(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】メタル膜付き基板の分断方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240112BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20240112BHJP
B28D 1/24 20060101ALI20240112BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01L21/78 V
H01L21/78 G
B28D5/00 A
B28D1/24
B26F3/00 A
(21)【出願番号】P 2020548196
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033240
(87)【国際公開番号】W WO2020066408
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018180092
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 健二
(72)【発明者】
【氏名】武田 真和
(72)【発明者】
【氏名】田村 健太
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-176823(JP,A)
【文献】特開2002-246337(JP,A)
【文献】特開2017-041525(JP,A)
【文献】特開平05-315646(JP,A)
【文献】特開2016-225586(JP,A)
【文献】特開2007-220703(JP,A)
【文献】特開2001-085736(JP,A)
【文献】特開2011-212963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B28D 5/00
B28D 1/24
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の第1の主面側に設けられた薄膜層と、前記基材の第2の主面に設けられたメタル膜とを備える、メタル膜付き基板を分断する方法であって、
前記第1の主面側を所定の分断予定位置においてダイシングすることにより、前記基材を露出させるダイシング工程と、
前記ダイシング工程によって露出した前記基材をスクライビングツールによってスクライブすることによりスクライブラインを形成し、前記スクライブラインから前記分断予定位置に沿って前記基材の内部に対し垂直クラックを伸展させるスクライブ工程と、
前記第2の主面側から前記メタル膜付き基板に対しブレークバーを当接させることによって前記垂直クラックをさらに伸展させることで、前記メタル膜付き基板の前記メタル膜以外の部分を前記分断予定位置において分断する第1 ブレーク工程と、
前記第1の主面側から前記メタル膜付き基板に対し前記ブレークバーを当接させることによって前記メタル膜を前記分断予定位置において分断する第2 ブレーク工程と
、を備え、
前記ダイシング工程においては、
形成されるダイシング溝の深さをA、前記ダイシング溝の幅をB、前記スクライビングツールのスクライブ誤差をC、前記スクライビングツールの刃先角をδとするとき、
B>2Atan(δ/2)+C
なる関係式をみたすように前記ダイシング溝を形成することによって、前記基材を露出させる、
ことを特徴とする、メタル膜付き基板の分断方法。
【請求項2】
請求項
1に記載のメタル膜付き基板の分断方法であって、
前記薄膜層の前記分断予定位置に金属パターンが設けられてなる、
ことを特徴とする、メタル膜付き基板の分断方法。
【請求項3】
請求項1または請求項
2のいずれかに記載のメタル膜付き基板の分断方法であって、
前記ブレークバーの刃先先端部の曲率半径が5μm~30μmである、
ことを特徴とする、メタル膜付き基板の分断方法。
【請求項4】
請求項
3に記載のメタル膜付き基板の分断方法であって、
前記所定の分断予定位置が所定の間隔d1にて複数定められており、
前記第1ブレーク工程および前記第2ブレーク工程は、水平方向において離隔する一対の保持部によって前記メタル膜付き基板を下方から支持した状態で、前記一対の保持部のそれぞれから等価な位置において行うようにし、
前記一対の保持部の離隔距離d2を、
前記第1ブレーク工程においてはd2=0.5d1~1.25d1とし、
前記第2ブレーク工程においてはd2=1.0d1~1.75d1とする、
ことを特徴とする、メタル膜付き基板の分断方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項
4のいずれかに記載のメタル膜付き基板の分断方法であって、
前記ダイシング工程、前記スクライブ工程、前記第1ブレーク工程、および前記第2ブレーク工程を、前記メタル膜に粘着性テープを貼付した状態で行い、
前記第1ブレーク工程においては、前記メタル膜以外の部分を分断するとともに前記メタル膜および前記粘着性テープの前記分断予定位置に相当する位置に折り目を形成する、ことを特徴とする、メタル膜付き基板の分断方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項
5のいずれかに記載のメタル膜付き基板の分断方法であって、
前記第1ブレーク工程は、前記メタル膜付き基板の姿勢を前記スクライブ工程のときとは上下反転させて行い、
前記第2ブレーク工程は、前記メタル膜付き基板の姿勢を前記第1ブレーク工程のときとは上下反転させて行う、
