(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】把持器具、及び、把持器具を用いた直線移動機構
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020087277
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-05-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503452421
【氏名又は名称】株式会社ウェザーコック
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】山本 真裕
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-172378(JP,A)
【文献】特開2009-023067(JP,A)
【文献】特開平06-190768(JP,A)
【文献】特開昭63-007289(JP,A)
【文献】特開昭63-257472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0151761(US,A1)
【文献】特開2018-151437(JP,A)
【文献】特開2007-4529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒を自在に把持すること及び把持を解除することができる把持器具であって、
柔軟性を有する筒状の狭窄部材と、
前記狭窄部材の外周面を覆う、筒状の外周部材と、
前記外周部材の軸方向における両端部のそれぞれにおいて前記狭窄部材と前記外周部材との間に設けられた、前記狭窄部材と前記外周部材とを離間させるための筒状のスペーサー部材と、
を備え、
前
記両端部のそれぞれにおいて、前記狭窄部材の外周面は
前記スペーサー部材の内周面に密着されてあり、前記スペーサー部材の外周面は前記外周部材の内周面に密着されてあり、それによって、前記両端部の間の中間部において前記狭窄部材の外周面と前記外周部材の内周面との間に形成される筒状の空間の両端が封鎖されてあり、
前記中間部において、前記外周部材の外周面に、前記空間に連通する孔を有し、
前期狭窄部材に前記棒を、前記軸方向と前記棒の長手方向とが一致するように貫通させた状態において、流体を前記孔から前記空間に流入させることによって、前記流体の圧力によって前記狭窄部材が狭窄して前記狭窄部材の内周面が前記棒の外周面に当接し、前記狭窄部材の内周面と前記棒の外周面との間に生ずる摩擦力によって前記棒を把持し、
前記空間の前記流体を前記孔から流出させることによって、前記狭窄部材の狭窄が解消して把持を解除
し、
前記スペーサー部材の内周面は前記狭窄部材に覆われてあり、前期狭窄部材に貫通させた前記棒が前記スペーサー部材に当接することがないように構成された、
把持器具。
【請求項2】
前記流体は、圧縮空気である、請求項1に記載の把持器具。
【請求項3】
前記狭窄部材は、ゴム管である、請求項1又は請求項2に記載の把持器具。
【請求項4】
前記外周部材は、把持器具を他の部材に取り付けるためのフランジを有する、請求項1から
請求項3までのいずれかに記載の把持器具。
【請求項5】
請求項1から
請求項4までのいずれかに記載の把持器具である第1の把持器具を備えた、第1の支持部材と、
請求項1から
請求項4までのいずれかに記載の把持器具である第2の把持器具を備えた、第2の支持部材と、
前記第1の把持器具及び前記第2の把持器具を貫通する、棒と、
を備え、
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを、前記棒の長手方向に相対的に往復移動させながら、前記第1の把持器具及び前記第2の把持器具のそれぞれに対する前記流体の流入及び流出を制御して、前記棒を、随時、前記第1の把持器具で把持することによって前記第1の支持部材に係合させて移動させ、又は前記第2の把持器具で把持することによって前記第2の支持部材に係合させて移動させ、それによって、前記棒を長手方向に移動させる、
直線移動機構。
【請求項6】
請求項5に記載の直線移動機構を備えた装置であって、前記第1の支持部材は前記装置に対して固定され、
前記第2の支持部材を前記棒の長手方向に往復移動させる、支持部材駆動手段と、
前記流体の流入及び流出を駆動する、流体駆動手段と、
を備えた、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒を自在に把持すること及び把持を解除することができる把持器具に関する。より具体的には、本発明は、圧縮空気などの流体を流入させることによって、柔軟性を有する筒状の部材を狭窄させ、それによって、把持器具に貫通させた棒を把持する把持器具に関する。
【0002】
