部は3本以上とすることが好ましい。
【0048】
さらに案内溝は、流入口の略反対側(流入口に略対向する位置)に形成したが、弁室内壁面のいずれの周方向位置に形成しても良い。また、前記実施形態では弁体と弁体支持部材を別の部材として構成したが、これらは一体の部材であっても良い。
【0049】
また、前記第3実施形態に係る冷凍サイクル装置では第1実施形態の膨張弁11を使用したが、これに代えて第2実施形態の膨張弁を使用しても勿論良く、さらにこれら実施形態の膨張弁以外にも本発明に基いて構成可能な他の膨張弁を用いることも可能である。
【0050】
また、本発明はカーエアコンに好ましく適用して車両室内の静粛性の向上に寄与することが出来るものであるが、用途や適用対象はカーエアコンに限られず、ルームエアコンや冷凍機など他の様々な冷凍サイクル装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
11 膨張弁
12 弁本体
13 弁室
13a 弁室の内壁面
14 弁座
15 弁体
16 弁体支持部材
17 コイルばね(付勢部材)
18 ばね受け部材
19 作動棒
20 のど部
21 流入路
21a 流入口
22 流出路
23 戻り流路
24 ダイアフラム装置
25 皿状部材
26 上蓋部材
27 ダイアフラム
28 作動棒受け部材
29 第1空間
30 第2空間
31,32 防振ばね
33 固定基部
34 脚部
34a 位置決め脚部
35 突起
35a 係合突起
41 案内溝
51 冷凍サイクル装置
52 コンプレッサ(圧縮機)
53 コンデンサ(凝縮器)
54 エバポレータ(蒸発器)
図1
図2
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