(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】動脈系の機能性を測定するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20240112BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61B5/022 400F
A61B5/02 310B
A61B5/022 400Z
(21)【出願番号】P 2021540018
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 FI2019050807
(87)【国際公開番号】W WO2020144397
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-09-27
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】513323128
【氏名又は名称】トゥルン イリオピスト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】トゥーッカ パヌラ
(72)【発明者】
【氏名】マッティ カイスティ
(72)【発明者】
【氏名】ミッコ パンカーラ
(72)【発明者】
【氏名】テロ コイビスト
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-007312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0142434(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0095168(US,A1)
【文献】特開2009-285029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0215118(US,A1)
【文献】特開平11-070087(JP,A)
【文献】特開2005-131356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の動脈系の機能性を測定するための装置であって、
前記装置は、前記動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射し、前記動脈系から反射された前記電磁放射の一部を受信するためのフォトプレチスモグラフィセンサ(101、201、301、401)を備えており、前記装置は更に、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記動脈系に印加される機械的圧力を管理するための圧力装置(102、202a、202b、302、402)を備えて
おり、前記装置は、前記機械的圧力が開始値から終了値まで増減されるときに、前記反射された電磁放射の包絡線が最大値に到達するときの前記機械的圧力の第1値を決定するための処理システム(103、203、303)を備えており、前記決定された第1値は、前記動脈系の細動脈の平均動脈血圧を示していること
を特徴とする、装置。
【請求項2】
前記圧力装置(202a、202b、302、402)は、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記動脈系に印加される前記機械的圧力を変更することに適していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記圧力装置(202b、402)は、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記機械的圧力を前記個人の指先に向け、前記機械的圧力を変更するための押し付け要素(204、404)を備えていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記処理システムは、前記決定された第1値よりも大きい前記機械的圧力であって、前記反射された電磁放射の前記包絡線が、前記最大値の、ほぼ所定のパーセンテージであるときの前記機械的圧力の第2値を決定するように構成されており、前記決定された第2値は、前記動脈系の前記細動脈の収縮期血圧と共に、前記動脈系の動脈の拡張期血圧を示していることを特徴とする、請求項
1から3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記圧力装置を、前記反射された電磁放射の包絡線がほぼゼロにまで降下するまで前記機械的圧力を増大し、それに続いて前記機械的圧力を一定に保つように制御するための処理システム(403)を備えていることを特徴とする、請求項2または3に記載の装置。
【請求項6】
前記処理システムは、前記機械的圧力が一定に保たれるときに、前記反射された電磁放射の前記包絡線が増大するかどうかを検出するように構成されており、前記包絡線の増大は、前記動脈
系の正常な内皮機能を示していることを特徴とする、請求項
5に記載の装置。
【請求項7】
前記圧力装置(102、202a)は、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を指先に出射し、前記電磁放射を前記指先から受信するときに、前記個人の前記指先により圧力センサに向けられた圧力を測定するための前記圧力センサを備えていることを特徴とする、請求項1から
6の何れかに記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、モバイル機器(107)の一部であり、前記圧力センサと前記フォトプレチスモグラフィセンサは、前記モバイル機器の表面上にあることを特徴とする、請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記電磁放射の前記波長は、500nmから600nmの前記範囲であることを特徴とする、請求項1から
8の何れかに記載の装置。
【請求項10】
前記電磁放射の前記波長は、500nmから550nmの前記範囲であることを特徴とする、請求項1から
9の何れかに記載の装置。
【請求項11】
475nmから600nmの前記範囲の前記波長を有する前記電磁放射は第1電磁放射であり、前記フォトプレチスモグラフィセンサ(201、401)は、前記動脈系に対して、620nmから900nmの範囲の波長を有する第2電磁放射を出射し、前記動脈系から反射された前記第2電磁放射の一部を受信するように構成されていることを特徴とする、請求項1から
10の何れかに記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記機械的圧力が開始値から終了値まで増減されるときに、前記反射された第2電磁放射の包絡線が最大値に到達するときの前記機械的圧力の第3値を決定するための処理システム(203)を備えており、前記決定された第3値は、前記動脈系の動脈の平均動脈血圧を示していることを特徴とする、請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
前記処理システムは、前記決定された第3値よりも大きい前記機械的圧力であって、前記反射された第2電磁放射の前記包絡線が、前記反射された第2電磁放射の前記包絡線の前記最大値のほぼ第1の所定のパーセンテージであるときの前記機械的圧力の第4値を決定するように構成されており、前記決定された第4値は、前記動脈系の動脈の収縮期血圧を示していることを特徴とする、請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、前記圧力装置を、前記反射された第2電磁放射の
