(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ソイルセメントパイル用芯材およびこれを用いたソイルセメントパイルならびに該パイルの施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/30 20060101AFI20240112BHJP
E02D 7/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
E02D5/30 A
E02D7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020068097
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2019073111
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505181550
【氏名又は名称】株式会社新生工務
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】神農 一求
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-256554(JP,A)
【文献】特開2008-303608(JP,A)
【文献】特開2009-114741(JP,A)
【文献】特許第5470212(JP,B2)
【文献】特開平06-010343(JP,A)
【文献】特開2001-303558(JP,A)
【文献】特開2013-174119(JP,A)
【文献】特開2015-124569(JP,A)
【文献】特開昭61-113925(JP,A)
【文献】特開2013-127178(JP,A)
【文献】実開昭60-130831(JP,U)
【文献】特開2014-095252(JP,A)
【文献】特開昭52-152603(JP,A)
【文献】特開2017-089268(JP,A)
【文献】特開平11-222853(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1423613(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
E02D 3/12
E02D 27/00-27/52
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の基礎として土壌中に埋設されるソイルセメントパイルに用いる芯材であって、
地面に対して軸方向が直角に配設される鋼管と、
上記鋼管の外周面に配置され、且つ該鋼管の外径よりも大きい内径を有する円筒状形の筒金具と、を備え、
前記鋼管の外周面と前記筒金具の内周面との間には両者の全周に沿って円筒状形の隙間が位置しており、
上記筒金具は、
その上縁面と上記鋼管の外周面との間に、セメントミルクが通過していくように且つ前記隙間を跨ぐように部分的に形成された溶接部によって該鋼管の外周面に接合され、その下縁面は上記鋼管の外周面と溶接されていない、
いる、ことを特徴とするソイルセメントパイル用芯材。
【請求項2】
前記溶接部は、前記筒金具の上縁面における径方向で対称状となる2箇所の位置に形成されている、
ことを特徴とする
請求項1に記載のソイルセメントパイル用芯材。
【請求項3】
前記鋼管は、外径が45~65mmで且つ厚みが2~5mmの範囲にあり、前記筒金具は、外径が55~80mmで且つ厚み2~5mmの範囲にある、
ことを特徴とする
請求項1又は2に記載のソイルセメントパイル用芯材。
【請求項4】
構造物の基礎として土壌中に埋設され、且つ
請求項1乃至3の何れかに記載の前記ソイルセメントパイル用芯材を内包するソイルセメントパイルであって、
地面に対して軸方向が直角で且つ全体が円柱形を呈するセメントパイル本体と、
上記セメントパイル本体の中心軸に沿って該パイル本体に埋設された上記ソイルセメントパイル用芯材と、を備えている、
ことを特徴とするソイルセメントパイル。
【請求項5】
構造物の基礎として土壌中に埋設され、且つ
請求項1乃至3の何れかに記載の前記ソイルセメントパイル用芯材を内包するソイルセメントパイルの施工方法であって、
構造物の構築が予定されている地面を含む土壌に対し、該地面に対して軸方向が直角で且つ全体が円柱形状の竪穴を掘削する第1工程と、
上記竪穴の内側にセメントミルクを充填する第2工程と、
上記セメントミルクが固化する前に、上記竪穴の中心軸に沿って上記ソイルセメントパイル用芯材を該セメントミルク内に挿入する第3工程と、を含む、
