(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池の巻回型電極体、及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20240112BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240112BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240112BHJP
H01M 50/595 20210101ALI20240112BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/13
H01M50/586
H01M50/595
(21)【出願番号】P 2020511639
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007178
(87)【国際公開番号】W WO2019193870
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2018074103
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 肇
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 康博
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 鷹則
【審査官】村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-138729(JP,A)
【文献】国際公開第2016/116971(WO,A1)
【文献】特開2004-311282(JP,A)
【文献】特開2013-048027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 4/13
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の第1極と、長尺状の第2極とがセパレータを挟んで巻回された非水電解質二次電池の巻回型電極体であって、
前記第1極が、長尺状の第1極芯体と、その第1極芯体の内側面に設けられる第1極内側合材層と、前記第1極芯体の外側面に設けられる第1極外側合材層とを有する一方、前記第2極は、長尺状の第2極芯体と、その第2極芯体の内側面に設けられる第2極内側合材層と、前記第2極芯体の外側面に設けられる第2極外側合材層とを有し、
前記第1極は、巻き始め端及び巻き終わり端の両方に巻回方向に間隔をおいて位置すると共に、前記第1極芯体が露出して第1極リードが電気的に接続される第1極芯体露出部を有し、
前記第1極芯体露出部よりも前記巻回方向の巻き始め側の巻き始め領域に関し、前記第1極内側合材層及び前記第1極外側合材層の夫々の前記巻回方向の単位長さあたりの第1極合材量である第1極合材単位量は、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、
前記第2極内側合材層及び前記第2極外側合材層の夫々の前記巻回方向の単位長さあたりの第2極合材量である第2極合材単位量は、前記巻き始め領域に前記セパレータを介して対向する巻き始め対向領域に関し、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記第1極芯体露出部が存在する前記巻回方向の範囲を除く2以上の前記巻回方向の位置で前記第1極合材単位量が異なり、
前記第2極内側合材層、及び前記第2極外側合材層の夫々は、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって前記第2極合材単位量が変動する変動部を有し、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記巻き始め領域における前記第1極合材単位量である第1極巻き始め合材単位量が前記巻回方向の位置によらず略一定である一方、前記第1極芯体露出部よりも前記巻き終わり側の巻き終わり領域における前記第1極合材単位量である第1極巻き終わり合材単位量が、前記巻回方向の位置によらず略一定であると共に、前記第1極巻き始め合材単位量よりも大きくなっており、
前記第2極内側合材層、及び前記第2極外側合材層の夫々は、前記巻き始め対向領域における前記第2極合材単位量である第2極巻き始め合材単位量が前記巻回方向の位置によらず略一定である一方、前記巻き終わり領域に前記セパレータを介して対向する巻き終わり対向領域における前記第2極合材単位量である第2極巻き終わり合材単位量が前記巻回方向の位置によらず略一定であると共に前記第2極巻き始め合材単位量よりも大きくなっており、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記第1極合材単位量が前記第1極芯体露出部を境に変動している、巻回型電極体。
【請求項2】
長尺状の第1極と、長尺状の第2極とがセパレータを挟んで巻回された非水電解質二次電池の巻回型電極体であって、
前記第1極が、長尺状の第1極芯体と、その第1極芯体の内側面に設けられる第1極内側合材層と、前記第1極芯体の外側面に設けられる第1極外側合材層とを有する一方、前記第2極は、長尺状の第2極芯体と、その第2極芯体の内側面に設けられる第2極内側合材層と、前記第2極芯体の外側面に設けられる第2極外側合材層とを有し、
前記第1極は、巻き始め端及び巻き終わり端の両方に巻回方向に間隔をおいて位置すると共に、前記第1極芯体が露出して第1極リードが電気的に接続される第1極芯体露出部を有し、
前記第1極芯体露出部よりも前記巻回方向の巻き始め側の巻き始め領域に関し、前記第1極内側合材層及び前記第1極外側合材層の夫々の前記巻回方向の単位長さあたりの第1極合材量である第1極合材単位量は、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、
前記第2極内側合材層及び前記第2極外側合材層の夫々の前記巻回方向の単位長さあたりの第2極合材量である第2極合材単位量は、前記巻き始め領域に前記セパレータを介して対向する巻き始め対向領域に関し、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記第1極芯体露出部が存在する前記巻回方向の範囲を除く2以上の前記巻回方向の位置で前記第1極合材単位量が異なり、
前記第2極内側合材層、及び前記第2極外側合材層の夫々は、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって前記第2極合材単位量が変動する変動部を有し、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記巻き始め領域における前記第1極合材単位量である第1極巻き始め合材単位量が前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなっており、