包絡線の最大値に到達するまで前記機械的圧力を増大し、それに続いて前記機械的圧力を一定に保つように制御するための処理システム(403)を備えていることを特徴とする、請求項
11に記載の装置。
【請求項15】
前記圧力装置(302)は、前記機械的圧力を前記個人の上腕動脈に向けるための押し付け装置(305)を備えており、前記フォトプレチスモグラフィセンサ(301)は、前記上腕動脈の上部になるように意図されている前記押し付け装置の表面上に位置していることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項16】
前記押し付け装置(305)は加圧帯であり、前記圧力装置は、前記機械的圧力を前記上腕動脈に向けるために、前記加圧帯の内部の気体の圧力を制御するためのポンプシステム(306)を備えており、前記フォトプレチスモグラフィセンサ(301)は、前記加圧帯の内部表面上に位置していることを特徴とする、請求項
15に記載の装置。
【請求項17】
個人の動脈系の機能性を測定するための方法であって、
前記動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射することと(501)、
前記動脈系から反射された前記電磁放射の一部を受信することと(502)、
前記受信された電磁放射に基づいて、前記動脈系の前記機能性を示す情報を生成すること
と(503)
、
前記電磁放射が前記動脈系に対して出射され、前記反射された電磁放射が前記動脈系から受信されるときに、前記動脈系に印加される機械的圧力を変更すること(504)
を備えており、
前記動脈系の前記機能性を示す前記情報を前記生成すること(503)が、前記機械的圧力が開始値から終了値まで増減されるときに、前記反射された電磁放射の包絡線が最大値に到達するときの前記機械的圧力の第1値を決定し、前記決定された第1値は、前記動脈系の細動脈の平均動脈血圧を示していることを備えていることを特徴とする、方法。
【請求項18】
コンピュータプログラムであって、プログラマブル処理システムが、
フォトプレチスモグラフィセンサを、
動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射し、前記動脈系から反射された前記電磁放射の一部を受信するように制御
し、
圧力装置を、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記動脈系に印加される機械的圧力を管理する
ように制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えており、
前記コンピュータプログラムは更に、前記プログラマブル処理システムが、前記機械的圧力が開始値から終了値まで増減されるときに、前記反射された電磁放射の包絡線が最大値に到達するときの前記機械的圧力の第1値を決定し、前記決定された第1値は、前記動脈系の細動脈の平均動脈血圧を示しているように制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えていることを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項19】
前記コンピュータプログラムは、前記プログラマブル処理システムが、前記圧力装置を、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記動脈系に印加される前記機械的圧力を変更するように制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えていることを特徴とする、請求項
18に記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
請求項
18または
19に記載のコンピュータプログラムで符号化されている非一時的コンピュータ読取り可能媒体
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動脈系の機能性を測定するための装置と方法に関する。測定される機能性は、例えば、動脈の拡張期血圧「DBP」(最低血圧、最小血圧)または血管運動性変化に反応するための血液循環の能力を表わす内皮機能であってよい。更に、本開示は、動脈系の機能性を測定するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
動脈系において起こり得る異常は、診断されず、適切に処置および/または治療されないと、個人の健康を徐々に蝕む可能性がある。例えば、高血圧は、心血管疾患に対する重大な危険因子である。従って、血圧測定は、多くの医療検査における日常業務となっている。ここ数十年の間、典型的な振動測定法である、自動化非侵襲性血圧「NIBP」測定技術が普及している。この技術においては、加圧帯(血圧計で上腕に巻き膨らませる布)が上腕動脈の上に置かれ、収縮期圧を超えるために空気がポンプで加圧帯に送り込まれると、血液の流れは完全に遮断される。加圧帯における空気圧が開放されると、加圧帯において測定される脈動、つまり振動が、平均動脈血圧「MAP」の点まで増大し、この後減少し始める。脈動の鐘形状の包絡線が、対応する減少血圧曲線と共に時間ドメインにおいて提示される。そして収縮期および拡張期血圧が、母集団研究から導出された、予め固定されたパーセンテージを使用してMAPから計算される。収縮期血圧は、典型的には、血圧がMAPより高く、包絡線の値が包絡線の最大値の50%、つまり、MAPに対応する包絡線の値の50%であるときの血圧曲線の点に対応していると考えられ、拡張期血圧は、典型的には、血圧がMAPより低く、包絡線の値が包絡線の最大値の80%であるときの血圧曲線の点に対応していると考えられる。
【0003】
動脈系における異常の他の例は、動脈におけるプラーク(異常な斑)の形成によって引き起こされるアテローム性動脈硬化症に対する前駆状態であることが懸念される内皮機能不全である。臨床試験においては、内皮機能は上腕動脈を数分間閉塞することにより誘発され、開放されると、動脈への血液の流れが増大し、内皮細胞は一酸化窒素NOを排出し始める。そして一酸化窒素は動脈を拡張させてより多くの血液が流れるようにする。内皮機能不全の動脈は、同じようには拡張しない。
【0004】
多くの場合、上記の種類の異常が早期の段階で検出されることは利点である。従って、例えば、血圧を測定し、および/または、内皮機能不全の徴候を得るための、使い方の易しい技術に対する需要がある。
【発明の概要】
【0005】
下記に、種々の発明の実施形態の幾つかの態様の基本的理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。概要は、本発明の広範囲にわたる概観ではない。概要は、本発明のキーとなるまたは重要な要素を特定することも、本発明の範囲を正確に記述することの何れも意図されていない。下記の概要は、本発明の例としての実施形態のより詳細な記述への前置きとして、簡略化された形状において本発明の幾つかの概念を提示しているに過ぎない。
【0006】
本発明によれば、個人の動脈系の機能性を測定するための新しい装置が提供される。本発明に係る装置は、動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射し、動脈系から反射された電磁放射の一部を受信するためのフォトプレチスモグラフィ(光学的体積変動記録器)「PPG」センサを備えている。装置は更に、フォトプレチスモグラフィセンサが電磁放射を動脈系に出射し、電磁放射を動脈系から受信するときに、動脈系に印加される機械的圧力を管理するための圧力装置を備えている。