ことを特徴とするソイルセメントパイルの施工方法。
【請求項6】
前記筒金具には
前記鋼管の軸方向にスリットが形成されていることを特徴とする、請求項1~3の何れかに記載の
ソイルセメントパイル用芯材。
【請求項7】
前記筒金具が多重に
配置されていることを特徴とする請求項1に記載の
ソイルセメントパイル用芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物などの構造物の基礎として土壌中に埋設されるソイルセメントパイルに用いる芯材、および該心材を用いたソイルセメントパイル、ならびに該パイルの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の基礎として鉛直支持力を高めた鋼管ソイルセメント複合杭が提案されている。例えば、特許文献1(特開2009-114741号公報)には、棒状鋼管の長さ方向外周に所定間隔ごとに複数個の角形鋼輪を取り付けたり、複数個の山形鋼小片、溝形鋼小片、あるいは半円形鋼小片を前記所定間隔ごとに複数組で取付け、前記棒状鋼管をソイルセメント柱内の中心軸に沿って埋設した鋼管ソイルセメント複合杭が提案されている(特許文献1の
図1~
図14参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の鋼管ソイルセメント複合杭では、例えば、横揺れを含む地震に遭遇した場合、前記角形鋼輪の取付方向、または複数個の山形鋼小片、溝形鋼小片、半円形鋼小片の取付位置によっては、前記棒状鋼管とソイルセメント柱との結合強度がバラ付くため、局部的な破損を招くおそれがある。
更に、前記棒状鋼管の長さ方向外周に所定間隔ごとに複数個の山形鋼小片、溝形鋼小片、あるいは半円形鋼小片を前記所定間隔ごとに複数組ずつ配置して溶接付けするため、組立および溶接作業が繁雑で長時間を要する問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、十分な鉛直支持力を有し、且つ斜め方向を含む横方向の揺れによっても、鋼管および筒金具からなる心材とセメントパイル本体との結合力がバラ付きにくく、組立および溶接が容易且つ精度良く行えるソイルセメントパイル用芯材、およびこれを用いたソイルセメントパイル、ならびに該パイルの施工方法を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、鋼管の外周面に該鋼管よりも大径の筒金具を同軸心状にして溶接したソイルセメントパイル用芯材を用いる、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明のソイルセメントパイル用芯材は、構造物の基礎として土壌中に埋設されるソイルセメントパイルに用いる芯材であって、地面に対して軸方向が直角に配設される鋼管と、該鋼管の外周面に配置され、且つ該鋼管の外径よりも大きい内径を有する円筒状形の筒金具とを備え、該筒金具は、少なくともその上縁面と上記鋼管の外周面との間に形成された溶接部によって該鋼管の外周面に接合されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前記ソイルセメントパイル用芯材は、以下の効果(1)~(3)を奏し得る。
(1)前記ソイルセメントパイル用芯材は、鋼管の外周面に該鋼管よりも大径の筒金具が同軸心状にして溶接されているので、該芯材を中心軸に沿って埋設したソイルセメントパイルにおいては、十分な鉛直支持力はもとより、斜め方向を含む径方向の揺れを受けた場合でも、鋼管および筒金具からなる本芯材とソイルセメントパイル本体との結合力がバラ付き難くなるので、安定した支持力を長期間に亘り発揮することが可能となる。
(2)前記溶接部は、少なくとも前記鋼管の外周面と筒金具の上縁面との間に形成されているため、前記心材を地面に掘削された竪穴内に充填されたセメントミルクの中心軸付近に沿って下向きに挿入した際に、上記鋼管の外周面と筒金具の内周面との間に位置する隙間内にも、上記セメントミルクが容易に進入する。その結果、前記芯材とソイルセメントパイル本体との接触面積が増大し、両者間の結合力をより高められるため、前記効果(1)を一層高めることが可能となる。
(3)前記筒金具を前記鋼管の外周側に挿通し、両者を同軸心状に保持した状態で、少なくとも上記筒金具の上縁面と鋼管の外周面との間に隅肉溶接を施すだけで、前記芯材を容易且つ迅速にして、精度良く安価に製作することができる。
【0008】
