(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】圧電素子接続構造、車両、及び圧電素子接続方法
(51)【国際特許分類】
H10N 30/87 20230101AFI20240112BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20240112BHJP
【FI】
H10N30/87
H10N30/88
(21)【出願番号】P 2020090640
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】小池 努
(72)【発明者】
【氏名】山中 潤
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-191007(JP,A)
【文献】特開2001-149834(JP,A)
【文献】特開2002-022762(JP,A)
【文献】米国特許第06000679(US,A)
【文献】特開昭53-092668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0184802(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0074426(US,A1)
【文献】特開2002-044771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/87
H10N 30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の設置領域を有する本体部と、
底面を有し、前記基板の設置領域と対向するように前記本体部と固定接続される筐体と、
前記底面に設置される圧電素子と、
前記圧電素子から前記基板の設置領域に向かって延伸し、前記圧電素子と前記基板とを電気的に接続す
るコイルワイヤと、
を備え
、
前記コイルワイヤは、撓まない直線部分と巻き線形状部分とを有する圧電素子接続構造。
【請求項2】
前記コイルワイヤの端部を案内するすり鉢形状の開口部が形成されたワイヤガイドを更に備える請求項1に記載の圧電素子接続構造。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の圧電素子接続構造を備えた車両。
【請求項4】
基板の設置領域を有する本体部と固定接続される筐体の底面に固定された圧電素子から、前記基板の設置領域に向かって伸びる巻き線形状のコイルワイヤにおける前記基板の設置領域側の端部を、すり鉢形状の開口部が形成されたワイヤガイドの前記開口部の傾斜面に接触させながら前記すり鉢形状の開口部の頂部まで案内し、前記基板の設置領域まで通すステップと、
前記コイルワイヤの端部を前記基板の配線パターンに接続するステップと、
を含む圧電素子接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電素子接続構造、車両、及び圧電素子接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電素子を基板に対して電気的に接続する圧電素子接続構造が開示されている。特許文献1の圧電素子接続構造は、基板と、基板と対向する底面を有する有底の筐体と、当該底面に設置される圧電素子と、基板に接続される金属端子と、圧電素子から金属端子に向かって伸びるボンディングワイヤとを備える。特許文献1の圧電素子接続構造を組み立てる場合、まずボンディングワイヤの一端に圧電素子を接続し、ボンディングワイヤの他端に金属端子を接続する。次に、ボンディングワイヤを折り曲げるようにしながら圧電素子の面の方向を90°程度変化させ、面の方向を変化させた後の圧電素子が筐体の底面に接着剤などで接着され、最後に金属端子が基板に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、塑性変形し易いボンディングワイヤが利用されているため、圧電素子に接着されたボンディングワイヤを基板の貫通孔に挿入する際に、ボンディングワイヤが自立せずに撓んでしまう。従って、ボンディングワイヤを基板に接続するためには基板に固定される金属端子が必要になり、ボンディングワイヤに金属端子を接続する工程、基板に金属端子を接続する工程などが発生する。このように従来技術では、圧電素子を基板に接続する上で改善の余地がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、圧電素子を基板に対して容易に接続できる圧電素子接続構造、車両、及び圧電素子接続方法の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係る圧電素子接続構造は、基板の設置領域を有する本体部と、底面を有し、前記基板の設置領域と対向するように前記本体部と固定接続される筐体と、前記底面に設置される圧電素子と、前記圧電素子から前記基板の設置領域に向かって延伸し、前記圧電素子と前記基板とを電気的に接続するコイルワイヤと、を備え、前記コイルワイヤは、撓まない直線部分と巻き線形状部分とを有する。