前記第2極内側合材層、及び前記第2極外側合材層の夫々は、前記巻き始め対向領域における前記第2極合材単位量である第2極巻き始め合材単位量が前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなっており、
前記
第1極芯体露出部よりも前記巻き終わり側の巻き終わり領域における前記第1極合材単位量である第1極巻き終わり合材単位量が、前記巻回方向の位置によらず略一定であると共に、前記第1極巻き始め合材単位量の最大値以上であり、
前記巻き終わり領域に前記セパレータを介して対向する巻き終わり対向領域における前記第2極合材単位量である第2極巻き終わり合材単位量が、前記巻回方向の位置によらず略一定であると共に、前記第2極巻き始め合材単位量の最大値以上であり、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記第1極合材単位量が前記第1極芯体露出部を境に増大から一定に変化する、巻回型電極体。
【請求項3】
長尺状の第1極と、長尺状の第2極とがセパレータを挟んで巻回された非水電解質二次電池の巻回型電極体であって、
前記第1極が、長尺状の第1極芯体と、その第1極芯体の内側面に設けられる第1極内側合材層と、前記第1極芯体の外側面に設けられる第1極外側合材層とを有する一方、前記第2極は、長尺状の第2極芯体と、その第2極芯体の内側面に設けられる第2極内側合材層と、前記第2極芯体の外側面に設けられる第2極外側合材層とを有し、
前記第1極は、巻き始め端及び巻き終わり端の両方に巻回方向に間隔をおいて位置すると共に、前記第1極芯体が露出して第1極リードが電気的に接続される第1極芯体露出部を有し、
前記第1極芯体露出部よりも前記巻回方向の巻き始め側の巻き始め領域に関し、前記第1極内側合材層及び前記第1極外側合材層の夫々の前記巻回方向の単位長さあたりの第1極合材量である第1極合材単位量は、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、
前記第2極内側合材層及び前記第2極外側合材層の夫々の前記巻回方向の単位長さあたりの第2極合材量である第2極合材単位量は、前記巻き始め領域に前記セパレータを介して対向する巻き始め対向領域に関し、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記第1極芯体露出部が存在する前記巻回方向の範囲を除く2以上の前記巻回方向の位置で前記第1極合材単位量が異なり、
前記第2極内側合材層、及び前記第2極外側合材層の夫々は、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって前記第2極合材単位量が変動する変動部を有し、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記巻き始め領域における前記第1極合材単位量である第1極巻き始め合材単位量が前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなっており、
前記第2極内側合材層、及び前記第2極外側合材層の夫々は、前記巻き始め対向領域における前記第2極合材単位量である第2極巻き始め合材単位量が前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなっており、
前記
第1極芯体露出部よりも前記巻き終わり側の巻き終わり領域における前記第1極合材単位量である第1極巻き終わり合材単位量が、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなっていると共に、前記第1極巻き始め合材単位量の最大値以上であり、
前記巻き終わり領域に前記セパレータを介して対向する巻き終わり対向領域における前記第2極合材単位量である第2極巻き終わり合材単位量が、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなっていると共に、前記第2極巻き始め合材単位量の最大値以上であり、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記第1極合材単位量における前記第1極芯体露出部よりも前記巻き始め側の最大値が、前記第1極合材単位量における前記第1極芯体露出部よりも前記巻き終わり側の最小値と略同一になっている、巻回型電極体。
【請求項4】
長尺状の第1極と、長尺状の第2極とがセパレータを挟んで巻回された非水電解質二次電池の巻回型電極体であって、
前記第1極が、長尺状の第1極芯体と、その第1極芯体の内側面に設けられる第1極内側合材層と、前記第1極芯体の外側面に設けられる第1極外側合材層とを有する一方、前記第2極は、長尺状の第2極芯体と、その第2極芯体の内側面に設けられる第2極内側合材層と、前記第2極芯体の外側面に設けられる第2極外側合材層とを有し、
前記第1極は、巻き始め端及び巻き終わり端の両方に巻回方向に間隔をおいて位置すると共に、前記第1極芯体が露出して第1極リードが電気的に接続される第1極芯体露出部を有し、
前記第1極芯体露出部よりも前記巻回方向の巻き始め側の巻き始め領域に関し、前記第1極内側合材層及び前記第1極外側合材層の夫々の前記巻回方向の単位長さあたりの第1極合材量である第1極合材単位量は、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、
前記第2極内側合材層及び前記第2極外側合材層の夫々の前記巻回方向の単位長さあたりの第2極合材量である第2極合材単位量は、前記巻き始め領域に前記セパレータを介して対向する巻き始め対向領域に関し、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、
前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々は、前記第1極芯体露出部が存在する前記巻回方向の範囲を除く2以上の前記巻回方向の位置で前記第1極合材単位量が異なり、
前記第2極内側合材層、及び前記第2極外側合材層の夫々は、前記巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって前記第2極合材単位量が変動する変動部を有し、
前記第1極は、前記第1極芯体露出部よりも前記巻き始め側の前記巻き始め領域において、前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々の前記第1極合材単位量が、前記巻回方向の位置によらず略一定であり、更に、前記巻回方向の各位置において、前記第1極内側合材層の前記第1極合材単位量が、前記第1極外側合材層の前記第1極合材単位量よりも大きくなっており、
前記第1極は、前記第1極芯体露出部よりも前記巻き終わり側の前記巻き終わり領域において、前記第1極内側合材層、及び前記第1極外側合材層の夫々の前記第1極合材単位量が、前記巻回方向の位置によらず略一定であり、更に、前記巻回方向の各位置において、前記第1極内側合材層の前記第1極合材単位量が、前記第1極外側合材層の前記第1極合材単位量よりも小さくなっており、