ことを特徴とする、メタル膜付き基板の分断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス用基板の分断に関し、特に、一方主面にデバイスパターンが形成され、他方主面にメタル膜が形成された基板の分断に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばSiC(炭化硅素)基板などの半導体デバイス用基板を分断する手法として、半導体デバイス用基板の一方主面にスクライブラインを形成し、該スクライブラインから垂直クラックを伸展させるスクライブ工程を行った後、外力の印加によって係るクラックを基板厚み方向にさらに伸展させることにより半導体デバイス用基板をブレークするブレーク工程を行う、という手法がすでに公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スクライブラインの形成は、スクライビングホイール(カッターホイール)を分断予定位置に沿って圧接転動させることにより行われる。
【0004】
ブレークは、半導体デバイス用基板の他方主面側において、ブレーク刃(ブレークバー)の刃先を分断予定位置に沿って半導体デバイス用基板に当接させたうえで、該刃先をさらに押し込むことによって行われる。
【0005】
また、これらスクライブラインの形成およびブレークは、他方主面に粘着性を有するダイシングテープを貼り付けた状態で行われ、ブレーク後に係るダイシングテープを伸張させるエキスパンド工程によって対向する分断面が離隔させられる。
【0006】
半導体デバイス用基板の分断の一態様として、一方主面に半導体層や電極などを含む半導体デバイスの単位パターンが2次元的に繰り返されたデバイスパターンが形成され、他方主面にメタル膜が形成された母基板を、個々のデバイス単位に分断する(個片化する)というものがある。
【0007】
係る分断を、特許文献1に開示されているような従来の手法で行う場合、ブレーク工程後に、メタル膜が分断されるべき箇所において完全に分断されず連続したままとなっている、いわば薄皮残りともいえるような状態が発生することがある。
【0008】
なお、このような薄皮残りの部分が生じたとしても、その後のエキスパンド工程によって当該部分のメタル膜は分断(破断)され得るが、仮に分断がなされたとしても、係る分断箇所においてメタル膜の剥がれが発生しやすいという問題がある。
【0009】
また、上述のような半導体デバイス用基板のなかには、一方主面側における個片化時の分断予定位置に、メタル膜を含むTEGパターンが形成されているものがある。係る半導体デバイス用基板は、分断という観点からみれば、両面にメタル膜が設けられたものと捉えることが出来る。そして、このような半導体用デバイス基板についても、好適に分断を行いたいというニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、メタル膜付き基板を好適に分断できる方法を提供することを目的とする。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、基材と、前記基材の第1の主面側に設けられた薄膜層と、前記基材の第2の主面に設けられたメタル膜とを備える、メタル膜付き基板を分断する方法が、前記第1の主面側を所定の分断予定位置においてダイシングすることにより、前記基材を露出させるダイシング工程と、前記ダイシング工程によって露出した前記基材をスクライビングツールによってスクライブすることによりスクライブラインを形成し、前記スクライブラインから前記分断予定位置に沿って前記基材の内部に対し垂直クラックを伸展させるスクライブ工程と、前記第2の主面側から前記メタル膜付き基板に対しブレークバーを当接させることによって前記垂直クラックをさらに伸展させることで、前記メタル膜付き基板の前記メタル膜以外の部分を前記分断予定位置において分断する第1ブレーク工程と、前記第1の主面側から前記メタル膜付き基板に対し前記ブレークバーを当接させることによって前記メタル膜を前記分断予定位置において分断する第2ブレーク工程と、を備えるようにした。
【0013】
前記ダイシング工程においては、さらに、形成されるダイシング溝の深さをA、前記ダイシング溝の幅をB、前記スクライビングツールのスクライブ誤差をC、前記スクライビングツールの刃先角をδとするとき、B>2Atan(δ/2)+Cなる関係式をみたすように前記ダイシング溝を形成することによって、前記基材を露出させる、ようにした。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るメタル膜付き基板の分断方法において、前記薄膜層の前記分断予定位置に金属パターンが設けられてなる、ようにした。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1ないし第2の態様のいずれかに係るメタル膜付き基板の分断方法において、前記ブレークバーの刃先先端部の曲率半径が5μm~30μmである、ようにした。
【0016】