尚、前記構造物とは、戸建て住宅、小規模な集合住宅、小規模な工場や施設、境界壁、擁壁、あるいはコンクリート製の駐車場などである。
また、前記鋼管は、例えば、一般構造用炭素鋼(JIS G 3444)などの普通鋼、高強度の特殊鋼、あるいは、各種のステンレス鋼などからなり、軸方向の長さが数メートル乃至約10メートルである。
更に、前記筒金具も上記鋼管と同様な鋼種からなり、軸方向の長さが、例えば、10数cm~約70cmである。該筒金具は、上記鋼管の外周面に少なくも1個が溶接付け(溶着)されるが、前記芯材と前記セメントパイル本体との結合力を高めるため、複数個を等間隔状に溶着する形態が推奨される。
また、前記鋼管外径と前記筒金具の内径との差は、該筒金具に前記鋼管を挿入可能な最小限の隙間でも良いが、前記効果(2)を得るため、後述するように、積極(意識)的な数mm以上の幅寸法の隙間となる形態が推奨される。
加えて、前記溶接には、アーク溶接(MIG溶接またはTIG溶接)やガス溶接などが用いられ、前記鋼管と筒金具との間に隙間が位置する場合には、該筒金具の下縁面側から円筒状形または複数個のスペーサ(裏当金具)が挿入される。
【0009】
本発明の別の局面によれば、前記鋼管の外周面と前記筒金具の内周面との間には、両者の全周に沿って円筒状径の隙間が位置しており、前記溶接部は該隙間を跨いで形成されている。
上記の構成によれば、前記芯材とソイルセメントパイル本体との接触面積が増大するので、前記効果(1)、(2)を一層確実に奏することが可能となる。
【0010】
本発明の別の局面によれば、前記溶接部は、前記筒金具の上縁面における径方向で対称状となる2箇所の位置に形成されている。
上記の構成によれば、前記効果(3)をより確実に得ることができる。
尚、前記溶接部は、前記鋼管と円筒状形の筒金具との間に形成される溶接ビードである。
また、前記溶接部は、前記筒金具の上縁面における径方向で対称状となる3箇所以上の位置に互いに対称に形成した形態としても良い。
【0011】
本発明の別の局面によれば、前記鋼管は、外径が45~65mmで且つ厚みが2~5mmの範囲にあり、前記筒金具は、外径が55~80mmで且つ厚み2~5mmの範囲にある。
上記の構成によれば、例えば、一般構造用炭素鋼などの普通鋼からなる前記鋼管および筒金具によって、両者の全周間に沿って、例えば、幅が2.5~6.5mmの隙間が形成されるので、前記効果(1)乃至(3)が得易くなる。
【0012】
円筒状形の筒金具は軸方向にスリットが設けられていてもよい。
このスリットは筒金具の軸方向全長にわたってもよいし、その一部でもよい。
複数条のスリットを設けることもできる。
【0013】
筒金具を多重構造とすることができる。
これにより、鋼管から筒金具をより外側に張り出すことが可能になり、より大きな抵抗を確保しやすくなる。
筒金具を多重構造としたとき、各層を構成する筒状の部材の長さは任意に選択できる。例えば、鋼管側から見て外側の筒金具の長さを内側のそれより短くすることができる。
【0014】
一方、本発明のソイルセメントパイルは、構造物の基礎として土壌中に埋設され、且つ前記ソイルセメントパイル用芯材を内包するソイルセメントパイルであって、地面に対して軸方向が直角で且つ全体が円柱形を呈するセメントパイル本体と、該セメントパイル本体の中心軸に沿って該パイル本体に埋設された上記ソイルセメントパイル用芯材とを備えている、ことを特徴とする。
上記ソイルセメントパイルによれば、効果(1)、(2)が容易に得られる。
【0015】
更に、本発明によるソイルセメントパイルの施工方法は、構造物の基礎として土壌中に埋設され、且つ前記ソイルセメントパイル用芯材を内包するソイルセメントパイルの施工方法であって、構造物の構築が予定されている地面を含む土壌に対し、該地面に対して軸方向が直角で且つ全体が円柱形状の竪穴を掘削する第1工程と、該竪穴の内側にセメントミルクを充填する第2工程と、該セメントミルクが固化する前に、上記竪穴の中心軸に沿って上記ソイルセメントパイル用芯材を該セメントミルク内に挿入する第3工程と、を含む、ことを特徴とする。
上記ソイルセメントパイルの施工方法によれば、前記ソイルセメントパイルを確実且つ迅速で、精度良く現場にて施工できる(以下、効果(4)と称する)。
尚、前記竪穴を掘削する第1工程には、例えば、複数の羽根を放射状に突設した掘削ヘッドを有する掘削攪拌装置や、全体がドリル形状の掘削ドリルが用いられる。
また、前記セメントミルク(固化材)には、第1工程で掘削された掘削土とセメントミルクとの混合物も含まれる。