前記第2極は、前記巻き始め端から前記第1極芯体露出部の一箇所に前記セパレータを介して対向する第1極露出対向位置まで、前記第2極内側合材層及び前記第2極外側合材層の夫々の前記巻回方向の単位長さあたりの第2極合材量である第2極合材単位量が、前記巻回方向の位置によらず略一定であり、更に、前記第2極内側合材層の第2極合材単位量が前記第2極外側合材層の第2極合材単位量よりも小さくなっており、
前記第2極は、前記第1極露出対向位置よりも巻き終わり側に位置して前記第2極の芯体が露出する第2極芯体露出部を有し、
前記第2極は、前記第1極露出対向位置から
前記第2極芯体露出部まで、前記第2極内側合材層及び前記第2極外側合材層の夫々の前記第2極合材単位量が、前記巻回方向の位置によらず略一定であり、更に、前記第2極内側合材層の第2極合材単位量が前記第2極外側合材層の第2極合材単位量よりも大きくなっており
前記第1極が正極であって、前記第2極が負極であり、前記負極が前記正極よりも内側から巻回されている、巻回型電極体。
【請求項5】
前記第1極リードの前記巻回方向の両側に前記第1極内側合材層が位置する場合、前記第1極リード、及び前記第1極内側合材層において前記第1極芯体露出部の前記巻回方向の両側に位置する部分に貼着されて、前記第1極リードの一部分を被覆する一方、前記第1極リードの前記巻回方向の両側に前記第1極外側合材層が位置する場合、前記第1極リード、及び前記第1極外側合材層において前記第1極芯体露出部の前記巻回方向の両側に位置する部分に貼着されて、前記第1極リードの一部分を被覆する絶縁性を有する絶縁テープを備える、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の巻回型電極体。
【請求項6】
内部に室を有する電池ケースと、
前記室に収容された請求項1乃至5のいずれか1つに記載の巻回型電極体と、
前記室に収容された非水電解質と、
を備える、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池の巻回型電極体、及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水電解質二次電池としては、特許文献1に記載されているものがある。この非水電解質二次電池(以下、単に二次電池という)では、巻回型電極体に含まれる電極シートに関し、外周側に塗布する電極材量を、巻き始め側から巻き終わり側に行くにしたがって連続的または段階的に減少させている。このようにして、曲率が小さくなるにしたがって延伸量が小さくなる電極材量を延伸量に基づいて巻き終わり側に行くにしたがって小さくなるようにして、外周側の電極材量が巻回方向の位置によらず一定に近づくようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
特許文献1の二次電池では、電極シートの外周側面において電極材料が巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって連続的又は段階的に減少するので、電極材料が、曲率が大きい巻き始め側で最も多くなり、電極材層の膜厚が、曲率が大きい巻き始め側で最も厚くなる。したがって、曲率が大きい巻き始め側において、電極材が、切れ易く、充放電時に生じる伸縮により割れ易い。
【0005】
そこで、本開示の目的は、曲率が大きい巻き始め側において、電極材層が、切れ難く、電極の合材層が損傷しにくい巻回型電極体及び非水電解質二次電池を提供することにある。
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の非水電解質二次電池の巻回型電極体は、長尺状の第1極と、長尺状の第2極とがセパレータを挟んで巻回された非水電解質二次電池の巻回型電極体であって、第1極が、長尺状の第1極芯体と、その第1極芯体の内側面に設けられる第1極内側合材層と、第1極芯体の外側面に設けられる第1極外側合材層とを有する一方、第2極は、長尺状の第2極芯体と、その第2極芯体の内側面に設けられる第2極内側合材層と、第2極芯体の外側面に設けられる第2極外側合材層とを有し、第1極は、巻き始め端及び巻き終わり端の両方に巻回方向に間隔をおいて位置すると共に、第1極芯体が露出して第1極リードが電気的に接続される第1極芯体露出部を有し、第1極芯体露出部よりも巻回方向の巻き始め側の巻き始め領域に関し、第1極内側合材層及び第1極外側合材層の夫々の巻回方向の単位長さあたりの第1極合材量である第1極合材単位量は、巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、第2極内側合材層及び第2極外側合材層の夫々の巻回方向の単位長さあたりの第2極合材量である第2極合材単位量は、巻き始め領域にセパレータを介して対向する巻き始め対向領域に関し、巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大し、第1極内側合材層、及び第1極外側合材層の夫々は、第1極芯体露出部が存在する巻回方向の範囲を除く2以上の巻回方向の位置で第1極合材単位量が異なり、第2極内側合材層、及び第2極外側合材層の夫々は、巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって第2極合材単位量が変動する変動部を有する。
【0007】
本開示に係る巻回型電極体によれば、曲率が大きい巻き始め側において、電極材層が、切れ難く、電極の合材層が損傷しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る非水電解質二次電池の軸方向の断面図である。
【
図2】上記非水電解質二次電池の電極体の斜視図である。
【
図3】(a)は、長尺状に展開した状態の上記電極体の正極における長手方向及び厚さ方向を含む模式断面図であり、(b)は、長尺状に展開した状態の上記電極体の負極における長手方向及び厚さ方向を含む模式断面図である。
【
図4】(a)は、第2実施形態の非水電解質二次電池における
図3(a)に対応する模式断面図であり、(b)は、第2実施形態の非水電解質二次電池における
図3(b)に対応する模式断面図である。
【
図5】(a)は、第3実施形態の非水電解質二次電池における
図3(a)に対応する模式断面図であり、(b)は、第3実施形態の非水電解質二次電池における
図3(b)に対応する模式断面図である。
【
図6】(a)は、第4実施形態の非水電解質二次電池における
図3(a)に対応する模式断面図であり、(b)は、第4実施形態の非水電解質二次電池における
図3(b)に対応する模式断面図である。
【
図7】(a)は、第4実施形態の変形例の非水電解質二次電池における
図6(a)に対応する模式断面図であり、(b)は、第4実施形態の変形例の非水電解質二次電池における