本発明の第4の態様は、第3の態様に係るメタル膜付き基板の分断方法において、前記所定の分断予定位置が所定の間隔d1にて複数定められており、前記第1ブレーク工程および前記第2ブレーク工程は、水平方向において離隔する一対の保持部によって前記メタル膜付き基板を下方から支持した状態で、前記一対の保持部のそれぞれから等価な位置において行うようにし、前記一対の保持部の離隔距離d2を、前記第1 ブレーク工程においてはd2=0.5d1~1.25d1とし、前記第2ブレーク工程においてはd2= 1.0d1~1.75d1とする、ようにした。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1ないし第4の態様のいずれかに係るメタル膜付き基板の分断方法において、前記ダイシング工程、前記スクライブ工程、前記第1 ブレーク工程、および前記第2ブレーク工程を、前記メタル膜に粘着性テープを貼付した状態で行い、前記第1ブレーク工程においては、前記メタル膜以外の部分を分断するとともに前記メタル膜および前記粘着性テープの前記分断予定位置に相当する位置に折り目を形成する、ようにした。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1ないし第5の態様のいずれかに係るメタル膜付き基板の分断方法において、前記第1ブレーク工程は、前記メタル膜付き基板の姿勢を前記スクライブ工程のときとは上下反転させて行い、前記第2 ブレーク工程は、前記メタル膜付き基板の姿勢を前記第1ブレーク工程のときとは上下反転させて行う、ようにした。
【0019】
本発明の第1ないし第6の態様によれば、メタル膜に剥がれを生じさせることなく、メタル膜付き基板を良好に分断することができる。
【0020】
特に、第2の態様によれば、薄膜層の分断予定位置に金属パターンが設けられてなるメタル膜付き基板について、薄膜層を直接にスクライブする場合よりも良好にかつ確実に、メタル膜付き基板を分断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態に係る方法における分断の対象である基板(母基板)10の構成を模式的に示す側面図である。
【
図2】ダイシング処理の実行前の様子を模式的に示す図である。
【
図3】ダイシング処理の実行後の様子を模式的に示す図である。
【
図4】スクライブ処理の実行前の様子を模式的に示す図である。
【
図5】ダイシング処理によって形成されるダイシング溝の形状と、スクライブ処理において用いるスクライビングホイールのサイズとの関係を説明するための図である。
【
図6】スクライブ処理の実行中の様子を模式的に示す図である。
【
図7】第1ブレーク処理の実行前の様子を模式的に示す図である。
【
図8】第1ブレーク処理の実行中の様子を模式的に示す図である。
【
図9】第1ブレーク処理の実行後の様子を模式的に示す図である。
【
図10】第2ブレーク処理の実行前の様子を模式的に示す図である。
【
図11】第2ブレーク処理の実行中の様子を模式的に示す図である。
【
図12】第2ブレーク処理を実行後の基板10を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<半導体用デバイス基板>
図1は、本実施の形態に係る方法における分断の対象である基板(母基板)10の構成を模式的に示す側面図である。基板10は、その分断により得られる個片がそれぞれに半導体デバイスをなすことが予定されている半導体デバイス用基板である。本実施の形態においては、係る基板10が、基材1と、該基材1の一方主面側に形成されてなり、半導体層や電極などを含む半導体デバイスの単位パターンが2次元的に繰り返されたデバイスパターン2と、基材1の他方主面側に形成されてなるメタル膜3とを有するものとする。換言すれば、基板10は、メタル膜付き基板といえる。
【0023】
基材1は、SiCやSiなどの単結晶またはセラミックスなどの多結晶の基板である。その材質や、厚みおよび平面サイズなどは、作製しようとする半導体デバイスの種類、用途、機能等に応じて適宜に選択・設定される。係る基材1としては、例えば、厚みが100μm~600μm程度の、2~6インチ径のSiC基板などが例示される。
【0024】
デバイスパターン2は、作製対象たる半導体デバイスにおいてその機能や特性の発現に主に関わる、半導体層、絶縁層、電極などを含む部位である。その具体的構成は、半導体デバイスの種類によって様々であるが、本実施の形態においては、基材1の一方主面の全面に形成された薄膜層2aと、該薄膜層2aの上面に部分的に形成された電極2bとによってデバイスパターン2が構成されており、かつ、薄膜層2aの一部が、金属パターン(金属薄膜を含むパターン)の一態様としてのTEGパターン2tである場合を想定する。ここで、薄膜層2aは単層であっても多層であってもよく、電極2bについても単層電極であっても多層電極であってもよい。また、薄膜層2aの内部に配線や電極のパターンが設けられていてもよい。さらには、薄膜層2aが基材1の全面を覆う代わりに、基材1の一部が露出する態様であってもよい。あるいはまた、1つの単位パターンに電極2bが複数設けられていてもよい。
【0025】
薄膜層2aと電極2bの材質やサイズは、作製しようとする半導体デバイスの種類、用途、機能等に応じて適宜に選択・設定される。例えば、TEGパターン2tの金属部分を除く薄膜層2aの材質としては、窒化物(例えばGaN、AlN)、酸化物(例えばAl2O3、SiO2)、例えば、金属間化合物(例えばGaAs)、有機化合物(例えばポリイミド)などが例示される。TEGパターン2tの金属部分および電極2bの材質は、一般的な金属材料から適宜に選択されてよい。例えば、Ti、Ni、Al、Cu、Ag、Pd、Au、Ptなどの金属や、それらの合金などが例示される。また、薄膜層2aおよび電極2bの厚みは通常、基材1の厚みに比して小さい。
【0026】
TEGパターン2tは、基板10の分断前の段階における半導体デバイスの評価(特性評価、不良解析等)に使用するべく、形成されてなるものである。換言すれば、最終的に得られる半導体デバイスにおいては不要なパターンである。
【0027】
メタル膜3は、主として裏面電極としての使用が想定されるものである。ただし、本実施の形態では、係るメタル膜3が、基材1の他方主面の全面に(より詳細には、少なくとも分断予定位置を跨がって)形成されてなるものとする。メタル膜3も、電極2bと同様、単層でも多層であってもよく、その材質も電極2bと同様、Ti、Ni、Al、Cu、Ag、Pd、Au、Ptなどの金属や、それらの合金など、一般的な電極材料から適宜に選択されてよい。また、メタル膜3の厚みも通常、基材1の厚みに比して小さい。