【0007】
この文献においては、「管理する」という動詞は、管理することが必ずしも、例えば、上記の機械的圧力のような、管理されているエンティティを制御または変更することを含んでおらず、管理することは、管理されるエンティティを測定することのみを含むことができるように、広い意味で理解されるべきである。
【0008】
上記の475nmから600nmの波長範囲は、上記の電磁放射が、皮下組織に位置している動脈には到達せずに、真皮網状層に位置している、より表面に近い皮膚細動脈に到達できるのみであるように選択されている。波長は、例えば必ずしもそうとは限らないが、約537nmであってよく、その場合は、電磁放射は緑の光である。
【0009】
脈圧、つまり、収縮期血圧と拡張期血圧との間の差は、上腕に位置している上腕動脈から手首に位置している橈骨動脈、そして、指先に位置している横手掌弓動脈に向けて増大する。細動脈に入って、最終的に毛細血管に入ると、平均動脈血圧「MAP」と脈圧は相当に降下する。指先の動脈における拡張期血圧は、指先の細動脈の収縮期血圧とほぼ等しいということが分かっている。そのため、上記の装置は、動脈における拡張期血圧を推定するためと共に、細動脈におけるMAPと、細動脈における収縮期血圧を測定するために使用できる。測定手順は、例えば必ずしもそうとは限らないが、指先に印加される機械的圧力を増減し、PPGセンサの出力信号を記録することを含むことができる。PPGセンサの出力信号は、指先の細動脈から反射された電磁放射を示している。MAPは、反射された電磁放射の包絡線が最大値に到達するときの機械的圧力の値に対応している。細動脈における収縮期血圧と動脈における拡張期血圧は、MAPよりも大きい機械的圧力で、反射された電磁放射の包絡線が、最大値の所定のパーセンテージ、例えば50%であるときの機械的圧力の値に対応している。機械的圧力を増減することは、例えば、血液の流れが遮断されるように指を、収縮期血圧を超えて押し付け、そして、徐々に押し付けを削減することを含むことができる。機械的圧力をゼロから、血液の流れが遮断される圧力まで増大することも可能である。反射された電磁放射の包絡線は、例えば、PPGセンサの出力信号を帯域通過フィルタ処理し、帯域通過フィルタ処理された出力信号の包絡線曲線を構築することにより形成できる。
【0010】
他の例として、上記の装置は、内皮機能を測定するために使用できる。測定手順は、例えば必ずしもそうとは限らないが、反射された電磁放射の包絡線がほぼゼロになるまで指先に印加される機械的圧力を増大し、そして、その機械的圧力を一定に保つことを含むことができる。適切な内皮機能の場合、反射された電磁放射の包絡線における増大は、機械的圧力が一定に保たれるときに見ることができる。内皮機能不全の場合は、上記の種類の増大は起きない。
【0011】
例としての非制限的実施形態に係る装置においては、PPGセンサは、動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する上記の第1電磁放射に加えて、620nmから900nmの範囲の波長を有する第2電磁放射を出射するための手段と、動脈系から反射された上記の第1および第2電磁放射の一部を受信するための手段を備えている。
【0012】
620nmから900nmの第2電磁放射の波長範囲は、第2電磁放射が、皮下組織に位置している動脈に到達するように選択されている。そのため、第2電磁放射は、動脈における拡張期血圧と共に、動脈におけるMAPと、動脈における収縮期血圧を測定するために使用できる。そのため、動脈における拡張期血圧は、第1および第2電磁放射の両者で測定でき、そのため、測定の精度と信頼性を向上する。測定手順は、例えば必ずしもそうとは限らないが、指先に印加される機械的圧力を増減し、指先の動脈系から反射された第1および第2電磁放射に対応する第1および第2出力信号をPPGセンサから記録することを含むことができる。他の例としては、第2電磁放射は、内皮機能を測定するときに、指先に印加される機械的圧力が増大されて到達する圧力を決定するために使用できる。この測定においては、機械的圧力は、反射された第2電磁放射の包絡線が、その最大値に到達するまで増大される。第2電磁放射の波長は、例えば必ずしもそうとは限らないが、約660nmであってよく、その場合は、第2電磁放射は赤い光であり、または、約880nmであってよく、その場合は、第2電磁放射は赤外線(IR)放射である。
【0013】
本発明によれば、個人の動脈系の機能性を測定するための新しい方法が提供される。本発明に係る方法は、
動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射することと、
動脈系から反射された電磁放射の一部を受信することと、
電磁放射が動脈系に対して出射され、反射された電磁放射が動脈系から受信されるときに、動脈系に印加される機械的圧力を変更することと、
受信された電磁放射に基づいて、動脈系の機能性を示す情報を生成することを備えている。
【0014】
本発明によれば、個人の動脈系の機能性を測定するための新しいコンピュータプログラムもまた提供される。本発明に係るコンピュータプログラムは、プログラマブル処理システムが、
フォトプレチスモグラフィセンサを、動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射し、動脈系から反射された電磁放射の一部を受信するように制御し、
圧力装置を、フォトプレチスモグラフィセンサが電磁放射を動脈系に対して出射し、電磁放射を動脈系から受信するときに、動脈系に印加される機械的圧力を管理するように制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えている。
【0015】
本発明によれば、新しいコンピュータプログラム製品もまた提供される。コンピュータプログラム製品は、本発明に係るコンピュータプログラムで符号化された、例えば、コンパクトディスク「CD」などの不揮発性コンピュータ読取り可能媒体を備えている。
【0016】
例としての非制限的実施形態は、付随する従属請求項において記述される。
【0017】
構成と動作の方法の両者についての種々の例としての非制限的実施形態は、その追加的な目的と利点と共に、付随する図面と一緒に読まれると、特定の例としての実施形態の下記の記述から最も良好に理解されるであろう。
【0018】
この文献においては、「備える」と「含む」という動詞は、列挙されていない特徴もその存在を排除するものでも要求するものでもない開放的制限として使用されている。付随する従属請求項において列挙される特徴は、そうでないと明示的に記述されない限り自由に相互に組み合わせ可能である。更に、「1つの」、つまり単数形の使用は、この文献を通して、複数を排除するものではないということは理解されるべきである。
【0019】
例としての非制限的実施形態およびそれらの利点は、付随する図面を参照して、下記により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】
図1aは、動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る装置を例示している。
【
図1b】
図1bは、指先の動脈系から反射された電磁放射を時間の関数として例示している例としてのグラフを示している。
【
図1c】
図1cは、
図1aに例示されている装置を備えているモバイル機器を示している。
【
図2a】
図2aは、動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る装置を例示している。