さらに、本発明は、直線移動機構に関する。より具体的には、本発明は、把持器具を用いて、それぞれ静止又は往復移動する複数の支持部材への係合を切り替えることによって、棒状の部材をその長手方向に直線移動する機構に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、それぞれ静止又は往復移動する複数の支持部材への係合を切り替えることによって、棒状の部材をその長手方向に直線移動する機構が知られている。例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2005/0151761号明細書)には、クラッチ機構によって選択的にピンを不動プレート又は可動プレートに固定し、可動プレートを移動させることによってピンを所望の位置に移動させる直線移動機構を含む装置が開示されている。クラッチ機構として、具体的には、縦横のバーを用いた機構(段落0036-0039、FIG.5)、低融点の金属を加熱して融解したり冷却して固化したりすることによる機構(段落0040-0041、FIG.6)、及び、形状記憶ワイヤを用いた機構(段落0042-0044、FIG.7)が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2018-151437号公報)には、把持機構によって選択的にロッドを不動支持部材又は可動支持部材に固定し、可動支持部材を移動させることによって、ロッドを所望の位置に移動させる直線移動機構を含む装置が開示されている。把持機構として、具体的には、ねじりばね及びソレノイドを用いた機構(段落0046-0055、
図9-10)が開示されている。
【0005】
特許文献3(特開2007-4529号公報)には、2つの直交する方向に整列された膨張可能な流体チューブによってロッドをロックする機構(請求項14-16、
図1)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2005/0151761号明細書
【文献】特開2018-151437号公報
【文献】特開2007-4529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に開示されている従来の直線移動機構が備えるクラッチ機構又は把持機構は、動力によって動かす部分や、熱によって融かす部分を含む、比較的複雑なものであった。そこで、本発明においては、より簡単かつ堅牢な構造の把持器具を提供する。また、特許文献3に開示されている機構は、流体を用いたものであるが、2次元に配列されたロッドの列又は行に対してロックをするものであるため、個別のロッドを自由にロックすることができない。そこで、本発明においては、個別の棒を自在に把持すること及び把持を解除することができる把持器具を提供する。さらに、本発明においては、かかる把持器具を用いた直線移動機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一態様において、棒を自在に把持すること及び把持を解除することができる把持器具を提供する。把持器具は、柔軟性を有する筒状の狭窄部材と、狭窄部材の外周面を覆う筒状の外周部材とを備える。外周部材の軸方向における両端部のそれぞれにおいて、狭窄部材の外周面は外周部材の内周面に密着され、それによって、両端部の間の中間部において狭窄部材の外周面と外周部材の内周面との間に形成される筒状の空間の両端が封鎖されている。中間部において、外周部材の外周面に、空間に連通する孔を有する。狭窄部材に棒を、軸方向と棒の長手方向とが一致するように貫通させた状態において、流体を孔から空間に流入させることによって、流体の圧力によって狭窄部材が狭窄して狭窄部材の内周面が棒の外周面に当接し、狭窄部材の内周面と棒の外周面との間に生ずる摩擦力によって、棒を把持する。空間の流体を孔から流出させることによって、狭窄部材の狭窄が解消して把持を解除する。
【0009】
一実施形態において、把持器具の空間に流入させる流体は、圧縮空気である。
【0010】
一実施形態において、把持器具が備える狭窄部材は、ゴム管である
【0011】
一実施形態において、把持器具は、両端部のそれぞれにおいて、狭窄部材と外周部材との間に、狭窄部材と外周部材とを中間部において離間させるための筒状のスペーサー部材をさらに備える。狭窄部材の外周面はスペーサー部材を介して外周部材の内周面に密着される。
【0012】
一実施形態において、把持器具の外周部材は、把持器具を他の部材に取り付けるためのフランジを有する。
【0013】
本発明は、その一態様において、直線移動機構を提供する。直線移動機構は、第1の把持器具を備えた第1の支持部材と、第2の把持器具を備えた第2の支持部材と、第1の把持器具及び第2の把持器具を貫通する棒とを備える。第1の支持部材と第2の支持部材とを、棒の長手方向に相対的に往復移動させながら、第1の把持器具及び第2の把持器具のそれぞれに対する流体の流入及び流出を制御して、棒を、随時、第1の把持器具で把持することによって第1の支持部材に係合させて移動させ、又は第2の把持器具で把持することによって第2の支持部材に係合させて移動させ、それによって、棒を長手方向に移動させる。
【0014】
本発明は、その一態様において、直線移動機構を備えた装置を提供する。直線移動機構の第1の支持部材は、装置に対して固定される。装置は、直線移動機構の第2の支持部材を棒の長手方向に往復移動させる支持部材駆動手段と、流体の流入及び流出を駆動する流体駆動手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による把持器具を3方向から見た図である。
【
図2】本発明の一実施形態による把持器具の断面図である。(a)は棒を解放した状態を表し、(b)は棒を把持した状態を表す。
【
図3】本発明の実施形態による直線移動機構を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態を例示し、詳細に説明する。本発明は、これらの例示された実施形態に限定されるものではない。さらに、例示された実施形態においても、各部の寸法の比率は図面に示された通りに限られず、発明の効果を奏する範囲において様々な変形が考えられる。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による把持器具1を3方向から見た図である。把持器具1は、筒状の外周部材11と、柔軟性を有する筒状の狭窄部材12とを備える。外周部材11の外周面は、孔21を有する。把持器具1は、外周部材11と狭窄部材12との間に、筒状のスペーサー部材13a及び13b(