【0028】
本実施の形態においては、以上のような構成の基板10が、少なくとも面内の所定の方向において所定の間隔にて定められた分断予定位置Pにおいて厚み方向に分断されるものとする。分断予定位置Pは、基板10の厚み方向に沿った仮想面として観念される。ただし、本実施の形態に係る基板10においては、一方主面側におけるTEGパターン2tの配置位置に分断予定位置Pが位置するように、分断予定位置Pが定められるものとする。より詳細には、基板10の設計時点であらかじめ、一方主面側におけるTEGパターン2tの配置位置が、分断予定位置Pを中心とする所定幅(ストリート幅)の範囲内に定められる。
【0029】
これに加えて、平面視矩形状の半導体デバイスを得るべく、当該方向に直交する方向においても適宜の間隔にて分断予定位置が定められてよい。
【0030】
なお、
図1には、図面視左右方向において間隔(ピッチ)d1で互いに離隔する3つの分断予定位置Pを、基板10を超えて延在する一点鎖線として示しているが、実際には、一方向についてさらに多くの分断予定位置Pが規定されてよい。d1は例えば1.5mm~5mm程度であり、少なくとも0.5mm以上である。
【0031】
<ダイシング処理>
以降、本実施の形態に係る分断方法において基板10に対して実施する分断処理の具体的内容につき、順次に説明する。
【0032】
まずは、基板10に対しダイシング処理(溝入れ処理)を行う。ダイシング処理は、後工程であるスクライブ処理におけるスクライブ対象を基材1とするために、薄膜層2aを部分的に除去して基材1を露出させる処理である。すなわち、ダイシング処理は、スクライブ処理の前処理として位置付けられる。
【0033】
図2は、ダイシング処理の実行前の様子を模式的に示す図である。
図3は、ダイシング処理の実行後の様子を模式的に示す図である。
【0034】
図2に示すように、本実施の形態において、ダイシング処理は、ダイシング装置(ダイサー)50を用いて行う。ダイシング装置50は、ダイシング対象物が載置されるステージ51と、ダイシング対象物を上方からダイシングするダイシングブレード52とを備える。
【0035】
ステージ51は、水平な上面を被載置面として有し、係る被載置面に載置されたダイシング対象物を図示しない吸引手段によって吸引固定できるように構成されている。また、ステージ51は、図示しない駆動機構によって水平面内における二軸移動動作や回転動作が可能とされている。
【0036】
一方、ダイシングブレード52は、外周面に刃先52eを有する円環状の部材である。少なくとも刃先52eはダイヤモンドにて形成されてなる。刃先52eはダイシング対象物に応じて種々の断面形状を取り得るが、
図2においては、所定の刃先角αを有する断面視二等辺三角形状の刃先52eを例示している。係るダイシングブレード52は、ステージ51の上方において、鉛直方向に昇降可能に設けられた図示しない駆動機構により保持され、かつ、係る駆動機構によって、ステージ51の一方の水平移動方向と平行な鉛直面内において回転可能とされてなる。
【0037】
以上のような機能を有するのであれば、ダイシング装置50としては、公知のものを適用可能である。
【0038】
ダイシング処理は、
図2に示すように、基板10のメタル膜3側に、基板10の平面サイズよりも大きな平面サイズを有する粘着性のダイシングテープ(エキスパンドテープ)4を貼付したうえで行う。なお、以降の説明においては、係るダイシングテープ4を貼付した状態のものについても、単に基板10と称することがある。ダイシングテープ4には、厚みが80μm~150μm程度(例えば100μm)の公知のものを適用可能である。
【0039】
具体的には、まず、
図2に示すように、係るダイシングテープ4をステージ101の被載置面と接触させる態様にて基板10をステージ101上に載置し、吸引固定する。すなわち、基板10は、デバイスパターン2の側が上方を向く姿勢にて、ステージ101に載置固定される。このとき、ダイシングブレード52は、基板10とは接触しない高さに配置されている。
【0040】
基板10の固定がなされると、続いて、ステージ51を適宜に動作させることにより、分断予定位置Pとダイシングブレード52の刃先52eを含む回転面とが同一の鉛直面内に位置するように、位置決めがなされる。係る位置決めを行うことにより、
図2に示すように、ダイシングブレード52の刃先52eが、分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Paの上方に位置することになる。より詳細には、分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Paは直線状となっており、位置決めは、その一方端部側の上方にダイシングブレード52が位置するように行われる。
【0041】
係る位置決めがなされると、ダイシングブレード52は、図示しない駆動機構によって、鉛直面内にて所定の回転数にて回転させられながら、
図2において矢印AR0にて示すように、刃先52eが分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Paに向けて鉛直下方に下降させられる。
【0042】
やがて、ダイシングブレード52は基板10と接触するが、係る接触の後も引き続き、回転状態を保ちつつ所定距離だけ下降させられる。係る下降の距離は、薄膜層2aの厚みと同一あるいはそれ以上に設定される。そして、係る下降がなされると、ステージ51が水平移動することにより、ダイシングブレード52は、分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Paの延在方向(