【
図2b】
図2bは、異なる波長を有し、指先の動脈系から反射された電磁放射を時間の関数として例示している例としてのグラフを示している。
【
図3】
図3は、動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る装置を例示している。
【
図4a】
図4aは、動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る装置を例示している。
【
図4b】
図4bは、異なる波長を有し、指先の動脈系から反射された電磁放射を時間の関数として例示している例としてのグラフを示している。
【
図5】
図5は、動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る方法のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
下記の記述において提供される特定の例は、付随する請求項の範囲および/または適用可能性を制限するものとは解釈されるべきではない。記述において提供される例のリストとグループは、そうでないと明示されない限り、すべてを網羅しているものではない。
【0022】
図1aは、動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る装置の模式図を示している。装置は、個人の指先108に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射し、指先108の動脈系から反射された電磁放射の一部を受信するためのフォトプレチスモグラフィ「PPG」センサ101を備えている。例としての非制限的実施形態に係る装置においては、波長は480nmから600nmの範囲である。例としての非制限的実施形態に係る装置においては、波長は500nmから600nmの範囲である。例としての非制限的実施形態に係る装置においては、波長は500nmから575nmの範囲である。例としての非制限的実施形態に係る装置においては、波長は500nmから550nmの範囲である。波長は、例えば必ずしもそうとは限らないが、約537nmであってよく、その場合は、電磁放射は緑の光である。PPGセンサ101は、放射出射器109と光検出器110を備えている。放射出射器109は、例えば、発光ダイオード「LED」であってよく、光検出器110は、例えば、フォトダイオードまたはフォトトランジスタであってよい。
図1aはまた、指先の拡大された模式断面
図130も示している。断面は、座標系199のyz面に平行である。断面
図130において、出射および反射された放射は、折れ線117で示されている。断面
図130において例示されているように、電磁放射117は皮下組織114に位置している動脈111には到達せず、真皮網状層115に位置している細動脈112に到達できるだけである。断面
図130においては、毛細血管は参照番号113により示されており、指先の皮膚の表皮は、参照番号116により示されている。
【0023】
装置は更に、フォトプレチスモグラフィセンサ101が電磁放射を出射および受信するときに、動脈系に印加される機械的圧力を管理するための圧力装置102を備えている。この例としての場合においては、圧力装置102は、指先108により圧力センサに向けられた機械的圧力Pを測定するための圧力センサを備えている。
【0024】
図1bは、装置が、動脈111における拡張期血圧「DIA」と共に、細動脈112における平均動脈血圧「MAP」と細動脈における収縮期血圧「SYS」を推定するために使用される例としての状況における、反射された電磁放射を例示している曲線119を示している。この例としての場合においては、指先108はまず、圧力装置102に対して押し付けられ、それにより機械的圧力Pが収縮期血圧を超え、そのため血液の流れが遮断されるようにする。その後、押し付けを徐々に開放して、それにより、
図1bに示されている曲線122で示されるように、機械的圧力Pが時間の関数として減少するようにする。曲線119は、例えば、PPGセンサ101の帯域通過フィルタ処理された出力信号を表わすことができる。帯域通過フィルタ処理の通過帯域は、例えば、1Hzから10Hzであってよい。この例としての場合においては、帯域通過フィルタ処理された信号は、帯域通過フィルタ処理された信号の包絡線を形成するためにヒルベルト変換される。
図1bにおいては、ヒルベルト変換された、フィルタ処理された信号が曲線120で示され、その包絡線は曲線121で示されている。
【0025】
細動脈112におけるMAPの推定値は、反射された電磁放射の上記の包絡線121がその最大値に到達するときの機械的圧力Pの値である。そのため、細動脈におけるMAPは、
図1bに示されているように、包絡曲線121と機械的圧力曲線122により推定できる。細動脈112における収縮期血圧「SYS」の推定値は、細動脈112における推定されたMAPよりも大きい機械的圧力Pであって、反射された電磁放射の包絡線が、包絡線の最大値の所定のパーセンテージ、典型的には50%であるときの機械的圧力Pの値である。そのため、細動脈におけるSYSは、
図1bに示されているように、包絡曲線121と機械的圧力曲線122により推定できる。細動脈におけるSYSの推定値はまた、細動脈111における拡張期血圧「DIA」の推定値でもある。
【0026】
図1bに示されている例としての場合においては、機械的圧力Pは減少される。しかし、細動脈112におけるMAP、細動脈におけるSYS、および動脈111におけるDIAを推定するために、機械的圧力Pを増大させることも可能である。この例としての場合においては、反射された電磁放射の包絡線は、包絡線121の時間反転版である。更に、機械的圧力Pは、機械的圧力Pを減少または増大するときに、時間の関数として理想的な直線に必ずしも追従しないということに留意すべきである。
【0027】
例としての非制限的実施形態に係る装置は、細動脈112におけるMAPの推定値を決定するように構成されている処理システム103を備えている。言い換えると、処理システム103は、機械的圧力Pが、開始値から終了値まで減少または増大されるときに、反射された電磁放射の上記の包絡線121がその最大値に到達するときの機械的圧力Pの第1値を決定するように構成されており、ここにおいて第1値は、細動脈112におけるMAPの推定値である。例としての非制限的実施形態に係る装置においては、処理システム103は、細動脈112におけるSYSの推定値と、動脈111におけるDIAの推定値を決定するように構成されている。言い換えると、処理システム103は、決定された第1値よりも大きい機械的圧力Pであって、反射された電磁放射の包絡線が、包絡線の最大値の、ほぼ所定のパーセンテージ、典型的には50%となるときの機械的圧力Pの第2値を決定するように構成されており、ここにおいて、決定された第2値は、細動脈112におけるSYSの推定値および動脈111におけるDIAの推定値である。しかし、例としての非制限的実施形態に係る装置は、PPGセンサと圧力センサの出力信号の時系列を格納するためのメモリ、および/または、時系列を外部装置に送信するための送信機を備えることも可能である。この例としての場合においては、動脈系の機能性を表わす上記の推定値は、外部装置、例えば、パーソナルコンピュータによりオフラインで形成できる。
【0028】
図1cは、