更に、前記第2工程は、前記第1工程の途中から両工程を並行して行う形態としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A)は本発明のソイルセメントパイルを示す垂直断面図、(B)は(A)中のB-B線の矢視に沿った水平断面図、(C)は(A)中の一点鎖線部分Cの部分拡大図、(D)は本発明のソイルセメントパイル用芯材の要部を示す部分斜視図である。
【
図2】(A)~(C)は前記芯材を得るための溶接付け工程を示す概略図、(D)は異なる形態の溶接部を有する前記芯材を示す水平断面図である。
【
図3】(A)~(E)は本発明のソイルセメントパイルの施工方法の各工程を示す概略図である。
【
図4】他の実施の形態のソイルセメントパイル用芯材の構成を示す平面図である。
【
図5】他の実施の形態のソイルセメントパイル用芯材の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1(A)~(D)を参照して、本発明のソイルセメントパイル用芯材1、および該芯材1を用いたソイルセメントパイル10について説明する。
上記ソイルセメントパイル10は、
図1(A)、(B)に示すように、軸方向が土壌20の地面GLに対して直角で且つ全体が円柱形状を呈する竪穴19内に埋設された該竪穴19と相似状のセメントパイル本体11と、該セメントパイル本体11内の中心軸に沿って埋設されたソイルセメントパイル用芯材1と、を備えている。
上記セメントパイル本体11は、後述するセメントミルクが固化したものであり、円形の底面12と、地面GLとほぼ面一の上面13とを有し、例えば、直径が350~600mmで且つ軸方向の長さが数メートルである。但し、これらの数値は、土壌20の性質(砂質、粘性土質、ローム地盤、シラス地盤など)に応じて適宜選定される。
【0018】
また、前記ソイルセメントパイル用芯材1は、
図1(A)~(D)に示すように、セメントパイル本体11内にその中心軸に沿って埋設され、且つ軸方向が地面GLに対して垂直に配置された長尺な鋼管2と、該鋼管2の外周面3に配置され、該鋼管2の外径D1よりも内径D3が大きい内周面8を有し、全体が円筒状形である複数個の筒金具5と、を備えている。
上記鋼管2は、例えば、STK鋼種からなり、外径D1が45~65mm、外周面3と内周面4との間の厚みt1が2~5mmである。
また、上記筒金具5も、上記同様の鋼種からなり、例えば、外径D2が55~80mm、内径D3が50~78mm、厚みt2が2~5mmであり、円環形状の上縁面6と下縁面7との間における軸方向の長さが約50mmである。
【0019】
図1(B)~(D)に示すように、前記鋼管2の外周面3と、前記筒金具5の内周面8との間には、平面視で両者の全周に沿って、全体が円筒状径の隙間9が位置している。該隙間9の径方向の幅は、約2~6mmである。即ち、複数の筒金具5と鋼管2とは、両者の中心軸が一致している。
上記筒金具5は、その上縁面6と上記鋼管2の外周面3との間において、上記隙間9を跨ぎつつ、平面視で対称となる位置ごとに形成された2箇所の溶接ビード(溶接部)wを介して、上記鋼管2の外周面3に接合されている。更に、複数個の上記筒金具5は、互いにほぼ等間隔にして、鋼管2の外周面3に接合され、それら間のピッチは、例えば、50cmである。
【0020】
図2(A)~(C)は、前記筒金具5を前記鋼管2の外周面3に対して溶接する工程の一形態を示す。先ず、
図2(A)に示すように、筒金具5を鋼管2の外周面3における所定の位置に配置する。この際、鋼管2の外周面3と筒金具5の内周面8との全周に亘って、ほぼ一定幅である円筒状形の隙間9を形成する。
次に、
図2(B)に示すように、上記隙間9内に筒金具5の下縁面7側から全体が円筒状形の裏当治具14を挿入して、該裏当治具14の上端面が筒金具5の上縁面7とほぼ面一にする。裏当治具14は、前記同様の鋼種のほか、Fe-Ni系の耐熱鋼、あるいは、Wなどの高融点金属からなり、図示のように下端側に沿って、例えば、小槌などによる打ち込みに適した太径部15を付設している。
【0021】
更に、前記状態で、
図2(C)に示すように、前記鋼管2の外周面3と前記筒金具5の上縁面6との間で且つ前記隙間9を跨いで、例えば、MIG溶接による隅肉溶接を所要長さずつ、対称な2箇所に対して施す。前記MIG溶接の消耗電極には、前記同様の鋼種からなる溶接ワイヤーが用いられる。
その結果、前記
図1(B)~(D)にて示した平面視が円弧形状である2箇所の溶接ビード(溶接部)wが対称に形成されることによって、前記筒金具5が鋼管2の外周面3に円筒状形の隙間9を挟んで接合される。