図2においては図面に垂直な方向)において、相対的に移動させられる。より詳細には、デバイスパターン側端部Paの他方端部に向けて相対移動させられる。
【0043】
すると、回転するダイシングブレード52の(相対)移動に伴い、薄膜層2aのうち、TEGパターン2tを含む、分断予定位置Pに沿った所定幅の部分が、所定の深さにて切削除去される。これにより、
図3に示すような、分断予定位置Pに関して対称な形状のダイシング溝dgが、順次に形成される。換言すれば、係るダイシング処理によって、薄膜層2aに被覆されていた基材1の一部が露出することになる。なお、ダイシングブレード52の下降距離によっては、基材1の一部についても除去されることもある。
図3においては、そのような場合を例示している。
【0044】
ダイシング処理におけるダイシングブレード52の回転速度や、ステージ101の移動速度(ダイシング速度)は、上述した加工が好適に行える範囲で、適宜に定められてよい。例えば、ダイシングブレード52の回転速度は30000rpm~40000rpm程度(例えば36000rpm)であればよく、ダイシング速度は5mm/s~60mm/s(例えば40mm/s)であればよい。
【0045】
ただし、ダイシング処理にて形成するダイシング溝dgの具体的なサイズは、後工程である、基材1を対象としたスクライブ処理に用いるスクライビングホイール102のサイズに応じたものとする必要がある。この点については後述する。
【0046】
ダイシング処理によるダイシング溝dgの形成は、全ての分断予定位置Pについて行われる。
【0047】
<スクライブ処理>
以上のような態様にてダイシング処理がなされると、続いて、ダイシング溝dgにおいて露出している基材1の分断予定位置Pを対象に、スクライブ処理が実行される。
図4は、スクライブ処理の実行前の様子を模式的に示す図である。
図5は、ダイシング処理によって形成されるダイシング溝dgの形状と、スクライブ処理において用いるスクライビングホイール102のサイズとの関係を説明するための図である。
図6は、スクライブ処理の実行中の様子を模式的に示す図である。
【0048】
本実施の形態において、スクライブ処理は、
図4に示すようなスクライブ装置100を用いて行う。スクライブ装置100は、スクライブ対象物が載置されるステージ101と、スクライブ対象物を上方からスクライブするスクライビングホイール102とを備える。
【0049】
ステージ101は、水平な上面を被載置面として有し、係る被載置面に載置されたスクライブ対象物を図示しない吸引手段によって吸引固定できるように構成されている。また、ステージ101は、図示しない駆動機構によって水平面内における二軸移動動作や回転動作が可能とされている。
【0050】
一方、スクライビングホイール102は、外周面に断面視二等辺三角形状の刃先102eを有する、直径が2mm~3mmの円板状の部材(スクライビングツール)である。少なくとも刃先102eはダイヤモンドにて形成されてなる。また、刃先102eの角度(刃先角)δは100°~150°(例えば110°)であるのが好適である。係るスクライビングホイール102は、ステージ101の上方に、鉛直方向に昇降可能に設けられた図示しない保持手段により、ステージ101の一方の水平移動方向と平行な鉛直面内において回転自在に保持されてなる。
【0051】
以上のような機能を有するのであれば、スクライブ装置100としては、公知のものを適用可能である。
【0052】
スクライブ処理も、ダイシング処理に引き続き、基板10のメタル膜3側に、基板10の平面サイズよりも大きな平面サイズを有する粘着性のダイシングテープ(エキスパンドテープ)4を貼付した状態で行う。
【0053】
具体的には、まず、
図4に示すように、係るダイシングテープ4をステージ101の被載置面と接触させる態様にて、ダイシング処理後の基板10をステージ101上に載置し、吸引固定する。すなわち、基板10は、ダイシング処理のときと同様、デバイスパターン2の側が上方を向く姿勢にて、ステージ101に載置固定される。このとき、スクライビングホイール102は、基板10とは接触しない高さに配置されている。
【0054】
基板10の固定がなされると、続いて、ステージ101を適宜に動作させることにより、分断予定位置Pとスクライビングホイール102の回転面とが同一の鉛直面内に位置するように、位置決めがなされる。係る位置決めを行うことにより、
図4に示すように、スクライビングホイール102の刃先102eが、分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Pa’の上方に位置することになる。より詳細には、分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Pa’はダイシング溝dgにおいて直線状となっており、位置決めは、その一方端部側の上方にスクライビングホイール102が位置するように行われる。
【0055】
係る位置決めがなされると、スクライビングホイール102は、図示しない保持手段によって、
図4において矢印AR1にて示すように、刃先102eが分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Pa’に圧接されるまで鉛直下方に下降させられる。
【0056】
このとき、ダイシング溝dgのサイズが小さすぎると、スクライビングホイール102の側面がダイシング溝dgの端部と干渉し、刃先102eの先端がデバイスパターン側端部Pa’に到達しなくなってしまう。それゆえ、本実施の形態においては、係る干渉が生じることのないように、スクライブ処理に先立つダイシング処理において、ダイシング溝dgを形成する。