図6(b)に対応する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における寸法比は、必ずしも一致しない。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る非水電解質二次電池10の軸方向の断面図であり、
図2は、非水電解質二次電池10の電極体14の斜視図である。
図1に示すように、非水電解質二次電池(以下、単に二次電池という)10は、巻回型の電極体14と、非水電解質(図示せず)と、電極体14及び非水電解質を収容する電池ケース15とを備える。
図2に示すように、電極体14は、第1極としての正極11と、第2極としての負極12と、正極11及び負極12の間に介在するセパレータ13を含み、正極11と負極12がセパレータ13を介して巻回された巻回構造を有する。再度、
図1を参照して、電池ケース15は、有底筒状の外装缶16と、外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17で構成される。また、非水電解質二次電池10は、外装缶16と封口体17との間に配置される樹脂製のガスケット28を備える。
【0011】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有してもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩には、LiPF6等のリチウム塩が使用される。
【0012】
電極体14は、長尺状の正極11と、長尺状の負極12と、長尺状の2枚のセパレータ13とを有する。また、電極体14は、正極11に接合された第1極リードとしての正極リード20と、負極12に接合された負極リード21を有する。負極12は、リチウムの析出を抑制するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、正極11より長手方向及び短手方向(上下方向)に長く形成される。2枚のセパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば正極11を挟むように配置される。
【0013】
セパレータ13としては、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂が好ましい。セパレータ13は、例えば10μm~50μmの厚さを有し、130℃~180℃程度の融点を有する。なお、負極12は電極体14の巻き始め端を構成してもよいが、一般的にはセパレータ13が負極12の巻き始め側端を超えて延出し、セパレータ13の巻き始め側端が電極体14の巻き始め端となる。
【0014】
図1、及び
図2に示す例では、正極リード20は、第1極芯体としての正極芯体における巻回方向の中央部等の中間部に電気的に接続され、負極リード21は、第2極芯体としての負極芯体における巻回方向の巻き終わり端部に電気的に接続される。しかし、負極リードは、負極芯体における巻回方向の巻き始め端部に電気的に接続されてもよい。又は、電極体が2つの負極リードを有して、一方の負極リードが、負極芯体における巻回方向の巻き始め端部に電気的に接続され、他方の負極リードが、負極芯体における巻回方向の巻き終わり端部に電気的に接続されてもよい。又は、負極芯体における巻回方向の巻き終わり側端部を外装缶16の内面に当接させることで、負極と外装缶を電気的に接続してもよい。正極リード20を正極芯体に電気的に接続する構造、及び負極リード21を負極芯体に電気的に接続する構造については、後で
図3を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、二次電池10は、電極体14の上側に配置される絶縁板18と、電極体14の下側に配置される絶縁板19を更に有する。
図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極リード21が絶縁板19の外側を通って、外装缶16の底部側に延びる。正極リード20は封口体17の底板であるフィルタ23の下面に溶接等で接続され、フィルタ23と電気的に接続された封口体17の天板であるキャップ27が正極端子となる。負極リード21は外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0016】
外装缶16は、有底円筒形状の金属製容器である。外装缶16と封口体17との間にはガスケット28が設けられ、電池ケース15の内部空間が密閉される。外装缶16は、例えば側面部を外側からプレスして形成された溝入れ部22を有する。溝入れ部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。また、外装缶16の上端部は、内側に折り曲げられ封口体17の周縁部に加締められている。
【0017】
封口体17は、電極体14側から順に、フィルタ23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続される。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在する。電池の内圧が上昇すると、下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断し、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0018】
図3(a)は、正極11を長尺状に展開したときの正極11における長手方向及び厚さ方向を含む模式断面図であり、
図3(b)は、負極12を長尺状に展開したときの負極12における長手方向及び厚さ方向を含む模式断面図である。次に、二次電池10の正極11と負極12の構造及び材料等について、
図3を参照して詳細に説明する。なお、
図3、及び以下の
図4~
図7においては、本開示の二次電池の電極構造を分かり易く説明するため、合材層の厚さの差が誇張して描かれている。
【0019】
[正極]
(正極の構造)
図3(a)に示すように、正極11は、第1極芯体としての長尺状の正極芯体31と、第1極内側合材層としての正極内側合材層32と、第1極外側合材層としての正極外側合材層33を有し、正極内側合材層32は、正極芯体31の内側面に設けられ、正極外側合材層33は、正極芯体31の外側面に設けられる。
【0020】
正極11は、正極芯体31が露出する第1極芯体露出部としての正極芯体露出部36を巻回方向(
図3(a)に示す正極11の長手方向に一致)の中間部に有する。正極芯体露出部36は、巻き始め端37及び巻き終わり端38の両方に巻回方向に間隔をおいた位置に設けられる。正極芯体露出部36には、第1極リードとしての正極リード20が電気的に接続される。正極リード20は、正極芯体露出部36にスポット溶接等により接合され、正極芯体露出部36に電気的に接続される。なお、
図3に示す例では、正極リード20が正極芯体31の外側面に接合されているが、正極リードは、正極芯体の内側面に接合されてもよい。
【0021】