尚、前記溶接ビードwは、
図2(D)に示すように、前記鋼管2の外周面3と前記筒金具5の上縁面6との間で且つ前記隙間9を跨いで、平面視で90度ずつずれた4箇所に対して点付け状に形成したり、あるいは、互いに対称な3箇所または5箇所以上に対して、同様に形成しても良い。係る形態の場合には、いわゆる多関節式の溶接ロボットを容易に適用することが可能である。
【0022】
以下において、前記ソイルセメントパイル用芯材1を用いたソイルセメントパイル10の施工方法について、
図3(A)~(E)に沿って説明する。
先ず、
図3(A)~(C)に示すように、建物などの構造物を構築することが予定されている土壌20の地面GLに対し、例えば、掘削攪拌装置16を用いて、軸方向が前記地面GLに対して直角で且つ全体が円柱形状の竪穴18,19を掘削する第1工程S1を行う。上記掘削攪拌装置16は、回転中心であり垂直方向に長く且つ下端(先端)に円錐形の先尖部を有する掘削軸と、該掘削軸の下端側から水平(放射)方向に延び且つ下面に複数の硬質掘削チップを突設した複数の掘削翼と、該掘削翼の上側における上記掘削軸から水平方向に延び且つ該掘削軸と相対回転が可能とされた複数の共周り防止翼と、該共周り防止翼の上側における上記掘削軸から水平方向に延びた複数の攪拌翼と、を備えている。
【0023】
図示のように、前記掘削攪拌装置16を掘削軸を中心に回転させつつ、前記地面GLから土壌20内に徐々に押し込んで行くことにより、途中の竪穴18を経て所要の竪穴19を掘削することができる。この際、前記掘削翼によって掘削された土塊は、前記共周り防止翼に衝突して細かく破砕される。更に、前記掘削軸の中空部内を下向きに圧送されたポルトランドセメントと水とを混合した固化材は、該掘削軸の先端側から前記竪穴18内に吐出された後、前記共周り防止翼および攪拌翼によって、上記土塊と攪拌混合される。これによって発生した掘削土は、前記竪穴18,19の開口部から外部に順次排出される。
【0024】
次いで、
図3(D)に示すように、前記掘削攪拌装置16が除去された前記竪穴19内に、セメント粉末と水とを混合したセメントミルク11mを充填する第2工程S2を行う。尚、該セメントミルク11mを、前記固化材によって代用しても良く、係る形態による場合には、前記第1工程S1と上記第2工程S2とがほぼ同時的且つ並行的に行われる。
更に、
図3(E)に示すように、上記セメントミルク11mが固化する前に、前記竪穴19の中心軸に沿って、前記ソイルセメントパイル用芯材1を地面GL側から下向きに挿入する第3工程S3を行う。この際、前記芯材1の垂直姿勢を保つため、前記鋼管2の上端部を適宜の保持材で支持した状態とし、上記固化のために必要な養生を施す。また、上記セメントミルク11mの一部は、前記芯材1における鋼管2の外周面3と前記筒金具5の下縁面7との間から前記隙間9内にスムーズに進入した後、更に、前記溶接ビード(溶接部)wを除いた位置から上記外周面3と上縁面6との間を上方に通過して行く。
【0025】
その結果、前記セメントミルク11mが固化して円柱形状のソイルセメントパイル本体11となって、前記
図1(A)~(C)で示した前記芯材1を中心軸に沿って埋設したソイルセメントパイル10を施工することができる。
前述したように、前記ソイルセメントパイル用芯材1は、前記鋼管2の外周面3に該鋼管2よりも大径の筒金具5が同軸心状にして溶接されているので、該心材1を中心軸に沿って埋設した前記ソイルセメントパイル10においては、十分な鉛直支持力はもとより、斜め方向を含む径方向の揺れを受けても、鋼管2および複数個の筒金具5からなる芯材該1とソイルセメントパイル本体11との結合力がバラ付き難くなるので、安定した支持力を永く発揮することが可能となる。
また、前記溶接ビード(溶接部)wは、少なくとも前記鋼管2の外周面3と筒金具5の上縁面6との間の2箇所に形成されているため、前記芯材1を地面字GLに掘削された竪穴19内に充填されたセメントミルク11mの中心軸付近に沿って下向きに挿入した際に、上記鋼管2の外周面3と筒金具5の内周面8との隙間9内にも、上記セメントミルク11mがスムーズに進入して固化する。その結果、前記芯材1とソイルセメントパイル本体11との接触面積が増大するので、両者間の結合力を一層高めることが可能となる。
【0026】
更に、前記筒金具5を前記鋼管2の外周側に挿通し、両者を同軸心状に保持した状態で、少なくとも上記筒金具5の上縁面6と鋼管2の外周面3との間において隅肉溶接を施すだけで、前記芯材1を容易且つ迅速にして、精度良く安価に製作することができる。