【0057】
具体的には、
図5に示すように、ダイシング溝dgの深さ(ダイシングブレード52の薄膜層2a上面からの下降距離)をA、ダイシング溝dgの幅(水平面内においてダイシング方向に垂直な方向のサイズ)をB、スクライビングホイール102のスクライブ誤差(スクライブ精度)をC、スクライビングホイール102の刃先102eから距離Aの位置におけるスクライビングホイール102の幅をwとするとき、スクライビングホイール102とダイシング溝dgとが干渉しないためには、
B>w+C ・・・・・(1)
であることが必要である。
【0058】
ここで、刃先角δを用いると、
w=2Atan(δ/2) ・・・・・(2)
と表される。(2)式を(1)式に代入すると、
B>2Atan(δ/2)+C ・・・・・(3)
係る(3)式をみたすように、ダイシング溝dgを設けた場合には、スクライビングホイール102とダイシング溝dgとの干渉を生じさせることなく、スクライブ処理を行うことが出来る。
【0059】
なお、スクライビングホイール102の刃先角δが110°である場合において、Aの値を5μm~10μm程度とする場合、Bの値はせいぜい50μm~70μm程度であれば十分である。(3)式に照らせば、Bの値を過度に大きくする必要はない。そもそも、Bの値を大きくするほど、分断によって得られる個片のサイズが小さくなってしまうため、Bの値を過度に大きくすることは現実的ではない。
【0060】
スクライブ処理における圧接の際に刃先102eが基板10に対して印加する荷重(スクライブ荷重)や、ステージ101の移動速度(スクライブ速度)は、基板10の構成材料の、なかでも特に基材1の、材質や厚みなどによって適宜に定められてよい。例えば、基材1がSiCからなる場合であれば、スクライブ荷重は1N~10N程度(例えば3.5N)であればよく、スクライブ速度は100mm/s~300mm/s(例えば100mm/s)であればよい。
【0061】
係る圧接がなされると、この圧接状態を維持したまま、スクライビングホイール102が分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Pa’の延在方向(
図4においては図面に垂直な方向)に移動される。これにより、スクライビングホイール102は相対的に、当該方向に(デバイスパターン側端部Pa’の他方端部に向けて)転動させられる。
【0062】
そして、係る態様にてデバイスパターン側端部Pa’に沿ったスクライビングホイール102の圧接転動が進行すると、
図6に示すように、スクライビングホイール102が圧接された箇所においてスクライブラインSLが形成されていくとともに、係るスクライブラインSLから分断予定位置Pに沿って鉛直下方に、垂直クラックVCが伸展(浸透)する。最終的に分断が良好になされるという点からは、垂直クラックVCは少なくとも基材1の中ほどにまで伸展するのが好ましい。
【0063】
係るスクライブ処理による垂直クラックVCの形成は、全ての分断予定位置Pにおいて行われる。
【0064】
なお、ダイシング処理を行わず、薄膜層2aを残したままスクライブ処理を行うことも可能ではある。係る場合、薄膜層2aにスクライビングホイール102を当接させてスクライブを行うことになる。しかしながら、TEGパターン2tのような金属パターンが分断予定位置Pに形成されてなる場合、薄膜層2aから基材1に向けて伸展(浸透)する垂直クラックVCの浸透量が不安定となるという問題が生じる。基材1において垂直クラックVCが十分に伸展(浸透)しない箇所が生じた結果として、後工程であるブレーク処理に際して不良が発生することがある。
【0065】
これに対し、本実施の形態においては、ダイシング処理によってTEGパターン2tのような金属パターンを除去して基材1を露出させ、係る基材1を対象にスクライブ処理を行うようにしているので、薄膜層2aを残したままスクライブ処理を行う場合に比して、基材1における垂直クラックVCの浸透量が安定する。結果として、ブレーク処理における不良の発生が抑制されるという効果が得られる。すなわち、薄膜層2aを直接にスクライブする場合よりも良好かつ確実に、基板10を分断することが可能となっている。
【0066】
<第1ブレーク処理>
上述のように垂直クラックVCが形成された基板10は、続いて、第1ブレーク処理に供される。
図7は、第1ブレーク処理の実行前の様子を模式的に示す図である。
図8は、第1ブレーク処理の実行中の様子を模式的に示す図である。
図9は、第1ブレーク処理の実行後の様子を模式的に示す図である。
【0067】
本実施の形態において、第1ブレーク処理は、ブレーク装置200を用いて行う。ブレーク装置200は、ブレーク対象物が載置される保持部201と、ブレーク処理を担うブレークバー202とを備える。
【0068】
保持部201は、一対の単位保持部201aと201bとからなる。単位保持部201aと201bは、水平方向において所定の距離(離隔距離)d2にて互いに離隔させて設けられてなり、同じ高さ位置とされた両者の水平な上面が全体として一のブレーク対象物の被載置面として用いられる。換言すれば、ブレーク対象物は、一部を下方に露出させた状態で、保持部201上に載置される。保持部201は例えば金属にて構成される。
【0069】
また、保持部201は、水平面内のあらかじめ定められた一の方向(保持部進退方向)における一対の単位保持部201aと201bの近接および離隔動作が可能とされてなる。すなわち、ブレーク装置200においては、離隔距離d2は可変とされてなる。
図7においては、図面視左右方向が保持部進退方向となる。
【0070】
さらに保持部201においては、図示しない駆動機構により、被載置面に載置されたブレーク対象物の水平面内におけるアライメント動作が可能とされている。