図1aに例示されている装置を備えているモバイル機器107を示している。モバイル機器107は、例えば、モバイルフォンまたはパームトップコンピュータであってよい。圧力センサとPPGセンサはモバイル機器の表面にあり、それにより、個人が指先108を、圧力センサとPPGセンサに対して押し付けることが可能となる。この例としての場合においては、モバイル機器107は、PPGセンサの帯域通過フィルタ処理された出力信号と、帯域通過フィルタ処理された出力信号の包絡線を表示するように構成されている。更に、モバイル機器107は、細動脈におけるSYS、細動脈におけるMAP、および動脈におけるDIAの推定値を表示するように構成されており、推定値は、圧力センサにより測定された機械的圧力の包絡線と時間依存性により形成される。本発明の例としての実施形態に係る装置は、リング、ブレスレット、リストウォッチ、または任意の他のウェアラブルデバイス、またはそれらの組み合わせ、またはウェアラブルデバイスとモバイルフォン、または、他のモバイル通信装置の組み合わせの一部であることも可能である。例えば、リングまたはブレスレットの内側の表面にPPGセンサと圧力センサを設けることができる。この例としての場合においては、ユーザは、リングまたはブレスレットを指の表面、またはリングまたはブレスレットにより囲まれている手首に押し付けることにより圧力を制御できる。
【0029】
図2aは、動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る装置の模式図を示している。装置は、個人の指先208に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する第1電磁放射と、620nmから900nmの範囲の波長を有する第2電磁放射を出射し、指先208の動脈系から反射された第1および第2電磁放射の一部を受信するためのフォトプレチスモグラフィ「PPG」センサ201を備えている。第1電磁放射の波長は、例えば必ずしもそうとは限らないが、約537nmであってよく、その場合は、第1電磁放射は緑の光である。例としての非制限的実施形態に係る装置においては、第2電磁放射の波長は650nmから890nmの範囲である。第2電磁放射の波長は、例えば必ずしもそうとは限らないが、約660nmであってよく、その場合は、第2電磁放射は赤い光であり、または、約880nmであってよく、その場合は、第2電磁放射は赤外線「IR」放射である。PPGセンサ201はまた、3つ以上の異なる波長を有する電磁放射を出射して測定するようにも構成することが可能である。PPGセンサ201は放射出射器209と光検出器210を備えている。放射出射器209は、例えば、発光ダイオード「LED」を備えることができ、光検出器210は、例えば、波長感受性フォトダイオードまたはフォトトランジスタを備えることができる。
図2aはまた、指先の拡大された模式断面
図230も示している。断面は、座標系299のyz面に平行である。断面
図230において、出射および反射された第1電磁放射は、折れ線217で示されおり、出射および反射された第2電磁放射は、折れ線218で示されている。断面
図230において例示されているように、第1電磁放射217は皮下組織114に位置している動脈111には到達せず、真皮網状層115に位置している細動脈112に到達できるだけであり、一方、第2電磁放射218は動脈111に到達できる。断面
図230においては、毛細血管は参照番号113により示されており、指先の皮膚の表皮は、参照番号116により示されている。
【0030】
装置は更に、PPGセンサ201が上記の第1および第2電磁放射を出射および受信するときに、動脈系に印加される機械的圧力を管理するための圧力装置を備えている。この例としての場合においては、圧力装置は、指先208により圧力センサに向けられた機械的圧力Pを測定するための圧力センサ202aと、指先208を、PPGセンサ201と圧力センサ202aに対して制御可能なように押し付けるための押し付け手段202bを備えている。この例としての装置においては、押し付け手段は、押し付け要素204と、力を押し付け要素204に向けるための力生成手段228を備えている。力生成手段228は、例えば、電気ステッパモータと、ネジ棒(ネジ山が切られた棒)を備えることができる。
【0031】
図2bは、装置が、細動脈112における平均動脈血圧「MAP1」、動脈111における平均動脈血圧「MAP2」、細動脈における収縮期血圧「SYS1」、動脈における収縮期血圧「SYS2」、および動脈における拡張期血圧「DIA2」を推定するために使用される、例としての状況における、反射された第1電磁放射を例示している曲線219と、反射された第2電磁放射を例示している曲線223を示している。この例としての場合においては、指先208はまず、圧力センサ202aに対して押し付けられ、それにより機械的圧力Pが収縮期血圧を超え、そのため血液の流れが遮断されるようにする。その後、押し付けを徐々に開放して、それにより、
図2bに示されている曲線222で示されるように、機械的圧力Pが時間の関数として減少するようにする。曲線219と223は、例えば、PPGセンサ201の帯域通過フィルタ処理された出力信号を表わすことができる。帯域通過フィルタ処理の通過帯域は、例えば、1Hzから10Hzであってよい。この例としての場合においては、帯域通過フィルタ処理された信号は、帯域通過フィルタ処理された信号の包絡線を形成するためにヒルベルト変換される。
図2bにおいては、ヒルベルト変換された、フィルタ処理された信号は破線曲線で示されている。反射された第1電磁放射の包絡線は曲線221により示され、反射された第2電磁放射の包絡線は曲線224により示されている。
【0032】
図2bにより示されているように、MAP1の推定値は、包絡線221がその最大値に到達するときの機械的圧力Pの値であり、MAP2の推定値は、包絡線224がその最大値に到達するときの機械的圧力Pの値であり、SYS1の推定値は、MAP1よりも大きい機械的圧力Pであって、包絡線221が、包絡線221の最大値の50%であるときの機械的圧力Pの値であり、SYS2の推定値は、MAP2よりも大きい機械的圧力Pであって、包絡線224が、包絡線224の最大値の50%であるときの機械的圧力Pの値であり、DIA2の推定値は、MAP2よりも小さい機械的圧力Pであって、包絡線224が、包絡線224の最大値の80%であるときの機械的圧力Pの値である。細動脈における収縮期血圧SYS1は、動脈における拡張期血圧DIA2とほぼ等しいので、SYS1の推定値は、動脈における拡張期血圧に対する他の推定値として振る舞う。動脈における拡張期血圧に対する最終推定値は、例えば、包絡線224に基づく推定値と、包絡線221に基づく推定値の加重平均であってよい。
【0033】
例としての非制限的実施形態に係る装置は、機械的圧力Pが時間の関数として、例えば、
図2bにおける曲線222により示されているような所望の挙動を有するように、力生成手段228を制御するように構成されている処理システム203を備えている。更に、処理システム203は、PPGセンサ201の出力信号と、圧力センサ202bの出力信号により上記の推定値を形成するように構成できる。
【0034】