従って、前記ソイルセメントパイル用芯材1によれば、前記効果(1)乃至(3)が得られ、且つ前記ソイルセメントパイル10によれば、前記効果(1)、(2)が容易に得られる。
更に、前記ソイルセメントパイル10の施工方法によれば、該パイル10を確実且つ迅速で、精度良く現場に施工できる前記効果(4)が得られる。
【0027】
本発明は、前述した形態に限定されるものではない。
例えば、前記芯材1の鋼管2に溶接付けする前記筒金具5は、1個のみとしたり、2個以上の複数個としても良い。
また、上記複数個の筒金具5を鋼管2に溶接付けする場合、個々の筒金具5における軸方向の長さは、前記土壌20の深い位置ほど長くし、且つ地面GL側ほど短くしても良い。
更に、上記複数個の筒金具5を鋼管2に溶接付けする場合、個々の筒金具5の厚みt2は、前記土壌20の深い位置ほど厚くし、且つ地面GL側ほど薄くしても良い。
【0028】
また、前記複数個のうち、3個以上の筒金具5を鋼管2に溶接付けする場合、該鋼管2に対して互いに溶接付けする位置間のピッチは、前記土壌20の深い位置ほど小さくし、且つ地面GL側ほど大きくしても良い。
更に、前記隙間9は、前記筒金具5に前記鋼管2を挿通するのに必要な最小限の隙間(クリアランス)としても良い。
また、前記溶接部wは、前記鋼管2の外周面3と前記筒金具5の下縁面7との間においても更に形成した形態としても良い。
更に、前記鋼管2の外周面3と前記筒金具5の溶接付けを現場において行う場合には、酸素とアセチレンガスとを混合燃焼させるガス溶接を用いても良い。
【0029】
また、前記溶接付けに際して用いる前記裏当治具14は、全体が楔形状を呈する形態のものを複数本併用しても良いし、あるいは、適度の弾性を有するセラミックファイバー(例えば、アルミナとケイ酸との混合物)などからなるブランケット状のシート材を円筒状形にした巻いたものを用いても良い。
加えて、前記ソイルセメントパイル10の施工方法における第1工程S1は、全体が螺旋形状を呈するドリルタイプの掘削装置を用いて行っても良い。この場合、土壌20に掘削した前記竪穴19における深さ方向の中間あるいは地面GL側に土留材を配設した状態で、前記セメントミルク11mを充填し、当該ミルク11mの液面レベルの上昇に応じて、上記留材を順次除去していくものとする。
本発明は、前記実施形態や上述した変形形態に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、且つ当業者が容易に想到できる範囲における種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0030】
以下この発明の他の実施の形態について説明する。
他の実施の形態の芯材101を
図4に示す。なお、
図4において
図2と同一の要素には同一の符号が付してある。この芯材101では、筒金具5の外側にそれより大径の第2の筒金具15が外挿されている。この第2の筒金具15も溶接Wにより鋼管2と筒金具5とに固定されている。筒金具5と第2の筒金具15との間には第2の隙間19が形成されている。この第2の隙間19は、筒金具5と第2の筒金具15との全周にわたった均等な幅とすることが好ましい。
なお、第2の筒金具15は筒金具5と同じ長さ(軸方向)とすることが好ましいが、それに限定されるものでない。例えば、第2の筒金具15を筒金具5より短くすることができる。両者のその上縁において溶接Wにより固定されるものとする。
【0031】
図5に他の実施系他の芯材201を示す。なお、
図5において
図2と同一の要素には同一の符号が付してある。この芯材201では、筒金具5に軸方方向のスリット203が設けられる。
このスリット203を設けることで、筒金具5を鋼管2へ固定する作業が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、十分な鉛直支持力を有し、且つ斜め方向を含む横方向の揺れによっても、鋼管および筒金具からなる心材とセメントパイル本体との結合力がバラ付きにくいと共に、組立および溶接が容易且つ精度良く行えるソイルセメントパイル用芯材、およびこれを用いたソイルセメントパイル、ならびに該パイルの施工方法を提供できる。
【符号の説明】
【0033】
1,101,102 ソイルセメントパイル用芯材
2 鋼管
3 外周面
5 筒金具
6 上縁面
8 内周面
9 隙間
10 ソイルセメントパイル
11 セメントパイル本体
11m セメントミルク
19 竪穴
20 土壌
D1,D2 外径
D3 内径
t1,t2 厚み
GL 地面
w 溶接ビード(溶接部)
S1~S3 第1~第3工程