正極内側合材層32に関し、正極芯体露出部36よりも巻回方向の巻き始め側の巻き始め領域における巻回方向の単位長さあたりの正極合材量である正極巻き始め合材単位量は、巻回方向の位置によらず略一定になっている。正極内側合材層32に関し、正極芯体露出部36よりも巻回方向の巻き終わり側の巻き終わり領域における正極合材単位量である正極巻き終わり合材単位量は、巻回方向の位置によらず略一定になっていると共に、正極巻き始め合材単位量よりも大きくなっている。巻回方向の単位長さあたりの正極合材量である正極合材単位量は、第1極合材単位量の一例であり、正極巻き始め合材単位量は、第1極巻き始め合材単位量の一例であり、正極巻き終わり合材単位量は、第1極巻き終わり合材単位量の一例である(第2~第4実施形態でも同様)。また、正極外側合材層33に関し、巻き始め領域における正極合材単位量である正極巻き始め合材単位量は、巻回方向の位置によらず略一定になっている。また、正極外側合材層32に関し、巻き終わり領域における正極合材単位量である正極巻き終わり合材単位量は、巻回方向の位置によらず略一定になっていると共に、正極巻き始め合材単位量よりも大きくなっている。
【0022】
(正極の材質)
正極芯体31には、アルミニウム、アルミニウム合金など正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。また、正極内側合材層32及び正極外側合材層33は、正極活物質、導電材、及び結着材等を含む。正極活物質には、例えばリチウム金属複合酸化物が用いられる。リチウム金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。好適なリチウム金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有するリチウム金属複合酸化物である。具体例としては、Ni、Co、Mnを含有するリチウム金属複合酸化物、Ni、Co、Alを含有するリチウム金属複合酸化物が挙げられる。なお、リチウム金属複合酸化物の粒子表面には、酸化タングステン、酸化アルミニウム、ランタノイド含有化合物等の無機物粒子などが固着してもよい。
【0023】
(正極の製造方法)
正極11は、例えば、次のように製造される。正極活物質に導電剤や結着剤等を混合し、その混合物を分散媒中で混練することによってペースト状の正極活物質スラリーを作製する。その後、正極活物質スラリーをアルミニウム等の金属箔で形成したフープ状の正極芯体31の内側面上に塗布すると共に、正極芯体31の外側面上に塗布する。続いて、正極芯体31の内側及び外側面に塗布された正極活物質スラリーを、乾燥、及び圧縮することによって、正極芯体31の内側面に正極内側合材層32を形成すると共に、正極芯体31の外側面に正極外側合材層32を形成する。最後に正極合材層が形成された正極板を所定寸法に切断することによって正極11が作製される。
【0024】
正極芯体31への正極活物質スラリーの塗布は、例えば、次のように実行される。詳しくは、正極活物質スラリーを吐出する吐出ノズルに対して正極芯体31をその延在方向に一定の速度で相対移動させる。そして、吐出ノズルから正極芯体31へ一定量の正極活物質スラリーを巻き始め端から正極芯体露出部の巻き始め端まで吐出すると共に、上記一定量よりも多い一定の正極活物質スラリーを、正極芯体露出部の巻き終わり端から巻き終わり端まで、吐出ノズルから正極芯体31へ吐出する。この吐出を、正極芯体31の内側及び外側面で実行することで正極活物質スラリーの正極芯体31への塗布を実行する。
【0025】
[負極]
(負極の構造)
図3(b)に示すように、負極12は、第2極芯体としての長尺状の負極芯体41と、第2極内側合材層としての負極内側合材層42と、第2極外側合材層としての負極外側合材層43を有し、負極内側合材層42は、負極芯体41の内側面に設けられ、負極外側合材層43は、負極芯体41の外側面に設けられる。
【0026】
負極12は、負極芯体41が露出する負極芯体露出部46を巻回方向の巻き終わり側の端部に有する。この負極芯体露出部46には、スポット溶接等により負極リード21が接合されて電気的に接続される。なお、
図3に示す例では、負極リード21が負極芯体41の内側面に接合されているが、負極リードは、負極芯体の外側面に接合されてもよい。
【0027】
負極内側合材層42は、正極11の上記巻き始め領域にセパレータ13(
図2参照)を介して対向する巻き始め対向領域における巻回方向の単位長さあたりの負極合材量である負極巻き始め合材単位量が、略一定になっている。また、負極内側合材層42は、正極11の上記巻き終わり領域にセパレータ13を介して対向する巻き終わり対向領域における負極合材単位量である負極巻き終わり合材単位量が、巻回方向の位置によらず略一定であると共に、上記負極巻き始め合材単位量よりも大きくなっている。巻回方向の単位長さあたりの負極合材量である負極合材単位量は、第2極合材単位量の一例であり、負極巻き始め合材単位量は、第2極巻き始め合材単位量の一例であり、負極巻き終わり合材単位量は、第2極巻き終わり合材単位量の一例である(第2~第4実施形態でも同様)。また、負極外側合材層43は、上記巻き始め対向領域における負極合材単位量である負極巻き始め合材単位量が、巻回方向の位置によらず略一定になっている。また、負極内側合材層42は、上記巻き終わり対向領域における負極合材単位量である負極巻き終わり合材単位量が、巻回方向の位置によらず略一定であると共に、上記負極巻き始め合材単位量よりも大きくなっている。
【0028】
(負極の材質)
負極芯体41には、銅、銅合金など負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。また、負極内側合材層42及び負極外側合材層43は、負極活物質、導電材、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)等の結着材を含む。負極活物質としては、天鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛などの黒鉛を含むことが好ましい。負極内側合材層42及び負極外側合材層43には、黒鉛以外の負極活物質が混在してもよい。黒鉛以外の負極活物質としては、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、当該金属を含有する合金、当該金属を含有する化合物等が挙げられる。中でも、Siを含有するケイ素化合物が好ましい。負極内側合材層42及び負極外側合材層43におけるケイ素化合物の含有量は、負極活物質の総質量に対して、例えば1~15質量%であり、好ましくは5~10質量%である。
【0029】
上記ケイ素化合物としては、SiOx(0.5≦x≦1.6)で表される酸化ケイ素が例示される。SiOxで表される酸化ケイ素は、例えばSiO2マトリックス中にSiの微粒子が分散した構造を有する。また、リチウムシリケート相中にSiの微粒子が分散した構造を有するLi2ySiO(2+y)(0<y<2)で表されるケイ素化合物を用いてもよい。
【0030】