【0008】
本開示の一実施例に係る車両は、上記の圧電素子接続構造を備える。
【0009】
本開示の一実施例に係る圧電素子接続方法は、基板の設置領域を有する本体部と固定接続される筐体の底面に固定された圧電素子から、前記基板の設置領域に向かって伸びる巻き線形状のコイルワイヤにおける前記基板の設置領域側の端部を、すり鉢形状の開口部が形成されたワイヤガイドの前記開口部の傾斜面に接触させながら前記すり鉢形状の開口部の頂部まで案内し、前記基板の設置領域まで通すステップと、前記コイルワイヤの端部を前記基板の配線パターンに接続するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施例によれば、圧電素子を基板に対して容易に接続できる圧電素子接続構造、車両、及び圧電素子接続方法を構築できる。
【0011】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施の形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施の形態に係る圧電素子接続構造100の構成例を示す図
【
図2】
図1に示す圧電素子接続構造100の部分拡大図
【
図3】本開示の実施の形態に係る圧電素子接続構造100の比較例の組み立て手順を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。以下の図において、それぞれに示される構成部材の形状、厚み、長さなどは、図面の作成上適宜変更されており、実際の構成部材の形状、厚み、長さなどと異なる。さらに、各構成部材の材質は、本実施の形態に記載される材質に限定されるものではない。
【0014】
[実施の形態]
図1は本開示の実施の形態に係る圧電素子接続構造100の構成例を示す図である。
図2は
図1に示す圧電素子接続構造100の部分拡大図である。
【0015】
圧電素子接続構造100は、樹脂製のハウジング9と、ブッシング10を介してハウジング9に固定される筐体1と、筐体1の内部に配置される圧電素子2と、圧電素子2と向き合うようにハウジング9の内部に固定され、第1の面5aと第2の面5bとを有する基板5とを備える。
【0016】
また、圧電素子接続構造100は、基板5に固定される2つのワイヤガイド7,8と、圧電素子2からワイヤガイド7に向かって伸びるコイルワイヤ3と、圧電素子2からワイヤガイド8に向かって伸びるコイルワイヤ4とを備える。
【0017】
コイルワイヤ3は、螺旋状のコイル部3aと、コイル部3aの一端に接続されている端子部3bと、コイル部3aの他端に接続されている端子部3cとを備える。
【0018】
端子部3bは、ワイヤガイド7に挿入されると共に、基板5上の配線パターンと電気的に接続される。
【0019】
ワイヤガイド7は、基板5に形成される貫通孔5cに挿入されることにより、圧電素子2と向き合う基板5の第2の面5b側に設置される。ワイヤガイド7は、基板5から圧電素子2に向かう方向に対して内径が拡大するすり鉢状の開口部を有する円錐状の部材である。ワイヤガイド7の材料は、例えば絶縁性の樹脂である。なお、ワイヤガイド7の材料は、これらに限定されず、例えば樹脂以外の不導体でもよい。
【0020】
端子部3cは、圧電素子2の正極側電極に対して溶接などによって接続される。
【0021】
コイルワイヤ3の材料には、例えばリン青銅線、ステンレス鋼線、ピアノ線、硬鋼線などが利用される。
【0022】
コイルワイヤ4は、螺旋状のコイル部4aと、コイル部4aの一端に接続されている端子部4bと、コイル部4aの他端に接続されている端子部4cとを備える。
【0023】
端子部4bは、ワイヤガイド8に挿入されると共に、基板5上の配線パターンと電気的に接続される。
【0024】
ワイヤガイド8は、ワイヤガイド7と同様に、基板5に形成される貫通孔5cに挿入されることにより、圧電素子2と向き合う基板5の第2の面5b側に設置される。ワイヤガイド8は、基板5から圧電素子2に向かう方向に対して内径が拡大するすり鉢状の内周面を有する円錐状の部材である。ワイヤガイド8には、ワイヤガイド7の材料と同様の材料が利用される。なお、ワイヤガイド7、8の形状は、円錐形状に限定されず、コイルワイヤ3、4を案内する機能が生じる形状であればよい。