図3は、動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る装置の模式図を示している。装置は、動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射し、動脈系から反射された電磁放射の一部を受信するためのフォトプレチスモグラフィ「PPG」センサ301を備えている。波長は、例えば、約515nmであってよい。装置は、フォトプレチスモグラフィセンサ301が電磁放射を動脈系に出射し、電磁放射を動脈系から受信するときに、動脈系に印加される機械的圧力を管理するための圧力装置302を備えている。この例としての場合においては、圧力装置302は、制御可能な機械的圧力を上腕動脈に向けるための押し付け装置305を備えている。押し付け装置305は、例えば、加圧帯であってよく、装置は、制御可能な機械的圧力を上腕動脈に向けるために、加圧帯の内部の気体、例えば空気の圧力を制御するためのポンプシステム306を備えることができる。しかし、押し付け装置が、例えば、上腕の周りで締め付けられる柔軟性ベルトを備えることも可能である。PPGセンサ301は、押し付け装置305の表面上に位置しており、それにより、PPGセンサ301を、上腕動脈の上部に置くことができる。上腕動脈は、例えば、触診により見つけることができる。実験によれば、PPGセンサ301の出力信号は、機械的圧力が拡張期血圧を超えているときは脈動性波形を示さず、PPGセンサ301の出力信号は、機械的圧力が拡張期血圧を下回ると、脈動性波形を示し始める。そのため、装置は、拡張期血圧の直接測定のために使用できる。
【0035】
例としての非制限的実施形態に係る装置は、機械的圧力が時間の関数としての所望の挙動を有するように、押し付け装置305を制御するように構成されている処理システム303を備えている。
図3に示されている例としての場合においては、処理システム303は、加圧帯により生成される機械的圧力が、時間の関数としての所望の挙動を有するように、ポンプシステム306を制御するように構成されている。更に、処理システム303は、PPGセンサ301の出力信号が、脈動性波形を示し始めるときの機械的圧力の値を決定するように構成できる。
【0036】
図4aは、動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る装置の模式図を示している。装置は、個人の指先408に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する第1電磁放射と、620nmから900nmの範囲の波長を有する第2電磁放射を出射し、指先408の動脈系から反射された第1および第2電磁放射の一部を受信するためのフォトプレチスモグラフィ「PPG」センサ401を備えている。第1電磁放射の波長は、例えば必ずしもそうとは限らないが、約537nmであってよく、その場合は、第1電磁放射は緑の光である。第2電磁放射の波長は、例えば約660nmであってよく、その場合は、第2電磁放射は赤い光であり、または約880nmであってよく、その場合は、第2電磁放射は赤外線「IR」放射である。PPGセンサ401は放射出射器409と光検出器410を備えている。
【0037】
装置は更に、PPGセンサ401が第1および第2電磁放射を指先408に出射し、第1および第2電磁放射を指先408から受信するときに、動脈系に印加される機械的圧力を管理するための圧力装置402を備えている。この例としての場合においては、圧力装置402は、指先408を押し付けるための押し付け要素404と、力を押し付け要素404に向けるための力生成手段428を備えている。
【0038】
図4bは、圧力装置402がまず機械的圧力を増大し、そして機械的圧力をほぼ一定に保つ、例としての状況における、反射された第1電磁放射を例示している曲線425と、反射された第2電磁放射を例示している曲線426を示している。曲線425と426は、例えば、PPGセンサ401の帯域通過フィルタ処理された出力信号を示すことができる。帯域通過フィルタ処理の通過帯域は、例えば、1Hzから10Hzであってよい。時間の関数としての機械的圧力は、
図4bに示されている曲線427で示されている。
図4bに示されているように、機械的圧力は、反射された第1電磁放射の脈動性波形がほぼゼロに降下し、反射された第2電磁放射の脈動性波形がその最大値に到達するときの圧力まで増大される。反射された第1電磁放射の小さな脈動性波形は、ほぼ収縮期細動脈血圧を示唆している細動脈のほぼ閉塞に近い状態を示している。小さな流れにより引き起こされる接線方向の応力は、内皮細胞における一窒化酸素「NO」の排出を誘発し、そしてそれは、内皮細胞おいてより多くの血液が流れるようにする細動脈における血管拡張を引き起こす。印加される機械的圧力が一定に保たれると、反射された第1電磁放射の脈動性波形は、曲線425により例示されているように増大する。反射された第1電磁放射の脈動性波形における上記の増大は、正常な内皮機能を示唆しているが、増大がないことは、内皮機能不全を示唆している。
【0039】
例としての非制限的実施形態に係る装置は、圧力装置402を、反射された第1電磁放射の包絡線がほぼゼロにまで降下するまで機械的圧力を増大し、それに続いて機械的圧力を一定に保つようにするように制御するための処理システム403を備えている。他の例としての非制限的実施形態に係る装置においては、処理システム403は、圧力装置402を、反射された第2電磁放射の包絡線がその最大値に到達するまで機械的圧力を増大し、それに続いて機械的圧力を一定に保つようにするように制御するように構成されている。力生成手段428は、例えば、ネジ棒と、処理システム403により制御される電気ステッパモータを備えることができる。機械的圧力は、電気ステッパモータを適切な回転方向に起動することにより増大でき、機械的圧力は、電気ステッパモータを静止状態に保つことにより一定に保つことができる。例としての非制限的実施形態に係る装置においては、処理システム403は、機械的圧力が一定に保たれるときに、反射された第1電磁放射の包絡線が増大するかどうかを検出するように構成されている。
【0040】
図1a、2a、3、および4aに示されている処理システム103、203、303、および403のそれぞれは、例えば、1つ以上のプロセッサ回路で実現でき、それぞれのプロセッサ回路は、適切なソフトウェアが設けられているプログラマブルプロセッサ回路であってよく、または、例えば、特定用途向け集積回路「ASIC」などのような専用ハードウェアプロセッサ、または、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ「FPGA」などのような構成可能ハードウェアプロセッサであってよい。処理システム103、203、303、および403のそれぞれは、例えば、1つ以上のメモリ回路で実現されるメモリを更に含むことができ、それぞれのメモリ回路は、例えば、ランダムアクセスメモリ「RAM」デバイスであってよい。
【0041】
図5は、個人の動脈系の機能性を測定するための、例としての非制限的実施形態に係る方法のフローチャートを示している。方法は、下記の動作、
-動作501:動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射することと、
-動作502:動脈系から反射された電磁放射の一部を受信することと、
-動作503;電磁放射が動脈系に対して出射され、反射された電磁放射が動脈系から受信されるときに、動脈系に印加される機械的圧力を変更することと、
-動作504:受信された電磁放射に基づいて、動脈系の機能性を示す情報を生成することを備えている。
【0042】
例としての非制限的実施形態に係る方法においては、電磁放射の波長は、480nmから600nmの範囲である。
【0043】
例としての非制限的実施形態に係る方法においては、電磁放射の波長は、500nmから600nmの範囲である。
【0044】
例としての非制限的実施形態に係る方法においては、電磁放射の波長は、500nmから575nmの範囲である。
【0045】
例としての非制限的実施形態に係る方法においては、電磁放射の波長は、500nmから550nmの範囲である。