ケイ素化合物の粒子表面には、導電被膜が形成されていることが好ましい。導電被膜の構成材料としては、炭素材料、金属、及び金属化合物から選択される少なくとも1種が例示できる。中でも、非晶質炭素等の炭素材料が好ましい。炭素被膜は、例えばアセチレン、メタン等を用いたCVD法、石炭ピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂等をケイ素化合物粒子と混合し、熱処理を行う方法などで形成できる。また、カーボンブラック等の導電フィラーを結着剤を用いてケイ素化合物の粒子表面に固着させることで導電被膜を形成してもよい。
【0031】
(負極の製造方法)
負極12は、例えば、次のように製造される。負極活物質に導電剤や結着材を混合し、その混合物を分散媒中で混練することによってペースト状の負極活物質スラリーを作製する。その後、負極活物質スラリーを銅等の金属箔で形成したフープ状の負極芯体41の内側面上に塗布すると共に、負極芯体41の外側面上に塗布する。その後、負極芯体41の内側及び外側面に塗布された負極活物質スラリーを、乾燥、及び圧縮することによって、負極芯体41の内側面に負極内側合材層42を形成すると共に、負極芯体41の外側面に負極外側合材層43を形成する。
【0032】
負極芯体41への負極活物質スラリーの塗布は、例えば、次のように実行される。詳しくは、負極活物質スラリーを吐出する吐出ノズルに対して負極芯体41をその延在方向に一定の速度で相対移動させる。そして、吐出ノズルから負極芯体41へ一定量の負極活物質スラリーを巻き始め端から正極芯体露出部36のいずれかの巻回位置に対向する正極露出対向位置まで吐出する。吐出ノズルから負極芯体41への負極活物質スラリーの吐出量は、正極露出対向位置で変えられ、上記一定量よりも多い一定量の負極活物質スラリーを、正極露出対向位置から負極芯体露出部46まで吐出ノズルから負極芯体41へ吐出する。この吐出を、負極芯体41の内側及び外側面で実行することで負極活物質スラリーの負極芯体41への塗布を実行する。
【0033】
二次電池10の電極体14は、このように形成された正極11及び負極12を、2つのセパレータ13を介して巻回することで形成される。なお、詳述しないが、
図3(a)に示すように、正極11は、絶縁性を有する絶縁テープ39を有する。絶縁テープ39は、正極リード20の正極芯体31側とは反対側の面、及び正極外側合材層33において正極芯体露出部36の巻回方向両側に位置する部分に貼付され、正極リード20における延在方向の正極芯体31側の端部を被覆する。絶縁テープ39は、主に、正極リード20に導電性を有する異物が付着して電極体14内で短絡が生じることを防止するために設けられる。なお、
図3(a)に示す例では、正極リード20が、正極芯体31の外側面に接合され、絶縁テープ39が、正極リード20に貼付されると共に、正極外側合材層33において正極芯体露出部36の巻回方向両側に位置する部分に貼付された。しかし、正極リードは、正極芯体の内側面に接合され、絶縁テープは、正極リードに貼付されると共に、正極内側合材層において正極芯体露出部の巻回方向両側に位置する部分に貼付されてもよい。
【0034】
また、
図3(b)に示すように、負極12は、絶縁性を有する絶縁テープ49を有する。絶縁テープ49は、負極リード21の負極芯体41側とは反対側の面、負極内側合材層42、及び負極芯体露出部46の巻き終わり側端部に貼付され、負極リード21の延在方向の負極芯体41側の端部を被覆する。絶縁テープ49は、主に、負極リード21に導電性を有する異物が付着して電極体14内で短絡が生じることを防止するために設けられる。なお、
図3(b)に示す例では、負極リード21が負極芯体41の内側面に接合され、絶縁テープ49が、負極リード21に貼付されると共に、負極内側合材層42及び負極芯体露出部46に貼付された。しかし、負極リードが負極芯体の外側面に接合され、絶縁テープが、負極リードに貼付されると共に、負極外側合材層及び負極芯体露出部に貼付されてもよい。
【0035】
以上、第1実施形態によれば、正極内側合材層32、及び正極外側合材層33の夫々において、正極合材単位量の巻き始め領域における正極巻き始め合材単位量が、巻回方向の位置によらず略一定であり、正極合材単位量の巻き終わり領域における正極巻き終わり合材単位量よりも小さくなっている。また、負極内側合材層42、及び負極外側合材層43の夫々において、負極合材単位量の巻き始め対向領域における負極巻き始め合材単位量が、巻回方向の位置によらず略一定であり、負極合材単位量の巻き終わり対向領域における負極巻き終わり合材単位量よりも小さくなっている。したがって、正極内側及び外側合材層32,33の両方において、曲率が特に大きい巻き始め領域における正極合材単位量を、巻き終わり領域における正極合材単位量よりも小さくでき、負極内側及び外側合材層42,43の両方において、曲率が特に大きい巻き始め対向領域における負極合材単位量を、巻き終わり対向領域における負極合材単位量よりも小さくできる。よって、巻き始め領域における正極合材層32,33の損傷を抑制でき、巻き始め対向領域における負極合材層42,43の損傷も抑制できる。
【0036】
また、正極内側及び外側合材層32,33の両方において、巻き終わり領域の正極合材単位量が、巻き始め領域の正極合材単位量よりも大きくなっている。また、負極内側及び外側合材層42,43の両方において、巻き終わり対向領域の負極合材単位量が、巻き始め対向領域の負極合材単位量よりも大きくなっている。したがって、巻き終わり領域の正極合材単位量、及び巻き終わり対向領域の負極合材単位量が大きくなっているので、巻き始め領域の正極合材単位量、及び巻き始め対向領域の負極合材単位量を小さくしても、二次電池10トータルとしての正極合材量と負極合材量が小さくなることを防止できる。よって、二次電池10の容量が小さくなることを防止でき、二次電池10の性能が低下することも防止できる。
【0037】
更には、正極内側及び外側合材層32,33の夫々は、正極合材単位量の吐出量を、正極芯体露出部36を境にして変動させることで形成でき、負極内側及び外側合材層42,43の夫々は、負極合材単位量の吐出量を、上記正極露出対向位置を境にして変動させることで形成できる。よって、特に、正極内側及び外側合材層32,33の夫々を、正極芯体露出部36が吐出ノズルを通過する際に生じるタイムラグの間に吐出量を変更するだけで形成でき、正極内側及び外側合材層32,33を容易に形成できる。
【0038】
(第2実施形態)
次に第2実施形態の二次電池について説明する。なお、第2実施形態を含む以下の実施形態でも、第1実施形態と同様に、第1極が正極で、第2極が負極である場合について説明する。第2実施形態の二次電池は、正極111、及び負極112以外の構造が第1実施形態の二次電池10と同一である。以下では、第2実施形態の二次電池における正極及び負極111,112の構造のみを説明し、それ以外の説明は省略する。
【0039】
図4(a)は、第2実施形態の二次電池において
図3(a)に対応する正極111の模式断面図であり、
図4(b)は、第2実施形態の二次電池において
図3(b)に対応する負極112の模式断面図である。
【0040】