図2を参照されたい)を備えることが好ましい。また、把持器具1は、取り付け用のフランジ14を外周部材11に有することが好ましい。
【0018】
図2は、棒3を貫通させた状態の把持器具1の断面図である。(a)は把持器具1が棒3を把持していない状態を表し、(b)は把持器具1が棒を把持している状態を表す。
【0019】
把持器具1は、
図2における上下方向の両端部のそれぞれにおいて、狭窄部材12と外周部材11との間に、狭窄部材12と外周部材11とを両端部の間の中間部において離間させるための筒状のスペーサー部材13a、13bを備える。外周部材11の内周面とスペーサー部材13a、13bの外周面との間、及び、スペーサー部材13a、13bの内周面と狭窄部材12の外周面との間は、接着剤で接着してある。即ち、狭窄部材12の外周面はスペーサー部材13a、13bを介して外周部材11の内周面に密着している。別の一実施形態においては、両端部のそれぞれにおいて、スペーサー部材13a及び13bを用いすに、外周部材11の内周面と狭窄部材12の外周面とを直接接着してある。どちらの実施形態においても、空間22に流入させた流体が上端部又は下端部から漏出しないように封鎖するために、上端部及び下端部のそれぞれについて全周にわたって密着させてある。
【0020】
(a)に示すように把持器具1が棒3を把持していない状態において、流体を孔21から空間22に流入させて圧力を加えると、(b)に示すように、両端部の間の中間部において、狭窄部材12が狭窄して、狭窄部材12の内周面が棒3の外周面に当接する。すると、中間部において狭窄部材12を囲う流体の圧力によって、狭窄部材12の内周面と棒3の外周面との間に、棒3の長手方向の移動に抗する摩擦力が生じ、これによって棒3は把持される。
【0021】
(b)に示すように把持器具1が棒を把持している状態において、空間22の流体を孔21から流出させると、狭窄部材12の狭窄が解除されて、(a)に示す状態に戻り、棒の把持が解除される。
【0022】
一実施形態おいては、流体は、例えば、圧縮空気とすることができる。この場合において、空間22に圧縮空気を流入させるためには、例えば、コンプレッサ(図示せず)を用いて圧縮した空気を、コンプレッサと孔21とを接続する管(図示せず)を介して流入させるようにすれば良い。また、空間22から圧縮空気を流出させるためには、例えば、菅に設けられた弁(図示せず)を開放して、そこから圧縮空気を逃がすようにすれば良い。別の一実施形態においては、流体は、例えば、水とすることができる。
【0023】
把持器具1で把持される棒3は、中実の棒であっても良いし、中空の棒であっても良く、端部が開放したパイプであっても差し支えない。棒3は、その外周面において狭窄部材12からの摩擦力を均一に受けるという観点では円柱又は円筒の形状であることが好ましいが、これに限らず、例えば楕円柱や六角柱、螺旋形状など他の形状であっても良い。
【0024】
狭窄部材12は、周囲の流体の圧力に応じて柔軟に狭窄し、かつ、棒3との間に適正な摩擦力を生ずるものであれば良い。一実施形態においては、狭窄部材12は、例えば、ゴム管とすることができる。
【0025】
外周部材11は、金属または硬質プラスチックなど、内部の流体に圧力を加えても容易に変形しない材質のものが好ましい。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態による直線移動機構4を表す。支持部材41a、41bは、それぞれ、把持器具1を備え、棒3が2つの把持器具1の両方を貫通して配備される。支持部材41a、41bは、棒3の長手方向に相対的に往復移動できるように構成される。
【0027】
支持部材41aと支持部材41bとを、棒の長手方向に相対的に往復移動させながら、支持部材41aの把持器具1及び支持部材41bの把持器具1のそれぞれに対する流体の流入及び流出を制御して、棒3を、随時、支持部材41aの把持器具1で把持することによって支持部材41aに係合させて移動させ、又は、支持部材41bの把持器具1で把持することによって支持部材41bに係合させて移動させ、それによって、棒3を長手方向に移動させることができる。例えば、棒3を
図3における上向きに移動させるためには、支持部材41bが支持部材41aから離れる向きに移動している時には、棒3を支持部材41bに係合させ、支持部材41bが支持部材41aに近づく向きに移動している時には、棒3を支持部材41aに係合させるようにすれば良い。これを繰り返すことによって、棒3を、支持部材41a、41bの往復移動の振幅を超える長さにわたって移動させることもできる。
【0028】
一例として、直線移動機構4を備える装置(図示せず)においては、支持部材41a、41bのうち一方を装置に固定し、他方を装置が備える支持部材駆動手段によって往復移動させるようにすることができる。さらに、装置が備える流体駆動手段によって、流体の流入及び流出を駆動するようにすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 把持器具
11 外周部材
12 狭窄部材
13a、13b スペーサー部材
14 フランジ
21 孔
22 空間
3 棒
4 直線移動機構
41a、41b 支持部材