【0071】
ブレークバー202は、断面視二等辺三角形状の刃先202eが刃渡り方向に延在するように設けられてなる板状の金属製(例えば超硬合金製)部材である。
図7においては、刃渡り方向が図面に垂直な方向となるように、ブレークバー202を示している。刃先202eの角度(刃先角)θは5°~90°であり、5~30°(例えば15°)であるのが好適である。係る好適な刃先角θは、従来の一般的なブレーク処理において用いられていたブレークバーの刃先角である60°~90°に比して小さい。
【0072】
なお、より詳細には、刃先202eの最先端部分は曲率半径が5μmから30μm程度(例えば15μm)の微小な曲面となっている。係る曲率半径も、従来の一般的なブレーク処理において用いられていたブレークバーの曲率半径である50μm~100μmに比して小さい。
【0073】
係るブレークバー202は、保持部進退方向における一対の単位保持部201aと201bの中間位置(それぞれから等価な位置)の上方において、図示しない保持手段により、保持部進退方向に垂直な鉛直面内において鉛直方向に昇降可能に設けられてなる。
【0074】
以上のような構成を有するブレーク装置200を用いた第1ブレーク処理は、
図7に示すように、ダイシングテープ4が貼付された状態のスクライブ処理後の基板10の、デバイスパターン2側の面および側部を覆う態様にて、保護フィルム5を貼付したうえで行う。以降の説明においては、係る保護フィルム5を貼付した状態のものについても、単に基板10と称することがある。保護フィルム5には、厚みが10μm~75μm程度(例えば25μm)の公知のものを適用可能である。
【0075】
具体的には、まず、
図7に示すように、保護フィルム5を保持部201の被載置面と接触させる態様にて基板10を保持部201上に載置する。すなわち、基板10は、デバイスパターン2側が下方となりメタル膜3側が上方となる姿勢で、つまりはスクライブ処理のときとは上下反転した姿勢で、保持部201上に載置される。このとき、ブレークバー202は、基板10とは接触しない高さに配置されている。
【0076】
なお、本実施の形態のように、所定の間隔(ピッチ)d1で複数の分断予定位置Pが定められているときは、離隔距離d2が基板10の分断予定位置Pの間隔(ピッチ)d1と等しくなるように一対の単位保持部201aと201bを配置した状態で、基板10を保持部201上に載置する。これは一般的なブレーク処理の際に採用されるd2=1.5d1(d2はd1の(3/2)倍)なる条件に比して、一対の単位保持部201aと201bの間隔を狭めた条件となっている。なお、実際の処理においては、d2=0.5d1~1.25d1となる範囲であればよい。
【0077】
基板10の載置がなされると、続いて、駆動機構を適宜に動作させることにより、基板10の位置決めがなされる。具体的には、スクライブ処理においてスクライブラインSLさらには垂直クラックVCを設けた基板10の分断予定位置Pの延在方向が、ブレークバー202の刃渡り方向に一致させられる。係る位置決めを行うことにより、
図7に示すように、ブレークバー202の刃先202eが、分断予定位置Pのメタル膜側端部Pbの上方に位置することになる。
【0078】
係る位置決めがなされると、
図7において矢印AR2にて示すように、ブレークバー202は、刃先202eが分断予定位置Pのメタル膜側端部Pb(より詳細にはダイシングテープ4の上面)に向けて鉛直下方に下降させられる。
【0079】
ブレークバー202は、その刃先202eが分断予定位置Pのメタル膜側端部Pbに当接した後も所定距離だけ下降させられる。すなわち、基板10に対して所定の押し込み量にて押し込まれる。係る押し込み量は0.05mm~0.2mm(例えば0.1mm)であるのが好適である。
【0080】
すると、
図8に示すように、基板10に対してブレークバー202の刃先202eを作用点とし、一対の単位保持部201a、201bのそれぞれの被載置面の内側端部f(fa、fb)を支点とする三点曲げの状況が生じる。これにより、
図8において矢印AR3にて示すように、基板10には、相反する2つの向きに引張応力が作用し、その結果、垂直クラックVCはさらに伸展させられるとともに、基材1およびデバイスパターン2は左右2つの部分にいったん離隔し、両部分の間には間隙Gが形成される。
【0081】
ただし、メタル膜3は、この時点では離隔には至らず、単に刃先202eの押し込みによって折り曲げられるに留まる。すなわち、ブレークバー202の押し込みの際、メタル膜3、および、刃先202eとメタル膜3との間に位置するダイシングテープ4には、折曲部Bが形成される。
【0082】
その後、
図9にAR4にて示すように、ブレークバー202が上昇させられて基板10の押し込みが解除されると、間隙Gは閉じて左右2つの部分の端部が当接した分断面Dとなる。一方、メタル膜3とダイシングテープ4には、折曲部Bが残存する。メタル膜3においては、折曲部Bが、他の平坦なメタル膜3の部分に比して材料強度的に弱い部分となっている。係る折曲部Bは、折り目として視認される。
【0083】
以上のような態様にて行う、第1ブレーク処理は、基材1およびデバイスパターン2における分断を確実に生じさせるとともに、メタル膜3においては、折り目として視認可能な折曲部Bが確実に形成されるようにすることを意図したものである。そして、これらを好適に実現するための条件として、第1ブレーク処理においては、一般的なブレーク処理とは異なり、一対の単位保持部201aと201bの離隔距離d2を分断予定位置Pの間隔d1と等しくし、刃先202eの最先端部分の曲率半径を5μm~30μmとしている。また、刃先角θは5°~30°とすることが好適である。