【0046】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、機械的圧力が開始値から終了値まで減少または増大されるときに、反射された電磁放射の包絡線がその最大値に到達するときの機械的圧力の第1値を決定することを備えている。決定された第1値は、動脈系の細動脈の平均動脈血圧「MAP」を示している。
【0047】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、決定された第1値よりも大きい機械的圧力であって、反射された電磁放射の包絡線が、包絡線の最大値の、ほぼ所定のパーセンテージ、例えば、50%であるときの機械的圧力の第2値を決定することを備えている。決定された第2値は、動脈系の細動脈の収縮期血圧「SYS」と共に、動脈系の動脈の拡張期血圧「DIA」を示している。
【0048】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、反射された電磁放射の包絡線がほぼゼロにまで降下するまで機械的圧力を増大することと、それに続いて機械的圧力を一定に保つことを備えている。更に、この例としての非制限的実施形態に係る方法は、機械的圧力が一定に保たれるときに、反射された電磁放射の包絡線が増大するかどうかを検出することを備えている。包絡線における増大は、動脈系の正常な内皮機能を示し、一方、増大がないことは、内皮機能不全を示している。
【0049】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、電磁放射が指先に対して出射され、電磁放射が指先から受信されるときに、機械的圧力を個人の指先に向けることを備えている。
【0050】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、電磁放射が指先に対して出射され、電磁放射が指先から受信されるときに、指先に向けられた圧力を測定することを備えている。
【0051】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、電磁放射が上腕動脈の上部の上腕の領域に対して出射され、電磁放射を上腕動脈の上部の上腕の領域から受信するときに、機械的圧力を個人の上腕動脈に向けるために、個人の上腕を囲んでいる加圧帯の内部の気体の圧力を制御することを備えている。
【0052】
例としての非制限的実施形態に係る方法においては、475nmから600nmの範囲の波長を有する上記の電磁放射は第1電磁放射であり、この例としての非制限的実施形態に係る方法は、
-動脈系に対して、620nmから900nmの範囲の波長を有する第2電磁放射を出射することと、
動脈系から反射された第2電磁放射の一部を受信することを備えている。
【0053】
例としての非制限的実施形態に係る方法においては、第2電磁放射の波長は650nmから890nmの範囲である。
【0054】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、機械的圧力が開始値から終了値まで減少または増大されるときに、反射された第2電磁放射の包絡線がその最大値に到達するときの機械的圧力の第3値を決定することを備えている。決定された第3値は、動脈系の動脈の平均動脈血圧「MAP」を示している。
【0055】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、決定された第3値よりも大きい機械的圧力であって、反射された第2電磁放射の包絡線が、反射された第2電磁放射の包絡線の最大値の、ほぼ第1所定のパーセンテージ、例えば、50%であるときの機械的圧力の第4値を決定することを備えている。決定された第4値は、動脈系の動脈の収縮期血圧「SYS」を示している。
【0056】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、決定された第3値よりも小さい機械的圧力であって、反射された第2電磁放射の包絡線が、反射された第2電磁放射の包絡線の最大値の、ほぼ第2所定のパーセンテージ、例えば、80%のときの機械的圧力の第5値を決定することを備えている。決定された第5値は、動脈系の動脈の拡張期血圧「DIA」を示している。
【0057】
例としての非制限的実施形態に係る方法は、反射された第2電磁放射の包絡線がその最大値に到達するまで機械的圧力を増大することと、それに続いて機械的圧力を一定に保つことを備えている。更に、この例としての非制限的実施形態に係る方法は、機械的圧力が一定に保たれるときに、反射された第1電磁放射の包絡線が増大するかどうかを検出することを備えている。反射された第1電磁放射の包絡線における増大は、動脈系の正常な内皮機能を示している。
【0058】
例としての非制限的実施形態に係るコンピュータプログラムは、プログラマブル処理システムを、上記の例としての非制限的実施形態の何れかに係る方法に関連する動作を実行するように制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えている。
【0059】
例としての非制限的実施形態に係るコンピュータプログラムは、個人の動脈系の機能性を測定するためのソフトウェアモジュールを備えている。ソフトウェアモジュールは、プログラマブル処理システムが、
-フォトプレチスモグラフィ「PPG」センサを、動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射し、動脈系から反射された電磁放射の一部を受信するように制御し、
-圧力装置を、PPGセンサが電磁放射を動脈系に対して出射し、電磁放射を動脈系から受信するときに、動脈系に印加される機械的圧力を管理するように制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えている。
【0060】
ソフトウェアモジュールは、プログラマブル処理装置に適切なプログラミングツールで実現される、例えば、サブルーチンまたは機能であってよい。
【0061】
例としての非制限的実施形態に係るコンピュータプログラムにおいては、ソフトウェアモジュールは、プログラマブル処理システムが、圧力装置を、PPGセンサが電磁放射を動脈系に対して出射し、電磁放射を動脈系から受信するときに、動脈系に印加される機械的圧力を変更するように制御するよう制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えている。
【0062】
例としての非制限的実施形態に係るコンピュータプログラム製品は、例としての実施形態に係るコンピュータプログラムで符号化されたコンピュータ読取り可能媒体、例えば、コンパクトディスク「CD」を備えている。
【0063】
例としての非制限的実施形態に係る信号は、例としての実施形態に係るコンピュータプログラムを定義する情報を搬送するように符号化されている。
【0064】
例としての非制限的実施形態に係るコンピュータプログラムは、例えば、スマートフォンまたはウェアラブルデバイスなどのモバイル機器のソフトウェアの、例えば一部を構成できる。
【0065】
上記の記述において提供される特定の例は、付随する請求項の範囲および/または適用可能性を制限するものとは解釈されるべきではない。上記の記述において提供される例のリストとグループは、そうでないと明示されない限り、すべてを網羅しているものではない。
上述の実施形態は下記のようにも記載され得るが下記には限定されない。
[構成1]
個人の動脈系の機能性を測定するための装置であって、