【0025】
端子部4cは、接続部材1bに対して溶接などによって接続される。接続部材1bは、筐体1の内側に形成される導電性の部材であり、端子部4cを圧電素子2の負極側電極に対して電気的に接続する。
【0026】
コイルワイヤ4には、コイルワイヤ3の材料と同様の材料が利用される。
【0027】
次に、圧電素子接続構造100の組み立て方法について説明する。基板5がハウジング9の内側の壁面に固定される。
【0028】
次に、基板5の第2の面5b側にワイヤガイド7及びワイヤガイド8を配置して、基板5の貫通孔5cに向けて、ワイヤガイド7及びワイヤガイド8を圧入する。これにより、基板5にワイヤガイド7及びワイヤガイド8が固定される。なおワイヤガイド7、8は、例えばリブを介してハウジング9に接続されていても良い。
【0029】
次に、筐体1の底面1aに圧電素子2が固定される。圧電素子2の固定には例えば接着剤が利用される。
【0030】
次に、コイルワイヤ3の端子部3cが圧電素子2に対して溶接などで接続される。またコイルワイヤ4の端子部4cが接続部材1bに対して溶接などで接続される。このとき、コイルワイヤ3の端子部3bは、圧電素子2に対して垂直な方向に延伸するように設置される。また、コイルワイヤ4の端子部4bは、圧電素子2に対して垂直な方向に延伸するように設置される。
【0031】
次に、コイルワイヤ3の端子部3bがワイヤガイド7の開口部と向き合い、かつ、コイルワイヤ4の端子部4bがワイヤガイド8の開口部と向き合うようにしながら、ハウジング9に筐体1が嵌め込まれる。
【0032】
このとき、コイルワイヤ3の端子部3bがワイヤガイド7の開口部の傾斜面に接触しながらワイヤガイド7のすり鉢状の開口部の頂部まで案内され、さらにワイヤガイド7の中心に形成される貫通孔を通り、基板の第1の面5a側に達する。同様に、コイルワイヤ4の端子部4bがワイヤガイド8の開口部の傾斜面に接触しながらワイヤガイド8のすり鉢状の開口部の頂部まで案内され、さらにワイヤガイド8の中心に形成される貫通孔を通り、基板の第1の面5a側に達する。
【0033】
基板の第1の面5a側に達した端子部3b及び端子部4bは、半田付けによって、基板5上の配線パターンと電気的に接続される。
【0034】
図3は本開示の実施の形態に係る圧電素子接続構造100の比較例の組み立て手順を説明するための図である。
【0035】
比較例に係る圧電素子接続構造100Aを製造する場合、まず、圧電素子2にワイヤ20の一端が接続される。ワイヤ20は、ボンディングワイヤなどである。ワイヤ20の他端は金属端子21の導体22に接続される。
【0036】
次に、ワイヤ20を折り曲げるようにしながら圧電素子2の面の方向を90°変化させて、圧電素子2を筐体1の底面1aに接着剤などで接着する。さらに、金属端子21をハウジング9内の基板に固定する。
【0037】
圧電素子接続構造100Aでは、塑性変形し易いボンディングワイヤが利用されているため、圧電素子2に接続されたワイヤ20が垂直方向に自立せずに撓んでしまう。そのため、予め金属端子21をワイヤ20に接続した上で、金属端子21をハウジング9内の基板に接続するという工程を経ることによって、圧電素子2を基板に接続している。
【0038】
このように、金属端子21をワイヤ20に接続する工程が必要なため、圧電素子接続構造100Aの構造が複雑になる。また、金属端子21をハウジング9内の基板に固定する必要がある。
【0039】
これに対して本実施の形態に係る圧電素子接続構造100では、螺旋状に形成されたコイルワイヤ3が利用されているため、コイルワイヤ3の基板5への接続の際、コイルワイヤ3に対して、コイルワイヤ3の軸方向と直交する方向への応力が加わった場合でも、コイルワイヤ3の復元力によってコイルワイヤ3全体が塑性変形し難くなる。またコイルワイヤ3にバネ材を使用することで、材料特性として塑性変形しづらくなる。
【0040】
そのため、圧電素子2に対して垂直に設けられたコイルワイヤ3が撓むことを抑制しながら、ワイヤガイド7に対してコイルワイヤ3を容易に挿入でき、基板5に接続させることができる。コイルワイヤ4も同様である。
【0041】
これにより、前述した金属端子21に相当する部品を用意して、それをコイルワイヤ3に接続する工程が不要になり、圧電素子接続構造100の構造が簡素化される。
【0042】