【0084】
<第2ブレーク処理>
第1ブレーク処理による基材1とデバイスパターン2の分断とメタル膜3とダイシングテープ4に対する折曲部Bの形成とがなされると、続いて、第2ブレーク処理が行われる。第2ブレーク処理は、第1ブレーク処理と同様、ブレーク装置200を用いて行う。
【0085】
図10は、第2ブレーク処理の実行前の様子を模式的に示す図である。
図11は、第2ブレーク処理の実行中の様子を模式的に示す図である。
図12は、第2ブレーク処理を実行後の基板10を模式的に示す図である。
【0086】
第2ブレーク処理に際しては、まず、
図10に示すように、一般的なブレーク処理と同様、d2=1.5d1(d2はd1の(3/2)倍)となるように一対の単位保持部201aと201bを配置した状態で、ダイシングテープ4を保持部201の被載置面と接触させる態様にて基板10を保持部201上に載置する。すなわち、基板10は、第1ブレーク処理のときとは上下反転した姿勢で、保持部201上に載置される。d1が例えば2.11mm~2.36mm程度である場合には、d2は3.165mm~3.54mmとなる。なお、実際の処理においては、d2=1.0d1~1.75d1となる範囲であればよい。また、第1ブレーク処理におけるd2より第2ブレーク処理におけるd2が大きくされることが好ましい。このとき、ブレークバー202は、基板10とは接触しない高さに配置されている。
【0087】
基板10の載置がなされると、続いて、駆動機構を適宜に動作させることにより、基板10の位置決めがなされる。具体的には、分断面Dおよび折曲部Bの延在方向が、ブレークバー202の刃渡り方向に一致させられる。このとき、メタル膜3に形成されている視認可能な折曲部Bを、アライメントの指標として有効に利用することができる。係る位置決めを行うことにより、
図10に示すように、ブレークバー202の刃先202eが、もともとは分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Pa’であった、分断面Dの上端部の上方に位置することになる。
【0088】
係る位置決めがなされると、
図10において矢印AR5にて示すように、ブレークバー202は、刃先202eが分断予定位置Pのデバイスパターン側端部Pa’(より詳細には保護フィルム5の上面)に向けて鉛直下方に下降させられる。
【0089】
係るブレークバー202の下降は、
図11に示すように、刃先202eが保護フィルム5を介してダイシング溝dgにおいて露出している基材1を所定の押し込み量にて押し込むまで行われる。このとき、デバイスパターン2および基材1はすでに2つに分断されており、その分断面Dに対して上方から力が加わる。その結果、矢印AR6にて示すように、メタル膜3には、分断面Dの下方において相反する2つの向きに引張応力が作用する。上述したように、メタル膜3の折曲部Bは他の部分に比して材料強度的に弱いので、最終的には、
図12に示すように、メタル膜3までもが折曲部Bのところで分断されて分断面Dをなし、ダイシングテープ4のみに折曲部Bが残存した状態が容易かつ確実に実現される。
【0090】
係る第2ブレーク処理における係る押し込み量は、第1ブレーク処理における押し込み量の半分程度の0.02mm~0.1mm(例えば0.05mm)であるのが好適である。これは、分断された2つの部分の接触により破損が生じることを防ぐためである。なお、d2=1.5d1としているが、これは、このような小さい押し込み量でもメタル膜3が折曲部Bのところで好適に分断されるようにすることを意図したものである。
【0091】
第2ブレーク処理の終了後、
図12に矢印AR7にて示すように、ダイシングテープ4に対し面内方向に引張応力を作用させることで、ダイシングテープ4は伸張し、基板10は分断面Dのところで2つの部分10A、10Bに離隔させられる。これにより、基板10が2つに分断されたことになる。
【0092】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、基材の一方主面にデバイスパターンを有し、他方主面にメタル膜を有する半導体デバイス用基板であって、デバイスパターン側の分断予定位置にTEGパターンのような金属パターンが形成されているものの分断を、良好かつ確実に、行うことができる。
【0093】
<変形例>
上述の実施の形態においては、スクライビングホイールによりスクライブ処理を行っているが、スクライブラインの形成およびクラックの伸展が好適に実現されるのであれば、ダイヤモンドポイント等、スクライビングホイール以外のツールによってスクライブラインを形成する態様であってもよい。
【0094】
また、第1のブレーク工程においてすでに基材1に垂直クラックVCが形成され、メタル膜3に折曲部Bが形成されているため、第2のブレーク工程においては、従来の分断処理と同様の刃先角θと先端における曲率半径とを有するブレークバーを用いてもよい。
【0095】
上述の実施の形態においては、ダイシングブレード52を用いてダイシング処理を行っているが、レーザーの照射等によりダイシング溝を形成する態様であってもよい。
【0096】
また、第1ブレーク工程、第2ブレーク工程において用いられたブレーク装置は、水平方向において所定の距離離隔された一対の単位保持部201aと201bとからなる保持部201を備えているが、これに代えて、基板の全面に接触して保持する弾性体からなる保持部を備えるブレーク装置を用いてもよい。この場合にも、第1ブレーク処理における押し込み量は0.05mm~0.2mm(例えば0.1mm)であり、第2ブレーク処理における押し込み量は、第1ブレーク処理における押し込み量の半分程度の0.02mm~0.1mm(例えば0.05mm)であるのが好適である。