図4(a)に示すように、正極111は巻回方向の正極芯体露出部36よりも巻き始め側の巻き始め領域における内側及び外側合材層132,133の構造が、第1実施形態と異なる。詳しくは、正極内側及び外側合材層132,133の夫々に関し、巻き始め領域の正極合材単位量が、巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなっている。また、正極内側及び外側合材層132,133の夫々に関し、正極芯体露出部36よりも巻き終わり側の巻き終わり領域における正極合材単位量は、巻回方向の位置によらず略一定になっており、巻き始め領域における最大の正極合材単位量と略同一になっている。
【0041】
また、
図4(b)に示すように、負極内側及び外側合材層142,143の夫々に関し、巻き始め領域にセパレータ13を介して対向する巻き始め対向領域の負極合材単位量は、巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなっている。また、負極内側及び外側合材層142,143の夫々に関し、巻き終わり領域にセパレータ13を介して対向する巻き終わり対向領域の負極合材単位量は、巻回方向の位置によらず略一定になっていると共に、巻き始め対向領域の最大の負極合材単位量よりも大きくなっている。また、負極内側及び外側合材層142,143の夫々に関し、正極芯体露出部36にセパレータ13を介して対向する正極露出対向領域の負極合材単位量は、巻き始め対向領域の巻き終わり位置の負極合材単位量の値から巻き終わり対向領域の巻き始め位置の負極合材単位量の値まで滑らかに変動している。
【0042】
正極内側及び外側合材層132,133の夫々は、例えば、次のように形成できる。先ず、巻き始め側から正極芯体露出部36まで、正極芯体31を吐出ノズルに対して巻き始め側から巻き終わり側に相対移動させ、更に、この相対移動の際に、吐出ノズルから正極芯体31に吐出する正極活物質スラリーの量を徐々に増大させる。また、正極内側及び外側合材層132,133の夫々について、巻き終わり領域において正極芯体31を吐出ノズルに対して相対移動させる際に吐出ノズルから正極芯体31に吐出する正極活物質スラリーの量を一定とし、その量を、巻き始め領域の最大の吐出量と同一とする。これにより、正極内側及び外側合材層132,133を形成できる。
【0043】
また、負極内側及び外側合材層142,143の夫々は、例えば、次のように形成できる。先ず、巻き始め側から正極芯体露出部36内の1か所に対向する正極露出対向位置まで負極芯体41を吐出ノズルに対して巻き始め側から巻き終わり側に相対移動させ、更に、この相対移動の際に、吐出ノズルから負極芯体41に吐出する負極活物質スラリーの量を徐々に増大させる。また、吐出ノズルから吐出する負極活物質スラリーの量を、正極露出対向位置の負極活物質スラリーの量と同一かつ一定とし、正極露出対向位置から負極芯体露出部46まで負極芯体41を吐出ノズルに対して相対移動させる。これにより、負極内側及び外側合材層142,143を形成できる。
【0044】
第2実施形態によれば、正極内側及び外側合材層132,133の夫々において、正極合材単位量が、巻き始め端から正極芯体露出部36まで巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなる。したがって、巻き始め側の曲率が大きい箇所の正極合材単位量を曲率が大きくなるにしたがって小さくできる。また、負極内側及び外側合材層142,143の夫々において、負極合材単位量が、巻き始め端から正極露出対向位置まで巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくなる。したがって、曲率が大きい巻き始め側の負極合材単位量を曲率が大きくなるにしたがって小さくできる。よって、合材層132,133,142,143の切れや割れの発生を更に効果的に抑制できる。
【0045】
(第3実施形態)
次に第3実施形態の二次電池について説明する。
図5(a)は、第3実施形態の二次電池において
図3(a)に対応する正極211の模式断面図であり、
図5(b)は、第3実施形態の二次電池において
図3(b)に対応する負極212の模式断面図である。
【0046】
正極211は、正極内側及び外側合材層232,233の夫々において、巻き終わり領域の正極合材単位量を巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくした点のみが第2実施形態で説明した正極111と異なる。また、負極212は、負極内側及び外側合材層242,243の夫々において、負極合材単位量を巻き始め端から負極芯体露出部46まで徐々に大きくした点が第2実施形態の負極112と異なる。巻き終わり領域において正極合材単位量を巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくする方法や、負極合材単位量を巻き終わり側に行くにしたがって徐々に大きくする方法は、例えば、第2実施形態で説明した手法と同様の手法で実現できる。
【0047】
第3実施形態によれば、トータルの合材量を第2実施形態と同一とした場合における、各合材層232,233,242,243の合材単位量の勾配を小さくできる。よって、活物質スラリーを乾燥及び圧縮して形成する合材層232,233,242,243の巻回方向の膜厚差を小さくできるので、正極211及び負極212をより密着した状態で円滑に巻回することができる。
【0048】
(第4実施形態)
次に第4実施形態の二次電池について説明する。
図6(a)は、第4実施形態の二次電池において
図3(a)に対応する正極311の模式断面図であり、
図6(b)は、第4実施形態の二次電池において
図3(b)に対応する負極312の模式断面図である。
【0049】
第4実施形態の正極311は、正極芯体露出部36よりも巻き始め側の巻き始め領域において、正極内側及び外側合材層332,333の夫々の正極合材単位量が、巻回方向の位置によらず略一定であり、更に、巻回方向の各位置において、正極内側合材層332の正極合材単位量が、正極外側合材層333の正極合材単位量よりも大きくなっている。他方、正極311は、正極芯体露出部よりも巻き終わり側の巻き終わり領域において、正極内側及び外側合材層332,333の夫々の正極合材単位量が、巻回方向の位置によらず略一定であり、更に、巻回方向の各位置において、正極内側合材層332の正極合材単位量が、正極外側合材層333の正極合材単位量よりも小さくなっている。また、巻き始め領域において同じ巻回方向の位置で、正極内側合材層332の正極合材単位量と正極外側合材層333の正極合材単位量を足した合計正極合材単位量は、巻き終わり領域において同じ巻回方向位置で、正極内側合材層332の正極合材単位量と正極外側合材層333の正極合材単位量を足した合計正極合材単位量と略同一になっている。
【0050】