また金属端子21が不要になるため、コイルワイヤ3を金属端子21に相当する部品に溶接する工程が不要になり、圧電素子接続構造100の組み立て時間を短縮できると共に、溶接箇所が少なくなることで、圧電素子接続構造100の信頼性が向上する。
【0043】
また、ワイヤガイド7を用いることによって、それを使わずにコイルワイヤ3を基板5の貫通孔5cに挿入する場合に比べて、コイルワイヤ3の基板5への接続作業が容易になる。
【0044】
また、ワイヤガイド7を利用することで、コイルワイヤ3が垂直方向に対して僅かに傾斜している場合でも、コイルワイヤ3を基板5に容易に接続することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、コイルワイヤ3及びコイルワイヤ4と、ワイヤガイド7及びワイヤガイド8とを備えた圧電素子接続構造100について説明したが、圧電素子接続構造100の構成例はこれに限定されるものではない。
【0046】
例えば、圧電素子接続構造100は、ワイヤガイド7及びワイヤガイド8を用いることなく、コイルワイヤ3及びコイルワイヤ4を直接基板5に接続するように構成してもよい。
【0047】
このように構成した場合、コイルワイヤ3及びコイルワイヤ4に、これらの軸方向と直交する方向への応力が加わったときに、コイルワイヤ3及びコイルワイヤ4の復元力により、コイルワイヤ3及びコイルワイヤ4が塑性変形し難くなるため、基板5への接続が容易になる。この場合、コイルワイヤ3及びコイルワイヤ4は、基板5に形成される貫通孔5cに挿入される。
【0048】
また、圧電素子接続構造100は、コイルワイヤ3及びコイルワイヤ4の代わりに、直線状又はクランク状のワイヤを、ワイヤガイド7及びワイヤガイド8に挿入するように構成してもよい。
【0049】
このように構成した場合、直線状のワイヤが垂直方向に対して僅かに傾斜しても、ワイヤを基板5に案内できるため、基板5への接続が容易になる。また、コイルワイヤ3及びコイルワイヤ4を用いることにより、圧電素子2で発生する振動がコイルワイヤ3及びコイルワイヤ4で吸収されるため、圧電素子2で発生する振動が基板5へ伝達することを防止できる。
【0050】
例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
(1)圧電素子接続構造は、基板の設置領域を有する本体部と、底面を有し、前記基板の設置領域と対向するように前記本体部と固定接続される筐体と、前記底面に設置される圧電素子と、前記圧電素子から前記基板の設置領域に向かって延伸し、前記圧電素子と前記基板とを電気的に接続する巻き線形状のコイルワイヤと、を備える。
【0052】
(2)圧電素子接続構造は、前記コイルワイヤの端部を案内するすり鉢形状の開口部が形成されたワイヤガイドを更に備える。
【0053】
(3)圧電素子接続構造は、基板の設置領域を有する本体部と、底面を有し、前記基板の設置領域と対向するように前記本体部と固定接続される筐体と、基板の設置領域と対向する底面を有する筐体と、前記底面に設置される圧電素子と、前記圧電素子から前記基板の設置領域に向かって延伸し、前記圧電素子と前記基板とを電気的に接続するワイヤと、前記コイルの端部を案内するすり鉢形状の開口部が形成されたワイヤガイドと、を備える。
【0054】
(4)前記ワイヤは、巻き線形状のコイルワイヤである。
【0055】
(5)車両は、上記の圧電素子接続構造を備える。
【0056】
(6)圧電素子接続方法は、基板の設置領域を有する本体部と固定接続される筐体の底面に固定された圧電素子から、前記基板の設置領域に向かって伸びる巻き線形状のコイルワイヤにおける前記基板の設置領域側の端部を、すり鉢形状の開口部が形成されたワイヤガイドの前記開口部の傾斜面に接触させながら前記すり鉢形状の開口部の頂部まで案内し、前記基板の設置領域まで通すステップと、前記コイルワイヤの端部を前記基板の配線パターンに接続するステップと、を含む。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示の一実施例は、圧電素子接続構造及び車両に好適である。
【符号の説明】
【0058】
1 :筐体
1a :底面
1b :接続部材
2 :圧電素子
3 :コイルワイヤ
3a :コイル部
3b :端子部
3c :端子部
4 :コイルワイヤ
4a :コイル部
4b :端子部
4c :端子部
5 :基板
5a :面(第1の面)
5b :面(第2の面)
5c :貫通孔
7 :ワイヤガイド
8 :ワイヤガイド
9 :ハウジング
10 :ブッシング
20 :ワイヤ
21 :金属端子
22 :導体
100 :圧電素子接続構造
100A :圧電素子接続構造