前記装置は、前記動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射し、前記動脈系から反射された前記電磁放射の一部を受信するためのフォトプレチスモグラフィセンサ(101、201、301、401)を備えており、前記装置は更に、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記動脈系に印加される機械的圧力を管理するための圧力装置(102、202a、202b、302、402)を備えていることと特徴とする、装置。
[構成2]
前記圧力装置(202a、202b、302、402)は、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記動脈系に印加される前記機械的圧力を変更することに適していることを特徴とする、構成1に記載の装置。
[構成3]
前記圧力装置(202b、402)は、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記機械的圧力を前記個人の指先に向け、前記機械的圧力を変更するための押し付け要素(204、404)を備えていることを特徴とする、構成2に記載の装置。
[構成4]
前記装置は、前記機械的圧力が開始値から終了値まで増減されるときに、前記反射された電磁放射の包絡線が最大値に到達するときの前記機械的圧力の第1値を決定するための処理システム(103、203、303)を備えており、前記決定された第1値は、前記動脈系の細動脈の平均動脈血圧を示していることを特徴とする、構成1から3の何れかに記載の装置。
[構成5]
前記処理システムは、前記決定された第1値よりも大きい前記機械的圧力であって、前記反射された電磁放射の前記包絡線が、前記最大値の、ほぼ所定のパーセンテージであるときの前記機械的圧力の第2値を決定するように構成されており、前記決定された第2値は、前記動脈系の前記細動脈の収縮期血圧と共に、前記動脈系の動脈の拡張期血圧を示していることを特徴とする、構成4に記載の装置。
[構成6]
前記装置は、前記圧力装置を、前記反射された電磁放射の包絡線がほぼゼロにまで降下するまで前記機械的圧力を増大し、それに続いて前記機械的圧力を一定に保つように制御するための処理システム(403)を備えていることを特徴とする、構成2または3に記載の装置。
[構成7]
前記処理システムは、前記機械的圧力が一定に保たれるときに、前記反射された電磁放射の前記包絡線が増大するかどうかを検出するように構成されており、前記包絡線の増大は、前記動脈の正常な内皮機能を示していることを特徴とする、構成6に記載の装置。
[構成8]
前記圧力装置(102、202a)は、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を指先に出射し、前記電磁放射を前記指先から受信するときに、前記個人の前記指先により圧力センサに向けられた圧力を測定するための前記圧力センサを備えていることを特徴とする、構成1から7の何れかに記載の装置。
[構成9]
前記装置は、モバイル機器(107)の一部であり、前記圧力センサと前記フォトプレチスモグラフィセンサは、前記モバイル機器の表面上にあることを特徴とする、構成8に記載の装置。
[構成10]
前記電磁放射の前記波長は、500nmから600nmの前記範囲であることを特徴とする、構成1から9の何れかに記載の装置。
[構成11]
前記電磁放射の前記波長は、500nmから550nmの前記範囲であることを特徴とする、構成1から10の何れかに記載の装置。
[構成12]
475nmから600nmの前記範囲の前記波長を有する前記電磁放射は第1電磁放射であり、前記フォトプレチスモグラフィセンサ(201、401)は、前記動脈系に対して、620nmから900nmの範囲の波長を有する第2電磁放射を出射し、前記動脈系から反射された前記第2電磁放射の一部を受信するように構成されていることを特徴とする、構成1から11の何れかに記載の装置。
[構成13]
前記装置は、前記機械的圧力が開始値から終了値まで増減されるときに、前記反射された第2電磁放射の包絡線が最大値に到達するときの前記機械的圧力の第3値を決定するための処理システム(203)を備えており、前記決定された第3値は、前記動脈系の動脈の平均動脈血圧を示していることを特徴とする、構成12に記載の装置。
[構成14]
前記処理システムは、前記決定された第3値よりも大きい前記機械的圧力であって、前記反射された第2電磁放射の前記包絡線が、前記反射された第2電磁放射の前記包絡線の前記最大値のほぼ第1の所定のパーセンテージであるときの前記機械的圧力の第4値を決定するように構成されており、前記決定された第4値は、前記動脈系の動脈の収縮期血圧を示していることを特徴とする、構成13に記載の装置。
[構成15]
前記装置は、前記圧力装置を、前記反射された第2電磁放射の前記包絡線の最大値に到達するまで前記機械的圧力を増大し、それに続いて前記機械的圧力を一定に保つように制御するための処理システム(403)を備えていることを特徴とする、構成12に記載の装置。
[構成16]
前記圧力装置(302)は、前記機械的圧力を前記個人の上腕動脈に向けるための押し付け装置(305)を備えており、前記フォトプレチスモグラフィセンサ(301)は、前記上腕動脈の上部になるように意図されている前記押し付け装置の表面上に位置していることを特徴とする、構成2に記載の装置。
[構成17]
前記押し付け装置(305)は加圧帯であり、前記圧力装置は、前記機械的圧力を前記上腕動脈に向けるために、前記加圧帯の内部の気体の圧力を制御するためのポンプシステム(306)を備えており、前記フォトプレチスモグラフィセンサ(301)は、前記加圧帯の内部表面上に位置していることを特徴とする、構成16に記載の装置。
[構成18]
個人の動脈系の機能性を測定するための方法であって、
前記動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射することと(501)、
前記動脈系から反射された前記電磁放射の一部を受信することと(502)、
前記受信された電磁放射に基づいて、前記動脈系の前記機能性を示す情報を生成すること(503)を備えており、
前記方法は、前記電磁放射が前記動脈系に対して出射され、前記反射された電磁放射が前記動脈系から受信されるときに、前記動脈系に印加される機械的圧力を変更すること(504)を備えていることを特徴とする、方法。
[構成19]
コンピュータプログラムであって、プログラマブル処理システムが、
フォトプレチスモグラフィセンサを、前記動脈系に対して、475nmから600nmの範囲の波長を有する電磁放射を出射し、前記動脈系から反射された前記電磁放射の一部を受信するように制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えており、
前記コンピュータプログラムは更に、前記プログラマブル処理システムが、圧力装置を、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記動脈系に印加される機械的圧力を管理するように制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えていることを特徴とする、コンピュータプログラム。
[構成20]
前記コンピュータプログラムは、前記プログラマブル処理システムが、前記圧力装置を、前記フォトプレチスモグラフィセンサが前記電磁放射を前記動脈系に出射し、前記電磁放射を前記動脈系から受信するときに、前記動脈系に印加される前記機械的圧力を変更するように制御するためのコンピュータ実行可能命令を備えていることを特徴とする、構成19に記載のコンピュータプログラム。
[構成21]
構成19または20に記載のコンピュータプログラムで符号化されている非一時的コンピュータ読取り可能媒体を備えているコンピュータプログラム製品。