他方、第4実施形態の負極312は、巻き始め端から正極芯体露出部の一箇所にセパレータ13を介して対向する正極露出対向位置まで、負極内側及び外側合材層342,343の夫々の負極合材単位量が、巻回方向の位置によらず略一定であり、更に、負極内側合材層342の負極合材単位量が、負極外側合材層343の負極合材単位量よりも小さくなっている。また、負極312は、正極露出対向位置から負極芯体露出部まで、負極内側及び外側合材層342,343の夫々の負極合材単位量が、巻回方向の位置によらず略一定であり、更に、負極内側合材層342の負極合材単位量が、負極外側合材層343の負極合材単位量よりも大きくなっている。また、巻き始めから正極露出対向位置までの領域における同じ巻回方向の位置で、負極内側合材層342の負極合材単位量と負極外側合材層343の負極合材単位量を足した合計負極合材単位量は、正極露出対向位置から負極芯体露出部までの領域における同じ巻回方向位置で、負極内側合材層342の負極合材単位量と負極外側合材層343の負極合材単位量を足した合計負極合材単位量と略同一になっている。
【0051】
第4実施形態によれば、正極311よりも内側から巻回される負極312において曲率が大きい内周側に設けられる負極内側合材層342に関し、巻き始めから正極露出対向位置までの負極合材単位量が、正極露出対向位置から負極芯体露出部までの負極合材単位量よりも小さい。よって、巻き始め端部で最も損傷し易い負極内側合材層342の損傷を効果的に抑制でき、その結果、電極体の損傷も効果的に抑制できる。
【0052】
また、正極内側及び外側合材層332,333の夫々の正極合材単位量を、正極芯体露出部36を挟んで一段階に減少又は増大させるだけで、正極311を形成でき、負極内側及び外側合材層342,343の夫々の負極合材単位量を、正極露出対向位置で一段階に増大又は減少させるだけで、負極312を形成できる。よって、正極活物質スラリーや負極活物質スラリーの吐出制御が容易になって、正極311及び負極312を容易に形成できる。
【0053】
また、巻き始め領域の巻回方向の各箇所における合計正極合材単位量が、巻き終わり領域の巻回方向の各箇所における合計正極合材単位量と略一致し、負極合材の巻回方向の各箇所における合計負極合材単位量が、巻き始め端から負極芯体露出部46まで略一定になっている。したがって、正極内側合材層332と正極外側合材層333の厚さの和を巻回方向の位置によらず略一定にでき、負極内側合材層342と負極外側合材層343の厚さの和を巻回方向の位置によらず略一定にできる。よって、正極内側合材層332と正極外側合材層333の厚さの和や、負極内側合材層342と負極外側合材層343の厚さの和が巻回位置によって過度に異なることがないので、イオンや電子を円滑に移動させることができる。
【0054】
更には、正極内側合材層332と正極外側合材層333の厚さの和を巻回方向の位置によらず略一定にでき、負極内側合材層342と負極外側合材層343の厚さの和を巻回方向の位置によらず略一定にできる。したがって、正極芯体露出部36よりも巻き始め側と巻き終わり側で、正極内側合材層332と正極外側合材層333の厚さの和が殆ど変動することがない。よって、正極内側合材層332と正極外側合材層333に貼り付けられ、正極リード20を被覆する絶縁テープ39に歪みが生じにくく、絶縁テープ39が剥がれにくい。
【0055】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0056】
例えば、
図7(a)、すなわち、第4実施形態の変形例の二次電池における
図6(a)に対応する正極411の模式断面図に示すように、正極内側及び外側合材層432,433の正極合材単位量の関係を、第4実施形態の正極311の正極内側及び外側合材層332,333の正極合材単位量の関係と逆にしてもよい。また、
図7(b)、すなわち、第4実施形態の変形例の二次電池における
図6(b)に対応する負極412の模式断面図に示すように、負極内側及び外側合材層442,443の負極合材単位量の関係を、第4実施形態の負極312の負極内側及び外側合材層342,343の負極合材単位量の関係と逆にしてもよい。
【0057】
また、巻き始め領域、及び巻き終わり領域の少なくとも一方において、正極内側合材層及び正極外側合材層のうちの少なくとも一方は、巻き終わり端に行くにしたがって正極合材単位量が略一定となる領域と、巻き終わり端に行くにしたがって正極合材単位量が増加する領域とを有してもよい。また、巻き始め対向領域、及び巻き終わり対向領域の少なくとも一方において、負極内側合材層及び負極外側合材層のうちの少なくとも一方は、巻き終わり端に行くにしたがって負極合材単位量が略一定となる領域と、巻き終わり端に行くにしたがって負極合材単位量が増加する領域とを有してもよい。また、上述の全ての実施形態及び変形例では、第1極が正極であり、第2極が負極である場合について説明した。しかし、第1極は負極であり、第2極は正極でもよい。
【0058】
要は、本開示の巻回型電極体は、長尺状の第1極と、長尺状の第2極とがセパレータを挟んで巻回された非水電解質二次電池の巻回型電極体であればよい。また、第1極が、長尺状の第1極芯体と、その第1極芯体の内側面に設けられる第1極内側合材層と、第1極芯体の外側面に設けられる第1極外側合材層とを有する一方、第2極は、長尺状の第2極芯体と、その第2極芯体の内側面に設けられる第2極内側合材層と、第2極芯体の外側面に設けられる第2極外側合材層とを有すればよい。また、第1極は、巻き始め端及び巻き終わり端の両方に巻回方向に間隔をおいて位置して第1極芯体が露出する第1極芯体露出部を有すればよく、第1極芯体露出部には、第1極リードが電気的に接続されればよい。また、第1芯体露出部よりも巻回方向の巻き始め側の巻き始め領域に関し、第1極内側合材層及び第1極外側合材層の夫々の巻回方向の単位あたりの第1極合材量である第1極合材単位量は、巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大すればよい。また、第2極内側合材層及び第2極外側合材層の夫々の巻回方向の単位あたりの第2極合材量である第2極合材単位量は、巻き始め領域にセパレータを介して対向する巻き始め対向領域に関し、巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって略一定であるか又は増大すればよい。そして、第1極内側合材層、及び第1極外側合材層の夫々は、第1極芯体露出部が存在する巻回方向の範囲を除く2以上の巻回方向の位置で第1極合材単位量が異なり、第2極内側合材層、及び第2極外側合材層の夫々は、巻回方向の巻き終わり側に行くにしたがって第2極合材単位量が変動する変動部を有すればよい。
【符号の説明】
【0059】
10 二次電池
11,111,211,311,411 正極
12,112,212,312,412 負極
13 セパレータ
15 電池ケース
20 正極リード
31 正極芯体
32,132,232,332,432 正極内側合材層
33,133,233,333,433 正極外側合材層
36 正極芯体露出部
39 絶縁テープ
41 負極芯体
42,142,242,342,442 負極内側合材層
43,143,243,343,443 負極外側合材層